(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 33/16 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
H02K33/16 A
(21)【出願番号】P 2017128804
(22)【出願日】2017-06-30
【審査請求日】2020-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】土橋 将生
(72)【発明者】
【氏名】武田 正
(72)【発明者】
【氏名】北原 裕士
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-097747(JP,A)
【文献】特開昭61-210854(JP,A)
【文献】特開2016-127789(JP,A)
【文献】特開2017-060207(JP,A)
【文献】特開2014-107996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
可動体と、
前記可動体と前記支持体とに接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、
前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路と、
を有し、
前記磁気駆動回路は、前記支持体および前記可動体のうちの一方側部材に設けられたコイルと、前記支持体および前記可動体のうちの他方側部材に設けられて前記コイルに第1方向で対向する第1磁石と、を備え、前記可動体を前記第1方向に対して交差する第2方向に駆動し、
前記他方側部材は、前記コイルに対して前記第1方向の一方側で対向する第1板部を備えた第1ヨークと、前記コイルに対して前記第1方向の他方側で対向する第2板部を備えた第2ヨークと、を有し、
前記第1磁石は、前記第1板部の前記コイルと対向する面、および前記第2板部の前記コイルと対向する面の一方に固定されており、
前記第1ヨークは、前記第1板部から前記第1方向の他方側に向けて前記第2ヨークと重なる位置まで延在して前記第2ヨークと連結された第1連結板部と、前記第1磁石に対して前記第1連結板部とは反対側で前記第1板部から前記第1方向の他方側に向けて前記第2ヨークと重なる位置まで延在して前記第2ヨークと連結された第2連結板部と、を備え
、
前記コイルは、ホルダに保持され、
前記第1連結板部は、前記可動体が前記第2方向の一方側に移動した際に前記ホルダと当接して前記可動体の前記第2方向の一方側への可動範囲を規制する第1ストッパを構成し、
前記第2連結板部は、前記可動体が前記第2方向の他方側に移動した際に前記ホルダと当接して前記可動体の前記第2方向の他方側への可動範囲を規制する第2ストッパを構成していることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1連結板部および前記第2連結板部は各々、前記第1板部で互いに反対側に位置する端部から前記第1方向の他方側に向けて折れ曲がっていることを特徴とする請求項1
に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記磁気駆動回路は、前記第1板部の前記コイルと対向する面、および前記第2板部の前記コイルと対向する面の他方に固定された第2磁石を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記第1連結板部および前記第2連結板部は、溶接により前記第2ヨークと連結されていることを特徴とする請求項1から3までの何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記第1連結板部の前記第1方向の他方側の端部は、前記第2板部の第1側面に重なって前記第1連結板部と前記第2ヨークの前記第1側面とが溶接され、
前記第2連結板部の前記第1方向の他方側の端部は、前記第2板部の第2側面に重なって前記第2連結板部と前記第2ヨークの前記第2側面とが溶接されていることを特徴とする請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記第1連結板部の前記第1方向の他方側の端部、および前記第1側面のうちの一方には、他方に形成された凹部に嵌って溶接された凸部が形成され、
前記第2連結板部の前記第1方向の他方側の端部、および前記第2側面のうちの一方には、他方に形成された凹部に嵌って溶接された凸部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第1連結板部は、前記コイルに対して前記第2方向の一方側を通って前記第1方向の他方側に向けて延在し、
前記第2連結板部は、前記コイルに対して前記第2方向の他方側を通って前記第1方向の他方側に向けて延在していることを特徴とする請求項1から6までの何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記ホルダには、前記第1連結板部および前記第2連結板部を前記第1方向の一方側から他方側に向けて貫通させる開口部が形成されていることを特徴とする
請求項1から7までの何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記一方側部材は前記支持体であり、
前記他方側部材は前記可動体であり、
前記支持体は、前記ホルダに対して前記第1方向で端部同士が重なったカバー部材を備えていることを特徴とする
請求項1から8までの何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記ホルダおよび前記カバー部材には、一方から他方に向けて突出して前記他方に形成された位置決め用の穴に嵌る位置決め用の凸部が形成されていることを特徴とする請求項9に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記接続体として、粘弾性部材が用いられていることを特徴とする請求項1から
10までの何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項12】
前記接続体として、前記粘弾性部材のみが用いられていることを特徴とする請求項
11に記載のアクチュエータ。
【請求項13】
前記粘弾性部材は、前記可動体および前記支持体の双方に固定されていることを特徴とする請求項
11または12に記載のアクチュエータ。
【請求項14】
前記粘弾性部材は、ゲル状部材であることを特徴とする請求項
11から13までの何れ
か一項に記載のアクチュエータ。
【請求項15】
前記ゲル状部材は、シリコーン系ゲルであることを特徴とする請求項
14に記載のアクチュエータ。
【請求項16】
前記粘弾性部材は、前記第1方向で前記支持体と前記可動体とが対向する部分に位置に配置されていることを特徴とする請求項
11から15までの何れか一項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種振動を発生させるアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気駆動機構によって振動を発生させる機器として、第1方向で対向するコイルおよび磁石を備えた磁気駆動回路によって可動体を支持体に対して第1方向に対して交差する第2方向に振動させるアクチュエータが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のアクチュエータにおいて、支持体に設けられたヨークは、第1板部と第2板部が対向するようにU字形状の折り曲げられた一体の磁性板からなり、第1板部の第2板部側の面、および第2板部の第1板部側の面の各々に永久磁石が保持されている。また、第1板部に保持された磁石と、第2板部側に保持された磁石との間には、可動体に保持されたコイルが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のアクチュエータのように、U字形状に折り曲げたヨークでは、第1板部の第2板部と対向する面、あるいは第2板部の第1板部と対向する磁石を固定するのに多大な手間がかかる等、第1板部および第2板部において互いに対向する面に磁石が固定されたヨークを効率よく製作することが困難である。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、第1板部および第2板部において対向する面に磁石が固定されたヨークを効率よく製作することのできるアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明を適用したアクチュエータは、支持体と、可動体と、前記可動体と前記支持体とに接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路と、を有し、前記磁気駆動回路は、前記支持体および前記可動体のうちの一方側部材に設けられたコイルと、前記支持体および前記可動体のうちの他方側部材に設けられて前記コイルに第1方向で対向する第1磁石と、を備え、前記可動体を前記第1方向に対して交差する第2方向に駆動し、前記他方側部材は、前記コイルに対して前記第1方向の一方側で対向する第1板部を備えた第1ヨークと、前記コイルに対して前記第1方向の他方側で対向する第2板部を備えた第2ヨークと、を有し、前記第1磁石は、前記第1板部の前記コイルと対向する面、および前記第2板部の前記コイルと対向する面の一方に固定されており、前記第1ヨークは、前記第1板部から前記第1方向の他方側に向けて前記第2ヨークと重なる位置まで延在して前記第2ヨークと連結された第1連結板部と、前記第1磁石に対して前記第1連結板部とは反対側で前記第1板部から前記第1方向の他方側に向けて前記第2ヨークと重なる位置まで延在して前記第2ヨークと連結された第2連結板部と、を備え、前記コイルは、ホルダに保持され、前記第1連結板部は、前記可動体が前記第2方向の一方側に移動した際に前記ホルダと当接して前記可動体の前記第2方向の一方側への可動範囲を規制する第1ストッパを構成し、前記第2連結板部は、前記可動体が前記第2方向の他方側に移動した際に前記ホルダと当接して前記可動体の前記第2方向の他方側への可動範囲を規制する第2ストッパを構成していることを特徴とする。
【0007】
本発明では、ヨークにおいて第1方向で対向する第1板部および第2板部の一方に第1磁石が固定されているが、ヨークは、第1板部を備えた第1ヨークと、第2板部を備えた
第2ヨークとを備えている。このため、第1磁石を固定した後、第1ヨークと第2ヨークとを連結すれば、第1板部および第2板部において互いに対向する面に磁石が固定されたヨークを製作することができる。また、第1ヨークは、第2ヨークに向けて延在した第1連結板部および第2連結板部を備えているため、第1方向の他方側(第2ヨークが位置する側)で第1連結板部と第2ヨークとの連結、および第2連結板部の第2ヨークとの連結を行うことができる。それゆえ、第1板部および第2板部において互いに対向する面に磁石が固定されたヨークを効率よく製作することができる。
【0008】
本発明において、前記第1連結板部および前記第2連結板部は各々、前記第1板部で互いに反対側に位置する端部から前記第1方向の他方側に向けて折れ曲がっている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1ヨークを効率よく製作することができる。
【0009】
本発明において、前記磁気駆動回路は、前記第1板部の前記コイルと対向する面、および前記第2板部の前記コイルと対向する面の他方に固定された第2磁石を備えている態様を採用することができる。かかる態様によれば、磁気駆動回路のパワーを増大させることができる。この場合でも、第1板部および第2板部に第1磁石および第2磁石を固定した後、第1ヨークと第2ヨークとを連結すれば、第1板部および第2板部において互いに対向する面に磁石が固定されたヨークを製作することができる。本発明において、前記第1連結板部および前記第2連結板部は、溶接により前記第2ヨークと連結されている態様を採用することができる。
【0010】
本発明において、前記第1連結板部の前記第1方向の他方側の端部は、前記第2板部の第1側面に重なって前記第1連結板部と前記第2ヨークの前記第1側面とが溶接され、前記第2連結板部の前記第1方向の他方側の端部は、前記第2板部の第2側面に重なって前記第2連結板部と前記第2ヨークの前記第2側面とが溶接されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1方向の他方側から溶接することができるので、溶接作業を効率よく行うことができる。
【0011】
本発明において、前記第1連結板部の前記第1方向の他方側の端部、および前記第1側面のうちの一方には、他方に形成された凹部に嵌って溶接された凸部が形成され、前記第2連結板部の前記第1方向の他方側の端部、および前記第2側面のうちの一方には、他方に形成された凹部に嵌って溶接された凸部が形成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1ヨークと第2ヨークとを凹部と凸部とによって位置決めした状態で結合させることができる。
【0012】
本発明において、前記第1連結板部は、前記コイルに対して前記第2方向の一方側を通って前記第1方向の他方側に向けて延在し、前記第2連結板部は、前記コイルに対して前記第2方向の他方側を通って前記第1方向の他方側に向けて延在している態様を採用することができる。
【0013】
本発明において、前記ホルダには、前記第1連結板部および前記第2連結板部を前記第1方向の一方側から他方側に向けて貫通させる開口部が形成されている態様を採用することができる。
【0014】
本発明において、前記一方側部材は前記支持体であり、前記他方側部材は前記可動体であり、前記支持体は、前記ホルダに対して端部同士が前記第1方向で重なったカバー部材を備えている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ホルダに対してカバー部材を重ねることによって支持体を構成することができる。
【0015】
本発明において、前記ホルダおよび前記カバー部材には、一方から他方に向けて突出して前記他方に形成された位置決め用の穴に嵌る位置決め用の凸部が形成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ホルダとカバー部材との位置決めを行うことができる。
【0016】
本発明において、前記接続体として、粘弾性部材が用いられている態様を採用することができる。この場合、前記接続体として、前記粘弾性部材のみが用いられている態様を採用することができる。本発明において、前記粘弾性部材は、前記可動体および前記支持体の双方に固定されている態様を使用することができる。本発明において、前記粘弾性部材は、ゲル状部材である態様を採用することができる。本発明において、前記ゲル状部材は、シリコーン系ゲルである態様を採用することができる。本発明において、前記粘弾性部材は、前記第1方向で前記支持体と前記可動体とが対向する位置に配置されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、可動体が移動した際、弾性部材は、厚さ方向(軸方向)と交差する方向(せん断方向)に変形する。このため、いずれの方向に動いても、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい変形特性を持つ。したがって、粘弾性部材では、運動方向によるバネ力が一定となる。それゆえ、粘弾性部材のせん断方向のバネ要素を用いることにより、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上することができるので、微妙なニュアンスをもった振動を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ヨークにおいて第1方向で対向する第1板部および第2板部の一方に第1磁石が固定されているが、ヨークは、第1板部を備えた第1ヨークと、第2板部を備えて第2ヨークとを備えている。このため、第1磁石を固定した後、第1ヨークと第2ヨークとを連結すれば、第1板部および第2板部において互いに対向する面に磁石が固定されたヨークを製作することができる。また、第1ヨークは、第2ヨークに向けて延在した第1連結板部および第2連結板部を備えているため、第1方向の他方側(第2ヨークが位置する側)で第1連結板部と第2ヨークとの連結、および第2連結板部の第2ヨークとの連結を行うことができる。それゆえ、第1板部および第2板部において互いに対向する面に磁石が固定されたヨークを効率よく製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータの斜視図である。
【
図2】
図1に示すアクチュエータのXZ断面図である。
【
図3】
図1に示す配線基板およびネジを外した状態の斜視図である。
【
図4】
図1に示すアクチュエータを分解して第1方向の他方側からみたときの分解斜視図である。
【
図5】
図1に示すアクチュエータを分解して第1方向の一方側からみたときの分解斜視図である。
【
図6】
図2に示す磁気駆動回路の分解斜視図である。
【
図7】
図2に示す磁気駆動回路をさらに細かく分解したときの分解斜視図である。
【
図8】
図2に示す第1カバー部材、第1ヨーク、ホルダおよび第2ヨークを第1方向に重ねた状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、互いに交差する3つの方向を各々、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yとして説明する。また、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yは、互いに直交する方向である。また、第2方向Xの一方側にX1を付し、第2方向Xの他方側にX2を付し、第3方向Yの一方側にY1を付し、第3方向Yの他方側にY2を付し、第1方向Zの一方側にZ1を付し、第1方向Zの他方側にZ2を付して説明する。
【0020】
また、本発明を適用したアクチュエータ1は、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動回路6を有しており、磁気駆動回路6は、コイル7と磁石8とを有している。かかる磁気駆動回路6では、コイル7が支持体2(一方側部材)の側に設けられ、磁石8が可動体3(他方側部材)の側に設けられた態様、および磁石8が支持体2(他方側部材)の側に設けられ、コイル7が可動体3(一方側部材)の側に設けられた態様を採用することができる。以下の説明では、コイル7が支持体2の側に設けられ、磁石8が可動体3の側に設けられた態様を中心に説明する。
【0021】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ1の斜視図である。
図2は、
図1に示すアクチュエータ1のXZ断面図である。
図3は、
図1に示す配線基板およびネジを外した状態の斜視図である。
【0022】
図1および
図2に示すように、本形態のアクチュエータ1は、全体として、第2方向Xの寸法が第3方向Yの寸法より大きい直方体形状を有している。また、
図2に示すように、支持体2と、支持体2に移動可能に支持された可動体3と、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動回路6とを有しており、磁気駆動回路6は、可動体3を第2方向Xに振動させる。
【0023】
図1、
図2および
図3に示すように、支持体2は、カバー11とホルダ60とを有しており、カバー11の内側に、
図2に示す可動体3および磁気駆動回路6が配置されている。カバー11は、第1方向Zの一方側Z1に位置する第1カバー部材16と、第1カバー部材16に対して第1方向Zの他方側Z2から重なる第2カバー部材17とを有しており、第1カバー部材16および第2カバー部材17は、四角形の平面形状を有している。第1カバー部材16と第2カバー部材17との間には、四角形の平面形状を有するホルダ60が配置されており、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17は、端部160、600、170が第1方向Zで重なっている。従って、カバー11の外面側110は、第1カバー部材16の端部160、ホルダ60の端部600、および第2カバー部材17の端部170によって構成されている。
【0024】
(第1カバー部材16の構成)
図4は、
図1に示すアクチュエータ1を分解して第1方向Zの他方側Z2からみたときの分解斜視図である。
図2および
図4に示すように、第1カバー部材16には、第1方向Zの他方側Z2に向かって開口する四角形の凹部165が形成されている。また、凹部165の底部には、第2方向Xで並ぶ2つの凹部166、167が形成されている。凹部165の対角位置には貫通穴16aが形成されている。すなわち、凹部165において、第2方向Xの一方側X1かつ第3方向Yの他方側Y2に位置する角部分、および第2方向Xの他方側X2かつ第3方向Yの一方側Y1に位置する角部分に貫通穴16aが形成されている。また、凹部166、167の第3方向Yの両端部には貫通穴16bが形成されている。
【0025】
第1カバー部材16において、凹部165は、第2方向Xの一方側X1に位置する第1壁部161と、第2方向Xの他方側X2に位置する第2壁部162と、第3方向Yの一方
側Y1に位置する第3壁部163と、第3方向Yの他方側Y2に位置する第4壁部164とによって囲まれている。第1方向Zからみたとき、第1壁部161および第2壁部162の幅(第2方向Xの寸法)は、第3壁部163および第4壁部164の幅(第3方向Yの寸法)より広い。第3壁部163の外面には、第2方向Xに沿って延在する凹部168が形成されている。
【0026】
第3壁部163および第4壁部164には、第2方向Xに沿って第1方向Zの他方側Z2に突出した複数の凸板部163a、164aが所定の間隔に形成されている。また、第1壁部161および第2壁部162には、外縁から第1方向Zの他方側Z2に突出した凸板部161a、162aが第3方向Yの中央に形成されている。
【0027】
第3壁部163および第4壁部164の第2方向Xの両端には、第1方向Zの一方側に向けて開口した位置決め用の穴16cが形成されている。また、第1カバー部材16の一方の対角位置には貫通穴16eが形成され、他方の対角位置には貫通穴16fが形成されている。すなわち、第1カバー部材16において、第2方向Xの一方側X1かつ第3方向Yの他方側Y2に位置する角部分、および第2方向Xの他方側X2かつ第3方向Yの一方側Y1に位置する角部分に貫通穴16eが形成され、第2方向Xの一方側X1かつ第3方向Yの一方側Y1に位置する角部分、および第2方向Xの他方側X2かつ第3方向Yの他方側Y2に位置する角部分に貫通穴16fが形成されている。
【0028】
(第2カバー部材17の構成)
図5は、
図1に示すアクチュエータ1を分解して第1方向Zの一方側Z1からみたときの分解斜視図である。
図2および
図5に示すように、第2カバー部材17は、以下に説明するように、第1カバー部材16に対して第1方向Zで略対称に形成されている。まず、第2カバー部材17には、第1方向Zの一方側Z1に向かって開口する四角形の凹部175が形成されている。また、凹部175の底部には、第2方向Xで並ぶ2つの凹部176、177が形成されている。第2カバー部材17において、凹部175は、第2方向Xの一方側X1に位置する第1壁部171と、第2方向Xの他方側X2に位置するに第2壁部172と、第3方向Yの一方側Y1に位置する第3壁部173と、第3方向Yの他方側Y2に位置する第4壁部174とによって囲まれている。第1方向Zからみたとき、第1壁部171および第2壁部172の幅(第2方向Xの寸法)は、第3壁部173および第4壁部174の幅(第3方向Yの寸法)より広い。第3壁部173の外面には、第2方向Xに沿って延在する凹部178が形成されている。
【0029】
第3壁部173および第4壁部174には、第2方向Xに沿って第1方向Zの一方側Z1に突出した複数の凸板部173a、174aが所定の間隔に形成されている。また、第1壁部171および第2壁部172には、外縁から第1方向Zの一方側Z1に突出した凸板部171a、172aが第3方向Yの中央に形成されている。
【0030】
第3壁部173および第4壁部174の第2方向Xの両端には、第1方向Zの一方側Z1に向けて開口した位置決め用の穴17cが形成されている。また、第2カバー部材17の一方の対角位置には貫通穴17eが形成され、他方の対角位置には貫通穴17fが形成されている。すなわち、第2カバー部材17において、第2方向Xの一方側X1かつ第3方向Yの他方側Y2に位置する角部分、および第2方向Xの他方側X2かつ第3方向Yの一方側Y1に位置する角部分に貫通穴17eが形成され、第2方向Xの一方側X1かつ第3方向Yの一方側Y1に位置する角部分、および第2方向Xの他方側X2かつ第3方向Yの他方側Y2に位置する角部分に貫通穴17fが形成されている。
【0031】
(磁気駆動回路6の構成)
図6は、
図2に示す磁気駆動回路6の分解斜視図である。
図7は、
図2に示す磁気駆動
回路6をさらに細かく分解したときの分解斜視図である。
図2、
図6および
図7に示すように、磁気駆動回路6は、コイル7と、コイル7に対して第1方向Zで対向する磁石8とを有している。本形態において、コイル7は、第2方向Xで並列するように配置された2つのコイル71、72からなり、コイル7は、第3方向Yに長辺701(有効部分)が延在する長円形状の空芯コイルである。コイル7はホルダ60に保持されており、支持体2の側に設けられている。
【0032】
(ホルダ60の構成)
図2、
図5、
図6および
図7に示すように、ホルダ60は、2つのコイル保持穴66、67が第2方向Xで並列するように形成されており、コイル保持穴66、67の各々にコイル7が配置されている。コイル保持穴66、67は貫通穴であり、第3方向Yの両端部には、コイル保持穴66、67の第1方向Zの一方側Z1の端部に受け部661、671が形成されている。従って、コイル保持穴66、67に第1方向Zの他方側Z2からコイル7を装着すると、コイル7の短辺702(無効部分)が受け部661、671によって第1方向Zの一方側Z1で支持された状態となる。この状態で、コイル7は接着剤等によってホルダ60に固定される。
【0033】
ホルダ60は、コイル保持穴66、67が形成されている部分に対して、第2方向Xの一方側X1、第2方向Xの他方側X2、第3方向Yの一方側Y1、および第3方向Yの他方側Y2には、第1壁部61、第2壁部62、第3壁部63、および第4壁部64を備えている。第1方向Zからみたとき、第1壁部61および第2壁部62の幅(第2方向Xの寸法)は、第3壁部63および第4壁部64の幅(第3方向Yの寸法)より広い。
【0034】
ホルダ60には、コイル保持穴66と第1壁部61との間に第1開口部601が形成され、コイル保持穴67と第2壁部62との間に第2開口部602が形成されている。第1開口部601、および第2開口部602はホルダ60を第1方向Zで貫通している。
【0035】
第1壁部61には、第1方向Zの一方側Z1に凹部611が形成され、第1方向Zの他方側Z2に凹部612が形成されている。凹部611、612は、第1壁部61の第3方向Yの中央に形成されている。第2壁部62には、第1方向Zの一方側Z1に凹部621が形成され、第1方向Zの他方側Z2に凹部622が形成されている。凹部621、622は、第2壁部62の第3方向Yの中央に形成されている。第3壁部63の外面側には、第1方向Zの一方側Z1に複数の凹部631が第2方向Xに沿って形成され、第1方向Zの他方側Z2に複数の凹部632が第2方向Xに沿って形成されている。第4壁部64の外面側には、第1方向Zの一方側Z1に複数の凹部641が第2方向Xに沿って形成され、第1方向Zの他方側Z2に複数の凹部642が第2方向Xに沿って形成されている。
【0036】
第3壁部63および第4壁部64の第2方向Xの両端には、第1方向Zの一方側Z1に突出した位置決め用の凸部60cと、第1方向Zの他方側Z2に突出した位置決め用の凸部60dとが形成されている。第3壁部63および第4壁部64の第2方向Xの両端には、第1開口部601、および第2開口部602の内壁が外側に向けて凹んだ切り欠き603が形成されている。
【0037】
ホルダ60の一方の対角位置には貫通穴60eが形成され、他方の対角位置には貫通穴60fが形成されている。すなわち、第2カバー部材17において、第2方向Xの一方側X1かつ第3方向Yの他方側Y2に位置する角部分、および第2方向Xの他方側X2かつ第3方向Yの一方側Y1に位置する角部分に貫通穴60eが形成され、第2方向Xの一方側X1かつ第3方向Yの一方側Y1に位置する角部分、および第2方向Xの他方側X2かつ第3方向Yの他方側Y2に位置する角部分に貫通穴60fが形成されている。
【0038】
第3壁部63の外面には、第2方向Xに沿って延在する凹部630が形成されており、凹部630の両端部には、第3方向Yの一方側Y1に突出した位置決め用の凸部636が形成されている。第3壁部63には、コイル保持穴66、67から第3壁部63の外面(凹部630の底面)まで延在するガイド溝637が4本形成されている。
【0039】
(支持体2の構成)
本形態では、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17を第1方向Zに重ねた状態で、第2カバー部材17の貫通穴17e、ホルダ60の貫通穴60e、および第2カバー部材17の貫通穴17eにネジ18を止め、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17を第1方向Zで締結する。その結果、支持体2が形成される。
【0040】
その際、第1カバー部材16の凸板部163a、164aがホルダ60の凹部631、641に嵌り、第1カバー部材16の凸板部161a、162aがホルダ60の凹部611、621に嵌る。また、第1カバー部材16の穴16cにホルダ60の凸部60cが嵌る。また、第2カバー部材17の凸板部173a、174aがホルダ60の凹部632、642に嵌り、第2カバー部材17の凸板部171a、172aがホルダ60の凹部612、622に嵌る。また、第2カバー部材17の穴17cにホルダ60の凸部60dが嵌る。このようにして、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17は互いに位置決めされた状態で連結される。また、ガイド溝637は、ホルダ60と第2カバー部材17との間で穴638として開口する。
【0041】
なお、第2カバー部材17の貫通穴17f、ホルダ60の貫通穴60f、および第2カバー部材17の貫通穴17fは、アクチュエータ1を各種機器に搭載する際、機器のフレームに対して止めるネジ19が止められる。本形態では、ネジ18、19を止めた際、ネジ18、19の頭は、第2カバー部材17から第1方向Zの他方側Z2に突出しない。
【0042】
(コイル7の端部の処理)
このように構成したアクチュエータ1においては、
図1および
図2に示すように、支持体2に用いたカバー11は、外面側110に、第2方向Xの一方側X1に位置する第1側面111と、第2方向Xの他方側X2に位置するに第2側面112と、第3方向Yの一方側Y1に位置する第3側面113と、第3方向Yの他方側Y2に位置する第4側面114とを有している。ここで、第3側面113および第4側面114の第2方向Xの長さは、第1側面111および第2側面112の第3方向Yの長さより長い。本形態では、第3側面113には、コイル7を構成するコイル線の巻き始めの第1端部706、および巻き終わりの第2端部707が各々電気的に接続された配線基板15が固定されている。
【0043】
本形態では、ホルダ60にガイド溝637が形成されているため、ホルダ60のコイル保持穴66、67に固定する際、巻き始めの第1端部706、および巻き終わりの第2端部707をガイド溝637を通して外側に引き出しておき、その後、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17を第1方向Zに重ねて連結する。その結果、第1端部706、および第2端部707は穴638から引き出された状態となる。
【0044】
従って、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17を第1方向Zに重ねて連結した後、凹部168、630、178に配線基板15を固定することができる。その際、ホルダ60の凸部636を配線基板15の位置決め用の穴155に嵌めて、配線基板15の位置決めを行い、その後、接着剤等によって配線基板15を固定する。それゆえ、配線基板15を介して外部からコイル7を駆動することができる。ここで、配線基板15には、穴638を開放状態とする切り欠き150が形成されているので、穴638から引き出された第1端部706および第2端部707を切り欠き150を通して配線基板
15のランド151の各々まで延在させ、ランド151にハンダ付する。その結果、2つのコイル7は、直列に電気的に接続される。なお、2つのコイル7は、並列に電気的に接続してもよい。
【0045】
(可動体3の構成)
図2、
図4、
図5、
図6および
図7に示すように、可動体3は、コイル7に対して第1方向Zの一方側Z1で対向する第1板部860を備えた第1ヨーク86と、コイル7に対して第1方向Zの他方側Z2で対向する第2板部870を備えた第2ヨーク87とを有しており、磁石8は、第1ヨーク86の第1板部860のコイル7と対向する面、および第2ヨーク87の第2板部870のコイル7と対向する面の少なくとも一方に保持されてコイル7に第1方向Zで対向している。
【0046】
本形態では、磁石8として、第1ヨーク86の第1板部860のコイル7と対向する面に接着等の方法で固定された第1磁石81と、第2ヨーク87の第2板部870のコイル7と対向する面に接着等の方法で固定された第2磁石82とが設けられている。この状態で、第1磁石81は、コイル7の長辺701に第1方向Zの一方側Z1で対向し、第2磁石82は、コイル7の長辺701に第1方向Zの他方側Z2で対向している。第1磁石81および第2磁石82は各々、厚さ方向(第1方向Z)で分極着磁されており、第1磁石81においてコイル7に対向する面と、第2磁石82においてコイル7と対向する面は異なる極に着磁されている。本形態では、第1磁石81および第2磁石82は各々、2つのコイル7(コイル71、72)の計4つの長辺701の各々に対向する4つの磁石からなる。
【0047】
本形態において、第1ヨーク86は、第1板部860から第1方向Zの他方側Z2に向けて第2ヨーク87と重なる位置まで延在して第2ヨーク87と連結された第1連結板部861と、第1磁石81に対して第1連結板部861とは反対側で第1板部860から第1方向Zの他方側Z2に向けて第2ヨーク87と重なる位置まで延在して第2ヨーク87と連結された第2連結板部862とを備えている。第1連結板部861および第2連結板部862は各々、第1板部860において第2方向Xの互いに反対側に位置する端部から第1方向Zの他方側Z2に向けて折れ曲がっている。このため、第1連結板部861は、コイル7に対して第2方向Xの一方側X1を通って第1方向Zの他方側Z2に向けて延在し、第2連結板部862は、コイル7に対して第2方向Xの他方側Z2を通って第1方向Zの他方側Z2に向けて延在している。その際、第1連結板部861は、コイル7に対して第2方向Xの一方側X1でホルダ60の第1開口部601を通って第1方向Zの他方側Z2に向けて延在し、第2連結板部862は、コイル7に対して第2方向Xの他方側Z2でホルダ60の第2開口部602を通って第1方向Zの他方側Z2に向けて延在している。
【0048】
本形態では、第1連結板部861および第2連結板部862は、溶接により第2ヨーク87の端部と連結されている。より具体的には、第1連結板部861の第1方向Zの他方側Z2の端部861aは、第2ヨーク87の第2板部870の第1側面871に重なって第1連結板部861と第2ヨーク87の第1側面871とが溶接されている。同様に、第2連結板部862の第1方向Zの他方側Z2の端部は、第2ヨーク87の第2板部870の第2側面872に重なって第2連結板部862と第2ヨーク87の第2側面872とが溶接されている。
【0049】
第1連結板部861の端部861a、および第1側面871のうちの一方には、他方に形成された凹部に嵌って溶接された凸部が形成され、第2連結板部862の端部862a、および第2側面872のうちの一方には、他方に形成された凹部に嵌って溶接された凸部が形成されている。本形態では、第2板部870に形成された凸部873が第1連結板
部861の端部861aに形成された凹部863に嵌って溶接され、第2板部870に形成された凸部874が第2連結板部862の端部862aに形成された凹部864に嵌って溶接されている。
【0050】
(アクチュエータ1の組み立て工程)
図8は、
図2に示す第1カバー部材16、第1ヨーク86、ホルダ60および第2ヨーク87を第1方向Zに重ねた状態の平面図である。本形態では、第1ヨーク86において、第1連結板部861および第2連結板部862の第3方向Yの幅が第1板部860の第3方向Yの幅より狭く、少なくとも、第1カバー部材16の貫通穴16a、およびホルダ60の切り欠き603と重なる部分に切り欠き869が存在する。また、第2ヨーク87において、第1連結板部861および第2連結板部862と連結される部分876、877の第3方向Yの幅が第2板部870の第3方向Yの幅より狭く、少なくとも、第1カバー部材16の貫通穴16a、およびホルダ60の切り欠き603と重なる部分に切り欠き879が存在する。従って、第1カバー部材16、第1ヨーク86、ホルダ60、および第2ヨーク87を第1方向Zに重ねると、
図8に示すように、第1カバー部材16の貫通穴16a、第1ヨーク86の切り欠き869、ホルダ60の切り欠き603、および第2ヨーク87の切り欠き879によって貫通穴13が形成される。
【0051】
それゆえ、第1カバー部材16の貫通穴16aに位置決めピン10を通しておけば、第1ヨーク86、ホルダ60、および第2ヨーク87を順次第1方向Zに重ねる際、位置決めピン10を基準にして、第1ヨーク86の切り欠き869、ホルダ60の切り欠き603、および第2ヨーク87の切り欠き879の位置を合わすことができるので、第1カバー部材16、第1ヨーク86、ホルダ60、および第2ヨーク87を第1方向Zに適正に重ねることができる。
【0052】
(ストッパの構成)
図2に示すように、本形態では、可動体3に用いた第1ヨーク86の第1連結板部861に対して第2方向Xの一方側X1には、第1カバー部材16の第1壁部161、ホルダ60の第1壁部61、および第2カバー部材17の第1壁部171の内面が、連続した平面(第1被当接部118)を構成した状態で対向している。したがって、第1連結板部861は、可動体3が第2方向Xの一方側X1に移動した際に第1被当接部118と当接して可動体3の第2方向Xの一方側X1への可動範囲を規制する第1ストッパを構成している。
【0053】
同様に、第2連結板部862に対して第2方向Xの他方側X2には、第1カバー部材16の第2壁部162、ホルダ60の第2壁部62、および第2カバー部材17の第2壁部172の内面が、連続した平面(第2被当接部119)を構成した状態で対向している。したがって、第2連結板部862は、可動体3が第2方向Xの他方側X2に移動した際に第2被当接部119と当接して可動体3の第2方向Xの他方側X2への可動範囲を規制する第2ストッパを構成している。
【0054】
(接続体90および粘弾性部材9の構成)
図2、
図4および
図5に示すように、支持体2および可動体3に対して、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体90が設けられている。本形態において、接続体90は、支持体2と可動体3とが第1方向Zで対向する個所に設けられた粘弾性部材9であり、第1方向Z、第2方向X、および第3方向Y方向に弾性的に変形可能である。粘弾性とは、粘性と弾性の両方を合わせた性質のことであり、ゲル状部材、プラスチック、ゴム等の高分子物質に顕著に見られる性質である。従って、粘弾性部材9として、各種ゲル状部材を用いることができる。また、粘弾性部材9として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム)、クロロプレンゴム
、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。
【0055】
本形態において、接続体90として粘弾性部材9のみが支持体2および可動体3の双方に接続されている。本形態において、粘弾性部材9として、可動体3の第1ヨーク86と支持体2の第1カバー部材16とが第1方向Zで対向する個所に第1粘弾性部材91が配置され、可動体3の第2ヨーク87と支持体2の第2カバー部材17とが第1方向Zで対向する個所に第2粘弾性部材92が配置されている。より具体的には、第1粘弾性部材91は、第1ヨーク86の第1板部860と第1カバー部材16の凹部166、167の底部との間に2つ配置され、第2粘弾性部材92は、第2ヨーク87の第2板部870と第2カバー部材17の凹部176、177の底部との間に2つ配置されている。
【0056】
ここで、第1粘弾性部材91は、第1ヨーク86の第1板部860と第1カバー部材16の凹部166、167の底部との間で第1方向Zに圧縮された状態で配置され、第2粘弾性部材92は、第2ヨーク87の第2板部870と第2カバー部材17の凹部176、177の底部との間で第1方向Zに圧縮された状態で配置されている。第1粘弾性部材91は、支持体2と接する面(第1カバー部材16の凹部166、167の底部)に接着され、可動体3と接する面(第1ヨーク86)と接着されている。第2粘弾性部材92は、支持体2と接する面(第2カバー部材17の凹部176、177の底部)に接着され、可動体3と接する面(第2ヨーク87)と接着されている。
【0057】
本形態において、粘弾性部材9(第1粘弾性部材91および第2粘弾性部材92)は、針入度が10度から110度であるシリコーン系ゲルである。針入度とは、JIS-K-2207やJIS-K-2220で規定されており、この値が小さい程、硬いことを意味する。粘弾性部材9は、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。例えば、粘弾性部材9は、その厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分(バネ係数)よりも非線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。これに対して、厚さ方向(軸方向)に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。一方、本形態のように、粘弾性部材9が厚さ方向(軸方向)と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、いずれの方向に動いても、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい変形特性を持つ。従って、粘弾性部材9では、運動方向によるバネ力が一定となる。それ故、本形態のように、粘弾性部材9のせん断方向のバネ要素を用いることにより、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上することができるので、微妙なニュアンスをもった振動を実現することができる。
【0058】
(基本動作)
本形態のアクチュエータ1において、コイル7に交流を印加すると、可動体3は、第2方向Xに振動するため、アクチュエータ1における重心が第2方向Xに変動する。このため、利用者は、第2方向Xの振動を体感することができる。その際、コイル7に印加する交流波形を調整して、可動体3が第2方向Xの一方側X1に移動する加速度と、可動体3が第2方向の他方側X2に移動する加速度とを相違させれば、利用者は、第2方向Xにおいて方向性を有する振動を体感することができる。
【0059】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のアクチュエータ1において、コイル7を挟んで第1方向Zの両側に第1ヨーク86および第2ヨーク87が配置され、第1ヨーク86および第2ヨーク87に第1磁石81および第2磁石82が固定されている。このような構成でも、
本形態において、第1ヨーク86は、第2ヨーク87に向けて延在した第1連結板部861および第2連結板部862を備えているため、第1方向Zの他方側Z2(第2ヨーク87が位置する側)で第1連結板部861と第2ヨーク87との連結、および第2連結板部862と第2ヨーク87との連結を行うことができる。それゆえ、第1板部860および第2板部870において互いに対向する面に磁石8が固定されたヨークを効率よく製作することができる。特に本形態では、第1連結板部861および第2連結板部862を溶接により第2ヨーク87と連結するため、第1方向Zの他方側Z2のみ溶接作業を行えばよいので、溶接作業を効率よく行うことができる。
【0060】
また、第1連結板部861および第2連結板部862は各々、第1板部860で互いに反対側に位置する端部から第1方向Zの他方側Z2に向けて折れ曲がっているため、第1ヨーク86を効率よく製作することができる。また、第2板部870に形成された凸部873が第1連結板部861の端部861aに形成された凹部863に嵌って溶接され、第2板部870に形成された凸部874が第2連結板部862の端部862aに形成された凹部864に嵌って溶接されている。このため、第1ヨーク86と第2ヨーク87とを凹部863、864と凸部873、874とによって位置決めした状態で結合させることができる。
【0061】
また、可動体3が第2方向Xに移動した際に可動範囲を規制する第1被当接部118および第2被当接部119が幅寸法の広い第1壁部(第1カバー部材16の第1壁部161、ホルダ60の第1壁部61、および第2カバー部材17の第1壁部171)、および第2壁部(第1カバー部材16の第2壁部162、ホルダ60の第2壁部62、および第2カバー部材17の第2壁部172によって構成されている。このため、第1被当接部118および第2被当接部119の強度が大であるので、落下時の衝撃等によって可動体3が急激に第2方向Xに移動したときでも、第1被当接部118および第2被当接部119が損傷しにくい。
【0062】
また、本形態では、支持体2と可動体3が第1方向Zで対向する部分に粘弾性部材9が配置されているため、可動体3を駆動した際の共振を粘弾性部材9によって抑制することができる。その際、粘弾性部材9は、せん断方向に変形するので、粘弾性部材9は、非線形の成分よりも線形の成分が大きい変形特性を持つ。したがって、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上することができるので、微妙なニュアンスもって振動を実現することができる。また、本形態では、支持体2が第1方向Zに積層された複数の部材(第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17)を備えているため、支持体2と可動体3とが第1方向Zで対向する個所の間隔がばらつきやすいが、粘弾性部材9は、第1方向Zで圧縮された状態で配置されているので、粘弾性部材9は、支持体2および可動体3に常に接している。このため、粘弾性部材9は、可動体3の移動に確実に追従する。また、粘弾性部材9は、支持体2と接する面が支持体2に接着され、可動体3と接する面が可動体3に接着されているため、粘弾性部材9の位置がずれにくい。したがって、粘弾性部材9は、可動体3の移動に確実に追従する。
【0063】
また、第1カバー部材16、ホルダ60および第2カバー部材17は、第1方向Zにネジ軸が延在するネジ18によって第1方向Zで締結されている。したがって、ネジ18を締めて第1カバー部材16、ホルダ60、および第2カバー部材17を締結する際に粘弾性部材9を第1方向Zで圧縮することができる。また、支持体2の第1カバー部材16および第2カバー部材17において粘弾性部材9が接する部分は、凹部166、167、176、177になっていので、粘弾性部材9の位置がずれにくい。
【0064】
また、コイル7に用いたコイル線の第1端部706および第2端部707が支持体2に固定された配線基板15に電気的に接続された状態にあるため、コイル線の第1端部70
6および第2端部707が引っ張られてコイル7が損傷するという事態が発生しにくい。また、配線基板15は、支持体2の側面のうち、第1方向Zからみたときに長辺に相当する第3側面113に固定されているため、寸法の長い配線基板15を用いることができる。このため、コイル7の向き、位置、個数等に係わらず、コイル7の第1端部706および第2端部707を長い距離を引き回さなくても、配線基板15に対して容易に電気的に接続することができる等、コイル7の端部を適正に処理することができる。
【0065】
また、支持体2の第3側面113には、第1端部706および第2端部707を通す穴638が形成され、かかる穴638は、ホルダ60のガイド溝637と繋がっている。このため、第1端部706および第2端部707をガイド溝637および穴638を通して配線基板15まで導くことができるので、第1端部706および第2端部707を配線基板15まで引き回すのが容易である。
【0066】
(他の実施形態)
上記実施形態では、2つの磁石8(第1磁石81および第2磁石82)を有していたが、例えば、コイル7に対して第1方向Zの一方側Z1のみに磁石8が配置され、第1方向Zの他方側Z2に第2ヨーク87のみが存在する態様の場合に本発明を適用してもよい。
【0067】
上記実施形態では、粘弾性部材9としてシリコーン系ゲル等のゲル状部材を用いたが、ゴム等を粘弾性部材として用いてもよい。また、上記実施形態では、接続体90として粘弾性部材9を用いたが、バネ等の弾性部材を用いてもよい。
【0068】
上記実施形態では、コイルおよびホルダが支持体2に設けられ、磁石およびヨークが可動体3に設けられていたが、コイルおよびホルダが可動体3に設けられ、磁石およびヨークが支持体2に設けられている場合に本発明を適用してもよい。上記実施形態では、可動体3を第2方向Xのみに駆動するアクチュエータ1に本発明を適用したが、可動体3を第2方向Xおよび第3方向Yに駆動するアクチュエータ1に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…アクチュエータ、2…支持体(一方側部材)、3…可動体(他方側部材)、6…磁気駆動回路、7、71、72…コイル、8…磁石、9…粘弾性部材(接続体)、10…位置決めピン、11…カバー、15…配線基板、16…第1カバー部材、16a、16b、16e、16f、17e、17f、60e、60f…貫通穴、16c、17c、155、638…穴、17…第2カバー部材、18、19…ネジ、60…ホルダ、60c、60d、636、873、874…凸部、61、161、171…第1壁部、62、162、172…第2壁部、63、163、173…第3壁部、64、164、174…第4壁部、66、67…コイル保持穴、81…第1磁石、82…第2磁石、86…第1ヨーク、87…第2ヨーク、90…接続体、91…第1粘弾性部材、92…第2粘弾性部材、110…外面側、111…第1側面、112…第2側面、113…第3側面、114…第4側面、118…第1被当接部、119…第2被当接部、601…第1開口部、602…第2開口部、637…ガイド溝、661、671…受け部、701…長辺、702…短辺、706…第1端部、707…第2端部、860…第1板部、861…第1連結板部、862…第2連結板部、870…第2板部、X…第2方向、Y…第3方向、Z…第1方向