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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】信号伝送における負荷変調
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20220208BHJP
   H03F 1/06 20060101ALI20220208BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
H04B1/04 A
H03F1/06
H03F3/24
H04B1/04 B
H04B1/04 R
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019505434
(86)(22)【出願日】2017-08-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 GB2017052381
(87)【国際公開番号】W WO2018033711
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-08-04
(31)【優先権主張番号】1613948.7
(32)【優先日】2016-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512276430
【氏名又は名称】エアバス ディフェンス アンド スペイス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アボウエレンイン、アハメッド
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/019091(WO,A1)
【文献】特開2014-204229(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0086600(US,A1)
【文献】特開2011-155357(JP,A)
【文献】国際公開第2014/155501(WO,A1)
【文献】特開2016-100622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0234793(US,A1)
【文献】特開2014-138323(JP,A)
【文献】特開2006-279633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/02-1/04
H03F 1/00-3/45
H03F 3/50-3/52
H03F 3/62-3/64
H03F 3/68-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を送信するための送信機であって、
電力増幅器と、
駆動増幅器と
を備え、
前記駆動増幅器の出力は、第1の負荷変調デバイスを介して前記電力増幅器の入力に接続され、前記第1の負荷変調デバイスは、前記駆動増幅器の前記出力のインピーダンスを前記電力増幅器の前記入力のインピーダンスと整合させるよう動作可能であり、
前記送信機は更に、
前記電力増幅器の出力のインピーダンスを更なるデバイスの入力のインピーダンスと整合させるよう動作可能な、前記電力増幅器の前記出力に接続された第2の負荷変調デバイスと、
前記電力増幅器および前記駆動増幅器にエンベロープトラッキングを適用するための手段と
前記駆動増幅器および前記電力増幅器ならびに前記第1の負荷変調デバイスおよび前記第2の負荷変調デバイスの非線形性を補償するべく前記信号にプリディストーションを加えるよう動作可能なプリディストーション手段と
を備え、
前記プリディストーション手段が、
前記第2の負荷変調デバイスに接続され、前記第2の負荷変調デバイスに制御信号を提供するように構成され、かつ、前記電力増幅器および前記第2の負荷変調デバイスの非線形性を補償するべくプリディストーションを加えるよう動作可能な第1のプリディストーション手段と、
前記第1の負荷変調デバイスに接続され、前記第1の負荷変調デバイスに制御信号を提供するように構成され、かつ、前記駆動増幅器および前記第1の負荷変調デバイスの非線形性を補償するべくプリディストーションを加えるよう動作可能な第2のプリディストーション手段と
を有する、
送信機。
【請求項2】
前記第1の負荷変調デバイスは、1または複数のバラクタを含む整合回路網を有する、
請求項1に記載の送信機。
【請求項3】
前記第2の負荷変調デバイスは、1または複数のバラクタを含む整合回路網を有する、
請求項1に記載の送信機。
【請求項4】
前記更なるデバイスは、アンテナを含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の送信機。
【請求項5】
前記制御信号はフィードフォワード制御信号を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の送信機。
【請求項6】
前記送信機は、基地局または中継局に配置される、
請求項1からのいずれか一項に記載の送信機。
【請求項7】
前記電力増幅器を迂回するよう動作可能なスイッチを更に備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の送信機。
【請求項8】
前記駆動増幅器および前記電力増幅器の各々の前記出力においてアイソレータを更に備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の送信機。
【請求項9】
前記電力増幅器に適用された前記エンベロープトラッキングが、遅延した後に前記駆動増幅器にかけるよう構成される遅延手段が設けられる、
請求項1から8のいずれか一項に記載の送信機。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の送信機と、送信された前記信号を受信するための受信機とを備える
信号伝送システム。
【請求項11】
請求項1からのいずれか一項に記載の送信機で信号を送信するための方法であって、
信号にプリディストーションを加え、1または複数の増幅器を使用して前記信号を増幅する段階と、前記プリディストーション手段によって制御しながら前記1または複数の増幅器の各々の前記出力において負荷を変調して、前記負荷のインピーダンスを更なるデバイスの前記入力の負荷のインピーダンスと実質的に整合させる段階と
を備える
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷変調を使用して信号を送信する送信機と信号伝送システムおよび信号伝送方法とに関する。本発明の例示的な応用例が、衛星伝送システム内にある。
【背景技術】
【0002】
衛星通信では、より高いデータスループットのサポートがますます求められている。通信ペイロードにおいては、DC/RF電力変換効率を考慮することが重要であり、DC電力の大部分がRF電力増幅器(PA)によって消費される。信号歪みを低く保ちつつPA効率を最大にすることが望ましい。
【0003】
信号伝送システムは、一般的に、信号を発する基地局と、基地局が単独で行った場合に可能な範囲よりも更に遠くに元信号を中継する、基地局から遠く離れた中継局とを含むことが知られている。例えば、陸上移動体通信システムにおいてこの構成が使用されることが多い。この構成は衛星通信においても使用され、その場合、中継局としては、通常、地球周回軌道上の衛星が挙げられる。
【0004】
できる限り迅速に大容量のデータを送信することへの要求が高まり、帯域幅は必然的に、事前に割り当てられたチャネルに制限される。更に、信号伝送システムの効率、特には衛星に搭載される信号伝送システムの効率を上げることが望まれている。衛星では、電力供給に制限があることが多い。
【0005】
電力増幅器が発する信号強度を高めるべく、1つには、単に電力増幅器を動作させる電力を高めるという選択肢がある。電力増幅器をその範囲の高電力側で動作させる場合、挙動は非線形になる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1態様において、信号を送信するための送信機が提供される。当該送信機は、電力増幅器および駆動増幅器を備え、駆動増幅器の出力は第1の負荷変調デバイスを介して電力増幅器の入力に接続され、第1の負荷変調デバイスは、駆動増幅器の出力のインピーダンスを電力増幅器の入力のインピーダンスと整合させるよう動作可能であり、当該送信機は更に、電力増幅器の出力のインピーダンスを更なるデバイスの入力のインピーダンスと整合させるよう動作可能な、電力増幅器の出力に接続された第2の負荷変調デバイスを備える。
【0007】
負荷変調を使用することによって、システム中の電力フローを効率的にすることができるという点が有利である。更なる利点としては、設計が簡単なので(すなわち、出力電圧振幅と必要な静電容量の範囲とに依存する)、比較される重量、体積、およびコストの面でシステムにはほとんど複雑さが増さないことが挙げられる。
【0008】
第1の負荷変調デバイスおよび第2の負荷変調デバイスは、1または複数のバラクタを含む整合回路網を有し得る。更なるデバイスは、例えばアンテナを含み得る。
【0009】
送信機は、駆動増幅器および電力増幅器ならびに負荷変調デバイスの非線形性を補償するべく信号にプリディストーションを加えるよう動作可能なプリディストーション手段を更に備え得る。
【0010】
デジタルプリディストーション(DPD)を用いることによって、電力効率および帯域幅効率の両方を高めることができるという点が有利である。負荷変調と、負荷変調により生じるいかなる非線形性も補正するよう構成されるデジタルプリディストーションとの複合効果が、明瞭な信号を生成可能で特に効率的な送信機をもたらす。
【0011】
プリディストーション手段は、電力増幅器および第2の負荷変調デバイスの非線形性を補償するための第1のプリディストーション手段を含み得る。更に、プリディストーション手段は、駆動増幅器および第1の負荷変調デバイスの非線形性を補償するべくプリディストーションを加えるよう動作可能な第2のプリディストーション手段を含み得る。
【0012】
第1のプリディストーション手段は、第2の負荷変調デバイスに接続され、第2の負荷変調デバイスに制御信号を提供するよう構成され得る。第2のプリディストーション手段は、第1の負荷変調デバイスに接続され、第1の負荷変調デバイスに制御信号を提供するよう構成され得る。
【0013】
制御信号は、フィードフォワード制御信号を含み得る。
【0014】
送信機は、基地局、または衛星などの中継局に配置され得る。送信機は、電力増幅器を迂回するよう動作可能なスイッチを更に備えてよい。低い電力出力が要求される場合、信号は、駆動増幅器のみを使用して増幅され得る。その方が両方の増幅器を使用するよりも効率的である。
【0015】
送信機は、電力増幅器および駆動増幅器にエンベロープトラッキングを適用するための手段を備えてよい。送信機は、駆動増幅器および電力増幅器の各々のための電源と、駆動増幅器および電力増幅器の各々に供給される電力を変調するよう構成される電力変調手段とを備えてよい。送信機には、電力増幅器にかけた電力変調を、遅延した後に駆動増幅器にかけるよう構成される遅延手段も設けられてよい。
【0016】
本発明の第2態様において、本発明の第1態様に係る送信機で信号を送信するための方法が提供される。当該方法は、信号にプリディストーションを加え、1または複数の増幅器を使用して信号を増幅する段階と、プリディストーション手段によって制御しながら1または複数の増幅器の各々の出力において負荷を変調して、負荷のインピーダンスを出力のインピーダンスと実質的に整合させる段階とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
例示することのみを目的として、次の添付図面を参照して、本発明の実施形態の詳細な説明が以下に続く。
図1】デジタルプリディストーションの効果の概略図である。
図2】典型的な増幅器の入力電力対出力電力を示すグラフである。
図3】デジタルプリディストーション手段を含む信号伝送システムの概略図である。
図4】2つのデジタルプリディストーション手段を含むシステムの概略図である。
図5】DPDデバイスを試験するためのシステムの概略図である。
図6】デジタルプリディストーションを利用するシステムが生成するスペクトルを示す。
図7】デジタルプリディストーションを利用するシステムが生成するスペクトルを示す。
図8】デジタルプリディストーションを利用するシステムが生成するスペクトルを示す。
図9】デジタルプリディストーションを利用するシステムが生成するスペクトルを示す。
図10】デジタルプリディストーション手段を含む信号伝送システムを概略的に示す。
図11】本発明の第1の実施形態に係る送信機を概略的に示す。
図12】本発明の第2の実施形態に係る送信機を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の背後にある原理について更に背景的な説明をするために、図1は、DPDがどの程度PAの非線形性を補正できるかを示す3つの概略的なグラフを含む。DPDは、PAの出力を線形化する効果を有する。比帯域幅の小さいシステムでは、高Q値のフィルタが必要なために、帯域外のスペクトラムリグロースをフィルタリング除去することは実現不可能である。同相(I)ベースバンドデータおよび直交(Q)ベースバンドデータを、スペクトラムリグロースの帯域幅(通常は、変調信号の帯域幅の5倍)に等しい帯域幅内で周波数成分が生成されるようにデジタル的に処理して、PA非線形性に起因する歪みを補償することによって、PA DPDを利用した線形化が達成される。したがって、広帯域送信機が使用されるべきである。このデジタル的な「前処理」によって、PAを飽和点に至るまで動作させることが可能になり、非線形挙動に起因する帯域内および帯域外の歪みが軽減される。ゆえに、出力電力バックオフの大幅な低減が可能になる。
【0019】
図2に示すように、電力バックオフ技術は、PAの出力の線形性の達成を助けること、および、高いピーク対平均電力比を有する信号に対処することのためにも使用することができる。線形PAを使用して高PAPR信号の線形増幅を維持するべく、2つの電力バックオフを利用することができる。第1のバックオフは利得曲線の非線形部分を回避するためのものであり、第2のバックオフはPAPRに対処するためのものである。第1のバックオフを緩和するためにDPDが使用されたとしても、許容できる全体的な電力付加効率(PAE)を達成するべく、電源変調または負荷変調のいずれかが、第2のバックオフのみを軽減し得る。
【0020】
図5は、典型的なDPD+PAハードウェア試験装置のブロック図を示す。この装置は、モデル係数抽出手順を使用して、DPDを利用する伝送システムの応答をモデル化するための方法を実装するための装置である。試験信号のI/Qデータが、Matlabを使用してPC上で生成され、その後、任意波形発生器(AWG)上にダウンロードされ得る。これらのデータは、信号のアップコンバートが達成されるベクトル信号発生器(VSG)においてRFキャリアを変調する。変調されたRFキャリアがPAに供給され、大電力PA(HPA)に駆動増幅器(DA)が使用されてよい。ベクトル信号アナライザ(VSA)が、RF変調キャリアをダウンコンバートし、その後復調する。これにより、元信号(PAが除去されている)と歪信号(すなわち、PAによって増幅された信号)との復調されたI/Qデータを比較して、DPDモデル係数を(PCにおいて)抽出することが可能になる。DPD+PA性能は、プリディストータのI/QデータをAWG上にダウンロードし、PAの出力を測定することによって検証され得る。
【0021】
比帯域幅が大きいと予期される今後の高スループット衛星が、帯域制限型のDPDを採用することによって恩恵を受け得る。従来のDPDを使用する場合と比較したときのこれらの恩恵とは、元の変調信号の帯域幅に匹敵する帯域幅を処理することになった結果、従来のDPDでは5倍の帯域幅を処理するのと比較して、ハードウェアの複雑さがより低くて済み、かつ処理電力がより小さくて済むことであり得る。
【0022】
図3は、信号伝送システム30の第1の実施形態を示す。システム30は、衛星によって送信されることが望まれる信号、例えば、映画またはテレビ番組、を生成するための手段31と、アンテナ34などの、増幅された出力信号を送信するための手段34とを備える。第1のチャネル37すなわちシステムの電気経路が、第1のデジタルプリディストーションデバイス32および増幅器33を経由してアンテナ34へと、信号生成手段31からアンテナ34へとつながる。第1のデジタルプリディストーションデバイス32は、増幅器33によってもたらされる非線形性を相殺する非線形性を信号にもたらす。第2のチャネル38すなわち電気経路が、信号のエンベロープを取り出すことができる。第2のチャネルは、エンベロープ信号を増幅するためのエンベロープ増幅器に接続された第2のデジタルプリディストーションデバイス35を有する。第2のデジタルプリディストーションデバイス35はエンベロープ信号に非線形性を与え、当該非線形性は、エンベロープ増幅器の非線形性によって相殺される。
【0023】
図4は、図3に示した本発明の実施形態のより詳細な形を示す。バラクタベース整合回路網が、変調された入力信号に基づいて出力整合回路網を変調している。図3に示すDPD+PAアーキテクチャは、駆動増幅器(DA)段階における歪みを最小にしつつ、システムの全体的な平均電力付加効率を上げるという点で有利である。バラクタベース整合回路網を使用して、PAの出力において負荷変調をかける。当該整合回路網では、PAの高い出力電力に対処するべくバラクタが並列に配置され得る。整合回路網は、増幅された出力信号を送信するためのアンテナにも接続され得る。DPD1、アップコンバータ、DA、およびPAの経路中の帯域幅は、元の変調信号の帯域幅に制限される。更なるDPDブロック(DPD2)と一緒にエンベロープ増幅器(EA)を使用し、駆動増幅器にエンベロープトラッキングを適用して、EAの出力における非線形性を補償する。入力電力が低い場合、DAとPAとの間の切り替えが可能であり、これにより平均電力付加効率が更に向上する。
【0024】
図6は、Agilent ADS(登録商標)ソフトウェアにおけるMGA-545P8 PAモデルを使用して4GHzのキャリア上に変調された1GHzの1024-QAMの超広帯域信号について、DPDモデル化プロセス、特には、NARMA(非線形自己回帰移動平均)に基づくDPDモデルによって生成されたスペクトルを示す。隣接チャネル電力比(ACPR)の更なる改善を得るべく、3回反復される。図6は、元信号スペクトル(61)と、PAの歪み出力(62)と、3回の反復(63、64、および65)についてのDPD+PAの出力とを示す。縦軸は0~-110dBmに、横軸は、1~7GHzに設定されている。-23dBのNMSEを維持しつつ、ACPRの約12dBの改善が達成される。
【0025】
図7から図9は、以下の試験装置において生成されたスペクトルを示す。実証用低雑音増幅器(ZFL-500LN+Mini-Circuits(登録商標))が、DPD+PA性能に与える帯域制限型DPDの効果を実証するために使用された。次の機器、Agilent(登録商標) N5182B MXG RFベクトル信号発生器(VSG)、Agilent(登録商標) N9030A PXAベクトル信号アナライザ(VSA)、および、TTi EL302Tvトリプル電源、が使用された。VSGとVSAとは、PCを介して制御およびデータ交換を行うよう、ネットワークスイッチを介して接続される。同期は、10MHzリファレンスポートとトリガポートとイベントポートとを接続することによって確立される。図7から図9は、次の3つの異なる変調試験信号の、元信号と、歪められたPAの出力と、NARMAに基づくDPD+PAとの測定されたスペクトルを示す。
図7:10MHzのLTE DL(QPSK)
図8:32MHzの1024-QAM
図9:50MHzの1024-QAM
【0026】
図7から図9に示すスペクトルはそれぞれ、信号同士を比較し易くするべく、元信号のレベルに正規化されている。図7では、線71が元信号を表し、線73がDPDなしの増幅信号を表し、線72が増幅しプリディストーション(予歪み)を加えた信号を表す。図8では、線81が元信号を表し、線83がDPDなしの増幅信号を表し、線82が増幅しプリディストーションを加えた信号を表す。図9では、線91が元信号を表し、線93がDPDなしの増幅信号を表し、線92が増幅しプリディストーションを加えた信号を表す。
【0027】
DPD+PAの隣接チャネル電力比(ACPR)および正規化平均二乗誤差(NMSE)を各変調信号について測定し、表1にまとめている。すべての場合で良好なNMSEが達成され得るのに対し、良好なACPRが達成されるのは帯域幅が10MHzの信号の場合のみであることに留意されたい。このことは、PAの出力では解析帯域幅が制限されている、すなわち60MHzである、せいで、スペクトラムリグロースについての十分な情報がDPDに行かないためであると正当付けられる。したがって、ACPRは、信号帯域幅が広くなるにつれて悪化する。しかしながら、DPDは依然として帯域内の歪みに対処している。
【表1】
このように、データは10MHzのLTE DL信号の場合に最も望ましい性能となることを示している。
【0028】
スペクトラムリグロースは、(例えばL帯における)比帯域幅が大きい信号の場合にフィルタリング除去が可能であり、それゆえACPR制約が大幅に軽減される。衛星通信リンクを介して、送信された信号を確実に受信できるようにするべく、受信機側では、完全な信号伝送を仮定して、スペクトル雑音密度に対する信号エネルギー、すなわちEs/No、のリンクバジェット決定比を維持する必要がある。送信機側のEVMはこの比を低下させるものであり、DPDを用いることによって最小限にとどめておく必要がある。
【0029】
宇宙技術においては伝統的に、電力効率が良いにもかかわらず非線形の(スイッチ)PAは一般に使用されておらず、実際は(電力効率の良くない)線形PAが使用されている。したがって、高度なスペクトル密度変調技術が回避される。本発明の利点は、宇宙部分(および地上部分)においてDPDに加えて負荷および電源の変調を使用することで、効率的な電力使用を保証することである。更に、送信機の電力バジェットが同一であると仮定して、より大量のデータをリンクに押し込むことが可能である。
【0030】
提案されているDPD+PAの性能指数は、電力消費を固定することで、より低いEVMと高スループットとを達成しているはずである。
【0031】
トレーニングシーケンスを使用してDPDモデルを更新することが可能である。X帯ペイロードにおいて、衛星がステーションの可視性ゾーンにあるとき、送信機は、データ転送のために短い期間動作中である。しかしながら、このことは必ずしも各軌道について起こるとは限らない。結果として、軌道の1つがトレーニングシーケンスをデータ受信ステーションに送信するために解放され得る。この受信データを理想的なトレーニングシーケンスとオフラインで比較することができ、DPDモデル係数用の更新情報が抽出され得る。この更新された係数は、TT&C用トランスポンダによって衛星に送信可能であり、衛星上でのDPDモデルの設定に使用され得る。言い換えると、PAに係る想定外のいかなる非常に緩やかな時間変化にも対処するよう、オフラインでの適応を行うことができる。
【0032】
本発明において提案される地上通信用のDPD技術は、高PAPR信号を使用可能でありながら、全体的なPAEを最大にするという点で有利である。本発明の実施形態の更なる利点は、宇宙部分および地上部分の送信機を、(体積、質量、およびコストの面で)より安価なものにすることができることである。
【0033】
図10は、本発明の第3態様に係る、基地局1および中継局2を備える信号伝送システムを示す。エンドユーザ3が、例えば、電話もしくはテレビ、または任意の他の適切な受信デバイスを使用してシステムから信号を受信する。基地局1は基地局電力増幅器(PA)4を有し、PA4は送信対象の信号「x」を増幅する。信号xは、アンテナ(図示していない)によって中継局2に送信され、本実施形態の中継局2は衛星に搭載されている。中継局2は、中継するときに信号を増幅するための中継局PA8を有する。基地局1は、PA4が出力する電力の非線形性を補償するべく信号xにプリディストーションを加えるデジタルプリディストーション手段5を含む。プリディストーション手段5はまた、中継局PA8が出力する電力の非線形性を補償するべく信号xにプリディストーションを加える。 デジタルプリディストーション手段5は、第1のデジタルプリディストーションデバイス6および第2のデジタルプリディストーションデバイス7を有する。第1のプリディストーションデバイス6は、信号xにプリディストーションを加えて、中継局2の中継局PA8の非線形性を補償する。中継局が衛星である場合、中継局PA8は、典型的には衛星トランスポンダシステムの一部である。第2のプリディストーションデバイス7は、信号xにプリディストーションを加えて、基地局PA4の非線形性を補償する。
【0034】
各プリディストーションデバイス6および7の応答特性は、PAの応答特性または利得曲線の逆関数となっている。
【0035】
図11は、システムの効率を更に高めるために負荷変調を使用する本発明の一実施形態を概略的に示す。当該図は、図10に示す基地局1の一部を、更にいくつかの詳細を追加した上で示す。システムの高電力要件を考慮して、基地局PA4は、駆動増幅器(DA)9によって駆動される。PA4およびDA9はどちらもその動作範囲の上端付近における非線形性問題を被るという事実に対処するべく、デジタルプリディストーションデバイス7は、第1のデジタルプリディストータ10および第2のデジタルプリディストータ11を有し、第1のプリディストータ10はプリディストーションを加えてDA9を線形化し、第2のプリディストータ11は、プリディストーションを加えてPA4を線形化する。加えて、当該システムは、負荷変調を使用してシステムの効率を高める。DA9の負荷は、整合回路網13によってPAの入力のインピーダンスに整合される。同様に、PA4の負荷は、更なる整合回路網14によって出力アンテナ16のインピーダンスに整合される。負荷変調を使用するせいで生じる歪みを補償するべく、更にデジタルディストータ10および11を使用する。
【0036】
これに関して、第1のプリディストータ10および第2のプリディストータ11はそれぞれ、整合回路網13および整合回路網14に接続され、負荷変調のレベルを反映する信号が整合回路網からデジタルプリディストータ10、11に送られて、制御フィードバックループが形成される。低レベルの信号が必要な場合は、スイッチ12を使用してPA4を迂回できる。
【0037】
整合回路網は、バラクタベースの回路網とすることができ、出力インピーダンスを瞬間的に変化させるのに制御信号が使用され、また、整合回路網は、各増幅器の出力におけるアイソレータであり得る。当該信号の経路(すなわち、DA+PA)において、負荷変調に起因する歪みを補償するべくDPDが加えられる。このことは、PAの出力を特徴付けること(すなわち、単一のDPDブロック)によって、または、DAおよびPAを別々に特徴付けること(すなわち、2つの連続したDPDブロック)によって達成され得る。
【0038】
本発明の更なる実施形態が、添付図面の図12に示されている。この実施形態において、図11の特徴に対応する特徴が、50を加えた対応する参照番号で示されている。
【0039】
この実施形態では、エンベロープトラッキングおよび負荷変調の両方が、駆動増幅器59および電力増幅器54の両方に適用される。駆動増幅器59の線形化はスペクトル性能の改善(熱管理および信頼性の観点から重要であり、特に、例えば400ワット以上といった高電力応用の場合に、および、電力増幅器54に線形信号を供給するために、重要である)をもたらすが、電力増幅器の線形化が全体的な効率に最も寄与する。負荷変調は、バラクタベース回路網のインピーダンスを変更することによって負荷への電力伝達を最大にし得るが、同時に電力増幅器54の電源をエンベロープ変調することで、更に電力効率を改善し得る。その理由は、エンベロープ変調は、(図12において「変調器」として示した)ベースバンド信号のエンベロープに応じて瞬時DC電力を電力増幅器54に提供するからである。
【0040】
電力増幅器54に加えるものと同じ電源のエンベロープ変調70を、(「同期」段階71によって)適切に遅延させて駆動増幅器59に提供することによって、効率を更に改善できる。通常は、駆動増幅器59のエンベロープ変調が電力増幅器57のエンベロープ変調よりもわずかに先んじて行われる必要があるだろうが、制御ループを同期させるべく、先行させたり劣後させたりすることが可能である。
図1
図2
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図9
図10
図11
図12