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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】ガス昇温用ヒータ装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/027 20060101AFI20220208BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20220208BHJP
   H05B 3/03 20060101ALI20220208BHJP
   H05B 3/40 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
F01N3/027 C
F01N3/20 K
F01N3/20 D
H05B3/03
H05B3/40 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017253236
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019120141
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】509185192
【氏名又は名称】株式会社 ACR
(74)【代理人】
【識別番号】100092347
【弁理士】
【氏名又は名称】尾仲 一宗
(72)【発明者】
【氏名】松岡 寛
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-329017(JP,A)
【文献】特開2009-000671(JP,A)
【文献】特開2002-113798(JP,A)
【文献】特開平05-288036(JP,A)
【文献】特開平05-220405(JP,A)
【文献】特開2005-226599(JP,A)
【文献】特表2010-538819(JP,A)
【文献】特開平05-251161(JP,A)
【文献】米国特許第05546746(US,A)
【文献】中国実用新案第204268563(CN,U)
【文献】特開平05-057198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00- 3/38
F01N 9/00-11/00
B01D 53/73
B01D 53/86-53/90
B01D 53/94-53/96
H05B 3/02- 3/18
H05B 3/40- 3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス体が流れるガス通路に配設された導電体に通電して前記ガス通路を流れる前記ガス体を加熱して前記ガス体を予め決められた所定の温度に昇温するガス昇温用ヒータ装置において,
平ら状導電体がジグザグ状に折り曲げられた長手方向に延びる凸部を備えた波状導電体と長手方向に帯状に延びる平ら状導電体とが重ねられて螺旋状に巻き上げられた円筒状成形体の導電構造体,前記導電構造体の内周にリング状に配設された金属製の内周側電極,及び前記導電構造体の外周にリング状に配設された金属製の外周側電極を備えており,
前記導電構造体は,前記波状導電体の前記凸部と前記平ら状導電体との接点が接合されると共に,前記内周側電極と前記外周側電極とに接する前記波状導電体の前記凸部が前記内周側電極と前記外周側電極にそれぞれ接合されており,
前記導電構造体は,前記波状導電体の前記凸部間に延びる柱部と前記平ら状導電体とによって断面三角形状ガス通路が長手方向に延びて周方向に複数個形成されており,
前記波状導電体と前記平ら状導電体とで形成される前記断面三角形状ガス通路の周方向のピッチは,前記螺旋状の巻き上げの周段毎に同一ピッチに形成され且つ前記導電構造体の内周部から外周部に向って複数段階に大きくなる形状に構成されており,
前記波状導電体の前記凸部は,前記外周部の頂部角度が前記内周部の頂部角度より鈍角に形成されており,
前記導電構造体は,電源から前記内周側電極と前記外周側電極とに通電することによって,電流が前記導電構造体に半径方向に流れてヒータに構成され,前記導電構造体の前記断面三角形状ガス通路を流れる前記ガス体が昇温されることを特徴とするガス昇温用ヒータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,例えば,エンジンから排出される排気ガスに含有される有害物質を浄化する排気ガス浄化装置に適用することができ,該排気ガス浄化装置に担持されている触媒を活性化する所定の温度に排気ガスを昇温して触媒を活性化させたり,空気を加熱する暖房装置等に適用できる排気ガス,空気等のガス体を昇温させるガス昇温用ヒータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,排気ガス浄化装置として,セラミックス繊維から構成したフェルトを通電可能な金網で保形してフィルタを構成し,パティキュレートの捕集公立を向上させたものは知られている。該排気ガス浄化装置は,排気ガス中に含まれるパティキュレートを捕集するフィルタをセラミックス繊維のフェルトで構成し,該フェルトの形状が通電可能な金網及び指示筒体で保形されている。金網に通電してフィルタを加熱し,フィルタに捕集されたパティキュレートを加熱焼却してフィルタを再生する(例えば,特許文献1参照)。
【0003】
また,排気ガス浄化装置として,ディーゼルエンジンからの排気ガス中の粒子状物質をフィルタで捕集し,フィルタの再生時に粒子状物質をフィルタ全域で均等な低温燃焼させて短時間に焼却してフィルタを再生するものが知られている。該排気ガス浄化装置において,粒子状物質を捕集するフィルタは,金網ヒータ,その両側から挟み込んだ一対のセラミックス不織布及びセラミックス不織布の外側に積層された一対の支持用金網から成る積層体を蛇腹状に折り曲げて筒状に形成された筒体から構成されている。筒体の内周側には骨組用補強部材を配置し,筒体の外周側に隙間を空けてハウジング内に外周ヒータを配置する。フィルタの再生時に,金網ヒータと外周ヒータに通電してフィルタ全域で均等に低温燃焼を確保する(例えば,特許文献2参照)。
【0004】
また,排気ガス浄化装置として,2種類のセラミックス不織布からフィルタを構成し,フィルタの再生時の酸化開始温度を低減して消費電力を低減するものが知られている。該フィルタは,上流側のセラミックス不織布,下流側のセラミックス不織布,両セラミックス不織布を挟み込んで保持する一対の金網,及び両セラミックス不織布間に配設されたヒータから構成されている(例えば,特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-286512号公報
【文献】特開2011-236787号公報
【文献】特開2003-172117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年,内燃機関から排出される排気ガスについての規制は益々厳しくなってきている。それに伴い,各社では,車両にNOx還元触媒,PM捕集フィルタ,酸化触媒等の排ガス浄化装置を装着して,排気ガス規制に適合するように車両に搭載の内燃機関が開発されている。しかしながら,排気ガス浄化装置についての問題は,エンジンから排出される排気ガスの排気温度が低いとき,例えば,低負荷運転時又は始動直後(コールドスタート:一般的には20℃スタートで排ガスモード試験)のエンジンが冷えている時に,排気ガス浄化装置の触媒が活性温度以下であるので,触媒が活性化せず,排気ガスを浄化することが難しい。そのため,エンジンの吸気を絞ったり,排気シャッタを着けて排気温度を上昇させるデバイスを装着しているが,十分ではないケースが多い。即ち,従来の構造のヒータは,排気ガスを加熱するのに,排気ガスとの熱交換が悪いため,装置そのものが大型化し,また,熱交換効率が悪く損失が大きい欠点があった。また,電気ヒータは,その電気の流れを均一にすることが難しく,局部的に高温が発生し,耐久性も低い欠点があった。
【0007】
この発明の目的は,上記の問題を解決することであり,例えば,エンジンから排出される排気ガス通路の途中にヒータを設け,排気ガスの排気温度が低い時に,排気ガス通路に設けたヒータを付勢して,ヒータで排気ガスを加熱して排気ガス温度を昇温させ,排気ガス温度を触媒の活性化温度にまで高めて,排気ガスに含まれる有害成分を浄化するために適用することができ,或いはガス体の空気を加熱する暖房装置として適用できることができるガス体を加熱して所定の温度に昇温させるガス昇温用ヒータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は,ガス体が流れるガス通路に配設された導電体に通電して前記ガス通路を流れる前記ガス体を加熱して前記ガス体を予め決められた所定の温度に昇温するガス昇温用ヒータ装置において,
平ら状導電体がジグザグ状に折り曲げられた長手方向に延びる凸部を備えた波状導電体と長手方向に帯状に延びる平ら状導電体とが重ねられて螺旋状に巻き上げられた円筒状成形体の導電構造体,前記導電構造体の内周にリング状に配設された金属製の内周側電極,及び前記導電構造体の外周にリング状に配設された金属製の外周側電極を備えており,
前記導電構造体は,前記波状導電体の前記凸部と前記平ら状導電体との接点が接合されると共に,前記内周側電極と前記外周側電極とに接する前記波状導電体の前記凸部が前記内周側電極と前記外周側電極にそれぞれ接合されており,
前記導電構造体は,前記波状導電体の前記凸部間に延びる柱部と前記平ら状導電体とによって断面三角形状ガス通路が長手方向に延びて周方向に複数個形成されており,
前記波状導電体と前記平ら状導電体とで形成される前記断面三角形状ガス通路の周方向のピッチは,前記螺旋状の巻き上げの周段毎に同一ピッチに形成され且つ前記導電構造体の内周部から外周部に向って複数段階に大きくなる形状に構成されており,
前記波状導電体の前記凸部は,前記外周部の頂部角度が前記内周部の頂部角度より鈍角に形成されており,
前記導電構造体は,電源から前記内周側電極と前記外周側電極とに通電することによって,電流が前記導電構造体に半径方向に流れてヒータに構成され,前記導電構造体の前記断面三角形状ガス通路を流れる前記ガス体が昇温されることを特徴とするガス昇温用ヒータ装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によるガス昇温用ヒータ装置は,上記のように,電気ヒータ式に構成され,全体システムをシンプルに構成し,排気ガス浄化装置や暖房装置に適用して有効であり,波状導電体と平ら状導電体とから成る導電構造体のヒータに構成し,波状導電体のピッチを内周部側を小さく,外周部側を大きく構成することによって導電構造体を全体的に電流密度が均一化するように構成することができ,更に導電構造体を金網で構成することにより,ガス体の導電構造体への接触面積を増大させ,導電構造体からガス体への熱交換率を高めることができる。このガス昇温用ヒータ装置は,電流を導電構造体の中心部である内周部より外周部に向かって放射状に流す構造又は外周部かた内周部へ流す構造に構成されている。例えば,当然ながら,そのまま流すと内周部側の電流通流面積が小さく,外周部側の電流通流面積が大きくなり,それにより内周部の電気抵抗値が外周部に比較して大きくなり,抵抗値の大きい分だけ発熱量が増え,内周部側が高温,外周部側が低温になる。そこで,上記の現象を避けるため,本願発明によるガス昇温用ヒータ装置では,内周部側の放射状に流れる波状導電体の柱部の本数を増やし,ガス通路を形成する断面三角形状ガス通路を内周部側を小さく,外周部側を大きく構成し,内外での電流通流面積の差異を低減し,導電構造体の内外周部での加熱状態を均一化すること目的としている。更に,波状導電体と平ら状導電体とで形成される三角形状ガス通路について,ガス通路を形成する断面三角の角度を鋭角にすると,同じ円直径での放射状の波状導電体の柱部の本数が少なくすることができ,三角形状ガス通路の一辺を小から大に段階的に変化させる場合に,外周に行くほど断面三角の頂点を鈍角にすることによって,三角形の凸部間に延びる放射状の柱部の数を減らせる。これらにより内周部側と外周部側の放射状の一辺の数を極力近くすることが可能となって適正な導電構造体を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明によるガス昇温用ヒータ装置の一実施例を示す側面図である。
図2図2のガス昇温用ヒータ装置を示す正面図である。
図3図2における導電構造体を構成する波状導電体と平ら状導電体とに流れる電流の流れ方向を部分的に一例を説明するため,矢印で示す説明図である。
図4】このガス昇温用ヒータ装置をエンジンに設けた排気ガス浄化装置に適用した一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明によるガス昇温用ヒータ装置は,例えば,船舶,産業機械等に使用されるディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含まれる煤,SOF,サルフェート等の有害物質である粒子状物質(PM)をハウジング内に配設したフィルタで捕集してフィルタに捕集されたPMをフィルタに設けたヒータに通電して酸化し,加熱焼却したり,或いは排気ガス中のNOx 等の有害物質を触媒を活性化させて還元消失させる排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置に適用することができ,その場合には,上記排気ガス浄化装置の上流の排気ガス通路に配設して,排気ガス等のガス体を加熱昇温して排気ガス浄化装置に担持された触媒を活性化することに適用したり,或いは,ガス体がハウス内の空気である場合に,該空気を温める暖房ヒータや暖房装置として適用することができる。
【0012】
以下,図面を参照して,この発明によるガス昇温用ヒータ装置の実施例を説明する。このガス昇温用ヒータ装置1は,例えば,図4に示すように,エンジン10から排出される排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置11に適用されるヒータとして使用することができるものである。エンジン10から排出される排気ガスは,マニホルド23に配設され且つターボチャージャ27のタービンに接続された排気管28の排気ガス通路12を流れる。ガス昇温用ヒータ装置1は,排気ガス浄化装置11の上流側の排気ガス通路12に配設されている。また,排気ガス浄化装置11は,排気ガス通路12に配設され且つ排気ガスに含まれている煤,PM,NOx 等の有害物質を浄化するものである。排気ガス通路12には,排気ガスの温度を検出する温度センサー13がガス昇温用ヒータ装置1の上流側及び/又は下流側に設置されている。温度センサー13は,外周側電極15と内周側電極16にコネクタ9を介してライン25で電源8に接続されている。図4では,内周側電極16が外周側電極15から長手方向に飛び出した形状に形成されているが,飛び出さずに同一長さに形成することができるものである。温度センサー13は,ガス昇温用ヒータ装置1の上流側及び/又は下流側の排気ガス通路12を流れる排気ガスの温度を検出するものである。ガス昇温用ヒータ装置1に流入する排気ガスの温度が予め決められた所定値より低い場合には,その検出温度に応答して,コントローラ20の指令によってガス昇温用ヒータ装置1の導電構造体2を通電してヒータに構成し,排気ガスを加熱して排気ガスを昇温する。排気ガス浄化装置11は,ディーゼルエンジン等のエンジン10からの排気ガスを排出する排気ガス通路12に配置されたハウジング14内に収容されたフイルタ等によって排気ガス中に含まれる煤等の粒子状物質を捕集し,捕集された粒子状物質を焼却して排気ガスを浄化したり,或いは,NOx 等の有害物質を触媒の助けで還元処理して排気ガスを浄化するものである。排気ガス浄化装置11は,粒子状物質を低温で燃焼,反応燃焼させるため不織布等に白金等に触媒が担持されていると共に,窒素酸化物を処理するため,NOx 還元触媒を担持した担体を備えているものである。
【0013】
この発明によるガス昇温用ヒータ装置1は,特に,ガス体を流すことができるガス通路7を備えた導電構造体2に通電してガス通路7を流れるガス体を加熱して,ガス体を予め決められた所定の温度に昇温することであり,平ら状導電体4がジグザグ状に折り曲げられた長手方向に延びる凸部17と凸部17貫の柱部18とから成る波状導電体3と,長手方向に帯状に延びる平ら状導電体4とが重ねられて螺旋状に巻き上げられた導電構造体2となる円筒状成形体5,円筒状成形体5の内周にリング状に配設された金属製の内周側電極16,及び円筒状成形体5の外周にリング状に配設された金属製の外周側電極15を備えていることを特徴としている。また,円筒状成形体5は,波状導電体3の凸部17と平ら状導電体4との接点19が接合されると共に,内周側電極16と外周側電極15とに接する波状導電体3の凸部17が内周側電極16と外周側電極15とに接合されている。また,円筒状成形体5は,波状導電体3の凸部17間に延びる柱部18と平ら状導電体4とによって断面三角形状ガス通路7が長手方向に延びて周方向に複数形成されている。また,内周側電極16の上流側端面は,ガス体が流れ込まないように遮蔽板24で閉鎖することが好ましい。ガス昇温用ヒータ装置を,ガス通路である排気ガス通路12に配設した場合に,円筒状成形体4の導電構造体2を構成する内周側電極16の端面が排気ガスに向き合う状態になって,内周側電極16の端面の開口から排気ガスが流れる状態になるので,その状態を避けるため開口を遮蔽板24で閉鎖する構造に構成されている。円筒状成形体5は,内周側電極16と外周側電極15に電源8から通電することによって,例えば,図3に示すように,電流が円筒状成形体5の導電構造体2に半径方向に流れてヒータに構成され,円筒状成形体5の三角形状ガス通路7を流れるガス体が昇温されるものである。図3では,内周側電極16を+電極に構成し,外周側電極15を-電極に構成しているが,当然ながら,その逆の構成,即ち,内周側電極16を-電極に構成し,外周側電極15を+電極に構成することもできる。
【0014】
また,このガス昇温用ヒータ装置1では,波状導電体3と平ら状導電体4とから成る導電構造体2を構成する針金で形成されている。円筒状成形体5を形成する波状導電体3と平ら状導電体4は,鉄クロムアルミ鋼,ニッケルクロム鋼から成る金網から構成されることが好ましい。導電構造体2を,上記金網で形成することによって,例えば,排気ガスに含まれるPMや煤が付着したり堆積することが防止され,排気ガスがスムーズに流れることになる。ガス昇温用ヒータ装置1では,波状導電体3の凸部17と平ら状導電体4との接点19,及び凸部17と内周側電極16及び外周側電極15との接点19は,拡散接合又はろう接合によって接合されており,電流がスムーズに流れる状態に接続されている。即ち,このガス昇温用ヒータ装置1は,外周側電極15,波状導電体3,平ら状導電体4,及び内周側電極16の接点19を接合することによって,ガス昇温用ヒータ装置1に電流をスムーズに流すことができる。
【0015】
また,このガス昇温用ヒータ装置1では,波状導電体3と平ら状導電体4とで形成される断面が三角形状ガス通路7の周方向のピッチは,螺旋状の周毎に同一ピッチに形成されている。また,三角形状ガス通路7の周方向のピッチは,円筒状成形体5の内周部21側から外周部22側に向って複数段階に大きくなる形状に形成されており,言い換えれば,三角形状ガス通路7を形成する一辺の長さは,周段階毎に同一長さに形成され,内周部21から外周部22に向って複数周毎に段階的に凸部17の頂点18の角度が鈍角に増加している。導電構造体2を構成する波状導電体3は,具体的には,例えば,図3に示すように,最内周の第1番目は1周段目が内側極小ピッチ3Aに形成され,第2番目は2周段目と3周段目との2段が小ピッチ3Bに形成され,第3番目は4周段目~8周段目の4段が中ピッチ3Cに形成され,及び第4番目は8周段目~12周段目の4段が大ピッチ3Dに形成されている。平ら状導電体4間の波状導電体3を,上記のような構造体に構成することによって,円筒状成形体5を半径方向において,導電構造体2の中心側の内周部21と外周側の外周部22とに均一な加熱状態を形成させることができる。このガス昇温用ヒータ装置1は,波状導電体3を上記ように構成しているが,作製するサイズによって,波状導電体3の凸部17間のピッチが種々のサイズに形成することができるものである。即ち,このガス昇温用ヒータ装置1は,内周部21側に位置する波状導電体3ほど鋭角に折り曲げて凸部17と柱部18との数を増やし,外周部22側に位置する波状導電体3を鈍角に折り曲げて凸部17と柱部18との数を減らしており,それによって,ガス昇温用ヒータ装置1は,電流が導電構造体2の円筒状成形体5を放射状に流れることになり,円周による電流通路変化量を少しでも減らすことができ,極微面積あたりの発熱を均一化することができ,発熱状態が適正な好ましい状態のヒータに構成することができる。
【0016】
また,このガス昇温用ヒータ装置1は,図示していないが,適用するシステムの規模に対応させて,ガス通路12に沿って複数個配設することもできるものであり,ガス体を予め決められた所定の温度にまで適正に加熱することができる。即ち,円筒状成形体5は,ガス通路12に沿って複数個を設置すればよく,その場合には,それぞれの円筒状成形体5のそれぞれの内周側電極16と外周側電極15を並列又は直列に結線することによって,複数段の円筒状成形体5から成るガス昇温用ヒータ装置1を完成させることができる。また,ガス昇温用ヒータ装置1では,断面が三角形状ガス通路7は,図示していないが,ガス体の流れ方向に対して傾斜通路,又はジグザグ状屈折傾斜通路に形成することもできる。このガス昇温用ヒータ装置1は,波状導電体3及び平ら状導電体4に形成される三角形状ガス通路7を上記の形状に構成することによって,ガス体が導電構造体2に接する面積を大きく形成することができ,ガス体を予め決められた所定の温度に迅速に適正に加熱することになる。即ち,ガス昇温用ヒータ装置1では,導電構造体2の内側から外側に流れるトータルの電流値は,同じであるので,内側のジグザグ(波形)1つに流れる電流は多くなり,発熱も大きくなる。
即ち,発熱量をP,電流をI,抵抗値Rとすると,P=I×I×Rである。
【0017】
また,このガス昇温用ヒータ装置1について,波状導電体3のジグザグ(波形)によって形成される平ら状導電体4の三角形状ガス通路7の一辺(凸部1 7間)に電流が流れるが,その一辺の数量は中心側即ち内周部21側が少なく,外周部22側になるほど数量が増える導電構造体2であるので,上記のように構成することによって,ガス昇温用ヒータ装置1における発熱量の発生を内周部21側と外周部22側とにおいて少しでも均一化させることができる。言い換えれば,三角形状ガス通路7は,波状導電体3のジグザグの隣接する凸部17と平ら状導電体4とが接合されて,波状導電体3の柱部18と平ら状導電体4の一辺とに電流は流れるが,その一辺の数量は内周部21側が少なく,外周部22側に行くほど数量が増えるので,内周部21を流れる導電構造体2の電気抵抗値が,外周部22を流れる導電構造体2に比較して大きくなり,抵抗値の大きい分だけ発熱量が増え,導電構造体2の内周部21側が高温に外周部22側が低温になる。この発明によるガス昇温用ヒータ装置1は,このような偏加熱現象を少しでも避けるため,波状導電体3の凸部17間のピッチを上記のように4段階のピッチ3A~3Dに形成している。
【0018】
このガス昇温用ヒータ装置1は,例えば,エンジンや燃焼器から排出される排気ガスを排出する排気ガス通路12に配設される場合には,円筒状成形体5を形成する波状導電体3と平ら状導電体4には,場合によっては処理するガス体に発生するスートやNOx の有害物質に応じて,適正な触媒を担持させることができる。この場合には,ガス体がエンジン10や燃焼器から排出される排気ガスであって,導電構造体2に触媒を担持させると,排気ガスは触媒の活性化の助けによって浄化されることになる。或いは,ガス昇温用ヒータ装置1を排気ガス浄化装置11の上流側に配設し,排気ガスに含まれている有害物質を触媒の活性化で浄化することができる。この場合には,排気ガス通路12には排気ガスの温度を検出する温度センサー13によって排気ガスの温度が予め決められた所定の温度以下に応答して導電構造体2のヒータ装置1が通電され,ヒータによって排気ガスが加熱されて触媒を活性化する温度に昇温させることができる。
【0019】
或いは,このガス昇温用ヒータ装置1は,図示していないが,例えば,ハウス等を暖房する場合には,即ち,ガス体が空気である場合には,ガス昇温用ヒータ装置1に対して空気を送り込む送風機を設け,送風機からガス昇温用ヒータ装置1に送り込まれた空気を加温する暖房装置に構成することができる。
【0020】
このガス昇温用ヒータ装置1は,上記のように構成されているので,電気ヒータ式は全体システムがシンプルなため,排気ガス浄化装置11に適用して有効な装置になり,ヒータ内での電流密度を可及的に均一化し,かつ熱交換率が高いヒータを提供することができる。このガス昇温用ヒータ装置1は,電流を内周部21より外周部22に向かって放射状に流すものであり,詳しくは,例えば,内周部21側の内周側電極16から外周部22側の電極15に電流を流すと,図3に矢印で示すように,電流は断面三角形状ガス通路7のジグザグ状の金網である柱部18を通って半径方向即ち放射状に流れることになる このガス昇温用ヒータ装置1は,勿論,電極の+-を逆に結線すれば,電流を外周部22の内周側電極16から内周部21の内周側電極16に電流を流すこともできるものである。このガス昇温用ヒータ装置1では,一定寸法の波状導電体3のジグザグ金網が平ら状導電体4の平らな金網の間に挟まれた構造になっているので,一番内周側のジグザグの本数は,外周側のジグザグの本数より少なく,円筒状成形体5の半径に比例している。ところが,内周側から外周側へ流れるトータルの電流値は同一であるので,内周側のジグザグの1つの柱部23に流れる電流は多くなり,発熱量も大きくなる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明によるガス昇温用ヒータ装置は,例えば,船舶,産業機械,内燃機関等のエンジン,燃焼器等から排出される排気ガスに含まれる煤,SOF,サルフェート等の有害物質をを酸化,還元反応で加熱,焼却,除去して消失させる排気ガス浄化装置に適用したり,或いは,ハウス等で空気を加熱する暖房用ヒータ装置に適用して,排気ガス,空気等のガス体の温度を昇温するのに使用して好ましいものである。
【符号の説明】
【0022】
1 ガス昇温用ヒータ構造体
2 導電構造体
3 波状導電体
3A 内側極小ピッチ
3B 2段目小ピッチ
3C 3段目中ピッチ
3D 外側大ピッチ
4 平ら状導電体
5 円筒状成形体
7 断面三角形状のガス通路
10 エンジン
11 排気ガス浄化装置
12 排気ガス通路
13 温度センサー
15 外周側電極
16 内周側電極
17 凸部
18 柱部
19 接点
20 コントローラ
21 内周部
22 外周部
図1
図2
図3
図4