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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】選択的焼結法用のポリアミド粉末
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/14 20060101AFI20220208BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20220208BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220208BHJP
   C08G 69/46 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C08J3/14 CFG
B29C64/106
B33Y70/00
C08G69/46
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2017191544
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2018059092
(43)【公開日】2018-04-12
【審査請求日】2017-09-29
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-07
(31)【優先権主張番号】10 2016 219 080.6
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ディークマン
(72)【発明者】
【氏名】マイク グレーベ
(72)【発明者】
【氏名】フランツ-エーリッヒ バウマン
(72)【発明者】
【氏名】ズィルヴィア モンスハイマー
(72)【発明者】
【氏名】ベアトリス キューティング
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】岩本 昌大
【審判官】植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-226952(JP,A)
【文献】特開2006-104470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64/00-64/40
B29C67/00-67/08,67/24
B33Y10/00-99/00
C08J3/00-3/28
C08G69/00-69/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的吸収焼結(SAS)または選択的抑制焼結(SIS)用のポリアミド粉末であって、該ポリアミドが、1.8~2のISO 307による溶液粘度と、該ポリアミドが空気中で20h、その溶融温度を20℃下回る温度に暴露される際に0%~25%の溶液粘度の増加とを有し、かつ、ウォッシュバーン式の使用による毛管上昇法およびオーウェンス、ウェント、ラベルおよびケルブレによる評価法に従って接触角測定により求められる、該粉末の表面エネルギーが、35mN/m以下であり、かつ該ポリアミド中で、過剰のカルボン酸末端基が存在し、該過剰が20~60mmol/kgポリアミド粉末であり、かつ該ポリアミドは、ポリアミド6、11、12、1013、1012、66、46、613、106、11/1010、1212および12/1012から選択されていることを特徴とする、ポリアミド粉末。
【請求項2】
該過剰がジカルボン酸により達成されることを特徴とする、請求項記載のポリアミド粉末。
【請求項3】
該ポリアミド粉末が、開いたメソ細孔を有し、かつ該メソ細孔の累積細孔容積分布が、DIN 66134により測定して、少なくとも0.01cm/gであることを特徴とする、請求項1または2記載のポリアミド粉末。
【請求項4】
該ポリアミド粉末が、1000pL/g~30000pL/gの体積の液体を吸収することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のポリアミド粉末。
【請求項5】
該ポリアミド粉末のBET表面積が、DIN ISO 9277により測定して、少なくとも7m/gを有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のポリアミド粉末。
【請求項6】
該ポリアミド粉末の質量平均粒径d50が、レーザー回折により測定して、100μm以下であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のポリアミド粉末。
【請求項7】
かさ密度が、DIN 53466に測定して300g/L~600g/Lであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のポリアミド粉末。
【請求項8】
ウォッシュバーン式の使用による毛管上昇法およびオーウェンス、ウェント、ラベルおよびケルブレによる評価法に従って接触角測定により求められる、該粉末の表面エネルギーが25mN/m~32mN/mであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のポリアミド粉末。
【請求項9】
該ポリアミド粉末が、沈殿プロセスにより得られることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のポリアミド粉末。
【請求項10】
a)モノマーを重合および/または重縮合してポリアミドを得る工程、
b)粉砕または再沈殿により粉末を製造する工程
を含む、請求項1からまでのいずれか1項記載のポリアミド粉末を製造する方法であって、
工程a)において、カルボン酸末端基過剰の達成のためのジカルボン酸を、調節剤として20~60mmol/kg(該ポリアミド粉末の質量を基準とする)の過剰を達成する割合で添加することを特徴とする、ポリアミド粉末の製造方法。
【請求項11】
成形体を製造するためのSASまたはSIS法における、請求項1からまでのいずれか1項記載のポリアミド粉末の使用。
【請求項12】
請求項1からまでのいずれか1項記載のポリアミド粉末から少なくとも部分的に得られる、成形体。
【請求項13】
SASまたはSIS法により成形体を製造する方法であって、請求項1からまでのいずれか1項記載のポリアミド粉末を使用することを特徴とする、成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的吸収焼結(Selective Absorbing Sintering, SAS)または選択的抑制焼結(Selective Inhibition Sintering, SIS)において使用するためのポリアミド粉末、およびそれらの使用に関する。さらに、本発明は、成形体ならびにそれらの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
生成的製造法(Generative Fertigungsverfahren)は、しばしば付加製造(Additive Manufacturing)またはラピッドプロトタイピングとも呼ばれ、三次元物体を迅速かつ安価に製造できるために使用される。この製造は、コンピュータ上のデータモデルに基づき直接、無形の(formlos)(液体、粉末等)または中間的な形状の(formneutral)(帯状、ワイヤ状)材料から、化学的および/または物理的なプロセスを用いて行われる。殊にポリマー粉末、例えばポリアミド粉末は、無形材料として適している。
【0003】
粉末床溶融結合(Powder Bed Fusion)技術はとりわけ、直接金属レーザー焼結(DMLS)、電子ビーム溶融(EBM)、選択的加熱焼結(Selective Heat Sintering, SHS)、選択的レーザー溶融(SLM)、選択的レーザー焼結(SLS)、選択的吸収焼結(SAS)および選択的抑制焼結(SIS)を含む。該SAS法は、例えば、米国特許出願公開第2007/238056号明細書(US 2007/238056)に記載されている。米国特許出願公開第2004/137228号明細書(US 2004/137228 A1)は、該SIS法である。
【0004】
レーザーを用いない該方法の選択性は、例えば吸収材(選択的吸収焼結、SAS)または抑制剤(選択的抑制焼結、SIS)により、行うことができる。SAS法の場合に、該吸収材と接触した(beaufschlagten)材料の吸収が高められ;それとは異なり、該抑制剤はその溶融を遅延させる。吸収材および抑制剤は、1つの方法において一緒に使用することができる。該SAS法における適したエネルギー源は、限定的にのみ該材料へ入射する(einkoppeln)ものである。該SIS法の場合に、該エネルギー源は、該材料の加熱が十分に迅速に行われるように選択されるべきである。
【0005】
吸収材および抑制剤は、液体中に溶解または分散されて、例えばインクの形態のインクジェット法を用いて、該材料上へ施与することができる。該液体もしくは吸収材および抑制剤は、印刷された該材料によってのみ吸収されるべきであり、かつ該材料中で水平方向または垂直方向に流出するべきではない。
【0006】
該ポリアミド粉末を、その溶融温度を通常10~20K下回り行われる成形体製造の際に使用することにより、老化現象が生じうる。この際に、そのアミン末端基とカルボン酸末端基とが互いに反応し、かつそのポリアミド鎖の延長を引き起こす。該粉末の再度の加工はもはや不可能であるので、加工されなかった粉末は、交換されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2007/238056号明細書(US 2007/238056)
【文献】米国特許出願公開第2004/137228号明細書(US 2004/137228 A1)
【文献】米国特許第5932687号明細書(US5932687)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ、本発明の課題は、SASまたはSIS法において使用することができ、その際に、その加工されなかったポリアミド粉末を再度利用できる、ポリアミド粉末を提供することにあった。これにより、コストを低下させることができ、かつ環境に優しくすることができる。得られる成形体は、前記の成形体製造からのポリアミド粉末の使用にもかかわらず、一定の性質を示すべきである。そのうえ、SASまたはSISにより得られる成形体は、選択的レーザー焼結SLSに比べて、明らかに改善された機械的性質、例えば高められた破断伸びを有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
それに応じて、先行技術の欠点を有しない、選択的吸収焼結(SAS)または選択的抑制焼結(SIS)用のポリアミド粉末が見出された。該ポリアミドは、1.8~2のISO 307による溶液粘度を有する。そのうえ、該溶液粘度の増加は、該ポリアミド粉末が空気中で20h、その溶融温度を20℃下回る温度に暴露される際に、0~25%、好ましくは5%~15%である。
【0010】
空気中で20hの、その溶融温度を20℃下回る温度は、成形体の製造のための造形空間中で支配的である条件をシミュレートする。
【0011】
前記課題は、相対的に高い初期粘度を有し、かつ20hの期間にわたって該溶液粘度の僅かな増加のみを示すポリアミド粉末によって解決された。それにより、該粉末は繰り返し再使用することができる。
【0012】
該溶液粘度は、ISO 307に従い、次のパラメーターに基づいて2回測定で測定される:Schott AVS Pro、溶剤m-クレゾール酸性(m-Kresol sauer)、容量法、溶解温度100℃、溶解時間2h、ポリマー濃度5g/L、測定温度25℃。
【0013】
該溶液粘度の増加を測定するために、該粉末を空気中で20h、その溶融温度を20℃下回る温度に暴露する。それぞれの該粉末の溶液粘度は、引き続き、前記のように求められる。
【0014】
該溶融温度は、DIN 53765に従い示差走査熱量測定法(DSC)により求められる。標準的には、1回目の昇温の溶融温度である。その加熱速度および冷却速度はそれぞれ20K/分である。該測定を、Perkin Elmar製のDSC 7を用いて行った。
【0015】
好ましくは、該ポリアミドは、過剰のアミン末端基または過剰のカルボン酸末端基のいずれかを有する。該過剰は、ジアミンまたはジカルボン酸、好ましくはジカルボン酸により達成することができる。該ポリアミド粉末の質量を基準として、該末端基の一方の過剰は、該末端基の他方に比べて、20~60mmol/kgである。
【0016】
本発明の好ましい実施態様において、該ポリアミド粉末は、開いたメソ細孔を有し、その際に、該メソ細孔の累積細孔容積分布は、DIN 66134により測定して、少なくとも0.01cm/gである。特に好ましくは、該累積細孔容積分布は、少なくとも0.025cm/gであり、極めて特に好ましくは少なくとも0.035cm/gである。さらに好ましい累積細孔容積分布は、それぞれ少なくとも0.045cm/g、0.05cm/g、0.06cm/gおよび0.07cm/gである。好ましくは、該累積細孔容積分布は、最大0.15cm/gおよび特に好ましくは0.1cm/gである。本発明のさらに好ましい実施態様において、該累積細孔容積分布は、0.05cm/g~0.15cm/g、特に好ましくは0.06cm/g~0.1cm/gである。
【0017】
開いた該細孔により、吸収材または抑制剤は該表面から該粒子内部へ達し、そのためにこれらの物質のより均一な分布を可能にすることができる。これにより、より均一な溶融が行われる。そのうえ、該液体の水平方向または垂直方向の流れ(Verlaufen)が回避される、それというのも、該液体は、該粒子によって―表面上の吸収に比べて―より多い量で吸収されるからである。
【0018】
該細孔は、毛管力により、該液体の形態の吸収材もしくは抑制剤の吸収を達成する。少なくとも0.01cm/gの該累積細孔容積分布は、吸収材もしくは抑制剤ができるだけ速く吸収されることをもたらし、結果として、該SASもしくはSIS法中に、通常、該液体の迅速な蒸発をもたらす100℃を上回る温度が支配的である。この際に、吸収材もしくは抑制剤は、ブリードする(zerlaufen)べきではなく、または入り交じって流れる(ineinanderlaufen)べきではない。該累積細孔容積分布が、少なくとも0.01cm/gを下回ると、吸収材または抑制剤が該粒子中へ侵入する前に該液体が蒸発してしまう。そのため、先行技術のような吸収材は、該粒子の表面上に残留してしまい、かつ該抑制剤は、低い抑制剤性能をまねいてしまう。
【0019】
該粒子の開いた細孔は、包囲する媒体と接続しており、それに対して、閉じた細孔は、閉鎖しており、かつ媒体を侵入させない。20μm以下の直径を有する微細孔は、IUPACにより、マクロ細孔(>50nm)、メソ細孔(2~50nm)およびミクロ細孔(<2nm)に区分される。好ましいポリアミド粉末は、DIN 66134により測定して、2~300nmの細孔直径を有する該ポリアミド粉末の開いたマクロ細孔およびメソ細孔の合計を基準として、少なくとも30%、特に好ましくは少なくとも50%の開いたメソ細孔を有する。該規格は、メソポーラスな固体に適用されるが、50nmを上回る範囲も同様にこの規格に従い求めた。
【0020】
ミクロ細孔を有するポリアミドは、あまり適していない、それというのも、これらは、該液体を十分速く、かつ常用の吸収材を全く、吸収できないからである。マクロ細孔は、低下された毛管作用を示すかもしれず、かつ吸収材または抑制剤を含有する液体が、十分速く該粒子内部へ吸収されることを同様にもたらさない。
【0021】
該ポリアミド粉末は、ポリアミド粉末1gあたり、好ましくは1000pL~30000pL、好ましくは3000pL~25000pLおよびより好ましくは5000pL~20000pLの液体を吸収する。
【0022】
液体として、通常、吸収材を含むかもしくは抑制剤として機能する、印刷可能なあらゆる液体が適している。該吸収材または該抑制剤が溶解または分散している液体は、好ましくは、溶剤である水、炭素原子1~4個を有するモノアルコール、グリコールまたはそれらの混合物から選択される。
【0023】
本発明の一実施態様において、該ポリアミド粉末は、吸収材または抑制剤のいずれかを有する。このためには、ポリアミド粉末は、前記の液体と接触されている。これは、例えば、公知の印刷法により行うことができる。
【0024】
該吸収材または抑制剤は、着色剤であってよい。着色剤は、色を付与する全ての物質の上位概念である。これらは、DIN 55944:1990-04に従い、周囲の媒体中へのそれらの溶解度により、染料および顔料へ分類されうる。染料は、有機の、周囲の媒体中に可溶な黒色または有彩色の物質である。これに対して、顔料は、染料とは異なり、周囲の媒体中に不溶である、粉末状または小片状の着色剤である。その粒度は通常30~200nmである(レーザー回折)。好ましくは、該着色剤は顔料である。好ましくは、該顔料は、有機および無機の、色を付与する、効果を付与する、色および効果を付与する、磁気遮蔽する、導電性の、腐食を抑制する、蛍光性およびりん光性の顔料からなる群から選択される。好ましくは、色および/または効果を付与する顔料が使用される。
【0025】
適した顔料は、チョーク、オーカー、アンバー、緑土、バーントシェナー(Terra di Siena gebrannt)、黒鉛、チタンホワイト(二酸化チタン)、鉛白、亜鉛華、リトポン、アンチモンホワイト、カーボンブラック、酸化鉄黒、マンガンブラック、コバルトブラック、アンチモンブラック、クロム酸鉛、鉛丹、亜鉛黄、亜鉛緑、カドミウムレッド、コバルトブルー、紺青、ウルトラマリン、マンガンバイオレット、カドミウムイエロー、シュヴァインフルトグリーン(Schweinfurter Gruen)、モリブデートオレンジ、モリブデンレッド、クロムオレンジ、クロムレッド、酸化鉄赤、クロムオキサイドグリーン、ストロンチウムイエロー、金属効果顔料、真珠光沢顔料、蛍光顔料および/またはりん光顔料を有する発光顔料、アンバー、ガンボージ、骨炭、カッセルブラウン(Kasseler Braun)、インジゴ、クロロフィル、アゾ染料、インジゴイド、ジオキサジン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、金属錯体顔料、アルカリブルー顔料およびジケトピロロピロールから選択されている。
【0026】
該ポリアミド粉末のより良好な加工性を達成するために、添加剤を添加することが有利でありうる。このような添加剤は、例えば流動助剤であってよい。特に好ましくは、該ポリアミド粉末は、該ポリアミド粉末の全質量を基準として、0.05~5質量%、好ましくは0.1~1質量%の添加剤を有する。流動助剤は、例えば、フュームドシリカ、ステアリン酸塩または文献から公知の他の流動助剤、例えばリン酸三カルシウム、ケイ酸カルシウム、Al、MgO、MgCOまたはZnOであってよい。フュームドシリカは、例えば、Evonik Industries AG製のAerosil(登録商標)の商標名で供給されている。
【0027】
そのような一部の無機の流動助剤または他の添加剤に加え、またはそれらの代わりに、該ポリアミド粉末は、無機充填材も有することができる。そのような充填材(Fuellkoerper)の使用は、これらが結合の際の処理を通じてこれらの形状を本質的に維持し、ひいては該成形体の収縮を低下させるという利点を有する。そのうえ、充填材の該使用により、例えば、該物体の可塑性および物理的性質を変更することが可能である。そして、金属粉末を有する粉末材料の使用により、該物体の透明度および色だけなく、磁気的性質または電気的性質も調節することができる。フィラー(Fuellstoffe)もしくは充填材として、該粉末材料は、例えばガラス粒子、セラミック粒子または金属粒子を有することができる。典型的なフィラーは、例えば金属粒、アルミニウム粉末、スチールショットまたはガラスビーズである。特に好ましくは、充填材としてガラスビーズを有する粉末材料が使用される。好ましい実施変型において、本発明による粉末材料は、該ポリアミド粉末の全質量を基準として、1~70質量%、好ましくは5~50質量%および極めて特に好ましくは10~40質量%の充填材を有する。
【0028】
該液体の表面エネルギーは、該ポリアミド粉末の表面エネルギーよりも小さいべきである。
【0029】
該液体は、該液体の全質量を基準として、該着色剤を、好ましくは0.1~10質量%、特に好ましくは2.5~5質量%の割合で含有する。該液体のpH値は、通常、6~9に調節される。
【0030】
適した液体は、インクジェット印刷用に供給される市販のインクであってよい。
【0031】
該ポリアミド粉末の適したポリアミドは、常用かつ公知のポリアミドであってよい。ポリアミドは、ホモポリアミドおよびコポリアミドを含む。適したポリアミドまたはコポリアミドは、ポリアミド6、11、12、1013、1012、66、46、613、106、11/1010、1212および12/1012から選択されている。好ましいポリアミドは、ポリアミド11、12、1013、1012、11/1010、1212および12/1012から選択されており、特に好ましくはポリアミド11または12および極めて特に好ましくポリアミド12である。
【0032】
通常、焼結法において使用されるポリアミド粉末は、できるだけ小さいBET表面積を有するべきである。先行技術には、その値が例えば7m/g未満を示すべきであることが開示されている。これに対して、本発明によるポリアミド粉末は、好ましくは、DIN ISO 9277により測定して、少なくとも7m/g、より好ましくは7.5m/g~30m/gのBET表面積を有するべきである。特に好ましい実施態様には、少なくとも7m/g、好ましくは7.5m/g~30m/gのBET表面積を有するポリアミドが含まれる。該測定は、Micromeritics TriStar 3000装置を用い、窒素ガス吸着、非連続の容量法、約0.05~約0.20の相対圧P/P0での7測定点、He(99.996%)を用いる死容積の校正、真空下で23℃で1h+80℃で16hの試料調製、脱ガスされた試料を基準とした比表面積で行い、評価をマルチポイント測定により行った。
【0033】
好ましい実施態様において、該ポリアミド粉末は、少なくとも0.02cm/gの累積細孔容積分布および少なくとも2.8m/gのBET表面積、好ましくは少なくとも0.04cm/gの累積細孔容積分布および少なくとも5.8m/gのBET表面積、より好ましくは少なくとも0.05cm/gの累積細孔容積分布および少なくとも10m/gのBET表面積および特に好ましくは少なくとも0.07cm/gの累積細孔容積分布および少なくとも13m/gのBET表面積を有する。
【0034】
該ポリアミド粉末の質量平均粒径d50は、レーザー回折により測定して、好ましくは100μm以下、好ましくは10μm~80μmであるべきである(Malvern Mastersizer 3000;その湿式分散は水中で行った、屈折率および青色光値は1.52で固定;ミー理論による評価;乾式測定、粉末20~40gをScirocco乾式分散ユニットにより計量供給;振動トラフ(Ruettelrinne)の供給レート70%、分散空気圧3bar;試料の測定時間5秒(5000の個別測定))。このような直径を有するポリマーは、ポリマー粉末とも呼ばれる。
【0035】
10.48μm未満の粒径を有するポリアミド粉末(超微粒子)が少量で存在することが有利である。超微粒子の割合は、ポリアミド粉末の全質量を基準としてそれぞれ、3質量%未満、好ましくは1.5質量%未満および特に好ましくは0.75質量%未満であるべきである。これにより、そのダスト発生が低下し、かつその加工性(プロセス性)の改善が可能になる。超微粒子の分離は、例えば分級により、行うことができる。
【0036】
さらに、かさ密度が、DIN 53466に従い測定して300g/L~600g/Lであるポリアミド粉末が好ましい。
【0037】
さらに、35mN/m以下、好ましくは25mN/m~32mN/mの表面エネルギーを有するポリアミドが、好ましいポリアミドである。該表面エネルギーは、ウォッシュバーン(Washburn)式の使用による毛管上昇法およびオーウェンス(Owens)、ウェント(Wendt)、ラベル(Rabel)およびケルブレ(Kaelble)による評価法に従って接触角測定により求められる。このようなポリアミド粉末は、可能な限り均一な流動性を有し、このことが該成形体の高い寸法安定性をもたらす。
【0038】
該ポリアミド粉末およびその組成物は、製造された粉末の粉砕によるかまたは沈殿プロセス(再沈殿)により、得ることができる。好ましい該沈殿プロセスにより得られたポリアミド粉末は、通常、例えば粉砕法により取得されるポリアミドよりも高い累積細孔容積分布により特徴付けられる。沈殿プロセスによってではなく、殊に粉砕法によって得られるポリアミドは、通例0.01cm/gを明らかに下回る累積細孔容積分布を有する。
【0039】
該沈殿プロセスにおいて、該ポリアミドは、高められた温度の作用下で少なくとも部分的に溶解され、引き続き、温度低下により沈殿析出される。ポリアミドのための適した溶剤は、例えばアルコール、例えばエタノールである。米国特許第5932687号明細書(US5932687)には、例えば、適したプロセス条件が挙げられている。その所望の性質の調節のために、得られた懸濁液を、その沈殿析出後に10分~180分、その沈殿温度を2~4K上回る温度で放置することが有利である。
【0040】
本発明のさらなる対象は、前記のポリアミド粉末の製造方法である。該方法は、モノマーのポリアミドへの重合および/または重縮合(工程a)および粉砕または再沈殿による粉末製造(工程b)を含む。工程aにおいて、アミン末端基過剰の達成のためのジアミン、またはカルボン酸末端基過剰の達成のためのジカルボン酸のいずれかが、調節剤として添加される。該ジアミンもしくはジカルボン酸は、好ましくは、該末端基の一方の過剰が、該末端基の他方に対して、20~60mmol/kg(該ポリアミド粉末の質量を基準とする)である割合で添加される。
【0041】
適したモノマーは、例えば、該ポリアミド6、11、12、1013、1012、66、46、613、106、11/1010、1212および12/1012の製造に適しているモノマーである。
【0042】
該過剰の末端基に調節するために適したジアミンおよびジカルボン酸は、該ポリアミドのモノマーと同じかまたは異なっていてよい。例示的に、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミン、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン酸、ブラシル酸が挙げられる。該ジアミンもしくはジカルボン酸が、該ポリアミドのモノマーと同じ数の炭素原子を有することが好ましい。
【0043】
本発明の一実施態様において、該ポリアミドは、共沈により得ることができる。このためには、工程a)において、モノマー単位中に炭素原子4~14個を有するラクタムの重合によるかまたはモノマー単位中に炭素原子4~14個を有する対応するω-アミノカルボン酸の重縮合により製造されたAB型の少なくとも1種のポリアミドと、モノマー単位中にそれぞれ炭素原子4~14個を有するジアミンおよびジカルボン酸の重縮合により製造されたAABB型の少なくとも1種のポリアミドとが得られる。この際に、該粉末は、工程b)において、AB型の少なくとも1種の該ポリアミドおよびAABB型の少なくとも1種の該ポリアミドの共同沈殿により得られる。
【0044】
本発明のさらなる対象は、成形体を製造するためのSASまたはSIS法における本発明によるポリアミド粉末の使用である。この場合に、該ポリアミド粉末を該液体と接触させることが好ましい。
【0045】
さらに、少なくとも部分的に本発明によるポリアミド粉末から得られる成形体は、本発明のさらなる対象である。さらにまた、本発明によるポリアミド粉末が使用される、SASまたはSIS法による成形体の製造方法も、同様に本発明の対象である。
【実施例
【0046】
ポリアミド12を製造した。モノマーとしてのラウロラクタムに加え、ドデカン酸を使用して、ジカルボン酸末端基の過剰を得た。該粉末を、沈殿プロセスにより得た。
【0047】
得られた粉末の溶融温度および溶液粘度を測定した。引き続き、該粉末を、空気中で20h、その溶融温度を20℃下回る温度に暴露し、その溶液粘度を連続的に求めた。
溶融温度:185℃
老化のシミュレーションのための温度:165℃
【表1】