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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/34 20060101AFI20220208BHJP
   E06B 1/30 20060101ALI20220208BHJP
   E06B 1/52 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
E06B1/34 Z
E06B1/30
E06B1/52
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017099534
(22)【出願日】2017-05-19
(65)【公開番号】P2018193801
(43)【公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】田中 尊行
(72)【発明者】
【氏名】大前 貴義
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-307572(JP,A)
【文献】特開2015-151822(JP,A)
【文献】実開平05-032678(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第105201333(CN,A)
【文献】特開昭61-142281(JP,A)
【文献】特開平09-060426(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01167975(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/34
E06B 1/30
E06B 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に固定される枠体と、
前記枠体に蝶番を介して開閉可能に取り付けられる障子と、
を備える建具であって、
前記枠体のうち吊元側に位置する樹脂製の吊元側縦枠と、
前記吊元側縦枠に締結部材により固定され、前記吊元側縦枠の屋外側を覆う吊元側金属カバーと、
を備え、
前記締結部材は、平面視において少なくともその1つが前記吊元側縦枠の見付面における左右方向の前記蝶番が固定される前記吊元側縦枠の見込面側で締結され
前記吊元側縦枠は、中空部を有し、前記中空部には前記締結部材を固定するための板状の固定部材が配置される建具。
【請求項2】
前記吊元側金属カバーは、
前記締結部材により前記吊元側縦枠に固定される金属製の第1カバー部材と、
前記締結部材が締結された部分を覆うように前記第1カバー部材に固定される金属製の第2カバー部材と、
を有する請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記吊元側縦枠の前記吊元側金属カバーに対向する部位と、前記吊元側金属カバーの前記吊元側縦枠に対向する部位と、がいずれも平面に形成される請求項1又は2に記載の建具。
【請求項4】
前記固定部材は、前記吊元側縦枠の補強芯材である請求項1から3の何れかに記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体と障子を備える建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建具の枠体に樹脂材料を用いたものが知られている。この種の建具を開示するものとして例えば特許文献1がある。特許文献1には、ほぼフラットな基枠の両側部から中央部の適宜位置まで被う一対の略L字形被覆部材と、それぞれの被覆部材の外側壁に長さ方向に設けられた係止突条と、この係止突条に対応する係止溝を両側壁に設けたチャンネル形戸当りから成る開き戸枠の合成樹脂枠体について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平7-21983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、外観意匠や耐候性の向上等の観点から、樹脂製の枠体に対して金属製のカバーを取り付ける場合がある。樹脂製の枠体に対して金属製のカバーを固定する方法としては、嵌合構造を利用することが考えられる。しかし、樹脂と金属では外力に対する変位量が異なる。そのため、樹脂製の枠体と金属製のカバーを単純に組み付けただけでは、障子の開閉動作で伝わる力によって枠体とカバーがそれぞれ異なる変位量で変形し、枠体とカバーの接触部分で擦れが生じて異音が発生するおそれがあった。
【0005】
本発明は、障子の開閉時に樹脂製の枠体と金属製のカバーの変位量の違いに起因して生じる異音の発生を効果的に防止できる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、躯体(例えば、後述の躯体3)に固定される枠体(例えば、後述の枠体10)と、前記枠体に蝶番(例えば、後述の蝶番6)を介して開閉可能に取り付けられる障子(例えば、後述の戸体20)と、を備える建具(例えば、後述の建具1)であって、前記枠体のうち吊元側に位置する樹脂製の吊元側縦枠(例えば、後述の吊元側縦枠12)と、前記吊元側縦枠に締結部材(例えば、後述のカバーネジ95)により固定され、前記吊元側縦枠の屋外側を覆う吊元側金属カバー(例えば、後述の吊元側金属カバー52)と、を備える建具に関する。
【0007】
前記締結部材は、前記吊元側縦枠の見付面(例えば、後述の見付面121a)に締結されることが好ましい。
【0008】
前記締結部材は、少なくともその1つが前記見付面における前記蝶番側で締結されることが好ましい。
【0009】
前記吊元側金属カバーは、前記締結部材により前記吊元側縦枠に固定される金属製の第1カバー部材(例えば、後述の第1カバー部材521)と、前記締結部材が締結された部分を覆うように前記第1カバー部材に固定される金属製の第2カバー部材(例えば、後述の第2カバー部材522)と、を有することが好ましい。
【0010】
前記吊元側縦枠の前記吊元側金属カバーに対向する部位(例えば、後述の見付面121a)と、前記吊元側金属カバーの前記吊元側縦枠に対向する部位(例えば、後述の見付面521f)と、がいずれも平面に形成されることが好ましい。
【0011】
前記吊元側縦枠は、中空部(例えば、後述の中空部12a)を有し、前記中空部には前記締結部材を固定するための金属製の固定部材(例えば、後述の補強芯材123、L字裏板152)が配置されることが好ましい。
【0012】
前記固定部材は、前記吊元側縦枠の補強芯材(例えば、後述の補強芯材123)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の建具によれば、障子の開閉時に樹脂製の枠体と金属製のカバーの変位量の違いに起因して生じる異音の発生を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る建具の正面図である。
図2】本実施形態の建具の縦断面図である。
図3】本実施形態の建具の横断面図である。
図4】本実施形態の吊元側縦枠及びその周囲を示す拡大横断面図である。
図5】本実施形態の第2カバー部材が取り付けられる前の第1カバー部材を模式的に示す拡大正面図である。
図6】本実施形態の戸先側縦枠及びその周囲を示す拡大横断面図である。
図7】変形例の吊元側縦枠及びその周囲を示す拡大横断面図である。
図8】変形例の戸先側縦枠及びその周囲を示す拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する図1は、本発明の一実施形態に係る建具1の正面図である。図1では、建具1を屋外側から見た様子が示されている。図2は、本実施形態の建具1の縦断面図であり、図1のA-A線断面図である。図3は、本実施形態の建具1の横断面図であり、図1のB-B線断面図である。
【0016】
まず、建具1の全体構成について説明する。図1に示すように、建具1は、躯体3に固定される枠体10と、枠体10の屋外側を覆う金属製カバー50と、枠体10に開閉可能に取り付けられる戸体(障子)20と、枠体10に対する戸体20の開閉速度を調整するドアクローザ7と、を備える玄関ドアである。
【0017】
枠体10は、上枠11、吊元側縦枠12、戸先側縦枠13及び下枠14が矩形に枠組みされて構成される。図2及び図3に示すように、金属製カバー50は、上枠11に固定される上金属カバー51と、吊元側縦枠12に固定される吊元側金属カバー52と、戸先側縦枠13に固定される戸先側金属カバー53と、を備える。
【0018】
戸体20は、吊元側縦枠12に複数配置される蝶番6によって吊り込まれる。蝶番6は、吊元側縦枠12の見込面12fに固定される枠側羽根部61と、戸体20の吊元側端面に固定される戸体側羽根部63と、を備える(図4参照)。戸体20は、蝶番6を回転軸として閉鎖位置と開放位置の間で回転可能になっている。
【0019】
戸体20には、ドアハンドル101、上側錠102、下側錠103、リーダー104、制御ユニット(図示省略)等の機能部品が取り付けられる。ドアハンドル101は、ラッチ機構によって戸体20を開閉する。リーダー104は、カードキー等の電子錠に対応する電子部品であり、制御ユニットに電気的に接続される。
【0020】
ドアクローザ7は、戸体20の屋内側に配置される。ドアクローザ7は、戸体20上部に固定されており、リンク部材8を介して上枠11の屋内側に接続されている。
【0021】
まず、下枠14の構成について説明する。図2に示すように、下枠14は、屋外側金属部141と、屋内側金属部142と、ブリッジ143と、金属製下カバー144と、を備える。
【0022】
屋外側金属部141は、アルミニウム合金等の金属材料の押出形材により構成され、下枠14の屋外側に位置する。屋外側金属部141の屋内側にはブリッジ143を嵌合するための嵌合部141aが形成される。
【0023】
屋内側金属部142は、アルミニウム合金等の金属材料の押出形材により構成され、下枠14の屋内側に位置する。屋内側金属部142の屋外側にはブリッジ143を嵌合するための嵌合部142aが形成される。
【0024】
屋内側金属部142は、その屋内側で上方に立ち上がる立ち上がり部146が形成される。立ち上がり部146は、その上部にゴム製の保護材147を嵌合する保護材嵌合部146aが形成される。保護材147は、屋内側金属部142の損傷を防止するとともに結露を防止する。保護材147の上面は、その高さが屋内側のフロア9の高さに略一致するようになっている。また、立ち上がり部146における屋外側を向く部位には、気密材148を嵌合する気密材嵌合部146bが形成される。
【0025】
ブリッジ143は、樹脂又はゴム等の断熱性を有する材料によって構成される。ブリッジ143は、その屋外側が屋外側金属部141の嵌合部141aに嵌合されるとともに、屋内側が屋内側金属部142の嵌合部142aに嵌合される。このブリッジ143によって屋外側金属部141と屋内側金属部142が連結される。
【0026】
金属製下カバー144は、ステンレス鋼板等からなるカバーである。金属製下カバー144は、屋外側金属部141にビス145を介して固定される。金属製下カバー144によって屋外側金属部141の上面、屋外側の見付面及び下面の一部が覆われる。本実施形態の金属製下カバー144は、屋外側金属部141の上面を覆う部分がブリッジ143の上部まで延出している。そして、気密材148は、戸体20が開放位置にある状態では金属製下カバー144に覆われていないブリッジ143の一部を覆う配置となっている。
【0027】
上枠11の構成について説明する。上枠11は、側面視において上下方向に延びる屋外側部111と、見込方向に延びる屋内側部112と、が樹脂によって一体的に成形される。
【0028】
また、上枠11は、複数の中空部11a,11b,11c,11dを有する。中空部11aは、屋外側部111の上部に位置し、中空部11bは屋外側部111の下部に位置する。中空部11cは、中空部11bの屋内側であって屋内側部112の内側に位置する。中空部11dは、中空部11cの屋内側であって屋内側部112の屋内側端部に位置する。中空部11bには断熱材113が配置され、中空部11cには断熱材114が配置される。中空部11bは中空部11cよりも大きな空間となっており、断熱材113も断熱材114に比べて大きな形状のものが配置される。
【0029】
屋内側部112の下面には、下方に延び出るとともに気密材116を嵌合可能な延出片115が形成される。また、延出片115の屋内側には躯体ネジ90が屋内側部112を下から上に貫通して躯体3に締結されている。躯体ネジ90は、中空部11dを貫通して躯体3に達している。
【0030】
屋外側部111の屋外側の見付面には、上金属カバー51を嵌合可能な嵌合部111aが形成される。また、屋外側部111の上部には、躯体3に沿って上方向に延び出る延出片111bが形成される。
【0031】
上金属カバー51は、上枠11の屋内側の見付面及び上面を覆う金属カバーである。上金属カバー51は、上枠11の嵌合部111aに嵌合するカバー嵌合部51aと、上枠11の延出片111bに沿って延びるカバー延出片51bと、を備える。上金属カバー51は、嵌合部111aにカバー嵌合部51aが嵌合した状態で、カバー延出片51bが上枠11の延出片111bに見込方向で重なる。カバー延出片51b及び延出片111bが躯体ネジ91により躯体3に共締めされる。
【0032】
次に、吊元側縦枠12及び吊元側金属カバー52の構成について説明する。図4は、本実施形態の吊元側縦枠12及びその周囲を示す拡大横断面図である。
【0033】
図4に示すように、吊元側縦枠12は、平面視において左右方向に延びる屋外側部121と、見込方向に延びる屋内側部122と、が樹脂によって一体的に成形される。本実施形態の吊元側縦枠12は、その一部が屋外側に位置する構成となっている。屋外側部121の右側には戸体20が位置し、左側には壁4が位置する。
【0034】
また、吊元側縦枠12は、複数の中空部12a,12b,12c,12d,12eを有する。屋外側部121の内部には、壁4側から戸体20側に中空部12a,中空部12bが左右方向で並んでいる。一方、屋内側部122の内部には、屋外側から屋内側に中空部12c,中空部12d,中空部12eが見込方向で並んでいる。中空部12cは、屋外側部121の中空部12bと見込方向で隣り合っている。従って、吊元側縦枠12全体では、見込方向で屋外側から屋内側の順に中空部12b,中空部12c,中空部12d,中空部12eが並んでおり、4つの空間に区画されている。
【0035】
中空部12aには、吊元側縦枠12の長手方向に沿って延びる補強芯材123が配置される。補強芯材123は、その断面形状が略コ字状に形成されており、コの字の開口側が戸体20側を向くように中空部12aに配置される。即ち、補強芯材123は、中空部12a内で壁4側に位置するとともに蝶番6側を向く面を有する第1片123aと、中空部12a内で見込方向屋内側に位置する第2片123bと、中空部12a内で見込方向屋外側に位置する第3片123cと、を有する。
【0036】
中空部12bには、補強芯材151と、L字裏板152と、断熱材161と、が配置される。
【0037】
補強芯材151は、吊元側縦枠12の長手方向に沿って延びるように形成される。補強芯材151は、その断面形状が略コ字状に形成されており、コの字の開口側が屋外側を向くように中空部12bに配置される。即ち、補強芯材151は、中空部12b内で戸体20(後述の蝶番6の枠側羽根部61)側に位置する戸体側片151aと、中空部12b内で壁4側に位置する壁側片151bと、中空部12b内で見込方向屋内側に位置する屋内側片151cと、を有する。
【0038】
L字裏板152は、補強芯材151の壁側片151bの先端に配置される。L字裏板152は、一方の片が壁側片151bの壁側面に対向するとともに、もう一方の片が見込方向で屋外側を向くように配置される。そして、見込方向で屋外側を向く片は、後述するカバーネジ95が締結される部分として機能する。
【0039】
本実施形態では、L字裏板152は、後述する吊元側金属カバー52の第1カバー部材521とL字裏板152によって屋外側部121を見込方向で挟み込み、強度部材としても機能する。また、L字状に形成されているので、壁側片151bに対するL字裏板152の位置決めを容易かつ適切に行うことができる。なお、L字裏板152は、吊元側縦枠12の長手方向に通しで形成されてもよいし、蝶番6の位置(カバーネジ95の締結箇所)に応じて間欠的に複数の部材が配置される構成としてもよい。
【0040】
断熱材161は、補強芯材151の内側に配置される。断熱材161は、吊元側縦枠12の長手方向に沿って延びるように形成される。本実施形態では、断熱材161は、L字裏板152と補強芯材151に挟み込まれる配置となっている。
【0041】
また、吊元側縦枠12の中空部12bには、蝶番6の枠側羽根部61を固定するためのネジ等の締結部材(図示省略)が固定される裏板62が配置される。裏板62は、蝶番6の位置に応じて長手方向に間隔をあけて複数配置される。
【0042】
また、屋外側部121の見付面121aには凹部126が長手方向に間欠的に形成されており、この凹部126には隙間調整材127が配置される。屋外側部121の壁4側には、躯体3の見付面に沿って延びる延出片131が形成される。
【0043】
次に、屋内側部122の構成について説明する。屋内側部122は、見込方向で屋外側部121に対して屋内側に位置する。屋外側部121と屋内側部122は、戸体20側の側面が面一となっており、吊元側縦枠12の見込面12fを形成する。
【0044】
中空部12cには断熱材162が配置され、中空部12dには断熱材163が配置される。中空部12c及び中空部12dは、何れも中空部12bよりも小さい空間となっており、断熱材162,163も断熱材161に比べてサイズの小さなものが用いられる。また、見込面12fにおける中空部12cに隣接する部分には戸体に当接する当接部128が固定される。
【0045】
中空部12eには躯体ネジ98を挿通するための補助部材99が配置される。屋内側部122の見込面12fから躯体ネジ98が挿通され、補助部材99の内側を通って躯体3に締結される。これによって屋内側部122が躯体3に対して機械的に固定される。また、見込面12fにおける中空部12dに隣接する部分には、左右方向に延出する延出片122aが設けられ、この延出片122aには気密材129が配置される。
【0046】
吊元側金属カバー52は、屋外側部121の見付面121aを覆うように配置される。本実施形態の吊元側金属カバー52は、吊元側縦枠12に固定される第1カバー部材521と、第1カバー部材521に固定される第2カバー部材522と、によって構成される。
【0047】
第1カバー部材521は、屋外側部121の見付面521fを覆うとともに屋外側部121の壁4側の側面を覆うように形成される。第1カバー部材521の壁4側の屋内側端部には、屋外側部121の延出片131に沿って延びるカバー側延出片521dが形成される。
【0048】
第1カバー部材521の見付面521fには、第2カバー部材522を嵌合するための左右一対の嵌合部521a,521bが設けられる。嵌合部521a,521bは、何れも上下方向で連続的に延びる形状となっている。
【0049】
第1カバー部材521は、複数のカバーネジ95によって吊元側縦枠12に機械的に固定される。吊元側縦枠12の見付面121aに第1カバー部材521を配置した状態で、カバーネジ95を左右方向で2箇所締結する。
【0050】
左右方向で壁4側に締結されたカバーネジ95aは、第1カバー部材521の締結孔521gを通じて屋外側部121を貫通した後、中空部12a内で補強芯材123に締結される。本実施形態では、屋外側部121の見付面121aは、第1カバー部材521と補強芯材123によって見込方向で挟み込まれた状態となり、補強芯材123はカバーネジ95を固定するための固定部材として機能するとともに強度部材として機能する。
【0051】
左右方向で戸体20側に締結されたカバーネジ95bは、第1カバー部材521の締結孔521hを通じて屋外側部121を貫通した後、中空部12b内でL字裏板152に締結される。L字裏板152には、ネジ溝152aが形成されており、このネジ溝152aにより十分な締め付け長さが確保される。
【0052】
また、中空部12a内の補強芯材123は、屋外側部121とともに躯体ネジ96によって躯体3側に締結固定される。補強芯材123の第2片123bには、躯体ネジ96を締結するためのネジ孔123eが形成される。ネジ孔123eを通じて躯体ネジ96は躯体3に達し、躯体3に補強芯材123を締結する。
【0053】
図5を参照してネジ孔123eを通じた躯体3への躯体ネジ96の締結方法について説明する。図5は、本実施形態の第2カバー部材522が取り付けられる前の第1カバー部材521を模式的に示す拡大正面図であり、図4のC-C線断面図である。なお、図5では第2カバー部材522等、他の部材の図示が省略されている。
【0054】
本実施形態では、第1カバー部材521の屋外側の面には、補強芯材123の第2片123bに形成されるネジ孔123eに対応する位置に締結用孔521cが形成される。また、吊元側縦枠12の屋内側部122における締結用孔521cに対応する位置にも締結用孔121bが形成される。更に、補強芯材123の第3片123cにも締結用孔521cに対応する位置に締結用孔123dが形成される。これらの3箇所の締結用孔521c,121b,123dは、何れもネジ孔123eに見込方向で対応する位置に円形に形成される。
【0055】
締結用孔521c,121b,123dは、その大きさがネジ孔123eよりも大きくかつ躯体ネジ96及び工具を差し込み可能に構成される。なお、本実施形態では、第1カバー部材521の締結用孔521cよりも補強芯材123の締結用孔123dの方が大きな形状に形成されているが、締結用孔521c,121b,123dの大小関係が限定されるわけではない。
【0056】
各部材に形成される締結用孔521c,121b,123dにより、吊元側縦枠12の中空部12aに補強芯材123が挿入されるとともに第1カバー部材521が取り付けられた状態でも、補強芯材123の第2片123bのネジ孔123eへの躯体ネジ96の締結が可能になっている。締結用孔521c,121b,123dを通じてドライバー等の工具(図示省略)を差し込み、躯体ネジ96をネジ孔123eに締結する作業を行う。この作業により、躯体ネジ96は躯体3まで達し、躯体ネジ96を介して補強芯材123及び吊元側縦枠12が躯体3に固定される。
【0057】
また、図4に示すように、第1カバー部材521は、そのカバー側延出片521dが屋外側部121の延出片131とともに躯体ネジ97により躯体3に締結される。第1カバー部材521が吊元側縦枠12に固定された状態で、第2カバー部材522が第1カバー部材521に固定される。また、第2カバー部材522の躯体ネジ97の締結箇所には防水シート523が配置される。なお、躯体ネジ96,97は、何れも長手方向に複数個所締結される。
【0058】
第2カバー部材522は、第1カバー部材521の嵌合部521aに嵌合する嵌合部522aと、嵌合部521bに嵌合する嵌合部522bと、を備える。第2カバー部材522は、その嵌合部522a,522bが第1カバー部材521の嵌合部522a,522bに嵌合した状態で、第1カバー部材521の見付面521fを覆う状態となる。これによってカバーネジ95の頭部が第2カバー部材522によって隠される状態となる。
【0059】
本実施形態の第2カバー部材522は、その戸体20側に屋外側部121の見付面121aに沿って延びる延出片522cを備える。延出片522cの先端部522dは、吊元側縦枠12の見込面12fよりも左右方向壁4側に位置している。これにより、蝶番6の枠側羽根部61との干渉が避けられる。
【0060】
また、延出片522cの先端部522dは、見込方向屋内側を向くように曲がっており、見込方向屋内側を向いている。即ち、延出片522cの先端部522dは、吊元側縦枠12の見付面121aに対向する状態となっている。また、延出片522cの基端側では、吊元側縦枠12の見付面121aとの間で見込方向の隙間が形成される。なお、本実施形態では、先端部522dの外側面は曲面になっている。
【0061】
図6は、本実施形態の戸先側縦枠13及びその周囲を示す拡大横断面図である。本実施形態の戸先側縦枠13及び戸先側金属カバー53は、吊元側縦枠12及び吊元側金属カバー52と左右対称の形状であり、略同様の構成となっている。戸先側縦枠13及び戸先側金属カバー53において、吊元側縦枠12及び吊元側金属カバー52と共通又は同様の構成には同じ符号を付してその説明を省略する。例えば、戸先側縦枠13の中空部12bには、蝶番6を固定するための裏板62がない点や、戸先側縦枠13の延出片122aに支持される気密材139の形状等が吊元側縦枠12と異なっている。
【0062】
以上説明してきた上記実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
躯体3に固定される枠体10と、枠体10に蝶番6を介して開閉可能に取り付けられる戸体(障子)20と、を備える建具1であって、枠体10のうち、吊元側に位置する樹脂製の吊元側縦枠12と、吊元側縦枠12にネジ(締結部材)95により固定され、吊元側縦枠12の屋外側を覆う吊元側金属カバー52と、を備える。
【0063】
これにより、吊元側金属カバー52が樹脂製の吊元側縦枠12にカバーネジ95によって強固に機械的に固定されるので、戸体20の開閉動作によって蝶番6を介して吊元側縦枠12に外力が加わっても、吊元側縦枠12と吊元側金属カバー52の接合部分が擦れることに起因する異音の発生を効果的に防止できる。これによって、樹脂製の吊元側縦枠12の屋外側を覆う吊元側金属カバー52によって外観意匠性及び耐候性を向上させつつ、樹脂と金属の材料の違いによる異音の問題を解決できる。
本実施形態のようにドアクローザ7を備える構成では、ユーザがドアクローザ7に設定されている速度よりも早く戸体20を開け閉めした場合、吊元側縦枠12にドアクローザ7から大きな力が加わる場合がある。このような場合であっても、吊元側金属カバー52が吊元側縦枠12に強固に固定されているので、異音の発生を確実に防止できる。
【0064】
また、本実施形態では、締結部材としてのカバーネジ95は、吊元側縦枠12の見付面121aに締結される。
【0065】
これにより、吊元側縦枠12の見付方向の変位に対して吊元側金属カバー52をより強固に固定することができる。従って、吊元側縦枠12と吊元側金属カバー52の見付方向の変位量のずれによって吊元側縦枠12と吊元側金属カバー52が擦れて異音が発生する事態をより効果的に防止できる。
【0066】
また、本実施形態では、複数のカバーネジ95のうち、カバーネジ95aが吊元側縦枠12の見付面121aにおける蝶番6(蝶番6近傍)側で締結される。
【0067】
これにより、戸体20から力が伝達される蝶番6側がより強固に固定されるので、吊元側縦枠12と吊元側金属カバー52の見付方向でのずれをより効果的に防いで、異音をより発生し難い状態にすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、吊元側金属カバー52は、カバーネジ95により吊元側縦枠12に固定される金属製の第1カバー部材521と、カバーネジ95が締結された部分を覆うように第1カバー部材521に固定される金属製の第2カバー部材522と、を有する。
【0069】
これにより、カバーネジ95の頭部を第2カバー部材522によって隠して外観意匠性をより向上させることができる。第1カバー部材521と第2カバー部材522の間には樹脂と金属のような変位量の違いがないので、外観意匠性の向上と異音の防止を実現できる。
【0070】
また、本実施形態では、吊元側縦枠12の吊元側金属カバー52に対向する部位である見付面121aと、吊元側金属カバー52の吊元側縦枠12に対向する部位である見付面521fと、がいずれも平面に形成される。
【0071】
これにより、吊元側縦枠12と吊元側金属カバー52が線接触や点接触するような構造に比べて接触部分における力が分散されるので、異音の発生をより防止することができる。
【0072】
また、本実施形態では、吊元側縦枠12は、中空部12aを有し、中空部12aにはカバーネジ95aを固定するための金属製の補強芯材123が配置され、中空部12bには金属製のL字裏板152が配置される。
【0073】
これにより、補強芯材123によってカバーネジ95aが吊元側縦枠12により強固に固定されるとともにL字裏板152によってカバーネジ95bが強固に固定される。
本実施形態では金属製の第1カバー部材521と補強芯材123又は第1カバー部材521とL字裏板152によって樹脂性の吊元側縦枠12が見込方向で挟み込まれることになり、剛性が効果的に向上する構成となっている。
【0074】
また、本実施形態では、補強芯材123が、カバーネジ95aを固定する固定部材として機能する。
【0075】
これにより、カバーネジ95aを強固に固定する構造と吊元側縦枠12の剛性を向上させる部品を共用することができ、吊元側縦枠12の強度向上とともに異音のより効果的な防止を実現できる。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0077】
図7及び図8を参照して上記実施形態の変形例について説明する。図7は、変形例の吊元側縦枠212及びその周囲を示す拡大横断面図である。図8は、変形例の戸先側縦枠213及びその周囲を示す拡大横断面図である。なお、上記実施形態と共通及び同様の構成には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0078】
図7及び図8に示すように、吊元側縦枠212及び戸先側縦枠213のそれぞれの中空部12aから補強芯材123及び躯体ネジ96を省略する構成とすることもできる。また、上記実施形態と変形例を組み合せることもできる。例えば、上記実施形態の図4に示すように、吊元側縦枠12には補強芯材123及び躯体ネジ96が配置される一方、図8の変形例に示すように、戸先側縦枠213は補強芯材123及び躯体ネジ96がない構成とすることもできる。
【0079】
上記実施形態では、補強芯材123が吊元側縦枠12の長手方向に通しで配置される構成であるが、この構成に限定されない。例えば、蝶番6の位置に対応して複数の部材を間欠的に配置するように、補強芯材123を構成することもできる。
【0080】
上記実施形態では、蝶番6側の中空部12bに配置される補強芯材151とL字裏板152が別体である例を説明したが、この構成に限定されない。例えば、補強芯材151とL字裏板152を一体的な部材として形成することもできる。即ち、蝶番6側のカバーネジ(締結部材)95が締結される固定部材が補強芯材である構成としてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 建具
3 躯体
6 蝶番
10 枠体
12 吊元側縦枠
20 戸体(障子)
52 吊元側金属カバー
95 カバーネジ(締結部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8