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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/04 20060101AFI20220208BHJP
   F04B 9/00 20060101ALI20220208BHJP
   F04B 43/02 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
F04B43/04 B
F04B9/00 B
F04B43/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017245263
(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2019112970
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000175490
【氏名又は名称】サンテスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉原 洋
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武史
(72)【発明者】
【氏名】島田 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 晋一
(72)【発明者】
【氏名】京和泉 宏三
(72)【発明者】
【氏名】中川 晋一朗
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-133704(JP,A)
【文献】特開2010-163929(JP,A)
【文献】特開2017-066318(JP,A)
【文献】特開2004-060632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/04
F04B 9/00
F04B 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が吸入される吸入口及び前記流体が排出される排出口の両方と連通し且つ前記流体を収容可能な流体室と、前記流体室と隣接する収容室と、前記流体室と前記収容室との境界に位置する環状のシール面とを有するケースと、
前記収容室に収容され、誘電エラストマー製の誘電層と、前記誘電層の中央部を挟んで対向する一対の導電エラストマー製の電極層とを有するアクチュエータと、
前記吸入口を開閉可能な第1弁と、
前記排出口を開閉可能な第2弁と、
を備え、
前記アクチュエータにおける前記流体室を臨む面は、前記アクチュエータの少なくとも一部の中央部を含み且つ前記流体室を形成する壁面の一部を形成する流体室形成面とされ、
前記アクチュエータにおける前記流体室形成面の反対側の面は、前記ケースの内面に固定され、
前記アクチュエータにおける前記流体室形成面側の周縁部は、前記シール面と共同して前記流体室と前記収容室との間をシールしており、
前記ケースは、
前記流体室を画定する流体室ケースと、
前記収容室を画定する収容室ケースと、
前記流体室ケースに内方向に突出して固定された環状のシール部材と、
を備え、
前記シール面は、前記シール部材における前記収容室側の面によって構成されていることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記流体室形成面は、前記誘電層を形成する材料よりも前記流体に対する透過性が低い材料によって形成された保護層によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記誘電層は、架橋されたポリロタキサンによって形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記第1弁及び前記第2弁は、前記流体室の圧力変化により弾性変形することによって開閉動作する弾性体によって構成されていることを特徴とする請求項1~請求項のうちいずれか一項に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電エラストマー製のアクチュエータを利用したポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のポンプとして、例えば特許文献1に示すようなダイヤフラム式のポンプが知られている。こうしたポンプは、筐体と、筐体内を第1室と第2室とに二分するダイヤフラムと、ダイヤフラムの中央部と当該中央部に対向する第2室の内壁とを連結するスプリングとを備えている。ダイヤフラムは、印加される電圧及び電流の変動により厚さ方向の収縮及び伸張に伴う面積の拡大及び縮小を可能としたフィルム型の電歪伸縮ポリマー(アクチュエータ)によって構成されている。
【0003】
第1室には、ダイヤフラムに沿って対向配置された吸入口及び排出口が形成されている。吸入口には、外部から第1室への流体の進入を許容し、且つ第1室から外部への流体の流出を妨げる吸入用弁体が配置されている。一方、排出口には、外部から第1室への流体の進入を妨げ、且つ第1室から外部への流体の流出を許容する排出用弁体が配置されている。
【0004】
そして、ダイヤフラムを構成する電歪伸縮ポリマーへの電圧または電流の印加と停止とを繰り返すことで、電歪伸縮ポリマーの伸縮力及びスプリングの付勢力によってダイヤフラムが第1室と第2室との間で往復屈曲運動する。これにより、外部から吸入口を介した第1室への流体の供給と、第1室から排出口を介した外部への流体の排出とが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-286162号公報(図6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のようなポンプでは、ダイヤフラムの周縁部が筐体に支持されるとともにダイヤフラムの中央部が第2室の内壁にスプリングを介して連結されているが、ダイヤフラムにおける周縁部と中央部との間の部分は筐体から離れている。このため、流体の粘性が高い場合や吐出圧力が高い場合、ダイヤフラムが第1室の流体を押圧する際に流体からの反力を受けて伸びてしまう。この結果、ダイヤフラムが所望の動作をしなくなるので、排出口からの流体の排出が不安定になるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、流体の粘性に関係なく排出口から流体を安定して排出することができるポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するポンプは、流体が吸入される吸入口及び前記流体が排出される排出口の両方と連通し且つ前記流体を収容可能な流体室と、前記流体室と隣接する収容室と、前記流体室と前記収容室との境界に位置する環状のシール面とを有するケースと、前記収容室に収容され、誘電エラストマー製の誘電層と、前記誘電層の中央部を挟んで対向する一対の導電エラストマー製の電極層とを有するアクチュエータと、前記吸入口を開閉可能な第1弁と、前記排出口を開閉可能な第2弁と、を備え、前記アクチュエータにおける前記流体室を臨む面は、前記アクチュエータの少なくとも一部の中央部を含み且つ前記流体室を形成する壁面の一部を形成する流体室形成面とされ、前記アクチュエータにおける前記流体室形成面の反対側の面は、前記ケースの内面に固定され、前記アクチュエータにおける前記流体室形成面側の周縁部は、前記シール面と共同して前記流体室と前記収容室との間をシールしていることを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、アクチュエータに電圧を印加すると、流体室形成面がフラットな状態から窪むように速やかに弾性変形し、アクチュエータへの電圧の印加を止めると、流体室形成面が弾性変形前の元のフラットな状態に速やかに復元される。この場合、アクチュエータにおける流体室形成面の反対側の面がケースの内面に固定されているため、流体の粘性が高い場合でも、アクチュエータの流体室形成面は、窪むように弾性変形した状態から弾性変形前の元のフラットな状態に安定して復元される。このため、流体の粘性が高い場合でも流体室形成面によって流体室の流体を円滑に加圧できるので、流体の粘性に関係なく排出口から流体を安定して排出することができる。
【0010】
上記ポンプにおいて、前記ケースは、前記流体室を画定する流体室ケースと、前記収容室を画定する収容室ケースと、前記流体室ケースに内方向に突出して固定された環状のシール部材と、を備え、前記シール面は、前記シール部材における前記収容室側の面によって構成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、流体室を広くすることができるので、第1弁や第2弁を流体室内に組み込みやすくすることができる。
上記ポンプにおいて、前記流体室形成面は、前記誘電層を形成する材料よりも前記流体に対する透過性が低い材料によって形成された保護層によって形成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、流体室形成面が保護層によって形成されているため、流体に対する耐性が低い材料でも、誘電層を形成する材料として使用できる。
上記ポンプにおいて、前記誘電層は、架橋されたポリロタキサンによって形成されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、誘電層を例えばシリコーンエラストマーによって形成した場合に比べて誘電率が高いため、印加電圧に対するアクチュエータの伸縮率を高くできる。このため、アクチュエータへの印加電圧が小さい場合でも、比較的多量の流体を移送できる。
【0014】
上記ポンプにおいて、前記第1弁及び前記第2弁は、前記流体室の圧力変化により弾性変形することによって開閉動作する弾性体によって構成されていることが好ましい。
この構成によれば、弁体の開閉によって発生する音を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、流体の粘性に関係なく排出口から流体を安定して排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態のポンプを示す斜視図。
図2図1の断面図。
図3】ポンプにおけるアクチュエータの断面模式図。
図4】ポンプの吸入口から流体が吸入されるときの状態を示す断面図。
図5】ポンプの排出口から流体が排出されるときの状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、ポンプの一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、ポンプ11は、略直方体状をなすケース12を備えている。ケース12は、収容室20を画定する収容室ケースの一例としての第1ケース13と、第1ケース13上に積層された第2ケース14と、第2ケース14上に積層された第3ケース15とに分割されている。第1ケース13、第2ケース14、及び第3ケース15は、これらの四隅においてボルト16によって一体に連結されている。
【0018】
本実施形態では、第2ケース14と第3ケース15とはほぼ同じ厚さになっており、第1ケース13は第2ケース14または第3ケース15の約4倍の厚さになっている。第2ケース14及び第3ケース15は、弁構造を内部に有する流体室19を画定する流体室ケースを構成している。
【0019】
第3ケース15は、流体室19の上部を画定し、流体が吸入される円筒状の吸入口17と、流体が排出される円筒状の排出口18とが対をなすように離れて形成されている。第2ケース14は、流体室19の側部を画定し、吸入口17及び排出口18の両方と連通し且つ吸入口17から吸入された流体を収容可能な流体室19が形成されている。第1ケース13には、流体室19と隣接し且つ連通する収容室20が形成されている。
【0020】
収容室20は、第1ケース13内のほぼ全体にわたって形成されている。第1ケース13内の底面には、当該底面全体を覆うように剛性のある底板21が設けられている。底板21の中央部には、円柱状のアクチュエータ22が全面接着により固定されている。アクチュエータ22の高さ(軸方向の長さ)は、収容室20の深さとほぼ同じになっている。すなわち、アクチュエータ22は、収容室20の中央部に収容されている。したがって、アクチュエータ22の周面と第1ケース13の内側面との間には、空間23が形成される。第1ケース13の一側壁には、第1ケース13の内外を連通する孔24が形成されている。すなわち、空間23は、孔24を介して大気開放されている。
【0021】
図2に示すように、アクチュエータ22における流体室19を臨む面は、アクチュエータ22の少なくとも一部の中央部を含み且つ流体室19を形成する壁面の一部を形成するフラットな流体室形成面22aとされている。流体室形成面22aは、保護層25で形成されている。保護層25は、流体室19の流体から後述する第1対向電極層32、第2対向電極層33、及び誘電層34などを保護する。アクチュエータ22における流体室形成面22aの反対側の面は、底板21を介して第1ケース13内の底面(内面)に固定されている。
【0022】
ケース12は、流体室19を画定する流体室ケースを構成する第2ケース14及び第3ケース15と、収容室20を画定する収容室ケースを構成する第1ケース13と、第2ケース14に内方向に突出して固定された環状のシール部材26とを備えている。シール部材26における収容室20側の面は、流体室19と収容室20との境界に位置する環状のシール面26aとされている。すなわち、シール面26aは、シール部材26における収容室20側の面によって構成されている。
【0023】
第2ケース14と第3ケース15との間には、吸入口17を開閉可能な第1弁27と、排出口18を開閉可能な第2弁28とが配置されている。第1弁27及び第2弁28は、流体室19の圧力変化により弾性変形することによって開閉動作するゴムなどの弾性体29によって構成されている。本実施形態では、第1弁27及び第2弁28が、略矩形板状に形成された1枚の弾性体29によって構成されている。すなわち、弾性体29における長手方向の一端部が第1弁27を構成し、他端部が第2弁28を構成している。
【0024】
第2ケース14には、第1弁27が開弁動作する際の弾性変形を許容する第1凹部30が形成されている。第3ケース15には、第2弁28が開弁動作する際の弾性変形を許容する第2凹部31が形成されている。したがって、第1弁27は流体室19が減圧された場合にのみ第1凹部30側へ弾性変形することによって開弁され、第2弁28は流体室19が加圧された場合にのみ第2凹部31側へ弾性変形することによって開弁される。
【0025】
つまり、第1弁27は吸入口17から流体室19への流体の進入を許容し且つ流体室19から吸入口17への流体の流出を阻止する一方向弁であり、第2弁28は排出口18から流体室19への流体の進入を阻止し且つ流体室19から排出口18への流体の流出を許容する一方向弁である。
【0026】
図3に示すように、アクチュエータ22は、エラストマー製圧電素子であり、一対の導電エラストマー製の電極層を構成する第1対向電極層32及び第2対向電極層33が誘電エラストマー製の誘電層34の中央部を間に挟むように交互に配置されてなる多層構造体によって構成されている。すなわち、第1対向電極層32及び第2対向電極層33が誘電層34の中央部を挟んで対をなすように対向している。
【0027】
第1対向電極層32及び第2対向電極層33は、その厚さが例えば、1~100μmである薄膜状に形成されている。各対向電極層32,33の周縁からは、外部の電線36に接続する線状の延長電極32a,33aがアクチュエータ22の周面まで延びている。
【0028】
したがって、アクチュエータ22には、第1対向電極層32及び第2対向電極層33が重ならない周縁の第1領域A1と、第1対向電極層32及び第2対向電極層33の両方が積層方向に重なる中央の第2領域A2とが設けられている。この場合、シール部材26は、流体室形成面22aにおける第1領域A1に圧接することによってシールしている。すなわち、アクチュエータ22における流体室形成面22a側の周縁部は、シール面26aと共同して流体室19と収容室20との間をシールしている。本実施形態において、保護層25は、誘電層34を形成する材料よりも流体に対する透過性が低い材料によって形成される。
【0029】
第1対向電極層32及び第2対向電極層33を構成する導電エラストマー(第1対向電極層32及び第2対向電極層33の材料)は特に限定されるものではなく、公知のエラストマー製圧電素子に用いられる導電エラストマーを用いることができる。上記導電エラストマーとしては、例えば、絶縁性高分子及び導電性フィラーを含有する導電エラストマーが挙げられる。
【0030】
上記絶縁性高分子としては、例えば、架橋されたポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーが挙げられる。これら絶縁性高分子のうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。上記導電性フィラーとしては、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンブラック、銅や銀等の金属粒子が挙げられる。これら導電性フィラーのうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0031】
誘電層34は、その厚さが例えば、10~300μmである薄膜状に形成されている。誘電層34を構成する誘電エラストマー(誘電層34の材料)は特に限定されるものではなく、公知のエラストマー製圧電素子に用いられる誘電エラストマーを用いることができる。
【0032】
上記誘電エラストマーとしては、例えば、架橋されたポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーが挙げられる。これら誘電エラストマーのうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。本実施形態の誘電層34を構成する誘電エラストマー(誘電層34の材料)は、架橋されたポリロタキサンによって形成されている。
【0033】
積層方向で隣り合う誘電層34同士の間の領域であって第1対向電極層32及び第2対向電極層33が配置されていない領域には、絶縁エラストマー製の絶縁部35が設けられている。絶縁部35の厚さは、第1対向電極層32及び第2対向電極層33の厚さと同じになっている。
【0034】
絶縁部35を構成する絶縁エラストマー(絶縁部35の材料)は公知のエラストマー製圧電素子等において絶縁部分に用いられる公知の絶縁エラストマーを用いることができる。上記絶縁エラストマーとしては、例えば、架橋されたポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーが挙げられる。これら絶縁エラストマーのうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0035】
各第1対向電極層32及び各第2対向電極層33は、延長電極32a,33a及び電線36を介して電源37と電気的に接続されている。したがって、各第1対向電極層32と各第2対向電極層33との間には、電源37によって電圧が印加されるようになっている。
【0036】
次に、ポンプ11の作用について説明する。
図3及び図4に示すように、アクチュエータ22に電圧が印加されると、アクチュエータ22における流体室形成面22aの反対側の面が底板21に固定されているため、アクチュエータ22は流体室形成面22aにおける第2領域A2が窪むように弾性変形する。すると、流体室19の容積が増加するため、流体室19が減圧される。この流体室19の減圧により、第1弁27が開弁され、吸入口17から流体室19に流体が流入する。
【0037】
このとき、アクチュエータ22の第1領域A1は、ほとんど弾性変形しないので、シール部材26によるシール状態が維持される。このため、流体室19の流体がシール部材26と保護層25との間から収容室20の空間23に進入することはない。
【0038】
続いて、アクチュエータ22への電圧の印加を止めると、図5に示すように、窪むように弾性変形していたアクチュエータ22の流体室形成面22aが弾性復元力により弾性変形前の元のフラットな状態に戻る。すると、アクチュエータ22によって流体室19の流体が加圧され、第1弁27が閉弁されるとともに第2弁28が開弁される。これにより、流体室19の流体が排出口18に流れて外部へ排出される。
【0039】
そして、ポンプ11は、上述したアクチュエータ22への電圧の印加とアクチュエータ22への電圧の印加の停止とを繰り返し行うことで、吸入口17からの流体の吸入と排出口18からの流体の排出とを繰り返し行う。この場合、アクチュエータ22は、底板21に固定された面の反対側の面である流体室形成面22aにおける第2領域A2が窪むこととフラットな状態に戻ることとを繰り返すように変形するだけなので、流体の粘性が高い場合でも、その変形動作が高い再現性で安定する。このため、ポンプ11は、流体の粘性に関係なく流体室19の流体を排出口18から安定して排出することができる。
【0040】
(変更例)
なお、上記実施形態は次のように変更してもよい。
・第1弁27及び第2弁28は、必ずしも弾性体29によって構成する必要はない。すなわち、第1弁27及び第2弁28は、例えば、特許文献1で使用されているボール弁やその他の一般的な一方向弁によって構成してもよい。
【0041】
・保護層25は、省略してもよい。
・アクチュエータ22の全面を保護層25で覆うようにしてもよい。
・流体室ケースとして、第2ケース14と第3ケース15とを一体化し且つその下端周縁から外方に延びるフランジ部を形成したものを採用してもよい。この場合、フランジ部の下面まで収容室20とアクチュエータ22とを広げることで、フランジ部の一部の下面をシール面として利用できるので、シール部材26を省略できる。
【0042】
・アクチュエータ22における誘電層34の積層数や流体室形成面22aの面積は、適宜変更してもよい。このようにすれば、吸入口17からの流体の吸入量(吸入圧)や排出口18からの流体の排出量(排出圧)を調整することができるので、ポンプ11を所望の仕様にすることができる。
【0043】
・アクチュエータ22の駆動速度やストロークを制御部によって制御するようにしてもよい。
・上記実施形態ではアクチュエータ22の下面を底板21に接着し且つ底板21を第1ケース13内の底面に配置したが、底板21を省略してアクチュエータ22の下面を直接第1ケース13内の底面に接着して固定してもよい。また、アクチュエータ22の下面を例えば吸盤のような負圧力を利用して第1ケース13内の底面に固定してもよい。このようにすれば、アクチュエータ22の下面を第1ケース13内の底面に圧接させるだけで、アクチュエータ22を第1ケース13内の底面に容易に固定できる。
【符号の説明】
【0044】
11…ポンプ、12…ケース、13…収容室ケースを構成する第1ケース、14…流体室ケースを構成する第2ケース、15…流体室ケースを構成する第3ケース、17…吸入口、18…排出口、19…流体室、20…収容室、22…アクチュエータ、22a…流体室形成面、25…保護層、26…シール部材、26a…シール面、27…第1弁、28…第2弁、29…弾性体、32…電極層を構成する第1対向電極層、33…電極層を構成する第2対向電極層、34…誘電層。
図1
図2
図3
図4
図5