(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】キャビネット
(51)【国際特許分類】
A47F 3/04 20060101AFI20220208BHJP
E05F 1/16 20060101ALI20220208BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
A47F3/04 E
E05F1/16 A
E05D15/06 119
E05D15/06 125A
(21)【出願番号】P 2017161959
(22)【出願日】2017-08-25
【審査請求日】2020-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】394016874
【氏名又は名称】河淳株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】土屋 達行
(72)【発明者】
【氏名】吉次 徹
(72)【発明者】
【氏名】横山 辰朗
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-206640(JP,A)
【文献】特開2013-249630(JP,A)
【文献】特開2016-148162(JP,A)
【文献】特開平10-317800(JP,A)
【文献】特開2017-082519(JP,A)
【文献】特開2008-023028(JP,A)
【文献】特開平10-317801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 3/00- 3/14
E05F 1/16
E05D15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉扉の上部を支持する上部ガイドレールを有し、前記上部ガイドレールよりも手前側にオフセットした位置に前記開閉扉が取り付けられるキャビネットであって、
前記開閉扉は引き戸であり、前記開閉扉の閉じ際に、前記開閉扉を閉じた位置まで強制的に移動させるクローザーを備え、
前記上部ガイドレール側には、前記クローザーが取り付けられ、
前記開閉扉側には、前記開閉扉がオフセットした状態で吊り下げられる扉体係合体が設けられ、
前記扉体係合体には、前記開閉扉がオフセットして吊り下げられた状態で前記クローザーに向けて突出し、前記クローザーに捕捉されて閉方向へと強制的に引き込まれる捕捉用突出片が設けられており、
前記上部ガイドレールには、前記開閉扉の開閉方向に沿って延在し、上下方向に間隔を空けて下レールと上レールとが設けられ、前記扉体係合体には、前記下レールと接触して転動し、前記上レールとは接触しない走行ローラーと、前記上レールと接触して転動し、前記下レールとは接触しない姿勢制御ローラーと、が設けられ
、
前記扉体係合体には、左右方向に間隔を空けて2つの前記走行ローラーが取り付けられ、2つの前記走行ローラーの間に前記姿勢制御ローラーが互いに隣り合って取り付けられていることを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記走行ローラーと前記姿勢制御ローラーは、前後方向に延びる回転軸によって回転自在に取り付けられ、垂直方向において、開閉方向と略直交する方向にずらして配置されていることを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記走行ローラーと前記姿勢制御ローラーは、前後方向に延びる回転軸によって回転自在に取り付けられ、水平方向において、開閉方向と略直交する方向にずらして配置されていることを特徴とする請求項1および請求項2に記載のキャビネット。
【請求項4】
前記姿勢制御ローラーを前記走行ローラーに対して傾けて取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセットした位置に取り付けられた開閉扉を開閉させて物品を収納するキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの食品店舗では、商品を取り出す開口部分を斜めに形成するとともに、下側に位置する棚部の棚面積を広く確保しつつ、その上側に位置する棚部の面積を下側の棚部よりも狭くした食品陳列棚(ショーケース)が使用されている。このような食品陳列棚では、利用者が上側の棚部に邪魔されずに、下側の棚部に置かれた商品を目視できたり、利用者が少し屈むだけでその下側の商品を取り出し易いという点で利便性がある。
【0003】
また、このような食品陳列棚では、衛生状態を保つために、斜めに形成された開口部分を覆うようにして傾斜扉が設けられることがある。この傾斜扉は、硝子などで平板状に形成されており、開口部分の傾斜に合わせて傾斜した状態で取り付けられる。また、この傾斜扉の上部には、上述した傾斜に合わせて斜めに取り付けられた上部ガイドレールが設けられている。傾斜扉は、本体部に取り付けられた状態で、上部ガイドレールから手前方向に斜め下側に延びており、上部ガイドレールに対して手前側にオフセットした(ずらした)位置にある。傾斜扉は、この上部ガイドレールに沿って傾斜したままの状態で開閉方向(開口を正面に見て左右方向)に移動できるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、開閉扉が傾斜してはいないが、開閉扉が上部ガイドレールよりも手前側にオフセットした位置に配置された食品陳列棚もある。例えば、特許文献2(特に
図3参照)に示すように、開閉扉の断面形状が上下を反転させた略L字形状に形成されたものがあり、開閉扉を本体部に取り付けた状態で、開閉扉が上部ガイドレールから手前側に略水平に延びるとともに、その手前側端部から略垂直に下がるように形成されている。このような食品陳列棚も、硝子越しに内部に陳列された商品を目視し易くすることができ、ディスプレイ効果が高いものとして知られている。
【0005】
一方、上部ガイドレールから略垂直に吊り下げる状態で(開閉扉がオフセットしていない状態で)取り付けられる一般的な開閉扉では、扉の閉じ際に扉を完全に閉じた状態まで強制的に移動させるクローザーの技術が知られている。このクローザーによれば、扉が半開きの状態で放置されることがなくなり、衛生、防塵対策として利用されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-206640号公報
【文献】特開2009-131435号公報
【文献】特開2013-249630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した食品陳列棚では、埃を防ぐという衛生的な面から、扉が半開きの状態のままで放置されることは好ましくない。しかしながら、従来において、このオフセットした位置にある開閉扉をクローザーで強制的に閉じようとする食品陳列棚はなかった。
【0008】
その理由としては、扉の上部を受けるガイドレールには、オフセットした開閉扉の重心位置に向けて斜め下側方向に荷重が作用することにある。例えば、特許文献1のように傾斜扉に合わせて斜めに取り付けられた上部ガイドレール内にクローザーを設けると、斜め下側方向に作用する荷重を上部ガイドレール内で斜めに受けることになり、クローザーがスムーズに動作しないためである。
【0009】
また、特許文献2のように開閉扉を手前側にオフセットして設ける場合にも、特許文献1と同様に、上部ガイドレール内にクローザーを設けると、斜め下側方向に作用する荷重を上部ガイドレール内で斜めに受けることになり、同様の課題が生じる。
【0010】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、オフセットした位置にある開閉扉用のクローザーを設けることができるキャビネットを提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述課題を解決するため、本発明は、開閉扉の上部を支持する上部ガイドレールを有し、前記上部ガイドレールよりも手前側にオフセットした位置に前記開閉扉が取り付けられるキャビネットであって、 前記開閉扉は引き戸であり、前記開閉扉の閉じ際に、前記開閉扉を閉じた位置まで強制的に移動させるクローザーを備え、前記上部ガイドレール側には、前記クローザーが取り付けられ、前記開閉扉側には、前記開閉扉がオフセットした状態で吊り下げられる扉体係合体が設けられ、前記扉体係合体には、前記開閉扉がオフセットして吊り下げられた状態で前記クローザーに向けて突出し、前記クローザーに捕捉されて閉方向へと強制的に引き込まれる捕捉用突出片が設けられており、前記上部ガイドレールには、前記開閉扉の開閉方向に沿って延在し、上下方向に間隔を空けて下レールと上レールとが設けられ、前記扉体係合体には、前記下レールと接触して転動し、前記上レールとは接触しない走行ローラーと、前記上レールと接触して転動し、前記下レールとは接触しない姿勢制御ローラーと、が設けられ、前記扉体係合体には、左右方向に間隔を空けて2つの前記走行ローラーが取り付けられ、2つの前記走行ローラーの間に前記姿勢制御ローラーが互いに隣り合って取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、前記走行ローラーと前記姿勢制御ローラーは、前後方向に延びる回転軸によって回転自在に取り付けられ、垂直方向において、開閉方向と略直交する方向にずらして配置されていてもよい。
また、前記走行ローラーと前記姿勢制御ローラーは、前後方向に延びる回転軸によって回転自在に取り付けられ、水平方向において、開閉方向と略直交する方向にずらして配置されていてもよい。
【0015】
また、前記姿勢制御ローラーを前記走行ローラーに対して傾けて取り付けることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るキャビネットでは、前記開閉扉の閉じ際に、前記開閉扉を閉じた位置まで強制的に移動させるクローザーを備えているので、開閉扉が半開きの状態のままで放置されることがなくなり、半開きの状態と比較して、キャビネット内に埃などが入り込み難くすることができる。特に、食料品売り場などの食品陳列棚に使用されるキャビネットでは、キャビネット内の衛生を保つことができることは有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る傾斜扉を有する食品陳列棚の全体を示す斜視図である。
【
図3】
図2の状態から傾斜扉を取り外した状態を示す断面図である。
【
図4】
図1のZ部の拡大図であって、化粧カバーを取り外した状態を示している。
【
図5】上部ガイドレールの部分を拡大して示す断面図である。
【
図8】扉体係合体にフック取付部材が取り付けられた状態を示す正面図である。
【
図10】クローザーを単体で斜め下側から見た斜視図である。
【
図11】上側ガイドレール内を走行する制御ローラーを示す拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る食品陳列棚1(キャビネット)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施の形態では、開閉扉3が上部ガイドレール10よりも手前側にオフセットした位置にある一例として、傾斜した開口部を覆うようにして取り付けられた傾斜扉を有するキャビネットについて説明する。
【0019】
ここで、本明細書でいう「オフセットした位置に開閉扉が取り付けられるキャビネット」とは、一般的な引き戸のように上部ガイドレールの真下に開閉扉が吊り下げられるものとは異なり、上部ガイドレールよりも手前側で開閉扉が吊り下げられるタイプのキャビネットをいうものとする。より詳細には、開閉扉の重心が上部ガイドレールよりも手前側に位置し、吊り下げられた状態で上部ガイドレールに斜め方向の荷重が作用するタイプのキャビネットである。
【0020】
図1は、傾斜扉を有する食品陳列棚の全体を示す斜視図である。また、
図2は、
図1のA-A断面図、
図3は、
図2の状態から傾斜扉を取り外した状態を示す断面図である。さらに、
図4は、
図1のZ部の拡大図、
図5は、上部ガイドレールの部分を拡大して示す断面図、
図6は、
図3のY部の拡大図、
図7は、
図2のX部の拡大図である。
なお、本実施の形態で使用する前後、左右、上下方向とは、
図1で示す方向をいうものとする。また、開閉扉の開閉方向とは、左右方向をいうものとする。
【0021】
食品陳列棚1は、
図1~
図3に示すように、食品陳列棚本体2の前側に傾斜した開口部が設けられており、この開口部を覆うようにして2枚の傾斜扉3(
図1の右側に位置する前側扉3a、左側に位置する後側扉3b)が取り付けられている。より詳細には、食品陳列棚本体2の前側部分は、下側から上側に向かうに従い、後側へ斜めに傾斜するように形成されており、この傾斜面が開口している。また、傾斜扉3も同様に、食品陳列棚本体2に取り付けられた状態で、傾斜扉3の上側が下側よりも後側に位置するように傾斜した状態になる。
なお、これらの前側扉3aおよび後側扉3bは、いわゆる引き戸タイプの扉であり、左右方向に移動させることでそれぞれ開閉できるようになっている。また、この傾斜扉3はガラスなどの透明な材質で平板状に形成されており、閉じた状態で食品陳列棚本体2の内部が見えるようになっている。
【0022】
食品陳列棚本体2の内部には、商品を陳列するための棚部4a、4bが設けられている。この下側の棚部4aは、上側の棚部4bよりも手前側まで延びており、下側の棚部4aの棚面積を広く確保している。これにより、上側の棚部4bに邪魔されることなく、下側の棚部4aに陳列される商品を出し入れし易くしている。
【0023】
また、食品陳列棚本体2の天井部5には、
図1および
図4に示すように、天井部5の前側に、傾斜扉3の上部を支持するための上部ガイドレール10が取り付けられている。この上部ガイドレール10は、食品陳列棚1の左右方向の全長に亘って設けられており、この上部ガイドレール10に沿って傾斜扉3が左右方向に移動する。
【0024】
上部ガイドレール10は、
図5および
図6に示すように、下側が開口する断面略コ字形状のガイドレール本体11と、このガイドレール本体11から後側に向けて延びる取付突部11aと、このガイドレール本体11から前側に向けて延びる化粧カバー固定用突部11bとで構成されている。
【0025】
ガイドレール本体11には、断面略コ字形状の内側に向けて略水平に延びる下レール12および上レール13が設けられている。
下レール12は、ガイドレール本体11の後側面部11cおよび前側面部11dのそれぞれの下端からガイドレール本体11の内側に向けて延びており、これらの先端部同士が離間するように隙間が設けられている。
【0026】
上レール13は、下レール12の上側を覆うようにして、ガイドレール本体11の後側面部11cおよび前側面部11dのそれぞれの上下方向のほぼ中央の位置から内側に向けて延びており、下レール12と同様に、これらの先端部同士が離間するように隙間が設けられている。なお、下レール12および上レール13のそれぞれの隙間には、詳細は後述する扉体係合体30が挿入されるようになる。
【0027】
下レール12の上面には、下方向に円弧状に凹む態様で走行ローラー転動面12aが形成されている。一方、上レール13の下面には、上方向に円弧状に凹む姿勢制御ローラー転動面13aが形成されている。
【0028】
上レール13の上側には、この上レール13の上面によって略矩形状に画成されたクローザー取付部14が設けられており、このクローザー取付部14には、詳細は後述するクローザー60が左右方向の所定の位置に取り付けられる。
【0029】
取付突部11aは、
図6に示すように、その下面が食品陳列棚本体2の天井部5の上面に重ねられ、上側からねじ(図示せず)を締結することによって上部ガイドレール10が天井部5に固定される。また、化粧カバー20は、その後端部に設けられたフック部21aが取付突部11aの受け部に引っ掛けられ、前側下部に設けられた係止部21bが化粧カバー固定用突部11bと係合することによって着脱自在に取り付けられる。
【0030】
上部ガイドレール10の内部には、扉体係合体30、70が上部ガイドレール10の端部から挿入される。この扉体係合体30は、傾斜扉3の前側扉3aを下側に吊り下げるようにするためのものであり、扉体係合体70は、傾斜扉3の後側扉3bを下側に吊り下げるようにするためのものである。これらの扉体係合体30、70は、詳細は後述する走行ローラー34および姿勢制御ローラー35が下レール12および上レール13の転動面を転動することによって、上部ガイドレール10の左右方向に自由に移動できるようになっている。
【0031】
この扉体係合体30、70は、詳細は後述する回転軸35aの前後方向の軸長さを異ならせ、姿勢制御ローラー35の前後方向の取付位置を異ならせたものであり、使用される部材は全て同じである。より詳細には、
図5および
図6に示すように、前側の扉体係合体30(上部ガイドレール10の内部の前側を走行する)を水平方向に180度回転させ、姿勢制御ローラー35の前後方向の位置を変更したものが後側の扉体係合体70(上部ガイドレール10の内部の後側を走行する)である。そのため、以下の説明では、前側の扉体係合体30について説明し、姿勢制御ローラー35の部分以外についての後側の扉体係合体70の説明を省略する。また、扉体係合体30、70で使用される部品の機能は全て同じであるため、符号を同一にして説明する。
【0032】
図8は、扉体係合体30にフック取付部材40が取り付けられた状態を示す正面図、
図9は、
図8の平面図である。なお、
図8および
図9で示す戸開側、戸閉側の方向は、前側扉3aの開閉方向をいうものとする。
【0033】
扉体係合体30は、板金を略L字状に折り曲げた本体部31を備えており、この本体部31は、上下方向に延びる起立部31aと、前後方向に延びる水平部31bとで構成されている。
【0034】
起立部31aの左側には、上端部から上方向に突出する捕捉用突出片32が設けられている。この捕捉用突出片32の上端には、その外周を覆うようにしてゴム等の緩衝部材33が取り付けられている。
【0035】
また、起立部31aには、起立部31aの前後方向の前側に突出するように2つの回転軸34aが左右方向に間隔を空けて設けられている。これらの回転軸34aには、走行ローラー34が起立した状態(上下方向を向いた状態)で回転自在に取り付けられている。これらの回転軸34aおよび走行ローラー34は、上下方向における高さ位置が同じであり(
図8参照)、前後方向における位置も同じに(
図9参照)なるように取り付けられている。
【0036】
さらに、起立部31aには、左右2つの走行ローラーの間に、起立部31aの前後方向の前側に突出する回転軸35aが設けられている。この回転軸35aには、姿勢制御ローラー35が起立した状態で回転自在に取り付けられている。
【0037】
この回転軸35aおよび姿勢制御ローラー35は、
図8に示すように、上下方向における高さ位置(垂直方向において、前側扉3aの開閉方向と略直交する方向)が走行ローラー34よりもL1寸法だけ高くなるようにずらして配置されている。また、この回転軸35aおよび姿勢制御ローラー35は、
図9に示すように、前後方向における位置(水平方向において、前側扉3aの開閉方向と略直交する方向)が走行ローラー34よりもL2寸法だけ後側に(
図9参照)なるようにずらして配置されている。
【0038】
ここで、後側の扉体係合体70の姿勢制御ローラー35は、
図9で示す前後方向における位置が走行ローラー34よりもL2寸法だけ後側になるようにずらして配置されている。すなわち、扉体係合体70が上部ガイドレール10内に組み込まれた状態では、姿勢制御ローラー35は、前側の扉体係合体30の姿勢制御ローラー35と同様に、走行ローラー34よりも後側に位置するようになる。
【0039】
これらの走行ローラー34および姿勢制御ローラー35の外周形状は、
図9に示すように、中央部が膨らんだ円弧状に形成されている。
【0040】
また、走行ローラー34および姿勢制御ローラー35の直径は、下レール12と上レール13との間の上下方向における距離よりも小さく形成されている。より詳細には、下レール12と上レール13との間の距離は、走行ローラー34および姿勢制御ローラー35の直径に上述したL1寸法の長さを足した寸法になるようにしてある。
【0041】
水平部31bには、その下面から下方向に延びる取付ピン36が取り付けられている。この取付ピン36には、フック取り付け部材40が着脱自在に取り付けられている。また、このフック取り付け部材40は、
図5および
図6に示すように、フック部材50が取り付けられる。
【0042】
フック部材50は、
図1および
図4に示すように、前側扉3aの左右方向の長さとほぼ等しい長さを有している。また。フック部材50は、
図5および
図6に示すように、その下側に断面が略U字状のフック51が設けられている。さらに、このフック51の先端部には、断面形状が円形の円柱部52が形成されている。
【0043】
一方、前側扉3aの上部には、
図6に示すように、扉取付部材6が設けられている。この扉取付部材6には、その上部に円柱部52と係合する係合部6aが形成されている。この係合部6aは、円柱部52の直径とほぼ等しい内径を有する円弧状に形成されている。このような構造により、係合部6aを円柱部52に嵌め込むようにして係合させた状態で、前側扉3aを円柱部52の周方向に回転することができ、
図1および
図3に示すように、食品陳列棚1の開口部の傾斜に合わせて前側扉3aを傾斜した状態で取り付けることができる。また、前側扉3aを円柱部52の周方向に回転できるようにすることで、食品陳列棚1の開口部の傾斜角度が様々に異なる場合であっても、本構造で対応することができる。
【0044】
このように、前側扉3aは、上部ガイドレール10を走行する扉体係合体30に、フック取付部材40、フック部材50を介して、様々な角度に対応でき、傾斜した状態で吊り下げられて取り付けられることになる。
【0045】
なお、傾斜扉3の下側部分には、
図7に示すように、下側ローラー7が設けられている。この下側ローラー7は、棚部4aの前側先端部に配置された下側ガイドレール8の転動面に斜めに置かれており、前側扉3aを開閉させるときに下側ガイドレール8に沿って左右方向に自由に移動できるようになっている。
【0046】
一方、食品陳列棚本体2側である上部ガイドレール10のクローザー取付部14には、
図10に示すクローザー60が左右方向の所定の位置に取り付けられている。このクローザー60には、略直方体形状の本体部61の下側に、戸開側の端部から戸閉側へ向けて延びる係合体移動長穴62が形成されている。この係合体移動長穴62には、前側扉3aの閉じ際で、上述した扉体係合体30の捕捉用突出片32が入り込み(
図5および
図6参照)、本体部61内に設けられた係止体63に係合・捕捉される。この係止体63は、本体部61内に設けられた引き込み用ばね部材(図示せず)や、緩衝用ダンパー(図示せず)によって捕捉用突出片32をゆっくりと戸閉側へと強制的に引き込むように動作する。これにより、扉体係合体30に吊り下げられた前側扉3aが完全に閉じた位置まで強制的に移動するようになる。
【0047】
なお、上述したクローザー60は、開閉扉が略垂直に取り付けられる一般的な引き戸装置に用いられるものと同一のものである。このクローザー60の内部構造や取付位置、機能・作用については既知の技術であるため(例えば、特許文献2参照)、これらの詳細な説明については省略する。
【0048】
次に、本発明の実施の形態に係る傾斜扉を有する食品陳列棚1の動作・作用について詳細に説明する。
図11は、上側ガイドレール内を走行する制御ローラーを示す拡大図である。なお、前側扉3aと後側扉3bの動作・作用は同じであるため、以下の説明では前側扉3aについて説明する。
【0049】
図6に示すように、前側扉3aの係合部6aをフック部材50の円柱部52に係合させて、前側扉3aを傾斜した状態で取り付けた場合、前側扉3aの重量によって円柱部52が前側扉3aの傾斜に沿って前斜め下側に引っ張られる力が作用する。これにより、円柱部52の上側に位置する扉体係合体30には、後側に倒れようとする方向に時計回りの回転モーメントが作用することになる。この回転モーメントは、捕捉用突出片32の位置を後側に傾かせてずらすことになり、クローザー60の係止体63が捕捉用突出片32を正確に捕捉する動作を阻害することになる。また、扉体係合体30が大きく傾くと、走行ローラー34が下レール12と上レール13の両方に接触してしまい、前側扉3aの開閉動作がロックされてしまうこともある。
【0050】
この回転モーメントを受けるために、扉体係合体30には、走行ローラー34とは別に、姿勢制御ローラー35が設けられている。より詳細には、走行ローラー34は、前側扉3aの開閉動作時に、上部ガイドレール10の下レール12と接触し、走行ローラー転動面12a上を転動する。また、この走行ローラー34は、走行中に上レール13と隙間が空いており、接触することはない。
【0051】
これに対し、姿勢制御ローラー35は、
図11に示すように、走行ローラー34とは異なり、前側扉3aの開閉動作時に、上部ガイドレール10の上レール13と接触し、姿勢制御ローラー転動面13a上を転動する。また、この姿勢制御ローラー35は、走行中に下レール12と隙間Sが空いており、接触することはない。
【0052】
走行ローラー34と姿勢制御ローラー35は、それぞれ下レール12および上レール13と接触して、上述した回転モーメントに抗するようになり、扉体係合体30が後側に傾くのをより小さくするように作用する。これにより、捕捉用突出片32は、吊り下げられる前側扉3aの傾斜角度や重量にかかわらず、クローザー60の係合体移動長穴62に向けて常に上方向に向けて突出するようになり、クローザー60の係止体63が捕捉用突出片32を正確に捕捉するようになる。
【0053】
また、姿勢制御ローラー35は、走行ローラー34に対して後方向にL2寸法だけずらして配置することで、姿勢制御ローラー35がより大きな回転モーメントを受けて踏ん張るようになる。そのため、ずらさずに直線的に配置した場合と比較して、扉体係合体30が後側に傾き難くなる。これらにより、クローザー60の係止体63が捕捉用突出片32を正確に捕捉できるようにしている。
【0054】
さらには、扉体係合体30、70は、
図5に示すように、傾斜扉3を取り付ける前の状態で、全体を前側に傾けるようにして取り付けられている。そして、傾斜扉3を取り付けて上述した回転モーメントが作用したときに、捕捉用突出片32がほぼ垂直になるようにしている。
【0055】
本発明の実施の形態に係る傾斜扉を有する食品陳列棚1によれば、傾斜扉3(前側扉3a、後側扉3b)の閉じ際に、傾斜扉3を閉じた位置まで強制的に移動させるクローザーを備えているので、傾斜扉3が半開きの状態のままで放置されることがなくなり、半開きの状態と比較して、食品陳列棚1内に埃などが入り込み難くすることができる。特に、食料品売り場などの食品陳列棚1に使用される場合には、内部の衛生を保つことができることは有用である。
【0056】
また、食品陳列棚本体2側には、クローザー60が取り付けられ、傾斜扉3側には、傾斜扉3が傾斜した状態で吊り下げられる扉体係合体30が設けられ、扉体係合体30には、傾斜扉3が傾斜して吊り下げられた状態でクローザー60に向けて突出し、クローザー60の係止体63に捕捉されて閉方向へと強制的に引き込まれる捕捉用突出片32が設けられているので、上方に突出する捕捉用突出片32を、係止体63によって確実に捕捉することができる。これにより、傾斜扉3が種々の角度で取り付けられるものであっても、または、一般的な引き戸装置のように扉がほぼ垂直に吊り下げられるものであっても、同一のクローザー60を使用することができる。そのため、傾斜扉3用にクローザーを改造したり、傾斜扉3の自重によって2方向に作用する荷重を斜めに受けるような複雑な構造にする必要がない。
【0057】
さらに、食品陳列棚本体2側に傾斜扉3の開閉方向に沿って延びる上部ガイドレール10が設けられ、上部ガイドレール10には、上下方向に間隔を空けて下レール12と上レール13とが設けられ、扉体係合体30には、下レール12と接触して転動し、上レール13とは接触しない走行ローラー34と、上レール13と接触して転動し、下レール12とは接触しない姿勢制御ローラー35とが設けられているので、傾斜扉3の自重によって生じる回転モーメントをこれらのローラー34、35で受けることができる。これにより、扉体係合体30が後側に傾き難くすることができるので、扉体係合体30の捕捉用突出片32の突出する向きを、吊り下げられる傾斜扉3の傾斜角度や自重に関係なく常に一定に保つことができる。そのため、捕捉用突出片32を、係止体63によって確実に捕捉することができ、クローザー60をスムーズに動作させることができる。
【0058】
また、動作をスムーズにするために、水平方向と重力方向の2つの荷重を受けるための2方向のローラーをそれぞれ配置することも考えられるが、本構造では、このような複雑な構造にはならず、より簡素にすることができる。そのため、キャビネット1の製造コストを抑えることができる。
さらに、向きの異なる2方向のローラーを上部ガイドレール内に設けたり、或いは、斜めに設定したローラーを上部ガイドレール内に納めたりすると、上部ガイドレールの外形寸法が必要以上に大きくなってしまい、食品陳列棚の上側部分が前側に大きく突出してしまうなど、意匠性を損なうことになるが、本構成によれば、これらの問題も生じない。
さらにまた、傾斜扉3の傾斜角度は食品陳列棚の種類によって様々であるが、走行ローラー34と姿勢制御ローラー35で回転モーメントを受けることにより、調整等の手間もなく対応することができる。
【0059】
さらにまた、走行ローラー34と姿勢制御ローラー35は、前後方向にL2寸法だけずらして配置されているので、ずらさずに配置した場合と比較して、扉体係合体30が後側に傾き難くすることができる。
【0060】
また、走行ローラー34および姿勢制御ローラー35の外周形状を、中央部が膨らんだ円弧状に形成し、下レール12の走行ローラー転動面12aおよび上レール13の姿勢制御ローラー転動面13aを、ローラー34、35の円弧状の形状にあわせて凹ませているので、上述した回転モーメントが発生したとしても、ローラー34、35の外周部と転動面12a、13aとが円弧で接触し、それぞれに無理な力が発生しない。そのため、傾斜扉3を開閉するときに傾斜扉3がせることなく、スムーズに開閉することができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態に係る傾斜扉を有するキャビネットについて述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0062】
例えば、本実施の形態では、上部ガイドレール10よりも手前側にオフセットした位置に開閉扉が取り付けられるキャビネットの一例として、傾斜した開口部を覆うようにして取り付けられた傾斜扉3を有するキャビネット1について説明したが、これに限定されない。例えば、特許文献2で開示されているような略L字形状に形成された開閉扉を有するキャビネットであっても、開閉扉がオフセットした位置に取り付けられるものであれば同様の課題が発生する。そのため、本実施例に記載した構造を採用することにより、本実施例と同様にクローザー60をスムーズに動作させることができる。
【0063】
また、本実施の形態で説明した上部ガイドレール10では、クローザー60を取り付けるためのクローザー取付部14を上レール13の上側に設け、扉体係合体30の捕捉用突出片32を上方に向けて突出させているが、これに限定されない。例えば、クローザー取付部14を上部ガイドレール10の後側(奥側)に形成し、このクローザー取付部にクローザー60の係合体移動長穴62が前側を向くようにして取り付けることもできる。この場合、捕捉用突出片32は、後側に向けて(クローザー60に向けて)突出するように折り曲げておく。このようにしても、クローザー60は捕捉用突出片32を確実に捕捉し、開閉扉を閉方向にスムーズに移動させることができる。これにより、上部ガイドレールの上下方向の寸法を小さくし、キャビネットの外側から見て上部ガイドレールをより目立たなくすることができる。
【0064】
さらに、走行ローラー34を2つ、姿勢制御ローラー35を1つで構成しているが、この個数に限定するものではない。例えば、前側扉3aの重量や大きさ等によって走行ローラー34や姿勢制御ローラー35の取付個数を増やしたり、或いは少なくして構成することもできる。
【0065】
また、本実施の形態では、2つの走行ローラー34の間に姿勢制御ローラー35を配置しているが、他の配置であっても構わない。例えば、走行ローラー34の左右方向外側の位置に姿勢制御ローラー35を配置してもよい。また、2つの走行ローラー34の間に2つ(或いは2つ以上)の姿勢制御ローラー35を配置してもよい。
【0066】
さらには、本実施の形態では、走行ローラー34に対して姿勢制御ローラー35を後側にずらして配置しているが、モーメントの作用する方向に合わせて前側にずらして配置することもできる。これによっても、走行ローラー34と姿勢制御ローラー35とを走行方向に直線上に配置する場合と比較して、扉体係合体30を傾き難くすることができる。
【0067】
また、本実施の形態では、走行ローラー34および姿勢制御ローラー35が取り付けられる回転軸34a、35aが前後方向の前側に突出するように設けられ、走行ローラー34および姿勢制御ローラー35がそれぞれ起立した状態(上下方向を向いた状態)で回転自在に取り付けられているが、これに限定されない。例えば、走行ローラー34を起立した状態のまま(本実施例で開示した状態)にし、姿勢制御ローラー35の回転軸35aを走行ローラー34の回転軸34aに対して90度傾けて取り付け、姿勢制御ローラー34が水平方向を向いた状態(前後方向を向いた状態)で回転自在に取り付けることもできる。この場合、姿勢制御ローラー35が接触して転動するための上レール13も90度傾けて設ける必要がある。この場合であっても、姿勢制御ローラー35は、上レール13とだけ接触し、この姿勢制御ローラー35で回転モーメントを受けることができる。
【0068】
また、姿勢制御ローラー34を走行ローラー35に対して90度以外の角度に傾けて取り付けるようにしてもよい。さらには、走行ローラー34および姿勢制御ローラー35を前後方向または水平方向以外に向けて取り付けてもよく、この状態で、姿勢制御ローラー34を走行ローラー35に対して角度を付けて取り付けるようにしてもよい。
【0069】
一方、本実施の形態では、キャビネットの一例として食品陳列棚1について説明しているが、扉がオフセットした位置に取り付けられて使用されるものであれば、書類棚、保管棚など、種々のものに使用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 食品陳列棚(キャビネット)
2 食品陳列棚本体(キャビネット本体)
3 傾斜扉(開閉扉)
3a 前側扉
3b 後側扉
4a、4b 棚部
5 天井板
6 扉取付部材
6a 係合部
7 下側ローラー
8 下側ガイドレール
10 上部ガイドレール
11 ガイドレール本体
11a 取付突部
11b 化粧カバー固定用突部
12 下レール
12a 走行ローラー転動面
13a 姿勢制御ローラー転動面
13 上レール
14 クローザー取付部
20 化粧カバー
21a フック部
21b 係止部
30、70 扉体係合体
31 本体部
31a 起立部
31b 水平部
32 捕捉用突出片
33 緩衝部材
34 走行ローラー
34a 回転軸
35 姿勢制御ローラー
35a 回転軸
36 取付ピン
40 フック取付部材
50 フック部材
51 フック
52 円柱部
60 クローザー
61 本体部
62 係合体移動長穴
63 係止体
L1 上下方向のずれ量
L2 前後方向のずれ量