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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】液化ガスの供給装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017192460
(22)【出願日】2017-10-02
(65)【公開番号】P2019065975
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三谷 直弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 恭司郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】岸本 顕嘉
(72)【発明者】
【氏名】広谷 龍一
(72)【発明者】
【氏名】玉谷 亘
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-078719(JP,A)
【文献】特開2014-142021(JP,A)
【文献】特開2016-216526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスの供給装置であって、
前記液化ガスを貯留する貯槽と、
前記貯槽からガス供給先である高圧ガスタンクに前記液化ガスを流通させるガス配管と、
前記ガス配管に設けられ、前記液化ガスを昇圧して送出する補助ポンプと、
前記補助ポンプよりも前記高圧ガスタンク側の前記ガス配管に設けられ、前記液化ガスを昇圧して送出することにより前記高圧ガスタンクに前記液化ガスを供給する液体ポンプと、
前記ガス配管内における前記液化ガスの流通を制御する制御部と、を備え、
前記ガス配管は、
前記液体ポンプから前記高圧ガスタンクに前記液化ガスを流通させる供給配管と、
前記供給配管に接続され、前記供給配管内の前記液化ガスを大気へ放出する放出ラインと、
前記放出ラインの接続部分よりも前記高圧ガスタンク側の前記供給配管に設けられた第一のバルブと、
前記放出ラインにおける前記液化ガスの流量を調整する第二のバルブと、
前記第二のバルブよりも上流側に配置され、前記供給配管内の前記液化ガスの温度を検出する温度センサーと、
前記第二のバルブよりも上流側に配置され、前記供給配管内の前記液化ガスの圧力を検出する圧力センサーと、を備え、
前記制御部は、
前記第一のバルブを開け、前記第二のバルブを閉じている第一のモードであって、前記液体ポンプによって前記高圧ガスタンクに前記液化ガスの供給を行う第一のモードと、
前記第一のバルブを閉じている第二のモードであって、前記液体ポンプを停止して前記補助ポンプにより前記液化ガスを前記供給配管へ供給し、前記温度センサーおよび前記圧力センサーの検出値が予め定められた範囲内となるように前記第二のバルブを制御する第二のモードと、を備える、液化ガスの供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスの供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯槽に貯留されている液化ガスは、圧送により供給配管を介して高圧ガスタンク等のガス供給先に供給される。液化ガスの圧送には、液体ポンプ(以下、「RP(Reciprocationg Pump)」とも呼ぶ)が用いられる。液体ポンプは、貯槽からガス供給先に延びる供給配管の途中に配設される。また、貯槽と液体ポンプの間には補助ポンプ(以下、「BP(Booster Pump)」とも呼ぶ)が配設される。補助ポンプは、貯槽から供給される液化ガスの圧力を昇圧して下流側へ圧送する。また、液体ポンプおよび補助ポンプは、液化ガスの圧送のための起動時において予冷される。この予冷は、貯槽の液化ガスが、貯槽内の貯留内圧と液体ポンプを含む管路内の圧力との差圧にて送り込まれることによってなされている。また、予冷がなされている期間において、予冷のために管路に供給された液化ガスは大気中に放出される。特許文献1では、補助ポンプには、小熱容量のガスポンプが適用されている。これにより、補助ポンプの予冷に必要な熱容量が低減されている。従って、補助ポンプは迅速に予冷され、予冷に使用される液化ガスの使用量が低減されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-78719号公報
【文献】特開2017-82899号公報
【文献】特開2008-75705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、設備が異常停止されたり、ガス供給先へのガス供給が完了して設備全体が停止されたりする場合、液化ガスの供給は停止される。そのため、停止した設備が再起動されるまでの期間、供給配管、補助ポンプおよび液体ポンプの温度は上昇し、予冷が再度必要とされる。また、予冷がなされている期間において、予冷のために管路に供給された液化ガスは、大気中に放出される。このため、設備を再起動する場合、液体ポンプの予冷のために、ガスの大気中への放出量が増大し、ガスの消費量が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[形態1]
本開示の一形態によれば、液化ガスの供給装置が提供される。この液化ガスの供給装置は、前記液化ガスを貯留する貯槽と、前記貯槽からガス供給先である高圧ガスタンクに前記液化ガスを流通させるガス配管と、前記ガス配管に設けられ、前記液化ガスを昇圧して送出する補助ポンプと、前記補助ポンプよりも前記高圧ガスタンク側の前記ガス配管に設けられ、前記液化ガスを昇圧して送出することにより前記高圧ガスタンクに前記液化ガスを供給する液体ポンプと、前記ガス配管内における前記液化ガスの流通を制御する制御部と、を備える。前記ガス配管は、前記液体ポンプから前記高圧ガスタンクに前記液化ガスを流通させる供給配管と、前記供給配管に接続され、前記供給配管内の前記液化ガスを大気へ放出する放出ラインと、前記放出ラインの接続部分よりも前記高圧ガスタンク側の前記供給配管に設けられた第一のバルブと、前記放出ラインにおける前記液化ガスの流量を調整する第二のバルブと、前記第二のバルブよりも上流側に配置され、前記供給配管内の前記液化ガスの温度を検出する温度センサーと、前記第二のバルブよりも上流側に配置され、前記供給配管内の前記液化ガスの圧力を検出する圧力センサーと、を備える。前記制御部は、前記第一のバルブを開け、前記第二のバルブを閉じている第一のモードであって、前記液体ポンプによって前記高圧ガスタンクに前記液化ガスの供給を行う第一のモードと、前記第一のバルブを閉じている第二のモードであって、前記液体ポンプを停止して前記補助ポンプにより前記液化ガスを前記供給配管へ供給し、前記温度センサーおよび前記圧力センサーの検出値が予め定められた範囲内となるように前記第二のバルブを制御する第二のモードと、を備える。
【0006】
本開示の一形態によれば、液化ガスの供給装置が提供される。この液化ガスの供給装置は:液化ガスを貯留する貯槽と;前記貯槽からガス供給先に前記液化ガスを流通させるガス配管と;前記ガス配管に設けられ、前記液化ガスを昇圧して送出する補助ポンプと;前記補助ポンプよりも前記ガス供給先側の前記ガス配管に設けられ、前記液化ガスを昇圧して送出することにより前記ガス供給先に前記液化ガスを供給する液体ポンプと;前記ガス配管内における前記液化ガスの流通を制御する制御部と、を備え;前記ガス配管は:前記液体ポンプから前記ガス供給先に前記液化ガスを流通させる供給配管と;前記供給配管に接続され、前記供給配管内の前記液化ガスを大気へ放出する放出ラインと;前記放出ラインの接続部分よりも前記ガス供給先側の前記供給配管に設けられた第一のバルブと;前記供給配管内の前記液化ガスの温度を検出する温度センサーと;前記供給配管内の前記液化ガスの圧力を検出する圧力センサーと;前記放出ラインにおける前記液化ガスの流量を調整する第二のバルブと;を備え;前記制御部は:前記第一のバルブを開け、前記第二のバルブを閉じている第一のモードであって、前記液体ポンプによって前記ガス供給先に前記液化ガスの供給を行う第一のモードと;前記第一のバルブを閉じている第二のモードであって、前記液体ポンプを停止して前記補助ポンプにより前記液化ガスを前記供給配管へ供給し、前記温度センサーおよび前記圧力センサーの検出値が予め定められた範囲内となるように前記第二のバルブを制御する第二のモードと;を切り替えて実行する。
このような形態とすることにより、ガス供給先にガスを供給していない期間、液化ガスの圧送が継続されることによって、ガス配管やポンプ等の温度の上昇は抑制される。従って、補助ポンプや液体ポンプを再起動する場合に必要とされる予冷は、行われる必要がなくなる。また、これにより、設備稼働率が向上される。
【0007】
上述した本発明の各形態の有する複数の構成要素はすべてが必須のものではなく、上述の課題の一部または全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部または全部を達成するために、適宜、前記複数の構成要素の一部の構成要素について、その変更、削除、新たな他の構成要素との差し替え、限定内容の一部削除を行うことが可能である。また、上述の課題の一部または全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部または全部を達成するために、上述した本発明の一形態に含まれる技術的特徴の一部または全部を上述した本発明の他の形態に含まれる技術的特徴の一部または全部と組み合わせて、本発明の独立した一形態とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態である液化ガスの供給装置1の説明図である。
図2】ガス供給先41へ液化ガスが供給されている状態を表す説明図である。
図3】液化ガスが放出ライン30を流通して大気中に放出されている状態を表す説明図である。
図4】ガス供給先4iへ液化ガスが供給されている状態を表す説明図である。
図5】予冷およびガス供給の制御における処理内容を示すフローチャートである。
図6】制御部5が実行するバルブとポンプの制御を表す表である。
図7】ガス供給先の段取り替え処理を制御部5が実行するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.実施形態:
図1は、本開示の一実施形態である液化ガスの供給装置1の説明図である。液化ガスの供給装置1は、貯槽100と、補助ポンプ2と、液体ポンプ3と、ガス配管200と、制御部5と、を有する。ガス配管200は、第一の供給流路10と、第一の予冷流路11と、第二の供給流路20と、第二の予冷流路21と、放出ライン30と、を有する。また、ガス配管200には、それぞれ流量を調整する機能を有する複数のバルブが備えられている。各バルブは制御部5の制御によって、それぞれの管路の液化ガスの流量を調整する。
【0010】
貯槽100は、予め定められた貯留圧力によって、液相と気相とが混在する飽和状態にされた窒素を、液化ガスとして貯留している。貯槽100は、第一の供給流路10によって、液体ポンプ3と繋がれている。また、第一の供給流路10には、補助ポンプ2が配設されている。なお、本実施形態において、技術の理解を容易にするため、液相のみの状態、気相のみの状態、もしくは液相と気相とが混在する状態を、いずれも「液化ガス」と表記する。
【0011】
補助ポンプ2は、貯槽100から供給される液化ガスの圧力を昇圧して、下流側にある液体ポンプ3に送出する。液体ポンプ3は、補助ポンプ2から供給された液化ガスを、ガス供給先4へのガス充填に適合した圧力まで昇圧して、下流側に送出する。
【0012】
第一の供給流路10には、上流流路10aと中間流路10bが含まれる。上流流路10aは、貯槽100と補助ポンプ2とを繋いでいる。また、上流流路10aにはバルブVaが配設されている。中間流路10bは、補助ポンプ2と液体ポンプ3とを繋いでいる。中間流路10bにはバルブVbが配設されている。また、中間流路10bのうち補助ポンプ2とバルブVbを繋ぐ管路には第一の予冷流路11が接続されている。
【0013】
第一の予冷流路11には、バルブVcが配設されている。第一の予冷流路11の管路内の液化ガスや気化ガスを大気中に放出するため、第一の予冷流路11の他端は屋外に位置している。
【0014】
第二の供給流路20は、液体ポンプ3とガス供給先4を繋ぐ液化ガスの供給配管である。本実施形態において、液化ガスの供給装置1には、複数のガス供給先4が繋げられることができ、n本(nは正の整数)のガス供給先4が繋げられることができる。第二の供給流路20には、下流流路20aと調節流路20bが含まれる。下流流路20aの一端は、液体ポンプ3と接続されている。また、下流流路20aは複数の流路に分岐されており、分岐されたそれぞれの下流流路20aの端部とガス供給先4が繋がれる。調節流路20bは、一端が下流流路20aに接続され、他端は放出ライン30と接続されている。
【0015】
ガス供給先4は、例えば高圧ガスタンクであり、高圧ガスタンクが有する口金バルブと下流流路20aが接続される。それぞれのガス供給先4は、後述する方法によって、気化ガスを順次に充填される。本明細書においては、例えば、n本目のガス供給先はガス供給先4nと表記し、i本目のガス供給先はガス供給先4i(iは1からnまでの整数)と表記する。
【0016】
下流流路20aには、バルブVdと、第一のバルブV1が配設されている。第一のバルブV1として、先述した複数のガス供給先4の数に応じて複数のバルブV1が配設されている。バルブVdは、後述する第二の予冷流路21と下流流路20aが接続された分岐よりも下流側であって、下流流路20aが有するその他の分岐よりも上流側である下流流路20aに配設されている。バルブVdが開放されることにより、下流流路20aおよび調節流路20bに、液化ガスが供給される。第一のバルブV1は、下流流路20aのうち、各ガス供給先4と繋がれる端部より上流側であって、各ガス供給先4と繋がれる端部を有する流路への分岐よりも下流側に、配設されている。また、第一のバルブV1は、ガス供給先4ごとに配設されている。例えば、下流流路20aのうち、n本目のガス供給先であるガス供給先4nの上流側の位置に配設されるバルブV1をバルブV1nと表記し、i本目のガス供給先であるガス供給先4iの上流側の位置に配設されるバルブV1をバルブV1iと表記する。バルブV1iが開放されることにより、ガス供給先4iに気化ガスが供給される。
【0017】
下流流路20aには、第二の予冷流路21が接続されている。具体的には、第二の予冷流路21は、下流流路20aのうち、液体ポンプ3とバルブVdの間の下流流路20aに接続されている。
【0018】
第二の予冷流路21には、バルブVeが配設されている。第二の予冷流路21の管路内の液化ガスを大気中に放出するため、第二の予冷流路21の他端は屋外に位置している。
【0019】
調節流路20bには、第二のバルブV2、圧力センサー6および温度センサー7が配設されている。第二のバルブV2は、第二の供給流路20(調節流路20b)と放出ライン30が接続されている箇所に配されている。第二のバルブV2が開放されることにより、調節流路20bから放出ライン30に液化ガスが供給される。圧力センサー6は、第二の供給流路20内の液化ガスの圧力を計測する。温度センサー7は、第二の供給流路20内の液化ガスの温度を計測する。
【0020】
制御部5は、例えばCPU、ROM、RAMを備えるコンピュータによって構成されている。制御部5は、装置内の温度センサー、圧力センサーからの入力を受けて、バルブの開閉やポンプの出力を制御する。バルブを制御することによって、液化ガスの流路を切り替えることができる。また、制御部5は、流路の切り替えに伴い、ポンプの出力を切り替えることができる。
【0021】
図2は、貯槽100からガス供給先41へ液化ガスが供給されている状態を表す説明図である。破線で示された矢印T1および矢印T2は、液化ガスの流れを模式的に表している。矢印T1は、貯槽100から液体ポンプ3へ供給される液化ガスの流れを示している。具体的には、貯槽100の底面に接続された上流流路10aを流通して液化ガスが補助ポンプ2に供給される。補助ポンプ2に供給された液化ガスは、下流側に圧送され、中間流路10bを流通して液体ポンプ3へ供給される。
【0022】
矢印T2は、液体ポンプ3からガス供給先41へ供給される液化ガスおよびガスの流れを示している。ガスが供給されるガス供給先41の上流側に配されたバルブV11は開放され、バルブV11以外のバルブV1は閉弁されている。液体ポンプ3の上流側から液体ポンプ3へ供給された液化ガスは、液体ポンプ3によって昇圧される。昇圧された液化ガスは、液体ポンプ3の下流側である下流流路20aに送出されてガス供給先41に供給される。なお、液化ガスは、調節流路20bにも供給されている。
【0023】
図3は、液化ガスが放出ライン30を流通して大気中に放出されている状態を表す説明図である。放出ライン30を流通させた液化ガスの大気中への放出は、ガス供給先4に供給していない場合(例えば、ガス供給先4を段取り替えする場合や設備が異常停止された場合等)に行われる。矢印T3は、貯槽100から補助ポンプ2へ供給される液化ガスの流れを示している。矢印T4は、補助ポンプ2によって、大気中に放出される液化ガスの流れを示している。なお、図3において、後述される通り、液体ポンプ3は停止されている。また、すべてのバルブV1は閉弁され、バルブV2が開弁されている。液化ガスは、補助ポンプ2によって中間流路10bおよび液体ポンプ3を経由して、下流流路20aに圧送される。液化ガスは、ガス供給先4に供給されず、液体ポンプ3を冷却しつつ調節流路20bを経由して放出ライン30を流通し、大気中に放出される。
【0024】
図4は、貯槽100からガス供給先4iへ液化ガスが供給されている状態を表す説明図である。矢印T5は、貯槽100から液体ポンプ3へ供給される液化ガスの流れを示している。矢印T6は、液体ポンプ3からガス供給先4iへ供給される液化ガスの流れを示している。ガスが供給されるガス供給先4iの上流側に配されたバルブV1iは開弁される。また、バルブV1i以外のバルブV1は閉弁されている。液体ポンプ3によって送出された液化ガスは、下流流路20aを介して、ガス供給先4iに供給される。また、ガス供給先4nにガスが供給される場合も上記と同様に行われる。なお、液化ガスは、調節流路20bにも供給されている。
【0025】
図5は、バルブ制御とポンプ制御を介して実行される予冷、ガス供給の制御における処理内容を示すフローチャートである。
【0026】
図6は、制御部5が実行するバルブとポンプの制御を表す表である。以下、図5および図6を参照して、制御部5によって実行される液化ガスの供給装置1の制御について説明する。
【0027】
設備起動時において、例えばポンプ内部のキャビテーションを抑制するため、補助ポンプ2および液体ポンプ3の予冷を行う必要がある。ステップS100は、液化ガスの供給装置1の起動時における、補助ポンプ2および液体ポンプ3を予冷する工程である。補助ポンプ2の予冷は、貯槽100に貯留されている液化ガスが第一の予冷流路11を流通されることによって実行される(図2参照)。また、液体ポンプ3の予冷は、液化ガスが第二の予冷流路21を流通されることによって実行される(図2参照)。なお、初期状態において、バルブVcおよびバルブVeは開弁されている(図6参照)。
【0028】
ステップS110において、制御部5は、バルブVaの開弁を実行する。なお、あらかじめバルブVcは開弁され、バルブVbは閉弁されている。ステップS110における各バルブおよび各ポンプの状態を図6のS110の行に示す。これにより、貯槽100に貯留されている低温の液化ガスは、貯槽100の内圧と上流流路10aとの差圧によって圧送される。圧送された低温の液化ガスは、上流流路10aを流通し補助ポンプ2に供給される(図2参照)。
【0029】
ステップS120において、停止状態の補助ポンプ2の予冷は、上述の液化ガスの供給によって開始される。なお、バルブVcは開弁され、バルブVbは閉弁されている。ステップS120および後述するステップS130における各バルブおよび各ポンプの状態を図6のS120、S130の行に示す。補助ポンプ2を予冷している期間、液化ガスは、補助ポンプ2を冷却することによって気化され気液混合流体になる。気液混合流体になった液化ガスは、第一の予冷流路11およびバルブVcを流通して大気中に放出される(図2参照)。制御部5は、補助ポンプ2の下流に設けられた温度センサー(図示しない)の温度の検出値を繰り返し読み込む。
【0030】
ステップS130において、温度センサーによって検出された温度が、予め定められた温度より低温である状態が、予め定められた期間において維持されると、制御部5は、補助ポンプ2を起動する。
【0031】
ステップS140において、制御部5は、バルブVcの閉弁およびバルブVbの開弁を実行する制御を行う。なお、あらかじめバルブVdは閉弁され、バルブVeは開弁されている。ステップS140および後述するステップS150における各バルブおよび各ポンプの状態を図6のS140、S150の行に示す。ステップS130にて起動された補助ポンプ2は、液化ガスを補助ポンプ2の下流側にある中間流路10bに圧送する。補助ポンプ2によって圧送された液化ガスは、中間流路10bを流通し液体ポンプ3に供給される(図2参照)。上述の液化ガスの供給によって停止状態の液体ポンプ3の予冷が開始される。
【0032】
液体ポンプ3を予冷している間、液化ガスは、液体ポンプ3を冷却することによって気化され気液混合流体になる。気液混合流体になった液化ガスは、第二の予冷流路21およびバルブVeを流通して大気中へ放出される(図2参照)。制御部5は、液体ポンプ3の下流に設けられた温度センサー(図示しない)による温度の検出値を繰り返し読み込む。
【0033】
ステップS150において、温度センサーによる温度の検出値が、予め定められた温度より低温である状態が、予め定められた期間において維持されると、制御部5は、液体ポンプ3を起動する。
【0034】
ステップS200は、ガス供給先4へガスを供給する工程である。液化ガスの供給装置1において複数設けられているガス供給先4のうち、予め定められた一つのガス供給先4へ、ガスが供給される。
【0035】
ステップS210において、制御部5は、バルブVeの閉弁およびバルブVdの開弁を実行する制御を行う。ステップS210における各バルブおよび各ポンプの状態を図6のS210の行に示す。また、制御部5は、一番目のガス供給先であるガス供給先41にガス供給を実施するため、バルブV11を開弁する制御を行う。なお、制御部5が、ガス供給先4へガスを供給する処理を実行する制御モードを「第一のモード」とも呼ぶ。また、複数のバルブV1のうちガスを供給しないガス供給先4の上流側に設けられたバルブV1(バルブV11以外のバルブV1)およびバルブV2は閉弁されている。液体ポンプ3によって圧送された液化ガスにおいて、例えば気化器(図示しない)を経由して予め定められた温度に液化ガスの温度が調整される。
【0036】
気化器は、下流流路20aのうち、バルブVdの下流側であって各ガス供給先4への分岐および調節流路20bへの分岐よりも上流側の下流流路20aに配設されている。気化器の内部は、例えば熱交換器により昇温する機構を設けた液化ガスの流路と、昇温する機構が設けられていないバイパス流路と、に分岐され、これらの流路は気化器内の下流側で合流される。熱交換器を経由して昇温され気化されたガスと、気化器を経由しない液化ガスとの流量が調整されることによって、予め定められた温度に液化ガスの温度が調整される。これにより、液化ガスは、気化されたガスの状態でガス供給先41へ供給されることができる。
【0037】
ステップS220において、ガス供給先41へガスの供給が完了すると、制御部5はバルブV11を閉弁する制御を実行する。そして、制御部5は、別のガス供給先にガスを供給するか否かを判定する(ステップS230)。なお、ステップS220およびステップS230における各バルブおよび各ポンプの状態を図6のS220、S230の行に示す。別のガス供給先にガスを供給しない場合(ステップS230:NO)、ガス供給は完了する。別のガス供給先にガスを供給する場合(ステップS230:YES)、制御部5は、後述するガス供給先の段取り替え処理(ステップS300)を実行する。
【0038】
ステップS300によってガス供給先の段取り替えが完了すると、制御部5は、段取り替え後のガス供給先4(例えばi番目のガス供給先であるガス供給先4i)の上流側にあるバルブ(例えばi番目のバルブV1i)を開弁し、ガス供給を開始する処理を行う。すなわち、制御部5は、段取り替え後のガス供給先4iに対してステップS200を繰り返す。
【0039】
図7は、ガス供給先の段取り替え処理(ステップS300)を制御部5が実行するフローチャートである。上述したとおり、ガス供給先4iへガス供給が完了すると、ガス供給先4iの上流側にあるバルブV1iは閉弁される(図5のステップS220)。また、バルブV2も閉弁されている。すなわち、ガスは閉塞された下流流路20aおよび20bの配管内に残存している。
【0040】
ステップS310において、制御部5は、液体ポンプ3を停止し、補助ポンプ2の運転を継続する。ステップS310における各バルブおよび各ポンプの状態を図6のS310の行に示す。下流流路20aおよび20bには、補助ポンプ2によってガスが継続して供給されるため、例えば配管の温度は低下し続けるといった場合がある。また、ガスは閉塞された下流流路20aおよび20bの配管内に残存しているため、液体ポンプ3によってガスが継続して供給されると、例えば下流流路20aおよび20bの配管内の圧力が上昇する場合がある。制御部5は、調節流路20bに設けられた温度センサー7によって検出された温度および圧力センサー6によって検出された圧力を読み込む(図3参照)。
【0041】
ステップS320において、制御部5は、この温度の検出値が予め定められた閾値より高いか否かを判定し、圧力の検出値が、予め定められた閾値より低いか否かを判定する。温度の検出値が予め定められた温度の閾値より低い場合、圧力の検出値が予め定められた圧力の閾値より高い場合、もしくはその両方である場合(ステップS320:NO)、制御部5は、バルブV2の開度を調整する(ステップS330)。なお、ステップS320、S330および後述するステップS340における各バルブおよび各ポンプの状態を図6のS320、S330、S340の行に示す。
【0042】
閉塞された下流流路20aおよび調節流路20bには、補助ポンプ2によってガスの供給が継続されている。そのため、バルブV2が閉じられると、下流流路20aおよび調節流路20bの管路内の圧力は上昇する。一方、バルブV2が開かれると、下流流路20aおよび調節流路20b内のガスは、矢印T4に示すように、バルブV2および放出ライン30を流通し、大気中へ放出される(図3参照)。このガスの放出によって、下流流路20aおよび調節流路20b内のガスの圧力は下げられる。
【0043】
また、バルブV2が閉じられて閉塞された下流流路20aおよび調節流路20bに、ガスの供給が継続されると、管路内の温度は、供給され続けるガスによって過度に冷却される場合がある。一方、バルブV2が開かれると、上述と同様、管路内のガスは放出ライン30から大気中へ放出される(図3参照)。このガスの放出によって管路内のガスの量が減少すると、外気によって配管が昇温される速度が、下流流路20aおよび調節流路20bへガスが供給されることによって管路が冷却される速度を上回る。すなわち、制御部5は、このガスの放出によって、下流流路20aおよび調節流路20b内のガスの温度を調節することができる。このように、制御部5は、バルブV2の開度を調節して、下流流路20aおよび調節流路20b内におけるガスの滞留時間を調節することによって、下流流路20aおよび調節流路20b内の温度と圧力の閾値を満たす調節を行う。なお、制御部5が、液体ポンプ3を停止し、補助ポンプ2によって下流流路20aおよび20bにガスが継続して供給される処理と、上述した第二のバルブV2の開度の調節によって、下流流路20aおよび調節流路20b内の温度と圧力の検出値が閾値を満たす調節を行う処理と、を実行する制御モードを、「第二のモード」とも呼ぶ。
【0044】
なお、液体ポンプ3は、必ずしも停止しなければならないわけではない。例えば、液体ポンプ3の出力を低減(例えば、ガス供給先4にガスを供給している場合の出力に対して、30%や50%の出力)して運転を継続することもできる。この場合、例えば予冷に必要なガス消費量が削減される程度まで、補助ポンプ2の出力も低減されることが好ましい。
【0045】
以上の処理により、ガス供給先の段取り替え処理の期間、液化ガスの圧送は、補助ポンプ2のみによって実行される(図3参照)。従って、液体ポンプ3によってガス供給先4に液化ガスを供給している期間と比較して、下流流路20aおよび調節流路20b内に供給される液化ガスの供給量は低減される。また、ガス供給先4にガスを供給していない期間、補助ポンプ2により液化ガスの圧送が継続されることによって、供給装置内の温度の上昇は抑制される。従って、ガス供給先4へガス供給が完了して補助ポンプ2や液体ポンプ3が停止された場合に必要とされる再起動における予冷は、行われる必要がなくなる。また、これにより、設備稼働率が向上される。
【0046】
なお、貯槽100の貯留内圧と液体ポンプを含む管路内の圧力との差圧が液化ガスを圧送できる程度に設定される場合には、補助ポンプ2を省略することもできる。貯槽100内の差圧は、例えば液化ガスが放出ライン30まで圧送できる程度であって、第二の供給流路20内の圧力の上昇がされにくい程度の差圧に設定されることが好ましい。
【0047】
制御部5は、温度センサー7の検出温度が予め定められた温度の閾値より高く、圧力センサー6の検出圧力が予め定められた圧力の閾値より低い場合(ステップS320:YES)、ガス供給先4の段取り替えが完了したか否かを確認する(ステップS340)。ガス供給先4の段取り替えが完了していない場合(ステップS340:NO)、段取り替えが完了するまで、上述したステップS320とS330の処理を繰り返す。ガス供給先4の段取り替えが完了している場合(ステップS340:YES)、制御部5はバルブV2を閉弁する(ステップS350)。ステップS350における各バルブおよび各ポンプの状態を図6のS350の行に示す。
【0048】
これにより、下流流路20aおよび調節流路20b内のガスは、放出ライン30を流通せず大気への放出がされなくなる。その後、ステップS360において、制御部5は、液体ポンプ3を起動して運転を再開する。ステップS360における各バルブおよび各ポンプの状態を図6のS360の行に示す。以上が、制御部5のガス供給先の段取り替え処理である。
【0049】
ガス供給先の段取り替え処理が完了すると、制御部5は、別のガス供給先4(図4においてガス供給先4i)に対して、ステップS200を繰り返す(図5参照)。なお、図4において、液体ポンプ3から別のガス供給先4(図4においてガス供給先4i)へのガスの流れは矢印T6で示されている。別のガス供給先4にガスを供給しない場合(ステップS230:NO)、ガスの供給は完了する(図5参照)。なお、矢印T5は、上述した矢印T1と同様、貯槽100から液体ポンプ3へ供給される液化ガスの流れを示している。
【0050】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…液化ガスの供給装置
2…補助ポンプ
3…液体ポンプ
4、41、4i、4n…ガス供給先
5…制御部
6…圧力センサー
7…温度センサー
10…第一の供給流路
10a…上流流路
10b…中間流路
11…第一の予冷流路
20…第二の供給流路
20a…下流流路
20b…調節流路
21…第二の予冷流路
30…放出ライン
100…貯槽
200…ガス配管
V1、V11、V1i、V1n、V2、Va、Vb、Vc、Vd、Ve…バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7