(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】積層造形のチタン合金組織を改善するための水素化圧延複合方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/34 20210101AFI20220208BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220208BHJP
B22F 10/64 20210101ALI20220208BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220208BHJP
B33Y 40/10 20200101ALI20220208BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20220208BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20220208BHJP
B22F 10/60 20210101ALI20220208BHJP
【FI】
B22F10/34
B22F1/00 R
B22F10/64
B33Y10/00
B33Y40/10
B33Y40/20
B33Y70/00
B22F10/60
(21)【出願番号】P 2021500883
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2019093540
(87)【国際公開番号】W WO2020011027
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-01-06
(31)【優先権主張番号】201810755021.2
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521009315
【氏名又は名称】南京尚吉増材制造研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼中▲剛▼
(72)【発明者】
【氏名】李永▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼小▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】唐明亮
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼文▲書▼
(72)【発明者】
【氏名】常▲輝▼
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-002400(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0315773(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0146736(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/34
B22F 1/00
B22F 10/64
B33Y 10/00
B33Y 40/10
B33Y 40/20
B33Y 70/00
B22F 10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のステップ1~6を含む積層造形のチタン合金組織を改善するための水素化圧延複合
方法。
チタン合金粉末の水素化処理を施すステップであって、チタン合金粉末を水素化熱処理管状炉に入れ、粉末を層状に散布し、各層の粉末散布の厚さが2~8mmで、1.5×10
-3Paまで真空引き、10~20℃/minの速度で700℃~800℃まで加熱し、10~30分保温し、チタン合金粉末の重量パーセントに基づき0.1%~0.8%の水素ガスを吹き込み、1~4時間保温し、その後5~15℃/minの速度で室温まで冷却することで、水素化チタン合金粉末を得るステップ1、
水素化後のチタン合金粉末を積層造形に用い、ワークピース印刷を実施して、チタン合金の金属堆積層を形成するステップ2、
NCシステムで圧延ロールを制御して、前記ステップ2で形成されたチタン合金の金属堆積層を圧延するステップ3、
ステップ2、ステップ3を繰り返して、ワークピースの印刷が完了されるまで層ごとに印刷および圧延するステップ4、
積層造形後のチタン合金ワークピースに固溶化処理(チタン合金ワークピースを熱処理炉に入れ、10~20℃/minの速度でTp℃(相転移温度)+10℃まで加熱し、20~40分保温し、その後焼入れる)を施すステップ5、
固溶後のチタン合金ワークピースにアニーリング+水素除去熱処理(チタン合金ワークピースを真空熱処理炉に入れ、1.5×10
-3Paまで真空引き、10~20℃/minの速度で700℃~800℃まで加熱し、炉内の真空度は設定値に達してから、一定の時間保温した後、最後に室温まで冷却する)を施すステップ6。
【請求項2】
前記ステップ6において、前記700℃~800℃まで加熱した後、炉内の真空度が3×10
-3Paより高い時、2時間~4時間保温した後、5~15℃/minで室温まで冷却することを特徴とする、請求項1に記載の積層造形のチタン合金組織を改善するための水素化圧延複合
方法。
【請求項3】
前記ステップ4の圧延プロセスでは、圧延時の圧延量が0.4mmの下で、圧延誤差を0.01mmに制御することを特徴とする、請求項1または2に記載の積層造形のチタン合金組織を改善するための水素化圧延複合
方法。
【請求項4】
前記ステップ3の圧延プロセスでは、圧延変形量を10~50%に制御することを特徴とする、請求項1に記載の積層造形のチタン合金組織を改善するための水素化圧延複合
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形分野に属し、チタン合金組織への改善処理に関し、特に、積層造形のチタン合金組織を改善するための水素化+圧延方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形プロセスで用いられる熱源の種類には、レーザー、アーク、プラズマ、電子ビームなどがあり、積層造形工程での急速な加熱と急速な冷却を伴う超常冶金環境下において、積層造形の冶金学的な品質が低く、組織が粗い。かかる材料形態には、粉末とワイヤーが含まれるが、光源と製品形態がどのように変化しても、固化プロセスの冶金的特性が基本的に同じであり、すなわち、金属マイクロゾーンは、集中熱源の作用下で急速に加熱され、急冷されて急速に固化され、その後層ごとの堆積プロセスで複数のサイクル、可変サイクル、激しい加熱と冷却を受けた後、隣接する層または数層が周期的な再溶融と冷却を受け、他の堆積層の結晶粒は周期的に微加熱される。周期的な再溶解と微小ロ熱処理により、積層造形された金属部材の独特な微視組織が得られる。チタン合金を原料とした積層造形プロセスでは、レーザー選択溶融やレーザー蒸着成形などの結晶粒が基板界面に垂直に成長した粗大なオリジナルβ結晶粒と柱状晶になり、底部と頂部に等軸的な結晶粒または微細な結晶粒がわずかしか現れず、非常に不均一な組織特性を形成し、この粗大な組織はより高いエネルギー密度の電子ビームおよびアークの積層造形工程において貫通する柱状晶にさえ発達した。それにもかかわらず、急速な冷却はまた、粗大な結晶粒の内部に微細なラメラ状または針状マルテンサイト組織という超常特殊構造をもたらす。これが、積層造形のチタン合金部材の堆積状態の力学的性質が一般に鋳物または鍛造品の機械的性質よりも高い主な要因である。
【0003】
この問題に着目し、従来技術では、多くの模索的研究が実施され、積層造形工程自体、粒子強化の微細化された結晶粒の添加、および磁界、電界、超音波、レーザー、マイクロ鍛造などの側面を利用してミクロ組織を調整することから、積層造形冶金組織の問題を解決しようとしてきた;
1、積層造形工程パラメータの調整を通じてある程度で冶金組織の改善を達成する。従来技術は、成形プロセスの工程パラメータの制御およびその後の熱処理工程から工程を通じて柱状晶のサイズを縮小しようと試みている。例えばP.A.KobrynらがTi-6Al-4V合金のレーザークラッディングの柱状晶生成法則を研究し、その結果は高温度勾配と大きな冷却速度が柱状晶の成長に有利となり、高いスキャン速度が柱状晶のサイズを縮小できることを示し;
ただし、工程による制御は、過冷却の観点から組織を調整することであり、積層造形がレーザー、電子ビーム等の高エネルギー熱源の加熱により、凝固速度が0.1ms~1から5ms~1で、温度勾配がすでに非常に高いレベルにあり、工程パラメータの調整を通じて結晶粒微細化強化を達成することが困難であり;
2、核生成剤または合金元素の添加は、積層造形組織の微細化を実現するための潜在的なルートであり、米国のBanerjeeらはレーザー三次元成形技術を使用して、Ti-TiBおよびTi6Al4V-TiB複合材料の製造に成功し、TiB補強材が堆積状態の合金内で均一に分散し、組織をある程度で微細化することができる。核生成剤の添加は、核形成粒子を増加させることにより組織改善を達成するが、核生成核剤を添加すると合金組成に影響を及ぼし、合金組成に厳しい要件がある合金には適しておらず;
3、積層造形の原材料の改善を通じてミクロ組織を改善し、例えば特許文献1によって提案されたTC4チタン合金の室温での可塑性を高める循環熱水素化処理工程は、TC4チタン合金に対し2回循環水素化処理を施し、すなわち、TC4チタン合金に対し1回の水素化処理を施した後で水素を除去してから2回目の水素化処理を施し、最後に固溶体化処理を施す。本発明の2回水素化処理方法は、C4チタン合金内のα相とβ相の比を改善し、合金内の可塑性がより良好なβ相の含有量を増し、α’マルテンサイトの含有量を減少し、結晶粒を微細化し、それによりその室温での可塑性が更に改善され;2回循環熱水素処理を経た後、TC4チタン合金の最終変形率を改善し22.1%アップし、降伏強度が11.1%減少し、降伏比が11.5%減少した。ただしその欠点は、TC4合金その後の熱処理過程に結晶粒を微細化する水素の作用のみを利用し、溶融や堆積プロセスで元素拡散を促進し、液/固界面組成的過冷却を増加させるために水素を使用できないことであり;水素化物の形成と分解、水素化が変形抵抗を低減させ、転位の動きを促進して変形欠陥を形成し、多次元、多角度から非自発的核生成、結晶粒微細化の作用を促進させる。
【0004】
なお、趙嘉棋らは、特許文献2では、水素化-ホットアイソスタティックプレスによる鋳造Ti3Al合金ミクロ組織の改善方法を提案した。この方法は、一、鋳造Ti3Al合金に対しホットアイソスタティックプレス工程処理を施すステップ1と、ホットアイソスタティックプレス工程処理が施された後のTi3Al合金に対し水素化処理を施すステップ2と、水素化処理が施された後のTi3Al合金に対し固溶、時効処理を施すステップ3と、最後に真空アニーリング処理を施すステップと、を含む。ホットアイソスタティックプレス工程で、鋳造Ti3Al合金内の巣等の欠陥を修復し、合金の緻密度を向上させることに有利であり;一方、鋳造Ti3Al合金における水素の可逆的な合金化作用および各種相転移を利用して、鋳造Ti3Al合金のミクロ組織を微細化し、合金の性能に対する結晶粒の粗大の悪影響を補う。ただし同様の欠陥は、Ti3Al合金その後の熱処理過程に結晶粒を微細化する水素の作用のみを利用し、溶融や堆積プロセスで元素拡散を促進し、液/固界面組成的過冷却を増加させるために水素を使用できないことであり;水素化物の形成と分解、水素化が変形抵抗を低減させ、転位の動きを促進して変形欠陥を形成し、多次元、多角度から非自発的核生成、結晶粒微細化の作用を促進させる。
【0005】
上記の3つの方法は、ある程度で積層造形組織を改善できるが、問題点があり、積層造形のチタン合金組織を効果的に改善できていない。したがって、積層造形のチタン合金組織を改善できる工程を見出すことが急務であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許番号第CN201610032762.9号
【文献】中国特許番号第CN201110419193.0号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、積層造形プロセスにおいてチタン合金粉末に水素化処理を施し、積層造形プロセス中の印刷されたワークピースを層ごとに圧延し、印刷-圧延-印刷-圧延のサイクルプロセスを通じて、組織微細化の印刷されたワークピースを製造し、最後に真空アニーリングにより暫定的な合金元素である水素を除去し、最終材料の化学組成の変化を防き、積層造形のチタン合金組織形態を改善することで、積層造形のチタン合金組織を改善するための水素化圧延方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、次のステップ1~6を含む積層造形のチタン合金組織を改善するための水素化圧延複合方法を提供する。すなわち、
チタン合金粉末の水素化処理を施すステップであって、チタン合金粉末を水素化熱処理管状炉に入れ、粉末を層状に散布し、各層の粉末散布の厚さが2~8mmで、1.5×10-3Paまで真空引き、10~20℃/minの速度で700℃~800℃まで加熱し、10~30分保温し、チタン合金粉末の重量パーセントに基づき0.1%~0.8%の水素ガスを吹き込み、1~4時間保温し、その後5~15℃/minの速度で室温まで冷却することで、水素化チタン合金粉末を得るステップ1、
水素化後のチタン合金粉末を積層造形に用い、粉末散布工程または粉末供給工程で積層造形のワークピース印刷を実施して、チタン合金の金属堆積層を形成するステップ2、
NCシステムで圧延ロールを制御して、ステップ2で形成されたチタン合金の金属堆積層を圧延(圧延変形量10~50%)するステップ3、
ステップ2、ステップ3を繰り返して、ワークピースの印刷が完了されるまで層ごとに印刷および圧延するステップ4、
積層造形後のチタン合金ワークピースに固溶化処理(チタン合金ワークピースを熱処理炉に入れ、10~20℃/minの速度でTp℃(相転移温度)+10℃まで加熱し、20~40分保温し、その後焼入れる)を施すステップ5、
固溶後のチタン合金ワークピースにアニーリング+水素除去熱処理(チタン合金を真空熱処理炉に入れ、1.5×10-3Paまで真空引き、10~20℃/minの速度で700℃~800℃まで加熱し、炉内の真空度は3×10-3Paより高く、2時間~4時間保温した後、5~15℃/minで室温まで冷却する)を施すステップ6。
【0009】
さらに、ステップ4の圧延プロセスでは、圧延時の圧延量が0.4mmの下で、圧延誤差を0.01mmに制御する必要がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層造形のチタン合金組織を改善するための水素化圧延複合方法の有益な利点は、チタン合金中の水素の溶解度を利用してチタン合金粉末に対し水素化処理を施すことである。同時に積層造形の印刷プロセスにおいて、一方で水素化チタン合金粉末中の水素を使用して、元素の拡散を促進させ、液/固界面組成的過冷却を増加させ;周期的な溶融堆積過程で水素化物の形成と分解、水素化は変形抵抗を低減し、転位の動きを促進することで、変形欠陥を形成し、非自発的核生成を促進させ;他方、金属堆積層での層ごとのローリングにより、金属堆積層の変形を引き起こし、印刷されたワークピースの緻密度を向上させる。同時に、圧延が堆積層に転位を導入し、これは、核生成エネルギーを低下させ、核生成率をアップさせ、次の層の印刷プロセスの小さな溶融池において、転位などの欠陥の存在が印刷層の組織を微細化させることができ;上記の多要因の相互作用を通じて、積層造形組織の冶金学的制御および柱状晶/等軸晶変態の正確な制御を達成する。
【0011】
前述の技術的思想および以下により詳細に記載される追加の技術的思想のすべての組み合わせは、そのような技術的思想が相互に矛盾しない限り、本開示の発明主題の一部と見なすことができることを理解されたい。なお、特許を求める主題のすべての組み合わせは、本開示の発明主題の一部と見なされる。
【0012】
添付の図面を参照する以下の描写から本発明によって教示される前述および他の態様、実施例および特徴をより完全に理解することができる。例示的な実施形態の特徴および/または有利な効果などの本発明の他の追加の態様は、以下の描写において明らかであるか、または本発明によって教示される具体的実施形態の実践から知られる。
【0013】
添付図面は、一定の縮尺で描かれることを意図したものではない。添付図面では、各図に示されている同一またはほぼ同一の各構成要素は、同じ符号で表すことができる。分かりやすくするため、各図で各構成要素が付けされているわけではない。ここで、本発明の様々な態様の実施形態を、例として、および添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の積層造形のチタン合金組織を改善するための水素化圧延
方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の技術的内容をよりよく理解するため、具体的実施例を挙げて添付図面と併せて以下に説明する。
【0016】
本開示において、添付の図面を参照しつつ本発明の様々な態様を説明し、図面にいくつかの例示された実施形態を示す。本開示の実施例は、必ずしも本発明のすべての態様を含むことを意図するものではない。上で紹介された様々な技術的思想および以下により詳細に記載されるいくつかの技術的思想と実施形態は、多くの方法のいずれかで実施され得る。これは、本発明で開示される技術的思想および実施例がいかなる実施形態にも限定されないためである。なお、本発明に開示されるいくつかの態様は、単独で、または本発明に開示される他の態様との任意の適切な組み合わせで使用することができる。
【0017】
本発明で開示される積層造形のチタン合金組織を改善するための水素化+圧延方法によれば、事前準備されたチタン合金粉末の水素化処理を施すことによって、水素化チタン合金粉末を得、水素化チタン合金粉末を用いて積層造形+層ごと圧延を実施してチタン合金ワークピースを得た後、更にワークピースに固溶化処理を施し、最後に固溶後のチタン合金ワークピースに対し水素除去熱処理およびアニーリングを実施して、積層造形のチタン合金の微視組織を改善する。
【0018】
本開示の水素化+圧延方法は、一方でチタン合金β相における水素の高い溶解度を利用し、この温度範囲内に異なる比率の水素を入れると、異なる水素含有量を有するチタン合金粉末が得られる。3Dプリントプロセスにおいて水素が溶融と凝固プロセスにおいて水素化物の析出と分解を利用して溶融池内の核生成を促進させ、並びに組成的過冷却の多方面で核生成を促進することで、印刷された組織の結晶粒を微細化させ;他方で、積層造形プロセスにおいて、金属堆積層を層ごと圧延し、積層造形材料を圧延して緻密度を向上させ、同時に圧延は金属堆積層の転位等の欠陥が増加し、次の層の印刷プロセスにおいて、欠陥により核生成エネルギーを低下させるため、核生成率をアップすることができることで、さらに組織を微細化や改善し;最後に真空アニーリングを通じて暫定的な合金元素である水素を除去し、最終材料の化学組成の変化を防ぐと共に水素を利用してプロセス中で印刷されたワークピース組織を微細化と改善し、圧延により転位などの欠陥を増加させて核生成エネルギーを低下し、核生成率をアップし;両者の相互作用は、合金組成を変えることなく、組織を改善するという目的を達成する。
【0019】
図1に示されるように、本発明の例示的な実施として、前述の具体的実施プロセスは、次のステップ1~6を含む。すなわち、
チタン合金粉末の水素化処理を施
すステップであって、チタン合金粉末を水素化熱処理管状炉に入れ、粉末を層状に散布し、均一な水素化の組成を確保するため、各層の粉末散布の厚さが2~8mmで、1.5×10
-3Paまで真空引き、10~20℃/minの速度で700℃~800℃まで加熱し、10~30分保温し、チタン合金粉末の重量パーセントに基づき0.1%~0.8%の水素ガスを吹き込み、1~4時間保温し、その後5~15℃/minの速度で室温まで冷却することで、水素化チタン合金粉末を得たステップ1、
水素化後のチタン合金粉末を積層造形に用い、チタン合金ワークピースを得たステップ2;ここで粉末散布工程および粉末供給工程は、例えば次のようになり;
粉末散布工程:粉末散布の厚さ20μm~80μm、レーザー出力200W~500W、スキャン速度1~15m/s。
粉末供給工程:粉末供給0.2~5r/min、レーザー出力1500W~8000W、スキャン速度1~30mm/s。
NCシステムで圧延ロールを制御して、チタン合金の金属堆積層を圧延(圧延変形量10~50%)するステップ3、
ワークピースの印刷が完了されるまでステップ2、ステップ3を繰り返し、圧延時の圧延量が0.4mmの下で、圧延誤差を0.01mmに制御する必要があるステップ4、
積層造形後のチタン合金ワークピースに固溶化処理(熱処理工程:チタン合金ワークピースを熱処理炉に入れ、10~20℃/minの速度でTp℃(相転移温度)+10℃まで加熱し、20~40分保温し、その後焼入れる)を施すステップ5、
固溶後のチタン合金ワークピースにアニーリング+水素除去熱処理を施し;チタン合金を真空熱処理炉に入れ、1.5×10
-3Paまで真空引き、10~20℃/minの速度で700℃~800℃まで加熱し、炉内の真空度は3×10
-3Paより高く、2時間~4時間保温した後、5~15℃/minで室温まで冷却するステップ6。
【0020】
本実施形態の具体的工程パラメータは、チタン合金種類の違いに応じて対応する工程を用いることができる。
【0021】
より分かりやすいため、以下、具体的実施例と併せて本発明をさらに説明する。金属粉末がTC4を例としているが、チタン合金粉末の種類はこれに限定されず、かつ本発明の内容もこれに限定されない。
【0022】
(実施例1)
ステップ1:チタン合金粉末の水素化処理を施すステップであって、チタン合金粉末を水素化熱処理管状炉に入れ、粉末を層状に散布し、均一な水素化の組成を確保するため、各層の粉末散布の厚さが3mmで、1.5×10-3Paまで真空引き、10~20℃/minの速度で700℃~800℃まで加熱し、10~30分保温し、チタン合金粉末の重量パーセントに基づき0.2%の水素ガスを吹き込み、2時間保温し、その後10℃/minの速度で室温まで冷却することで、水素化チタン合金粉末を得;
ステップ2:水素化後のチタン合金粉末を積層造形に用い、チタン合金ワークピースを得(粉末散布の厚さ40μm、レーザー出力300W、スキャン速度5m/s);
ステップ3:NCシステムで圧延ロールを制御して、チタン合金の金属堆積層を圧延(圧延変形量15%)し;
ステップ4:ワークピースの印刷が完了されるまでステップ2、ステップ3を繰り返し、圧延時の圧延量が0.4mmの下で、圧延誤差を0.01mmに制御する必要があり;
ステップ5:積層造形後のチタン合金ワークピースに固溶化処理(熱処理工程:チタン合金ワークピースを熱処理炉に入れ、10~20℃/minの速度でTp℃(相転移温度)+10℃まで加熱し、20~40分保温し、その後焼入れる)を施し;
ステップ6:固溶後のチタン合金ワークピースにアニーリング+水素除去熱処理を施し;チタン合金を真空熱処理炉に入れ、1.5×10-3Paまで真空引き、10~20℃/minの速度で700℃~800℃まで加熱し、炉内の真空度は3×10-3Paより高く、2時間~4時間保温した後、5~15℃/minで室温まで冷却する。
【0023】
本実施形態の具体的工程パラメータは、チタン合金種類の違いに応じて対応する工程を用いることができる。
【0024】
(実施例2)
ステップ1:チタン合金粉末の水素化処理を施すステップであって、チタン合金粉末を水素化熱処理管状炉に入れ、粉末を層状に散布し、均一な水素化の組成を確保するため、各層の粉末散布の厚さが4mmで、1.5×10-3Paまで真空引き、10~20℃/minの速度で700℃~800℃まで加熱し、10~30分保温し、チタン合金粉末の重量パーセントに基づき0.3%の水素ガスを吹き込み、3時間保温し、その後10℃/minの速度で室温まで冷却することで、水素化チタン合金粉末を得;
ステップ2:水素化後のチタン合金粉末を積層造形に用い、チタン合金ワークピースを得(粉末散布の厚さ50μm、レーザー出力350W、スキャン速度5m/s);
ステップ3:NCシステムで圧延ロールを制御して、チタン合金の金属堆積層を圧延(圧延変形量20%)し;
ステップ4:ワークピースの印刷が完了されるまでステップ2、ステップ3を繰り返し、圧延時の圧延量が0.4mmの下で、圧延誤差を0.01mmに制御する必要があり;
ステップ5:積層造形後のチタン合金ワークピースに固溶化処理(熱処理工程:チタン合金ワークピースを熱処理炉に入れ、10~20℃/minの速度でTp℃(相転移温度)+10℃まで加熱し、20~40分保温し、その後焼入れる)を施し;
ステップ6:固溶後のチタン合金ワークピースにアニーリング+水素除去熱処理を施し;チタン合金を真空熱処理炉に入れ、1.5×10-3Paまで真空引き、10~20℃/minの速度で700℃~800℃まで加熱し、炉内の真空度は3×10-3Paより高く、2時間~4時間保温した後、5~15℃/minで室温まで冷却する。
【0025】
本実施形態の具体的工程パラメータは、チタン合金種類の違いに応じて対応する工程を用いることができる。
【0026】
(実施例3)
ステップ1:チタン合金粉末の水素化処理を施すステップであって、チタン合金粉末を水素化熱処理管状炉に入れ、粉末を層状に散布し、均一な水素化の組成を確保するため、各層の粉末散布の厚さが4mmで、1.5×10-3Paまで真空引き、10~20℃/minの速度で700℃~800℃まで加熱し、10~30分保温し、チタン合金粉末の重量パーセントに基づき0.5%の水素ガスを吹き込み、3.5時間保温し、その後15℃/minの速度で室温まで冷却することで、水素化チタン合金粉末を得;
ステップ2:水素化後のチタン合金粉末を積層造形に用い、チタン合金ワークピースを得(粉末散布の厚さ60μm、レーザー出力400W、スキャン速度8m/s);
ステップ3:NCシステムで圧延ロールを制御して、チタン合金の金属堆積層を圧延(圧延変形量35%)し;
ステップ4:ワークピースの印刷が完了されるまでステップ2、ステップ3を繰り返し、圧延時の圧延量が0.4mmの下で、圧延誤差を0.01mmに制御する必要があり;
ステップ5:積層造形後のチタン合金ワークピースに固溶化処理(熱処理工程:チタン合金ワークピースを熱処理炉に入れ、10~20℃/minの速度でTp℃(相転移温度)+10℃まで加熱し、20~40分保温し、その後焼入れる)を施し;
ステップ6:固溶後のチタン合金ワークピースにアニーリング+水素除去熱処理を施し;チタン合金を真空熱処理炉に入れ、1.5×10-3Paまで真空引き、10~20℃/minの速度で700℃~800℃まで加熱し、炉内の真空度は3×10-3Paより高く、2時間~4時間保温した後、5~15℃/minで室温まで冷却する。
【0027】
本実施形態の具体的工程パラメータは、チタン合金種類の違いに応じて対応する工程を用いることができる。
【0028】
(実施例4)
ステップ1:チタン合金粉末の水素化処理を施すステップであって、チタン合金粉末を水素化熱処理管状炉に入れ、粉末を層状に散布し、均一な水素化の組成を確保するため、各層の粉末散布の厚さが5mmで、1.5×10-3Paまで真空引き、10~20℃/minの速度で700℃~800℃まで加熱し、10~30分保温し、チタン合金粉末の重量パーセントに基づき0.6%の水素ガスを吹き込み、4時間保温し、その後10℃/minの速度で室温まで冷却することで、水素化チタン合金粉末を得;
ステップ2:水素化後のチタン合金粉末を積層造形に用い、チタン合金ワークピースを得(粉末供給速度3r/min、レーザー出力1600W、スキャン速度15mm/s);
ステップ3:NCシステムで圧延ロールを制御して、チタン合金の金属堆積層を圧延(圧延変形量45%)し;
ステップ4:ワークピースの印刷が完了されるまでステップ2、ステップ3を繰り返し、圧延時の圧延量が0.4mmの下で、圧延誤差を0.01mmに制御する必要があり;
ステップ5:積層造形後のチタン合金ワークピースに固溶化処理(熱処理工程:チタン合金ワークピースを熱処理炉に入れ、10~20℃/minの速度でTp℃(相転移温度)+10℃まで加熱し、20~40分保温し、その後焼入れる)を施し;
ステップ6:固溶後のチタン合金ワークピースにアニーリング+水素除去熱処理を施し;チタン合金を真空熱処理炉に入れ、1.5×10-3Paまで真空引き、10~20℃/minの速度で700℃~800℃まで加熱し、炉内の真空度は3×10-3Paより高く、2時間~4時間保温した後、5~15℃/minで室温まで冷却する。
【0029】
本実施形態の具体的工程パラメータは、チタン合金種類の違いに応じて対応する工程を用いることができる。
【0030】
【0031】
積層造形分野において、柱状晶と粗大なオリジナル結晶粒の形成の起源は、冶金プロセスの熱力学・動力学の問題であり、積層造形プロセスの小さな溶融池での超常冶金条件と周期的な堆積は、温度と組成的過冷却の不十分につながり、非自発核生成質点の低下がコア問題である。上記方法は、チタン合金中の水素の溶解度を利用してチタン合金粉末に対し水素化処理を施すことである。3Dプリントプロセスにおいて、一方で水素化を利用して元素の拡散を促進させ、液/固界面組成的過冷却を増加させ;周期的な溶融堆積過程で水素化物の形成と分解、水素化は変形抵抗を低減し、転位の動きを促進することで、変形欠陥を形成し、非自発的核生成を促進させ;他方、金属堆積層での層ごとのローリングにより、金属堆積層の変形を引き起こし、印刷されたワークピースの緻密度を向上させる。同時に、圧延が堆積層に転位を導入し、これは、核生成エネルギーを低下させ、核生成率をアップさせ、次の層の印刷プロセスの小さな溶融池において、転位などの欠陥の存在が印刷層の組織を微細化させることができ;上記の2つの要因の相互作用を通じて、積層造形組織の冶金学的制御および柱状晶/等軸晶変態の正確な制御を達成する。
【0032】
合金材料の強度と結晶粒サイズの関係は、Hall-Petch関係に適合するため、結晶粒が細かいほど、合金の強度は高くなり;結晶粒が微細化される場合のみ、材料の強度および可塑性を同時に向上させることができる。本発明の前述の実施例において、水素の導入および層ごとの圧延処理は、印刷プロセスにおいて非常に効果的に結晶粒を微細化し、組織を改善し、材料の性能を向上させることができ;最後の水素除去処理を通じてチタン合金の組成を変えない。
【0033】
本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明に限定するものではなく、当業者は本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変動や潤色を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。