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特許7020755シート成形化合物-樹脂トランスファ成形組立体によって形成された複合車両ドアコンポーネント
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  • 特許-シート成形化合物-樹脂トランスファ成形組立体によって形成された複合車両ドアコンポーネント 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】シート成形化合物-樹脂トランスファ成形組立体によって形成された複合車両ドアコンポーネント
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20220208BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B60J5/00 P
B60J5/04 R
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019513824
(86)(22)【出願日】2017-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 US2017050939
(87)【国際公開番号】W WO2018049319
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】62/385,493
(32)【優先日】2016-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519080089
【氏名又は名称】テイジン オートモーティブ テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボンテ、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】トワガン、マーク - フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ボワイエ、ドミニク
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-262916(JP,A)
【文献】特開2016-043575(JP,A)
【文献】国際公開第2015/155889(WO,A1)
【文献】特開2000-016194(JP,A)
【文献】特開2012-061869(JP,A)
【文献】特開2004-320616(JP,A)
【文献】特開2003-335134(JP,A)
【文献】特開平05-286364(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0188647(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0137038(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0110964(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドア組立体であって、
上部フレームと、
前記上部フレームと機械的に連絡する内側フレーム構造と、
外側ボディ・パネルと、
前記外側ボディ・パネルと前記内側フレーム構造との間に位置決めされた複合強化コンポーネントであって、前記上部フレームを強化する前記複合強化コンポーネントの上部部分、クロス・ビーム、ロックと前記クロス・ビームを支持するようにされる前記車両ドア組立体の領域における剛性を高める左側、及びヒンジと前記クロス・ビームを支持するようにされる前記車両ドア組立体の領域におけるドア組立体の剛性を高める右側を有し、長繊維又は短繊維を含むマトリックスで形成されるスタンピング又は樹脂トランスファ成形(RTM)によって形成される4部品構造を形成する複合強化コンポーネント
を備える、車両ドア組立体。
【請求項2】
前記複合強化コンポーネントが、乗員室内への侵入を制限する側面衝突に対する抵抗力を提供する、請求項1に記載の車両ドア組立体。
【請求項3】
前記複合強化コンポーネントが、前ドアの場合に車両のAピラーとBピラーとの間の間隔を維持すること、又は、後ドアの場合にCピラーとDピラーとの間の間隔を維持することにより、正面衝突に対する抵抗力を提供する、請求項1に記載の車両ドア組立体。
【請求項4】
前記長繊維又は短繊維が、ガラス、炭素、セルロース系物質、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の車両ドア組立体。
【請求項5】
前記複合強化コンポーネントが、単一の部品として成形される、請求項1からまでのいずれか一項に記載の車両ドア組立体。
【請求項6】
前記複合強化コンポーネントが、一部分だけが複合材料で形成され、前記内側フレーム構造、前記外側ボディ・パネル、又は前記上部フレームのうちの少なくとも1つが鋼又はアルミニウムで作られるドア組立体に適合する、請求項1からまでのいずれか一項に記載の車両ドア組立体。
【請求項7】
前記複合強化コンポーネントの上部部分が、前記ドア組立体の前記上部フレーム部を強化する、請求項1からまでのいずれか一項に記載の車両ドア組立体。
【請求項8】
前記複合強化コンポーネントが、側面衝突クロス・ビーム、上部ドア強化材、前ドア・ピラー強化材、及び後ドア・ピラー強化材のための一体的な解決策を実施する、請求項1からまでのいずれか一項に記載の車両ドア組立体。
【請求項9】
前記上部フレームが、窓の周りに位置決めされる、請求項1からまでのいずれか一項に記載の車両ドア組立体。
【請求項10】
前記上部フレームが、クーペ・ドアの頂部を画定する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の車両ドア組立体。
【請求項11】
前記車両ドア組立体は、TCA ULTRALITE(登録商標)SMC外側ボディ・パネルと炭素繊維又はハイブリッド繊維エポキシRTM内側フレーム及び複合強化コンポーネントによって形成される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の車両ドア組立体。
【請求項12】
前記外側ボディ・パネルにおける分散された短ガラス繊維で強化された前記複合強化コンポーネントは、重量を減少させるガラス微小球を有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の車両ドア組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2016年9月9日に出願した米国仮特許出願第62/385,493号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は一般に車両構造に関し、また、複合強化コンポーネントを用いた4部品ドア組立体に関する。
【背景技術】
【0003】
母材を補強するための繊維介在物の使用は、当技術分野によく知られている。母材の補強するための十分に確立された仕組みは、母材を通る亀裂伝播を遅くし且つその経路を延ばすこと、並びに、周囲の母材材料から繊維を引き出すことに関連するエネルギー分布を含む。シート成形組成物(SMC:sheet molding composition)調合物、バルク成形組成物(BMC:bulk molding composition)調合物、及び樹脂トランスファ成形(RTM:resin transfer molding)との関連で、繊維補強は、チョップドガラス繊維の利用を伝統的に伴ってきた。成形組成物内のガラス繊維の一部又は全部を炭素繊維に置き換えることで向上されたコンポーネント特性を提供することができるという認識が、成形組成物の分野において広まりつつある。しかし、本質的に異なる層の接合、繊維の流れ、繊維の表面エネルギー、及び得られるコンポーネントの表面品質を含む技術的問題が、依然として残る。
【0004】
複合材、シート成形組成物、及び樹脂トランスファ成形(RTM)における炭素繊維の使用により、形成されるコンポーネントは、ガラス繊維強化材料と比較して軽量になる。炭素繊維強化によって達成される重量軽減は、炭素がガラスよりも低い密度を有し、且つ、所与の厚さでより丈夫で堅固な部品を作り出すという事実から生じる。
【0005】
陸上輸送及び航空輸送の両方のための乗り物をより燃料効率良くするために、自動車、輸送、及び物流に基づく産業での重量軽減は、主要な焦点とされてきた。乗り物部品における炭素強化複合材を使用した重量軽減は、それらの産業が意味ある重量軽減を達成するのに役立ってきた。しかし、高度な表面光沢を特徴とする自動車産業におけるクラスA表面などの高品質の表面仕上げは、一般に、SMC又はRTMで使用される、Continental Structural Plastics,Inc.から市販されているTCA(登録商標)及びTCA Ultralite(登録商標)などのガラス繊維を含む高度に調整された樹脂調合物、又はアルミニウム及びその合金などの金属を用いてのみ得られる。クラスA表面は、一般に、車両の重量のうちの相当量を占める車両表面パネル、即ち、ドア、ボンネット、クォータ・パネル、トランク、屋根構造、バンパ、等に必要とされる。
【0006】
さらに、乗り物のボディ・パネルを軽くするための一連の過程においては、鋼の厚さが減少され、次いで、アルミニウム及び樹脂ベースの材料などのより低密度の材料に代えられた。アルミニウムは、樹脂ベースの車両ボディ物品に有利に働く幾つかの限界を有するという兆候が、明らかになりつつある。現在では、これまでよりも軽量のボディ・パネルを得るのに必要とされる厚さでのアルミニウムの材料費、成形費用、及び引張り強度は、集合的な限界をもたらすと見られている。対照的に、樹脂ベースの物品は、要求事項の範囲に適うように、樹脂化学及び添加物の変更によって調整することができる。さらに、複雑な形状の金属成形は幾つかのステップを必要とするが、良く設計された型は、単一のステップで複雑な形状を与えることができる。
【0007】
現在では、乗用車両ドアは、ドア組立体の複雑な幾何形状のために必要とされる多くの副コンポーネントから構成される。図1は、前ドア12及び乗客用ドア14それぞれのための一般的な側面衝突バー(side impact bar)16及び18を示す。侵入防止バー又は侵入防止ビームとしても知られる側面衝突バーは、乗客を側面衝突から守るように設計された受動的な安全デバイスである。側面衝突は、衝突の場所が、衝突する車両が即座に到達し得る乗客に非常に近いので、特に危険である。側面衝突バーの役割は、衝突する車両の運動エネルギーを吸収して、これを衝突に関与する部材の内部仕事に部分的に変換することである。
【0008】
乗用車両ドアを作り上げるのに必要とされる多くの副コンポーネントは、製造にかかる時間及び費用を増大させ、且つ、ドア組立体の全体的な信頼性を経時的に低下させる。さらに、典型的なドアの全体重量は、15キログラムを超える。既に言及したように、車両製造業者らは、車両乗員の安全性を維持又は改善するとともに組立体を軽量化することを常に試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2005/0182205号
【文献】米国特許第9,018,280号
【文献】米国特許第7,655,297号
【非特許文献】
【0010】
【文献】クリスチャン ライヒャート、有機化学における溶媒と溶媒効果、ワイリーVCH、第3版、2003(Christian Reichardt、Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry、Wiley-VCH、3rd edition、2003)
【文献】D.H.リチャーズ、D.M.サーヴィス、M.J.ステュワート、英国高分子ジャーナル、16、117(1984)(D.H.Richards、D.M.Service、and M.J.Stewart、Br.Polym.J.16、117(1984))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、安全性能及び製造可能性を改善するとともに複合材料を使用してドア組立体の重量をより軽くするドアの設計が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上部フレーム、上部フレームと機械的に連絡する内側フレーム構造、外側ボディ・パネル、及び、外側ボディ・パネルと内側フレーム構造との間に位置決めされた複合強化コンポーネントを含む、車両ドア組立体が提供される。複合強化コンポーネントは、乗員室内への侵入を制限する側面衝突に対する抵抗力を提供する。複合強化コンポーネントは、長繊維又は短繊維(continuous or chopped fibers)を用いて強化され、ここで、長繊維又は短繊維は、ガラス、炭素、セルロース系物質、又はそれらの組合せのうちの少なくとも1つである。複合強化コンポーネントは、スタンピング又は樹脂トランスファ成形(RTM)によって形成され得る。
【0013】
本発明は、本発明の幾つかの態様を示すように意図されているが本発明の実践の制限として解釈されるべきではない以下の図面に関して、さらに詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】側面衝突バーを示す、既存の従来技術の乗用車両ドア組立体の図である。
図2】本発明の実施例による複合強化コンポーネントを含むドア組立体の分解組立図である。
図3】本発明の実施例による、図2で使用された複合強化コンポーネントの拡大された斜視図である。
図4】ガラス繊維ベースのクラスA外側パネルが、本発明の実施例による炭素又はハイブリッド繊維ベースの構造内側パネルの接合フランジにおいて接合(接着剤、エポキシ、等)された、典型的なボディ・パネル・シール・フランジの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、図1に示された従来技術のドア組立体と比較して、軽量且つ簡易化された車両ドア組立体の形成における有用性を有する。ドア組立体の発明性のある実施例は、車両の設計を、窓の周りに位置決めされる上部フレーム、内側フレーム構造、外側ボディ・パネル、及び複合強化コンポーネントの、4つの主要コンポーネントに簡易化する。発明性のある複合強化コンポーネントの実施例は、上部ドア強化材、前ドア・ピラー強化材、及び後ドア・ピラー強化材だけでなく側面衝突クロス・ビームのための一体的な解決策を提供する。複合強化コンポーネントの実施例は、ドア構造全体を強化する働きをし、乗員室内への侵入を制限する側面衝突に対する抵抗力を提供し、且つ、(前ドアの場合に)車両のAピラーとBピラーの間の間隔を維持すること及び後ドアの場合にCピラーとDピラーとの間の間隔を維持することにより正面衝突に対する抵抗力を提供する。窓フレームがないクーペ車両ドア(例えば、Corvette)は本発明に基づいて容易に作られることが、理解される。
【0016】
複合強化コンポーネントの実施例は、長繊維又は短繊維を有し得る。強化用繊維には、例として、ガラス、炭素、セルロース系物質、及びそれらの組合せが含まれる。複合強化コンポーネントは、スタンピング又は樹脂トランスファ成形(RTM)によって形成され得る。発明性のある複合強化コンポーネントの実施例は、4つよりも多い部品から形成される同等の従来の鋼での構成と比較して、単一の統合された部品として成形され得ることが、留意される。複合強化コンポーネントの実施例は、完成したドアの一部分のみが内側フレーム構造、外側ボディ・パネル、及び/又は上部フレームなどの複合材料で形成されて残りのドアコンポーネントが従来の鋼又はアルミニウムの構成で形成されるドア組立体に適合する。
【0017】
次に図を参照すると、図2は、組合せ上部及び内側フレーム構造体52、複合強化コンポーネント56、並びに外側ボディ・パネル54の3つの主要コンポーネントを含む、発明性のある車両ドア組立体50の分解組立図を示す。
【0018】
図3は、本発明の実施例による、図2で使用された複合強化コンポーネント56の拡大された斜視図である。複合強化コンポーネント56の上部部分60は、ドア組立体50の上部フレーム52部を強化し、且つ、正面衝突及び結果として生じる圧縮力に対するより良好な抵抗力を提供する。複合強化コンポーネント56の左側62は、ロック領域及び側面クロス・ビーム64におけるドア組立体50の剛性を高める。側面クロス・ビーム64の主要機能は、側面衝突事故の際に運転者又は乗客を守ることである。複合強化コンポーネント56の右側66は、ドアを車両フレームに固着するヒンジの領域におけるドア組立体の剛性を高める他に、側面クロス・ビーム64の剛性も高める。
【0019】
特定の実施例では、外側ボディ・パネル54における分散された短ガラス繊維で強化されたコンポーネントは、重量を減少させるガラス微小球を有することができ、それらのガラス微小球は、接着剤又は機械的固定物により、樹脂トランスファ成形(RTM)で形成されたエポキシ母材内の分散された炭素繊維又は炭素、ガラス、及び天然繊維の組合せで強化された第2の硬化層に結合される。本発明の実施例は、本願の権利者が所有する特許文献1で開示されているような、Continental Structural Plastics,Inc.から市販されているTCA ULTRALITE(登録商標)樹脂を例として含むクラスA仕上げのSMCを使用して形成され、且つ、特許文献2で開示されているような中空ガラス微小球を含む、外層ボディ・パネル54を有することができ、これらの特許文献は、その全体が本明細書に含まれる。
【0020】
ここで、ガラス繊維は、外側パネル層54の主な繊維充填材とする一方で、炭素繊維又は天然繊維はより少量存在してもよい。
【0021】
車両ドア組立体50の実施例は、TCA ULTRALITE(登録商標)SMCアウター54によって形成されてもよく、炭素繊維又はハイブリッド繊維エポキシRTMインナー(52、56)は、アルミニウムよりも10~15%軽い組立体、これまでのボディ部の構造よりも費用効率が良いこと、及び高められた設計融通性を含む特性を提供する。
【0022】
発明性のある幾つかの実施例では、短炭素繊維によって主に強化された成形組成物の硬化内側部分が、ガラス繊維によって主に強化された第2のシート成形組成物の硬化外側スキンに結合され、外側表面は、クラスA仕上げなどの自動車の表面品質仕上げを有する。本明細書において、クラスA表面仕上げは、自動車製造業者らにより外部ボディ・パネルに必要とされる表面の輝き及び反射性に関連する。一実施例では、硬化内側部分は、ガラス繊維を実質的に含まず、一方で、外側スキンは短炭素繊維を実質的に含まない。
【0023】
本明細書において、クラス「A」表面は、ASTM D523により、従来法で製造された新車の表面の艶のための塗装を受け入れる硬化SMC又はBMC材料であると定義される。不飽和ポリエステル樹脂、熱可塑性添加物、有機過酸化物、抑制物質、充填材、離型剤、及び顔料を含有するそのような材料は、Continental Structural Plastics,Inc.によりTCA(登録商標)の商品名で売られている。
【0024】
本明細書において、「成形組成物」は、ガラス又は炭素の短繊維の装填を受け入れられるSMC、BMC、及びRTM樹脂調合物を意味する。
【0025】
発明性のある特定の実施例では、成形組成物内の炭素繊維は、内側層の10から40重量%炭素繊維を占めて車両ドアコンポーネントの内側層内に存在し、市販されているTCA(登録商標)又はTCA ULTRALITE(登録商標)(Continental Structural Plastics,Inc.)をベースとするSMCの外側スキン層が、特許文献3で具体化されているように、TCA(登録商標)部分の重量で10から60%の間のガラス繊維を占めるガラス繊維を含有する。内側部分の厚さの外側スキンに対する比は、01~10:1の範囲に及ぶ。得られるSMC内側部分層及び外側スキン層は、別々に設計され、形成され、硬化され、その後、2つの層は結合されてコンポーネントを形成する。炭素繊維を含有する内側コンポーネント(52、56)を有するそのようなドアコンポーネントは、全体的にTCA(登録商標)又は他のクラスA表面仕上げ樹脂から形成された比較可能な物品よりも10、20、30、さらには40%低い密度を有することが注目される。このようにして、クラスA表面の高度な表面の艶を保つ軽量な物品が形成される。ドア組立体における所与のコンポーネントは、ガラス繊維が外側表面パネル54内に主に存在し且つ炭素繊維が内側フレーム/構造コンポーネント(52、56)内に主に存在するという、他のタイプの繊維の装填への制限の基で、炭素繊維及びガラス繊維の両方の組合せの他に、例としてココナツ繊維が含まれる天然セルロース系繊維などの他のタイプの繊維を含むことができることが理解される。本明細書において、所与のタイプの繊維が主に存在するとは、その繊維タイプが、層内に存在する繊維の総重量の50重量%超を表すことを意味する。幾つかの実施例では、各層は、100%が所与のタイプの繊維であるが、他の実施例では、主な繊維は51から99%の間で存在する。
【0026】
値の範囲が与えられている事例において、範囲は、その範囲の端点の値のみならず、その範囲の中間値もまた、その範囲に明確に含まれるものであり且つその範囲の最後の有効数字によって変化するものとして包含するように意図されていることが、理解されるべきである。例として、1から4までの挙げられた範囲は、1~2、1~3、2~4、3~4、及び1~4を含むことが意図されている。
【0027】
発明性のある別の実施例では、メタクリル酸メチルモノマー・ベースの成形組成物内に炭素繊維が分散される。成形組成物調合物が作り出される他の適切なモノマーには、例として、不飽和ポリエステル、エポキシ、及びそれらの組合せが含まれる。エポキシをベースとする成形組成物調合物には、例として、bis-フェノールA及びノボラック・ベースの5エポキシ末端樹脂が含まれる。そのようなエポキシ・ベースの成形組成物調合物のための適切な硬化剤には、例として、トリメリチック・アンヒドリド、メチル・テトラヒドロフタリック・アンヒドリド(MTHPA:methyl tetrahydrophthalic anhydride)、ナジック・メチル・アンヒドリド(NMA:nadic methyl anhydride)、二及び三官能性アミン、並びにそれらの組合せなどの無水物が含まれる。
【0028】
本発明の別の発明性のある実施例では、炭素繊維は、成形組成物モノマー、又はモノマーを含む溶液内に分散され、このモノマーを含む溶液は、0.26より大きい相対極性を有し、幾つかの実施例では0.5より大きい相対極性を有し、さらに他の実施例では0.5から0.8の間の相対極性を有する。相対極性は、非特許文献1に定義されている。
【0029】
発明性のある別の実施例では、炭素繊維は、硬化に先立って成形組成物調合物内に分散されて、強化されたSMC、BMC、又はRTMの硬化物品をもたらし、この硬化物品は、ガラス繊維強化材を有して形成された同様の層と比較すると、より低い全体密度と、より低い繊維装填重量パーセントとを有する。さらに、結合剤の使用を通じて、優れた引張り強度が得られる。
【0030】
発明性のある幾つかの実施例では、炭素繊維の表面上の任意のサイジング又は他の従来の表面被覆を除去するために、硬化すると炭素繊維を含有する母材を形成する成形組成物との接触に先立って、適切な大気条件下で熱が加えられる。発明性のあるさらに他の実施例では、コア炭素繊維からのサイジングの熱分解を促進するために、不活性雰囲気又は還元性雰囲気下で熱が加えられる。再生炭素繊維は、発明性のある2部品車両コンポーネントにおいて有効であることが、理解される。
【0031】
それぞれの線熱膨張係数(CLTE:coefficient of linear thermal expansion)から知られているように、炭素はガラスよりも遙かに良く熱を散逸させるので、炭素繊維が主に充填された層は、ガラス繊維が主に充填された他の同様の層よりも速く冷える。この硬化後の動的な冷却の差は、炭素繊維が充填された層が薄いほど大きくなり、それらの層を特に反り易くする。したがって、ガラス繊維が主に充填された層と炭素繊維が主に充填された層との間のCTLE及び材料剛性の差に起因して、結合する接合剤は、結合される層のCTLE差を補償するために、-40から140°F(-40から60℃)の範囲の温度にわたって、さらには層の硬化条件及び高温結合に関連する400°F(205℃)のような高い温度で、非常に優れた伸び性能を有さなければならない。発明性のある特定の実施例では、内側層を外側層に接合するために、エラストマ接合剤が使用され得る。エラストマ接合剤は、本明細書において発明性のあるコンポーネントの本質的に異なる層を結合する働きをするエラストマ接合剤には、例として、ウレタン、エポキシ、及びそれらの組合せが含まれる。発明性のある幾つかの実施例では、接合フランジ厚さは、同様の繊維充填材層同士を結合するための0.63~1.27cm(1/4~1/2インチ)から、本発明の2部品構成のための2.54~3.81cm(1~1.5インチ)まで増大される。
【0032】
発明性のある幾つかの実施例では、外側パネル54において使用されるミクロスフェロイド(microspheroid)は、12から45ミクロンの間の平均直径を有する。発明性のあるさらに他の実施例では、ミクロスフェロイドは、16から45ミクロンの間の外径を有する。典型的には、ミクロスフェロイドは、得られる調合物の2から20総重量パーセント、ベースSMC又はBMCクラスA調合物内に装填される。所与の成形組成物調合物内に加えられるミクロスフェロイドの具体的な量は、所望の物品密度、ミクロスフェロイドのサイズ分散及び平均粒子寸法、必要とされる物品強度、必要とされる物品収縮量、並びに必要とされる物品表面平滑度を含む要因に依存する。
【0033】
本発明の特に好ましい実施例では、ミクロスフェロイドは、ミクロスフェロイド表面に粘着する表面被覆で前処理される。
【0034】
ミクロスフェロイド表面は、硬化中に周囲の樹脂母材に接合するように、容易に誘導体化される。得られる物品は、向上された物理的性質を示す。
【0035】
ミクロスフェロイドのための表面誘導体の1つのタイプは、ヘテロ原子末端官能性熱可塑性被覆(heteroatom functionally terminated thermoplastic coating)である。末端を含むヘテロ原子には、例として、三級アミン部分、ヒドロキシル部分、イミン部分、又はシアノ部分が含まれる。そのような部分は、当技術分野に知られている適切な硬化条件下において、硬化中に母材の樹脂成分と反応して硬化物品をさらに強化することが可能であることが、理解される。三級アミン末端熱可塑性物質は、容易に作成される(非特許文献2)。代表的な三級アミン末端熱可塑性物質が、NoveonからATBN1300X21の商品名で市販されている。
【0036】
ガラス・ミクロスフェロイドに接合する表面活性化剤は、シランがミクロスフェロイドのシリカ表面と反応するアルコキシシランである。ミクロスフェロイドのための代表的なアルコキシシラン表面活性化剤には、例として以下のものが含まれる。
【0037】
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3ーグリシドキシプロピル)bis(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、エタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(ethacryloxypropylmethyldimethoxysilane)、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メトキシメチルトリメチルシラン、3-メトキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、メタクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、3ーイソシアナトプロピルジメチルクロロシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、bis(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、及びそれらの組合せ。発明性のある幾つかの実施例では、シラン表面活性化剤は、中空ガラス微小球とともに周囲のSMC又はBMCクラスA母材に共有結合するために、遊離基架橋結合条件下で反応するエチレン系不飽和部分を含む。
【0038】
図4は、ガラス繊維ベースのクラスA外側層54が、本発明の実施例による炭素繊維ベースの構造内側コンポーネント(52、56)の接合フランジ72において接合70(接着剤、エポキシ)又は固着される、典型的なボディ・パネル・シール・フランジの断面図である。車両は、一般に、フレームの周りに構成され、この場合、車両は、下部構造に固着又は接合されてフレームの不規則な表面への取付けのために設計されたボディ・パネルを形成する、完成した表面パネルを有する。接合フランジ72は、対応するシール支持表面に従う。構造内側コンポーネント(52、56)の「帽子」セクション74は、フレーム(図示せず)に達するまで延在してそれに付着する。
【0039】
上記の説明は、本発明の特定の実施例の例示であるが、その実践への限定を意味するものではない。以下の特許請求の範囲は、そのあらゆる均等物を含めて、本発明の範囲を定めるように意図されている。
図1
図2
図3
図4