IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 5ディー・ヘルス・プロテクション・グループ・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-抗菌組成物 図1
  • 特許-抗菌組成物 図2A
  • 特許-抗菌組成物 図2B
  • 特許-抗菌組成物 図2C
  • 特許-抗菌組成物 図3
  • 特許-抗菌組成物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 229/16 20060101AFI20220208BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20220208BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20220208BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 31/30 20060101ALI20220208BHJP
   A61K 31/315 20060101ALI20220208BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C07C229/16 CSP
A01N59/16 A
A01N59/16 Z
A01N59/20 Z
A01P3/00
A61K31/198
A61K31/30
A61K31/315
A61P31/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019510479
(86)(22)【出願日】2017-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 GB2017051243
(87)【国際公開番号】W WO2017191453
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】1607814.9
(32)【優先日】2016-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518389886
【氏名又は名称】5ディー・ヘルス・プロテクション・グループ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】5D HEALTH PROTECTION GROUP LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】パーシヴァル,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ハント,ジョン・アラン
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0162800(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0101207(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0056993(US,A1)
【文献】特表2009-533141(JP,A)
【文献】特表2003-522734(JP,A)
【文献】特表2009-519312(JP,A)
【文献】Zeitschrift fuer Naturforschung, B: A Journal of Chemical Sciences,2008年,Vol.63, No.12,pp.1361-1366,DOI 10.1515/znb-2008-1204
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A01N
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式M(EDTA)の化合物であって、式中:
nが2~4の整数であり;
各々のMが金属イオンであり;そして
が、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される少なくとも2つの異なる金属イオンを含む化合物。
【請求項2】
n=3又は4であり、Mが2つのAgイオンを含む、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が少なくとも1つのAgイオン及び1つのZnイオンを含む、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項4】
式AgZn(EDTA)を有する請求項3記載の化合物。
【請求項5】
が少なくとも1つのAgイオン及び1つのCuイオンを含む、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項6】
式AgCu(EDTA)を有する、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の1つ又は複数の化合物を含む組成物。
【請求項8】
1つ又は複数の化合物を含むヒドロゲルである、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
1つ又は複数の化合物と接触する繊維を含む、請求項7記載の組成物。
【請求項10】
非金属イオン抗菌剤を含む、請求項7~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
界面活性剤を含む、請求項7~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~6のいずれかに記載の化合物又は請求項7~11のいずれかに記載の組成物を含む創傷被覆材。
【請求項13】
請求項1~6のいずれかに記載の化合物又は請求項7~11のいずれかに記載の組成物を含む医療機器。
【請求項14】
基質のバイオフィルムを衛生化する及び/又は基質からバイオフィルムを実質的に除去するための、請求項1~6のいずれかに記載の化合物又は請求項7~11のいずれかに記載の組成物の使用であって、ここで基質が、医療機器の一部、あるいは食品調製及び加工装置又は食品の一部である使用
【請求項15】
医薬として使用するための、請求項7~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~6のいずれかに記載の化合物又は請求項7~11のいずれかに記載の組成物及び医療機器又は創傷被覆材を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、バイオフィルム及び前記バイオフィルム内又は周囲に生存する微生物を衛生化及び/又は実質的に除去するための化合物、組成物、方法、及び使用に関する。特に、本発明は、バイオフィルム及び前記バイオフィルム内及び周囲に生存する病原性微生物を処理する創傷処置、創傷被覆材、医療機器、水処理、食品加工、及び歯科治療に使用することができる金属EDTA化合物に関する。
【0002】
背景
微生物による、皮膚及び医療機器を含む表面(非生物及び生物)のコロニー形成は、患者への重大な感染リスクを表す。これらの微生物が表面上に付着して増殖する際、それらはバイオフィルムを形成する。バイオフィルム環境内に生存する微生物集団が治癒の遅延及び感染リスクの増加に寄与することがますます認識されている。例えば、慢性創傷は、病原性バイオフィルムが存在する場合には、効果的に治癒しないであろう。そのようなバイオフィルムは、患者の免疫系及び抗菌処置に抵抗し、組織破壊、炎症、及び/又は重篤な感染に導きうる。これらの創傷は、しばしば、多微生物集団によりコロニー形成される。そのような慢性創傷において、バイオフィルム内の微生物は、それらのプランクトン対応物と比較して、抗菌性介入に対して100~1000倍耐性でありうる(Singh and Barbul, Wound Rep Reg. 16:1, 2008)。Jamesらによる最近の試験(Wound Rep Reg. 16: 37-44, 2008)では、それらの試験において分析された慢性創傷の少なくとも60%がバイオフィルムによりコロニー形成されることが示されている。
【0003】
バイオフィルムが表面(生物学的又は非生物的な表面を問わず)上で発生するためには、微生物は最初に表面に付着しなければならない。一度、表面にしっかりと付着すると、それらは増殖し、細胞外ポリマー物質(EPS)を産生する。EPSは、多糖類、タンパク質、細胞外DNA、ならびに他の生物学的及び無機的な物質からなる。EPSは、バイオフィルムのマトリックスを形成し、免疫細胞及び抗菌剤から微生物を保護するのに役立ち、抗菌剤(例、抗生物質及び殺生物剤、特に消毒剤)の有効性を低下させる。従って、バイオフィルムを破壊し、バイオフィルムに適用される抗菌剤に微生物を曝露し、そのようにする際に、バイオフィルム中に生存する微生物を効果的に処理するために必要なそのような抗菌剤の濃度を低下させることが望ましい。
【0004】
二ナトリウム塩又はカルシウム二ナトリウム塩として加えられるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、局所感染を処置するために、又はカテーテルなどの硬質表面を処理するために使用されてきた。WO03/047341には、例えば練り歯磨き用の添加剤としてのEDTAの使用が記載されている。EDTAはまた、水硬度の影響を低下させるための配合剤及び一般的にはキレート剤として使用される。
【0005】
他の抗生物質剤とのEDTAの組み合わせは、例えば、US 5998488に開示されており、そこでは、EDTAは、眼科用溶液中の抗菌性保存剤との組み合わせで使用される。
【0006】
発明の概要
とりわけ、本明細書又は他所で特定されているかにかかわらず、先行技術の少なくとも1つの欠点に対処する化合物を提供すること、又は既存の抗菌剤、例えば先行技術の金属-EDTA化合物の代替物を提供することが、本発明の1つの目的である。例えば、創傷処置又は医療機器において抗バイオフィルム活性及び/又は抗菌活性及び/又は抗炎症活性を提供する化合物又は組成物を提供することが、本発明の目的でありうる。
【0007】
本発明の態様によれば、添付の特許請求の範囲に記載する化合物、組成物、産物、及び使用が提供される。本発明の他の特徴は、従属請求項及び以下の記載から明らかになるであろう。
【0008】
本明細書を通じて、用語「含んでいる」又は「含む」は、特定された成分を含むが、他の成分の存在を排除するものではないことを意味する。用語「から本質的になっている」又は「から本質的になる」は、特定された成分を含むが、不純物として存在する物質、成分を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する不可避の物質を除く他の成分、及び本発明の技術的効果を達成する以外の目的のために加えられる成分を排除することを意味する。典型的には、組成物を指す場合、1組の成分から本質的になる組成物は、5重量%未満、典型的には3重量%未満、より典型的には1重量%未満の非特定成分を含む。
【0009】
用語「からなっている」又は「からなる」は、特定された成分を含むが、他の成分の添加を排除することを意味する。
【0010】
適当な場合はいつでも、文脈に依存して、用語「含む」又は「含んでいる」の使用は、「から本質的になる」又は「から本質的になっている」という意味を包含する、又は含むと取ってもよく、「からなる」又は「からなっている」という意味を含むと取ってもよい。
【0011】
本明細書に記載する任意の特徴は、適当な場合、個別に、又は互いに組み合わせてのいずれかで、特に添付の特許請求の範囲に記載する組み合わせで使用してもよい。本明細書に記載する本発明の各々の態様又は例示的な実施態様の任意の特徴は、適切な場合、本発明の任意の他の態様又は例示的な実施態様にも適用可能として読むべきである。換言すれば、本明細書を読んだ当業者は、本発明の各々の例示的な実施態様についての任意の特徴を、異なる例示的な実施態様の間で互換的かつ組み合わせ可能と考えるべきである。
【0012】
本明細書において、用語「抗菌」は、ウイルス、プリオン、原生動物、アメーバ、細菌、真菌、及び酵母を含む、任意の1つ又は複数の型の微生物、又は微生物の特定の種の任意の1つ又は複数を殺傷しうる及び/又は阻害しうる及び/又は増殖を停止しうる化合物又は組成物を指す。
【0013】
用語「バイオフィルム」は、細胞外ポリマーマトリックス(EPSで構成される)中に封入され、生物学的又は非生物的な表面に付着した、微生物の単培養及び多微生物群コミュニティの両方を指す。
【0014】
用語「バイオフィルム形成」は、表面への微生物の付着及びその後のEPSマトリックス内の複数の細胞層の発生を指す。
【0015】
用語「抗バイオフィルム」は、微生物バイオフィルムの形成の阻害、ならびに/あるいはバイオフィルムの破壊及び/又は分散、ならびに/あるいはバイオフィルムのEPSの分離及び/又は分散及び/又は分解を指す。
【0016】
用語「抗炎症性」は、典型的には創傷における炎症又は腫脹を低下させる物質又は処置の特性を指す。
【0017】
用語「感染」は、体内に通常は存在しない微生物(例えば細菌、ウイルス、真菌、酵母、及び寄生虫など)の侵入及び増殖を指す。感染は症状を起こさず、無症状でありうる、又はそれは症状を起こし、臨床的に明らかでありうる。感染は局在したままであるか、又はそれは血液又はリンパ管を通じて広がり、全身性(体全体)になりうる。体内に自然に生存する微生物は、感染性とは考えられない。
【0018】
用語「創傷」は、皮膚が裂ける、切開される、穿刺される(開放創)傷害、又は鈍力外傷が挫傷(閉創)を起こす傷害の型を指す。
【0019】
用語「急性創傷」は、新しく、治癒の第1段階にある創傷を指す。急性創傷は、外力又は物体により穿刺された又は壊された皮膚層により特徴付けられる。急性創傷は、予期された時間内に治癒しない場合、又は血液、酸素、栄養素の供給不良の結果として、もしくは不良な衛生を通じて、慢性創傷に進行することがありうる。急性創傷を適切に処置して、感染及び/又は炎症を避けるべきである。急性創傷は、原因(例えば裂傷、擦過傷、穿刺、切開、銃砲、火傷など)に基づき、ならびにそれらのサイズ及び深さ(表面又は深部)に従って分類する。
【0020】
用語「慢性創傷」は、経時的にそれ自体を修復しない創傷を指す。慢性創傷は、しばしば、創傷治癒段階の1つに「停滞」していると考えられ、高齢の成人集団において最も多く見られる。典型的には、創傷が2~3ヶ月以内に予期されたように治癒しない場合、それは慢性と考えられる。慢性創傷には、褥瘡(例、床ずれ)、動脈及び静脈脚潰瘍、ならびに糖尿病性潰瘍が含まれる。
【0021】
本発明の第1の態様によれば、式M(EDTA)の化合物を提供する;式中:
nは2~4の整数であり;
各々のMは金属イオンであり;そして
は、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される少なくとも2つの異なる金属イオンを含む。
【0022】
式M(EDTA)の化合物は、金属-EDTA化合物として記載してもよい。用語「金属-EDTA化合物」は、前記金属及び前記EDTA化合物が塩、イオン、又は中性種として存在するか否かにかかわらず、少なくとも1つの金属及び少なくとも1つのEDTA分子を含む任意の型の化学種を指し、従って、金属-EDTA塩、キレート、及び配位錯体を包含する。式M(EDTA)の化合物は、塩及び/又はキレート及び/又は配位錯体でありうる。適切には、式M(EDTA)の化合物は、金属原子とEDTA分子との間のイオン結合を含む塩である。適切には、式M(EDTA)の化合物は中性化合物である。電荷情報が特定の式において与えられていない場合、その式により表される化合物は全体的な電荷を有しないと仮定してもよい。
【0023】
化合物は固体の形態でありうる。代替的に、化合物は、溶液又は懸濁液、適切には水溶液又は水性懸濁液、適切には水溶液中に存在してもよい。
【0024】
nは2~4の整数である。従って、化合物は、二金属-EDTA化合物、三金属EDTA化合物、又は四金属EDTA化合物でありうる。
【0025】
この化合物は、式M(EDTA)の化合物の混合物でありうる。式M(EDTA)の化合物の混合物は、異なる数の金属イオン、例えば以下の種の少なくとも2つを含みうる:M(EDTA)、M(EDTA)、及びM(EDTA)。
【0026】
式がM(EDTA)である化合物において、各々の金属イオンは1+電荷を有し、化合物は全体的な電荷を有さず、EDTA成分は遊離カルボン酸基を有さない。式がM(EDTA)である化合物において、各々の金属イオンは1+電荷を有し、化合物は全体的な電荷を有さず、EDTA成分は1つの遊離カルボン酸基を有する。式がM(EDTA)である化合物において、各々の金属イオンは1+電荷を有し、化合物は全体的な電荷を有さず、EDTA成分は2つの遊離カルボン酸基を有する。化合物が含む金属イオン(M)の数は、化合物が存在しうる溶液のpHに依存しうる。例えば、酸性pHは、化合物中に存在する金属イオン(M)の数を低下させうる。
【0027】
式M(EDTA)の化合物中に存在する金属イオン(M)のいずれかが1+より高い電荷を有し(例えば、Zn2+)、化合物が全体的な電荷を有さない場合、化合物中に存在しうる金属イオン(M)の数は低下し(即ち、nは2又は3である)、化合物中に存在する遊離カルボン酸の数はそれに応じて低下するであろう。
【0028】
は、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される少なくとも2つの異なる金属イオンを含む。適切には、Mは、Ag、Au、Ce、Cu、Ga、及びZnイオンより選択される少なくとも2つの異なる金属イオンを含む。
【0029】
化合物が式M(EDTA)を有し、MがAg、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される少なくとも2つの異なる金属イオンを含むため、化合物はEDTA、少なくとも第1の金属イオンM及び少なくとも第2の金属イオンMを含むと考えてもよく、そこでMとMは異なり、各々がAg、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される。
【0030】
は4つまでの金属イオンを含むことができる。nが3又は4である場合、Mは、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される少なくとも2つの異なる金属イオンに加えて、他の金属イオンを含みうる。一部の実施態様において、Mが含む他の金属イオンはNaイオンである。例えば、n=3又は4の場合、Mは1つのNaイオンを含むことができ、又はn=4の場合、Mは2つのNaイオンを含みうる。
【0031】
一部の実施態様において、Mは、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される金属イオンだけを含む。例えば、Mは、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される2つ、3つ、又は4つの異なる金属イオンを含みうる。代替的に、Mは、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される1を上回る任意の特定の金属イオン、例えば1を上回るAgイオンを含みうる。
【0032】
適切には、n=3又は4であり、Mは2つのAgイオンを含む。この場合において、式M(EDTA)の化合物はまた、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される少なくとも1つの金属イオンを含む。
【0033】
適切には、Mは少なくとも1つのAgイオンを含む。適切には、Mは、少なくとも1つのAgイオンと、Cu、Ga、及びZnイオンより選択される少なくとも1つの金属イオンを含む。適切には、Mは、少なくとも2つのAgイオンと、Cu、Ga、及びZnイオンより選択される少なくとも1つの金属イオンとを含む。
【0034】
適切には、Mは、少なくとも1つのAgイオン及び1つのZnイオンを含む。適切には、nは3であり、Mは2つのAgイオン及び1つのZnイオンを含む。適切には、この第1の態様の化合物は、式AgZn(EDTA)を有する。
【0035】
一部の実施態様において、nは2であり、Mは1つのAgイオン及び1つのZnイオンを含む。適切には、この第1の態様の化合物は、式AgZnNa(EDTA)を有する。
【0036】
身体への外部存在物として、バイオフィルムによって、免疫プロセスにおける上方調節がある場合、人体に炎症応答が開始される。Znイオンは抗炎症特性を有し、従って、式M(EDTA)の化合物が1つ又は複数のZnイオンを含む場合、Znイオンは、化合物の任意の抗菌及び/又は抗バイオフィルム効果に加えて、この第1の態様の化合物が適用されうる創傷に有益な抗炎症効果を提供しうる。
【0037】
適切には、Mは、少なくとも1つのAgイオン及び1つのCuイオンを含む。適切には、nは3であり、Mは2つのAgイオン及び1つのCuイオンを含む。適切には、この第1の態様の化合物は式AgCu(EDTA)を有する。
【0038】
一部の実施態様において、nは2であり、Mは1つのAgイオン及び1つのCuイオンを含む。適切には、この第1の態様の化合物は式AgCuNa(EDTA)を有する。
【0039】
適切には、nは2であり、MはCuイオン及びZnイオンを含む。適切には、化合物は式CuZn(EDTA)を有する。
【0040】
がCuイオン及びZnイオンを含む場合、Znイオンと組み合わせたCuイオンは、相乗的な抗菌効果を示しうるが、それは、他の方法で可能でありうるよりも、この第1の態様の化合物のより低い、従ってより少ない細胞傷害濃度を使用することを可能にしうる。
【0041】
この第1の態様の化合物は、実施例において記載する方法に従って合成してもよい。一般的に、この第1の態様の化合物は、商業的に入手可能なEDTAの四ナトリウム塩(Na(EDTA))を、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される少なくとも2つの異なる金属イオン(M)の塩の混合物と反応させることにより合成することができる。そのような塩の例には、硫酸塩及び塩化物が含まれる。
【0042】
本発明者らは、この第1の態様の化合物が有用な生物学的活性を示しうることを見出した。化合物は、使用中に抗菌活性、抗バイオフィルム活性、及び抗炎症活性の任意の1つ又は複数を示しうる。化合物は、好ましくは、ヒト投与のために安全であり、生体適合性及び非腐食性である。適切には、化合物は、例えば、創傷被覆材又は医療器具中に組み入れられた場合、使用中に抗菌活性及び/又は抗バイオフィルム活性及び/又は抗炎症活性を示す。
【0043】
この第1の態様の化合物は、バイオフィルムを処理する及び/又はそれに対抗する上で、例えばバイオフィルムの破壊及び/又は分散、ならびに前記バイオフィルム上及びその中に生存する微生物に対する抗菌作用の提供、及び/又はバイオフィルムのEPS破壊において有用でありうる。この第1の態様の化合物は、創傷被覆材、医療器具において、皮膚あるいは水処理(水分貯蔵及び分配を含む)、食品調製及び加工、又は歯科において重要な他の非生物的又は生物的表面上で使用してもよい。一部の実施態様において、この第1の態様の化合物は、溶液又は懸濁液の形態で、例えば表面、食品調製及び加工装置、及び/又は食品、特に肉加工装置及び肉製品を汚染除去するために使用してもよい。そのような溶液は、乳房炎浸漬溶液、眼科用溶液として、創傷灌流用に又は歯科において使用してもよい。例えば、この第1の態様の化合物は、歯内灌流溶液中で、及び/又は歯科用水ラインを洗浄/衛生化するために使用してもよい。
【0044】
一部の実施態様において、この第1の態様の化合物は、医薬として、例えばクリーム、ペースト、又はローション中で使用してもよい。
【0045】
理論に拘束されるものではないが、第1の態様に従った化合物の使用によって、創傷に適用した場合、例えば化合物を創傷被覆材に組み入れた場合、創傷に関連するバイオフィルム中に存在するCa及び/又はMgイオンと反応しうる。この反応は、バイオフィルムからCa及び/又はMgイオンを除去しうるが、それは次にバイオフィルムの完全性を破壊する。Ca及びMgイオンは、これらのイオンがバイオフィルムのマトリックスを構成するEPSと一緒に結合するため、バイオフィルムの構造的完全性の維持のために重要であると考えられている。この反応はまた、金属イオン(M)を化合物から置換し、従って創傷及び/又はバイオフィルム中に放出されて所望の生物学的活性を産生させうる。例えば、化合物の金属イオン(M)がAg及びZnイオンを含む場合、バイオフィルム中に存在するCa及び/又はMgとの反応によって、Agイオンが創傷及び/又はバイオフィルム中に放出されて、有益な抗菌効果を提供し、ならびに/あるいはZnイオンが創傷及び/又はバイオフィルム中に放出されて、有益な抗炎症効果を提供しうる。Znイオンは、抗炎症効果を提供すると考えられている。この第1の態様の化合物の使用は、従って、同時に微生物感染を防止及び処置すること、ならびに/あるいは創傷炎症を低下させることにより創傷治癒を改善しうる。
【0046】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に従った式M(EDTA)の1つ又は複数の化合物を含む組成物を提供する。
【0047】
第2の態様の組成物中の式M(EDTA)の化合物は、第1の態様に関して本明細書に記載する適切な特徴及び/又は有利な特性のいずれかを有しうる。
【0048】
この第2の態様の組成物は、任意の適切な形態で、例えば溶液もしくは懸濁液の形態で、又は乾燥形態などで提供してもよい。
【0049】
適切には、組成物は液体である。
【0050】
組成物は、水溶液、ローション、クリーム、バーム、ゲル、ペースト、又は固体、適切には粉末状の組成物でありうる。
【0051】
一部の実施態様において、この第2の態様の組成物は、式M(EDTA)の化合物の溶液である。そのような溶液において、式M(EDTA)の化合物は、適切な溶媒中に適切に溶解させる。この溶液は、水溶液(例えば水又は生理食塩水など)、又は式M(EDTA)の化合物が可溶性である別の生体適合性溶液を含みうる。この溶液はアルコール、例えばエタノールを含んでもよい。
【0052】
一実施態様において、組成物は、水とエタノールとの混合物中の式M(EDTA)の化合物の溶液である。そのような溶液は非常に有効でありうるが、水中の式M(EDTA)の化合物の濃縮原液を作製し、次に所望の濃度のエタノールを導入することにより調製してもよい。
【0053】
式M(EDTA)の化合物の溶液は、好ましくは、滅菌非発熱性形態で提供し、任意の都合のよい様式で包装してもよい。
【0054】
一部の実施態様において、式M(EDTA)の化合物の溶液は、医療機器、例えば予め充填されたシリンジ又は別の医療機器などに接続して、あるいはその一部として提供してもよい。式M(EDTA)の化合物の溶液は、滅菌無菌条件下で調製してもよく、あるいは種々の適切な滅菌技術のいずれかを使用した調製及び/又は包装に続いて滅菌してもよい。式M(EDTA)の化合物の溶液の単回使用バイアル、シリンジ、又は容器を提供してもよい。複数回使用バイアル、シリンジ、又は容器も提供してもよい。
【0055】
一部の実施態様において、この第2の態様の組成物は、実質的に乾燥した形態で、例えばチュービング、あるいは導管、あるいは医療機器又は工業機器、例えばカテーテルもしくは容器などの表面上の実質的に乾燥したコーティングで提供する。この第2の態様の組成物のそのような実質的に乾燥した形態は、溶剤の添加により再構成して溶液を形成しうる粉末又は凍結乾燥形態で提供してもよい。組成物の実質的に乾燥した形態は、代替的に、コーティングとして提供してもよく、又はゲルもしくは別の型の担体中に組み入れてもよく、又はカプセル化してもよく、もしくは他の方法で包装してもよく、コーティングとして又は容器中で表面上に提供してもよい。この第2の態様の組成物のそのような実質的に乾燥した形態は、溶媒の存在下で、実質的に乾燥した組成物が、上に記載する特性を有する式M(EDTA)の化合物の溶液又は懸濁液を形成するように製剤化する。特定の実施態様において、異なるカプセル化又は保存技術を、式M(EDTA)の化合物の効果的な経時放出が溶液への長期間の曝露時に達成されるように用いてもよい。この実施態様において、この第2の態様の実質的に乾燥した組成物は、長期間にわたる及び/又は溶液への複数回の曝露時に、抗菌活性及び/又は抗バイオフィルム活性及び/又は抗炎症活性を提供しうる。
【0056】
適切には、組成物は水溶液である。
【0057】
適切には、組成物のpHは12.5までである。適切には、組成物のpHは、4.0~12.0の範囲内、適切には4.0~10.0の範囲内、適切には4.5~8.0の範囲内である。適切には、組成物のpHは、4.0~7.0の範囲内、適切には4.0~6.0の範囲内、適切には4.0~5.0である。
【0058】
適切には、組成物は、4.0~12.0の範囲内、適切には4.0~11.0の範囲内、適切には4.0~10.0の範囲内、適切には4.5~8.0のpHを有する水溶液である。適切には、組成物のpHは、4.0~7.0の範囲内、適切には4.0~6.0の範囲内、適切には4.0~5.0である。
【0059】
適切には、式M(EDTA)の化合物は、少なくとも0.01ppm、適切には少なくとも0.1ppm、適切には少なくとも1.0ppm、適切には少なくとも10ppm、適切には少なくとも100ppm、適切には少なくとも1,000ppm、適切には少なくとも5,000ppmの量で組成物中に存在する。
【0060】
適切には、式M(EDTA)の化合物は、100,000ppmまで、適切には10,000ppmまで、適切には5,000ppmまでの量で組成物中に存在する。
【0061】
適切には、式M(EDTA)の化合物は、0.01ppm~100,000ppm、適切には0.1ppm~10,000ppm、適切には1.0ppm~10,000ppm、適切には10ppm~100ppm、適切には100ppm~10,000ppm、適切には1,000ppm~10,000ppmの量で組成物中に存在する。
【0062】
組成物中の式M(EDTA)の化合物の存在の結果として、組成物は、EDTA及び少なくとも第1の金属イオンM及び第2の金属イオンMを含み、M及びMは異なり、各々がAg、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される。
【0063】
適切には、EDTAは、少なくとも0.01ppm、適切には少なくとも0.1ppm、適切には少なくとも1.0ppm、適切には少なくとも10ppm、適切には少なくとも100ppm、適切には少なくとも1,000ppmからの量で組成物中に存在する。
【0064】
適切には、EDTAは、100,000ppmまで、適切には10,000ppmまで、適切には5,000ppmまでの量で組成物中に存在する。
【0065】
適切には、EDTAは、0.01ppm~100,000ppm、適切には0.1ppm~10,000ppm、適切には1.0ppm~10,000ppm、適切には10ppm~100ppm、適切には100ppm~10,000ppm、適切には1,000ppm~10,000ppmの量で組成物中に存在する。
【0066】
適切には、第1の金属イオンMは、少なくとも0.01ppm、適切には少なくとも0.1ppm、適切には少なくとも1.0ppm、適切には少なくとも10ppm、適切には少なくとも100ppm、適切には少なくとも1,000ppmからの量で組成物中に存在する。
【0067】
適切には、第1の金属イオンMは、100,000ppmまで、適切には10,000ppmまで、適切には5,000ppmまでの量で組成物中に存在する。
【0068】
適切には、第1の金属イオンMは、0.01ppm~100,000ppm、適切には0.1ppm~10,000ppm、適切には1.0ppm~10,000ppm、適切には10ppm~100ppm、適切には100ppm~10,000ppm、適切には1,000ppm~10,000ppmの量で組成物中に存在する。
【0069】
適切には、第2の金属イオンMは、少なくとも0.01ppm、適切には少なくとも0.1ppm、適切には少なくとも1.0ppm、適切には少なくとも10ppm、適切には少なくとも100ppm、適切には少なくとも1,000ppmからの量で組成物中に存在する。
【0070】
適切には、第2の金属イオンMは、100,000ppmまで、適切には10,000ppmまで、適切には5,000ppmまでの量で組成物中に存在する。
【0071】
適切には、第2の金属イオンMは、0.01ppm~100,000ppm、適切には0.1ppm~10,000ppm、適切には1.0ppm~10,000ppm、適切には10ppm~100ppm、適切には100ppm~10,000ppm、適切には1,000ppm~10,000ppmの量で組成物中に存在する。
【0072】
第1及び/又は第2ならびに/あるいは任意のさらなる金属イオンの適切な濃度は、存在する特定の金属イオンに依存しうる。例えば、銀金属イオンは、比較的低い濃度で存在してもよく、所与の適用において依然として効果的でありうる。
【0073】
組成物は、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される少なくとも2つの異なる金属イオンに加えて、他の金属イオンを含みうる。そのような他の金属イオンは、任意の適切な金属イオン、例えばNaイオンでありうる。
【0074】
組成物は、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される2を上回る異なる金属イオンを含みうる。
【0075】
組成物は、担体及び/又は賦形剤、適切には医薬的に許容可能な担体及び/又は賦形剤を含みうる。適切な担体及び/又は賦形剤は、水、エタノール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、親水コロイド、ポリオキシエチレンブロックコポリマー、カルボキシメチルセルロース、プルロニックF-127、綿、キトサン、シリコーン、ポリウレタン、アクリル、ヒドロゲル、竹、大豆、油/脂肪、ミセル、エマルジョン、塗料、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、増粘剤、例えばCarbopol(商標)など、及びそれらの混合物より選択されうる。
【0076】
この第2の態様の組成物は、水性ゲルの形態であってもよい。適切には、組成物は、式M(EDTA)の1つ又は複数の化合物を含むヒドロゲルである。適切には、そのようなヒドロゲルは、湿潤創傷治癒環境を維持し、前記組成物が、例えば創傷被覆材の一部として創傷に適用された場合、創傷治癒を促進することができる。そのようなヒドロゲルは、創傷に適用されて創傷床と緊密な接触を形成する場合、創傷中に流入し、抗菌効果及び/又は抗炎症効果を創傷全体に提供しうる。適切には、ヒドロゲルは、患者が動く間に非水平である又は非水平になる身体の領域上の創傷から流出しない十分高い粘度を有する。適切には、ヒドロゲルは、適切にはヒドロゲルのpHを5.5~12.0に緩衝する緩衝液を含む。適切な緩衝液は当技術分野において公知である。
【0077】
この組成物は、非金属イオン抗菌剤を含んでもよい。
【0078】
適切な非金属イオン抗菌剤は、クロルヘキシジン、クロルヘキサジン塩、トリクロサン、ポリモキシン、テトラサイクリン、アミノグリコシド(例、ゲンタマイシン又はトブラマイシン(商標))、リファンピシン、バシトラシン、エリスロマイシン、ネオマイシン、クロラムフェニコール、ミコナゾール、キノロン、ペニシリン、ノノキシノール9、フシジン酸、セファロスポリン、ムピロシン、メトロニダゾール、セクロピン、プロテグリン、バクテリオシン(bacteriolcin)、デフェンシン、ニトロフラゾン、マフェニド、アシクロビル、バノクマイシン、クリンダマイシン、リンコマイシン、スルホンアミド、ノルフロキサシン、ペフロキサシン、ナリジツ酸(nalidizic acid)、シュウ酸、エノキサシン酸(enoxacin acid)、シプロフロキサシン、ビグアニド、ヨード、ティーツリーオイル、蜂蜜、及びスーパーオキシドの任意の1つ又は複数より選択してもよい。一実施態様において、抗菌剤は、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)及び/又はその誘導体を含む。
【0079】
非金属イオン抗菌剤は、式M(EDTA)の化合物により提供される任意の抗菌効果に付加的及び/又は相乗的である有益な抗菌性を提供しうる。
【0080】
この組成物は、界面活性剤を含んでもよい。
【0081】
適切な界面活性剤は、ヘキサメタリン酸ナトリウム又は第4級アンモニウム化合物でありうる。界面活性剤によって、式M(EDTA)の化合物の作用中及び/又は後にバイオフィルムから物質を除去してバイオフィルムを破壊することにより、組成物の抗バイオフィルム有効性が改善されうる。例えば、式M(EDTA)の化合物は、バイオフィルムを破壊するように作用し、そのようにする際に、凝集した細胞を産生しうる。界面活性剤は、これらの細胞を少なくとも部分的に可溶化及び除去し、バイオフィルムに再付着するのを防止し、そのようにする際に、バイオフィルムの分解及び除去を補助するように作用しうる。
【0082】
この組成物は、適切には式M(EDTA)の化合物の任意の抗バイオフィルム特性及び/又は存在する場合には任意の非金属イオン抗菌剤、及び/又は存在する場合には任意の界面活性剤に加えて、抗バイオフィルム剤を含んでもよい。この組成物は、DisperinB、DNase1、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、プロテイナーゼK、アピラーゼ、シス-2-デセン酸、アルギン酸リアーゼ、ラクトフェリン、ガリウム、セルロース、及び5フルオロウラシルの任意の1つ又は複数より選択される抗バイオフィルム剤を含んでもよい。
【0083】
一部の実施態様において、この組成物は、式M(EDTA)の1つ又は複数の化合物と接触している繊維を含む。
【0084】
繊維を含むそのような組成物は、組成物を繊維中に含浸させ、及び/又は組成物を繊維上にコーティングすることにより形成してもよい。適切な繊維は、天然繊維、合成繊維、及びそれらの組み合わせから選択してもよい。適切な繊維は、セルロース、アルギン酸塩、綿、キトサン、大豆、竹、カルボキシメチルセルロース、レーヨン、ナイロン、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレタン発泡体、及びそれらの組み合わせの任意の1つ又は複数の繊維より選択してもよい。
【0085】
繊維を含むそのような組成物は、創傷被覆材中に組み入れてもよく、及び/又は創傷被覆材を形成するために使用してもよい。そのような創傷被覆材は、組成物中に存在する式M(EDTA)の1つ又は複数の化合物が創傷に送達され、第1の態様に関して言及する、有益な効果を産生するという利点を有しうる。例えば、創傷被覆材は、使用中に抗菌活性、抗バイオフィルム活性、及び抗炎症活性のいずれか1つ又は複数を示し、従って、存在する場合、感染に対抗しながら創傷治癒を促進しうる。
【0086】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様に従った化合物又は第2態様に従った組成物を含む創傷被覆材を提供する。
【0087】
創傷被覆材は、第1及び第2の態様に関して記載する、適切な特徴及び利点のいずれかを有しうる。
【0088】
適切には、創傷被覆材は、式M(EDTA)の化合物で含浸、コーティング、浸漬、積層、及び/又は噴霧された創傷接触層中の式M(EDTA)の化合物を含む。代替的に又は追加的に、創傷被覆材は、創傷接触層に付着した吸収剤層中の式M(EDTA)の化合物を含んでもよい。代替的に又は追加的に、創傷被覆材は、使用中に皮膚に接触する接着剤中の式M(EDTA)の化合物を含んでもよい。
【0089】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様に従った化合物又は第2の態様に従った組成物を含む医療機器を提供する。
【0090】
医療機器はカテーテルであってもよい。一部の実施態様において、医療機器は挿管チューブであってもよい。医療機器は、医療チューブ、導管、血管内機器、埋め込み医療機器、医療又は獣医器具、コンタクトレンズ、光学インプラント、又は歯科機器、歯列矯正機器、もしくは歯周機器であってもよい。
【0091】
適切には、第1の態様に従った化合物又は第2の態様に従った組成物は、医療機器の表面の少なくとも一部、適切には使用中の患者の身体の一部と接触することが意図された表面上にコーティングする。そのような表面上に化合物又は組成物をコーティングする方法は、当技術分野において公知である。
【0092】
適切には、この第4の態様の医療機器は、そのような化合物又は組成物を含まない先行技術の同等の医療機器よりも、バイオフィルム形成のための低下した能力を有する。この第4の態様の医療機器は、従って、医療機器上でのバイオフィルム形成及び病原性微生物の増殖により起こされる感染を低下又は実質的に防止しうる。
【0093】
本発明の第5の態様によれば、バイオフィルムを衛生化する及び/又は基質からバイオフィルムを実質的に除去するための第1の態様に従った化合物又は第2の態様に従った組成物の使用が提供される。
【0094】
代替的に及び/又は追加的に、バイオフィルムを衛生化及び/又は基質から実質的に除去する方法を提供し、この方法は、基質を、第1の態様に従った化合物又は第2の態様に従った組成物を用いて処理することを含む。
【0095】
基質は、バイオフィルム処理及び/又は除去が要求される任意の表面でありうる。基質は、ヒト又は動物の身体上の創傷であってもよく、創傷は、上に記載する型のいずれかである。基質は、医療機器の一部でありうる。一部の実施態様において、基質は、食品調製及び加工装置又は食品、例えば肉加工装置又は肉製品の一部でありうる。
【0096】
適切には、使用及び/又は方法によって、少なくともバイオフィルムが破壊及び/又は分散される。適切には、使用及び/又は方法によって、第1の態様の化合物及び/又は化合物から放出された任意の金属イオンならびに/あるいは第2の態様に従った組成物中に存在する任意の追加の薬剤(例えば非金属イオン抗菌剤及び/又は抗バイオフィルム剤など)により攻撃されるバイオフィルム及びその中の微生物の感受性が増加される。適切には、使用及び/又は方法によって、基質からバイオフィルムが完全に除去される。適切には、この使用及び/又は方法によって、基質が衛生化される。適切には、使用及び/又は方法によって、バイオフィルムが基質から完全に除去されて、基質を衛生化する。
【0097】
創傷上で行われる使用及び/又は方法によって、有利には、創傷治癒が促進される、及び/又は感染が処置される、及び/又は炎症が低下されうる。
【0098】
医療機器上で行われる使用及び/又は方法によって、有利には、医療機器が洗浄される、及び/又は衛生化され、従って、病原性微生物を有するバイオフィルムを含む医療機器により起こされる感染が防止されうる。
【0099】
食品上で行われる使用及び/又は方法によって、有利には、食品上での病原性微生物の成長が遅くなる、又は好ましくは停止させ、従って、病原微生物で汚染されたそのような食品を摂取することによって生じうる食品の腐敗及び食中毒が防止されうる。
【0100】
本発明の第6の態様によれば、医薬としての使用のための、第1の態様に従った化合物又は第2の態様に従った組成物を提供する。
【0101】
適切には、化合物又は組成物は、バイオフィルムを衛生化する及び/又は創傷からバイオフィルムを実質的に除去するための使用のためである。
【0102】
第6の態様における使用のための化合物又は組成物は、切傷、挫傷、手術部位、裂傷、擦過傷、穿刺、切開、銃創、火傷、膿皮症、アトピー性皮膚炎、湿疹、圧迫潰瘍、静脈及び動脈脚潰瘍、糖尿病性足部潰瘍、嚢胞性線維症(CF)関連感染症、乳腺炎、耳炎、市中感染症もしくは院内感染症、又は食物媒介性疾患の感染症を処置するために使用されうる。
【0103】
本発明の第7の態様によれば、第1の態様の化合物を産生する方法であって、金属-EDTA化合物を、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される第1の金属イオンの塩及びAg、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される第2の金属イオンの塩と反応させることを含み;第1及び第2の金属イオンが異なる方法を提供する。
【0104】
適切には、本方法は、金属-EDTA錯体を第1の金属イオンの塩及び第2の金属イオンの塩と同時に反応させることを含む。
【0105】
別の実施態様において、この第7の態様の方法は、
a)金属-EDTA錯体を、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される第1の金属イオンの塩と反応させる工程;及び
b)工程a)において形成された、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される1つの金属イオンを含むEDTA錯体を、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される第2の金属イオンの塩と反応させる工程;
を含み、ここで、第1及び第2の金属イオンは異なる。
【0106】
適切には、方法の工程は、工程a)、それに続く工程b)の順番で行う。
【0107】
本発明の第7の態様によれば、第1の態様に従った化合物又は第2の態様に従った組成物及び医療機器又は創傷被覆材を含むキットを提供する。
【0108】
適切には、キットは、予め充填されたシリンジ又は別の医療機器中に適切に含まれる、式M(EDTA)の化合物の溶液又は懸濁液を含む。
【0109】
適切には、医療機器はカテーテル又は挿管チューブである。
【0110】
本発明の第8の態様によれば、医療機器の少なくとも一部をコーティングするための第1の態様に従った化合物又は第2の態様に従った組成物の使用を提供する。
【0111】
本発明のさらなる態様によれば、創傷被覆材における第1の態様に従った化合物又は第2の態様に従った組成物の使用を提供する。
【0112】
本発明のさらなる態様によれば、水処理の方法における第1の態様に従った化合物又は第2の態様に従った組成物の使用を提供する。
【0113】
本発明のさらなる態様によれば、食品調製又は食品加工の方法における第1の態様に従った化合物又は第2の態様に従った組成物の使用を提供する。
【0114】
本発明のさらなる態様によれば、歯科手順における第1の態様に従った化合物又は第2の態様に従った組成物の使用を提供する。
【0115】
本発明の第9の態様によれば、創傷処置又は医療機器において抗バイオフィルム活性及び/又は抗菌活性及び/又は抗炎症活性を提供するための、第1の態様に従った化合物又は第2の態様に従った組成物の使用を提供する。
【0116】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に実質的に記載する化合物、組成物、創傷被覆材、医療機器もしくは使用、及び/又は、添付の図面を参照して本明細書に実質的に記載する化合物、組成物、創傷被覆材、医療機器もしくは使用、及び/又は、添付の図面において実質的に示す化合物、組成物、創傷被覆材、医療機器もしくは使用を提供する。
【0117】
実施例
【0118】
比較例1-四銀-EDTAの形成及び溶出。
【0119】
標準曲線
【0120】
原理:Fe3+はチオシアン酸塩と反応して赤色錯体を産生する。Na(EDTA)(四ナトリウムEDTA)はFe3+と反応し、その結果、赤色はNaEDTAのレベルが増加するにつれて減少する。
【0121】
装置:UV分光光度計
【0122】
試薬:
Na(EDTA)標準、
塩酸(HCl)ACS試薬、
チオシアン酸塩溶液-100mlの水中のチオシアン酸アンモニウム、
Fe3+溶液-少量のHCl中にアンモニウム硫酸鉄(III)12水和物を溶解し、酢酸ナトリウム緩衝液を加えて、次に水に加えることにより形成する。
【表1】
【0123】
図1は、四ナトリウムEDTAについての標準相関曲線を示す。結果は、0~11.9mMの濃度の溶液中でのOD(光学密度)値と四ナトリウムEDTAの量の間での直線的な相関があることを示しており、この方法を、固体として又は溶液中で四ナトリウムEDTAを定量的に測定するために使用できることを意味する。
【0124】
四銀ETDAの発生及び溶出測定。
【0125】
方法
1.1gのPUを10mlのジメチルホルムアミド(DMF)中に60℃で一晩溶解させることによりポリウレタン(PU)溶液を調製する。
2.四銀EDTA錯体を調製し、異なる濃度(100mg/ml、50mg/ml、10mg/ml、1mg/ml、及び0mg/ml)でPU溶液中に懸濁する。
3.ガラスカバースリップ及びプラスチックディスク上に四銀EDTAをコーティングしてフィルムを作製する。
4.コーティングしたカバースリップ及びプラスチックディスクを次に、2mlの脱イオン水中に1週間にわたり浸漬する。
5.四銀EDTAの溶出を、標準曲線方法に従って測定する。
【0126】
結果
【0127】
ガラスカバースリップ上のPUフィルムを、異なる濃度の四銀EDTA錯体と相関するG1、G2、G3、G4、及びG5と命名した。溶出結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0128】
結果は、脱イオン水に1週間浸漬した後、約30%~36%の四銀EDTAがフィルムから溶出したことを示した。
【0129】
比較例2-Ag(EDTA)
合成:4Ag(aq) + EDTA4-(aq) → Ag(EDTA) (s)
【0130】
硝酸銀を、激しい撹拌の下で4:1のモル比でEDTAの四ナトリウム塩と反応させた。結果として得られた固体を濾過し、冷たい脱イオン水を用いて3回洗浄し、50%エタノール、70%エタノール、及び100%エタノールを用いて各々1回洗浄し、次に、直接光への曝露を避けるために、暗いフラスコ中で50℃の真空オーブン中で乾燥させた。Ag(EDTA)の白色粉末を、以下の収率で産生した。
【表3】
【0131】
EDTA、Na(EDTA)、及びAg(EDTA)のFTIRを図2A~Cに示す。COOH中のカルボニルの伸縮振動に起因する図2A(EDTA)における1740cm-1を中心とする吸収帯は、図2B及び2C(それぞれNaEDTA及びAgEDTA)のスペクトル中には存在しない。純粋なNaEDTA(図2B)のスペクトルは、4つのイオン性カルボキシレート基(Vs COO )におけるカルボニルの非対称性伸縮振動に起因する約1580cm-1を中心とする吸収帯により特徴付けられる。対応する対称性伸縮振動は1465cm-1(Vs COO )の近くで生じる。AgEDTA(図2C)におけるカルボニルの非対称性伸縮振動吸着バンドは、NaEDTA中のそれぞれのピークよりもずっと強く、バンド中心は約1550cm-1に移動する。対応する対称性伸縮振動バンドは1465cm-1を中心とし、1550cm-1よりも弱い吸収帯である。結果は、AgEDTA錯体が形成されることを示した。
【0132】
Ag(EDTA)懸濁コーティングプロセス
【0133】
Ag(EDTA)粉末を脱イオン水中に1mg/mlで懸濁させた。100μlの懸濁液を第1のガラスカバースリップ上に滴下した。50μlの懸濁液を50μlの1.7%NaCl溶液に加え、第2のガラスカバースリップ上に滴下した。50μlの懸濁液を50μlのPU溶液と混合し、次に第3のガラスカバースリップ上に滴下した。全てのカバースリップを、直接光への曝露を避けるために、暗いフラスコ中で50℃の真空オーブン中で乾燥させた。結果は、Ag(EDTA)がガラス上に又はポリマーのフィルム(確かに少なくともポリウレタン)としてコーティングできることを示した。
【0134】
置換実験
【0135】
生理食塩水をAg(EDTA)の懸濁液に加えて、懸濁液は速やかに固体(AgCl)を沈殿させた。沈殿物を濾別し、脱イオン水で4回洗浄し、次に、直接光への曝露を避けるために、暗いフラスコ中で50℃の真空オーブン中で乾燥させた。
【表4】
【0136】
実施例-銀及び銅EDTA錯体の合成 - 化合物1及び2
【0137】
これらの化合物を、最初に38gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩水和物(四ナトリウムEDTA)を1000mlのHO中に溶解して、溶液1を提供することにより調製した。次に、68gの硝酸銀(AgNO)を1000mlのHO中に溶解し、溶液2を提供した。25gの硫酸銅五水和物(CuSO・5HO)を1000mlのHO中に溶解し、溶液3を提供した。
【0138】
化合物1の調製-AgCuNaEDTA
【0139】
40mlの溶液1を20mlの溶液2と、激しく撹拌しながら10分間にわたり混合した。混合物を次に濾過して固体を得た。この固体を、水を用いて2回洗浄した。約60mlの溶液3を固体に加えて、この混合物を、固体が完全に溶解するまで激しく撹拌した。結果として得られた溶液を、0.45μmシリンジフィルターを用いて濾過し、産物である化合物1-AgCuNaEDTAを提供した。
【0140】
化合物2の調製-AgCuEDTA
【0141】
30mlの溶液1を30mlの溶液2と、激しく撹拌しながら10分間にわたり混合した。この混合物を次に濾過して固体を得た。約80mlの溶液3を固体に加えて、この混合物を、固体が完全に溶解するまで激しく撹拌した。結果として得られた溶液を、0.45μmシリンジフィルターを用いて濾過し、産物である化合物2-AgCuEDTAを提供した。図3は、AgCu(EDTA)の暗青色粉末のATR-FTIRスペクトルを示す。
【0142】
実施例-銀及び亜鉛EDTA錯体の合成-化合物3及び4
【0143】
これらの化合物を、最初に38gのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩水和物(四ナトリウムEDTA)を1000mlのHO中に溶解して、溶液1を提供することにより調製した。次に、68gの硝酸銀(AgNO)を1000mlのHO中に溶解し、溶液2を提供した。18.6gの硫酸亜鉛一水和物(ZnSO・HO)を1000mlのHO中に溶解し、溶液4を提供した。
【0144】
化合物3の調製-AgZnNaEDTA
【0145】
40mlの溶液1を20mlの溶液2と、激しく撹拌しながら10分間にわたり混合した。混合物を次に濾過して固体を得た。この固体を、水を用いて4回洗浄した。約100mlの溶液4を固体に加えて、この混合物を、固体が完全に溶解するまで激しく撹拌した。結果として得られた溶液を、0.45μmシリンジフィルターを用いて濾過し、産物である化合物3-AgZnNaEDTAを提供した。
【0146】
化合物4の調製-AgZnEDTA
【0147】
30mlの溶液1を30mlの溶液2と、激しく撹拌しながら10分間にわたり混合した。この混合物を次に濾過して固体を得た。約120mlの溶液4を固体に加えて、この混合物を、固体が完全に溶解するまで激しく撹拌した。結果として得られた溶液を、0.45μmシリンジフィルターを用いて濾過し、産物である化合物4-AgZn4EDTAを提供した。
【0148】
全ての化合物1~4を、予防措置として暗所において室温で保存した。
【0149】
以下の実験を、上に記載するように調製した以下のEDTA化合物/錯体を用いて行った:
化合物1 - AgCuNaEDTA
化合物2 - AgCuEDTA
化合物3 - AgZnNaEDTA
化合物4 - AgZnEDTA
【0150】
EDTA錯体の置換プロファイル
【0151】
上に記載する置換実験を、化合物1~4について繰り返し、生理食塩水によるEDTA錯体からの銀、銅、亜鉛の置換のパーセントを提供した。結果を以下の表3に示す。
【表5】
【0152】
置換実験の結果によって、銀、銅、及び亜鉛形態の化合物1~4が、生理食塩水(ナトリウムイオン)により置換されうることが実証された。この結果(表3)は、約80%の銀、40~50%の銅及び亜鉛が生理食塩水中のナトリウムにより置換されたことを示した。
【0153】
コラーゲン中へのEDTA錯体の取り込み
【0154】
EDTA化合物1~4をコラーゲンフィルムに加え、次に、これらの錯体の溶出を調べた。コラーゲンフィルムを、酸化ウシアテロコラーゲンI型、グリセロール、及びEDTA化合物1~4の溶液から調製した。1.8mlの10%グリセロール溶液を20mlの酸化ウシアテロコラーゲンI型溶液中に加えた。5mlのEDTA錯体を、激しく撹拌しながら溶液中に加えて、この混合物を5%NaOHの滴下によりpH=7.0に調整した。最終溶液を超純水により30mlに調整し、PVC鋳型に流し込んだ。この溶液を一晩ドラフトチャンバー中で乾燥させた。全てのコラーゲンフィルムに、EDTA錯体を含浸させて、水、生理食塩水、又は疑似創傷液中に浸漬した。
【0155】
【表6】
【0156】
水及び生理食塩水中のコラーゲンフィルムの溶出結果を表4に示す。銀について、最も高い溶出率は1日目であった(水中で19.08±0.92ppm、生理食塩水中で20.34±1.42ppm)。次に溶出率は減少したが、溶出率は依然として水中では10ppm、生理食塩水中では13ppmより高かった。生理食塩水中では水中より溶出した銀が多かった。合計では、54.03%及び66.22%の銀がそれぞれ水中及び生理食塩水中で5日間にわたってコラーゲンフィルムから溶出した。亜鉛については、水中での最も高い溶出率は1日目であった(9.86±0.39ppm)。次に溶出率はわずかに減少したが、5日目には6.5ppmを超えたままであった。しかし、生理食塩水中での溶出率は、1日目から5日目まで約6ppmで一定のままあった。全体として、37.89%及び27.36%の亜鉛がそれぞれ水中及び生理食塩水中で5日間にわたりコラーゲンフィルムから溶出した。EDTAについては、結果は、大半のEDTAが水中及び生理食塩水中の両方で1日目に溶出したことを示す。1日後、少量のEDTAだけが溶出した。合計で、16.95%及び13.44%のEDTAがそれぞれ水中及び生理食塩水中で5日間にわたってコラーゲンフィルムから溶出した。
【0157】
ガーゼプラットフォーム及びEDTA化合物4の溶出
【0158】
ガーゼの断片を水、2%EDTA、4%EDTA、及び高濃度(試料1)又は低濃度(試料2)のEDTA化合物4のいずれかに1時間にわたり浸漬させた。次にガーゼを取り出し、60mmポリスチレン培養プレート中に入れ、ドラフトチャンバー中で24時間にわたり乾燥させた。ガーゼを、浸漬前、浸漬後、及び24時間にわたる乾燥後に秤量した。
【0159】
【表7】
【0160】
ガーゼからのEDTA錯体の溶出プロファイルを評価するために、充填したガーゼを水及び生理食塩水中に浸漬した(表6及び表7)。結果は、銀、亜鉛、及びEDTAが、水及び生理食塩水の両方において1日目及び2日目に迅速に溶出したことを示した。2日後、銀、亜鉛、及びEDTAの溶出は、1日目と比較して5倍超減少した。
【0161】
【表8】
【0162】
【表9】
【0163】
ヒドロゲル中へのEDTA錯体の取り込み。
【0164】
ヒドロゲルにEDTA化合物を充填し、銀、亜鉛、及びEDTAの溶出について調べた。Carbopol ETD 2020をLubrizol Advanced Materials, Inc. USAから入手した。1.2gのカルボポール粉末を42.36gの脱イオン水中に1時間にわたり溶解して完全に水和させた。次に、8.4mlのEDTA錯体及び4.8gのグリセリンを、激しく撹拌しながらカルボポール溶液中に加えた。最後に、3gの50%トリエタノールアミンを懸濁液中に滴下して最終産物:EDTA錯体を伴うカルボポールヒドロゲルを得た。
【0165】
ヒドロゲルから水及び生理食塩水中へのEDTA錯体の累積溶出プロファイルを表8及び表9に示す。結果は、銀、亜鉛、及びEDTAが1日目に迅速に溶出し、1日後に水中での明確な累積溶出がなかったことを示す。銀、亜鉛、及びEDTAは、日々、生理食塩水中で増加し、銀、亜鉛、及びEDTAの放出がヒドロゲルから制御できることを示した。
【0166】
【表10】
【0167】
【表11】
【0168】
銀含量
【0169】
1gのヒドロゲルを10mlの37%硝酸に入れて溶解させた。濾過後、溶液を0.5mlの正確な容量に希釈した。希釈溶液を0.5%の1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び0.5mlの1M硫酸と混合し、0.5mlの1×10-3Mジチゾン溶液の添加が続いた。吸光度を、対応する試薬ブランクに対して490nmで測定した。未知試料中の銀含量を、同時に調製した較正グラフを使用して決定した。銀の濃度を次に、一連の較正標準に対して、改変分光光度法により測定した。濃度を次に、使用した被覆材の重量に基づき重量%に変換する。
【0170】
分光光度法により測定したヒドロゲル上の銀含量実験の結果を表10に示す。結果は、低レベルの銀ハイドロゲルは0.095%の銀だけを有したことを示し、EDTA化合物4、試料1ヒドロゲル(高レベルのEDTA-Ag-Zn)中に0.101%の銀(w/w)及び他のEDTA化合物4、試料1ヒドロゲル(低レベルのEDTA-Ag-Zn)中に0.046%の銀(w/w)があった。
【0171】
【表12】
【0172】
水の供与/吸収。
【0173】
表11は、全てのヒドロゲルが1b型又は1c型に属することを示す。それは、全てのヒドロゲルが供与型であることを意味する。四ナトリウムEDTAだけのヒドロゲルは、1cヒドロゲル群(大半の液体を供与する)中にあることが見出された。他のゲルは1bゲルとして特徴付けられ、ヒドロゲルからゼラチンに5~10%の水を供与した。
【0174】
【表13】
【0175】
EDTA錯体の微生物学的分析。
【0176】
四ナトリウムEDTAの微生物学的評価。
【0177】
四ナトリウムEDTAの初期試験は、EDTA四ナトリウムが、短期収縮時間での未成熟及び成熟の黄色ブドウ球菌及び緑膿菌バイオフィルムに対する処理として効果的ではなかったことを示した(表12、表13、及び表14)。繊維状被覆材フレームワーク中への四ナトリウムEDTAの取り込みは、しかし、24時間の処理後に黄色ブドウ球菌及び緑膿菌バイオフィルムにおいてそれぞれ3Logの低下をもたらした(表15及び表15)。
【0178】
【表14】
【0179】
最小阻害濃度(MIC)、最小殺菌濃度(MBC)、及び最小バイオフィルム除菌(MBEC)を決定した。値は、ストック抗菌剤溶液(8%)のパーセンテージを表す。「×」は、試験した抗菌剤(純粋な形状の抗菌剤を含む)の全ての濃度が無効であったことを示す。
【0180】
【表15】
【0181】
平均Log値を算出し、平均LRの標準誤差(SE)を決定した(LR±SE)。未処理対照の平均Log10密度を算出した(±標準偏差)。
【0182】
【表16】
【0183】
平均Log値を算出し、平均LRの標準誤差(SE)を決定した(LR±SE)。未処理対照の平均Log10密度を算出した(±標準偏差)。
【0184】
【表17】
【0185】
被覆材の抗菌有効性の結果を、殺菌性(Log10低下≧3)又は静菌性(Log10低下≦3)として表した。SDは標準偏差を表す。実験を3通りの被覆材で実施した。
【0186】
【表18】
【0187】
被覆材の抗菌有効性の結果を、殺菌性(Log10低下≧3)又は静菌性(Log10低下≦3)として表した。SDは標準偏差を表す。実験を3通りの被覆材で実施した。
【0188】
EDTA錯体(EDTA-Ag-Zn及びEDTA-Ag-Cu)の微生物学的評価。
【0189】
異なるEDTA錯体は、黄色ブドウ球菌及び緑膿菌のバイオフィルムにおいて完全な殺傷を達成した(表17)。
【0190】
【表19】
【0191】
EDTA化合物1~4(上に記載するように調製した)を緑膿菌及び黄色ブドウ球菌のバイオフィルムに対して100ppmの銀濃度で試験し、それに対して、Ag/Cu/NaEDTA及びAg/Zn/NaEDTA化合物は黄色ブドウ球菌における100%殺傷及び緑膿菌における3.5log低下を示した(表18)。
【0192】
【表20】
【0193】
微生物培養物を化合物に24時間にわたり曝露した。化合物を100ppmの銀に従って希釈した。バイオフィルムを、CDCバイオリアクターを使用して形成した。試料を三通りに実施した。平均Log値を算出し、平均LRの標準誤差(SE)を決定した(LR±SE)。ゼロのlogが数学的に定義されていないと仮定すると、コロニーが抗菌処理後に検出されなかった場合、「未定」についての「N.D」を使用する。
【0194】
液体としてのEDTA-Ag-Zn化合物の抗バイオフィルム有効性を、MBECモデルを使用して評価した。種々の濃度の錯体(1000ppm~62.5ppm)を用いた処理後での緑膿菌バイオフィルムの100%殺傷(生存コロニーが検出されない)が観察された(表19)。
【0195】
【表21】
【0196】
バイオフィルムを、MBECプレート法を使用して形成した。Log低下(LR)値を、標準誤差を用いて表す。コロニーが計数時に検出されなかった場合、N.D(未定)を記載する。
【0197】
抗バイオフィルム能力(MBEC)。
【0198】
MBECモデル(ASTM E2799)を使用し、液体処方物の抗バイオフィルム効果を評価した。バイオフィルムを、MBECモデルでポリスチレンペグ上に、処理前24時間又は48時間のいずれかにわたり増殖させた。液体形態のEDTA錯体を使用し、24時間及び48時間のバイオフィルムを試験した(表20)。結果は、錯体及び銀溶液(50ppm及び100ppm)が、24時間及び48時間のバイオフィルムの100%殺傷を起こしたことを示す。同様に、4%EDTA四ナトリウムによって、黄色ブドウ球菌、MRSA、表皮ブドウ球菌、及びE.フェカリスのバイオフィルム上で24時間及び48時間内に100%殺傷が起こった。しかし、緑膿菌の24時間及び48時間のバイオフィルムについては、それぞれ5.94±3.43及び6.99±4.04log低下があった。24時間のバイオフィルムと比較した場合の48時間のバイオフィルムのlog低下の増加によって、抗バイオフィルム剤としてのEDTA錯体の有効性が強調される。
【0199】
【表22】
【0200】
24時間及び48時間のバイオフィルムを、MBECプレート法を使用して形成し、24時間にわたり処理した。技術的反復n=3。Log低下(LR)値は、LR値の±標準誤差(SE)を示す。未処理対照(24時間及び48時間バイオフィルム)のLog密度±標準偏差は、緑膿菌NCTC 10662(7.44±0.06及び8.44±0.034)、黄色ブドウ球菌ATCC 29213(6.45±0.05及び6.50±0.38)、黄色ブドウ球菌MRSA BAA-43(5.40±0.41及び6.43±0.25)、E.フェカリスATCC 29212(6.35±0.04及び6.40±0.09)、及び表皮ブドウ球菌ATCC 35984(6.09±0.36及び6.41±0.62)である。
【0201】
錯体を用いたガーゼの含浸。
【0202】
EDTA-AgZn化合物4を含浸させたガーゼは、24時間後に完全なバイオフィルム殺傷を示し(表21を参照のこと)、それは最大量の銀及びEDTAが24時間で溶出した溶出データと相関し、さらに、EDTA-AgZn化合物4を含むガーゼは、2%及び4%で四ナトリウムEDTAよりも効果的であった。2%EDTAより4%EDTAを含むガーゼを用いて処理した場合、バイオフィルムのlog低下がより大きかった。この化合物を含むコラーゲンフィルムは、ガーゼよりも効果が低かった。
【0203】
【表23】
【0204】
バイオフィルム(48時間)を種々のプラットフォームに24時間にわたり曝露した。プラットフォームを含浸させるために使用した化合物は、EDTA-AgZn(化合物4)であった。試料を3通りに繰り返した。平均Log値を算出し、平均LRの標準誤差(SE)を決定した(LR±SE)。コロニーが処理後に検出されなかった場合、「未定」についての「N.D」を使用し、これは100%殺傷を表す。表21は、本発明の錯体が薬剤間の潜在的な相乗作用を実証し、四ナトリウムEDTAよりも優れているとの証拠を提供する。
【0205】
ヒドロゲルへの錯体の添加。
【0206】
CDCバイオフィルムバイオリアクターモデル(ASTM E2871)を使用し、ヒドロゲル製剤の抗バイオフィルム有効性を試験した。バイオフィルムをバイオリアクター中のポリカーボネートクーポン上で48時間(48時間バイオフィルム)増殖させた。錯体を含むヒドロゲルの製剤は、24時間の処理後にCDCモデルにおいて完全なバイオフィルム殺傷を示した(表22を参照のこと)。化合物4を含むヒドロゲルは、銀だけを含むヒドロゲルより優れていた。
【0207】
【表24】
【0208】
バイオフィルム(48時間)をヒドロゲルに24時間にわたり曝露した。プラットフォームを含浸させるために使用した化合物は、EDTA-AgZn(化合物4)であった。試料を3通りに繰り返した。平均Log値を算出し、平均LRの標準誤差(SE)を決定した(LR±SE)。コロニーが処置後に検出されなかった場合、「未定」についての「N.D」を使用し、これは100%殺傷を表す。表22は、EDTA-AgZnの錯体が、抗バイオフィルム活性において銀ヒドロゲル単独より優れているとの証拠を実証する。
【0209】
ヒドロゲルEDTA-AgZn化合物4の抗バイオフィルム有効性を試験するために、本発明者らは、CDCバイオフィルムバイオリアクターを使用してバイオフィルム形態の5つの微生物に対してヒドロゲルを試験した。ヒドロゲル対照は、微生物数のわずかなlog低下を示した。銀を含むヒドロゲルは、黄色ブドウ球菌、MRSA、表皮ブドウ球菌、及びE.フェカリスにおいて100%殺傷をもたらした。しかし、銀ヒドロゲルだけが、緑膿菌において3.16±1.83のlog低下を起こした(表23)。亜鉛を含むヒドロゲルは、100%殺傷が記録された表皮ブドウ球菌を除く全ての微生物においてそれぞれ1.24~1.84の間のlog低下を生じた。同様に、四ナトリウムEDTAを含むヒドロゲルは、大半の微生物においてわずかなlog低下を起こしたが、しかし、表皮ブドウ球菌において100%殺傷を起こした。低濃度の化合物4(EDTA-AgZn)を含むヒドロゲル製剤は、大半の微生物において有意な低下を有さなかったが、表皮ブドウ球菌において100%殺傷を起こした。ヒドロゲル中に取り込まれた高濃度の化合物4は、試験した全ての微生物バイオフィルムにおいて100%殺傷を起こした。
【0210】
【表25】
【0211】
表23は、化合物4(EDTA-AgZn)が、抗バイオフィルム活性において、銀ハイドロゲル単独、亜鉛ハイドロゲル単独、及び四ナトリウムEDTA単独よりも優れていることを実証する。
【0212】
細胞データ。
【0213】
直接的細胞傷害性を、細胞によるNeutral Redの取り込みは細胞生存率に比例するNeutral Red Uptakeアッセイを使用して試験した(Borenfreund, E. & Puerner, J. A. 1985, A simple quantitative procedure using monolayer cultures for cytotoxicity assays (HTD/NR-90), Methods in Cell Science, 9, 7-9)。国際標準ISO 10993-5(Wallin, R. F. & Arscott, E. 1998, A practical guide to ISO 10993-5: Cytotoxicity. Medical Device and Diagnostic Industry, 20, 96-98)によれば、生存パーセンテージが未処理対照の70%より低い場合、その物質は細胞傷害性と考えられる。結果は、増加濃度の四ナトリウムEDTAが、細胞に細胞傷害性であり、生存率パーセンテージが3.87%~14.23%の間であったことを示した。化合物1及び3の全ての濃度が細胞傷害性として分類され、生存率はそれぞれ52.57%~53.66%及び46.46%~63.08%の範囲であった。全ての濃度の化合物2は、非細胞傷害性であると解釈され、生存率パーセンテージは72.01%~72.21%の範囲であった。50ppmの化合物4も非細胞傷害性であり、72.93%の生存率であるが、しかし、他の濃度は細胞傷害性であった(表24)。間接的細胞傷害性についての寒天拡散方法によって、細胞傷害性の定性的評価が可能になる。ISO 10993-5によれば、2より大きい数値グレードの達成は、細胞傷害性効果と考えられる。
【0214】
【表26】
【0215】
表24は、本発明の化合物が四ナトリウムEDTA単独と比較して毒性が有意に低かったことを実証する。
【0216】
全ての濃度でのEDTAについてのゾーン指数の評価によって、細胞傷害性が示され、Neutral Red取り込みのないゾーンがフィルターディスクを超えて0.5cm~1cm伸長した。この知見にもかかわらず、溶解指数の解釈は、2%、4%、及び8%のEDTAは細胞に対して細胞傷害性でなかったのに対し、10%及び15%の濃度は細胞傷害性であったことを示した。100ppm及び50ppmの化合物1はゾーン指数に従って細胞に対して細胞傷害性であると解釈されるのに対し、ニュートラルレッド取り込みを示さない細胞のゾーンは、フィルターディスク標本を超えて0.5cm~1cm伸長した。しかし、これらの濃度は、溶解指数を解釈する際に細胞傷害性とは見なさなかった。25ppmの化合物1は細胞に対して細胞傷害性ではなかった。100ppmの化合物3は、ゾーン指数(溶解指数ではない)に従って細胞傷害性をもたらした。全ての濃度の化合物2及び4は、細胞に対して細胞傷害性ではなかった(表25)。
【0217】
【表27】
【0218】
表25は、錯体が四ナトリウムEDTA単独と比較して毒性が有意に低かったことを実証する。
【0219】
創傷バイオフィルムモデルにおけるEDTA-AgZn化合物(化合物4)の有効性。6日目に、未処理の黄色ブドウ球菌の創傷バイオフィルムが組織の50%を上回り存在した。100ppmのAg-Zn-EDTA(化合物4)を用いた処理後、組織内に低下量の微生物があるように見えたが、しかし、同定可能な表皮はなく、真皮層中の線維芽細胞の核はかすかであった。
【0220】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用し、以前に公開された方法(Foster, A. M., Baliwag, J., Chen, C. S., Guzman, A. M., Stoll, S. W., Gudjonsson, J. E., Ward, N. L. & Johnston, A. 2014, IL-36 promotes myeloid cell infiltration, activation, and inflammatory activity in skin, The Journal of Immunology, 192, 6053-6061)に従い、炎症性サイトカインインターロイキン-6(IL-6)の分泌レベルを評価した。同じ実験における分泌IL-6のELISA検出は、黄色ブドウ球菌の創傷バイオフィルム対照においてIL-6の低下を示した(図4)。Ag-Zn-EDTA(化合物4)を用いた創傷バイオフィルムの処理によって、組織学的検査時に微生物の存在が低下することが示された。IL-6レベルは、黄色ブドウ球菌の創傷バイオフィルム対照と比較した場合、さらに低下した。
【0221】
図4は、液体Ag-Zn-EDTA(化合物4)を用いた処理後の、創傷バイオフィルム含有LabskinからのIL-6サイトカイン分泌を示す。ELISAを使用し、条件付けられた細胞培養培地中のIL-6のレベルを評価した。培養培地をIL-6の低下が説明される4日目に交換し、これによって、バイオフィルムを、50ppm又は100ppmのいずれかのEDTA化合物4を用いて処理した。試験を2通りに実施した。エラーバーは標準偏差を示す。
【0222】
図4は、100ppmのAg-Zn-EDTA(化合物4)によって、炎症マーカーの有意な低下が起こったことを実証する。
【0223】
要約すると、本発明は、バイオフィルムに対抗する及び/又は創傷を処置するための金属-EDTA化合物/錯体を提供する。この化合物/錯体は、EDTA及び2~4つの金属イオンを含む。これら2~4の金属イオンのうち、少なくとも2つは、Ag、Al、Au、Ba、Bi、Tl、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ir、Mo、Rh、Ru、Ti、及びZnイオンより選択される異なる金属イオンである。金属-EDTA化合物/錯体は、使用中に抗菌活性、抗バイオフィルム活性、及び抗炎症活性のいずれか1つ又は複数を示しうるが、抗菌剤による攻撃に対するバイオフィルム及び前記バイオフィルム内の微生物の感受性を増加させ、バイオフィルムを除去及び衛生化するために役立ちうる。金属-EDTA錯体を含む組成物、創傷被覆材、及び医療機器も提供する。医薬としての、ならびに/あるいはバイオフィルムを衛生化する及び/又は基質からバイオフィルムを実質的に除去するための金属-EDTA化合物/錯体の使用も開示する。
【0224】
いくつかの好ましい実施態様を示し、記載してきたが、種々の変更及び改変を、添付の特許請求の範囲において定義する本発明の範囲から逸脱することなくなされうることが、当業者には理解されるであろう。
【0225】
本願と関連して、本明細書と同時に、又はそれ以前に出願され、本明細書を用いて一般に閲覧可能な全ての論文及び文書に注目が、向けられ、全てのそのような論文及び文書の内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【0226】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲及び図面を含む)おいて開示する全ての特徴、ならびに/あるいはそのように開示した任意の方法又はプロセスの工程の全てを、そのような特徴及び/又は工程の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせにおいて組み合わせてもよい。
【0227】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲及び図面を含む)に開示する各々に特徴は、他に明示的に記載しない限り、同じ、等価、又は類似の目的に役立つ代替の特徴により置換してもよい。このように、他に明示的に記載しない限り、開示する各々の特徴は、一般的な一連の等価又は類似の特徴の一例に過ぎない。
【0228】
本発明は、前述の実施態様の詳細に制限されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲及び図面を含む)に開示する特徴の任意の新規のもの、又は任意の新規の組み合せ、あるいはそのように開示する任意の方法もしくはプロセスの工程の任意の新規のもの、又は任意の新規の組み合わせに及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0229】
図1図1は、四ナトリウムEDTAについての標準相関曲線を示す。
図2A図2Aは、EDTAのFTIRを示す。
図2B図2Bは、Na(EDTA)のFTIRを示す。
図2C図2Cは、Ag(EDTA)のFTIRを示す。
図3図3は、AgCu(EDTA)の暗青色粉末のATR-FTIRスペクトルを示す。
図4図4は、液体Ag-Zn-EDTA(化合物4)を用いた処理後の、創傷バイオフィルム含有LabskinからのIL-6サイトカイン分泌を示す。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4