(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】電気スイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 1/44 20060101AFI20220208BHJP
H01H 15/06 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
H01H1/44
H01H15/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017180841
(22)【出願日】2017-09-21
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】10 2016 117 786.5
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518263944
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト ファングマン
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-183523(JP,A)
【文献】特開2012-003859(JP,A)
【文献】特開2008-073779(JP,A)
【文献】特開2013-041715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/06 - 1/66
H01H 13/00 - 15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータを有する電気器具に適用される電気スイッチであって、
前記電気スイッチのスイッチハウジング内に位置する回路基板であって、その上面に接点経路及び電位差計軌道が配置された回路基板と、
前記接点経路と接触して接点システムをスイッチオンするように構成される第1の滑り接点と、
前記電気モータの回転速度及び/又はトルクを設定するために、前記電位差計軌道と接触するように構成される第2の滑り接点と、を備え、
前記第1の滑り接点及び前記第2の滑り接点は、同期して移動し、
前記第1の滑り接点及び前記第2の滑り接点は、前記スイッチハウジング内でプランジャに接続されたスライダに配置され、前記プランジャは前記スイッチハウジングから突出し、
前記電気スイッチの前記スイッチハウジングは、上側シェル及び下側シェルを備え、前記スイッチハウジングの上側シェルと下側シェルとの間に一体型円周シールが設けられ、前記シールは、前記スイッチハウジングの開口部の領域でリングに形成され、前記プランジャは、前記開口部を貫通して前記スイッチハウジングから突出している、
ことを特徴とする電気スイッチ。
【請求項2】
前記接点経路は、少なくとも前記第2の滑り接点の可能な最長変位経路と同じ長さである、請求項1に記載に電気スイッチ。
【請求項3】
前記回路基板の前端上の前記接点経路に隣接して、絶縁パッドが配置されかつ前記接点経路の延長部として設けられ、前記第1の滑り接点が前記接点経路と接触するとき、前記接点システムはオン位置にあり、前記第1の滑り接点が前記絶縁パッドと接触するとき、前記接点システムはオフ位置にある、請求項1に記載の電気スイッチ。
【請求項4】
前記接点経路及び前記電位差計軌道は、前記回路基板の表面の一方に配置されて同じ方向に延びている、請求項1に記載の電気スイッチ。
【請求項5】
前記スライダは、前記回路基板の上方の平面内で前記プランジャによって直線状の摺動移動する、請求項
3に記載の電気スイッチ。
【請求項6】
前記プランジャ
は、作動素子によって外部から手動的に始動される、請求項5に記載の電気スイッチ。
【請求項7】
前記上側シェル及び下側シェルは、留め接続部によって一緒に接続される、請求項6に記載の電気スイッチ。
【請求項8】
前記プランジャと接触して戻しばねが配置され、オン位置からオフ位置に戻る前記移動は、作動素子が前記プランジャに圧力を加えないとき、前記戻しばねによって行なわれる、請求項
6に記載の電気スイッチ。
【請求項9】
前記第1の滑り接点及び前記第2の滑り接点の端部は、U字形とされ、前記接点経路又は前記電位差計軌道上にばね力によって位置している、請求項1に記載の電気スイッチ。
【請求項10】
前記電気モータの方向を変える目的で転換機器が設けられ、前記転換機器は、前記回路基板の表面
の1つの上の導電経路と相互作用する、請求項1に記載の電気スイッチ。
【請求項11】
電気モータを有する電気器具に適用される電気スイッチであって、
前記電気スイッチのスイッチハウジング内に位置する回路基板であって、その上面に接点経路及び電位差計軌道が配置された回路基板と、
前記接点経路と接触して接点システムをスイッチオンするように構成される第1の滑り接点と、
前記電気モータの回転速度及び/又はトルクを設定するために、前記電位差計軌道と接触するように構成される第2の滑り接点と、を備え、
前記第1の滑り接点及び前記第2の滑り接点は、同期して移動し、
前記回路基板の前端上の接点経路に隣接して絶縁パッドが配置され、前記絶縁パッドは前記接点経路の延長部として設けられ、前記第1の滑り接点が前記接点経路と接触するとき、前記接点システムはオン位置にあり、前記第1の滑り接点が前記絶縁パッドと接触するとき、前記接点システムはオフ位置にある、
ことを特徴とする電気スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0002] 本発明は、電気スイッチに、特に電気モータを有する手動操作式動力工具に使用される電気スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
[0003] 一般に、このタイプの電気スイッチは、電気ドリル、コードレスねじ回し、ハンマードリルなどのような、手動操作式の電動工具及び電気器具に用いられ、外部から始動される作動素子によって切換可能な電気回路と、モータの回転速度又はトルクの制御及び規制とを設けることができる。一般に、この目的のために回転式又は摺動式の電位差計が使用される。この回転式速度制御に加えて、機械式転換機器を使用することも公知である。機械的な転換機器は多くの接点システムが必要であり、それによりスイッチの複雑が構造になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0004] 従って、改善された電気スイッチに対する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0005] 電気スイッチは、より詳しくは電気モータを有する手動操作式動力工具で使用する。この種のスイッチはスイッチハウジングを含む。このハウジングから、手動で電気機器を操作するためのプランジャが突出しており、プランジャは作動素子に接続される。作動素子を始動させることにより、プランジャが移動し、すなわち電気機器のスイッチがオフする初期位置から、電気機器が作動しているオン位置に移動する。プランジャが移動すると、スイッチハウジング内に配置された接点システムの少なくとも1つの接点が切り換わる。この接点システムは、プランジャ上に配置されたスライダによって移動可能な滑り接点、並びにスイッチハウジング内に位置固定に配置された回路基板上に設けた接点経路との両方を含む。接点システム用の接点経路に加えて、回路基板は、電位差計軌道の形とされて追加の滑り接点と相互作用する接点パッドをさらに特徴とする。上記滑り接点は、同様に、プランジャ上に配置されたスライダによって移動可能である。電気モータの回転速度又はトルクは、電位差計軌道と滑り接点との相互作用によって調整可能である。接点システム用の接点経路及び電位差計軌道は、回路基板の同じ表面に位置する。スイッチのオン位置では、接点システムの滑り接点は、回路基板上の経路と接触し、同じ様式で、回転速度を変更するために用いる滑り接点は、電位差計軌道と接触する。スイッチのオフ位置では、接点システムの滑り接点は、接点経路と接触しない。それらは、例えば接点経路の前方で、回路基板の上面上にある絶縁パッド上に位置する。
【0005】
[0006] プランジャの移動が、回転速度を変更する滑り接点の移動の他に、接点システム用の滑り接点の移動にもつながると仮定すれば、接点経路及び電位差計軌道は、回路基板の同じ表面上に同じ向きで優先的に配置される。優先的な実施形態では、滑り接点は、オフ位置にある回路基板の前端に位置する。機器のスイッチがオンすると、プランジャの移動により、滑り接点が前端から引き離される。プランジャ上にしかもスイッチハウジング内に復元スプリングを設けることが好ましく、その力により、プランジャは、オフ位置の方向で自動的に後退する。
【0006】
[0007] 実施形態では、プランジャの移動(ひいてはプランジャに取り付けたスライダの移動でもある)は、すなわち回路基板と平行な平面における直線運動である。しかしながら、接点経路及び電位差計軌道が、回路基板上に円形の様式で対応して配置される場合、回転運動もまた可能である。
【0007】
[0008] 回転速度を制御することに加えて、回転方向も設定することが望ましい電気機器に関して、例えばさらに、電気スイッチの別の実施形態は、電気モータの回転方向を、例えば時計方向から反対時計方向に変えるための転換機器を含む。この目的のために、回路基板上に対応する導電経路を設けることができる。この場合、転換機器は、回路基板の他面、例えば下面に配置された導電路と相互作用するが、電位差計軌道及び接点システム用の接点経路は、回路基板の上面上に配置される。
【0008】
[0009] このようにプランジャの移動により、接点システムの滑り接点は、オン位置からオフ位置へ又は逆に移動し、この目的のために、ほんの短い調整進行経路を設ける。同時に、プランジャの移動により、回転速度及びトルクも変化し、その理由は、プランジャのスライダ上に設けた滑り接点が電位差計軌道と相互作用するからである。電位差計軌道に沿ったこれらの滑り接点の調整進行経路を変化させれば抵抗が変化し、抵抗は、例えば電気モータの回転速度によって規制される。このようにプランジャがさらに変位することによって、及び変位経路を延長することによって、接点システムの滑り接点は、関連する接点経路とさらに接触し、接点経路は、この目的のための対応する延長部も含む。結果として、プランジャにより、電気モータのスイッチをオンに切り換え、しかもその回転速度を調整するための接点が同時に作成される。
【0009】
[0010] 回路基板の両面がスイッチの様々な機能に利用可能であり、しかも回路基板がハウジング内に位置固定に配置されると仮定すれば、上述した新規な電気スイッチは、かなり小型に設計される。これによりまた、このタイプの電気スイッチのシールが単純化される。新規な電気スイッチの接点が単純化される。はんだ付けした締め接続部は、接点システムから省略され、こうして組立てがより容易になり、しかも製造コストがより安価になる。さらに、新規な電気スイッチは、低い高さで組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の1つの実施形態による電気スイッチの斜視図である。
【
図2a】
図1の電気スイッチをオフ位置で示す断面図である。
【
図2b】
図2a中の接点システムをオフ位置で示す斜視図である。
【
図2c】
図2a中の接点システムをオフ位置で示す平面図である。
【
図3a】
図1の電気スイッチをオン位置で示す断面図である。
【
図3b】
図3a中の接点システムをオン位置で示す斜視図である。
【
図3c】
図3a中の接点システムをオン位置で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0018] 次に、本発明の実施形態の技術的解決策が、本開示の実施形態における添付図面を参照して明確かつ完全に説明される。以下に説明する実施形態は、本発明の実施形態の全てではなく、ほんの一部であることは明らかである。本開示の実施形態に基づき、当業者によって創造的作業なしに得られる他のあらゆる実施形態は、本発明の保護範囲内に属する。
【0012】
[0019] ある構成部品が別の構成部品に「固定された」と記載するとき、それは、別の構成部品に直接固定することができ、又は中間の構成部品が存在できることに注意されたい。ある構成部品が別の構成部品に「接続された」と記載するとき、それは、別の構成部品に直接接続することができ、又は中間の構成部品が存在できる。ある構成部品が別の構成部品に「配置された」と記載するとき、それは、別の構成部品に直接配置することができ、又は中間の構成部品が存在できる。
【0013】
[0020] 全ての技術用語及び科学用語は、別段の定めがない限り、当業者によって理解される通常の意味を有する。この開示で用いる用語は、限定よりもむしろ例示である。この開示で用いる「及び/又は」という用語は、列挙された1つ以上の関連する品目の各々の及び全ての組合せが含まれることを意味する。
【0014】
[0021]
図1は、本発明の実施形態による電気スイッチ1を示す。電気スイッチ1は、モータを有する手動操作式の電動工具及び電気器具、例えば電気ドリル、コードレスねじ回し、ハンマードリルなどで使用することができる。この目的のために、この電気スイッチ1は、動力工具のスイッチハウジングに組み込み、例えば、手動操作可能な始動部材に電気スイッチ1のプランジャ13が接続部2を介して接続される。電気スイッチ1から電気ケーブル(図示せず)が延び、機器の電気モータに接続される。少なくとも1つの実施形態では、図示したスイッチ1は、電気モータの回転方向を設定するために調整可能な転換機器40を備える。転換機器40は、例えば動力工具内の対応するシフトレバーと相互作用し、シフトレバーは外部から調整可能である。他の実施形態では、電気モータが異なる方向に回転することが必要とされない動力工具は、外部からアクセス可能な転換機器40を省略することができる。
【0015】
[0022]
図1に示す電気スイッチのスイッチハウジング10は、2つのシェル、即ち上側シェル11及び下側シェル12を備える。シェル11とシェル12との間に一体型円周シール50を設け、円周シール50は、シェル11、12の縁部に配置され、開口部19の領域に円周シールリング51を備える。開口部19は、両方のシェル11及び12によって形成され、スイッチハウジング10から突出するプランジャ13のために設ける。
【0016】
[0023] スイッチ1内でプランジャ13にスライダ15が接続される。スライダ15は、プランジャ13によって、この場合は、プランジャ13の直線状押圧移動によって移動可能であり、スライダ15は、スイッチハウジング10内に配置された回路基板30の上方の平面内で移動可能である。スイッチ1が設置された状態では、プランジャ13は、作動素子によって外部から始動可能であり、それによってプランジャ13は、スイッチハウジング10の内部へ滑り込む。プランジャ13の直線状の摺動により、プランジャ13上に設けたスライダ15が変位する。
【0017】
[0024]
図2では、接点システム20の滑り接点22a、22bの他に、回転速度を制御するための滑り接点16a、16bも、スライダ15上に位置している。滑り接点16a、16bは、回路基板30の上面31上で電位差計軌道33、34と接触する。滑り接点22a、22bは、回路基板30の上面31上に同じ様式で位置している。少なくとも1つの実施形態において、スイッチのオフ位置(
図2aに示す)では、接点システム20の滑り接点22a、22bは、
図2bに見えるように、回路基板30の上面31に沿って延びている接点経路21a、21bに接触しない。
【0018】
[0025]
図2bには、滑り接点16a、16b、22a、22bがスライダ15及びプランジャ13なしで例示される。オフ位置では、滑り接点22a、22bは、接点経路21a、21bに接触しないが、接点経路21a、21bに隣接して回路基板30の前端に配置された絶縁パッド37に載置されることは明らかである。スライド15上に保持された滑り接点16a、16b、22a、22bは、プランジャ13の移動によって回路基板30の前端から引き離される。
【0019】
[0026]
図2cに示すように、接点システムの滑り接点22a、22bは、絶縁パッド37から下方へ移動し、非常に短い変位経路を進んで接点経路21a、21bと接触し、それによってスイッチ1及び対応する機器をオンに切り換える。滑り接点16a、16bは、既に電位差計軌道33、34に接触している。プランジャ13の対応する変位移動によって、電位差計軌道33、34に沿う抵抗は変更可能であり、回転速度は適切に調整可能である。この変位運動の間、接点システムの滑り接点22a、22bは、接点経路21a、21bに接触したままである。
【0020】
[0027] 回路基板30の上面31に配置された接点経路21a、21b及び電位差計軌道33、34は、同じ方向に延びるように設けている。接点経路21a、21bは、少なくとも滑り接点16a、16bの可能な最長変位経路と同じ長さであり、すなわち電位差計軌道33、34と一緒である。
【0021】
[0028]
図3a、
図3b、
図3cは、オン位置にある電気スイッチを示す。全ての滑り接点16a、16b、22a、22bは、接触パッド上に、即ち電位差計軌道33、34又は接点システム20の接点経路21a、21b上に位置する。これらの図から、回路基板30の前端の絶縁パッド37は、接点経路21a、21bの延長部として設けていることが明らかである。接触の防止はまた、絶縁パッド37以外の手段を使用によって設けることができる。
図3c中の矢印によって示すように、オン位置からオフ位置に戻る移動は、始動素子(図示しない)による圧力がプランジャ13に加わらないとすぐに、戻しばね60によって実行される。
【0022】
[0029] この実施例における滑り接点22a、22b、16a、16bの端部は、U字形であり、ばねを介して接点経路21a、21b又は電位差計軌道33、34の対応する接触パッド上に位置する。滑り接点16a、16b、22a、22bの選んだ形は、十分な接触圧力を与える。
【0023】
[0030] 上記実施形態は、本発明の技術的解決法を例示するに過ぎず、本発明を制限することを意図しない。本発明は、上記好ましい実施形態を参照して説明したが、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更をなし得ることは当然である。
【符号の説明】
【0024】
1 電気スイッチ
2 接続部
10 スイッチハウジング
11 上側シェル
12 下側シェル
13 プランジャ
15 スライダ
19 開口部
20 接点システム
30 回路基板
31 上面
32 下面
40 転換機器
50 円周シール
51 シールリング
60 戻しばね