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特許7020811超音波ヘッドを含むコーティングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】超音波ヘッドを含むコーティングシステム
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/08 20060101AFI20220208BHJP
   B05B 5/025 20060101ALI20220208BHJP
   B05B 17/06 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B05B5/08 B
B05B5/025 A
B05B17/06
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017137740
(22)【出願日】2017-07-14
(65)【公開番号】P2018015759
(43)【公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-06-12
(31)【優先権主張番号】16305971.0
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516299279
【氏名又は名称】エクセル インダストリー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100210686
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル コルラ
(72)【発明者】
【氏名】レミ パゴ
(72)【発明者】
【氏名】ロブ エングル
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-043300(JP,A)
【文献】特表2007-517647(JP,A)
【文献】特開2015-013244(JP,A)
【文献】特開平09-024304(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194307(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/00- 5/16
B05B17/00-17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体コーティング用製品でワークピース(W1-W5、W5’)をコーティングするためのコーティングシステム(2)であって、コーティング用製品の液滴を生成するための超音波ヘッド(14)を含み、
-電極(32A-32I)であって、前記電極と前記超音波噴霧ヘッドとの間に静電場(E)を発生させるための電極(32A-32I)と、
-前記電極に高電圧を供給するための、前記電極に接続された高電圧発生器(52)と
をさらに含み、
前記高電圧発生器(52)は、放電抵抗(62)および接続手段(66、68、70)をまた含むサブモジュール(50)内に統合され、前記サブモジュールは、前記高電圧発生器および放電抵抗が各々収容された2つのハウジング(56、58)と、コネクタ(66)が前記高電圧発生器および前記放電抵抗を接続するように収容された接続ハウジング(60)とを画定し、そして、
前記電極(32A-32C)は、ワークピースの形状に従って形作られ、そして前記高電圧発生器(52)を含む基部(34)により支持される
コーティングシステム。
【請求項2】
前記電極(32A-32I)の外形が、前記ワークピース(W1-W5、W5’)の形状に基づいて構成可能である、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項3】
前記電極(32A-32C)のエッジが、前記超音波ヘッド(14)から見た場合に、前記ワークピース(W1-W3)の輪郭の像、好ましくはこの輪郭の正確な像である、請求項1又は2に記載のコーティングシステム。
【請求項4】
前記電極(32A-32F)が前記ワークピース(W1-W4)を支持し、前記ワークピースに接触している、請求項1~3のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項5】
前記基部(34)が、前記ワークピース(W1-W3)を接地電位から絶縁し、前記電極(32A-32C)からの漏電を防止している、請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項6】
前記基部(34)が、異なる外形の電極(32A-32C)を収容するために構成された領域(46)を画定している、請求項1~5のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項7】
電気接触部(74)が、前記高電圧発生器(52)を前記領域に収容された電極(32A-32C)に接続するための前記領域(46)に位置した、請求項に記載のコーティングシステム。
【請求項8】
前記電気接触部(74)が、前記領域(46)に収容された電極(32A-32C)に非平行な軸(X67)に沿って可動であり、この電極に向けてバイアスをかけられている、請求項に記載のコーティングシステム。
【請求項9】
前記電極が前記ワークピースにより形成された、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項10】
前記超音波ヘッド(14)に、前記超音波ヘッドを出た液滴(F2)周りに、シェーピングエアの噴射(F4)を運ぶように構成されたエア噴出ユニット(20)が設けられた、請求項1~のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項11】
超音波噴霧ヘッド(14)に制御された量の液体製品を供給するための、特には可動ピストンを備えたポンプの形態の、計量装置(19)をむ、請求項1~10のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項12】
前記電気接触部(74)が、前記接続ハウジング(60)中に収容されたコネクタ(66)によって支持され、そして電気的に接続されている、請求項7に記載のコーティングシステム。
【請求項13】
前記電気接触部が、前記コネクタ(66)の鉛直穴(67)に収容された導電性スタッド(74)によって形成される、請求項12に記載のコーティングシステム。
【請求項14】
バネ(69)が、前記穴(67)の閉端部に設けられ、そして電極(32A)に対してスタッド(67)にバイアスを掛ける、請求項8または13に記載のコーティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体コーティング用製品でワークピースをコーティングするためのコーティングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波液体霧化は、コーティングされるべきワークピース上に液体コーティング用製品を噴霧するために、これまで使用されてきた。「超音波液体霧化の理論及び適用(Ultrasonic Liquid Atomization Theory and Application)」(Partridge Hill Publishers-1998 and 2006)において、Harvey L.Bergerは、超音波液体霧化への静電気の適用を考え、超音波霧化に静電気を与えることで、理論的に、従来の静電噴霧で使用されるものより極めて低い電圧でさえ、噴霧適用の制御に極めて高い効率がもたらされることを説明している。
【0003】
その後、静電気を用いた超音波霧化の幾つかの適用が考えられてきた。例えば、文書「静電場補助超音波噴霧熱分解によるCuInS2の堆積(Deposition of CuInS2 films by electrostatic field assisted ultrasonic spray pyrolysis)」(Solar Energy Materials and Solar Cells95(2011)245-249)において、Dong-Yeup Li及びJunHo Kimは、噴霧熱分解堆積に使用されるために、搬送ガスによって管の出口に向けて運ばれるエアロゾルに変換するために、噴霧されるべき液体が超音波プローブにより励起される場合を開示している。そのようなシステムでは、エアロゾルの流量も密度も正確に制御することができず、形成された浴と管の出口との間のパスにおいて、エアロゾルが凝集することがあり、液滴間で一般的に観測される合体のため、対象物をコーティングするために使用される液滴のサイズを正確に制御することができない。コーティングは、粗く又は非均一になることがあり、幾つかの欠陥がコーティング面上に発生することがある。
【0004】
「静電補助超音波噴霧熱分解法によるNi-CGO複合体アノードの堆積(Deposition of Ni-CGO composite anodes by electrostatic assisted ultrasonic spray pyrolysis method)」(Materials Research Bulletin42(2007)1674-1682)において、Jing-Chiang Chenらは、エアロゾルを作り出すこと、及び、被覆されるべき基材を支持している銅プレートに面したノズルに向けて、それをガラス管中に運ぶことを考える。ここで再び、エアロゾルの液滴の凝集のリスクが存在する。
【0005】
これらの学問的な研究は、コーティング堆積が多くの要素、例えば、エアロゾルを運ぶ管の長さ及び形状に大きく依存するため、工業的環境において使用するのは容易でない。
【0006】
他方では、公知のシステムにおいて、一般的には、電極と、被覆されるべき対象物との間に静電場が作られ、この静電場は、コーティングされるべきワークピースのために最適化されていない電場線の分布を有する。そのような環境の下では、霧化製品の多くの部分は、コーティングされるべき表面の外側で終わり、それは、汚染に関して、及び経済的観点から弊害がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、超音波ヘッドの汎用性を活用し、かつ、静電場線の分布を最適化する、したがって、コーティング効率を最適化することを可能とした新規のコーティングシステムを用いて、これらの問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、液体コーティング用製品でワークピースをコーティングするためのコーティングシステムであって、
-コーティング用製品の液滴を生成するための超音波噴霧ヘッドと、
-電極と超音波噴霧ヘッドとの間に静電場を発生させるための電極と、
-電極に高電圧を供給するための、電極に接続された高電圧発生器と
を含むコーティングシステムに関する。
【0009】
本発明のおかげで、電極は、ワークピースに向かう静電場線の分布、したがって、ワークピースに向かうコーティング用製品の液滴のパスを正確に制御することを可能とする。より正確には、電極は、コーティングされるべきワークピースに向けて液滴を案内する静電場のためのコンフォメータ(conformator)として作用する。
【0010】
有利であるが強制的でない本発明の更なる態様によれば、コーティングシステムは、任意の技術的に許容される組み合わせで考えられる、以下の特徴のうち1つ又は複数を組み込むことができる:
-電極の外形はワークピースの形状に基づいて構成される。本発明のこの態様のおかげで、電極の外形は、コーティングされるべきワークピースの実際の形状に従ってカスタマイズすることができ、それにより、ワークピース周りの近くに静電場線を設けることが可能となり、したがって、過噴霧(overspray)の現象を避けるか又は大幅に制限することが可能となる。
-電極のエッジは、超音波ヘッドから見た場合に、ワークピースの輪郭の像、好ましくはこの輪郭の正確な像である。
-コーティングシステムは、特に可動ピストンを備えたポンプの形態で、制御された量で液体コーティング用製品を超音波ヘッドに供給するための計量装置を含む。代替的に、他のタイプのポンプを計量装置として使用することができる。
-電極はワークピースを支持し、ワークピースに接触している。
-電極は、ワークピースの形状に従って形作られ、高電圧発生器を含む基部により支持される。
-基部は、ワークピースを接地電位から絶縁し、電極からの漏電を防止する。
-基部は、異なる外形の電極を収容するために構成された領域を画定している。
-電気接触部は、高電圧発生器を領域に収容された電極に接続するための領域に設置される。
-電気接触部は、領域に収容された電極に非平行な軸に沿って可動であり、この電極に向けてバイアスをかけられている。
-高電圧発生器は、放電抵抗及び接続手段をまた含むサブモジュール内に統合され、前記サブモジュールが、高電圧発生器及び放電抵抗が各々収容された2つのハウジングと、コネクタが高電圧発生器及び放電抵抗を接続するように収容された接続ハウジングとを画定している。
-電気接触部は、接続ハウジングに収容されたコネクタに支持され、かつ電気的に接続される。
-電極は、ワークピースにより少なくとも部分的に囲まれるように形作られる。
-電極は、その長手軸周りで回転可能である。
-電極は超音波ヘッドに固定され、イオン化により液滴を帯電するように構成される。
-電極に、ワークピースの形状に基づいた分布を持つ、超音波ヘッドの放出ノズル周りに広がったスパイクが設けられる。
-超音波噴霧ヘッドの中心軸に対するスパイクの配向角は、ワークピースの形状及び/又は電極とワークピース間の距離に基づいて調整可能である。
-電極はワークピースにより形成される。
-超音波ヘッドに、超音波ヘッドを出た液滴周りにシェーピングエアの噴射を運ぶように構成されたエア噴出ユニットが設けられる。
【0011】
本発明は、本発明の対象を制限することなく、添付した図面と一致してかつ図示的な例として与えられる以下の説明に基づいて、より良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るコーティングシステムの斜視図である。
図2】第1の使用構成における、図1のシステムの幾つかの部材の、より大きな縮尺の斜視図である。
図3】システムが第2の使用構成にある場合の、図2と同様の斜視図である。
図4図1~3のシステムの電極モジュールを制御するために使用される配線の概略的表示である。
図5図2のシステムの構成に対応する第1の使用態様における電極モジュールの斜視図である。
図6図5の構成における電極モジュールの破断図である。
図7図6の線VII-VIIに沿って拡大された部分断面図である。
図8】電極モジュールの分解図である。
図9】電極モジュールが第2の使用構成にある場合の図6と同様の破断図である。
図10】電極モジュールが図3のシステムの構成に対応する第3の使用態様にある場合の、図6と同様の破断図である。
図11】本発明の第2実施形態に係るコーティングシステムの概略的表示である。
図12】本発明の第3実施形態に係るコーティングシステムの前面図である。
図13図12の矢印A13の方向における図である。
図14】本発明の第3実施形態のコーティングシステムが別の動作構成にある場合の図13と同様の図である。
図15】本発明の第4実施形態に係るコーティングシステムの部分的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1~7に示されるコーティングシステム2は筐体4を含み、それは、鉱物ガラス又は有機ガラスから作られた透明窓8を備えたドア6により封鎖された内部容積V4を画定している。
【0014】
代替的に、ドア6は透明でない。
【0015】
筐体4は、コーティングシステム2で実行されるべきコーティングプロセスのためのキャビンを形成する。
【0016】
コーティングシステム2はまた、制御キャビネット10を含み、それは、それ以外にプログラム可能なロジックコントローラ又はPLC12を含む。図1において、制御キャビネット10のフロントパネルは、PLC12を示すために取り除かれている。
【0017】
コーティングシステム2は、3軸直角座標ロボットによって支持され、鉛直に配向されたその長手軸X14を有する超音波噴霧ヘッド14を含む。超音波ヘッドは、超音波ヘッド14の下部にある、コーティングされるべきワークピースW1に向けて下向きに向けられる。
【0018】
別の実施形態において、噴霧ヘッドは、軸X14が、特に、大容積/3Dのワークピースの場合に、コーティングされるべきワークピース表面の前方で、噴霧ヘッドの最適位置に対する垂直線との角度を示すことを可能とする6軸ロボットによって操作することができる。
【0019】
超音波ヘッドの周波数は、20kHz~10MHzの超音波の周波数範囲全体から選択することができ、例えば、以下の周波数である:25kHz、35kHz、48kHz、60kHz、120kHz、180kHz、250kHz。ナンバーメジアン径(NMD又はDN0.5)で示される、超音波噴霧ヘッドにより生成される液滴のサイズは、典型的に以下のように与えられる:69μm(25kHz)、50μm(35kHz)、38μm(48kHz)、32μm(60kHz)、18μm(120kHz)、12μm(180kHz)、8μm(250kHz)。
【0020】
超音波噴霧ヘッド14は、任意の商業的に利用可能なタイプであることができる。
【0021】
パイプ18は、超音波ヘッド14に霧化された液体を供給し、ヘッド14内で統合された、図示されていない振動部が作動して、ワークピースW1がヘッドの14の下に実際に位置した場合に、このコーティング用製品を霧化する。図2では、矢印F2は、超音波ヘッド14から出て、ワークピースW1に向けて向けられた霧化コーティング用製品の液滴の流れを示す。
【0022】
図1にのみ確認でき、注射器として示される計量ポンプ19から、パイプ18にコーティング用製品が供給される。好ましくは、計量ポンプ19は可動ピストンを有する。代替的に、他のタイプの計量装置、例えば、ギアポンプを、パイプ18を通じて超音波ヘッド14に供給するために使用することができる。超音波ヘッド14に供給するための計量装置を使用することで、コーティング用製品の量の正確な制御、したがって、液滴の流れF2の正確な制御が可能となる。
【0023】
ヘッド14を出る液滴の噴霧の外形をより良好に制御するために、シェーピングガスユニット20が、超音波ヘッド14の下部先端周りに設置される。このユニット20は、パイプ22により空気が供給され、液滴の流れF2周りで、図2の矢印F4によって示される空気の流れを放出する。これは、この流れが軸X14に対して放射状に分散することを避ける。代替的に、空気とは異なるガスを、シェーピングユニット20において使用することができる。
【0024】
ヘッド14は、ガイドレール16により示される3軸直角座標ロボットで、空間の3方向に可動である。
【0025】
ワークピースW1のコーティングの効率を向上するために、静電場Eが、噴霧ヘッド14と電極の間で生成される。
【0026】
これを行うために、電極モジュール30は、超音波ヘッド14及び3軸直角座標ロボットと共に、容積V4内に位置する。電極モジュール30はワークピースW1を支持する。言い換えると、ワークピースW1は電極モジュール30上にある。ワークピースW1は、電極32Aとの接触により静電的に帯電される。
【0027】
この電極モジュール30は、導電性材料、特に金属、例えば、鉄系金属(鋼、ステンレス鋼・・・)又は非鉄系金属(アルミニウム、銅・・・)及びそれらの合金のシートから作られた電極32Aにより構成された平坦な上側表面を有する。
【0028】
この電極32Aは、電極モジュール30の基部34上にあり、それは、合成材料のような電気的に絶縁な材料、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、二フッ化ポリビニリデン(PVDF)、塩化ポリビニル(PVC)で作られる。基部34は、接地電位からワークピースW1及び電極32を絶縁し、電極からの漏電を防止する。
【0029】
図4に示されるように、電極モジュール30は、制御キャビネット10内に位置した高電圧コントローラ36により制御される。より正確には、高電圧コントローラ36は、第1ケーブル38を通じて送電網に接続され、第2ケーブル40を通じて電極モジュール30に接続される。第3ケーブル42は、電極モジュール32を、接地された筐体4に接続する。
【0030】
他方では、制御ケーブル44により、PLC12が、事前に設立した制御シーケンスに従って、かつ、適用可能な安全ルールに一致する方法で、高電圧コントローラ36を制御することが可能となる。
【0031】
超音波噴霧ヘッド14は、図示されていない接地ケーブル及び図示されていない超音波コネクタを通じて接地され、それらは、「二重接地」と考えることができる。実際に、これは、超音波ヘッド14の振動部が、高電圧に供された場合に操作を妨げることができる電気装置である限りは、重要である。したがって、高電圧が、超音波ヘッド14のレベルでなく電極モジュール30のレベルで印加される、コーティングシステム2の一般的なレイアウトが有利である。
【0032】
電極モジュール30に、ケーブル40を通じて電流が供給された場合、静電場Eが、超音波ヘッド14と電極32との間に発生する。静電場線Lは、超音波ヘッドと、一方は電極32との間で、他方はワークピースW1との間で延びる。
【0033】
電極32Aは、0.1kV~100kV、好ましくは5kV~30kVの範囲の高電圧に帯電される。高電圧が負電圧である場合、超音波噴霧ヘッド14を出る霧化コーティング用製品の液滴は、その影響により正に帯電されて、それらは、電極32に向かう電場線L、したがって、電極32Aの上部にあるワークピースW1に向かう電場線Lに従う。
【0034】
図2の例において、ワークピースW1は平坦なピースであり、例えば、太陽電池のガラスカバーである。図5では、ワークピースW1は、電極32Aを完全に示すために、鎖点線(chain-dotted lines)で示される。
【0035】
そのような場合において、図5において示されるように、電極32Aの外形は平坦かつ長方形であり、ワークピースW1のエッジと実質的に同一な外形を有するエッジを持つ。
【0036】
例えば、電極32Aは、ワークピースW1により画定された長方形と同一の比を持ち、ワークピースW1の表面積SWの80%~5000%、好ましくは100~125%に含まれる表面積S32を持つ長方形であることができる。
【0037】
より正確には、表面積S32は、表面積SW以下であることができ、0.8~1の範囲の比S32/SWを持つ。代替的に、表面積S32及びSWは、等しいか又は実質的に等しいことができ、0.95~1.05の範囲の比S32/SWを持つ。別のアプローチによれば、表面積S32は表面積SW以上であることができ、1~50の範囲の比S32/SWを持つ。
【0038】
そのような環境下において、ワークピースW1周りで噴霧ヘッド14から「視認可能」である電極32Aの部分は、全ての電場線LがワークピースW1で終わり、閉じるように、図2の構成でのように減らすことができる。したがって、超音波ヘッド14から出る液滴は、ワークピースW1に向けて、電場Eによって効率的に向けられる。
【0039】
図5~10から理解することができるように、基部34は、電極32Aと、電極モジュール30内で使用される任意の他の電極との最大寸法に対応する、長さL46及び幅W46を持つ領域を形成した上部空洞46を画定している。
【0040】
図2、5、6及び8の構成において、電極32Aは、それが空洞46を塞ぐように、可能である最大の寸法を有する。ノッチ47は、例えば、スクリュードライバのようなツール又は指先で、電極32Aを基部34から分離しなければならない場合に、空洞46に横方向に接近して、電極32Aに持ち上げ効果を与える。
【0041】
基部34はまた、高電圧コントローラ36から受け取った電流を、ケーブル40を通じて、電極32Aに印加されるべき高電圧に変換するのに適したサブモジュール50を収容する凹部48を画定している。
【0042】
サブモジュール50は、静電噴霧、特にハンドガンの分野での公知の技術に従って、一連のダイオードによって作られた高電圧発生器52を含む。サブモジュール50は、第1軸X56に沿って延びている第1細長ハウジング56を画定している絶縁ボディ54を含む。ボディ54はまた、軸X56に平行な第2軸X58に沿って延びている第2細長ハウジング58を画定している。実際に、軸X56及びX58は、任意の配向を持ち非平行であることができる。好ましい構成において、軸X56及びX58は実質的に平行であり、すなわち、30°未満の軸間の角度に収束するか又は発散して、それらがボディ54の同一の側で開く。この構成は、供給ケーブル40が、高電圧の電力と、接地された参照とを一緒にすることができるため、極めて整った(neat)接続を作る。接続ハウジング60は、軸X56及びX58に垂直に、ハウジング56及び58を接続する。したがって、ハウジング56、58及び60は、サブモジュール50の高電圧供給手段を収容するためのU字状容積を画定している。
【0043】
放電抵抗62は、接続ロッド64と共に、ハウジング58内に位置する。他方では、コネクタ66は、ハウジング60内に収容される。
【0044】
バネ68は、高電圧発生器52とコネクタ66との間に入る。別のバネ70は、コネクタ66と抵抗62の間に入る。したがって、コネクタ66は、バネ68及び70の補助により、高電圧発生器52及び放電抵抗62を接続する。
【0045】
接地プレート72は、ハウジング56及び58がハウジング60から反対側に開くボディ54の一方の端部に位置する。これは、高電圧発生器52及び接続ロッド64を、接地ケーブル42を通じて地面に接続することを可能とし、一方で、高電圧発生器52はまた、個々の導体40A、40B及び40Cを通じてケーブル40に接続される。明確にするために、コネクタ40A、40B及び40Cは図8にのみ示される。
【0046】
コネクタ66は、凹部48から空洞46を分離する基部34の壁78の開口76を通過する接触部74を含む。したがって、サブモジュール50が凹部48内に設置された場合は、接触部74が、高電圧発生器52から発生した高電圧を、空洞又は領域46内に置かれた任意の電極に印加することができるように、接続部74は壁78と同一平面にあるか又は空洞又は領域46に突出している。
【0047】
図7に示されるように、接触部74は、コネクタ66の鉛直穴67内に位置した導電性スタッドにより形成される。コネクタ66は、Oリング79により壁78内に固定される。穴67内のスタッド74の鉛直位置は、穴67の中心軸X67に沿って調整することができる。バネ69は、有利には、穴67の閉端部に設けられ、それは電極32Aに対してスタッドにバイアスをかける。
【0048】
図5、6、9及び10から理解することができるように、異なる形状を持つ電極を、基部34及びサブモジュール50と共に使用することができる。
【0049】
例えば、長方形の外形の大きなワークピースW1に対して図2の構成で使用される長方形の電極32Aを、図9に示されるように、携帯電話のスクリーンのようなより小さい寸法を持つワークピースW2に合わせた平坦かつ長方形の外形を有する電極32Bに置き換えることができる。電極32Bが部材74に接触するように、空洞46の中心部内に位置する場合、この電極はまた、超音波ヘッド14で静電場を作り出すのに適し、図2に関連して説明された操作を、ワークピースW2周りに電極32Bで閉じている静電場線により得ることができる。
【0050】
電極32Cはまた、ワークピースW3が、図3及び図10に示されるようにディスク又は球の一部の形態で使用される場合に、使用することができる。例えば、ワークピースW3は、異なるコーティング層、例えば、疎水性層、上塗り保護層、ハードコーティング又は反射防止コーティング層でコーティングされるべき光学レンズであることができる。ワークピースW3がディスクである場合、電極32Cは平坦である。ワークピースW3が球の一部の形態である場合、電極32Cは、好ましくは、ワークピースW3の外形に従うように、屈曲又は湾曲される。この第2の場合において、電極32Cは、空洞46に対して上向きに突き出すことがあり、それは、電極32Cを収容するための領域を形成する。
【0051】
図9及び図10では、理解するのをより簡単にするために、ワークピースW2及びW3の大域的外形と、電極32B及び32Cの大域的外形が、点線で部分的に示される。
【0052】
図3に示されるように、電極32Cと、設置された超音波ヘッド14との間に設立された静電場Eは、部材14と32Cの間で延びる電場線Lを生じさせ、流れF2の形態で超音波ヘッド14を出る液滴が、ワークピースW3に向けてこれらの電場線により案内される。
【0053】
この例において、ワークピースW3と電極32Cとの各々の直径の比は、0.8~2で選択することができる。
【0054】
処理されるべきワークピースの実際の形状に応じて、領域46上に置かれた電極について、他の外形を選択することができる。例えば、三角形の電極又は4つ超の辺を持つ多角形の電極を、多角形又は円形、特に楕円外形であることができる、処理されるべきワークピースの輪郭に従うように、製造することができる。また、電極の3次元外形又は曲線外形の設計を選択することができる。例えば、半球又は放物体の電極を、半球又は放物体の光学レンズを支持するために設計することができる。拡大解釈すれば、任意の大容量の規則的又は不規則的な外形の電極を、処理されるべきワークピースの形状に応じて選択することができる。
【0055】
実際に、電極32A、32B、32C又は同等物のエッジは、有利には、超音波ヘッド14から見た場合、ワークピースの輪郭の像である。言い換えると、電極のエッジは、ワークピースの輪郭周りに液滴を均一に分布し、かつ、ワークピースへの製品の移動効率を増加するように、規定することができる。
【0056】
有利には、電極32A、32B又は32Cのエッジは、ワークピースの輪郭の正確な像であり、ここで、「正確な像」とは、電極のエッジを境界とした表面の領域と、ワークピースの輪郭を境界とした領域との間の差が、その輪郭を境界とした領域の10%未満であることを意味する。
【0057】
他方では、電極32A、32B又は32Cの形状は、この領域における電極の露出面を増加させることで適合させることができ、電極の露出面とは、ワークピースのエッジ上でコーティングプロファイルを正確に制御するように、超音波ヘッド14からワークピース周りで視認可能である面である。
【0058】
図11~15に示される本発明の第2、第3及び第4実施形態において、第1実施形態のものと同様な部品は、同一の参照番号であり、詳細には説明されない。以後は、主に第1実施形態との差を説明する。
【0059】
図11の第2実施形態において、コーティングされるべきワークピースW4は血管用ステントである。そのような場合において、電極32Dは、長手軸X32に沿って延び、絶縁部34によって保持されたマンドレルとして形作られ、基部35内に含まれる機構によりこの軸周りで回転駆動される。電極32Dは円筒状であり、ステントW4により全体的に又は部分的に囲われるように形作られる。
【0060】
高電圧発生器52を含むサブモジュール50は、基部34の外側に位置し、電極32Dの外周面にスライド接触している導電性ブラシ82で終端したケーブル80により、電極32Dに接続される。
【0061】
図11の右側に見ることができるように、幾つかの他のマンドレル32E、32Fを、コーティングされるべきステントW4の形状に応じて、電極モジュール30の部品34、35及び50と共に使用することができる。
【0062】
代替的に、電極32D~32Eは、コーティングされるべきワークピースW4の外形に応じて、非円筒状であることができる。
【0063】
図12~14に示される本発明の第3実施形態において、電極32Gは、超音波ヘッド14周りに設置され、電極32Gに、高電圧発生器52を含む電極モジュール30のサブモジュール50を通じて、高電圧が供給される。そのような場合において、超音波ヘッド14の放出ノズル15から出る液滴の流れF2は、接地プレート84上にあるコーティングされるべきワークピースW5に向けて延びる電極32のスパイク32G1のおかげで、コロナ効果、すなわち、ノズル15周りの空気のイオン化により静電的に増加される。
【0064】
ワークピースW5が、図12の実線で示されるように円形である場合、図13に示されるように、電極32Gはまた円形であり、そのスパイク32G1は、超音波ヘッド14の長手軸X14周りに規則的に分布する。
【0065】
ワークピースW5が、図12の参照番号W5’に示されるように楕円外形を有する場合、電極はまた、電極32Hで図14に示されるように、楕円として形作ることができる。そのスパイク32H1は、コーティングされるべきワークピースW5’の表面上に液滴を均一に又は非均一に分配するために、超音波ヘッド14の中心軸X14及び放出ノズル15の周りで規則的に又は不規則的に分布することができる。
【0066】
図15に示されるように、電極32Iのスパイク32I1は、液滴の流れF2の方向に、超音波ヘッド14のノズル15及び中心軸X14に向けて収束することができる。
【0067】
α32は、超音波噴霧ヘッド14の中心軸X14と、スパイク32I1の長手軸X32との間の角度を示す。この角度は、コーティングされるべきワークピースの形状、及び/又は、軸X14に沿って測定される電極32Iとワークピースの間の距離に応じて調整可能である。角度α32は、軸X14に対するスパイク32I1の配向軸である。
【0068】
図示されていない代替的な実施形態によれば、電極は、ワークピース自体により形成されることがある。例えば、第1及び第2実施形態において、ワークピースW1~W4は、接触部74又はブラシ82に直接的に電気的接触していることがある。
【0069】
上記で考えられた実施形態及び変形形態の特徴は、本発明の新規の実施形態を作り出すために、組み合わせることができる。
【0070】
特に、ユニット20と同様のエア噴出ユニットを、第2~第4実施形態において使用することができる。
本発明は、以下の態様を含んでいる。
(1) 液体コーティング用製品でワークピース(W1-W5、W5’)をコーティングするためのコーティングシステム(2)であって、コーティング用製品の液滴を生成するための超音波ヘッド(14)を含み、
-電極(32A-32I)であって、前記電極と前記超音波噴霧ヘッドとの間に静電場(E)を発生させるための電極(32A-32I)と、
-前記電極に高電圧を供給するための、前記電極に接続された高電圧発生器(52)と
をさらに含む、コーティングシステム。
(2)前記電極(32A-32I)の外形が、前記ワークピース(W1-W5、W5’)の形状に基づいて構成可能である、(1)に記載のコーティングシステム。
(3)前記電極(32A-32C)のエッジが、前記超音波ヘッド(14)から見た場合に、前記ワークピース(W1-W3)の輪郭の像、好ましくはこの輪郭の正確な像である、(1)又は(2)に記載のコーティングシステム。
(4)前記電極(32A-32F)が前記ワークピース(W1-W4)を支持し、前記ワークピースに接触している、(1)~(3)のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
(5)前記電極(32A-32C)が、前記ワークピースの形状に従って形作られ、前記高電圧発生器(52)を含む基部(34)により支持された、(1)~(4)のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
(6)前記基部(34)が、前記ワークピース(W1-W3)を接地電位から絶縁し、前記電極(32A-32C)からの漏電を防止している、(5)に記載のコーティングシステム。
(7)前記基部(34)が、異なる外形の電極(32A-32C)を収容するために構成された領域(46)を画定している、(5)又は(6)に記載のコーティングシステム。
(8)電気接触部(74)が、前記高電圧発生器(52)を前記領域に収容された電極(32A-32C)に接続するための前記領域(46)に位置した、(7)に記載のコーティングシステム。
(9)前記電気接触部(74)が、前記領域(46)に収容された電極(32A-32C)に非平行な軸(X67)に沿って可動であり、この電極に向けてバイアスをかけられている、(8)に記載のコーティングシステム。
(10)前記電極(32D-32F)が、前記ワークピース(W4)により少なくとも部分的に囲まれるように形作られた、(1)~(9)のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
(11)前記電極(32D-32F)が、長手軸(X32)周りで回転可能である、(10)に記載のコーティングシステム。
(12)前記電極(32G-32I)が前記超音波ヘッド(14)に固定され、イオン化により液滴(F2)を帯電するように構成された、(1)又は(2)に記載のコーティングシステム。
(13)前記電極(32G-32I)に、前記ワークピースの形状に基づいた分布を持つ、前記超音波ヘッド(14)の放出ノズル(15)周りに広がったスパイク(32G 1 -32I 1 )が設けられた、(12)に記載のコーティングシステム。
(14)前記超音波噴霧ヘッド(14)の中心軸(X14)に対する前記スパイク(32I 1 )の配向角(α321)が、前記ワークピースの形状及び/又は前記電極(32I)と前記ワークピース間の距離に基づいて調整可能である、(13)に記載のコーティングシステム。
(15)前記電極が前記ワークピースにより形成された、(1)に記載のコーティングシステム。
(16)前記超音波ヘッド(14)に、前記超音波ヘッドを出た液滴(F2)周りに、シェーピングエアの噴射(F4)を運ぶように構成されたエア噴出ユニット(20)が設けられた、(1)~(15)のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15