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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】水中撮影装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/225 20060101AFI20220208BHJP
   G03B 17/08 20210101ALI20220208BHJP
【FI】
H04N5/225 100
G03B17/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017152554
(22)【出願日】2017-08-07
(65)【公開番号】P2019033348
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513220562
【氏名又は名称】首都高技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591216473
【氏名又は名称】一般財団法人首都高速道路技術センター
(73)【特許権者】
【識別番号】507301567
【氏名又は名称】株式会社ホルス
(73)【特許権者】
【識別番号】505466295
【氏名又は名称】株式会社イクシス
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】永田 佳文
(72)【発明者】
【氏名】阿部 紀征
(72)【発明者】
【氏名】田島 由美子
(72)【発明者】
【氏名】大宮 勲
(72)【発明者】
【氏名】高田 光
(72)【発明者】
【氏名】山崎 文敬
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-153717(JP,A)
【文献】特開昭62-299492(JP,A)
【文献】特開平08-136291(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010060(WO,A1)
【文献】特開平11-122518(JP,A)
【文献】特開2007-178276(JP,A)
【文献】登録実用新案第3026891(JP,U)
【文献】実開平04-076392(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225
G03B 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で撮影対象物を撮影する水中撮影装置であって、
視線方向が前方を向いていて前記撮影対象物を撮影するカメラと、前記カメラを支持する支持体と、を有する本体部と、
前記支持体において前記撮影対象物と対向する部位の複数箇所にそれぞれ設けられている複数の車輪と、
水を付勢する反力により前記本体部を移動させるスラスター部と、
を備え、
前記複数の車輪の各々は、上下方向に転動可能であるとともに、上下方向と前記視線方向とに対して直交する左右方向にも転動可能であり、
前記スラスター部は、
前記支持体に固定的に設けられていて後方を向いており前記本体部を前記撮影対象物側に付勢する付勢スラスターと、
前記支持体に固定的に設けられていて左方向成分を持つ方向を向いている左向きスラスターと、
前記支持体に固定的に設けられていて右方向成分を持つ方向を向いている右向きスラスターと、
を含んで構成されており、
当該水中撮影装置は、
互いに異なる向きに配置された複数の水流センサと、
前記スラスター部の動作制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数の水流センサから入力される検出信号に応じて、前記水流による前記本体部の移動がキャンセルされるように前記スラスター部の出力を演算し、当該演算した出力となるよう前記スラスター部の動作制御を行う水中撮影装置。
【請求項2】
前記本体部を支持する支持棒を備え、
前記支持棒の下端部が前記本体部の上端部に対して着脱可能に取り付けられている請求項1に記載の水中撮影装置。
【請求項3】
前記本体部を支持する支持棒を備え、
前記支持棒の下端部が前記本体部の上端部に対して取り付けられており、
前記支持棒は、繰出し操作による伸長と収納操作による短縮とが可能に構成されている請求項1又は2に記載の水中撮影装置。
【請求項4】
前記左向きスラスターには、左上を向いている左上向きスラスターと、左下を向いている左下向きスラスターと、が含まれており、
前記右向きスラスターには、右上を向いている右上向きスラスターと、右下を向いている右下向きスラスターと、が含まれている請求項1から3のいずれか一項に記載の水中撮影装置。
【請求項5】
前記左上向きスラスターは、前記支持体の左側上部に配置され、
前記左下向きスラスターは、前記支持体の左側下部に配置され、
前記右上向きスラスターは、前記支持体の右側上部に配置され、
前記右下向きスラスターは、前記支持体の右側下部に配置され、
前記付勢スラスターには、前記左上向きスラスターと前記左下向きスラスターとの間に配置されている第1付勢スラスターと、前記右上向きスラスターと前記右下向きスラスターとの間に配置されている第2付勢スラスターと、が含まれている請求項4に記載の水中撮影装置。
【請求項6】
前記支持体は、複数の棒状部の組み合わせにより構成された籠型であり、
前記支持体の内側に前記カメラ及び前記スラスター部が配置されている請求項1から5のいずれか一項に記載の水中撮影装置。
【請求項7】
前記支持体は、
環状に形成されていて前記撮影対象物と対向して配置される前側環状部と、
環状に形成されていて、前記前側環状部の後方に、前記前側環状部と対向して配置されている後側環状部と、
前記前側環状部と前記後側環状部とを互いに連結している複数の連結部と、
を含んで構成されており、
前記前側環状部において前記撮影対象物と対向する部位の複数箇所にそれぞれ前記車輪が設けられている請求項6に記載の水中撮影装置。
【請求項8】
前記支持体は、環状に形成されていて前記撮影対象物と対向して配置される前側環状部を含んで構成されており、
前記前側環状部において前記撮影対象物と対向する部位の複数箇所にそれぞれ前記車輪が設けられており、
当該水中撮影装置は、
前記カメラが密閉収容されている筐体を備え、
前記カメラの視線方向に位置する前記筐体の前面壁は、透明材により構成されているとともに、前記前側環状部と面一に配置されている請求項6又は7に記載の水中撮影装置。
【請求項9】
当該水中撮影装置は、
前記カメラが密閉収容されている筐体と、
前記撮影対象物に光を照射する複数の照明部と、
を備え、
前記カメラの視線方向に位置する前記筐体の前面壁は、透明材により構成されており、
前記前面壁と前記複数の照明部とが、前記視線方向に対して直交する方向において並んで配置されている請求項1から8のいずれか一項に記載の水中撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラを用いた水中撮影を行うための装置としては、特許文献1、2に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1には、カメラを防水ケースに収納し、防水ケースを支持棒の下端部に設け、支持棒を介して防水ケース入りのカメラを水中に下降させ、遠隔操作により水中の撮影対象物の画像を撮影する技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、カメラを防水筐体に収納した水中撮影装置が、水中で移動するための移動手段を備えることが記載されている。特許文献2には、撮影対象物であるパイプに沿って水中撮影装置が上下に移動可能である旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-178276号公報
【文献】特開平11-122518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2の技術では、例えば橋脚のような撮影対象物について、横方向(周方向)における複数箇所の撮影を行う作業が困難であると考えられる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、より高い自由度で移動することが可能な構造の水中撮影装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、水中で撮影対象物を撮影する水中撮影装置であって、
視線方向が前方を向いていて前記撮影対象物を撮影するカメラと、前記カメラを支持する支持体と、を有する本体部と、
前記支持体において前記撮影対象物と対向する部位の複数箇所にそれぞれ設けられている複数の車輪と、
水を付勢する反力により前記本体部を移動させるスラスター部と、
を備え、
前記複数の車輪の各々は、上下方向に転動可能であるとともに、上下方向と前記視線方向とに対して直交する左右方向にも転動可能であり、
前記スラスター部は、
前記支持体に固定的に設けられていて後方を向いており前記本体部を前記撮影対象物側に付勢する付勢スラスターと、
前記支持体に固定的に設けられていて左方向成分を持つ方向を向いている左向きスラスターと、
前記支持体に固定的に設けられていて右方向成分を持つ方向を向いている右向きスラスターと、
を含んで構成されており、
当該水中撮影装置は、
互いに異なる向きに配置された複数の水流センサと、
前記スラスター部の動作制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数の水流センサから入力される検出信号に応じて、前記水流による前記本体部の移動がキャンセルされるように前記スラスター部の出力を演算し、当該演算した出力となるよう前記スラスター部の動作制御を行う水中撮影装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水中撮影装置がより高い自由度で移動することが可能となり、例えば橋脚のような撮影対象物について、横方向(周方向)における複数箇所の撮影を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る水中撮影装置の本体部の前面側を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る水中撮影装置の本体部の背面側を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る水中撮影装置の本体部の正面図である。
図4】実施形態に係る水中撮影装置の本体部の背面図である。
図5】実施形態に係る水中撮影装置の本体部の平面図である。
図6】実施形態に係る水中撮影装置の本体部の下面図である。
図7】実施形態に係る水中撮影装置の本体部の右側面図である。
図8】実施形態に係る水中撮影装置の本体部の左側面図である。
図9】実施形態に係る水中撮影装置の本体部の背面図(各フロートの図示を省略)である。
図10】実施形態に係る水中撮影装置の使用例を示す概略図である。
図11】実施形態に係る水中撮影装置のブロック図である。
図12】実施形態に係る水中撮影装置の動作例を説明するための模式的な平断面図である。
図13】実施形態に係る水中撮影装置の動作例を説明するための模式的な平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
また本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、一つの構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0012】
本実施形態に係る水中撮影装置100(図10)は、水中で撮影対象物60(例えば橋脚)(図10)を撮影する水中撮影装置100である。
水中撮影装置100は、視線方向が前方を向いていて撮影対象物60を撮影するカメラ10(図3図6)とカメラ10を支持する支持体20とを有する本体部30と、支持体20において撮影対象物60と対向する部位の複数箇所にそれぞれ設けられている複数の車輪41と、水を付勢する反力により本体部30を移動させるスラスター部50(図9)と、を備えている。
複数の車輪41の各々は、上下方向に転動可能であるとともに、上下方向と視線方向とに対して直交する左右方向にも転動可能である。
スラスター部50(図9)は、支持体20に固定的に設けられていて後方を向いており本体部30を撮影対象物60側に付勢する付勢スラスター51(図9)と、支持体20に固定的に設けられていて左方向成分を持つ方向を向いている左向きスラスター52(図9)と、支持体20に固定的に設けられていて右方向成分を持つ方向を向いている右向きスラスター53(図9)と、を含んで構成されている。
【0013】
ここで、左右の方向は、撮影対象物60側から本体部30を視たときの方向(つまり図3に示す正面図での方向)を意味している。
図1から図9の各図には、上下左右前後を矢印で示している。
【0014】
支持体20において撮影対象物60と対向する部位には、例えば、複数のキャスター40が設けられている。各キャスター40は、支持体20に対して回転可能に軸支されている車輪保持部42(図1)と、車輪保持部42に対して回転可能に軸支されている車輪41と、を備えている。支持体20に対する車輪保持部42の回転軸(第1軸)は前後方向に延びている。車輪保持部42に対する車輪41の回転軸(第2軸)は第1軸に対して直交している。
よって、車輪41が撮影対象物60に接触した状態で本体部30が前後左右に移動するのに追従して、車輪41も前後左右に転動するようになっている。
【0015】
図10に示すように、水中撮影装置100は、本体部30を河川や海などの水中に沈めた状態で用いられる。
水中撮影装置100は、典型的には、図10に示す支持棒70を介して本体部30を支持した状態で用いられる。すなわち、水中撮影装置100は、例えば、支持棒70の上端部をオペレータ(第1オペレータ121)が把持して支えた状態で用いられる。
【0016】
ここで、本体部30の上端部には、例えば、筒状(例えば円筒状)の支持棒取付部31(図1等)が設けられており、該支持棒取付部31の上端が開口している。この支持棒取付部31に対して支持棒70の下端部75が差し込まれることによって、支持棒70が支持棒取付部31に取り付けられている。支持棒70の下端部75を支持棒取付部31から引き抜くことにより、支持棒70を支持棒取付部31から取り外すことができるようになっている。
【0017】
このように、水中撮影装置100は、本体部30を支持する支持棒70を備え、支持棒70の下端部75が本体部30の上端部に対して着脱可能に取り付けられている。
【0018】
なお、本体部30を支持棒70から取り外した状態では、本体部30はスラスター部50の働きにより自泳できるようになっている。
【0019】
なお、本発明は、この例に限らず、支持棒70は本体部30に対して固定的に取り付けられていても良い。
【0020】
本実施形態の場合、支持棒70は、伸縮可能な構造となっている。より詳細には、支持棒70は、複数の棒状体により構成されており、繰出し操作および収納操作により伸縮可能となっている。
一例として、図10に示すように、支持棒70は、第1部分71、第2部分72及び第3部分73の3つの棒状体を備えており、このうち少なくとも第1部分71及び第2部分72が管状に形成されている。
第2部分72は、第1部分71内への収納と、第1部分71からの繰出しとが可能となっている。
第3部分73は、第2部分72内への収納と、第2部分72からの繰出しとが可能となっている。
図10は、第1部分71から第2部分72を繰り出し、且つ、第2部分72から第3部分73を繰り出した状態を示している。
【0021】
このように、水中撮影装置100は、本体部30を支持する支持棒70を備え、支持棒70の下端部75が本体部30の上端部に対して取り付けられており、支持棒70は、繰出し操作による伸長と収納操作による短縮とが可能に構成されている。
【0022】
図9等に示すように、本実施形態の場合、左向きスラスター52には、左上を向いている左上向きスラスター521と、左下を向いている左下向きスラスター522と、が含まれている。
また、右向きスラスター53には、右上を向いている右上向きスラスター531と、右下を向いている右下向きスラスター532と、が含まれている。
【0023】
本実施形態の場合、左上向きスラスター521は支持体20の左側上部に配置され、左下向きスラスター522は支持体20の左側下部に配置され、右上向きスラスター531は支持体20の右側上部に配置され、右下向きスラスター532は支持体20の右側下部に配置されている。
そして、付勢スラスター51には、左上向きスラスター521と左下向きスラスター522との間に配置されている第1付勢スラスター511と、右上向きスラスター531と右下向きスラスター532との間に配置されている第2付勢スラスター512と、が含まれている。
【0024】
ここで、各スラスター(第1付勢スラスター511、第2付勢スラスター512、左上向きスラスター521、左下向きスラスター522、右上向きスラスター531、右下向きスラスター532)は、スクリュー55と、スクリュー55の周囲を覆っているフード56と、スクリュー55を回転させるモータ57と、を備えている。
フード56は、例えば円筒状に形成されており、スクリュー55と同軸に配置されている。スクリュー55の軸方向における一方側において、フード56の一端の全面が開口している。また、スクリュー55の軸方向における他方側にモータ57が配置されている。
各スラスターが向いている方向は、各スラスターのスクリュー55の軸方向における一方側である。
【0025】
なお、図11に示すように、第1付勢スラスター511のモータ57は第1付勢スラスター駆動モータ571であり、第2付勢スラスター512のモータ57は第2付勢スラスター駆動モータ572であり、左上向きスラスター521のモータ57は左上向きスラスター駆動モータ573であり、左下向きスラスター522のモータ57は左下向きスラスター駆動モータ574であり、右上向きスラスター531のモータ57は右上向きスラスター駆動モータ575であり、右下向きスラスター532のモータ57は右下向きスラスター駆動モータ576である。
【0026】
左上向きスラスター521は左斜め上45度の方向を向いており、左下向きスラスター522は左斜め下45度の方向を向いており、右上向きスラスター531は右斜め上45度の方向を向いており、右下向きスラスター532は右斜め下45度の方向を向いている。
第1付勢スラスター511及び第2付勢スラスター512はいずれも後方を向いている。
【0027】
モータ57がスクリュー55を正方向に回転(正回転)させることにより、各スラスターは、当該スラスターが向いている方に水を付勢し、その反力により、本体部30は、当該スラスターが向いている方の逆方向に押されて移動する。
【0028】
例えば、左上向きスラスター駆動モータ573及び左下向きスラスター駆動モータ574がそれぞれ対応するスクリュー55を正方向に互いに同じ回転速度で回転させることにより、本体部30が右に移動する。
また、右上向きスラスター駆動モータ575及び右下向きスラスター駆動モータ576がそれぞれ対応するスクリュー55を正方向に互いに同じ回転速度で回転させることにより、本体部30が左に移動する。
また、左上向きスラスター駆動モータ573及び右上向きスラスター駆動モータ575がそれぞれ対応するスクリュー55を正方向に互いに同じ回転速度で回転させることにより、本体部30が下に移動する。
また、左下向きスラスター駆動モータ574及び右下向きスラスター駆動モータ576がそれぞれ対応するスクリュー55を正方向に互いに同じ回転速度で回転させることにより、本体部30が上に移動する。
また、第1付勢スラスター駆動モータ571及び第2付勢スラスター駆動モータ572がそれぞれ対応するスクリュー55を正方向に互いに同じ回転速度で回転させることにより、本体部30が前に移動する。
なお、一度に回転させるスクリュー55の回転速度のバランスを調節することによって、より細かく本体部30の移動方向を制御することができる。
【0029】
なお、各モータ57は、それぞれ対応するスクリュー55を逆方向に回転(逆回転)させることが可能であってもよい。この場合、各モータ57が対応するスクリュー55を逆回転させることにより、スクリュー55を正回転させるときとは逆方向に本体部30を移動させることができる。
【0030】
本実施形態の場合、支持体20は、複数の棒状部の組み合わせにより構成された籠型である。すなわち、支持体20は骨組構造の籠型のものである。
そして、支持体20の内側にカメラ10及びスラスター部50が配置されている。
【0031】
より詳細には、支持体20は、環状に形成されていて撮影対象物60と対向して配置される前側環状部21と、環状に形成されていて前側環状部21の後方に配置されている後側環状部22と、前側環状部21と後側環状部22とを互いに連結している複数の連結部23と、を含んで構成されている。
後側環状部22は、前側環状部21と対向して配置されている。
そして、前側環状部21において撮影対象物60と対向する部位の複数箇所にそれぞれ車輪41が設けられている。
【0032】
本実施形態の場合、前側環状部21及び後側環状部22はそれぞれ正八角形状であり、前側環状部21と後側環状部22とが互いに平行に配置されている。支持体20は、前側環状部21の角部の各々と後側環状部22の角部の各々とを相互に連結している8本の連結部23を備えている。
支持体20を正面視したときの前側環状部21及び後側環状部22の8つの辺のうち、上下の辺は、それぞれ水平に延在している。したがって、これらの8つの辺のうち、左右の辺は、それぞれ鉛直に延在している。
支持体20は左右対称、上下対称、且つ、前後対称に形成されている。
【0033】
一例として、支持体20の各連結部23は、直線状の棒状体27(図1)の両端部を除く部位により構成されている。
また、各連結部23を構成する8本の棒状体27のうち、隣り合う棒状体27の一端部どうしが、直線状の棒状体25(図1)により相互に連結されている。これにより、8本の棒状体25と、8本の棒状体27の一端部と、により前側環状部21が構成されている。
同様に、隣り合う棒状体27の他端部どうしが、直線状の棒状体26(図1)により相互に連結されている。これにより、8本の棒状体26と、8本の棒状体27の他端部と、により後側環状部22が構成されている。
【0034】
例えば、支持体20を正面視したときの前側環状部21の8つの辺のうち、左上の辺の長手方向における中央部と、左下の辺の長手方向における中央部と、右上の辺の長手方向における中央部と、右下の辺の長手方向における中央部と、にそれぞれキャスター40が設けられている。
また、前側環状部21の上辺の両端と後側環状部22の上辺の両端とを相互に連結している2本の連結部23間に亘って架設板32が架設されている。この架設板32の上面に支持棒取付部31が固定されている。支持棒取付部31は、支持体20の前後方向における中央部に配置されているとともに、支持体20の左右方向における中央部に配置されている。
【0035】
例えば、支持体20の複数の連結部23には、支持体20に各スラスターを固定するための支持板24(図4図9)が固定されている。支持板24等を介して各スラスターが支持体20に固定されている。
また、本体部30が備える6つのスラスターは、左右対称、且つ、上下対称に配置されている(図9参照)。
【0036】
水中撮影装置100は、カメラ10が密閉収容されている筐体11を備えている。この筐体11は、支持体20の内側に配置されている。
好ましくは、図3に示すように、正面視における支持体20の中央部に筐体11が配置されている。
筐体11は、少なくとも水密に構成されており、好ましくは気密に構成されている。
筐体11の内部には、例えば、空気又は水などの透明な流体が充填されている。
筐体11の形状は特に限定されないが、例えば、筐体11は直方体形状(例えば立方体形状)に形成されている。そして、筐体11は、例えば、水平に配置された上面壁及び下面壁と、鉛直に配置された左右の側面壁と、鉛直に配置された前面壁12及び後面壁と、を備えている。
筐体11の6面のうち、少なくとも前面壁12が、透明なガラス板又は透明なアクリル板などの透明材により構成されている。
筐体11の前面壁12は、平板状に形成されており、カメラ10の視線方向に配置されている。より詳細には、カメラ10の視線方向に対して前面壁12が直交して配置されており、前面壁12の中心がカメラ10の視野の中心に配置されている。
【0037】
本実施形態の場合、前面壁12は、支持体20の前側環状部21と面一に配置されている。
ここで、前面壁12が前側環状部21と面一であるとは、前後方向において、前面壁12の前面の位置(図7に示す平面P1の位置)が、前側環状部21の背面から車輪41までの間(図7に示す範囲R)に配置されていることとする。
好ましくは、前面壁12の前面の位置が、前側環状部21の前面から背面までの間に配置されている。
【0038】
カメラ10の近傍には、撮影対象物60に光を照射する照明具が配置されている。この照明具として、本体部30は、例えば、図3に示すように、筐体11の両側に配置されている一対の照明ユニットを備えている。すなわち、本体部30は、筐体11の左側に配置されている第1照明ユニット87と、筐体11の右側に配置されている第2照明ユニット88と、を備えている。これら第1照明ユニット87及び第2照明ユニット88は、例えば、1つ以上(好ましくは複数)のLEDを含んで構成されている。第1照明ユニット87及び第2照明ユニット88は、例えば、上下に長尺に形成されている。
第1照明ユニット87及び第2照明ユニット88により撮影対象物60を照らしながらカメラ10により撮影対象物60を撮影することにより、暗い水中でも明瞭な画像(静止画像又は動画像)を撮影することができる。
【0039】
より詳細には、筐体11の前面壁12と、第1照明ユニット87と、第2照明ユニット88とが、カメラ1の視線方向に対して直交する方向(例えば左右方向)において並んで配置されている。つまり、カメラ10の前方に位置する前面壁12の左右両側に第1照明ユニット87と第2照明ユニット88とがそれぞれ配置されている。
このように、水中撮影装置100は、カメラ10が密閉収容されている筐体11と、撮影対象物60に光を照射する複数の照明部(例えば、第1照明ユニット87及び第2照明ユニット88の2つの照明部)と、を備え、カメラ10の視線方向に位置する筐体11の前面壁12は透明材により構成されており、前面壁12と複数の照明部とがカメラ10の視線方向に対して直交する方向において並んで配置されている。これにより、高濁度の水中でカメラ10による撮影を行う場合であっても、照明部によって良好に撮影対象物60を照らし、明瞭な画像を撮影することができる。
【0040】
本体部30は、更に、1つ又は複数のフロート(浮き)を備えている。これにより、水中撮影装置100において本体部30及び支持棒70を含む部分の比重が1または1の近傍の値となるようになっている。
各フロートの形状は特に限定されないが、例えば、各フロートは、ブロック状又は板状などの形状に形成されている。
より詳細には、例えば、本体部30は、支持体20の前部の上部における中央部に配置されている前側中央フロート91と、支持体20の前部の上部における左側部分に配置されている前側左フロート92と、支持体20の前部の上部における右側部分に配置されている前側右フロート93と、支持体20の後部の上部における左側部分に配置されている後側左フロート94と、支持体20の後部の上部における右側部分に配置されている後側右フロート95と、を備えている。
各フロート(前側中央フロート91、前側左フロート92、前側右フロート93、後側左フロート94、後側右フロート95)は、例えば、発泡スチロールなどの発泡樹脂により構成されているか、又は、樹脂製などの中空の容器により構成されている。
各フロートが支持体20の上部に配置されていることにより、本体部30の転覆(上下がひっくり返ること)が抑制されている。
また、各フロートが左右対称に配置されており、これにより、左右方向における本体部30の傾斜が抑制されている。
また、本体部30の前後の各々にフロートが配置されていることにより、前後方向における本体部30の傾斜が抑制されている。
【0041】
また、図4に示すように、例えば、後側左フロート94と後側右フロート95との間には、配線ボックス96が配置されている。配線ボックス96からは、各スラスターのモータ57、筐体11内のカメラ10、第1照明ユニット87及び第2照明ユニット88に対して、それぞれケーブル(不図示)が延びている。
なお、配線ボックス96を水密(好ましくは気密)の中空容器とすることにより、配線ボックス96がフロートとしての機能を担うようにしてもよい。
【0042】
図11に示すように、水中撮影装置100は、オペレータ(例えば図11に示す第2オペレータ122)に操作される操作部85と、操作部85に対する操作に応じた制御を行う制御部80と、カメラ10により撮影した画像等を表示する表示部86と、を備えている。
操作部85は、各スラスターの動作や、カメラ10による撮影、及び、第1照明ユニット87及び第2照明ユニット88の点灯などの操作を行うためのものであり、例えば、押しボタンなどを備えて構成されている。なお、表示部86がタッチパネル式となっていて操作部85を兼ねていても良い。
【0043】
制御部80は、制御用プログラムを記憶保持しているROM82と、この制御用プログラムに従って制御動作を実行するCPU81と、CPU81の作業領域などとして機能するRAM83と、を備えて構成されている。
制御部80は、スラスター部50の各モータ57(第1付勢スラスター駆動モータ571、第2付勢スラスター駆動モータ572、左上向きスラスター駆動モータ573、左下向きスラスター駆動モータ574、右上向きスラスター駆動モータ575、右下向きスラスター駆動モータ576)の動作制御と、表示部86の動作制御と、第1照明ユニット87及び第2照明ユニット88の動作制御と、を行う。
【0044】
更に、水中撮影装置100は、例えば、支持体20に設けられた水流センサ89を備えている。
水流センサ89は、例えば、水流の流速に応じた速さで回転するロータを備えており、ロータの回転数に応じたパルス信号を検出信号として制御部80に出力する。ここで、説明した水流センサ89の構成は一例であり、水中撮影装置100は、他の検出方式の水流センサ89を備えていても良い。
なお、水中撮影装置100は、複数方向の水流を検出するために、互いに異なる向きに配置された複数の水流センサ89を備えていても良い。
【0045】
制御部80は、水流センサ89から入力される検出信号(パルス信号)に応じて、水流による本体部30の移動がキャンセルされるように各スラスター部(第1付勢スラスター511、第2付勢スラスター512、左上向きスラスター521、左下向きスラスター522、右上向きスラスター531、右下向きスラスター532)のモータ57の回転数(及び回転方向)を演算し、当該演算した出力となるよう各スラスター部の動作制御を行うようになっている。
これにより、本体部30は、川の流れや海流などの水流の影響を抑制しつつ、本体部30を所望の位置に移動させることが可能となる。
【0046】
このように、水中撮影装置100は、本体部30が水流から受ける付勢力に応じて、水流による本体部30の移動がキャンセルされるようにスラスター部50の出力を演算し、当該演算した出力となるようスラスター部50の動作制御を行う制御部80を備える。
【0047】
なお、制御部80は、例えば、本体部30とは別体に構成されている。例えば、図10に示すように、制御部80は、オペレータが搭乗するボート110に積載して用いることができる。
制御部80と、カメラ10、各モータ57、第1照明ユニット87、第2照明ユニット88及び水流センサ89とは、図示しないケーブルを介して相互に電気的に接続されている。なお、これらケーブルは、配線ボックス96にて束ねられて、カメラ10、各モータ57、第1照明ユニット87、第2照明ユニット88及び水流センサ89の各々に分岐している。
制御部80から、カメラ10、各モータ57、第1照明ユニット87及び第2照明ユニット88に対しては、例えば、制御信号と電力とが供給されるようになっている。
また、カメラ10が撮影することにより生成された画像信号は、ケーブルを介して制御部80に入力される。そして、操作部85に対する操作により、必要な画像をRAM83に保存できるようになっている。
また、水流センサ89が生成した検出信号は、ケーブルを介して制御部80に入力される。
【0048】
また、制御部80と操作部85、並びに、制御部80と表示部86とは、それぞれ図示しないケーブルを介して相互に電気的に接続されている。
操作部85に対するオペレータの操作に応じて、操作部85からケーブルを介して操作検出信号が制御部80に入力され、制御部80は、操作検出信号に応じて各部の動作制御を行う。
また、制御部80から、ケーブルを介して、表示部86に対して制御信号が出力され、カメラ10により撮影された画像等の表示が表示部86にて行われる。
操作部85及び表示部86も、オペレータが搭乗するボート110に積載して用いることができる(図10)。
【0049】
ここでは、水中撮影装置100の各部の動作制御として、ケーブルを介した有線制御を行う例を説明したが、水中撮影装置100の各部の動作制御を、無線通信を用いた無線制御により行ってもよい。
【0050】
ここで、各スラスターが向いている方向には、本体部30の各部(支持体20を構成する棒状体25、26、27、筐体11、各フロート、配線ボックス96、第1照明ユニット87、第2照明ユニット88、他のスラスターなど)が配置されていない。このため、各スラスターのモータ57が正回転する際に、効率的に周囲の水を付勢し、その反力で効率的に本体部30を移動させることができるようになっている。
【0051】
また、筐体11の前面壁12の正面には、本体部30の各部(支持体20を構成する棒状体25、26、27、各フロート、配線ボックス96、第1照明ユニット87、第2照明ユニット88、各スラスターなど)が配置されていない。このため、カメラ10の視野を十分に確保できるようになっている。
【0052】
次に、水中撮影装置100を用いて水中の画像を撮影する作業について、撮影対象物60が橋脚である場合を例にして説明する。橋脚の下部は水没しており、橋脚において水没している部位の外周面をカメラ10により撮影する。
例えば、図10に示すように、ボート110に2人以上のオペレータ(例えば、第1オペレータ121及び第2オペレータ122の2人のオペレータ)が搭乗し、ボート110を橋脚(撮影対象物60)に近づけた状態で、水中撮影装置100による撮影を行う。なお、例えば、支持棒70を把持する作業は第1オペレータ121が担当し、操作部85の操作と表示部86の確認とを第2オペレータ122が担当する。
【0053】
先ず、支持棒取付部31に支持棒70の下端部75を取り付けた状態で、支持棒70を伸ばし、本体部30を橋脚(撮影対象物60)に沿って水中に沈める。
本体部30を沈める際には、例えば、左上向きスラスター521及び右上向きスラスター531のモータ57をそれぞれ正回転させることによって、本体部30をスムーズに下降させることができる。
また、ここで、カメラ10の視線方向を撮影対象物60側に向けて、本体部30を沈める。従って、支持体20において車輪41が設けられている側が撮影対象物60の方を向くため、車輪41が撮影対象物60に接触した際には車輪41が上下方向に転動するので、本体部30をスムーズに下降させることができる。本体部30を配置する水深は特に限定されないが、例えば5m程度の水深に本体部30を配置する。本体部30を水中で上昇させる場合には、例えば、左下向きスラスター522及び右下向きスラスター532のモータ57をそれぞれ正回転させる。
こうして、本体部30を所望の水深に配置する。
【0054】
次に、第1付勢スラスター511及び第2付勢スラスター512の各モータ57を正回転させることによって本体部30を撮影対象物60に対して押し付けながら、カメラ10により撮影対象物60の外周面を撮影する。撮影された画像(静止画像、又は、動画像)は、表示部86に表示される。例えば、動画像をリアルタイムで表示部86に表示させることもできる。
ここで、カメラ10が収容されている筐体11の前面壁12が支持体20の前側環状部21と面一になっていて前面壁12を容易に撮影対象物60の近傍に配置できるとともに、筐体11には透明な空気等の流体が充填されているため、濁った水の中でも明瞭な画像を撮影することができる。
なお、本体部30には、本体部30が位置する水深を検出する深度センサ(不図示)が設けられていてもよく、この場合、画像に深度情報を付加することができる。
【0055】
また、第1付勢スラスター511及び第2付勢スラスター512の各モータ57を正回転させることによって本体部30を撮影対象物60に対して押し付けながら、本体部30を左右いずれかに移動させることにより、橋脚(撮影対象物60)の外周面の複数箇所の画像(例えば周方向の全域の画像)を撮影することができる。
例えば、第1付勢スラスター511及び第2付勢スラスター512の各モータ57を正回転させることによって本体部30を撮影対象物60に対して押し付けながら、右上向きスラスター531及び右下向きスラスター532の各モータ57を正回転させることにより、図12に示すように、本体部30を平面視において左回りで橋脚(撮影対象物60)の周囲を移動させながら、カメラ10により撮影対象物60の画像を撮影することができる。
このとき、車輪41が左右方向に転動するので、本体部30を撮影対象物60に沿ってスムーズに移動させることができる。
このように本体部30を左右に移動させる際にも、第1オペレータ121が支持棒70を把持して支えるが、本体部30自体が左右に移動するため、水中でも楽に本体部30を移動させることができる。
こうして、橋脚(撮影対象物60)の外周面の画像を取得することができ、例えば、橋脚の外周面に設置されている防食板(不図示)等の腐食状況の確認などが可能となる。
【0056】
ここで、図13に示すように、橋脚などの撮影対象物60の表面には、藻61などの付着物が付着していることが多いが、支持体20が(箱型ではなく)籠型であるため、本体部30が撮影対象物60に沿って移動する際に藻61などの付着物から受ける抵抗を抑制することができる。
より詳細には、例えば、支持体20の前側環状部21に対して付着物が接触する際には抵抗を受けるが、前側環状部21が付着物を跨いだ後は、支持体20が当該抵抗を受けないようにできる。
また、筐体11の前面壁12が支持体20の前側環状部21と面一になっていて前面壁12を撮影対象物60の近傍に配置できるため、撮影対象物60の表面に藻61などの付着物が付着していても、カメラ10により撮影対象物60の画像を容易に撮像できる。
【0057】
また、上記のように、制御部80は、水流センサ89から入力される検出信号に応じて、水流による本体部30の移動がキャンセルされるように各スラスター部のモータ57の回転数(及び回転方向)を演算し、当該演算した出力となるよう各スラスター部の動作制御を行う。
これにより、水流の影響を抑制しつつ、水流が無い場合と同様に本体部30を水中で所望の向きに移動させることが可能となる。
よって、水流がある所で本体部30を用いる場合でも、支持棒70を把持する第1オペレータ121に大きな負担がかからないようにできる。
【0058】
なお、ボート110で目的の撮影対象物60の近傍にアクセスできない場合は、本体部30から支持棒70を取り外し、本体部30を自泳式として本体部30を目的地まで移動させて、画像を撮影することもできる。
【0059】
以上のような実施形態によれば、水中撮影装置100の本体部30は、支持体20に固定的に設けられていて後方を向いており本体部30を撮影対象物60側に付勢する付勢スラスター51と、支持体20に固定的に設けられていて左方向成分を持つ方向を向いている左向きスラスター52と、支持体20に固定的に設けられていて右方向成分を持つ方向を向いている右向きスラスター53と、を備えている。
よって、本体部30がより高い自由度で移動することが可能となり、例えば橋脚のような撮影対象物について、横方向(周方向)における複数箇所の撮影を容易に行うことができる。
【0060】
また、本体部30を支持する支持棒70が、本体部30の上端部に対して着脱可能に取り付けられているので、支持棒70を介して本体部30を支えながらカメラ10により撮影対象物60を撮影することが可能である一方で、本体部30から支持棒70を取り外し、本体部30を自泳式としてカメラ10により撮影対象物60を撮影することもできる。
【0061】
また、支持棒70は、繰出し操作による伸長と収納操作による短縮とが可能に構成されているので、支持棒70に対する繰り出し操作を行うことによって、本体部30を容易に所望の深さに沈めることができる。
【0062】
また、左向きスラスター52には、左上を向いている左上向きスラスター521と、左下を向いている左下向きスラスター522と、が含まれており、右向きスラスター53には、右上を向いている右上向きスラスター531と、右下を向いている右下向きスラスター532と、が含まれているので、本体部30の左右方向などへの移動をより安定的に行うことができる。
また、各スラスターの出力を調節することによって、本体部30の移動方向をより細かく制御することもできる。
更に、支持棒70が本体部30の上端部に取り付けられている場合に、本体部30に対する支持棒70の取付部である支持棒取付部31や架設板32と、左上向きスラスター521及び右上向きスラスター531とが干渉しないようにできる。
【0063】
また、左上向きスラスター521は、支持体20の左側上部に配置され、左下向きスラスター522は、支持体20の左側下部に配置され、右上向きスラスター531は、支持体20の右側上部に配置され、右下向きスラスター532は、支持体20の右側下部に配置され、付勢スラスター51には、左上向きスラスター521と左下向きスラスター522との間に配置されている第1付勢スラスター511と、右上向きスラスター531と右下向きスラスター532との間に配置されている第2付勢スラスター512と、が含まれている。
よって、各スラスターの配置が左右対称となっていることにより、本体部30の重量バランスが良好となり、本体部30の重心をなるべく動かさずに本体部30を左右方向等にスムーズに移動させることが可能となる。また、各スラスターの配置が上下対称となっていることによっても、本体部30の重量バランスが良好となり、本体部30の重心をなるべく動かさずに本体部30を上下方向等にスムーズに移動させることが可能となる。
【0064】
また、支持体20は、複数の棒状部の組み合わせにより構成された籠型であるため(特に図1図2参照)、支持体20を軽量化することができるとともに、支持体20が水流から受ける抵抗を抑制できる。また、支持体20が藻61などの付着物から受ける抵抗も抑制できる。
そして、支持体20の内側にカメラ10及びスラスター部50が配置されているので、カメラ10及びスラスター部50を支持体20によって保護することができる。
【0065】
また、支持体20は、環状に形成されていて撮影対象物60と対向して配置される前側環状部21と、環状に形成されていて前側環状部21の後方に前側環状部21と対向して配置されている後側環状部22と、前側環状部21と後側環状部22とを互いに連結している複数の連結部23と、を含んで構成されているので、前後方向における支持体20の重量バランスを良好にできる。
そして、前側環状部21において撮影対象物60と対向する部位の複数箇所にそれぞれ車輪41が設けられているので、カメラ10の視線方向が撮影対象物60を向いた状態で、本体部30が撮影対象物60に沿ってスムーズに移動することができる。
【0066】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)水中で撮影対象物を撮影する水中撮影装置であって、
視線方向が前方を向いていて前記撮影対象物を撮影するカメラと、前記カメラを支持する支持体と、を有する本体部と、
前記支持体において前記撮影対象物と対向する部位の複数箇所にそれぞれ設けられている複数の車輪と、
水を付勢する反力により前記本体部を移動させるスラスター部と、
を備え、
前記複数の車輪の各々は、上下方向に転動可能であるとともに、上下方向と前記視線方向とに対して直交する左右方向にも転動可能であり、
前記スラスター部は、
前記支持体に固定的に設けられていて後方を向いており前記本体部を前記撮影対象物側に付勢する付勢スラスターと、
前記支持体に固定的に設けられていて左方向成分を持つ方向を向いている左向きスラスターと、
前記支持体に固定的に設けられていて右方向成分を持つ方向を向いている右向きスラスターと、
を含んで構成されている水中撮影装置。
(2)前記本体部を支持する支持棒を備え、
前記支持棒の下端部が前記本体部の上端部に対して着脱可能に取り付けられている(1)に記載の水中撮影装置。
(3)前記本体部を支持する支持棒を備え、
前記支持棒の下端部が前記本体部の上端部に対して取り付けられており、
前記支持棒は、繰出し操作による伸長と収納操作による短縮とが可能に構成されている(1)又は(2)に記載の水中撮影装置。
(4)前記左向きスラスターには、左上を向いている左上向きスラスターと、左下を向いている左下向きスラスターと、が含まれており、
前記右向きスラスターには、右上を向いている右上向きスラスターと、右下を向いている右下向きスラスターと、が含まれている(1)から(3)のいずれか一項に記載の水中撮影装置。
(5)前記左上向きスラスターは、前記支持体の左側上部に配置され、
前記左下向きスラスターは、前記支持体の左側下部に配置され、
前記右上向きスラスターは、前記支持体の右側上部に配置され、
前記右下向きスラスターは、前記支持体の右側下部に配置され、
前記付勢スラスターには、前記左上向きスラスターと前記左下向きスラスターとの間に配置されている第1付勢スラスターと、前記右上向きスラスターと前記右下向きスラスターとの間に配置されている第2付勢スラスターと、が含まれている(4)に記載の水中撮影装置。
(6)前記支持体は、複数の棒状部の組み合わせにより構成された籠型であり、
前記支持体の内側に前記カメラ及び前記スラスター部が配置されている(1)から(5)のいずれか一項に記載の水中撮影装置。
(7)前記支持体は、
環状に形成されていて前記撮影対象物と対向して配置される前側環状部と、
環状に形成されていて、前記前側環状部の後方に、前記前側環状部と対向して配置されている後側環状部と、
前記前側環状部と前記後側環状部とを互いに連結している複数の連結部と、
を含んで構成されており、
前記前側環状部において前記撮影対象物と対向する部位の複数箇所にそれぞれ前記車輪が設けられている(6)に記載の水中撮影装置。
(8)前記支持体は、環状に形成されていて前記撮影対象物と対向して配置される前側環状部を含んで構成されており、
前記前側環状部において前記撮影対象物と対向する部位の複数箇所にそれぞれ前記車輪が設けられており、
当該水中撮影装置は、
前記カメラが密閉収容されている筐体を備え、
前記カメラの視線方向に位置する前記筐体の前面壁は、透明材により構成されているとともに、前記前側環状部と面一に配置されている(6)又は(7)に記載の水中撮影装置。
(9)当該水中撮影装置は、
前記カメラが密閉収容されている筐体と、
前記撮影対象物に光を照射する複数の照明部と、
を備え、
前記カメラの視線方向に位置する前記筐体の前面壁は、透明材により構成されており、
前記前面壁と前記複数の照明部とが、前記視線方向に対して直交する方向において並んで配置されている(1)から(8)のいずれか一項に記載の水中撮影装置。
(10)前記本体部が水流から受ける付勢力に応じて、前記水流による前記本体部の移動がキャンセルされるように前記スラスター部の出力を演算し、当該演算した出力となるよう前記スラスター部の動作制御を行う制御部を備える(1)から(9)のいずれか一項に記載の水中撮影装置。
【符号の説明】
【0067】
10 カメラ
11 筐体
12 前面壁
20 支持体
21 前側環状部
22 後側環状部
23 連結部
24 支持板
25、26、27 棒状体
30 本体部
31 支持棒取付部
32 架設板
40 キャスター
41 車輪
42 車輪保持部
50 スラスター部
51 付勢スラスター
511 第1付勢スラスター
512 第2付勢スラスター
52 左向きスラスター
521 左上向きスラスター
522 左下向きスラスター
53 右向きスラスター
531 右上向きスラスター
532 右下向きスラスター
55 スクリュー
56 フード
57 モータ
571 第1付勢スラスター駆動モータ
572 第2付勢スラスター駆動モータ
573 左上向きスラスター駆動モータ
574 左下向きスラスター駆動モータ
575 右上向きスラスター駆動モータ
576 右下向きスラスター駆動モータ
60 撮影対象物
61 藻
70 支持棒
71 第1部分
72 第2部分
73 第3部分
75 下端部
80 制御部
81 CPU
82 ROM
83 RAM
85 操作部
86 表示部
87 第1照明ユニット
88 第2照明ユニット
89 水流センサ
91 前側中央フロート
92 前側左フロート
93 前側右フロート
94 後側左フロート
95 後側右フロート
96 配線ボックス
100 水中撮影装置
110 ボート
121 第1オペレータ
122 第2オペレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13