(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】感圧性粘着剤層、及びこれを用いた粘着テープ及び構造物
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220208BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20220208BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220208BHJP
C09J 7/21 20180101ALI20220208BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/06
C09J7/21
(21)【出願番号】P 2017055330
(22)【出願日】2017-03-22
【審査請求日】2019-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】服部 絢子
(72)【発明者】
【氏名】安田 誠也
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-111544(JP,A)
【文献】国際公開第2011/102170(WO,A1)
【文献】特開2011-093985(JP,A)
【文献】特開2006-219564(JP,A)
【文献】特開2009-114373(JP,A)
【文献】特開2013-018944(JP,A)
【文献】特開平11-323268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
E04F13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部に対して非ハロゲン化リン酸エステル系難燃剤(B)を1.0~60質量部、150~250℃の温度で不燃性のガス成分を発生する発泡剤(C)を0.05~10質量部含有
し、膨張化黒鉛粉を含有しない、感圧性粘着剤層。
【請求項2】
前記不燃性のガス成分が、窒素、二酸化炭素、水蒸気からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の感圧性粘着剤層。
【請求項3】
前記発泡剤(C)が、アゾ基を有する化合物から選ばれる、請求項1又は2に記載の感圧性粘着剤層。
【請求項4】
前記非ハロゲン化リン酸エステル系難燃剤(B)が、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、及びレゾルシノールビスジ-2,6-キシレニルホスフェートからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の感圧性粘着剤層。
【請求項5】
前記感圧性粘着剤層が微粒子を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の感圧性粘着剤層。
【請求項6】
前記感圧性粘着剤層が粘着付与樹脂を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の感圧性粘着剤層。
【請求項7】
残留モノマー量が0.5質量%以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の感圧性粘着剤層。
【請求項8】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面に、請求項1~7のいずれか1項に記載の感圧性粘着剤層とを備える粘着テープ。
【請求項9】
前記基材がポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリエチレンテレフタレートクロスからなる群から選択される少なくとも1種である請求項8に記載の粘着テープ。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の感圧性粘着剤層とシート材とを備え、前記感圧性粘着剤層がシート材の表面に設けられる構成物。
【請求項11】
前記シート材が織物又は編物である、請求項10に記載の構成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物を硬化した感圧性粘着剤層、及びこれを用いた粘着テープ及び構成物に関する。
【背景技術】
【0002】
接着テープ及び粘着テープは、接着剤よりも施工が簡便であり、また、施工速度に優れることから、モルタル等の建築用材料、電子機器、織物、編物等の繊維材料等の様々な分野において用いられている。建築用材料、繊維材料は表面が粗面であることが多いため、これら用途においては基材上に粘着剤層を設けることによって粗面への追従性や粘着力の向上が図られている。このような接着テープや粘着テープとして、例えば特許文献1には、接着剤層に対して特定のガラスのミクロバブル(中空微小球)を含有させた感圧性接着テープが記載されている。
【0003】
また、建築用途に用いられる粘着テープについては一般的に難燃性に優れることが求められることが多い。さらに、繊維材料に用いられる粘着テープも、例えば自動車、飛行機、鉄道車両等の輸送分野の内装材にて使用される場合などには、難燃性が求められることがある。例えば、特許文献2には、アクリル系高分子樹脂、及び水酸化アルミニウム等の金属水酸化物からなる難燃充填剤を含み、粘着剤の製造過程において残留した単量体の含有量を規定した粘着剤が記載されている。この粘着剤では、単量体の含有量を2重量%以下とすることで、粘着剤の難燃性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭57-17030号公報
【文献】特表2007-513216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1においては、難燃性に関する検討が十分になされていない。一方で、特許文献2のように、単量体の含有量を少なくするだけでは、難燃性を向上するには限界があり、他の手段により難燃性を向上することが求められている。
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであって、被着面に対して良好な粘着性を有し、かつ、優れた難燃性を備える感圧性粘着剤層、及びこれを用いた粘着テープ及び構成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)に対して、非ハロゲン化リン酸エステル系難燃剤(B)及び特定種類の発泡剤(C)を一定量含有する感圧性粘着剤層が前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記[1]~[11]に関する。
[1](メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部に対して非ハロゲン化リン酸エステル系難燃剤(B)を1.0~60質量部、150~250℃の温度で不燃性のガス成分を発生する発泡剤(C)を0.05~10質量部含有する、感圧性粘着剤層。
[2]前記不燃性のガス成分が、窒素、二酸化炭素、水蒸気からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]に記載の感圧性粘着剤層。
[3]前記発泡剤(C)が、アゾ基を有する化合物から選ばれる、上記[1]又は[2]に記載の感圧性粘着剤層。
[4]前記非ハロゲン化リン酸エステル系難燃剤(B)が、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、及びレゾルシノールビスジ-2,6-キシレニルホスフェートからなる群より選ばれる1種以上である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の感圧性粘着剤層。
[5]前記感圧性粘着剤層が微粒子を含有する、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の感圧性粘着剤層。
[6]前記感圧性粘着剤層が粘着付与樹脂を含有する、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の感圧性粘着剤層。
[7]残留モノマー量が0.5質量%以下である上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の感圧性粘着剤層。
[8]基材と、前記基材の少なくとも一方の面に、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の感圧性粘着剤層とを備える粘着テープ。
[9]前記基材がポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリエチレンテレフタレートクロスからなる群から選択される少なくとも1種である上記[8]に記載の粘着テープ。
[10]上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の感圧性粘着剤層とシート材とを備え、前記感圧性粘着剤層がシート材の表面に設けられる構成物。
[11]前記シート材が織物又は編物である、上記[10]に記載の構成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各種の被着面に対して良好な粘着性を有し、かつ、優れた難燃性を備える感圧性粘着剤層、これを用いた粘着テープ、及び構成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の感圧性粘着剤層は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部に対して非ハロゲン化リン酸エステル系難燃剤(B)を1.0~60質量部、150~250℃の温度で不燃性のガス成分を発生する発泡剤(C)を0.1~10質量部含有する。
本発明の感圧性粘着剤層が優れた難燃性を有する理由は定かではないが、次のように推定される。感圧性粘着剤層は、通常、何らかの被着体、例えば、織物又は編物等のシート材に貼り付けた構成物の状態で使用される。この状態で加熱されると、通常、難燃剤を含む感圧性粘着剤層よりも先に、被着体の燃焼が始まる。この際、感圧性粘着剤を構成している(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が温度の上昇とともに変形しうる程度に軟化していき、感圧性粘着剤層が適度な発泡と共に、被着体との密着性を維持したまま燃焼している被着体を一部包み込むように変形する。これにより、被着体の燃焼が抑制されて、結果として、感圧性粘着剤層のみならず、該感圧性粘着剤層と被着体とを備える構成物全体の難燃性が高まるものと推定される。
【0009】
<(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)>
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、例えば、下記重合性モノマー(a)を含む粘着剤組成物を重合することにより得ることができ、下記重合性モノマー(a)の重合体である。
【0010】
〔重合性モノマー(a)〕
重合性モノマー(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを挙げることができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは、「アクリル酸アルキルエステル、又はメタクリル酸アルキルエステル」を意味する。他の類似の用語も同様である。
〔(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー〕
本発明における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコールとのエステルであって、前記脂肪族アルコールのアルキル基の炭素数が、好ましくは2~14、より好ましくは4~10である脂肪族アルコールに由来するアルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数が前記範囲内であると、感圧性粘着剤層のガラス転移温度(Tg)が高くなり過ぎず、粘着力が良好になる。
【0011】
具体的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレートが好ましく、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
重合性モノマー(a)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは88質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。含有量を上記範囲内とすることで、感圧性粘着剤層の粘着力を向上させることが可能である。
【0013】
〔極性基含有モノマー〕
本発明においては、感圧性粘着剤層の凝集力を向上させる観点から、重合性モノマー(a)として極性基含有モノマーを用いてもよい。極性基含有モノマーは、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーと併用することが好ましい。
極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、及びポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等の水酸基を有するビニルモノマー;
(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルラウリロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等の窒素含有ビニルモノマーが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましく、アクリル酸が更に好ましい。
これらの極性基含有モノマーは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
重合性モノマー(a)が極性基含有モノマーを含有する場合、重合性モノマー(a)中のその含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。極性基含有モノマーの含有量を上記範囲内に調整することで、感圧性粘着剤層の粘着力を向上させやすくなる。
【0015】
〔その他のモノマー〕
重合性モノマー(a)としては、粘着剤組成物の粘度を調整するなどの観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー及び極性基含有モノマー以外のその他のモノマーを用いてもよい。
その他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、及びp-メチルスチレン等のスチレン系モノマーが挙げられる。
【0016】
重合性モノマー(a)がその他のモノマーを含有する場合、その含有量は、粘着剤組成物の粘度を調整する観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
【0017】
〔架橋剤〕
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、感圧性粘着剤層の凝集力を向上させる観点から架橋剤により架橋されていることが好ましい。
架橋剤としては、ビニル基を2つ以上有するものが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。このような架橋剤は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の主鎖中に組み込まれ、その主鎖同士を架橋してネットワークを形成する。
具体的な架橋剤としては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトシキ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトシキ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化グリセリルトリアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、及び液状水素化1,2-ポリブタジエンジアクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、分子量が400以上の架橋剤が好ましく、具体的には、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、及び液状水素化1,2-ポリブタジエンジアクリレートなどが好ましく、液状水素化1,2-ポリブタジエンジアクリレートがより好ましい。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)が架橋剤により架橋されている場合、重合性モノマー(a)100質量部に対する架橋剤の量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。架橋剤の量をこれら範囲内に調整することで、感圧性粘着剤の粘着力を向上させ、かつ適切なゲル分率を有する感圧性粘着剤を得やすくなる。
【0019】
〔(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の製造方法〕
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の製造方法に特に制限はないが、例えば、重合性モノマー(a)、必要に応じて光重合開始剤、架橋剤等を含む粘着剤組成物に対して光を照射して重合することにより製造することができる。
<光重合開始剤>
本発明において用いることができる光重合開始剤としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシー2-プロピル)ケトン[商品名:ダロキュアー2959、メルク社製]等のケトン系;α-ヒドロキシ-α、α-ジメチル-アセトフェノン[商品名:ダロキュア1173、メルク社製]、メトキシアセトフェン、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェン[商品名:イルガキュア651、BASF社製]、及び2-ヒドロキシー2-シクロヘキシルアセトフェノン[商品名:イルガキュア184、BASF製]等のアセトフェノン系;ベンジルジメチルケタール等のケタール系;その他、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0020】
重合性モノマー(a)100質量部に対する光重合開始剤の量は、後述する残存モノマーの量を低減する観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上、特に好ましくは0.4質量部以上であり、そして、感圧性粘着剤層中に光重合開始剤が多く残留することを防ぐ観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0021】
<非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)>
本発明においては、感圧性粘着剤層の難燃性を向上させることを目的として、非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤を用いる。
非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジ-2,6-キシレニルホスフェート及びこれらを各種置換基で置換した化合物等が挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、及びレゾルシノールビスジ-2,6-キシレニルホスフェートからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェートから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0022】
本発明において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部に対する非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)の含有量は、1.0~60質量部である。1.0質量未満とすると、感圧性粘着剤層に十分な難燃性を付与することが難しくなる。また、60質量部を超えると、感圧性粘着剤層の粘着力が低下する。
感圧性粘着剤層に十分な難燃性を付与する観点から、上記含有量は、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは2.5質量部以上である。また、感圧性粘着剤層の粘着力が低下することを抑制する観点から、好ましくは50.0質量部以下、より好ましくは40.0質量部以下、更に好ましくは30.0質量部以下、より更に好ましくは15.0質量部以下である。
なお、前述の重合性モノマー(a)は反応性が良好であることから、本発明においては、「(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部」と「重合性モノマー(a)100質量部」とを同量としてみなすことができる。したがって、「(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部に対する非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)の量」は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を製造する際の重合性モノマー(a)の仕込み量に基づいて算出することができる。その他の成分についても同様である。
【0023】
<発泡剤(C)>
本発明の感圧性粘着剤層には、難燃性を向上させる観点から、150~250℃の温度で不燃性のガス成分を発生する発泡剤(C)を含有する。難燃性が高まる理由は以下のように推測される。
感圧性粘着剤が貼付されたシート材等の被着体が燃焼する場合、通常、難燃剤が含まれている感圧性粘着剤よりも先に被着体が燃焼する。該燃焼に起因した温度上昇により、感圧性粘着剤中に含まれる発泡剤が発泡し、感圧性粘着剤が適度な発泡と共に、被着体との密着性を維持したまま燃焼している被着体を一部包み込むように変形し、被着体を消火できると推測される。また、感圧性粘着剤が、発泡による変形により被着体を消火することによって、感圧性粘着剤自体が燃焼するのも防ぐことができる。
発泡剤(C)の不燃性のガス成分を発生する温度が150℃より低い場合は、感圧性粘着剤層を構成する(メタ)アクリル酸エステル系重合体が比較的硬く、変形し難い温度で発泡するため、感圧性粘着剤層の発泡に起因した消火が生じ難い。一方、発泡剤(C)の不燃性のガス成分を発生する温度が250℃より高い場合も、感圧性粘着剤層の発泡に起因した消火が生じ難い。これは、250℃より高い温度の場合は、感圧性粘着剤層を構成する(メタ)アクリル酸エステル系重合体が柔らかくなりすぎており、発泡に起因して、シート材から感圧性粘着剤層が部分的に剥離してしまい、燃焼している被着体の一部を包み込むような変形が生じ難いからと考えられる。
なお、発泡剤(C)の不燃性のガス成分を発生する温度は、発泡剤の種類を選択することにより調整でき、また後述する発泡助剤を併用することによっても調整することができる。
発泡剤(C)は、150~250℃の温度で分解し、不燃性のガス成分を発生する発泡剤であることが好ましい。発泡剤(C)の分解温度は、感圧性粘着剤の難燃性を向上させる観点から、好ましくは170~240℃であり、より好ましくは190~230℃であり、更に好ましくは200~220℃である。ここで、発泡剤の分解温度とは、発泡剤が急激に分解し始める温度をいい、具体的には、熱重量分析(TG)によって昇温速度1℃/分の条件下にて測定したとき、質量が50%減少するときの温度である。
【0024】
本発明における発泡剤(C)は、不燃性のガス成分を発生するものである。不燃性のガス成分を発生することにより、燃焼を抑制することができる。不燃性のガス成分としては、窒素、二酸化炭素、水蒸気からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
発泡剤(C)としては、有機系発泡剤でも無機系発泡剤でも特に制限なく使用することができるが、有機系発泡剤が好ましい。
本発明の発泡剤(C)として用いられる有機系発泡剤としては、例えば、N,N′-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(分解温度205℃、分解ガスN2)等のニトロソ基を有する化合物、アゾジカルボンアミド(分解温度200~210℃、分解ガスN2、CO、CO2)、アゾジカルボン酸バリウム(分解温度240~245℃、分解ガスN2、CO、CO2)等のアゾ基を有する化合物、4,4-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(分解温度155~165℃、分解ガスN2、H2O)、ヒドラゾジカルボンアミド(分解温度245℃、分解ガスN2、NH3)等を挙げることができる。無機系発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。これらの中でも、アゾ基を有する化合物が好ましく、アゾジカルボンアミドがより好ましい。
【0025】
感圧性粘着剤層に含有される発泡剤(C)の量は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部に対して0.05~10質量部である。発泡剤(C)の量が0.05質量部よりも少ない場合には、感圧性粘着剤層の難燃性が劣る傾向がある。これは、感圧性粘着剤層の発泡による変形、すなわち、燃焼している被着体を包み込む程度の変形が生じにくいためと考えられる。また、発泡剤(C)の量が10質量部よりも多い場合にも、感圧性粘着剤層の難燃性が劣る傾向がある。これは、感圧性粘着剤層の発泡による変形の程度が大きすぎることにより、感圧性粘着剤層が部分的に被着体から剥がれてしまい、結果として、被着体を消火し難くなるためと考えられる。このような観点から、発泡剤(C)の量は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部に対して好ましくは0.08~8質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。
【0026】
<その他の成分>
本発明の感圧性粘着剤層(すなわち、粘着剤組成物)は、例えば、下記の成分を含有してもよい。
〔発泡助剤〕
本発明の感圧性粘着剤層には、発泡剤(C)の不燃性ガスを発生する温度を調整する観点から、発泡助剤を含有させてもよい。発泡助剤は、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸亜鉛等の脂肪酸の金属塩、尿素、炭酸カルシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。発泡助剤の配合量は、発泡剤(C)の不燃性ガスを発生する温度を調整する観点から適宜決定すればよいが、一般的には、発泡剤(C)100質量部に対して、好ましくは0.5~5質量部である。
〔粘着付与樹脂〕
本発明の感圧性粘着剤層は、感圧性粘着剤層の粘着力を向上させる観点から、粘着付与樹脂を含有してもよい。
粘着付与樹脂としては、水添テルペン樹脂、水添ロジン、不均化ロジン樹脂、石油樹脂、及び水添石油樹脂等の重合阻害性の低い粘着付与樹脂が好ましい。これらの中でも、粘着付与樹脂が二重結合を多く有していると重合反応を阻害することから、水添石油樹脂が好ましい。
粘着付与樹脂の軟化点は、感圧性粘着剤層の凝集力を向上させる観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上である。
【0027】
粘着剤組成物が粘着付与樹脂を含有する場合において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部(すなわち、重合性モノマー(a)100質量部)に対する粘着付与樹脂の量は、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上、より更に好ましくは9質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、より更に好ましくは25質量部以下である。粘着付与樹脂の量が前記範囲内であると、感圧性粘着剤層の粘着力が向上すると共に、柔軟性も向上する。
【0028】
〔微粒子〕
本発明の感圧性粘着剤層は、感圧性粘着剤層の粗面に対する粘着力を向上させる観点、及び感圧性粘着剤層の凝集力を向上させる観点から、微粒子を含有してもよい。
微粒子の体積中位粒径(D50)は、感圧性粘着剤層の粗面に対する粘着力を向上させる観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上、より更に好ましくは20μm以上、より更に好ましくは25μm以上であり、感圧性粘着剤層の凝集力を向上させる観点から、好ましくは150μm以下、より好ましくは130μm以下、更に好ましくは120μm以下、より更に好ましくは110μm以下、より更に好ましくは100μm以下である。なお、本明細書において「体積中位粒径(D50)」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0029】
前記微粒子としては、ガラスバルーン、シラスバルーン、及びフライアッシュバルーン等の無機質中空粒子、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、及びフェノール樹脂等からなる有機質中空粒子、ガラスビーズ、シリカビーズ、及び合成雲母等の無機質微粒子、ポリアクリル酸エチル、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリプロピレン等の有機質微粒子が挙げられる。
【0030】
感圧性粘着剤層が微粒子を含有する場合において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部(すなわち、重合性モノマー(a)100質量部)に対する微粒子の量は、感圧性粘着剤層の粘着力を向上させる観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、感圧性粘着剤層の凝集力の低下を抑制する観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
【0031】
本発明において用いる粘着剤組成物は、前述のその他の成分の他に、添加剤として、例えば、可塑剤、軟化剤、顔料、及び染料等を含有してもよい。
【0032】
<感圧性粘着剤層の製造方法>
本発明の感圧性粘着剤層の製造方法は特に制限はないが、重合性モノマー(a)、非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)、発泡剤(C)、及び必要に応じて光重合開始剤や架橋剤等を含む粘着剤組成物に光照射することにより、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を製造しつつ、感圧性粘着剤層を製造することが好ましい。
前記製造方法を具体的に説明すると、まず、1種以上の重合性モノマー(a)、非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)、発泡剤(C)、及び架橋剤や光重合開始剤等をガラス容器等の反応容器に投入し、粘着剤組成物を得る。
次いで、前記粘着剤組成物中の溶存酸素を除去するために、一般に窒素ガス等の不活性ガスを供給して酸素をパージする。そして、粘着剤組成物を剥離紙等の剥離シートからなる基材上に塗布するか、又は、プラスチックフィルム、金属箔、紙、布、不織布等の基材に塗布した後、光を照射し重合することにより感圧性粘着剤層を得ることができる。
前記粘着剤組成物の塗布もしくは含浸から光を照射する工程までは、不活性ガス雰囲気下、又はフィルム等により酸素が遮断された状態で行うことが好ましい。
【0033】
粘着剤組成物に光を照射する際に用いることができるランプとしては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀灯、及びメタルハライドランプ等が挙げられる。これらの中でも、ケミカルランプが好ましい。粘着剤組成物に対して光を照射する際の光照射強度は、光重合開始剤によって異なるが、0.1~100mW/cm2程度が好ましい。
【0034】
<感圧性粘着剤層の厚さ>
感圧性粘着剤層の厚さは、感圧性粘着剤層の粘着力を確保する観点、及び難燃性を向上させる観点から、好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上、更に好ましくは250μm以上であり、感圧性粘着剤層の軽量化の観点、及び難燃性の観点から、好ましくは800μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは350μm以下である。本発明の感圧性粘着剤層は、発泡剤を含有しており、発泡に起因する感圧性粘着剤層の変形により、難燃性が向上すると考えられる。そのため、発泡剤非含有の感圧性粘着剤層と比べ、厚さが薄い場合でも一定の難燃性を確保できる。
【0035】
<感圧性粘着剤層の引張貯蔵弾性率>
本発明の感圧性粘着剤層は、難燃性を向上させる観点から、引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度が、220℃以下であることが好ましく、205℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。一方で、引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度は、その下限値が特に限定されないが、実用的には160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、180℃以上がさらに好ましい。なお、引張貯蔵弾性率は、アイティー計測制御株式会社製の貯蔵弾性率測定装置「DVA-200/L2」により、昇温速度10℃/min、測定周波数10Hzとして測定することができる。
【0036】
<残留モノマー量>
本発明においては、感圧性粘着剤層中に含まれる残留モノマー量は、感圧性粘着剤層の難燃性をより向上させる観点から、感圧性粘着剤層全量に対して、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下、より更に好ましくは0.25質量%以下である。また、残留モノマー量の下限値は、特に限定されないが、0質量%(すなわち、未検出)以上であればよい。
なお、残留モノマー量は、感圧性粘着剤層中に含まれる未反応の重合性モノマー(a)の量を実質的に意味する。なお、残留モノマー量は、測定対象となる試料液に対してガスクロマトグラフ装置で測定を行い、最も配合量(質量)が多い重合性モノマー(a)の主成分基準で予め作成しておいた検量線に基づいて求めることができるが、詳しくは実施例に示すとおりである。
残留モノマー量は、例えば、上記した製造方法で感圧性粘着剤層を製造するとともに、光重合開始剤の使用の有無、光重合開始剤の使用量、紫外線照射条件等を適宜調整することで残留モノマー量を少なくすることが可能であるが、紫外線照射条件を調整することで少なくすることが好ましい。一般的にポリマーは、光照射強度を高くしたり、紫外線照射時間を長くしたりすることで重合が進むが、残留モノマー量を少なくするためには紫外線照射時間を長くするとよい。
【0037】
感圧性粘着剤層は、各種被着体の被着面に対して使用することが可能であり、被着面が粗面であっても良好な粘着性を発現することが可能である。また、車両等に使用される金属板、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂板(ABS板)、及びポリ塩化ビニル板(PVC板)等に対しても優れた粘着性を示し、これらの材料に対しても好適に用いることができる。本発明の感圧性粘着剤層は、厚さが薄い場合でも、一定の難燃性を確保できるため、一般に軽量化が望まれている自動車、航空機等の輸送用分野の内装材であるシート材を被着体として使用することが好ましい。
【0038】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、基材と、基材の少なくとも一方の面に設けられた上記した感圧性粘着剤層とを有するものである。
<基材>
粘着テープに用いられる基材に特に制限はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート等を用いた樹脂クロス、連続気泡構造を有する発泡体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ウレタン等の樹脂材料を用いた透湿性フィルム、含浸紙、コート紙、上質紙、クラフト紙、和紙、合成紙、これらのラミネート品等が挙げられる。中でも、リワーク時に基材の破れを生じにくくする観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)及びポリエチレンテレフタレートクロス(PETクロス)が好ましい。
【0039】
透湿性フィルムは、例えば、KTF(三菱樹脂(株)製)、エスポアール(三井化学(株)製)、ポーラム((株)トクヤマ製)、タピレンMPF(大化工業(株)製)、セルポア(積水フィルム(株)製)、マイクロポーラスフィルム(スリーエムジャパン(株)製)、PORO(フタムラ化学(株)製)、ハイポア(旭化成イーマテリアルズ(株)製)等の市販品として入手可能である。また、機械的にクレーズ処理したものは、例えば、モノトラン((株)ナック販売製)等の市販品として入手可能である。
また、基材は、上記各材料の一方の面を離型処理した剥離シートであってもよく、その場合、粘着剤層を離型処理面上に設けるとよい。
【0040】
さらに、基材の感圧性粘着剤層を設ける面とは反対側の面には、離型層、帯電防止層等が設けられてもよい。また、粘着テープが基材の両面に感圧性粘着剤層が設けられた両面テープの場合には、一方の感圧性粘着剤層の面に離型紙、離型フィルムが積層されてもよい。
また、基材と感圧性粘着剤層との密着性を向上させるために、基材に対して必要に応じてコロナ処理等の表面処理を施してもよい。
基材の厚みは、20μm以上が好ましく、より好ましくは30~100μmである。基材の厚みを20μm以上とすることでリワーク時に破れ等が生じにくくなる。
【0041】
<粘着テープの製造>
本発明の粘着テープは、前述の感圧性粘着剤層の製造方法において説明した方法により製造することができる。具体的には、粘着剤組成物を基材上に塗布した後、前述の条件にて光を照射し重合することにより感圧性粘着剤層を有する粘着テープを得ることができる。本発明の粘着テープは、本発明の感圧性粘着剤層を有するため、被着面が粗面であっても優れた粘着性を有し、更に難燃性に優れるという特性を有する。
【0042】
<構成物>
本発明の構成物は、感圧性粘着剤層とシート材とを備え、感圧性粘着剤層がシート材の表面に設けられているものである。シート材は、一方又は双方の面が凹凸を有してもよい。凹凸を有するシート材としては、編物、織物等の繊維材料が挙げられる。なお、ここでいう凹凸とは、例えば、編構造、織構造等の繊維構造に基づくミクロな凹凸を意味し、例えば、編物、織物から強制的に立ち上げられた部分などは除くものとする。
本発明の感圧性粘着剤層は、上記したように、難燃性が高いため、例えば、構成物全体に難燃性を付与することが可能である。また、感圧性粘着剤層のシート材に対する接着性が良好となって、シート材等の凹凸を有する表面へのアンカー性も向上し、剥離するとき等に生じることのある粘着剤層のアンカー剥がれを防止できる。
【0043】
本構成物は、例えば、上記した粘着テープをシート材に貼り合わせたものであってもよい。この場合、粘着テープの基材が剥離シートであると、剥離シートを剥がして露出した粘着剤層によって、構成物を他の被着体に貼付することが可能になる。また、粘着テープが両面テープの場合にも、構成物を両面テープを介して他の被着体に貼付することが可能である。
構成物において、シート材の厚さは、例えば、0.05~5mmが好ましく、0.01~1.0mmがより好ましい。シート材の厚さは、例えば、シート材をマイクロスコープで観察して、シート材の一方の面から他方の面までの距離の平均値を求めたものである。ただし、上記距離は、一方の面の凸部先端から、他方の面の凸部先端(ただし、平滑面である場合には、平滑面)までの距離を意味する。
【実施例】
【0044】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0045】
〔感圧性接着剤層の厚み〕
感圧性接着剤層の厚みは、ダイヤルゲージ(ミツトヨ製)により測定した。
【0046】
〔残留モノマー量〕
残留モノマー量は、以下の要領で測定した。
(1)検量線の作成
0.001質量%、0.0003質量%、及び0.0001質量%濃度の2-エチルヘキシルアクリレートのアセトン溶液を作成し、ガスクロマトグラフ装置(Agilent 6890A及び7820A)にて下記測定条件で測定を行い、面積を測定した。各濃度溶液の測定面積Hと1mL当たりの2-エチルヘキシルアクリレートの重量Wとから作成された、縦軸をH、横軸をWとした直線を検量線とした。ただし、直線の相関係数が0.99以上とならない場合は再測定し、検量線の作成をやり直した。
(2)試料液の調製
試験管に測定対象としての感圧性接着剤層0.4gと、アセトン10mLとを入れ、室温にて12時間残留モノマーを抽出した。得られた抽出液をバイアル瓶に1mL採取して、オートサンプラーにバイアル瓶をセットした。
(3)残存モノマー量の測定
上記試料液についてガスクロマトグラフ装置(Agilent 6890A及び7820A)を用いて下記測定条件で測定を行い、測定面積と検量線とから残留モノマー重量Wを求め、下記式より未反応の残留モノマーの質量%を算出した。
(残留モノマー重量)÷(1mL当たりのサンプル重量)×100
(4)測定条件
カラム充填剤:ポリシロキサンポリマー(Agilent Technorogies社製DB-624)
担体:Chromosorb W カラムサイズ:180μm×20m
検出器:FID(水素炎イオン化検出器) キャリアーガス:ヘリウム
キャリアーガス流量:1mL/分 カラム温度:260℃
注入口温度:250℃
【0047】
〔燃焼試験〕
実施例及び比較例で得られた粘着テープを30cm×7cmにカットした後、シート材である厚さ300μm、30cm×5cmのペット繊維フィルムに貼付し巾5cmの金属枠に装着する。次いで、PETフィルムを剥がしたものを試験片とした。該試験片を、米国連邦航空局耐火性基準であるFAR25.853(a)に準拠して燃焼試験を行なった。具体的には、3.8cmの炎を12秒間接炎し、燃焼距離を測定するという方法で燃焼試験を行った。自己消火をしたものと○、末端まで完全燃焼したものを×として評価した。
【0048】
<実施例1>
表1に記載の配合にしたがって、重合性モノマー(a)、難燃剤、架橋剤、微粒子、光重合開始剤、及び発泡剤を混合することにより粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物に窒素をパージして溶存酸素を除去した。
次いで、離型処理した50μm厚のPETフィルム上に厚さ0.5mmのスペーサーを設置し、前記粘着剤組成物を前記PETフィルム上に塗布し、このPETフィルムを折り曲げて離型処理面が粘着剤組成物に接するように被覆した。
この状態で被覆側のPETフィルムにおける紫外線照射強度が5mW/cm2となるようにケミカルランプのランプ強度を調整し、10分間紫外線を照射することにより、PETフィルム上に感圧性粘着剤層を有する粘着テープを得た。感圧性粘着剤層の厚さは300μmであった。
【0049】
<実施例2~3、比較例1~2>
表1に記載の配合にしたがって粘着剤組成物を調製し、かつ表中の残留モノマーとなるように紫外線照射時間、紫外線強度を調整した以外は、実施例1と同様に感圧性粘着剤層を得た。
【0050】
なお、実施例及び比較例で使用した材料は以下のとおりであある。
重合性モノマー(a-1):三井化学株式会社製、2-エチルヘキシルアクリレート
重合性モノマー(a-2):三井化学株式会社製、アクリル酸
難燃剤(B):大八化学工業株式会社製、CR-741(ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート)
架橋剤:液状水素化1,2-ポリブタジエンジアクリレート、日本曹達株式会社製、TEAI-1000
微粒子:ガラスバルーン、3Mジャパン株式会社製、グラスバブルズK-25(D50:55μm)
光重合開始剤:2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、BASF製、イルガキュア651
発泡剤:永和化成工業(株)、ビニホールAC-K3-TA(アゾジカルボンアミド)、分解温度:210℃
【0051】
【0052】
実施例の結果から明らかなように、本発明の感熱性粘着剤層は、層の厚みが300μm程度と比較的薄いにも関わらず、燃焼試験において優れた難燃性を有することが分かった。それに対して、発泡剤を含まない場合、及び発泡剤の含有量が多い比較例1、2では、難燃性に劣ることがわかった。