(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】電気エネルギー及びH2ガスを製造するための固体酸化物燃料電池(SOFC)を含む発電プラント及び方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0612 20160101AFI20220208BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20220208BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20220208BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20220208BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20220208BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20220208BHJP
C01B 3/32 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
H01M8/0612
H01M8/12 101
H01M8/00 Z
H01M8/04014
H01M8/04 N
H01M8/04701
C01B3/32 Z
(21)【出願番号】P 2019524015
(86)(22)【出願日】2017-07-07
(86)【国際出願番号】 NO2017050186
(87)【国際公開番号】W WO2018012984
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-05-21
(32)【優先日】2016-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】519014305
【氏名又は名称】ゼグ パワー アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】アンネシェン、 ビョルグ
(72)【発明者】
【氏名】ラーハイム、 アルネ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー、 ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ディ グイリオ、 ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ウレベルグ、 エステイン
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-515344(JP,A)
【文献】特開2000-273472(JP,A)
【文献】米国特許第6007699(US,A)
【文献】特表2011-510115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
C01B 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物燃料電池(SOFC)(30)を含む発電プラントにおいて電気エネルギー及びH
2ガスを製造する方法であって、
前記発電プラントは、天然ガス、バイオガス、及び合成ガスからなる群から選択される供給ガス(111)の供給を受け、
前記供給ガスは、SOFC(30)に供給される前に、改質器(21)中でCaO含有CO
2吸収剤を用いて改質され、これにより、CaOからCaCO
3への変換を伴いつつ、炭素を含まないH
2ガス(115、116)を前記SOFC(30)用の供給物として製造し、ここで、CaCO
3は、CaO再生器(22)中で、前記再生器(22)を加熱するための前記SOFC(30)からの熱を利用した850℃以上の温度での吸熱反応によりCaOに再生される、前記方法において、
前記SOFC(30)中の熱を回収する少なくとも1つの熱交換媒体(123、201)を、前記CaO再生器(22)中で熱交換する前に、加熱装置(41、41’、41”)中で温度上昇させることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの熱交換媒体(123、201)は、(A)前記SOFC(30)からの排気ガス(123)、並びに(B)前記SOFC(30)、前記加熱装置(41、41’、41”)、及び前記CaO再生器(22)間の閉ループを循環する専用熱交換媒体(201)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱装置(41)は、前記SOFC(30)からの排気ガス(123)の温度を50℃以上上昇させるのに十分な量の、燃料ガスとして実質的に純粋なH
2(122)の供給を受けるバーナーである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱装置(41)に供給される前記燃料ガスの少なくとも一部は、前記改質器(21)から由来するH
2ガスである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱装置(41)に供給される前記燃料ガス(122)の少なくとも一部は、前記SOFC(30)のH
2排出(119)から由来するH
2ガスである、請求項3又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記SOFC(30)からの前記排気ガス(123)
は830℃の熱風である、請求項
2~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱装置(41)を出た排気ガス(126)が850℃以
上の温度を有するように、前記加熱装置(41)を作動させる、請求項1
~請求項6のいずれ一項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱交換媒体(201)は、前記SOFC(30)、前記加熱装置(41’、41”)、及び前記CaO再生器(22)間の閉ループを循環する専用熱交換媒体(201)である、請求項1
~請求項7のいずれ一項に記載の方法。
【請求項9】
前記改質器(21)及び前記加熱装置(41)への燃料がどちらとも生物由来である、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1の量の初期CO
2
を含む燃料用の第1の改質器と、第2のより多い量の初期CO
2
を含む燃料用の第2のより大きな改質器との間で切り替える、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
天然ガス、バイオガス、及び合成ガスからなる群から選択される供給ガス(111)の供給を受けるように構成され、
前記供給ガスは、固体酸化物燃料電池(SOFC)(30)に供給される前に、改質器(21)中でCaO含有CO
2吸収剤を用いて改質され、これにより、CaOからCaCO
3への変換を伴いつつ、炭素を含まないH
2ガス(115)を前記SOFC用の供給物として製造し、ここで、CaCO
3は、再生器中で850℃以上の温度でCaOに再生される、
SOFC(30)を含み、電気エネルギー及びH
2ガスを製造するための発電プラントにおいて、
加熱装置(41、41’、41”)が、前記SOFC(30)と前記再生器(22)との間に接続され、前記SOFCからの熱を回収する熱交換媒体(123、201)が更に加熱されてから、前記再生器(22)における熱交換に使用されることを可能とするように加熱装置(41、41’、41”)が構成されていることを特徴とする、発電プラント。
【請求項12】
閉ループが、前記SOFC(30)、前記加熱装置(41、41’、41”)、及び前
記再生器(22)間に専用熱交換媒体(201)を循環させるように構成されている、請求項11に記載の発電プラント。
【請求項13】
前記加熱装置41は、化石燃料及びバイオ燃料から選択される燃料の供給を受ける、請求項11又は請求項12に記載の発電プラント。
【請求項14】
前記加熱装置(41’)に要求される酸素が、別個の空気供給源(125)、前記固体酸化物燃料電池(30)からの排出流(123’)、又はそれらの組み合わせにより供給される、請求項11~請求項13のいずれか一項に記載の発電プラント。
【請求項15】
前記固体酸化物燃料電池(30)からの排出流(123’)は、前記加熱装置(41”)への純粋な酸素の供給流(125’)と熱交換される、請求項11~請求項
14のいずれか一項に記載の発電プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、SOFC)を含む発電プラントにおいてH2ガス及び電気エネルギーを製造する方法に関する。別の態様によれば、本発明は、請求項11の前提部によって示されるように、SOFCを含み、H2ガス及び電気エネルギーを製造するための発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
収着強化水蒸気メタン改質(Sorption Enhanced Steam Methane Reforming(SE-SMR))(反応a)を参照)又は収着強化水性ガスシフト(Sorption Enhanced Water Gas Shift(SE-WGS))(反応b)を参照)による水素製造は、公知のプロセスである(国際公開第2011/078681(A1)号明細書参照)。
【0003】
a)天然ガスから、SE-SMR;
CaO+CH4+2H2O=CaCO3+4H2(T=500℃~650℃)
【0004】
b)合成ガス(不定量のH2+COを含むガス)から、SE-WGS;
CaO+CO+H2+H2O=CaCO3+2H2(T=500℃~650℃)
【0005】
これに関連して、エネルギー効率の良いCaO吸収剤の再生(CaCO3=CaO+CO2(約900℃のT))が非常に重要である。
【0006】
SOFCからの熱又は廃熱は、以前から当業界における多くの専門家によって、Caループプロセスにおける吸収剤再生用として提案されており(例えば、Lacknerら、2001;国際公開第01/42132(A1)号明細書及び国際公開第2011/078681(A1)号明細書)、900℃超のスタック温度を伴うSOFCが使用される場合、SOFCシステムからCaループ再生器への熱伝達が再生プロセスに十分なものとなり、これはセラミック接続部材の使用により達成され得る(Lasosipojanaら:2009)。
【0007】
SOFCスタックを設計するための1つの重要な因子は、材料;セラミック、リアアース(rear earth)材料及び/又は金属の寿命及びコストである。今日、サプライヤーは主に、650~800℃の範囲又は800~850℃の範囲の、低温のSOFCスタックに注目している。
【0008】
上述のより低いSOFCスタック温度により、実際にはSOFC作動温度が約830℃に制限され(Megelら、2013)、(H2ガスが燃料として使用される場合、窒素及び酸素からなる)SOFC排気の熱が同様な温度レベルに制限される。したがって、SOFC排気温度は、CaO再生システムが1気圧(1Atm)よりも低い圧力で作動されない限り、上述のCaO吸収剤再生のための温度に十分に達しない。そのため、SOFCシステムを800~850℃の温度レベルで作動させる場合、CaO吸収剤再生プロセスに必要な温度レベル(900℃以上)に到達させるために、SOFC排気の温度を上昇させるコスト及びエネルギー効率の良い方法が必要とされる。
【0009】
さらに、改質器に供給するために使用される燃料の種類に応じて、再生器に供給される高熱の量の変化を可能とすることも重要である。使用される燃料の種類としては:天然ガス/メタン、(化石又は生物由来の炭素含有固体から作製される)合成ガス、有機廃棄物からのバイオガス(およそ、65%のCH4及び35%のCO2を含む)、又は埋立地ガス(およそ、50%のCH4及び50%のCO2を含む)であってもよい。
【0010】
原料バイオガス又は埋立地ガスが、硫黄成分の除去後に、かなりの量のCO2(15%超、改質器導入前のCO2の回収なし)と直接使用される場合、初期CO2(化石又は生物由来)を含まないか又はほとんど含まない燃料と比較して、より高い(且つ柔軟な)性能を備えるCaループシステムが求められるであろう。これにより、高熱を量を変えて供給することが可能な排気加熱装置(図面を参照)の必要性が生じるであろう。
【0011】
さらに、利用可能なバイオガス及び/又は埋立地ガスの量は、単に製造速度を変化させるために変化し得る。したがって、SOFCシステムに一定に燃料流を供給できるようにするためには、2つの改質器/再生器システムの間で切り替えできることが望ましいであろう;
【0012】
a)追加CO2を全く含まないか又はほとんど含まない燃料専用のもの、及び、
b)例えばバイオガス/埋立地ガスといった、かなりの量の初期CO2を含む燃料専用のより大規模なシステム(CaO+CH4+2H2O+CO2=CaCO3+4H2(T=500℃~650℃)、ただし、等式のバランスは取れていない)。この場合、CO2は2つの供給源に由来するものであり、1つは原料バイオガス/埋立地ガスからであり、もう1つは改質反応からである。
【0013】
この選択により、高熱を量を変えて供給することが可能な排気加熱装置(図面を参照)の必要性も生じるであろう。
【0014】
SOFCシステムへの一定の燃料(主にH2)流量を維持できるようにするためには、改質された燃料(主にH2)用の貯蔵タンクも必要とされることがある。
【0015】
高熱を(初期原料バイオガス中のCO2不定量に基づいて)量を変えて供給することが可能な排気加熱装置に燃料を追加/供給することにより、CaO吸収剤の再生に十分な高い排気温度(830℃)に上昇させるという取り組みは、これまで行われてこなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、CO2回収のためにCaOを使用したガス改質及びSOFC排気加熱装置が用いられたSOFC系発電プラントを、コスト及びエネルギー効率良く作動させることを可能にする方法を提供することである。
【0017】
更なる目的は、CO2による気候への影響を及ぼさずに、一次燃料(改質器への燃料)としてあらゆる出発物(バイオ又は化石系;固体、液体、又は気体)を可能とする上記を提供することである。
【0018】
更なる目的は、異なる組成の燃料ガスを改質器に用いることを可能とすることであり、以下、初期CO2含有量が異なるものとする。
【0019】
更なる目的は、全水素(及び電気)製造システムを柔軟に調節し、これにより、(A)CO2をほとんど含まないか又は全く含まない改質燃料(例えば、CH4)と(B)かなりの量の初期CO2を含む改質燃料(例えば、有機家庭廃棄物から作製されたバイオガス(65%のCH4及び35%のCO2))との切り替えを容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の目的は、請求項1に定義されるような本発明に係る方法によって達成される。
【0021】
別の態様によれば、本発明は、請求項11に定義されるような、方法を実施するための発電プラントに関する。
【0022】
好ましい実施形態は、従属請求項により開示される。
【0023】
本方法により、国際公開第2011/078681(A1)号明細書(上記)及び国際公開第2004/025767(A1)号明細書(Vikら)の有益な特徴が保たれることが当業者によって理解されるだろう。プロセス全体において、持続可能性は依然として鍵となり、共通事項である。したがって、このプロセスにより、全CO2の回収又は気候中立的(climate neutral)なCO2処理が可能となる。
【0024】
技術的には、排気加熱装置を介したSOFCシステム及び再生器間の熱伝達は、2つの異なる手法で行うことができる;
1)SOFCカソード排気加熱装置との熱統合
2)ヒートループ及び排気加熱装置との熱統合
【0025】
この場合、熱伝達媒体は、例えば水素、CO2、空気、ヘリウム、水蒸気等の種々のガス、種々のガス混合物、又は鉱油、炭化水素等の流体、及び種類が異なる溶融塩としてもよい。
【0026】
この加熱プロセスのための燃料は、生物又は化石に由来してもよい。
【0027】
したがって、炭(化水)素((hydro)carbon)含有燃料(バイオ又は化石系;固体、液体、又は気体)を使用して、加熱装置内のSOFC排気の温度を高め、種々の量のCaO-CO2吸収剤の再生に必要な温度及び熱量をもたらすことが可能となる。
【0028】
再生器からのCO2(100%)が貯蔵又は使用され、SOFCシステム(図面を参照)からの水素が幾らか加熱装置(図面を参照)中の燃料として使用される場合、水素及び電気を製造するためのシステムは全体として、すべての実施形態において気候への影響を及ぼさないであろう。
【0029】
以下に示す種々の実施形態から分かるように、他の種類の燃料(炭素を含有する、炭化水素、化石、又は生物源)が再生器及び温度加熱装置の両方で使用される場合、これ(気候への影響を及ぼさないこと)を達成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の種々の実施形態を、添付の図面を参照して以下に説明する;
【発明を実施するための形態】
【0031】
SOFCシステムが、燃料改質器、CaO-CO
2吸収剤再生器、及び温度を高めるための排気加熱システム40と併用された水素製造プラントを示す
図1に着目する。
【0032】
燃料流111が、燃料を改質し、初期CO2(必要であれば)及び改質プロセスで放出されるCO2を処理するように構成された、Caループシステム20の一部である改質器ユニット21に供給される。燃料は典型的には、天然ガス、合成ガス又は発酵ユニットで製造されるガスのような他のメタン豊富なガスである。実質的に純粋な水素ガス115が改質装置21を出る。改質器ユニット21において、改質プロセスは燃料、水(水蒸気)、及びCaOの反応を含み、後者は発熱反応によりCaCO3に変換される。初期CO2(存在する場合)及び改質プロセスの両方から作製されたCaCO3は、続いて、後述の吸熱プロセスによりCaOに再生される。気化した水112も改質器ユニット21に供給される。
【0033】
改質器ユニット21を出た実質的に純粋な水素ガス115は、加熱された水素流116として固体酸化物燃料電池(SOFC)30に供給される前に、第1の熱交換器51中で加熱される。SOFCにより電気が生み出され、不定量の水素119が放出される。また、空気118が、典型的には第2の熱交換器52中で加熱されてから、SOFCに供給される。
【0034】
SOFC30からの排気ガス123は、燃料電池に供給される燃料116が実質的に純粋な水素であるため、実質的に純粋な空気である。SOFC30からの排気ガスの温度は典型的には約830℃であり、幾らか低くてもよい。
【0035】
上述したように、改質器ユニット21で発生したCaCO3は、改質器での回収剤として再利用するために、CaOに再生される必要がある。これは、Caループシステム20の第2のパートを構築する再生器22中で起こる。しかしながら、CaCO3の再生は、効率的に行われるために850℃以上、より好ましくは900℃以上の温度を必要とし、エネルギーを消費する吸熱プロセスである。再生器22には、その作動用に幾らか水114も必要とされ、この水は典型的には、冷却剤として作用しないように第3の熱交換器53中で予熱される。
【0036】
SOFCからの排気ガス123は、再生器22の温度を維持するのに有力な候補であるが、その温度は典型的には、それ自体が役割を果たすほど十分に高くない。実際には、排気ガス123の温度は、CaCO3が更なる使用のためにCaOに変換される再生器22中の充分な温度を効果的に維持するには低すぎる。本発明の本質は、(A)燃料改質器、(B)CaO-CO2吸収剤再生器、及び(C)排気ガス123の温度を上昇させて、温度を高めるための加熱装置41を用いて再生器22中の効果的な温度を維持する目的で使用できるように構成された排気温度上昇システム40と一体化された専用システムを使用することである。
【0037】
図1は、SOFCシステム30が、燃料改質器21、CaO-CO
2吸収剤再生器22、及び温度を高めるために燃料が供給される排気加熱装置41と併用された水素製造プラントの概略図を示す。この実施形態において、排気加熱装置41に供給された燃料は空気125中で燃焼される。
【0038】
改質器21及び排気加熱装置41の両方への全燃料が生物由来である場合、システムは全体として気候中立的であろう。さらに、124を通る加熱システム用の燃料は、生物に由来する場合、典型的には以下であってもよい:
a)SOFCシステム122からの水素
b)埋立地ガス(バイオCO2を含む)
c)CO2分離を伴って又は伴わずに製造されたバイオガス
d)生物源(固体、液体、又は気体)由来の合成ガス
e)固体炭素含有源。
【0039】
これらのプロセスに関連する/これらのプロセスから放出されるCO2は気候中立的であり、熱伝達体25から再生器22の後、望ましくない気候への影響を及ぼさずに流れ128として空気中に放出されてもよい。排気加熱装置のために最も好ましい燃料である水素は、改質器21の下流側から115を通して送ってもよく、より好ましくは、SOFC30への水素の流入流115を加熱するために使用される第1の熱交換器51等の熱交換器において温度が低下された後に、SOFCからの水素排出流119から分かれた流れ122として送ってもよい。
【0040】
しかしながら、改質器21に供給される燃料111が化石由来であり排気加熱装置41への燃料が生物由来である場合、気候への影響を及ぼさない状況をつくることも可能である(上述)。これは、改質器21における改質プロセスからのCO2が、CaO吸収剤によって効率的に吸収され(反応a)(SE-SMR)及び反応b)(SE-WGS)を参照)、流れ129、130として貯蔵又は使用するために再生器22から容易に100%純粋に回収することができるためである。
【0041】
SOFCシステムが、燃料改質器、CaO-CO
2吸収剤再生器、及び温度を高めるための排気加熱装置と一体化された水素製造プラントを示す
図2に着目する。この実施形態において、熱統合は、閉ヒートループ40’を備えている。
【0042】
図2の構成要素の大部分は
図1のものと同じである。
図1と
図2との主な違いは、排気加熱装置41’を介したSOFC30及び再生器22間の熱伝達が閉ヒートループ201、202、203、204により行われることである。
【0043】
図2に示す実施形態において、改質器及び排気加熱装置の両方への全燃料が生物由来である場合、システムは全体として気候中立的でもある。この場合も、
図1に示す実施形態と同様に、改質装置への燃料が化石由来であり排気加熱装置への燃料が生物由来である場合、気候への影響を及ぼさない状況をつくることが可能である(上述)。
【0044】
温度加熱装置41’への燃料が化石由来である場合、これらは典型的には:
a)SOFCシステムからの水素
b)天然ガス
c)ガス化固体(石炭)、液体、又はガス炭化水素(合成ガス)
d)石炭
であってもよい。
【0045】
これには、炭素含有燃料の場合、気候中立的な状態とするために128’での別個のCO2回収システムが必要とされるであろう。
【0046】
図2中のヒートループ201~204の熱伝達媒体は、例えば水素、CO
2、空気、ヘリウム、水蒸気等の種々のガス、種々のガス混合物、又は鉱油、炭化水素等の流体、及び種類が異なる溶融塩であってもよい。SOFCシステム30を出た熱媒体201の熱は約830℃である。このヒートループの熱は、再生器22におけるCaO吸収剤の再生に求められる温度を満たすために、温度加熱装置41’において850℃以上、より好ましくは950℃以上、最も好ましくは1000℃以上に高められる。
【0047】
SOFCシステム30からの加熱された排気流123’により、41’における加熱プロセスのための酸素が供給される。加熱装置への酸素は、必要に応じて、吸気口125によって供給されてもよい。41’からの排気は、SOFC30に入る流れ117~118での空気を加熱する第2の熱交換器52中で熱交換され、その後、大気に放出される流れ128’としてシステムを出る。加熱装置のための燃料が主に水素であるか又は水素単独である場合、128’での排気ガス中にCO2はほとんど存在しないか又は全く存在しない。加熱装置41’が全体的に又は部分的に、種々の燃料(しかし、有機非化石由来の燃料である)の供給を受ける場合、128’での排気ガスは気候中立的であろう。
【0048】
吸収剤の再生により、流れ129として示されるかなりの量の純粋なCO2も放出されるが、これは、好ましくは、第3の熱交換器53における熱交換に使用された後に処理される(使用又は貯蔵される)必要がある。
【0049】
図1及び
図2に示されるように、水(蒸気)112が、必要量の酸素及び水素を反応ゾーンに供給するために、改質器ユニット21に加えられる。
【0050】
図1及び
図2に示される原理は一般に、SOFC30によって製造される熱が、供給ガスを改質するプロセスにおいてCO
2を吸収するために使用される吸収剤を再生するために使用されるというものであるが、SOFCからの排気ガスの温度が典型的には、単独で使用するには少し低すぎるので、そのエネルギー及び温度が繊細に効率良く増加する。最も優れているのはおそらく、水素がすでにシステムの一部に用いられている場合、エネルギーを増大させるために用いられ、更なるCO
2の製造が伴わないことである。
【0051】
SOFCシステムが、燃料改質器、CaO-CO
2吸収剤再生器、及び温度を高めるための排気加熱装置と併用された水素製造プラントを示す
図3に着目する。この実施形態において、熱伝達は閉ヒートループにより行われる。排気加熱装置への燃料は(炭素を含有する場合)、酸素ポンプによって供給される純粋な酸素中で燃焼される。
【0052】
図3の構成要素の大部分は、
図1及び
図2のものと同じである。
図3は、改質器22及び排気加熱装置41”への燃料が化石由来(CH
4、天然ガス、合成ガス等)であってもよく、貯蔵又は使用のために製造システム全体から全てのCO
2を回収することが可能な実施形態を示す。加熱装置への燃料は、流れ125’として供給される純粋な酸素中で、酸素ポンプにより燃焼されなければならない。酸素125’は典型的には、第4の熱交換器54中で、第2の熱交換器52からのSOFC排気123’を用いて予熱される。(
図1、
図2、及び
図3において流れ117を加熱するように示されている熱交換器52は、流れ127(
図1)、流れ128’(
図2)、及び流れ123’(
図3)を冷却するために使用されるものと同じ熱交換器であることに留意されたい。)
【0053】
CaO再生器に対する熱交換の温度の上昇に直接関係しない本開示における全ての熱交換は、所望により行われるものであり、多くの異なる方法で行ってもよいことに留意されたい。
【0054】
一般に、図面の説明は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の好ましい実施形態に関する。
【0055】
<実施形態>
本発明は種々の異なる実施形態を有していてもよいが、SOFC30の熱交換媒体は典型的には、排気ガス123及び専用熱交換媒体201のうちの少なくとも1つを含み、この場合、後者はSOFC、加熱装置41、41’、41”、及びCaO再生器22間の閉ループを循環する。
【0056】
ある好ましい実施形態では、加熱装置41は、SOFC30からの排気ガス123の温度を50℃以上上昇させるのに十分な量の、実質的に純粋な水素ガス122の供給を受けるバーナーである。
【0057】
加熱装置41に供給される燃料ガスの少なくとも一部は、典型的には、改質器21から由来する水素ガスである。
【0058】
ある好ましい実施形態では、加熱装置41に供給される燃料ガスの少なくとも一部は、SOFC30の水素排出119から由来する水素ガスである。
【0059】
<符号リスト>
20 Caループシステム
21 Caループシステム20の改質器
22 Caループシステム20の再生器
25 再生器22中の熱交換器
30 SOFC
35 SOFC30中の熱交換器
40 熱増強システム(第1のバージョン)
40’ 熱増強システム(第2のバージョン)
40” 熱増強システム(第3のバージョン)
41 加熱装置(第1のバージョン)
41’ 加熱装置(第2のバージョン)
41” 加熱装置(第3のバージョン)
45 加熱装置41’及び41”中の熱交換器
51 第1の熱交換器
52 第2の熱交換器
53 第3の熱交換器
54 第4の熱交換器
111 21への供給流
112 改質器への水
113 (第3の)熱交換器への水
114 再生器への水
115 改質器からの水素
116 熱交換器からSOFC30への水素
117 熱交換器(その後SOFC)への空気
118 熱交換器52からSOFC30への空気
119 SOFCから熱交換器51への水素
120 熱交換器51からの水素
121 輸送用水素サブストリーム、120の部分流
122 加熱装置41への燃料用の水素サブストリーム
123 SOFCからの排気流
123’ SOFCからの排気流(代替
図2)
123”
124 加熱装置41への外部燃料
125 加熱装置41への空気流
125’ 加熱装置41への純粋な酸素
126 加熱装置41からの排気流
127 再生器中の熱交換器からの排気流
128 熱交換器52から大気への排気流(
図1)
128’ 加熱装置41’からの排気流(
図2)
128” 加熱装置41”からの排気流(
図3)
128”’熱交換器54からの排気流(
図3)
129 再生器からの純粋なCO
2
130 熱交換器53からの純粋なCO
2
201 SOFC30から加熱装置41”への熱交換媒体
202 加熱装置41”から再生器22への熱交換媒体
203 再生器22から冷却器50への熱交換媒体
204 冷却器50からSOFC30への熱交換媒体