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  • 特許-鉄道線路要素の要素特徴を決定する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】鉄道線路要素の要素特徴を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/04 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
B61L23/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020520054
(86)(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2017077760
(87)【国際公開番号】W WO2019086097
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】520116942
【氏名又は名称】コヌクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブランドルハバー、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ラタ、ヴラド イリー
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、スコット
(72)【発明者】
【氏名】ヴォレン、オーレ トミー
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05529267(US,A)
【文献】国際公開第2012/152575(WO,A1)
【文献】特開2002-104193(JP,A)
【文献】特開2018-114790(JP,A)
【文献】特開平10-264813(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0088945(KR,A)
【文献】特開2001-122118(JP,A)
【文献】特開2009-192503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/00 - 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道線路要素の要素特徴を決定する方法であって、
前記鉄道線路要素上に動作センサを設ける段階と、
前記動作センサが提供する動作データを収集する段階であって、前記動作データが、前記要素特徴と異なる前記鉄道線路要素の動作特徴を示す、収集する段階と、
前記動作データに基づいて前記要素特徴を決定する段階と
を備え
前記鉄道線路要素の前記動作特徴が、加速度と、時間依存加速度と、速度と、時間依存速度と、位置と、時間依存位置と、を含む群より選択される、
方法。
【請求項2】
前記鉄道線路要素が、線路または線路切換の鉄道枕木、線路、および/または、
前記鉄道線路要素の前記動作特徴が前記鉄道線路要素の位置特徴であり、および/または

少なくとも1つの鉄道線路要素の前記要素特徴が前記鉄道線路要素の位置特徴であり、および/または、
少なくとも1つの鉄道線路要素の前記要素特徴が、位置と、時間依存位置と、基準位置または平衡位置から逸脱した位置と、基準位置または平衡位置から逸脱した時間依存位置と、保守状態インジケータと、を含む群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
鉄道線路要素の前記要素特徴を決定する前記段階が、
動作データを処理することによって処理済みの動作データを得る段階と、
前記処理済みの動作データに基づいて少なくとも1つの鉄道線路要素の前記要素特徴を決定する段階と、を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴を決定する前記段階が、機械学習アルゴリズムを使用する段階を含む、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記鉄道線路要素の前記要素特徴を直接的または間接的に測定し、前記少なくとも1つの鉄道線路要素上の前記動作センサから対応するデータを収集することによって基準データを測定する段階と、
前記機械学習アルゴリズム中の前記基準データを使用する段階と、をさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各動作センサが前記動作センサの複数の動作検知器から動作データを提供し、
全ての動作検知器が同じ動作特徴、詳細には加速度または時間依存加速度、を示す動作データを提供し、
前記動作検知器のうちの少なくとも1つが、前記動作検知器の別の動作検知器からの様々な測定範囲および/または様々な解像度を有する、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
複数の鉄道線路要素の各鉄道線路要素上に1または複数の動作センサを設ける段階と、
各前記動作センサが提供する動作データを収集する段階であって、前記動作センサの各1つの前記動作データが、前記動作センサが設けられるそれぞれの前記鉄道線路要素のそれぞれの動作特徴を示すものである段階であって、前記鉄道線路要素の各1つのそれぞれの前記要素特徴がそれぞれの前記鉄道線路要素のそれぞれの前記動作特徴と異なる物理量を示すものである、収集する段階と、
それぞれの前記動作データに基づいて前記鉄道線路要素の各1つのそれぞれの要素特徴を決定する段階と、をさらに含む、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記鉄道線路要素の前記要素特徴が保守状態インジケータであり、
少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴を決定する前記段階が機械学習アルゴリズムを使用する段階を含む、方法であって、
前記方法がさらに、
摩耗状態にある鉄道線路要素を提供し、前記摩耗状態にある前記鉄道線路要素上に動作センサを設け、前記摩耗状態にある前記鉄道線路要素上の前記動作センサから対応する動作データを収集することによって基準データを測定する段階であって、前記鉄道線路要素を使用した車両によって前記動作データの変化が生じる、測定する段階と、
前記機械学習アルゴリズム中の前記基準データを使用して前記鉄道線路要素の摩耗状態を示す前記保守状態インジケータを決定する段階と
を含む、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記鉄道線路要素の前記要素特徴が保守状態インジケータであり、
前記鉄道線路要素の要素特徴を決定する前記段階が機械学習アルゴリズムを使用する段階を含み、前記方法が、
a)予め決められた摩耗状態にある車両を提供し、前記車両が前記鉄道線路要素を使用するように適合される段階と、
b)鉄道線路要素に設けられる動作センサから対応する動作データを測定する段階であって、前記鉄道線路要素を使用した前記摩耗状態にある車両によって前記動作データの変化が生じる、測定する段階と、によって基準データを提供する段階を含み、
前記機械学習アルゴリズムが前記基準データを使用して前記車両の摩耗状態を示す前記保守状態インジケータを決定する、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路近傍での安全な走行は主に、人(例えば、鉄道線路沿いを歩く線路点検者、専用車両を使用して線路を分析する整備工、旅客列車を点検する整備工など)が行う保守点検によって保証される。一般的に、このような保守点検は、故障までの平均時間間隔を見越して行われる。このような一定時間ごとの保守点検アプローチは、点検時に損傷が検出されないことが多いので、不要なコストを生む。さらに、正常走行時のモニタを可能にする、および鉄道線路または鉄道線路を使用した車両の被害が発生したことを示す「正常状態」からの逸脱を検知するのに適した手段がないので、壊滅的な被害の危険にさらされる。
【0003】
本発明の目的は、少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴を決定する方法を提供することであり、鉄道線路を走行するための保守点検費用、または鉄道車両(すなわち、鉄道線路を使用した車両)の保守点検費用を減らすことができる、および/または鉄道線路および鉄道車両の安全を高めることができる。
【0004】
線路を使用した列車が鉄道枕木または線路を過剰に動作させることは、線路の望ましい形状からの逸脱、および/または、道床によってもたらされる望ましい支持からの逸脱を示す可能性があることを本発明者は発見した。さらに、線路を使用した列車によって引き起こされる鉄道枕木または線路の動作は、線路切換要素を可動する際に生じる張力を示す場合がある。その上さらに、例えば、列車の損傷した車輪軸受が引き起こす、および/または損傷した車輪表面もしくは損傷した車輪形状が引き起こす振動は、損傷した車輪軸受を備える列車がこうした線路を使用している間に線路の動作を測定することによって間接的に測定できることを本発明者は発見した。線路および線路切換(分岐機構)の動作は、線路または線路切換の鉄道枕木に伝達する可能性がある。
【0005】
とりわけ、これらの発見は、上記目的の解決策として本発明に寄与した。本発明によれば、上記目的は、請求項1に係る方法によって解決される。本発明の好ましい実施形態を従属クレームで記載する。
【0006】
本発明の重要な態様において、少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴を決定する方法を提供する。本方法は、少なくとも1つの鉄道線路要素上に動作センサを設ける段階と、動作センサが提供する動作データを収集し、動作データが要素特徴と異なる鉄道線路要素の動作特徴を示す段階と、動作データに基づいて要素特徴を決定する段階と、とを含む。
【0007】
動作データに基づいて少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴を決定する段階であって、少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴は、鉄道線路要素の動作特徴と異なる物理量を示し、間接的に要素特徴を得るために安価な検知器および/または騒音の影響を受けない検知器を動作センサ内に使用し、動作センサが提供する動作データを使用する可能性をもたらす。
【0008】
鉄道線路要素は線路または線路切換の鉄道枕木、線路、もしくは線路切換であり、および/または、鉄道線路要素の動作特徴は鉄道線路要素の位置特徴であり、および/または、鉄道線路要素の動作特徴は加速度と、時間依存加速度と、速度と、時間依存速度と、位置と、時間依存位置と、を含む群より選択され、および/または、少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴は鉄道線路要素の位置特徴であり、および/または、少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴は位置と、時間依存位置と、基準位置または平衡位置から逸脱した位置と、基準位置または平衡位置から逸脱した時間依存位置と、保守状態インジケータと、を含む群より選択される。鉄道線路要素が線路または線路切換の鉄道枕木、または線路、もしくは線路切換である場合、鉄道線路の安全に関する重要なデータを得ることができることを本発明者は発見した。動作特徴および要素特徴の具体例では、鉄道線路を使用禁止にする必要なく、センサが情報を得ることを可能にしている。保守状態インジケータは要素特徴になり得、線路または鉄道線路を使用した車両の保守状態/摩耗状態の分類を可能にするということに特に注意すべきである。特に有益なのは、本方法を適用する際に鉄道線路を停止する必要がないという点である。
【0009】
動作センサを鉄道枕木、線路または線路切換に設けることによって、鉄道線路要素または鉄道線路要素を使用する車両に存在しまたは進行している故障箇所を示す逸脱に関して重要な動作データを得ることが可能になるので、鉄道線路要素または鉄道線路要素を使用する車両の現状に基づいて保守点検間隔を決定することが可能となる。その結果、不要かつ出費のかさむ保守点検を回避することができる。
【0010】
保守状態インジケータは、例えば故障した/故障してない鉄道線路要素または鉄道車両を示す例えば2進インジケータであってもよく、または、有限数個の区切り値(例えば、完全に機能している、保守点検が必要である、故障している)を備えたインジケータであってもよく、または、鉄道線路要素または鉄道車両の耐用年数、具体的には保守点検の耐用年数、を詳細にはパーセンテージの単位で示す連続値であってもよい。パーセンテージの単位の値は、100%が完全に機能している鉄道線路要素または完全に機能している鉄道車両を示すことができ、0%が完全に故障している鉄道線路要素または完全に故障している鉄道車両を示すことができる。鉄道線路要素または鉄道車両の保守点検はこうした連続保守状態インジケータに基づいて行われることになり得る。例えば、保守状態インジケータが10%を下回ったら即座に保守点検を行うことになる。これらの値およびパーセンテージの使用は非限定例であり、保守点検インジケータの様々なマッピングを鉄道線路要素の摩耗状態または鉄道線路車両の摩耗状態に行うことは、その特定用途に従って当業者によって発見され得る。
【0011】
少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴を決定する段階は、動作データを処理することによって処理済みの動作データを得る段階と、処理済みの動作データに基づいて少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴を決定する段階と、を含むことが好ましい。処理済みの動作データ、例えば、周波数フィルタ処理された動作データ得ることによって、要素特徴の決定精度を高めることが可能となる。
【0012】
好ましい実施形態では、処理済みの動作データを得る段階は、動作データから動作データの直流成分を除去する段階を含む。これにより要素特徴のさらなる決定精度の向上が可能になる。
【0013】
少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴を決定する段階は、機械学習アルゴリズムを使用する段階を含むことが好ましい。機械学習アルゴリズム(詳細にはニューラルネットワークアルゴリズム)を使用することによって、動作データと要素特徴との間の関係を前もって分析的にモデル化することなく、極めて高精度で要素特徴の決定を得ることができる。ニューラルネットワークアルゴリズムの追加または代替として、隠れマルコフモデルに基づくアルゴリズム、またはスコアリング関数を用いたベイジアンネットワークに基づくアルゴリズムを使用することができる。
【0014】
好ましい実施形態では、方法はさらに基準データを測定する段階を含む。本方法は、少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴を直接的または間接的に測定する段階と、少なくとも1つの鉄道線路要素上の動作センサから対応するデータを収集する段階と、機械学習アルゴリズム中の基準データを利用する段階と、を含むことが好ましい。上記のように基準データを測定することによって、各動作センサが生み出す精度、または一群の動作センサが生み出す精度を高めることができ、較正費用およびモデル開発費用を低く抑えることが可能となる。
【0015】
各動作センサが動作センサの複数の動作検知器から動作データを提供することが好ましく、全ての動作検知器が同じ動作特徴(詳細には加速度または時間依存加速度)を示す動作データを提供するのが好ましく、動作検知器の少なくとも1つが動作検知器の別の動作検知器からの様々な測定範囲および/または様々な解像度を有するのが好ましい。様々な動作検知器は、特に機械学習アルゴリズムを使用するときに、要素特徴の決定精度を高める。機械学習アルゴリズムは、動作特徴の決定精度がさらに高まるように、様々な解像度で最適な方法で様々な動作検知器の測定範囲および様々な測定位置を結合(または「接続」)することができる。
【0016】
好ましい実施形態では、本方法はさらに、複数の鉄道線路要素の各鉄道線路要素上に少なくとも1つの動作センサを設ける段階と、各動作センサが提供する動作データを収集する段階であって、動作センサの各1つの動作データが、動作センサが設けられるそれぞれの鉄道線路要素のそれぞれの動作特徴を示し、鉄道線路要素の各1つのそれぞれの要素特徴がそれぞれの鉄道線路要素のそれぞれの動作特徴と異なる物理量を示すものである段階と、それぞれの動作データに基づいて鉄道線路要素の各1つのそれぞれの要素特徴を決定する段階と、を含む。各鉄道線路要素または複数の鉄道線路要素に動作センサを設け、これらの動作センサによって提供される動作データを収集することによって、単一の鉄道線路要素の要素特徴の検知だけでなく、全ての鉄道線路自体に関する物理量の検知も可能にするデータを提供する。保守状態インジケータの検知に関して、曲がった鉄道線路に動作センサを設けることによって、車両車輪(真円ではない車輪またはバランスの悪い車輪)表面の質または状態、または、横加速度が原因で車両車輪の車輪軸受が横方向で故障することに関する情報を提供することができる。鉄道線路の高速区間に動作センサを設けることによって、例えば、発熱によって軸受の隙間が減少することで生じる軸受破損などに関する情報を提供することができる。
【0017】
さらに好ましい実施形態では、少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴が保守状態インジケータであり、少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴を決定する段階が、機械学習アルゴリズムを使用する段階を含み、本方法はさらに基準データを測定する段階を含むが、本方法は、摩耗状態にある鉄道線路要素を提供し、摩耗状態にある鉄道線路要素に動作センサを設ける段階と、摩耗状態にある鉄道線路要素上の動作センサから対応する動作データを収集する段階であって、鉄道線路要素を使用した車両によって動作データの変化が生じる段階と、機械学習アルゴリズム中の基準データを使用して鉄道線路要素の摩耗状態を示す保守状態インジケータを決定する段階と、を含むことが好ましい。機械学習アルゴリズムは、動作データを動作状態インジケータにマッピングするために分析モデルを前もって提供することなく、鉄道線路要素に関する保守状態インジケータの分類を可能にする。こうすることで、解析ソフトウェア開発の費用が削減される。
【0018】
さらに異なる好ましい実施形態では、少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴が保守状態インジケータであり、少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴を決定する段階が、トレーニングを受けた機械学習アルゴリズムを使用する段階を含み、本方法はさらに基準データを測定する段階を含むが、本方法は、摩耗状態にある車両を提供し、車両が鉄道線路要素を使用するように適合される段階と、鉄道線路要素に設けられた動作センサから対応する動作データを測定する段階であって、鉄道線路要素を使用した摩耗状態にある車両によって動作データの変化が生じる段階と、機械学習アルゴリズム中の基準データを使用して鉄道車両の摩耗状態を示す保守状態インジケータを決定する段階と、を含むことが好ましい。機械学習アルゴリズムは、動作データを動作状態インジケータにマッピングすることに分析モデルを前もって提供することなく、鉄道線路要素を使用した車両に関する保守状態インジケータの分類を可能にする。こうすることで、解析ソフトウェア開発の費用が削減される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下で、本発明の実施形態は添付図1を参照して記載される。
図1】本発明で使用される動作センサを示し、鉄道線路要素が部分断面図として示される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[センサの配置]
以下で記載される鉄道線路要素上の動作センサの配置は、本発明の全ての実施形態で使用することができる。詳細には、複数の動作センサは、複数の鉄道線路要素上に配置することができる。以下で、センサは、詳細にはコンピュータが読み込み可能な形式で動作データを提供するように適合されるユニット/装置であることが理解され、動作データは動作特徴を示す。
【0021】
センサの検知器は信号を出力するように適合されている装置であり、信号は、電圧であってもよく、ほとんどの場合電圧になるであろう物理量を示すことが理解される。取得した信号(例えば電圧)を物理量の値にマッピングする機能が存在する。検知器は、一定方向(例えば、デカルト座標のあらゆる方向X、Y、またはZ)で加速度を測定するように適合された加速度検知器であってもよく、または、多次元(具体的には3次元)の加速度検知器であってもよい。例えば、このような検知器は、加速度の時間依存データ、もしくは加速度の最大値または最小値または平均値を(例えば、X、Y、およびZ方向で同時に)提供することができる。代替的に、速度および/または位置は検知器によって測定することができ、センサによって提供される動作データは、上記のように速度および/または位置をそれぞれ時間に依存する値または極値として示すことができる。
【0022】
例えば、動作検知器は、加速度、速度、位置または偏揺れなど動作特徴を示す物理量を検知し、動作センサは、検知器の生出力を、動作特徴を示すアナログデータまたはデジタルデータに伝達することができる。動作センサ2は、光ファイバ接続、有線接続または無線接続によって、データを演算装置(例えばコンピュータ)に送ることができるので、結果として動作データが収集される。演算装置は、パーソナルコンピュータ、シングルボードコンピュータまたはサーバであってもよい。
【0023】
図1で示されるように、動作センサ2は、鉄道線路要素6内の穴に入れられた合いくぎ4によって鉄道線路要素6(例えば鉄道枕木8)に固定されるのが好ましいが、動作センサを固定するためには接着、溶接、および類似の方法も可能である。動作センサを固定することによって、動作センサの動作検知器は鉄道線路要素の動作特徴を検知することが可能になる。
【0024】
[本発明の第1の実施形態]
第1の実施形態では、動作センサ2は、時間依存加速度データを動作データとして提供する加速度センサである。動作センサ2が鉄道枕木に設けられる。決定されるべき要素特徴は、鉄道枕木上のある地点の時間依存位置(以下で簡単に表記された位置)、例えば検知器が鉄道枕木に触れる地点のうちの1つである。
【0025】
この実施形態では、この時間依存位置は以下のように決定することができる。
[段階1]
動作データは演算装置を介して動作センサから収集することができるため、結果、収集された動作データが得られる。詳細には、鉄道車両が鉄道枕木を通過する間に動作データを収集することができる。さらに、鉄道線路要素が基準位置にある期間(例えば動作センサを取り付けた後)または平衡位置にある期間、例えば、列車が全く通過しないときに、動作データを収集することができる。
[段階2]
列車が鉄道枕木を全く通過しない、例えば時刻表に基づいて得られる期間に、ゼロ加速度に対応する収集された動作データの平均値Mが決定される。このゼロ加速度値は望ましい精度を鑑みると無視できるので、列車が通過しないこの期間はさらに、列車が通過するデータ取得時によく近似された立ち上がりエッジで得ることができる。
[段階3]
収集された動作データから(すなわち、動作データ内の収集された各データ点から)平均値Mを引くため、結果直流成分が動作データから除去され、処理済み動作データ(ここでは、第1の処理済み時間依存加速度データ)が得られる。
[段階4]
関連する加速度データの出発点は、処理済み時間依存加速度データの移動平均をゼロ閾値と比較することによって決定され、適切なゼロ閾値、および移動平均に使用される時間帯幅は実験によって得ることができる。
[段階5]
時間依存加速度データは、求積法を用いて2回積分される。こうして、鉄道線路要素の要素特徴を示す時間依存変位データが生み出される。
【0026】
このように、加速度データを変位データに変え、有益な情報(例えば、列車通過事象時における鉄道枕木の鉛直変位に関する)を提供することができる。さらに、鉄道線路の摩耗または損傷が決定され得る逸脱した位置を好ましくは時間依存的に提供するために、上記段階5で得られた変位データを基準位置または平衡位置と比較できる。本発明の第2の実施形態
【0027】
第2の実施形態では、動作センサ2は、時間依存加速度データを動作データとして提供する加速度センサであることが好ましい。動作センサ2を鉄道線路の鉄道枕木に設けるのが好ましい。決定されるべき要素特徴は、鉄道枕木上のある地点の時間依存位置(以下で「位置」とも呼ばれる)、例えばセンサが鉄道枕木に触れる地点のうちの1つであることが好ましい。
【0028】
代替的または追加的に、動作センサ2は、少なくとも1つの他の鉄道線路要素6(具体的には線路または線路切換)上に設けてもよく、もしくは線路または線路切換の関連付けられた鉄道枕木上に設けてもよい。さらに、本発明のこうした実施形態では、鉄道線路要素の要素特徴を決定するように適合された人工機械学習アルゴリズム(例えばニューラルネットワーク)を含む演算装置(図示せず)を設ける。ニューラルネットワークが利用される場合、ニューラルネットワークは、非線形自己回帰外因性モデル(NARX)、またはフィードフォワード型ニューラルネットワーク(FFNN)、または再帰型ニューラルネット(RNN)、または長短期記憶(LSTM)に基づいてもよい。代替的に、隠れマルコフモデルに基づくアルゴリズム、またはスコアリング関数を用いたベイジアンネットワークに基づくアルゴリズムを使用することができる。
【0029】
動作センサ2は単一の動作検知器を含んでもよいが、測定の精度または信頼性を高めるためには、複数の動作検知器を使用する方が好ましい。動作検知器は、特定の物理量(加速度、速度、位置、偏揺、磁場、電場など)を検知するように適合された装置である。一方、動作センサは動作データを提供するように適合され、動作データは鉄道線路要素の動作特徴を示す。例えば、動作検知器は、加速度、速度、位置または偏揺れなど動作特徴を示す物理量を検知し、動作センサは、検知器の生出力を、鉄道線路要素の動作特徴を示すアナログデータまたはデジタルデータに伝達することができる。動作センサは、光ファイバ接続、有線接続または無線接続によって、データを演算装置に送ることができる。
【0030】
動作センサ2が提供する動作データは、演算装置を介してニューラルネットワークの入力層の入力として直接使用される、または演算装置は、取得した動作データを処理し、こうした処理済みの取得した動作データをニューラルネットワークの入力層の入力として使用することができる。動作データを処理する段階は、周波数フィルタリングする段階と、関心領域を選択する段階などを含んでもよい。
【0031】
ニューラルネットワークの出力層の出力は、選択されたトレーニングに応じて、鉄道線路要素の要素特徴を直接提供することができる、または、鉄道線路要素の要素特徴を決定するための基盤を形成することができる。例えば、動作センサが動作データとして加速度データを提供する場合、ニューラルネットワークの出力は、加速度信号がフィルタ処理されたバージョン(例えば、入力信号が周波数フィルタ処理されたバージョン)であってもよい。さらに、ニューラルネットワークの出力が鉄道線路要素6の動作特徴として鉄道線路要素のある地点の速度であってもよいため、結果、ニューラルネットワークがそのような場合にやがてフィルタリングおよび積分を本質的に実行する。
【0032】
さらに、ニューラルネットワークの出力は、鉄道線路要素を使用した車両または鉄道線路要素の摩耗状態示す保守状態インジケータであってもよい。
【0033】
動作センサが少なくとも2つの動作検知器を含み、様々な物理量を測定するとき、1つの物理量だけ(例えば加速度)が変わった場合、その他のセンサも同様に信号を提供することが多い。機械学習アルゴリズムを使用する際、これらの「予期せぬ信号」を情報源として使用して、機械学習アルゴリズム(詳細には、ニューラルネットワーク)の出力の精度を高めることができる。
【0034】
各動作センサ2は、同じ物理量の様々な測定範囲および/または様々な解像度を有する複数の動作検知器から動作データを提供するのが好ましい。したがって、センサが提供する動作データは複数のデータストリームから構成してもよく、各データストリームは単一の検知器によって検知される物理量に対応する動作データを含む。各データストリーム内の解像度およびサンプリングレートは、検知器の性質、およびセンサ内の関連付けられたサンプルの配置によって異なってもよい。詳細には、時間依存加速度の場合、機械学習アルゴリズムは、様々な測定範囲および様々な解像度を「接続」し、機械学習アルゴリズム(詳細には、ニューラルネットワークアルゴリズム)の出力の精度を高めることができる場合がある。
【0035】
好ましい実施形態では、本方法は、単一の鉄道線路要素の要素特徴を決定することに関するだけなく、モニタされるべき各鉄道線路要素に各センサを設けることによって、単一の鉄道線路要素の場合に記載されるようにそれぞれの動作センサからそれぞれのデータを収集することによって、および動作センサから収集された動作データをニューラルネットワークの入力層への入力として使用することによって、複数の鉄道線路要素の要素特徴を決定することができる。
【0036】
詳細には、動作センサの直接データの代わりに、いくつかのセンサまたは各センサの動作データの処理バージョンをニューラルネットワークの入力として使用することができる。 ニューラルネットワークは、複数の鉄道線路要素の要素特徴(例えば、各鉄道線路要素のある地点の時間依存位置トレース)を記載するデータを直接出力することができ、また、その出力は、そうした要素特徴の決定の根拠(例えば、ニューラルネットワークの出力をフィルタ処理し、加速度トレースを訂正することができる)として使用することができ、訂正された加速度トレースを2倍積分することによって複数の鉄道線路要素の要素特徴の決定を実行することができる。
【0037】
[ニューラルネットワークの例示的な構造]
上記のように、動作センサからの動作データ、または処理済み動作データは、ニューラルネットワークの入力層への入力として使用することができる。
【0038】
ニューラルネットワークへの処理を行うために、単一のタイムインスタンスtだけでなく複数のタイムインスタンスti-1,ti-2,…,ti-n-1にも測定データを提供するように、ウィンドウのn個のタブを第1の層に設けることができ、インデックスi,i-1,…i-n-1は、やがてサンプル動作データのインデックスを示す。
【0039】
正規化線形ユニット(ReLu)活性化関数を使用して、ウィンドウのn個のタブからのデータをm個のニューロン層に供給するのが好ましい。
【0040】
同様にReLu活性化関数を使用して、ニューラルネットワークの第2の層を、好ましくは指標となるn個のニューロン層として実現できる。
【0041】
好ましい実施形態では、ニューラルネットワークはさらに、第2の層からのm個の信号を再結合する第3の層を有する。
【0042】
[ニューラルネットワークの学習/トレーニング]
基本的に、本発明の方法において様々な種類のニューラルネットを利用することができる。例えば、ニューラルネットワークは、基準データを使用した学習プロセスでトレーニングすることができる、および/または、動作時(および/または決められたテーブルに基づいてただ動作する場合)に得られるデータ、または前もって本システムに記憶されたデータから学習する自己学習型であってもよい。
【0043】
例として、ニューラルネットワークをトレーニングする実行可能な方法を以下で記載する。
【0044】
ニューラルネットワークをトレーニングするために、トレーニングデータを提供する必要がある。トレーニングデータを測定する段階は、少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴を直接的または間接的に測定する段階を含むことが好ましい。例えば、極めて高精度のレーザーセンサを用いて鉄道線路要素上のある地点の位置を測定することによって少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴(例えば鉄道線路要素上のある地点の位置)を直接的に測定できる。例えば鉄道線路要素上を走行する車両、または鉄道線路要素を使用する車両が、要素特徴に変化をもたらす場合がある。
【0045】
少なくとも1つの鉄道線路要素の動作特徴を高精度で測定する(例えば極めて高精度の加速度センサで加速度を測定する)ことによって、少なくとも1つの鉄道線路要素の要素特徴(例えば鉄道線路要素上のある地点の位置)の間接的な測定を行うことができるため、結果、モデル(例えば、位置の場合加速度を2倍で積分する)を利用したこのような高精度測定に基づいて十分な精度で要素特徴を算出することができる。
【0046】
さらに、上記の要素特徴を直接的または間接的に測定する間、対応する動作データが鉄道線路要素上に設けられた動作センサから収集される。
【0047】
したがって、動作センサ(したがってニューラルネットワークへの入力)からの動作データ、および機械学習アルゴリズムによって得られた結果が、同時に測定される。こうして、このようなトレーニングデータを使用してニューラルネットワーク(または機械学習アルゴリズム)をトレーニングすることができ、このトレーニング方法は当業者にはよく知られる。
【0048】
動作センサから収集された動作データを、動作データに関する関数関係を備えたあらゆる規定された物理量にマップすることが可能であるので、例えば、鉄道線路要素、鉄道線路要素の要素、さらには鉄道線路要素を使用した車両の摩耗状態を示す保守状態インジケータに、動作データ(例えば時間依存加速度値)をマップすることが可能である。
【0049】
摩耗状態を規定した以下の大きさは、単に例示の目的のためだけに提供される。
【0050】
機械学習アルゴリズムをトレーニングして、鉄道線路要素の摩耗状態を示す所与の保守状態インジケータに、測定された動作データをマップするためには、鉄道線路要素(ここでは線路、または線路および鉄道枕木の組み合わせ)を摩耗状態で設ける必要がある。例えば、センサが取り付けられる線路、または動作センサを支持する鉄道枕木に取り付けられる線路は、第1の事例では0.1mm、第2の事例では0.2mm、第3の事例では0.3mmの隆起または起伏などを有する場合がある。
【0051】
したがって、要素特徴を任意の値(例えば、隆起または起伏の大きさ)で提供するようにトレーニングを実行し、このように用意した構成で、動作データを収集する。
【0052】
動作センサは時間依存加速度を測定することができる。そして第1の事例では、動作センサからの動作データを第1の事例における「0.1mmの隆起または起伏」にマップし、動作センサからの動作データを第2の事例における「0.2mmの隆起または起伏」にマップし、動作センサからの動作データを第3の事例における「0.3mmの隆起または起伏」にマップするというように、機械学習アルゴリズムをトレーニングする。このマッピングは、隆起または起伏が引き起こす振動に基づいていると考えられている。
【0053】
隆起または起伏の例の大きさは、保守状態インジケータを示すものと見なしてよい(例えば、隆起または起伏の大きさに関して、すなわち、0.2mmよりも小さい隆起または起伏であれば「機能的な線路」であり、0.2mmよりも大きい隆起または起伏であれば「機能的ではない線路」である)。保守状態インジケータは鉄道線路要素の摩耗状態を示す(隆起または起伏は、摩擦が原因である摩滅、したがって摩耗によって引き起こされる可能性がある)。動作データの変化は、非摩耗状態にある(すなわち、望ましいパラメータで機能する)鉄道車両によって生じる場合がある。
【0054】
代替的に、動作データの変化が摩耗状態にある車両によって生じ得るときに、非摩耗状態(すなわち、望ましいパラメータで機能する)に対応する状態で鉄道線路要素を設けてもよい。摩耗状態は、鉄道車両車輪の円形状から第1の事例では0.1mm、第2の事例では0.2mmというように表面が粗いまたは逸脱していることによって定義することができ、または、鉄道車両車輪軸受の円形状から第1の事例では0.01mm、第2の事例では0.02mmというように表面が粗いまたは逸脱していることによって定義することができる。
【0055】
鉄道線路要素を使用した車両の摩耗状態を示す保守状態インジケータを定義するために、これらの逸脱は同様に隆起および起伏の大きさに対しても利用することができる。機械学習アルゴリズムのトレーニングは、このように実行することができる。
図1