(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】パーソナリティ定義データ生成装置、個人プロファイル定義システム、及びパーソナリティ定義データ生成プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20220208BHJP
【FI】
G06Q30/02 300
(21)【出願番号】P 2021167013
(22)【出願日】2021-10-11
【審査請求日】2021-10-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516026712
【氏名又は名称】Oxyzen株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森谷 武浩
【審査官】田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】平岩 啓,無線LAN情報の認証への応用の検討,電子情報通信学会論文誌D,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2016年10月20日,V.J99-D, No.10,pp.1034-1044
【文献】小林 良輔,スマートフォンに接続されたWi-Fiの履歴情報に見る個人的特徴の検証,2018年 暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2018)予稿集 [USB] 2018年 暗号と情報セキュリティシンポジウム概要集 Abstracts of 2018 Symposium on Cryptography and Information Security,日本,一般社団法人 電子情報通信学会,2018年02月13日,pp.1-6
【文献】鈴木 宏哉,モバイル端末保持者の周辺無線LAN APのベンダー情報と時間帯の相関,SCIS2016 2016 Symposium on Cryptography and Information Security,日本,一般社団法人 電子情報通信学会,2016年02月01日,pp.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一以上のサンプル端末を含む任意のサンプル端末群から取得される各SSID履歴の集合をサンプルSSID集合として取得するサンプル集合取得部と、
前記サンプルSSID集合から、不特定多数の者の利用に供する共用SSIDを除く一又は複数の単位SSIDの集まりをキーSSIDとして生成するキーSSID生成部と、
前記サンプルSSID集合から、前記共用SSIDに該当する一又は複数の単位SSIDの集まりを補助SSIDとして生成する補助SSID生成部と、
前記キーSSID、又は前記キーSSID及び前記補助SSIDの組み合わせとして構成される一以上のSSIDフィンガープリントを生成するフィンガープリント生成部と、
生成した前記SSIDフィンガープリントの数に応じた複数の仮想パーソナリティデータ、及び各仮想パーソナリティデータに一意に付される識別子を定義する仮想パーソナリティデータ定義部と、
前記識別子に前記SSIDフィンガープリントを紐づけて成るパーソナリティ定義データを生成するパーソナリティ定義データ生成部と、を備える、
パーソナリティ定義データ生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパーソナリティ定義データ生成装置であって、
前記サンプル集合取得部は、複数の前記サンプル端末群からそれぞれ得られる複数の前記サンプルSSID集合を受信し、
前記フィンガープリント生成部は、複数の前記サンプルSSID集合に共通して含まれる前記キーSSIDに基づいて、前記SSIDフィンガープリントを生成する、
パーソナリティ定義データ生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパーソナリティ定義データ生成装置であって、
複数の前記サンプルSSID集合は、第1サンプルSSID集合と該第1サンプルSSID集合とは異なる第2サンプルSSID集合を含み、
前記キーSSID生成部は、前記第1サンプルSSID集合から、前記共用SSIDを除く一又は複数の単位SSIDを暫定キーSSIDとして生成し、
前記補助SSID生成部は、前記第1サンプルSSID集合から、前記共用SSIDに該当する一又は複数の単位SSIDを暫定補助SSIDとして生成し、
前記フィンガープリント生成部は、
前記第2サンプルSSID集合に含まれる前記暫定キーSSIDを最終キーSSIDとし、
前記暫定補助SSIDが前記第2サンプルSSID集合に含まれる場合には、
該暫定補助SSIDを最終補助SSIDとし、
前記SSIDフィンガープリントを、前記最終キーSSID及び前記最終補助SSIDの組み合わせにより生成し、
前記暫定補助SSIDが前記第2サンプルSSID集合に含まれない場合には、
前記SSIDフィンガープリントを、前記最終キーSSIDにより生成する、
パーソナリティ定義データ生成装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のパーソナリティ定義データ生成装置であって、
複数の前記サンプルSSID集合は、
各検出位置及び各検出日時に応じて定まるそれぞれの前記サンプル端末群から得られる各SSID履歴の集合として定められる、
パーソナリティ定義データ生成装置。
【請求項5】
請求項2~4の何れか1項に記載のパーソナリティ定義データ生成装置であって、
前記共用SSIDを更新する共用SSID更新部をさらに備え、
前記共用SSID更新部は、複数の前記サンプルSSID集合に所定の閾値数を超えて重複して含まれる単位SSIDを新たな前記共用SSIDとして記録する、
パーソナリティ定義データ生成装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のパーソナリティ定義データ生成装置により生成された前記パーソナリティ定義データを用いて、個人端末を使用する個人のプロファイル情報を定義する個人プロファイル定義システムであって、
前記個人端末が保有するSSID履歴である個人SSID履歴を受信する受信装置と、
前記パーソナリティ定義データに含まれる前記SSIDフィンガープリントを前記個人SSID履歴と照合する照合装置と、
前記SSIDフィンガープリントが前記個人SSID履歴に含まれる各単位SSIDの少なくとも一部と所定の一致率以上で一致する場合に、前記パーソナリティ定義データを前記個人のプロファイル情報と定義するプロファイル情報定義装置と、を備える、
個人プロファイル定義システム。
【請求項7】
コンピュータに、
一以上のサンプル端末を含む任意のサンプル端末群から取得される各SSID履歴の集合をサンプルSSID集合として取得させ、
前記サンプルSSID集合から、一定数以上の者の利用に供する共用SSIDを除く一又は複数の単位SSIDの集まりをキーSSIDとして生成させ、
前記サンプルSSID集合から、前記共用SSIDに該当する一又は複数の単位SSIDの集まりを補助SSIDとして生成させ、
前記キーSSID、又は前記キーSSID及び前記補助SSIDの組み合わせとして構成されるSSIDフィンガープリントを生成させ、
生成した前記SSIDフィンガープリントの数に応じた各仮想パーソナリティデータ、及び各仮想パーソナリティデータに一意に付される識別子を定義させ、
前記識別子に前記SSIDフィンガープリントを紐づけて成るパーソナリティ定義データを生成させる、
パーソナリティ定義データ生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナリティ定義データ生成装置、個人プロファイル定義システム、及びパーソナリティ定義データ生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々のサービス提供業務において、ターゲットなる個人の情報(特定の店舗の来訪回数、趣向に沿った広告内容、又は必要な認証情報など)を特定するために、各個人が使用するスマートフォン等の端末に固有に付されるMAC(Media Access Control)アドレス、或いはMACアドレスに基づいた所定の識別子(端末ID)が利用されていた。
【0003】
より詳細には、無線LANシステムを運用する企業や店舗が、各個人の端末と無線LAN用のアクセスポイントとの間の通信(いわゆるプローブリクエスト「Probe Request」)を通じて各個人の端末のMACアドレスを取得でき、これをターゲットとすべき個人を特定(識別)する情報として利用していた。
【0004】
一方で、MACアドレスは端末に対してユニークに付されるものであり、当該端末を使用する者のプライバシーに係る情報に結び付くことも想定される。このため、各種のサービス提供業務において、MACアドレス、或いは当該MACアドレスをベースとする任意の識別情報を用いると、個人のプライバシーを損なう結果に繋がる懸念があった。これに対して、近年では、プライバシー確保の観点から、端末とアクセスポイントとの間の通信に用いるMACアドレスを、当該通信ごとにランダム化する機能が採用されつつある。
【0005】
このようなMACアドレスのランダム化によって、個人のプライバシーは確保される。しかしながら、これまでMACアドレスを利用してターゲットとすべき個人を特定していた各種のサービス提供業務においては、新たに必要な個人の識別情報を取得するスキームを構築することが求められる。
【0006】
これに対して、特許文献1には、スマートフォンで実行されるいわゆるゲームアプリの提供にあたり、ユーザの認証を目的として、予め当該ユーザからゲームアプリの提供の観点から認証に必要な範囲の情報(プライバシーを損なわない程度の情報)を取得し、取得した情報からMACアドレス由来の識別子とは別に新たなIDを割り当てるユーザ認証システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のシステムでは、IDを生成するにあたり、予めゲームアプリの提供を希望するユーザの自発的なアクション(ゲームアプリの起動など)が必要である。すなわち、単に一のユーザ自身から、ゲームアプリの提供という目的の範囲で認証に必要な情報を取得してIDを生成するに過ぎないため、種々の態様のサービス提供業務への適用は難しい。特に、必ずしもサービスの提供を受ける者のアクションが当該サービス提供の基点とならない業態(広告配信サービス、又は位置情報配信サービスなど)への適用は困難である。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、各種のサービス提供業務などにおいて利用可能な、各個人を識別し得る新規な識別情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様によれば、一以上のサンプル端末を含む任意のサンプル端末群から取得される各SSID履歴の集合をサンプルSSID集合として取得するサンプル集合取得部と、サンプルSSID集合から、不特定多数の者の利用に供する共用SSIDを除く一又は複数の単位SSIDの集まりをキーSSIDとして生成するキーSSID生成部と、サンプルSSID集合から、共用SSIDに該当する一又は複数の単位SSIDの集まりを補助SSIDとして生成する補助SSID生成部と、キーSSID、又はキーSSID及び補助SSIDの組み合わせとして構成される一以上のSSIDフィンガープリントを生成するフィンガープリント生成部と、生成したSSIDフィンガープリントの数に応じた複数の仮想パーソナリティデータ、及び各仮想パーソナリティデータに一意に付される識別子を定義する仮想パーソナリティデータ定義部と、識別子にSSIDフィンガープリントを組み合わせて成るパーソナリティ定義データを生成するパーソナリティ定義データ生成部と、を備えるパーソナリティ定義データ生成装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、現実の各個人、より詳細には各個人の行動傾向に対してユニークなSSIDフィンガープリントを含むパーソナリティ定義データ、すなわち、現実の各個人を特定(定義)し得る新規な識別情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態によるパーソナリティ定義データ生成システムの構成を説明する図である。
【
図2】パーソナリティ定義データ生成装置の構成を説明するブロック図である。
【
図3】パーソナリティ定義データの生成処理を説明するフローチャートである。
【
図4】サンプルSSID集合の生成の一態様を説明する図である。
【
図5】SSIDフィンガープリントの生成の第1の態様を説明する図である。
【
図6】パーソナリティ定義データの一態様を説明する図である。
【
図7】個人プロファイル定義システムの構成を説明する図である。
【
図8】ユーザ定義情報の一態様を説明する図である。
【
図9】他の実施形態によるパーソナリティ定義データ生成システムの構成を説明する図である。
【
図10】SSIDフィンガープリントの生成アルゴリズムの一態様を説明する図である。
【
図11A】SSIDフィンガープリントの生成の第2の態様を説明する図である。
【
図11B】SSIDフィンガープリントの生成の第2の態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態によるパーソナリティ定義データ生成システム100の構成を説明する図である。図示のように、パーソナリティ定義データ生成システム100は、サンプル端末群Gを構成する複数のサンプル端末T
1,T
2・・・と通信を行う履歴集合取得部70に対して所定のネットワーク300を介して接続されている。なお、以下では、記載の簡略化のため、各サンプル端末T
1,T
2・・・を代表させて「サンプル端末T
m」と表す。
【0015】
サンプル端末群Gは、例えば、所定のエリアに所定日時に集まる、無線通信(特に無線LAN通信)を提供する任意のアクセスポイントとの間で通信可能な任意のサンプル端末Tmの集合、又は専用のアプリケーションなどを介してパーソナリティ定義データ生成システム100と通信する一又は複数のサンプル端末Tmの集合として定まる。特に、各サンプル端末Tmとしては、無線LAN通信機能を備えたスマートフォン、タブレット、又はノートパソコン等の可搬型の端末装置が想定される。
【0016】
履歴集合取得部70は、サンプル端末Tmが保有するSSID(Service Set Identifier)履歴Hmを取得して、これらに含まれる各単位SSIDを集めて成るサンプルSSID集合SHを生成する。履歴集合取得部70は、生成したサンプルSSID集合SHをパーソナリティ定義データ生成装置20に送信する。なお、履歴集合取得部70は、所定のエリアに設置される専用のセンサ、又は各サンプル端末Tmにインストールされた所望の機能を実現するための専用のアプリケーションなどにより実現することができる。
【0017】
なお、SSID履歴Hmは、サンプル端末Tmが過去に接続したことのあるアクセスポイントに付される単位SSIDの履歴である。また、アクセスポイントとは、サンプル端末Tkに対して無線通信(特に無線LAN通信)を可能とさせるハードウェア構成及びソフトウェア構成を備えた無線機を意味する。無線通信の規格としては、特に、Wi-Fi(登録商標)が想定される。
【0018】
さらに、単位SSIDとは、各アクセスポイントを識別するための識別子(アルファベット又は英数字などの文字を複数組み合わせて成る文字列)である。なお、本実施形態では、基本的に、一台のアクセスポイントに対してユニーク(固有)に付される単位SSID(いわゆるBSSID「Basic Service Set Identifier」)を想定する。一方で、以下で説明する各処理は、複数台のアクセスポイントに対してユニーク(固有)に付される単位SSID(いわゆるESSID「Extended Service Set Identifier」)についても適用が可能である。
【0019】
本実施形態のパーソナリティ定義データ生成システム100は、パーソナリティ定義データ生成装置20と、共用SSIDデータベース30と、パーソナリティ定義DB40と、を備えている。
【0020】
パーソナリティ定義データ生成装置20は、演算/制御装置、各種記憶装置、及び各種入出力装置を備えたコンピュータで構成される。なお、演算/制御装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等により実現される。各種記憶装置は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、及びハードディスク(磁気記憶装置)等により実現される。さらに、入出力装置は、キーボード、マウス、タッチパネル、ディスプレイ、プリンタ、及びI/Oポート等により実現される。そして、パーソナリティ定義データ生成装置20は、これら各ハードウェア及び後述する各処理を実行するためのプログラム(ソフトウェア)により構成される。なお、パーソナリティ定義データ生成装置20を、当該各処理を分散して実行するための複数台のコンピュータハードウェアからなるアーキテクチャーにより実現しても良い。パーソナリティ定義データ生成装置20の詳細な構成については後述する。
【0021】
共用SSIDデータベース30は、共用SSIDを記憶する記憶装置である。共用SSIDは、不特定多数の者の利用に供することが想定される特定の文字列で構成される単位SSIDである。共用SSIDには、例えば特定の通信事業者が提供する無線通信にかかるアクセスポイントに付される単位SSID、及び公衆用(公共用、商業用)のアクセスポイント(パブリックアクセスポイント、オープンアクセスポイント)に付される単位SSIDなどの一般的に多数の者の利用に供することが知られている任意の単位SSIDが含まれる。
【0022】
パーソナリティ定義データベース(以下、「パーソナリティ定義DB40」と称する)は、パーソナリティ定義データ生成装置20によって後述する処理で生成されたパーソナリティ定義データDpを記憶させる記憶装置である。
【0023】
以下、パーソナリティ定義データ生成装置20の構成及びこれによる処理の詳細を説明する。
【0024】
図2は、パーソナリティ定義データ生成装置20の構成を説明するブロック図である。また、
図3は、パーソナリティ定義データ生成装置20が実行する処理を説明するフローチャートである。
【0025】
図2に示すように、パーソナリティ定義データ生成装置20は、サンプル集合取得部22と、キーSSID生成部24と、補助SSID生成部25と、フィンガープリント生成部26と、仮想パーソナリティデータ定義部27と、パーソナリティ定義データ生成部28と、を備える。
【0026】
サンプル集合取得部22は、履歴集合取得部70から上述のサンプルSSID集合S
Hを取得する(
図3のステップS100)。
【0027】
図4に、サンプルSSID集合S
Hの一態様を示す。なお、共有SSIDに該当する単位SSIDを大文字のアルファベットで表し、共有SSIDに該当しない単位SSIDを小文字のアルファベットで表す。しかしながら、これはあくまで説明の便宜のために行ったものであり、処理アルゴリズム上は、少なくともサンプルSSID集合S
Hを取得する段階において、各単位SSIDが共有SSIDであるかそうでないかは明らかではない。
【0028】
図示のように、サンプルSSID集合SHは、各サンプル端末Tm(図では、T1,T2)が保有する各SSID履歴H1,H2に含まれる全ての単位SSIDの集まりとして定義される集合である。
【0029】
すなわち、本実施形態のサンプルSSID集合SHには、サンプル端末群Gを構成する各サンプル端末Tmの各SSID履歴Hmに含まれる各単位SSIDがランダムに含まれている。
【0030】
そして、サンプル集合取得部22は、受信したサンプルSSID集合SHを補助SSID生成部25に出力する。
【0031】
キーSSID生成部24は、取得されたサンプルSSID集合SHから、キーSSIDを生成する(ステップS200)。
【0032】
具体的に、キーSSID生成部24は、共用SSIDデータベース30に記憶されている共用SSIDとサンプルSSID集合SHに含まれる各単位SSIDとの比較処理(マッチング処理)を行い、共用SSIDとは異なる文字列を有する一又は複数の単位SSIDの集合を抽出して、これをキーSSIDとする。すなわち、キーSSIDは、サンプルSSID集合SHに含まれる共用SSIDに該当しない単位SSIDの集合(特定の個人又は法人の利用に供するプライベートな単位SSIDの集合)として生成される。
【0033】
補助SSID生成部25は、共用SSIDデータベース30を参照しつつ、サンプルSSID集合SHから補助SSIDを生成する(ステップS300)。
【0034】
具体的に、補助SSID生成部25は、共用SSIDデータベース30に記憶されている共用SSIDとサンプルSSID集合SHに含まれる各単位SSIDとの比較処理を行い、共用SSIDと一致する文字列を有する一又は複数の単位SSIDの集合を抽出して、これを補助SSIDとする。すなわち、サンプルSSID集合SHに含まれる、不特定多数の者による利用に供する単位SSIDの集合として生成される。
【0035】
フィンガープリント生成部26は、生成されたキーSSID及び補助SSIDに基づいて、SSIDフィンガープリントfp[N]を生成する(ステップS400)。
【0036】
具体的に、フィンガープリント生成部26は、SSIDフィンガープリントfp[N]を、得られたキーSSIDのみ、又は当該キーSSIDと補助SSIDを任意に組み合わせて得られる一以上のデータセットをSSIDフィンガープリントfp[N]とする。
【0037】
仮想パーソナリティデータ定義部27は、生成したSSIDフィンガープリントfp[N]の数に応じた各仮想パーソナリティデータuv[N]、及び各仮想パーソナリティデータuv[N]に一意に付される識別子I[N]を定義する(ステップS500)。なお、仮想パーソナリティデータuv[N]は、コンピュータ処理上において仮想的な一個人を定義するべく生成されるデータである。すなわち、仮想パーソナリティデータuvは、現実の個人を特定する情報とは独立して生成される。そして、仮想パーソナリティデータ定義部27は、定義した識別子I[N]及び仮想パーソナリティデータuv[N]をパーソナリティ定義データ生成部28に出力する。
【0038】
パーソナリティ定義データ生成部28は、識別子I[N]及び仮想パーソナリティデータuv[N]に、SSIDフィンガープリントfp[N]を紐づけて成るパーソナリティ定義データDpを生成する。そして、パーソナリティ定義データ生成部28は、生成したパーソナリティ定義データDpをパーソナリティ定義DB40に記憶させる。
【0039】
以上説明した本実施形態の処理をより具体的な態様に照らして説明する。
【0040】
図5は、SSIDフィンガープリントfpの生成の一態様を説明する図である。
【0041】
図5に示すように、サンプルSSID集合S
Hと共用SSIDデータベース30の比較処理により、キーSSIDが「a,n」及び補助SSIDが「G,C,Q,M,W」として定まる。
【0042】
そして、SSIDフィンガープリントfp[N]としては、例えば、キーSSIDのみから成る[a]及び[n]、又はキーSSIDと補助SSIDが組み合わさった[a,G]及び[n,C]などが生成される。
【0043】
なお、SSIDフィンガープリントfp[N]を構成する際のキーSSIDや補助SSIDの具体的な組み合わせ方は、サンプル端末群Gに関する条件(要素となる端末数、取得位置、及び取得場所など)に応じて適宜、設定することができる。
【0044】
図6は、パーソナリティ定義データDpの一態様を説明する図である。本例のパーソナリティ定義データDpでは、第1の仮想パーソナリティデータu
v[1]を表す識別子I
[1]に対応したSSIDフィンガープリントfp
[1]として[a]が定義され、第2の仮想パーソナリティデータu
v[2]を表す識別子I
[2]に対応したSSIDフィンガープリントfp
[2]として[n,C]が定義される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、一以上のサンプル端末Tmを含む任意のサンプル端末群Gから取得される各SSID履歴Hmの集合をサンプルSSID集合SHとして取得するサンプル集合取得部22と、サンプルSSID集合SHから、不特定多数の者の利用に供する共用SSIDを除く一又は複数の単位SSIDの集まりをキーSSIDとして生成するキーSSID生成部24と、サンプルSSID集合SHから、共用SSIDに該当する一又は複数の単位SSIDの集まりを補助SSIDとして生成する補助SSID生成部25と、キーSSID、又はキーSSID及び補助SSIDの組み合わせとして構成される一以上のSSIDフィンガープリントfp[N]を生成するフィンガープリント生成部26と、生成したSSIDフィンガープリントfp[N]の数に応じた各仮想パーソナリティデータuv[N]、及び各仮想パーソナリティデータuv[N]に一意に付される識別子I[N]を定義する仮想パーソナリティデータ定義部27と、識別子I[N]にSSIDフィンガープリントfp[N]を紐づけて成るパーソナリティ定義データDpを生成するパーソナリティ定義データ生成部28と、を備えるパーソナリティ定義データ生成装置20が提供される。
【0046】
本発明者らは、以上説明した処理により得られるパーソナリティ定義データDpが、現実における一個人に対してユニークな新たな識別情報として機能することを見出した。より具体的に、近年では、各個人は多くの場合、スマートフォン等の通信端末を所持しつつ、自己の生活習慣に応じた特有の行動傾向(特定の公共交通機関を用いた移動、特定への店舗への来店、特定の学校への通学、及び特定の勤務地への通勤など)にしたがって行動を行う。
【0047】
そして、近年では、公衆用途及び私的用途を問わず、至るところに無線通信用のアクセスポイントが設置されているところ、通信端末を所持する各個人は自己の行動傾向に沿って行動を行う過程において様々なアクセスポイントとの間で通信を行う。このため、各個人が行く先々において、それぞれが所持する通信端末は様々なアクセスポイントと通信(プローブリクエスト)を行うこととなる。ここで、本発明者らは、具体的な行動傾向は各個人の生活習慣によって様々であるところ、各個人の行動傾向に応じて各通信端末に記憶されるSSID履歴が異なることに着目した。
【0048】
すなわち、本発明者らは、各個人が所持する各通信端末には、それぞれに固有の単位SSIDのパターンが存在するであろうという思想に至った。より詳細には、本発明者らは、任意のサンプル端末群Gから集められたサンプルSSID集合SHに含まれている各単位SSIDに、上述した各処理を施して得られた各SSIDフィンガープリントfp[N]は、現実のある各個人の行動傾向にユニークに対応することを見出した。言い換えると、一のSSIDフィンガープリントfp[N]は、現実における一の行動傾向、すなわち一の個人に固有の識別情報として機能することとなる。
【0049】
したがって、本実施形態で説明したアルゴリズムにより生成された、各個人の行動傾向に対してユニークなSSIDフィンガープリントfp[N]を含むパーソナリティ定義データDpは、現実の各個人を特定(定義)し得る新規な識別情報として好適に機能することとなる。
【0050】
次に、上記のアルゴリズムにより生成されたパーソナリティ定義データDpを現実の各個人と結び付けるためのシステム(個人プロファイル定義システム200)の一例を説明する。
【0051】
図7は、個人プロファイル定義システム200の構成を説明する図である。個人プロファイル定義システム200は、パーソナリティ定義データ生成装置20により生成されたパーソナリティ定義データDpを用いて、各個人端末Tu
1,Tu
2・・・を使用する各個人u
1,u
2の行動傾向を示すプロファイル情報を定義する。なお、以下では、各個人端末Tu
1,Tu
2・・・を代表させて「個人端末Tu
x」と表記して説明を行う。
【0052】
具体的に、個人プロファイル定義システム200は、個人端末Tuxが保有するSSIDの履歴である個人SSID履歴Hxを受信する受信装置201と、パーソナリティ定義データDpに含まれるSSIDフィンガープリントfp[N]を個人SSID履歴Hxと照合する照合装置202と、SSIDフィンガープリントfp[N]が個人SSID履歴Hxに含まれる各単位SSIDの少なくとも一部と所定の一致率以上で一致する場合に、パーソナリティ定義データDpを個人uxのプロファイル情報と定義するプロファイル情報定義装置203と、得られた個人uxのプロファイル情報を記憶するプロファイル情報DB204と、を備える。
【0053】
なお、受信装置201は、例えば、各個人端末Tuxに保有される各個人SSID履歴Hxを個別に取得し得る所定のアプリケーションなどにより構成することができる。
【0054】
図8には、プロファイル情報DB204に記憶されているデータの一態様を示す。図示のように、プロファイル情報DB204には、各個人u
1,u
2(識別子I
[1],I
[2])に対してそれぞれ、一意にSSIDフィンガープリントfp
[1],fp
[2]に紐づいたプロファイル情報が記憶されることとなる。
【0055】
既に説明したように、各SSIDフィンガープリントfp[N]は、現実の各個人の行動傾向にユニークに定まる。このため、上述した各個人uxにそれぞれのSSIDフィンガープリントfp[x]が紐付いてなるプロファイル情報は、種々のサービスの提供業務においてターゲットとなる各ユーザ、さらには各ユーザの行動傾向をユニークに特定(定義)し得る新規な情報として機能することとなる。
【0056】
その一方で、各SSIDフィンガープリントfp[N]は、各個人の行動傾向に一意に対応するものの、各個人のプライバシーに関わる情報(例えば、氏名、連絡先、及び住所など)に直接相関するものでは無い。このため、上記プロファイル情報を用いることで、各個人のプライバシーを確保しつつも、必要な範囲で各個人を特定することができる。
【0057】
さらに、個人プロファイル定義システム200により初めにプロファイル情報を生成する際には、個人uxが所持する個人端末Tuxから個人SSID履歴Hxを取得することを要する。一方で、一旦、プロファイル情報が生成された後に、当該プロファイル情報を用いて個人uxを特定する際には、プロファイル情報が生成された際に当該個人uxが所持していた個人端末Tuxと同一の端末(より具体的には、ハードウェアとして同一の端末)を所持していることを要しない。
【0058】
より詳細には、プロファイル情報に含まれる各SSIDフィンガープリントfp[x]は、各個人端末Tuxではなく、各個人uxに固有の行動傾向にユニークに紐づくものである。すなわち、各個人端末Tuxのハードウェア構成(スマートフォンの機種)やソフトウェア構成(オペレーションシステムの種類)などに依存することなく、各個人uxに対するユニークな定義情報として用いることができる。より具体的には、例えば、端末ハードウェアの交換(例えば、スマートフォンの機種変更)或いはオペレーションシステムの更新などによって、個人端末Tuxに残されていた個人SSID履歴Hxが消失したとしても、個人uxが当該消失以前と同様の生活習慣に基づく行動傾向をとれば、端末に新たに同一のSSIDフィンガープリントfp[x]に類する単位SSIDの組み合わせパターンが履歴として残ることとなる。このため、上記プロファイル情報は、各個人uxが所持する端末ハードウェアの異同に依存せずに、当該各個人uxを特定し得る情報として機能する。
【0059】
上述したように、個人プロファイル定義システム200により生成されるプロファイル情報は、種々のサービス提供業務においてターゲットとなる個人ux(サービスの提供を受けるユーザ)の特定に利用することができる。一例として、マーケティング分析やデジタルサイネージなどの広告表示機への広告の出し分け(いわゆるDMP(Data Management Platform))を行う業務において、当該個人uxのプロファイル情報を参照することで、氏名や住所などのプライバシーに関わる情報を用いること無く、ターゲットとなる個人uxをユニークに特定することができる。特に、既に述べたように、プロファイル情報の核であるSSIDフィンガープリントfp[x]は、個人uxを厳密に特定するための氏名等の個人情報そのものではなく、個人uxの固有の行動傾向に紐づくものである。この点、広告の出し分けなどを含む特定のサービス提供業務では、氏名等の個人情報よりむしろターゲットとなる個人uxの行動傾向ごとに当該個人uxを特定(定義)した方が好ましい場合がある。より具体的には、ある商品又はサービスに関する広告を提供する場合には、個人uxが当該広告内容を好むか否か(当該個人uxをターゲットとすべきか否か)は、当該個人uxの生活習慣に応じた行動傾向(すなわち、SSIDフィンガープリントfp[x])に強い相関を持つことが想定される。したがって、上記プロファイル情報は、広告の出し分け業務などの本人の行動傾向に紐づけて個人uxを一意に管理することが望ましいサービス提供業務へ適用することで、特に好ましい効果が得られる。
【0060】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。特に、本実施形態では、第1実施形態で説明したSSIDフィンガープリントfp[N]を生成するアルゴリズムをベースとして、SSIDフィンガープリントfp[N]の現実の個人に対する一意性の精度(パーソナリティ定義データDpの確からしさ)を向上させるための処理の一例を説明する。
【0061】
図9は、本実施形態によるパーソナリティ定義データ生成システム100の構成を説明する図である。
【0062】
図9に示すように、本実施形態では、複数のサンプル端末群Gが準備される。より具体的には、予め定められる複数の検出位置z及び検出日時tごとの各サンプル端末群G(z,t)が規定される。
【0063】
また、履歴集合取得部70は、各検出位置zに設けられ、当該各検出位置zにおける各サンプル端末群G(z,t)から対応するサンプルSSID集合SH(z,t)を検出するための複数の検出装置であるセンサα1,α2・・・により構成される。なお、以下では、センサα1,α2・・・を代表させて「センサαk」とも記載する。
【0064】
各センサαkは、それぞれに対応するサンプル端末群G(zk,tl)に属する各サンプル端末Tm(zk,tl)との通信(特に、プローブリクエスト)を介して、それぞれが保有する各SSID履歴Hm(zk,tl)を、それぞれの検出日時tとともに検出する。さらに、各センサαkは、各サンプル端末Tm(zk,tl)に保有されている各SSID履歴Hm(zk,t)を集めてサンプルSSID集合SH(zk,tl)を生成する。すなわち、本実施形態のサンプルSSID集合SH(z,t)は、各センサα1,α2・・・に応じて定まる複数のサンプルSSID集合SH(z1,t1),SH(z2,t1)・・・SH(z1,t2),SH(z1,t3)により規定されることとなる。
【0065】
そして、パーソナリティ定義データ生成装置20は、サンプルSSID集合S
H(z,t)を取得すると、当該サンプルSSID集合S
H(z,t)に基づいて、第1実施形態で説明した
図3に示す処理を実行する。以下では、特に、本実施形態におけるキーSSID生成部24、補助SSID生成部25、及びフィンガープリント生成部26における処理を説明する。
【0066】
先ず、キーSSID生成部24は、サンプルSSID集合SH(z,t)の要素の一つである第1サンプルSSID集合SH(z1,t1)から、第1実施形態で説明したキーSSIDを生成する方法と同様のロジックで、暫定キーSSIDを生成する。一方、補助SSID生成部25は、第1サンプルSSID集合SH(z1,t1)から、第1実施形態で説明した補助SSIDを生成する方法と同様のロジックで、暫定補助SSIDを生成する。
【0067】
そして、フィンガープリント生成部26は、得られた暫定キーSSID、又はキーSSIDと暫定補助SSID若しくは第2補助SSIDの組み合わせに基づいてSSIDフィンガープリントfp[N]を生成する。以下、本実施形態のフィンガープリント生成部26による処理の詳細を説明する。
【0068】
図10は、本実施形態におけるフィンガープリント生成部26における処理を説明するフローチャートである。
【0069】
フィンガープリント生成部26は、上述の方法で求められた暫定キーSSIDと、第1サンプルSSID集合SH(z1,t1)とは異なる第2サンプルSSID集合SH(z2,t2)と、の比較を行う(ステップS410)。特に、フィンガープリント生成部26は、暫定キーSSIDと、第2サンプルSSID集合SH(z2,t2)と、の間で重複する一又は複数の単位SSIDが存在するか否かを判定する(ステップS420)。
【0070】
フィンガープリント生成部26は、重複する単位SSIDが存在しないと判断すると本処理を終了させる。一方、フィンガープリント生成部26は、重複する単位SSIDが存在すると判断すると、これを最終キーSSIDに決定する(ステップS430)。
【0071】
次に、フィンガープリント生成部26は、暫定補助SSIDと第2サンプルSSID集合SH(z2,t2)を比較する(ステップS440)。特に、フィンガープリント生成部26は、暫定補助SSIDと第2サンプルSSID集合SH(z2,t2)との間で重複する一又は複数の単位SSIDが存在するか否かを判定する(ステップS450)。
【0072】
フィンガープリント生成部26は、暫定補助SSID及び第2サンプルSSID集合SH(z2,t2)の間に重複する単位SSIDが存在すると判断すると、これを最終補助SSIDに決定する(ステップS460)。さらに、フィンガープリント生成部26は、得られた最終キーSSID及び最終補助SSIDの組み合わせによりSSIDフィンガープリントfp[N]を生成する(ステップS470)。
【0073】
一方、フィンガープリント生成部26は、暫定補助SSID及び第2サンプルSSID集合SH(z2,t2)の間に重複する単位SSIDが存在しないと判断すると、最終キーSSIDのみに基づいて(暫定補助SSIDを用いずに)、SSIDフィンガープリントfp[N]を生成する(ステップS480)。
【0074】
以上説明した本実施形態の処理をより具体的な態様に照らして説明する。
【0075】
図11A及び
図11Bは、本実施形態におけるSSIDフィンガープリントfp
[1]の生成の一態様を説明する図である。
【0076】
図11Aに示すように、本実施形態では、キーSSID生成部24によって、第1サンプルSSID集合S
H(z1,t1)に含まれ、且つ共用SSIDデータベース30に存在しない単位SSID[a],[n]により構成される暫定キーSSID「a,n」が生成される。一方、補助SSID生成部25によって、第1サンプルSSID集合S
H(z1,t1)に含まれ、且つ共用SSIDデータベース30に存在する単位SSIDにより構成される暫定補助SSID「G,C,Q,M,W」が生成される。
【0077】
次に、
図11Bに示すように、フィンガープリント生成部26によって、暫定キーSSID「a,n」の内、第2サンプルSSID集合S
H(z2,t2)にも含まれる「a」が最終キーSSIDとして決定される。一方、暫定補助SSID「G,C,Q,M,W」の内、第2サンプルSSID集合S
H(z2,t2)にも含まれる「G,C」が、最終補助SSIDとして決定される。
【0078】
そして、得られた最終キーSSID「a」及び最終補助SSID「G,C」を組み合わせて成る[a,C,G]を一つのSSIDフィンガープリントfp[1]として生成する。すなわち、このように生成されたSSIDフィンガープリントfp[1]は、パーソナリティ定義データDpにおける一の識別子I[1]にユニークに紐づけられる。
【0079】
このSSIDフィンガープリントfp[1]には、それぞれ異なるサンプル端末群G(z,t)、特に異なる検出位置z及び異なる検出日時tごとに定まる各SSID履歴Hm(z,t)の内の少なくとも2つに重複して含まれるキーSSIDを要素として含む。すなわち、SSIDフィンガープリントfp[1]は、任意の複数のサンプル集団内の少なくとも2つに含まれるプライベートSSIDを要素とする。このため、一のサンプル端末群Gのみに基づいたサンプルSSID集合SHのみからSSIDフィンガープリントfp[1]を生成する場合に比べて、当該SSIDフィンガープリントfp[1]の現実の一個人(特にい個人の行動傾向)に対する一意性をより向上させることができる。この点についてより詳細に説明する。
【0080】
先ず、一のサンプル端末群Gから得られるサンプルSSID集合S
Hに基づいて各SSIDフィンガープリントfp
[N]を生成する場合、理論上、生成し得るSSIDフィンガープリントfp
[N]のパターンは、少なくとも、当該サンプルSSID集合S
Hから定まるキーSSIDの要素である単位SSIDの数に対するべき乗となる。例えば、
図5に示す例を前提として、キーSSIDのみにより理論上生成可能な各SSIDフィンガープリントfp
[N]は、[a]、[n]、及び[a,n]となる。また、キーSSIDに補助SSIDを組み合わせて生成するパターンも考慮すると、SSIDフィンガープリントfp
[N]の候補がより増大する。
【0081】
さらに、サンプル端末群Gの母数(属する端末数)大きい場合には、理論上生成可能なSSIDフィンガープリントfp[N]のパターンが階乗オーダーで増大することとなるため、演算負担が大きくなる。また、この場合、一つのサンプルSSID集合SH内に多数の端末由来の単位SSIDが混在する。このため、キーSSIDや補助SSIDの選び方によっては、生成されるSSIDフィンガープリントfp[N]の精度(現実の各個人の行動傾向に対するユニーク性)が十分に確保されないことも想定される。
【0082】
これに対して、本実施形態では、上記のアルゴリズムによって、SSIDフィンガープリントfp[N]の精度をより高めることができる。
【0083】
以上説明した本実施形態の構成及びそれによる作用効果をまとめて説明する。
【0084】
本実施形態のパーソナリティ定義データ生成装置20では、サンプル集合取得部22は、複数のサンプル端末群G(z,t)からそれぞれ得られる複数のサンプルSSID集合SH(z1,t),SH(z2,t)・・・を受信する。そして、キーSSID生成部24は、複数のサンプルSSID集合SH(z1,t),SH(z2,t)・・・に共通して含まれるキーSSID(最終キーSSID)に基づいて、SSIDフィンガープリントfpを生成する。
【0085】
これにより、現実の各個人の行動傾向に対するユニーク性がより確保されたSSIDフィンガープリントfp[N]を生成するための、具体的なアルゴリズムが実現されることとなる。
【0086】
なお、本実施形態では、第1サンプルSSID集合SH(z1,t1)と第2サンプルSSID集合SH(z2,t2)の2つに共通して含まれる暫定キーSSIDを最終キーSSIDとする例にフォーカスして説明した。しかしながら、ある暫定キーSSIDを最終キーSSIDとすべき否かの判断基準とすべき各サンプルSSID集合SH(zk,t)における重複数は、適宜設定することができる。一方で、重複数が一定以上となる暫定キーSSIDは、不特定多数の者の利用に供する可能性があるため、当該基準となる重複数はこれを考慮した一定値以下とすることが好ましい。
【0087】
特に、本実施形態では、複数のサンプルSSID集合SH(zk,tl)は、第1サンプルSSID集合SH(z1,t1)とこれとは異なる第2サンプルSSID集合SH(z2,t2)を含む。また、キーSSID生成部24は、第1サンプルSSID集合SH(z1,t1)から、共用SSIDを除く一又は複数の単位SSIDを暫定キーSSIDとして生成する。一方、補助SSID生成部25は、第1サンプルSSID集合SH(z1,t1)から、共用SSIDに該当する一又は複数の単位SSIDを暫定補助SSIDとして生成する。
【0088】
そして、フィンガープリント生成部26は、第2サンプルSSID集合SH(z2,t2)に含まれる暫定キーSSIDを最終キーSSIDとし、暫定補助SSIDが第2サンプルSSID集合SH(z2,t2)に含まれる場合には、該暫定補助SSIDを最終補助SSIDとし、SSIDフィンガープリントfp[N]を、最終キーSSID及び最終補助SSIDの組み合わせにより生成する。一方、暫定補助SSIDが第2サンプルSSID集合SH(z2,t2)に含まれない場合には、SSIDフィンガープリントfp[N]を、最終キーSSIDにより生成する。
【0089】
これにより、現実の各個人の行動傾向に対するユニーク性がより確保されたSSIDフィンガープリントfp[N]を生成するための、より具体的なアルゴリズムが実現されることとなる。
【0090】
さらに、本実施形態における複数のサンプルSSID集合SH(zk,tl)は、各検出位置z1,z2・・・及び各検出日時t1,t2に応じて定まるそれぞれのG(zk,tl)から得られる各SSID履歴Hm(zk,tl)の集合・・・として定められる。
【0091】
これにより、SSIDフィンガープリントfp[N]を生成する処理に用いる好ましい入力データの一態様が実現される。特に、同一の検出位置z1における異なる検出日時t1,t2で規定されるサンプル端末群G(z1,t1),G(z1,t2)、或いは異なる検出位置z1,z2において所定の時間差に設定された各検出日時t1,t2で規定されるサンプル端末群G(z1,t1),G(z2,t2)などを、予め想定した各個人の生活習慣などを考慮して適宜調節することで、生成されるSSIDフィンガープリントfp[N]の精度を向上させることもできる。
【0092】
なお、本実施形態で説明したSSIDフィンガープリントfp[N]を生成するためのアルゴリズムは一例であり、設定されるサンプル端末群G(zk,tl)の性質などを考慮した上で、種々の変更が可能である。例えば、予めサンプル端末群G(zk,tl)に含まれる各サンプル端末Tm(zk,tl)の数などの補足情報を得られる場合には、これを参照した上で最終キーSSID又はSSIDフィンガープリントfp[N]の候補を絞り込む構成を採用しても良い。一例として、特定の店舗、勤務先、学校、又はその他の予め定められるある一のスポット(検出位置z1)において、所定時間内(例えば、t2-t1)で得られる各サンプルSSID集合SH(z1,tl),SH(z1,t2)に共通して含まれるキーSSIDを最終キーSSIDとするアルゴリズムを採用することで、得られるSSIDフィンガープリントfp[N]があるスポットに一定時間以上滞在するという特定の生活習慣を持つ一の個人により好適に紐づくこととなる。
【0093】
また、暫定補助SSIDから最終補助SSIDを決定するにあたり、第1サンプルSSID集合SH(z1,t1)及び第2サンプルSSID集合SH(z2,t2)の双方に共通して含まれるという条件に加えて、暫定補助SSIDが、暫定キーSSID又は最終キーSSIDと同一の検出位置z1における所定の時間差(例えば、t2-t1)で検出されたものである場合にのみこれを最終補助SSIDとするアルゴリズムを採用して良い。
【0094】
[第3実施形態]
以下、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
本実施形態のパーソナリティ定義データ生成装置20は、第2実施形態で説明した構成をベースとして、共用SSIDデータベース30を更新する共用SSID更新部をさらに備える。ここで、共用SSIDデータベース30には、基本的に、不特定多数の者の利用が想定されるものとして一般的に知られている単位SSID(通信事業者のアクセスポイントに付されるSSIDなど)を記憶させておくことができる。一方で、本発明者らは、第1実施形態又は第2実施形態において説明した処理に用いる共用SSIDとしては、このように一般的に知られている単位SSIDだけでなく、所定の判定基準により一定数以上の者による利用に供すると推定される単位SSIDについても共用SSIDと定義することで、生成されるSSIDフィンガープリントfp[N]の精度がより向上することを見出した。
【0096】
具体的に、共用SSID更新部は、複数のサンプルSSID集合SH(zk,t)に所定の閾値数を超えて重複して含まれる単位SSIDを新たな共用SSIDとして共用SSIDデータベース30を更新する。
【0097】
複数のサンプルSSID集合SH(zk,tl)に一定以上重複して含まれる単位SSIDについては、特定の一人の個人というよりも複数人の個人の利用に供するものであると推定される。このため、これに基づいてキーSSIDが生成されてしまうと、最終的に得られるSSIDフィンガープリントfp[N]の精度の低下が懸念される。したがって、本実施形態においては、このような単位SSIDについては、たとえこれが上述した一般的に知られているものに該当せずとも、これを共用SSIDとして記録することで、SSIDフィンガープリントfp[N]の精度をより向上させることができる。
【0098】
上記閾値数の具体的な値は、サンプル端末群G(zk,tl)の規模などに応じて種々設定されるもので特定の値に限定されるものでは無い。また、共用SSID更新部による共用SSIDデータベース30の更新頻度は、例えば、任意の時間間隔(例えば24時間間隔など)に設定することができる。なお、共用SSID更新部が、異なる複数の検出位置z1,z2・・・において、所定の検出日時範囲(例えば、数秒~数分の検出間隔)の間に得られる各サンプルSSID集合SH(z1,t1),SH(z2,t1+Δt)・・・に共通して含まれる単位SSIDを新たな共用SSIDとして定める構成を採用しても良い。すなわち、少なくとも一のサンプル端末Tmを所持する一の個人が、一定以上離れた場所に短時間の間に移動することは現実的に想定し難い。そのため、このような各検出位置zk(特に一定以上距離が離れた異なる検出スポット)に由来する各サンプルSSID集合SH(zk,tl)内において複数回重複する単位SSIDは、特定の一の個人にユニークに対応すべきキーSSIDとしては適切ではない可能性がある。したがって、このような単位SSIDを共用SSIDとすることで、キーSSIDと補助SSIDの切り分けに用いる共用SSIDの精度をより向上させることができる。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0100】
上記実施形態の構成は、論理的に矛盾しない範囲で相互に組み合わせることが可能である。
【0101】
また、コンピュータであるパーソナリティ定義データ生成装置20に、以上のサンプル端末Tmを含む任意のサンプル端末群Gから取得される各SSID履歴Hmの集合をサンプルSSID集合SHとして取得させ、サンプルSSID集合SHから、不特定多数の者の利用に供する共用SSIDを除く一又は複数の単位SSIDの集まりをキーSSIDとして生成させ、サンプルSSID集合SHから、共用SSIDに該当する一又は複数の単位SSIDの集まりを補助SSIDとして生成させ、キーSSID、又はキーSSID及び補助SSIDの組み合わせとして構成される一以上のSSIDフィンガープリントfp[N]を生成させ、生成したSSIDフィンガープリントfp[N]の数に応じた各仮想パーソナリティデータuv[N]、及び各仮想パーソナリティデータuv[N]に一意に付される識別子I[N]を定義させ、識別子I[N]にSSIDフィンガープリントfp[N]を紐づけて成るパーソナリティ定義データDpを生成させるパーソナリティ定義データ生成プログラムも、出願時の本願の明細書等に開示された事項の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
20 パーソナリティ定義データ生成装置
22 サンプル集合取得部
24 キーSSID生成部
25 補助SSID生成部
26 仮想パーソナリティデータ定義部
27 フィンガープリント生成部
28 パーソナリティ定義データ生成部
30 共用SSIDデータベース
40 パーソナリティ定義データベース
100 パーソナリティ定義データ生成システム
200 個人プロファイル定義システム
201 受信装置
202 照合装置
203 プロファイル情報定義装置
204 プロファイル情報データベース
【要約】
【課題】各種のサービス提供業務などにおいて利用可能な、各個人を識別し得る新規な識別情報を提供する。
【解決手段】
任意のサンプル端末群から取得される各SSID履歴の集合をサンプルSSID集合として取得し、サンプルSSID集合から、共用SSIDではないキーSSID及び共用SSIDに該当する補助SSIDを生成し、キーSSID又はキーSSID及び補助SSIDの組み合わせとして構成される一以上のSSIDフィンガープリントを生成し、生成したSSIDフィンガープリントの数に応じた複数の仮想パーソナリティデータ、及び各仮想パーソナリティデータに一意に付される識別子を定義し、当該識別子にSSIDフィンガープリントを紐づけて成るパーソナリティ定義データを生成するパーソナリティ定義データ生成装置を提供する。
【選択図】
図2