(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20220208BHJP
E06B 3/22 20060101ALI20220208BHJP
E06B 1/28 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/22
E06B1/28
(21)【出願番号】P 2017191427
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】宇山 健
(72)【発明者】
【氏名】植竹 智英
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-265646(JP,A)
【文献】特開2006-307572(JP,A)
【文献】特開2017-053215(JP,A)
【文献】特開2014-211074(JP,A)
【文献】特開2017-008583(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02365180(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体及び前記枠体に開閉可能に取り付けられる障子を備える建具であって、
前記枠体の下部を構成する樹脂製の下枠と、
前記下枠の内部に配置される金属製の下枠芯材と、
前記障子の下部を構成する樹脂製の下框と、
前記下框の内部に配置される金属製の下框芯材と、
前記下枠の外部に前記下枠芯材に連結された状態で配置される
金属製の支持部材と、
戸先側の縦枠と前記下枠を前記枠体の内側で連結するコーナー金具と、
を備え、
前記支持部材は、前記下框と前記下枠の間で上下何れかを向く支持面を有
し、前記コーナー金具と一体的な部材として構成される建具。
【請求項2】
前記下框の下部に配置される樹脂製の下がり止め部材を更に備え、
前記障子が閉鎖位置にある状態で、前記支持面と前記下框の下部の間に隙間が形成されるとともに前記下がり止め部材に対して前記支持部材が左右方向に位置をずらして配置される請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記障子が閉鎖位置にある状態で、前記樹脂製の下がり止め部材と前記下枠の上下方向のクリアランスよりも、前記下框の下面と前記支持部材の前記支持面の間の上下方向のクリアランスの方が大きく構成される請求項2に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能な障子を備える建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開閉可能な障子を備える建具において、火災発生時の障子の下がりを防止する技術が知られている。この種の技術を開示するものとして例えば特許文献1や特許文献2がある。
【0003】
特許文献1には、アルミ製の金属下枠の室内側露出面を覆うように樹脂製の下枠が一体化されている下枠の内周面にスチール製の係合突部材が固定されている構成において、係合突部材の係合突部に、下框に形成される突片である保持片を係合させることによって、下框の反りを抑制するとともに、加熱発泡材により下枠と下框との間の隙間を塞ぐことにより、開口部装置の下辺において枠体と障子の間の隙間発生を防止し、防火性能を高くすることができると記載されている。
【0004】
特許文献2には、樹脂製建具であって、障子の下部に固定され、障子と枠体との間に設けられた金属製の障子側部材と、枠体に固定され、障子を閉じた状態にて、障子側部材と互いに間隔を隔てて当該障子側部材の下方に配置される金属製の枠側部材と、を有する構成について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-118714号公報
【文献】特許第5225196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
障子の下方に位置する下枠を樹脂製にした場合、特許文献1のようにスチール製の係合突部材を樹脂製の下枠に固定しても下枠が溶融すれば障子の下がりを適切な位置で受け止められないおそれもある。この点、特許文献2の構成では、障子の下部に固定される金属製の障子側部材と枠体に固定される金属製の枠側部材の2部材で障子の下がりを防止しているものの、部品手数及び製造工程が増加してしまうことに加えて障子の荷重をしっかりと受け止めるという点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、火災発生時の障子の下がりを確実に受け止める構成を複雑化することなく実現できる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、枠体(例えば、後述の枠体10)及び前記枠体に開閉可能に取り付けられる障子(例えば、後述の障子20)を備える建具(例えば、後述の建具1)であって、前記枠体の下部を構成する樹脂製の下枠(例えば、後述の下枠12)と、前記下枠の内部に配置される金属製の下枠芯材(例えば、後述の下枠芯材12d)と、前記障子の下部を構成する樹脂製の下框(例えば、後述の下框32)と、前記下框の内部に配置される金属製の下框芯材(例えば、後述の室内側下框芯材32d、室外側下框芯材32e)と、前記下枠の外部に前記下枠芯材に連結された状態で配置される又は前記下框の外部に前記下框芯材に連結された状態で配置される金属製の支持部材(例えば、後述の受け金具36,236,336,436)と、を備え、前記支持部材は、前記下框と前記下枠の間で上下何れかを向く支持面(例えば、後述の支持面36c,236c,236d,436c)を有する建具に関する。
【0009】
前記建具は、前記下框の下部に配置される樹脂製の下がり止め部材(例えば、後述の受け樹脂部材35)を更に備え、前記障子が閉鎖位置にある状態で、前記支持面と前記下框の下部の間に隙間が形成されるとともに前記下がり止め部材に対して前記支持部材(例えば、後述の受け金具36,236,336)が左右方向に位置をずらして配置されることが好ましい。
【0010】
前記建具は、前記障子が閉鎖位置にある状態で、前記樹脂製の下がり止め部材と前記下枠の上下方向のクリアランスよりも、前記下框の下面と前記支持部材の前記支持面の間の上下方向のクリアランスの方が大きく構成されることが好ましい。
【0011】
前記建具は、戸先側の縦枠と前記下枠を前記枠体の内側で連結するコーナー金具(例えば、後述の受け金具236,336)を更に備え、前記支持部材は、前記コーナー金具と一体的な部材として構成されることが好ましい。
【0012】
前記支持部材(例えば、後述の受け金具436)は、前記下框芯材(例えば、後述の室内側下框芯材32d)に連結された状態で前記下框に固定され、前記障子が閉鎖位置にある状態で、前記支持面(例えば、後述の支持面436c)が前記下枠の上面に対向するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の建具によれば、火災発生時の障子の下がりを確実に受け止める構成を複雑化することなく実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る建具を示す正面図である。
【
図4】本実施形態の建具が備える受け金具及びその周囲を示す縦断面図である。
【
図5】本実施形態の建具が備える受け金具及びその周囲を示す斜視図である。
【
図6】第1変形例の建具が備える受け金具及びその周囲を示す縦断面図である。
【
図7】第1変形例の建具が備える受け金具及びその周囲を示す斜視図である。
【
図8】第2変形例の建具に用いられる受け金具の斜視図である。
【
図9】第3変形例の建具が備える受け金具及びその周囲を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、「見付方向」とは、建物に形成された開口部に納められた建具(サッシ)の枠体に収められるガラスや障子の面内方向を意味し、「見込方向」とは、室内外方向(即ち、奥行き方向)を意味する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る建具1を示す正面図である。本実施形態の建具1は、防火仕様の縦辷り窓である。まず、建具1の全体構成について説明する。本実施形態の建具1は、建物開口部に固定される枠体10と、枠体10の内側に開閉可能に取り付けられる障子20と、を備える。
【0017】
枠体10は、上枠11、下枠12、吊元側縦枠13及び戸先側縦枠14が矩形に枠組みされて構成される。上枠11、下枠12、吊元側縦枠13及び戸先側縦枠14は、何れも樹脂製であり、溶着によって接合される。
【0018】
図2は、本実施形態の建具1の縦断面図である。上枠11の内部は、見込方向で複数の空間に区画されており、室外側から室内側の順に中空部11a,11b,11cが形成される。中空部11cには金属製の上枠芯材11dが配置される。また、上枠11の室内側下部には、下方に延びる延出部11eが形成され、延出部11eの室外側の見付面にはクッション材11fが配置される。同様に、下枠12の内部にも、見込方向に複数の中空部12a,12b,12cが形成され、中空部12bには金属製の下枠芯材12dが配置される。また、下枠12の室内側上部には、上方に延びる延出部12eが形成され、該延出部12eにもクッション材12fが配置される。
【0019】
図3は、本実施形態の建具1の横断面図である。吊元側縦枠13の内部も、見込方向で区画された複数の中空部13a,13b,13cが形成され、中空部13bには金属製の縦枠芯材13dが配置される。また、吊元側縦枠13の室外側には見付方向戸先側に延びる延出部13eが形成され、該延出部13eにもクッション材13fが配置される。
【0020】
戸先側縦枠14の内部にも、見込方向で区画された複数の中空部14a,14b,14cが形成され、中空部14bには金属製の縦枠芯材14dが配置される。戸先側縦枠14の室外側にも見付方向吊元側に延びる延出部14eが形成され、該延出部14eにもクッション材14fが配置される。
【0021】
図3に示すように、枠体10の内側の隅(内隅)には枠側コーナー金具46がそれぞれ配置される(
図2において図示省略)。枠側コーナー金具46は、4隅のそれぞれに配置される。枠側コーナー金具46自体は、枠体10の見込面に配置されるが、ネジ等の締結部材を介して枠体10の内側の芯材(上枠芯材11d、下枠芯材12d、縦枠芯材13d及び縦枠芯材14d)に締結固定される。より具体的には、枠体10の戸先側上部では、上枠芯材11dと縦枠芯材14dが枠側コーナー金具46によって連結され、吊元側上部では、上枠芯材11dと縦枠芯材13dが連結される。同様に、戸先側下部では、下枠芯材12dと縦枠芯材14dが枠側コーナー金具46によって連結され、吊元側下部では、下枠芯材12dと縦枠芯材13dが連結される。
【0022】
障子20は、ガラス25と、ガラス25を囲うように構成される框体30と、を含むように構成される。
【0023】
ガラス25は、室外側に配置される室外側ガラス25aと、室外側ガラス25aに対して隙間をあけて室内側に配置される室内側ガラス25bと、を備える複層ガラスである。室外側ガラス25aと室内側ガラス25bの間にはスペーサ26等が配置される。
【0024】
框体30は、上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34が矩形に枠組みされて構成される。上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34は、何れも樹脂製であり、溶着によって接合される。
【0025】
上框31の内部には、室外側から室内側に向かって複数の中空部31a,31b,31cが形成される。最も室内側に位置する中空部31cには、金属で形成される室内側上框芯材31dが配置される。中空部31bにも、金属製の室外側上框芯材31eが配置される。室内側上框芯材31d及び室外側上框芯材31eは、何れも上框31の長手方向に沿って延びている。上框31の室外側上部には、上枠11の一部と見込方向で対向する延出部31fが形成される。延出部31fの室内側にはクッション材31gが設けられる。また、延出部31fの下方には樹脂製の押し縁部材27を嵌合固定する嵌合固定部31hが形成される。
【0026】
下框32の内部にも、室外側から室内側に向かって複数の中空部32a,32b,32cが形成される。最も室内側に位置する中空部32cには、金属で形成される室内側下框芯材32dが配置される。中空部32bにも、金属製の室外側下框芯材32eが配置される。室内側下框芯材32d及び室外側下框芯材32eは、何れも下框32の長手方向に沿って延びている。下框32の室外側下部には、下枠12の一部と見込方向で対向する延出部32fが形成される。延出部32fの室内側にはクッション材32gが設けられる。また、延出部32fの下方には樹脂製の押し縁部材27を嵌合固定する嵌合固定部32hが形成される。
【0027】
吊元側縦框33の内部には、室外側から室内側に向かって複数の中空部33a,33b,33cが形成される。最も室内側に位置する中空部33cには、金属で形成される室内側縦框芯材33dが配置される。中空部33bにも、金属製の室外側縦框芯材33eが配置される。室内側縦框芯材33d及び室外側縦框芯材33eは、何れも吊元側縦框33の長手方向に沿って延びている。吊元側縦框33の室外側には、吊元側縦枠13の一部と見込方向で対向する延出部33fが形成される。延出部33fの室内側にはクッション材33gが設けられる。また、延出部33fの戸先側には樹脂製の押し縁部材27を嵌合固定する嵌合固定部33hが形成される。
【0028】
戸先側縦框34の内部には、室外側から室内側に向かって複数の中空部34a,34b,34cが形成される。最も室内側に位置する中空部34cには、金属で形成される室内側縦框芯材34dが配置される。中空部34bにも、金属製の室外側縦框芯材34eが配置される。室内側縦框芯材34d及び室外側縦框芯材34eは、何れも戸先側縦框34の長手方向に沿って延びている。戸先側縦框34の室外側には、吊元側縦枠13の一部と見込方向で対向する延出部34fが形成される。延出部34fの室内側にはクッション材34gが設けられる。また、延出部34fの吊元側には樹脂製の押し縁部材27を嵌合固定する嵌合固定部34hが形成される。
【0029】
本実施形態では、框体30内部の室外側に位置する芯材(室外側上框芯材31e、室外側下框芯材32e、室外側縦框芯材33e及び室外側縦框芯材34e)と、室内側に位置する芯材(室内側上框芯材31d、室内側下框芯材32d、室内側縦框芯材33d及び室内側縦框芯材34d)と、が框芯材連結金具67によって連結されている。框芯材連結金具67は、框体30の外側面の形状に応じて段差状に形成されるプレート部材である。框芯材連結金具67は、框体30(上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34)の外部に配置され、框体30の内部で異なる中空部に配置される室外側の芯材と室内側の芯材にネジ等の締結部材によってそれぞれ締結される。これによって見込方向に複数の中空部が形成される樹脂製の框体30が火災発生時の高温環境下で室外側と室内側に分離する事態が確実に防止されている。
【0030】
障子20は、上枠11に連結されるとともに上框31(框体30)に連結される上アーム部材61及び下枠12に連結されるとともに下框32(框体30)に連結される下アーム部材62によって開閉可能に枠体10の内側に支持される。本実施形態では、上アーム部材61及び下アーム部材62は、何れも框体30に対して金属により板状に成形される補強材65を介して連結される。
【0031】
障子20の戸先側には、ハンドル55に連動するスライドロック機構50が配置される。スライドロック機構50は、ハンドル55操作に連動して上下方向に移動するスライドプレート51と、スライドプレート51の戸先側の見込面に形成されるロックピン52と、を備える。戸先側縦枠14の内側の見込面には、ロックピン52が嵌合するロックピン受け金具15が固定される。本実施形態では、ロックピン52は、上下方向で複数個所に形成されており、ロックピン受け金具15もロックピン52の数に応じて上下方向に間隔をあけて複数固定される。また、スライドプレート51は、戸先側縦框34の戸先側にスライド嵌合された状態でハンドル55に連結されている。
【0032】
下框32には、通常使用時の障子20の下がりを防止するための受け樹脂部材35が下框32の下面に固定されている。受け樹脂部材35は、例えばポリアセタール(POM)樹脂により、その下部が室内側から室外側に向かうにつれて下側に近づくように傾斜した形状で成形される。また、障子20の左右方向において中央よりも戸先側に位置している。この受け樹脂部材35により、重みによって障子20が下がったとしても、受け樹脂部材35が下枠12に接触し、障子20のそれ以上の下方への移動が規制される。
【0033】
本実施形態の建具1は、受け樹脂部材35とは別に、火災発生時の障子20の下がりを防止する受け金具36を更に備える。この受け金具36に関する構成について説明する。
図4は、本実施形態の建具1が備える受け金具36及びその周囲を示す縦断面図である。なお、
図4では、枠側コーナー金具46の図示を省略している。
図5は、本実施形態の建具1が備える受け金具36及びその周囲を示す斜視図である。
【0034】
図4及び
図5に示すように、受け金具36は、下枠12の上面(見込面)に配置される。本実施形態の受け金具36は、締結孔36bが形成される固定面36aと、障子20を受け止める支持面36cと、を備える。
【0035】
締結孔36bは、見込方向に長い長孔として左右方向に並んで2箇所形成されており、受け金具36の取付位置を見込方向で調整可能となっている。締結孔36bに締結されるネジ(締結部材)37は、下枠12の見込面を貫通し、中空部12bの下枠芯材12dに締結固定される。これによって受け金具36と下枠芯材12dが連結される。下枠芯材12dには、予めネジ37を締結するための締結孔が形成されており、下枠12には、ネジ37を挿通するための孔が事前に形成されている。なお、ネジ37を通すための孔は、場合によっては締結時に形成してもよい。
【0036】
支持面36cは、障子20の下がりを受け止める部位である。
図4に示すように、支持面36cは、上方を向いており、閉鎖位置にある障子20の下框32の下面に対向する位置関係となっている。また、下框32の中空部32bに配置される室外側下框芯材32eに上下方向では重なる位置関係となっている。
【0037】
本実施形態の室外側下框芯材32eには、下框32の上面(見込面)に配置されるガラス外れ止め部材40がネジ45を介して連結されている。ガラス外れ止め部材40は、ガラス25の室外側への移動を規制する部材であり、内側の底面には加熱発泡材38が配置される。また、固定面36aにおける室内側の上方には、下框32の下面に配置される加熱発泡材39が取り付けられる。本実施形態の加熱発泡材39は、下框32と受け樹脂部材35との間に位置する。
【0038】
室外側の上下方向では、上から順にガラス25、ガラス外れ止め部材40(加熱発泡材38)、下框32の室外側の上面、室外側下框芯材32e、下框32の室外側の下面、支持面36c、固定面36a、下枠12という位置関係になる。また、室内側の上下方向では、上から順に、下框32の室内側の上面、室内側下框芯材32d、下框32の室内側の下面、加熱発泡材39、固定面36a、下枠12、下枠芯材12dという位置関係となる。
【0039】
図5に示すように、下枠12の戸先側には枠側コーナー金具46が配置されている。枠側コーナー金具46は、戸先側縦枠14の見込面からネジ47を介して中空部13bに位置する縦枠芯材14dに連結されるとともに、下枠12の見込面からネジ47を介して中空部12bに位置する下枠芯材12dに連結される。また、障子20が閉鎖位置にある状態で枠側コーナー金具46の近傍に受け樹脂部材35が位置する。
【0040】
本実施形態の受け金具36は、下枠12の戸先側に位置する枠側コーナー金具46及び受け樹脂部材35に干渉しないように左右方向又は見込方向に位置をずらした上で、下枠12の上面(見込面)における戸先側に配置される。ここでいう戸先側は、少なくとも下枠12の長手方向中央よりも戸先に近い側である。本実施形態では、障子20が閉鎖位置にある状態において、左右方向で戸先側から吊元側に向かって枠側コーナー金具46、受け樹脂部材35、受け金具36の順に配置される。
【0041】
受け樹脂部材35は、通常の使用範囲における障子20の下がりを防止するためのものである。一方、受け金具36は火災時に障子20の下がりを防止するためのものである。本実施形態では、閉鎖位置における受け樹脂部材35と下枠12の最も近接する部分の上下方向のクリアランスよりも、下框32の下面と受け金具36の支持面36cの間の上下方向のクリアランスの方が大きくなるレイアウトになっている。これによって、通常の使用範囲では、受け金具36は下框32に接触し難くなっており、障子20が下がると受け樹脂部材35が下枠12に先に接触するようになっている。
【0042】
以上説明した上記実施形態の構成によれば、以下のような効果を奏する。
建具1は、枠体10の下部を構成する樹脂製の下枠12と、下枠12の内部に配置される金属製の下枠芯材12dと、障子20の下部を構成する樹脂製の下框32と、下框32の内部に配置される金属製の室内側下框芯材32d及び室外側下框芯材32eと、下枠12の外部である見込面(上面)に下枠芯材12dに連結された状態で配置される金属製の受け金具(支持部材)36と、を備え、受け金具36は、下框32と下枠12の間で上下何れかを向く支持面36cを有する。
【0043】
これにより、火災によって樹脂部分が溶融して障子20が下がろうとしても、金属製の下枠芯材12dによって保持された受け金具36の支持面36cが下框32の荷重をしっかりと受け止めることができるので、受け金具36から障子20が室外側にずれたりすることなく、障子20の下がりを確実に防止できる。また、下枠12又は下框32の何れかに受け金具36を設けるというシンプルな構成で実現できるので、従来技術に比べて部品点数を少なくすることができ、装置構成及び工程の複雑化を避けることができる。
【0044】
また、本実施形態では、下框32の下部に配置される受け樹脂部材35を更に備え、障子20が閉鎖位置にある状態で、支持面36cと下框32の下部の間に隙間が形成されるとともに受け樹脂部材35に対して受け金具36が左右方向に位置をずらして配置される。
【0045】
これにより、通常の使用範囲での障子20の下がりは受け樹脂部材35で防止し、火災発生時の障子20の下がりは金属製の受け金具36で障子20の下がりを防止することができる。従って、受け樹脂部材35については使用範囲での適した形状、例えば本実施形態のように下部が傾斜するように成形し、火災発生時には支持面36cを有する受け金具36によって障子20の荷重をしっかりと受け止める構成を実現できる。また、受け樹脂部材35と下枠12のクリアランスと下框32と受け金具36のクリアランスの設定によって障子20の下がりを防止する程度を目的に応じて調整することができる。
【0046】
また、本実施形態では、障子20が閉鎖位置にある状態で、樹脂製の受け樹脂部材35と下枠12の上下方向のクリアランスよりも、下框32の下面と受け金具36の支持面36cの間の上下方向のクリアランスの方が大きく構成される。
【0047】
これにより、通常の使用範囲で受け金具36が下枠12に接触する事態の発生を確実に防止できる。
【0048】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。なお、以下の説明において上記実施形態と共通又は同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0049】
まず、コーナー金具に受け金具の機能を持たせた第1変形例について説明する。
図6は、第1変形例の建具1が備える受け金具236及びその周囲を示す縦断面図であり、
図7は、第1変形例の建具が備える受け金具236及びその周囲を示す斜視図である。
【0050】
図6及び
図7に示すように、第1変形例の受け金具236は、下枠12と戸先側縦枠14の連結部分の内隅に配置される。受け金具236は、第1固定面236aと、第2固定面236eと、室外側に位置する支持面236cと、室内側に位置する支持面236dと、を備える。
【0051】
第1固定面236aは、取付状態において下枠12の見込面の最も戸先側に位置する。第1固定面236aには、左右方向に細長い締結孔236bが見込方向に間隔をあけて2箇所形成されている。第1固定面236aの締結孔236bを通じてネジ37(
図7参照)が下枠12の中空部12bの下枠芯材12dに締結固定されることによって第1固定面236aが固定される。第2固定面236eは、取付状態において戸先側縦枠14の見込面の最も下側に位置する。第2固定面236eには、上下方向に細長い締結孔236fが見込方向に間隔をあけて2箇所形成されている。第2固定面236eの締結孔236fを通じてネジ47が戸先側縦枠14の中空部14bの縦枠芯材14dに締結固定されることによって第2固定面236eが固定される。このように、第1変形例の受け金具236は、下枠12と戸先側縦枠14を連結する枠側コーナー金具として機能する第1固定面236a及び第2固定面236eを備える。
【0052】
室外側に位置する支持面236cは、第1固定面236aの室外側端部から上方に延びた後、室外側に略直角に屈曲して形成される。室内側に位置する支持面236dは、第1固定面236aの室内側端部から上方に延びた後、室内側に略直角に屈曲して形成される。支持面236c及び支持面236dは、何れも上方を向いており、火災発生時の障子20の下がりをしっかりと受け止めることができる形状となっている。
【0053】
本実施形態では、室内外側に位置する支持面236c及び室内側に位置する支持面236dは、その高さが略同じ高さになっており、受け樹脂部材35とのクリアランスの関係も上記実施形態と同様の関係となっている。なお、その他の枠側コーナー金具46は、上記実施形態と同様の構成であり、下枠12と戸先側縦枠14の連結部分の内隅に配置されるものだけが第2変形例の受け金具236となっている。場合によっては、下枠12と吊元側縦枠13の連結部分に配置される枠側コーナー金具も、第1変形例と同じ受け金具236を配置する構成としてもよい。
【0054】
コーナー金具として機能する受け金具は、第1変形例の構成に限定されるわけではない。
図8を参照してコーナー金具として機能する第2変形例の受け金具336について説明する。
図8に示す受け金具336のように、見込方向の一側(室内側又は室外側)だけに支持面236dを備える構成とすることもできる。第2変形例の受け金具336は、支持面236dが見込方向の片側だけである以外は、基本的に第1変形例の受け金具236と同様の構成である。また、見込方向の室外側及び室内側の何れに支持面236dを設けるかは、建具のその他の構成に応じて適宜選択することができる。
【0055】
以上説明した第1変形例及び第2変形例の受け金具236,336は、戸先側縦枠14と下枠12を枠体10の内側で連結するコーナー金具と一体的な部材として構成される。
【0056】
この構成により、上記実施形態と同様に火災発生時の障子20の下がりを防止することができる。また、受け金具236,336が枠側コーナー金具としても機能するので上記実施形態に比べて受け金具236をより戸先側に配置できるとともに障子20の下がりを防止するための部品点数を削減することができる。
【0057】
次に、上記実施形態から受け樹脂部材35を省略した第3変形例について説明する。
図9は、第3変形例の建具1が備える受け金具436及びその周囲を示す縦断面図である。
【0058】
図9に示す第3変形例の建具1は、受け樹脂部材35を備えていない点と、受け金具436が下枠12ではなく下框32に固定されている点と、が上記実施形態と異なっている。第3変形例では、受け金具436は、下框32の下部に固定される固定面436aと、下枠12の見込面に対向する支持面436cと、を備える。
【0059】
受け金具436の固定面436aには締結孔436bが形成されており、この締結孔436bを通じてネジ437が下框32の中空部32cの室内側下框芯材32dに締結される。これによって受け金具436が下框32に固定される。
【0060】
以上説明したように、第3変形例では、受け金具436が、室内側下框芯材32dに連結された状態で下框32に固定され、障子20が閉鎖位置にある状態で、支持面436cが下枠12の上面に対向するように構成される。
【0061】
この構成により、障子20が下がっても受け金具435の支持面436cが下枠12(下枠芯材12d)に面接触して下方から支持されるので、障子20の下がりを防止することができる。また、障子20を閉鎖位置から開放位置にした場合でも、受け金具436が障子20とともに移動するので、下枠12の見込面に受け金具が残らず、障子20を開いたときの意匠性をより向上させることができる。また、受け樹脂部材35を省略することができるので、障子20の下がりを防止するための構成を実現できる建具1の全体としての部品点数の削減に寄与することができる。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、障子20の戸先側の下がりを防止するという観点では受け金具(支持部材)は戸先側に配置されることが好ましいが、吊元側に位置する構成としてもよい。また、横辷り窓等の他の構成の建具においても本発明を適用することができる。
【0063】
また、上記実施形態で説明した上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34の構成に限られず、框体の構成は適宜変更することができる。例えば、框体(上框、下框、吊元側縦框及び戸先側縦框)の見込方向室内側及び室外側の何れか一側又は両方にアルミ形材等の金属製のカバー部材を配置する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 建具
12 下枠
12d 下枠芯材
20 障子
32 下框
32d 第1下框芯材(下框芯材)
32e 第2下框芯材(下框芯材)
35 受け樹脂部材(下がり止め部材)
36,236,336,436 受け金具(支持部材)
36c,236c,236d,436c 支持面