(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】Low-k膜付きウエハの分断方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220208BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220208BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20220208BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
H01L21/78 V
H01L21/78 W
H01L21/78 B
H01L21/78 Q
H01L21/304 631
B23K26/53
B28D5/00 A
(21)【出願番号】P 2018032121
(22)【出願日】2018-02-26
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 健太
(72)【発明者】
【氏名】武田 真和
(72)【発明者】
【氏名】村上 健二
(72)【発明者】
【氏名】栄田 光希
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-004278(JP,A)
【文献】特開2012-109358(JP,A)
【文献】特開2016-174092(JP,A)
【文献】特開2014-038877(JP,A)
【文献】特開2015-083337(JP,A)
【文献】特開2015-084349(JP,A)
【文献】特開2016-040810(JP,A)
【文献】特開2009-206162(JP,A)
【文献】特開2013-230477(JP,A)
【文献】特開2015-149444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
B23K 26/53
B28D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板の一方主面上にLow-k膜が積層形成されたLow-k膜付きウエハを、あらかじめ画定されたストリートに沿って分断する方法であって、
a)レーザビームの照射によって、前記シリコン基板の内部に前記ストリートに沿って変質領域を形成する変質領域形成工程と、
b)前記変質領域形成工程を経た前記Low-k膜付きウエハの前記シリコン基板を研削し前記変質領域をスクライブラインとして露出させるバックグラインド工程と、
c)前記バックグラインド工程を経た前記Low-k膜付きウエハに対し、前記Low-k膜の側から前記スクライブラインに沿ってブレークプレートを当接させることによって前記Low-k膜付きウエハをブレークするブレーク工程と、
d)前記ブレーク工程を経た前記Low-k膜付きウエハをエキスパンド処理することにより、前記Low-k膜付きウエハの前記ストリートによって区画されていた部分を互いに離隔させるエキスパンド工程と、
を備えることを特徴とする、Low-k膜付きウエハの分断方法。
【請求項2】
請求項1に記載のLow-k膜付きウエハの分断方法であって、
前記ブレーク工程においては、前記ブレークプレートとして、刃先角が5°~25°であり、曲率半径が5μm~25μmであるものを用いる、
ことを特徴とする、Low-k膜付きウエハの分断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを分断する手法に関し、特に表面にLow-k膜が積層された半導体ウエハの分断に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に低誘電率絶縁体被膜(Low-k膜)等が積層された半導体ウエハを分断する手法として、膜に溝加工を行うとともに基板内部にレーザによる改質加工を行うものがすでに公知である(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
また、表面に膜が形成された脆性材料基板にスクライブを行い、鋭角のブレークバー(ブレークプレート)によって膜を切断するとともに脆性材料基板ブレークするという、膜付き脆性材料基板の分断方法もすでに公知である(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-173475号公報
【文献】特開2013-254867号公報
【文献】特開2014-087937号公報
【文献】特開2015-083337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体デバイス用のウエハを個々のデバイスチップ単位に分割する手法として、表面に所定のパターンが形成されたウエハの内部にレーザビームを照射して、特許文献1に開示されているような改質層(変質層)を形成し、さらにその裏面を研削して薄肉化した後、ダイシングテープにこれを貼付し、ダイシングテープを伸張させるエキスパンド工程によって改質層からの亀裂伸展を生じさせることで、ウエハを個々のデバイスチップに分割する、という手法が、広く知られている。
【0006】
ただし、係る手法をLow-k膜付きのウエハに適用した場合、膜が良好に分断されず、膜とウエハとの界面で膜が剥離するなどの不具合が生じることがある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ウエハ表面に形成されたLow-k膜の剥離を防止しつつ、ウエハを確実に分断することができる手法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、シリコン基板の一方主面上にLow-k膜が積層形成されたLow-k膜付きウエハを、あらかじめ画定されたストリートに沿って分断する方法であって、a)レーザビームの照射によって、前記シリコン基板の内部に前記ストリートに沿って変質領域を形成する変質領域形成工程と、b)前記変質領域形成工程を経た前記Low-k膜付きウエハの前記シリコン基板を研削し前記変質領域をスクライブラインとして露出させるバックグラインド工程と、c)前記バックグラインド工程を経た前記Low-k膜付きウエハに対し、前記Low-k膜の側から前記スクライブラインに沿ってブレークプレートを当接させることによって前記Low-k膜付きウエハをブレークするブレーク工程と、d)前記ブレーク工程を経た前記Low-k膜付きウエハをエキスパンド処理することにより、前記Low-k膜付きウエハの前記ストリートによって区画されていた部分を互いに離隔させるエキスパンド工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のLow-k膜付きウエハの分断方法であって、前記ブレーク工程においては、前記ブレークプレートとして、刃先角が5°~25°であり、曲率半径が5μm~25μmであるものを用いる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1および請求項2の発明によれば、Low-k膜の剥離を抑制しつつ確実にLow-k膜付きウエハを分断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】Low-k膜付きウエハ10の概略平面図である。
【
図2】Low-k膜付きウエハ10のストリートST近傍の模式断面図である。
【
図3】Low-k膜付きウエハ10をストリートSTの位置において分断する一連の処理についての、処理の流れを示す図である。
【
図4】表面保護テープ5が貼付された後のLow-k膜付きウエハ10を示す図である。
【
図5】変質領域REが形成された後のLow-k膜付きウエハ10を示す図である。
【
図6】BGプロセス実行後のLow-k膜付きウエハ10を示す図である。
【
図7】ブレーク処理を行うブレーク処理装置100を例示する図である。
【
図8】ブレーク処理装置100におけるブレーク処理の途中の様子を示す図である。
【
図9】全てのスクライブラインSL形成箇所に対してブレーク処理を行った後の様子を示す図である。
【
図10】ブレーク処理を行うことなくエキスパンド処理を行った場合について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施の形態における分断の対象であるLow-k膜(低誘電率絶縁体被膜)付きウエハ(半導体基板)10の概略平面図である。
図2は、Low-k膜付きウエハ10のストリートST近傍の模式断面図である。
【0013】
Low-k膜付きウエハ10は概略、シリコン基板1の一方主面上に、Low-k膜2が積層形成された構成を有する。またLow-k膜付きウエハ10においては、多数の単位パターンUPが二次元的に繰り返し交互に形成され、かつ、単位パターンUP同士の間がストリートSTと称される正方格子状の領域によって区画されてなる。ストリートSTに沿って分断することによって、Low-k膜付きウエハ10は単位パターンUPごとに分割され、これにより得られた、それぞれに単位パターンUPを含む個片が、デバイスチップCPとなる。単位パターンUPのサイズ(一辺の長さ)は例えば0.2mm~10mm程度であり、ストリートSTの幅は例えば10μm~100μm程度である。
【0014】
シリコン基板1としては、例えば、直径が8~12インチで、厚みが100μm~1000μm程度(例えば150μm)のものが好適である。なお、厚みについては、後述する処理手順によってLow-k膜付きウエハ10からデバイスチップCPを得る過程において、シリコン基板1を研磨することを考慮した値とされる。Low-k膜2は、例えば、ナノレベルの多数の気孔を有する多孔質のSiO2膜である。Low-k膜2は、1μm~10μm程度(例えば5μm)の厚みを有するものが好適である。
【0015】
より詳細には、単位パターンUPの部分においては、例えばシリコン基板1上に形成されLow-k膜2によって被覆されてなる金属配線3aや、Low-k膜2の上面に形成された薄膜電極3bなどの種々のチップ構成要素3が設けられてなる。一方、ストリートSTの部分においても同様に、金属配線やTEGなどの要素4が設けられていてもよい。
【0016】
図3は、以上のような構成を有するLow-k膜付きウエハ10を、あらかじめ画定されているストリートSTの位置において分断し、多数のデバイスチップCPを得る一連の処理についての、処理の流れを示す図である。
図4ないし
図9は、係る一連の処理の途中における様子を示す模式図である。なお、各図においては、複数のストリートSTが図面に垂直な方向に延在しているものとする。なお、
図4以降の図においては、簡単のため、単位パターンUPに含まれるチップ構成要素3やストリートSTに含まれる要素4の図示を省略している。
【0017】
まず、分断対象たる、単位パターンUPとストリートSTとがあらかじめ画定されたLow-k膜付きウエハ10が用意されると、その一方主面である表面10a(Low-k膜2の露出面2a)に、BG(バックグラインド)プロセス用の表面保護テープ5が貼付される(ステップS1)。
【0018】
係る表面保護テープ5が貼付された後のLow-k膜付きウエハ10を
図4に示す。表面保護テープ5としては、公知のもの(市販のもの)を用いることができる。
【0019】
係る表面保護テープ5を貼付した後のLow-k膜付きウエハ10の内部に対し、変質領域の形成を行う(ステップS2)。係る変質領域の形成は、
図4に示すように、所定の出射源LSから出射させたレーザビームLBを、裏面10b(シリコン基板1の露出面1b)側から、シリコン基板1の内部に集光点Fが位置するように照射しつつ、これをストリートSTの延在方向(図面に垂直な方向)に沿って走査することにより行う。このときの集光点Fの、Low-k膜付きウエハ10の裏面10bからの深さd1は、Low-k膜付きウエハ10の残りの部分の厚み(深さ)d2が、最終的に得ようとするデバイスチップCPの厚みtと概ね同じとなるように、設定される。
【0020】
係るレーザビームLBの照射には、公知のレーザ加工装置を利用可能である。
【0021】
全てのストリートSTを対象に、係る態様にてレーザビームLBの照射がなされると、それぞれのストリートSTにおいて、集光点Fを含む所定の深さ範囲に変質領域REが形成される。係る変質領域REが形成された後のLow-k膜付きウエハ10を
図5に示す。
【0022】
変質領域REが形成されると、続いて、
図5において矢印AR1にて示すように裏面10bの側からLow-k膜付きウエハ10を(シリコン基板1を)研削し、その厚みを低減させる(薄肉化する)、BG(バックグラインド)プロセスを行う(ステップS3)。
【0023】
図6は、係るBGプロセス実行後のLow-k膜付きウエハ10を示している。BGプロセスを行うことにより、シリコン基板1においては内部に存在していた変質領域REが露出するようになる。以降、係る態様にて外部に露出した変質領域REをスクライブラインSLとも称する。なお、この変質領域REにおいては変質によって周囲より材料強度が低下しているため、外部に露出することによって当該変質領域REを構成する材料が欠落し、溝形状をなすこともある。
【0024】
以降、係るBGプロセスの実行により厚みがtとなったLow-k膜付きウエハ10を特に、BG後ウエハ10αとも称し、このときのシリコン基板1をBG後シリコン基板1αとも称する。
【0025】
係るBG後ウエハ10αはブレーク処理に供される。
図7は、係るブレーク処理を行うブレーク処理装置100を例示する図である。
【0026】
ブレーク処理を行うにあたってはまず、平板環状の保持リング7に張設されたダイシングテープ6が用意され、BG後ウエハ10αは、BG用の表面保護テープ5が貼付された表面10aを上面とし、スクライブラインSLが存在する裏面10bを下面として、該ダイシングテープ6上に搭載される(ステップS4)。なお、ダイシングテープ6としては、ダイボンディング剤が塗布されたダイシングボンディングテープを用いる態様であってもよい。
【0027】
係る搭載がなされると、BG用の表面保護テープ5は剥離され(ステップS5)、代わって、表面10aには(Low-k膜2の上面上には)ブレーク用の表面保護テープ8が貼付される(ステップS6)。好ましくは、
図7に示すように、ブレーク用の表面保護テープ8は、その外周端部が保持リング7に貼付される態様にてBG後ウエハ10αに貼付される。そして、係る表面保護テープ8の貼付により得られた、BG後ウエハ10αとダイシングテープ6と保持リング7とブレーク用の表面保護テープ8とが一体とされた被処理体が、ブレーク処理装置100におけるブレーク処理に供される。
【0028】
ブレーク処理装置100は、弾性体からなり、上面101aにBG後ウエハ10αが水平に載置される支持部101と、該支持部101を下方から支持するベース部102とから構成され、水平方向に移動自在でありかつ面内方向に回転自在に設けられたステージ110と、所定の刃渡り方向に延在してなる刃先103eを一方端部に有し、当該刃先103eが下側となる姿勢にて矢印AR2に示す鉛直方向に昇降自在とされてなるブレークプレート103とを、主として備える。
【0029】
図7においては、等間隔に設けられたスクライブラインSLが図面に垂直な方向に延在するように、BG後ウエハ10αが支持部101の上面101aに載置されてなるとともに、あるスクライブラインSLの鉛直上方に、ブレークプレート103が(より詳細にはその刃先103eが)、スクライブラインSLの延在方向に沿って配置されてなる場合を示している。
【0030】
支持部101は、硬度が65°~95°、好ましくは70°~90°、例えば80°である材質の弾性体にて形成されるのが好適である。係る支持部101としては、例えばシリコーンゴムなどを好適に用いることができる。一方、ベース部102は、硬質の(弾性を有していない)部材からなる。
【0031】
ブレークプレート103は、図面に垂直な方向に長手方向(刃渡り方向である)を有する金属製の薄板部材である。刃先103eは、部分E1についての拡大図に示すように、所定の刃先角θを有するとともに、先端部が曲率半径Rの円弧状となっている。
【0032】
図8は、ブレーク処理装置100におけるブレーク処理の途中の様子を示している。ブレーク処理は、概略、BG後ウエハ10αに対しその表面側からスクライブラインSLの形成位置の鉛直上方に向けてブレークプレート103を下降させ、刃先103eがLow-k膜2を覆う表面保護テープ8に当接した後もブレークプレート103を矢印AR3に示す方向へ押し下げるという態様にて、行われる(ステップS7)。この押し下げによって、部分E2の拡大図に示すように、スクライブラインSLの側方に矢印AR4a、AR4bにて示すような相反する向きの力が生じ、これによって、矢印AR5にて示すようにスクライブラインSLから鉛直上方に向けて亀裂CRが伸展する。この亀裂は、BG後シリコン基板1αを貫通してLow-k膜2にまで達し、好ましくは、BG後ウエハ10αの表面にまで達する。
【0033】
本実施の形態においては、刃先103eの刃先角θと曲率半径Rの値を、BG後シリコン基板1αの厚みとLow-k膜2の厚みに応じて好適に定めることにより、係るブレークにおけるBG後シリコン基板1αからLow-k膜2への亀裂CRの伸展が、Low-k膜2の剥離を生じさせることなく、好適に実現されるようになっている。
【0034】
BG後シリコン基板1αの厚みが50μm~400μm程度であり、Low-K膜2の厚みが1μm~10μm程度である、一般的なBG後ウエハ10αの場合であれば、刃先103eの刃先角θが5°~25°であり、曲率半径Rが5μm~25μmであるブレークプレート103を用いることで、Low-k膜2の剥離が生じないBG後シリコン基板1αの分断が可能である。
【0035】
図9は、全てのスクライブラインSL形成箇所に対してブレーク処理を行った後の様子を示している。以降、ブレーク処理を経たウエハ10を特にブレーク後ウエハ10βとも称する。
図9においては、亀裂CRの伸展により、ブレーク後ウエハ10βの全てのストリートSTにおいて亀裂CRがLow-k膜2を貫通している様子を示しているが、これは必須の態様ではない。
【0036】
ブレーク処理の終了後、ブレーク後ウエハ10βからブレーク用の表面保護テープ8が剥離される(ステップS8)。そして、係る剥離後のブレーク後ウエハ10βは、公知のエキスパンド処理に供される(ステップS9)。エキスパンド処理においては、ダイシングテープ6を伸張させることによって、それまで隣り合っていた個々のデバイスチップCPを構成する部分を離隔させる。仮にブレーク処理の終了の時点では亀裂CRがLow-k膜2を貫通していない箇所があったとしても、係るエキスパンド処理によって亀裂CRはLow-k膜2を貫通する。係るエキスパンド処理を経ることで、ブレーク後ウエハ10βは、個々のデバイスチップCPに分割される。
【0037】
図10は、比較のために示す、ブレーク処理を行うことなく(より詳細にはステップS7~ステップS8の処理を行うことなく)エキスパンド処理を行った場合について説明するための図である。
【0038】
係る場合、矢印AR6a、AR6bにて示すように、ダイシングテープ6に貼付されたBG後ウエハ10αを直ちにエキスパンドすることになる。これは、部分E3の拡大図にて示すように、矢印AR7にて示すようなスクライブラインSLからLow-k膜2に至る亀裂CRの直線的な伸展を生じさせ、さらには隣り合うデバイスチップCPを互いに離隔させることを意図したものであるが、実際には、BG後シリコン基板1α内においてはこのような亀裂CRの伸展が見られるものの、Low-k膜2においては、ランダムな方向に亀裂CR1が伸展したり、あるいは、亀裂は伸展せず代わってLow-k膜2に剥離部分Dが生じたりしてしまうことが、確認されている。
【0039】
このことは、変質領域の形成とBGプロセスを経たLow-k膜付きウエハを分断する場合には、BGプロセス後直ちにエキスパンド処理を行うよりも、BGプロセスを経たLow-k膜付きウエハに対しいったんスクライブラインに沿ったブレーク処理を行ったうえで、エキスパンド処理を行う方が、Low-k膜の剥離の抑制を含む確実な分断の実現にとって、有効であることを示している。
【0040】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、シリコン基板上にLow-k膜が形成されたLow-k膜付きウエハの分断を、レーザビームの照射によりシリコン基板内部に変質領域の形成を行った後、シリコン基板を研削して薄肉化するバックグラインドプロセスにより変質領域をスクライブラインとして露出させ、係る研削後のウエハに対してスクライブラインに沿ったブレーク処理を行ったうえで、エキスパンド処理を行う、という手順にて行うことで、Low-k膜の剥離を抑制しつつ確実にLow-k膜付きウエハを分断することができる。
【実施例】
【0041】
刃先角θと曲率半径Rとを種々に違えた5通りのブレークプレート103を用いてBG後ウエハ10αのブレーク処理を行った。表1は、係る場合におけるLow-k膜2への亀裂CRの伸展の良否を判定した結果を、刃先角θと曲率半径Rの条件とともに示している。なお、BG後ウエハ10αとしては、BG後シリコン基板1αの厚みが150μmであり、Low-K膜2の厚みが5μmであるものを用いた。ブレークの際のブレークプレート103の下降速度は100mm/sとし、押し込み量は100μmとした。
【0042】
【0043】
表中、「○」(丸印)は、亀裂CRの伸展が良好になされ、かつ、Low-k膜2に剥離が生じなかったことを示している。「△」(三角印)は、亀裂CRの伸展が概ね良好になされたが、Low-k膜2に部分的に剥離が生じたことを示している。「×」(バツ印)は、剥離が多発したことを示している。
【0044】
表1に示すように、少なくとも刃先角θが15°以下であり、曲率半径が10μmであるブレークプレート103については、BG後シリコン基板1αからLow-k膜2への亀裂CRの伸展が、好適に実現され、かつ、Low-k膜2の剥離が生じないことが、確認された。
【符号の説明】
【0045】
1 シリコン基板
1α BG後シリコン基板
2 Low-k膜
3 チップ構成要素
5 表面保護テープ
6 ダイシングテープ
7 保持リング
8 表面保護テープ
10 Low-k膜付きウエハ
10α BG後ウエハ
10β ブレーク後ウエハ
10a (Low-k膜付きウエハの)表面
10b (Low-k膜付きウエハの)裏面
100 ブレーク処理装置
101 支持部
101a 上面
102 ベース部
103 ブレークプレート
103e 刃先
110 ステージ
CP デバイスチップ
CR 亀裂
F 集光点
LB レーザビーム
LS 出射源
RE 変質領域
SL スクライブライン
ST ストリート
UP 単位パターン