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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】スパッタ装置用カソードユニット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
C23C14/34 C
C23C14/34 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018027964
(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公開番号】P2019143193
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】517452084
【氏名又は名称】ケニックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】599035627
【氏名又は名称】学校法人加計学園
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米澤 健
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 希世美
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕己
(72)【発明者】
【氏名】呉 準席
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌文
(72)【発明者】
【氏名】古閑 一憲
(72)【発明者】
【氏名】白谷 正治
(72)【発明者】
【氏名】中谷 達行
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-063636(JP,A)
【文献】特開2012-246509(JP,A)
【文献】特開平07-238370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットが保持されるバッキングプレートが設けられたカソード本体と、
前記カソード本体を収容し、バッキングプレートを露出するカバー開口部を端面に有し、前記カソード本体と絶縁されたカバーと、
前記カバーの端面を覆い、前記カバー開口部と重なる位置にオリフィス開口部を有するオリフィスと、
前記カバー開口部から露出した空間にガスを供給するガス供給路とを備え、
前記カバーの端面には、ガス供給開口部が設けられており、
下記の式1の条件を満たす、スパッタ装置用カソードユニット。
0.4≦V/S≦10 ・・・ (式1)
但し、Sはターゲットの有効表面積であり、Vは前記カバー開口部から露出した空間の体積と、前記カバーと前記オリフィスとの間の空間の体積との和である。
【請求項2】
ターゲットが保持されるバッキングプレートが設けられたカソード本体と、
前記カソード本体を収容し、バッキングプレートを露出するカバー開口部を端面に有し、前記カソード本体と絶縁され、アノードとして機能するカバーと、
前記カバーの端面を覆い、前記カバー開口部と重なる位置にオリフィス開口部を有するオリフィスと、
前記カバー開口部から露出した空間にガスを供給するガス供給路とを備え、
前記ターゲットの表面から前記カバーの端面までの高さt1は、前記オリフィスの高さt2よりも小さく、
下記の式1の条件を満たす、スパッタ装置用カソードユニット。
0.4≦V/S≦10 ・・・ (式1)
但し、Sはターゲットの有効表面積であり、Vは前記カバー開口部から露出した空間の体積と、前記カバーと前記オリフィスとの間の空間の体積との和である。
【請求項3】
前記カソード本体と、前記カバーとの間の距離は、側面側における値の端面側における値に対する比が0.8以上、1.2以下である、請求項1又は2に記載のスパッタ装置用カソードユニット。
【請求項4】
前記カバー開口部の径の前記オリフィス開口部の径に対する比は、0.8以上、1.1以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のスパッタ装置用カソードユニット。
【請求項5】
前記ターゲットの表面から前記カバーの端面までの高さt1と、前記オリフィスの高さt2との比t1:t2は、0.5:50~4:20である、請求項1~4のいずれか1項に記載のスパッタ装置用カソードユニット。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のスパッタ装置用カソードユニットと、
前記カソードユニットを収容する真空チャンバと、
前記真空チャンバに接続された排気ポンプとを備えている、スパッタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スパッタ装置用カソードユニット及びスパッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に薄膜を形成するためにスパッタ装置が用いられている。スパッタ装置は、スパッタガスのプラズマ中に生成された正イオンをターゲットに衝突させることによりターゲットからから原子や分子をはじき出させ、はじき出された原子や分子を基板の表面に堆積させる。
【0003】
安定したプラズマを発生させるためには、チャンバ内にある程度のスパッタガスの圧力が必要であり、一般的にチャンバ内の圧力を1Pa程度とすることが好ましい。一方、チャンバ内のスパッタガスの密度が増えると、ターゲットからはじき出された原子や分子がチャンバ内のスパッタガスと衝突しやすくなり、平均自由行程が短くなるため、成膜レートが低下する。すなわち、プラズマの安定性と成膜レートとの間にトレードオフが存在する。
【0004】
安定してプラズマを発生させると共に、スパッタガスとの衝突を生じにくくするために、チャンバ内に圧力差を生じさせることが検討されている。例えば、特許文献1においては、ターゲットを囲むような円筒状の部材を複数配置して、ターゲット近傍において圧力を高くし、基板近傍において圧力を低くすることが試みられている。
【0005】
また、特許文献2においては、開閉できるシャッターが設けられた部材をターゲットの周囲に設けることにより、ターゲット近傍において圧力を高くすることが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-285392号公報
【文献】特開2013-204047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法においては、チャンバ内に複雑な構造を設ける必要があり、カソードユニットだけでなく、チャンバを含めたスパッタ装置全体を設計する必要があり、カソードユニットだけを交換することは困難である。
【0008】
本開示の課題は、ターゲットと基板との圧力差を大きくすることが可能なスパッタ装置用カソードユニットを実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のスパッタ装置用カソードユニットの一態様は、ターゲットが保持されるバッキングプレートが設けられたカソード本体と、カソード本体を収容し、バッキングプレートを露出するカバー開口部を端面に有し、カソード本体と絶縁されたカバーと、カバーの端面を覆い、カバー開口部と重なる位置にオリフィス開口部を有するオリフィスと、カバー開口部から露出した空間にガスを供給するガス供給路とを備え、下記の式1の条件を満たす。
【0010】
0.4≦V/S≦10・・・(式1)
但し、Sはターゲットの有効表面積であり、Vは前記カバー開口部から露出した空間の体積と、前記カバーと前記オリフィスとの間の空間の体積との和である。ここで、S及びVはcm単位系とする。
【0011】
スパッタ装置用カソードユニットの一態様において、カソード本体と、カバーとの間の距離は、側面側における値の端面側における値に対する比が0.97以上、1.03以下とすることができる。
【0012】
スパッタ装置用カソードユニットの一態様において、カバーの端面には、ガス供給開口部が設けられていてもよい。
【0013】
スパッタ装置用カソードユニットの一態様において、カバー開口部の径のオリフィス開口部の径に対する比は、0.8以上、1.2以下とすることができる。
【0014】
本開示のスパッタ装置の一態様は、本開示のスパッタ装置用カソードユニットと、カソードユニットを収容する真空チャンバと、真空チャンバに接続された排気ポンプとを備えている。
【発明の効果】
【0015】
本開示のスパッタ装置用カソードユニットによれば、チャンバに依存することなく、ターゲットと基板との圧力差を大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係るスパッタ装置を示す模式図である。
図2】一実施形態に係るスパッタ装置用カソードユニットを示す断面図である。
図3】スパッタ装置用カソードユニットの変形例を示す断面図である。
図4】スパッタ装置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態のカソードユニット100は、図1に示すようにチャンバ210と組み合わせて、スパッタ装置200を形成することができる。
【0018】
図2に示すように、本実施形態のカソードユニット100のヘッド部分101は、ターゲット111が保持されるバッキングプレート112が設けられたカソード本体110と、カソード本体110を収容し、バッキングプレート112を露出するカバー開口部121を端面に有し、カソード本体110と絶縁されたカバー120と、カバー120の端面を覆い、カバー開口部121と重なる位置にオリフィス開口部131を有するオリフィス130と、カバー120から露出した空間にガスを供給するガス供給路140とを備えている。
【0019】
また、カバー開口部121から露出した空間の体積(V1)と、カバー120とオリフィス130との間の空間の体積(V2)との和をVとし、ターゲット111の有効表面積をSとすると、V/Sは、0.4以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは1.0以上で、10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。なお、ターゲット111の有効表面積は、ターゲット111の露出部分の表面積である。本実施形態においては、ターゲット111の外縁部が保持リング114に覆われており、保持リング114に覆われていない部分の直径及び面積がそれぞれ有効直径及び有効表面積となる。
【0020】
カバー開口部121から露出した空間にスパッタガスを供給することにより、スパッタガスがターゲット111の表面近傍に拡がるようにできる。また、オリフィス130によりターゲット111の表面近傍からチャンバ210内への拡散が妨げられるため、ターゲット111の表面近傍にスパッタガスが留まりやすくなる。さらに、カバー120のオリフィス130との間の空間の体積を所定の値とすることにより、ターゲット111の表面近傍にプラズマを発生するために十分なスパッタガスが存在するようにでき、プラズマを安定させることができる。
【0021】
一方、チャンバ210内の、カソードユニット100と対向する位置に配置された基板ホルダ211に保持された基板212の近傍においては、圧力を低くすることができる。このため、チャンバ210の構造に依存することなく、成膜レートを高くすることができる。
【0022】
カバー120は、カソード本体110と絶縁されており、アノードとして機能する。所定の圧力条件において、カソード本体110とカバー120との間に電力を印加することにより、ターゲット111の表面近傍においてプラズマを発生させることができる。プラズマによってターゲット111からはじき出された原子は、カバー開口部121を通過して、基板212に向かう。
【0023】
カバー開口部121は、成膜レートを高くする観点から、ターゲット111の有効直径の好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上が露出するようにその径を設定することが好ましい。また、ターゲット111以外の部分がプラズマにさらされないようにする観点から、カバー開口部121の径は、ターゲット111の有効直径よりも小さいことが好ましい。
【0024】
カバー開口部121から露出した空間の体積V1は、カバー開口部121の直径φ1と、ターゲット111の表面からカバー120の端面までの高さt1とによって決まる。必要とするV1を確保する観点及びガス供給路140を確保する観点からt1は好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上とする。また、放電を安定させる観点から、t1は5mm以下、より好ましくは4mm以下とする。
【0025】
図3に示すように、スパッタガスは、カソード本体110とカバー120との間に設けられたガス供給路140を通って、カバー開口部121から露出した空間に供給される。ガス供給路140は、カソード本体110を囲むように設けることができ、このようにすれば、ターゲット111の周囲全体からスパッタガスを供給でき、ターゲット111の表面近傍におけるガス濃度の均一性を向上させることができる。
【0026】
カソード本体110の端面における、カバー開口部121から露出していない部分には、ターゲット111を固定すると共に、カソード本体110の端面とカバー120の端面との隙間を調整する保持リング114が設けられている。
【0027】
保持リング114を設けることにより、t1を大きくした場合にも、ガス供給路140であるカソード本体110とカバー120との間の隙間を、側面側と端面側とでほぼ一定とすることができる。これにより、カバー120の端面の下側にスパッタガスが滞留しにくくなり、ターゲット111の外縁部において異常放電が発生しにくくすることができる。
【0028】
異常放電を発生しにくくする観点から、ガス供給路140であるカソード本体110とカバー120との間の隙間は、側面側における値の端面側における値に対する比が好ましくは0.8以上、好ましくは1.2以下である。
【0029】
オリフィス130を設けることにより、ターゲット111の表面近傍からのスパッタガスの拡散を抑え、チャンバ210内に圧力差が生じやすくすることができる。オリフィス開口部131は、成膜レートを大きくする観点から、その直径φ2のカバー開口部121の直径φ1に対する比(φ2/φ1)が好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上である。また、スパッタガスの拡散を小さくする観点から、φ2/φ1が好ましくは1.1以下、より好ましくは1.0以下である。例えば、ターゲットの直径が2インチの場合、φ1は48mm~49mm程度、φ2は42mm~48mm程度とすることができる。
【0030】
本実施形態においてオリフィス130は円筒形状であり、カバー120とオリフィス130との間の空間の体積V2は、オリフィス130の内径と、オリフィス130の高さt2によって決まる。オリフィス130の内径は、ターゲット111の直径によりほぼ決まり、設定の自由度が小さいため、V2は主にt2により調整できる。t2の値は、ターゲット111のサイズ、カバー開口部121の直径、ターゲット111の表面からカバー120の端面までの高さt1等を考慮して必要な値とすればよい。例えば、ターゲット111の直径が2インチの場合、t2は、20mm~50mm程度とすることが好ましい。
【0031】
オリフィス130は、カバー120と同電位となるようにすることが好ましい。但し、バイアス電源が接続された基板ホルダの構造によっては、オリフィス130と基板ホルダ間の異常放電を防止するために、オリフィス130を絶縁性材料にすることもできる。
【0032】
図3に示すように、カバー120とオリフィス130との間の空間に、ガス供給路140から直接スパッタガスが供給されるように、カバー120の端面にガス供給開口部125を設けることができる。ガス供給開口部125を設けることにより、カバー120とオリフィス130との間の空間にスパッタガスを保持しやすくなり、プラズマをより安定させることができる。ガス供給開口部125は、1つだけ設けることもできるが、複数をカバー120の端面に均等に設けることが好ましい。
【0033】
本実施形態のカソードユニット100を用いたスパッタ装置200は、図1に示すように、チャンバ210有しており、カソードユニット100のヘッド部分101はチャンバ210内に配置されている。ヘッド部分101に設けられたガス供給路140に接続されたガスポート142が、チャンバ210の外側に設けられている。ガスポート142は、バルブ145を介してスパッタガス供給源(図示せず)と接続される。また、カソード本体110に電圧を印加するカソード電源150が接続されている。カソード電源150は、高周波電源、直流電源又はパルス電源等とすることができる。なお、カソード電源150は、カソードユニット100と一体とすることもできる。また、カソードユニット100にヘッド部分101の冷却機構を設けることもできる。
【0034】
チャンバ210のカソードユニットと対向する位置には、基板212を保持する基板ホルダ211が設けられている。基板ホルダ211には、バイアス電源214が接続されている。また、チャンバ210内を排気する排気ポンプ220がコンダクタンス調整バルブ221を介してチャンバ210に接続されている。チャンバ210及び排気ポンプ220等は、一般的なスパッタ装置のものをそのまま用いることができる。
【0035】
ターゲットの周囲からスパッタガスを導入し、オリフィスを設けてV/Sを0.4以上、10以下とした本実施形態のカソードユニット100を用いることにより、ターゲット側の圧力(PT)と基板側の圧力(PS)との比PT/PS)を好ましくは3.0以上、より好ましくは4.0以上とすることができる。このようにPT/PSの値を大きくすることにより、プラズマを安定して発生させることが可能となると共に平均自由行程を大きくでき、成膜レートを高くすることができる。
【0036】
また、図5に示すように、チャンバ210にバルブ231を介して差動排気装置230を接続することもできる。本実施形態のカソードユニット100用いたスパッタ装置200に差動排気装置230を設けることにより、PT/PSの値をさらに大きくすることができ、成膜レートをさらに向上させることができる。具体的に、PT/PSの値を好ましくは4.5以上とすることができ、6.0以上とすることも可能である。なお、差動排気装置230は、特に限定されないが、より効果的に圧力差を発生させる観点からカソードユニット100のヘッド部分101の近傍に接続することが好ましい。
【0037】
本実施形態のカソード本体110は、バッキングプレート112の裏面にマグネトロンユニットが設けられたマグネトロンカソードとすることができる。
【実施例
【0038】
以下に、本開示のカソードユニットについて実施例を用いてさらに詳細に説明する。以下の実施例は例示であり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0039】
<装置>
ターゲットには直径2インチのアルミニウム基板を用いた。内径289mmで高さ255mmのチャンバを用い、ターゲットと基板との距離は170mmとした。ターゲットの有効直径は49.0mm、カバー開口部の直径φ1は48.0mm、オリフィス開口部の直径φ2は45.5mmとした。V/Sの値は、オリフィスを用いた場合には5.1であり、オリフィスを用いない場合には0.3であった。
【0040】
<圧力の測定>
チャンバ内圧力は、チャンバに取り付けた通常の真空ゲージにより測定した。ターゲット側圧力及び基板側圧力は、それぞれターゲット及び基板の表面に貼り付けた薄膜センサ(岡野製作所製)により測定した。
【0041】
<成膜レートの測定>
成膜基板を15mm角のシリコン基板とし、20分成膜後の膜厚を蝕針段差計(Bruker社製、DektakXT)を用いて測定し、1分当たりの成膜レートを求めた。成膜の際には、高周波電源(クリエートデザイン製、T847B)を用いてカソードに100Wの電力を印加した。
【0042】
(実施例1)
スパッタガスとしてアルゴンを10sccm(0℃/1atm、cc/min)の流量で供給し、差動排気装置は用いなかった。チャンバ内圧力(PC)は、0.05Paとなり、ターゲット側圧力(PT)は0.41Paとなり、基板側圧力(PS)は0.093Paとなり、ターゲット側圧力と基板側圧力との比(PT/PS)は、4.4であった。この条件で成膜を行ったところ、成膜レートは4.7nm/分であった。
【0043】
(実施例2)
差動排気装置を使用した以外は、実施例1と同様にした。PCは0.04Paとなり、PTは0.38Paとなり、PSは0.079Paとなり、PT/PSは、4.8であった。この条件で成膜を行ったところ、成膜レートは4.9nm/分であった。
【0044】
(実施例3)
スパッタガスの流量を20sccmとした以外は実施例2と同様にした。PCは0.05Paとなり、PTは1.1Paとなり、PSは0.13Paとなり、PT/PSは、8.5であった。
【0045】
(比較例1)
スパッタガスの流量を20sccmとし、オリフィスを用いなかった以外は、実施例1と同様にした。PCは0.5Paとなり、PTは1.0Paとなり、PSは0.8Paとなり、PT/TSは、1.3であった。
【0046】
(比較例2)
スパッタガスをカソードユニットのガスポートからではなく、チャンバに設けられた通常のポートから供給した以外は、比較例1と同様にした。PCは0.5Paとなり、PTは0.8Paとなり、PSは0.8Paとなり、PT/TSは、1.0であった。この条件で成膜を行ったところ、成膜レートは1.8nm/分であった。
【0047】
(比較例3)
差動排気装置を使用した以外は、比較例1と同様にした。PCは0.04Paとなり、PTは0.41Paとなり、PSは0.16Paとなり、PT/PSは2.6であった。この条件で成膜を行ったところ、成膜レートは3.8nm/分であった。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に、各実施例及び比較例の結果をまとめて示す。オリフィスを用いることにより、用いていない場合よりもPT/PSを大きくすることができ、差動排気装置を用いることによりPT/PSをさらに大きくすることができる。また、PT/PSの値が大きい方が成膜レートを高くできる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示のスパッタ装置用カソードユニットは、ターゲットと基板との圧力差を大きくでき、スパッタ装置等において有用である。
【符号の説明】
【0051】
100 カソードユニット
101 ヘッド部分
110 カソード本体
111 ターゲット
112 バッキングプレート
114 保持リング
120 カバー
121 カバー開口部
125 ガス供給開口部
130 オリフィス
131 オリフィス開口部
140 ガス供給路
142 ガスポート
150 カソード電源
200 スパッタ装置
210 チャンバ
211 基板ホルダ
212 基板
214 バイアス電源
220 排気ポンプ
221 コンダクタンス調整バルブ
230 差動排気装置
231 バルブ
図1
図2
図3
図4