(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】建具及びガラス外れ止め部材
(51)【国際特許分類】
E06B 3/58 20060101AFI20220208BHJP
E06B 5/16 20060101ALI20220208BHJP
E06B 3/20 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
E06B3/58 C
E06B5/16
E06B3/20
E06B3/58 B
(21)【出願番号】P 2017216818
(22)【出願日】2017-11-09
【審査請求日】2020-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】河村 桂一
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-248836(JP,A)
【文献】特開2012-140785(JP,A)
【文献】実開昭55-097082(JP,U)
【文献】実開昭54-025633(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/58
E06B 5/16
E06B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の框体及び前記框体の内側に納められるガラスを備える建具であって、
前記框体に取り付けられ、前記ガラスの端部の見込方向一側の面を押圧する押し縁部材と、
前記框体を構成する縦框及び横框のそれぞれに固定されるガラス外れ止め部材と、を備え、
前記ガラス外れ止め部材は、
見込方向において前記ガラスの端部の見込方向一側の面と前記押し縁部材との間に配置され、前記ガラスの端部に見込方向一側で対面する押さえ部を有する押さえ片と、
前記押さえ片を保持し、締結孔を通じて締結部材によって前記縦框又は前記横框に固定される保持部と、を有し、
前記押さえ部は、前記ガラスの端部の見込方向一側の面に沿って延びるとともに見付方向において前記押し縁部材よりも前記框体の内側に突出する突出部を有
し、
前記突出部は、突出する先端側が円弧状に形成される建具。
【請求項2】
樹脂製の框体及び前記框体の内側に納められるガラスを備える建具に適用され、前記框体を構成する縦框及び横框のそれぞれに固定されるガラス外れ止め部材であって、
前記ガラス外れ止め部材は、
見込方向において前記ガラスの端部の見込方向一側の面と前記框体に取り付けられるとともに前記ガラスの端部の見込方向一側の面を押圧する押し縁部材との間に配置され、前記ガラスの端部に見込方向一側で対面する押さえ部を有する押さえ片と、
前記押さえ片を保持し、締結孔を通じて締結部材によって前記縦框又は前記横框に固定される保持部と、を有し、
前記押さえ部は、見付方向において前記押し縁部材よりも前記框体の内側に突出する突出部を有
し、
前記突出部は、突出する先端側が円弧状に形成されるガラス外れ止め部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス外れ止め部材を備える建具及びガラス外れ止め部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、障子の框体の内側に納められるガラスが外れないように、框体にガラス外れ止め部材を配置する建具が知られている。この種の建具を開示するものとして例えば特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、合成樹脂製の窓枠又は窓框に複層ガラスを装着してなる複層ガラス窓の防火構造において、窓枠又は窓框における内周溝部に、耐熱性ガラス外れ止めを設けた複層ガラス窓の防火構造について記載されている。例えば、特許文献1には、室内側ガラス外れ止めと、この室内側ガラス外れ止めに係脱可能に組み付けられる室外側ガラス外れ止めとから構成される耐熱性ガラス外れ止めが示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂製の框体に固定されるガラス外れ止め部材は、ガラスの外周縁からガラスの内側に所定の掛かり幅で配置されている。框体からガラス側にガラス外れ止め部材が飛び出すと意匠性が損なわれる可能性があるため、ガラス外れ止め部材のガラスへの掛かり幅は、ガラス外れ止め部材が、框体からガラス側に飛び出さないように調整されている。
【0006】
しかし、ガラス外れ止め部材のガラスへの掛かり幅を框体からガラス側に飛び出さないように調整されると、ガラス外れ止め部材のガラスへの掛かりが浅くなりがちであり、ガラスの脱落が生じるおそれがあった。この点、ガラス外れ止め部材のガラスへの掛かりを確保する点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、建具に適用されるガラス外れ止め部材において、ガラス外れ止め部材のガラスへの掛かりを十分確保できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、樹脂製の框体(例えば、後述の框体30)及び前記框体の内側に納められるガラス(例えば、後述のガラス25)を備える建具(例えば、後述の建具1)であって、前記框体に取り付けられ、前記ガラスの端部の見込方向一側の面を押圧する押し縁部材(例えば、後述の押し縁部材27)と、前記框体を構成する縦框(例えば、後述の吊元側縦框33、戸先側縦框34)及び横框(例えば、後述の上框31、下框32)のそれぞれに固定されるガラス外れ止め部材(例えば、後述のガラス外れ止め部材40)と、を備え、前記ガラス外れ止め部材は、見込方向において前記ガラスの端部の見込方向一側の面と前記押し縁部材との間に配置され、前記ガラスの端部に見込方向一側で対面する押さえ部(例えば、後述の押さえ部421)を有する押さえ片(例えば、後述の押さえ片42)と、前記押さえ片を保持し、締結孔(例えば、後述の締結孔41c)を通じて締結部材(例えば、後述のネジ45)によって前記縦框又は前記横框に固定される保持部(例えば、後述の保持金具41)と、を有し、前記押さえ部は、前記ガラスの端部の見込方向一側の面に沿って延びるとともに見付方向において前記押し縁部材よりも前記框体の内側に突出する突出部(例えば、後述の押さえ延出部421b)を有する建具に関する。
【0009】
また、前記突出部は、突出する先端側が円弧状に形成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、樹脂製の框体及び前記框体の内側に納められるガラスを備える建具に適用され、前記框体を構成する縦框及び横框のそれぞれに固定されるガラス外れ止め部材であって、前記ガラス外れ止め部材は、見込方向において前記ガラスの端部の見込方向一側の面と前記框体に取り付けられるとともに前記ガラスの端部の見込方向一側の面を押圧する押し縁部材との間に配置され、前記ガラスの端部に見込方向一側で対面する押さえ部を有する押さえ片と、前記押さえ片を保持し、前記縦框又は前記横框に固定される保持部と、を有し、前記押さえ部は、見付方向において前記押し縁部材よりも前記框体の内側に突出する突出部を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建具に適用されるガラス外れ止め部材において、ガラス外れ止め部材のガラスへの掛かりを十分確保できる構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る建具を示す正面図である。
【
図4】本実施形態の建具が備える戸先側縦框に固定されるガラス外れ止め部材を見付方向の吊元側から見た図である。
【
図5】本実施形態の建具が備える上框に固定されるガラス外れ止め部材を下側から見た図である。
【
図6】本実施形態のガラス外れ止め部材の分解斜視図である。
【
図7】本実施形態の建具に適用されるガラス外れ止め部材及びその周囲を示す拡大横断面図である。
【
図8】本実施形態の建具に適用されるガラス外れ止め部材及びその周囲を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、「見付方向」とは、建物に形成された開口部に納められた建具(サッシ)の枠体に収められるガラスや障子の面内方向を意味し、「見込方向」とは、室内外方向(即ち、奥行き方向)を意味する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る建具1を示す正面図である。本実施形態の建具1は、防火仕様の縦辷り窓である。まず、建具1の全体構成について説明する。本実施形態の建具1は、建物開口部に固定される枠体10と、枠体10の内側に開閉可能に取り付けられる障子20と、を備える。
【0015】
枠体10は、上枠11、下枠12、吊元側縦枠13及び戸先側縦枠14が矩形に枠組みされて構成される。上枠11、下枠12、吊元側縦枠13及び戸先側縦枠14は、何れも樹脂製であり、溶着によって接合される。これらの樹脂製の枠(上枠11、下枠12、吊元側縦枠13及び戸先側縦枠14)は、内部に中空部を有する押出し形材であり、後述する中空部が枠の押し出し方向に沿って連続している。
【0016】
図2は、本実施形態の建具1の縦断面図である。上枠11の内部は、見込方向で複数の空間に区画されており、室外側から室内側の順に中空部11a,11b,11cが形成される。中空部11cには金属製の上枠芯材11dが配置される。また、上枠11の室内側下部には、下方に延びる延出部11eが形成され、延出部11eの室外側の見付面にはクッション材11fが配置される。同様に、下枠12の内部にも、見込方向に複数の中空部12a,12b,12cが形成され、中空部12bには金属製の下枠芯材12dが配置される。また、下枠12の室内側上部には、上方に延びる延出部12eが形成され、該延出部12eにもクッション材12fが配置される。
【0017】
図3は、本実施形態の建具1の横断面図である。吊元側縦枠13の内部も、見込方向で区画された複数の中空部13a,13b,13cが形成され、中空部13bには金属製の縦枠芯材13dが配置される。また、吊元側縦枠13の室外側には見付方向戸先側に延びる延出部13eが形成され、該延出部13eにもクッション材13fが配置される。
【0018】
戸先側縦枠14の内部にも、見込方向で区画された複数の中空部14a,14b,14cが形成され、中空部14bには金属製の縦枠芯材14dが配置される。戸先側縦枠14の室外側にも見付方向吊元側に延びる延出部14eが形成され、該延出部14eにもクッション材14fが配置される。
【0019】
図3に示すように、枠体10の内側の隅(内隅)には枠側コーナー金具46がそれぞれ配置される(
図2において図示省略)。枠側コーナー金具46は、4隅のそれぞれに配置される。枠側コーナー金具46自体は、枠体10の見込面に配置されるが、ネジ等の締結部材を介して枠体10の内側の芯材(上枠芯材11d、下枠芯材12d、縦枠芯材13d及び縦枠芯材14d)に締結固定される。より具体的には、枠体10の戸先側上部では、上枠芯材11dと縦枠芯材14dが枠側コーナー金具46によって連結され、吊元側上部では、上枠芯材11dと縦枠芯材13dが連結される。同様に、戸先側下部では、下枠芯材12dと縦枠芯材14dが枠側コーナー金具46によって連結され、吊元側下部では、下枠芯材12dと縦枠芯材13dが連結される。
【0020】
障子20は、ガラス25と、ガラス25を囲うように構成される框体30と、を含むように構成される。ガラス25は、框体30の内側に納められる。
【0021】
ガラス25は、室外側に配置される室外側ガラス25aと、室外側ガラス25aに対して隙間をあけて室内側に配置される室内側ガラス25bと、を備える複層ガラスである。室外側ガラス25aと室内側ガラス25bの間にはスペーサ26等が配置される。
【0022】
框体30は、上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34が矩形に枠組みされて構成される。上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34は、何れも樹脂製であり、溶着によって接合される。これらの樹脂製の框(上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34)は、内部に中空部を有する押出し形材であり、後述する中空部が框の押し出し方向に沿って連続している。
【0023】
上框31の内部には、室外側から室内側に向かって複数の中空部31a,31b,31cが形成される。最も室内側に位置する中空部31cには、金属で形成される室内側上框芯材31dが配置される。中空部31bにも、金属製の室外側上框芯材31eが配置される。室内側上框芯材31d及び室外側上框芯材31eは、何れも上框31の長手方向に沿って延びている。上框31の室外側上部には、上枠11の一部と見込方向で対向する延出部31fが形成される。延出部31fの室内側にはクッション材31gが設けられる。また、延出部31fの下方には樹脂製の押し縁部材27を嵌合固定する嵌合固定部31hが形成される。押し縁部材27は、上框31(框体30)に取り付けられ、ガラス25の端部の見込方向一側の面を押圧する。
【0024】
下框32の内部にも、室外側から室内側に向かって複数の中空部32a,32b,32cが形成される。最も室内側に位置する中空部32cには、金属で形成される室内側下框芯材32dが配置される。中空部32bにも、金属製の室外側下框芯材32eが配置される。室内側下框芯材32d及び室外側下框芯材32eは、何れも下框32の長手方向に沿って延びている。下框32の室外側下部には、下枠12の一部と見込方向で対向する延出部32fが形成される。延出部32fの室内側にはクッション材32gが設けられる。また、延出部32fの下方には樹脂製の押し縁部材27を嵌合固定する嵌合固定部32hが形成される。押し縁部材27は、下框32(框体30)に取り付けられ、ガラス25の端部の見込方向一側の面を押圧する。
【0025】
吊元側縦框33の内部には、室外側から室内側に向かって複数の中空部33a,33b,33cが形成される。最も室内側に位置する中空部33cには、金属で形成される室内側縦框芯材33dが配置される。中空部33bにも、金属製の室外側縦框芯材33eが配置される。室内側縦框芯材33d及び室外側縦框芯材33eは、何れも吊元側縦框33の長手方向に沿って延びている。吊元側縦框33の室外側には、吊元側縦枠13の一部と見込方向で対向する延出部33fが形成される。延出部33fの室内側にはクッション材33gが設けられる。また、延出部33fの戸先側には樹脂製の押し縁部材27を嵌合固定する嵌合固定部33hが形成される。押し縁部材27は、吊元側縦框33(框体30)に取り付けられ、ガラス25の端部の見込方向一側の面を押圧する。
【0026】
戸先側縦框34の内部には、室外側から室内側に向かって複数の中空部34a,34b,34cが形成される。最も室内側に位置する中空部34cには、金属で形成される室内側縦框芯材34dが配置される。中空部34bにも、金属製の室外側縦框芯材34eが配置される。室内側縦框芯材34d及び室外側縦框芯材34eは、何れも戸先側縦框34の長手方向に沿って延びている。戸先側縦框34の室外側には、吊元側縦枠13の一部と見込方向で対向する延出部34fが形成される。延出部34fの室内側にはクッション材34gが設けられる。また、延出部34fの吊元側には樹脂製の押し縁部材27を嵌合固定する嵌合固定部34hが形成される。押し縁部材27は、戸先側縦框34(框体30)に取り付けられ、ガラス25の端部の見込方向一側の面を押圧する。
【0027】
本実施形態では、框体30内部の室外側に位置する芯材(室外側上框芯材31e、室外側下框芯材32e、室外側縦框芯材33e及び室外側縦框芯材34e)と、室内側に位置する芯材(室内側上框芯材31d、室内側下框芯材32d、室内側縦框芯材33d及び室内側縦框芯材34d)と、が框芯材連結金具67によって連結されている。框芯材連結金具67は、框体30の外側面の形状に応じて段差状に形成されるプレート部材である。框芯材連結金具67は、框体30(上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34)の外部に配置され、框体30の内部で異なる中空部に配置される室外側の芯材と室内側の芯材にネジ等の締結部材によってそれぞれ締結される。これによって見込方向に複数の中空部が形成される樹脂製の框体30が火災発生時の高温環境下で室外側と室内側に分離する事態が確実に防止されている。
【0028】
障子20は、上枠11に連結されるとともに上框31(框体30)に連結される上アーム部材61及び下枠12に連結されるとともに下框32(框体30)に連結される下アーム部材62によって開閉可能に枠体10の内側に支持される。本実施形態では、上アーム部材61及び下アーム部材62は、何れも框体30に対して金属により板状に成形される補強材65を介して連結される。
【0029】
障子20の戸先側には、ハンドル55に連動するスライドロック機構50が配置される。スライドロック機構50は、ハンドル55操作に連動して上下方向に移動するスライドプレート51と、スライドプレート51の戸先側の見込面に形成されるロックピン52と、を備える。戸先側縦枠14の内側の見込面には、ロックピン52が嵌合するロックピン受け金具15が固定される。本実施形態では、ロックピン52は、上下方向で複数個所に形成されており、ロックピン受け金具15もロックピン52の数に応じて上下方向に間隔をあけて複数固定される。また、スライドプレート51は、戸先側縦框34の戸先側にスライド嵌合された状態でハンドル55に連結されている。
【0030】
次に、框体30の内側の見込面に配置されるガラス外れ止め部材40について説明する。
図1に示すように、框体30(上框31、下框32、吊元側縦框33及び戸先側縦框34)の内側の見込面にはガラス外れ止め部材40が1又は複数配置される。なお、框体30の内側の見込面とは、框体30におけるガラス25に対向する面である。
【0031】
図4は、本実施形態の建具1が備える戸先側縦框34に固定されるガラス外れ止め部材40を見付方向の吊元側から見た図である。なお、
図4では、加熱発泡材やセッティングブロックの図示が省略されるとともに、ガラス25が鎖線で示されている。
【0032】
図4に示すように、戸先側縦框34の内側の見込面には、4個のガラス外れ止め部材40が間隔をあけて配置される(
図4参照)。同様に吊元側縦框33の見込面にも4個のガラス外れ止め部材40が配置される。以下の説明において吊元側縦框33又は戸先側縦框34に配置されるガラス外れ止め部材40の符号をガラス外れ止め部材40aとして説明する。
【0033】
図5は、本実施形態の建具1が備える上框31に固定されるガラス外れ止め部材40を下側から見た図である。なお、
図5でも、加熱発泡材やセッティングブロックの図示が省略されるとともに、ガラス25が鎖線で示されている。
【0034】
図5に示すように、上框31の内側の見込面には、中央にガラス外れ止め部材40が1個配置される(
図5参照)。同様に、下框32の内側の見込面にもガラス外れ止め部材40が1個配置される。以下の説明において上框31又は下框32に配置されるガラス外れ止め部材40の符号をガラス外れ止め部材40bとして説明する。
【0035】
本実施形態では、ガラス外れ止め部材40aとガラス外れ止め部材40bは、同じ形状のガラス外れ止め部材40である。次に、このガラス外れ止め部材40の構成について説明する。
図6は、本実施形態のガラス外れ止め部材40の分解斜視図である。
【0036】
図6に示すように、本実施形態のガラス外れ止め部材40は、框体30に固定される保持金具41と、保持金具41によって保持される押さえ片42と、を備える。本実施形態では、保持金具41及び押さえ片42は、何れも金属製(例えば、ステンレス鋼)である。
【0037】
保持金具41は、框体30との間に隙間を形成する台部41aと、台部41aの両側(見込方向に直交する)に配置される取付部41bと、を備える。両側の取付部41bのそれぞれには、見込方向に細長い締結孔41cが形成される。この締結孔41cに締結部材としてのネジ45が締結されることにより、保持金具41が框体30に固定される。台部41aは、固定された状態で框体30の見込面との間に隙間を形成する。台部41aの室内側の端部には、室内側から室外側に切り欠かれた係合孔41dが形成される。また、台部41aの室内側の端部には、ガラス25側に向かって延出する延出片41eが形成される。延出片41eは、係合孔41dを跨る壁状に形成されており、保持金具41に係合された状態の押さえ片42に対向する。
【0038】
押さえ片42は、ガラス25の端部に対向する押さえ部421と、押さえ部421の下端部(見付方向における框体30側の端部)から室内側に延びる係合部422と、押さえ部421の下端部(見付方向における框体30側の端部)における係合部422の両側において室内側に延びる足部423と、を備える。
【0039】
押さえ部421は、見込方向においてガラス25の端部の見込方向の室外側(見込方向一側)の面と押し縁部材27との間に配置され、ガラス25の端部に見込方向の室外側(見込方向一側)で対面する。押さえ部421は、押さえ基部421aと、押さえ延出部421b(突出部)と、を有する。押さえ基部421a及び押さえ延出部421bは、一枚の板材により一体的に形成され、ガラス25の端部の見込面に平行な平面状に形成される。
【0040】
押さえ基部421aは、係合部422の室外側の端部に接続され、長方形状に形成される。
押さえ延出部421bは、押さえ基部421aにおける押さえ部421と反対側の端部に接続される。押さえ延出部421bは、押さえ部421と反対側の端部から、ガラス25の端部の見込方向の室外側(見込方向一側)の面に沿って延びるとともに、見付方向において押し縁部材27よりも框体30の内側に突出する。押さえ延出部421bは、框体30の内側の先端が凸となるように突出する円弧状に形成される。
【0041】
押さえ片42の係合部422の爪部422aが保持金具41の係合孔41dに係合することで押さえ片42が保持金具41に係合固定される。本実施形態の係合部422は、その先端がガラス25側に突出する爪状に形成されており、台部41aの裏側を通って爪状の爪部422aが係合孔41dの端面に係合する。
【0042】
押さえ片42の押さえ延出部421bが押し縁部材27よりも見付方向における框体30の内側に突出するため、押さえ部421とガラス25の端部との重なり部分が、押さえ延出部421bが形成されない場合よりも多くなり、ガラス25の端部との掛かり部分が増加する。これにより、押さえ片42におけるガラス25の端部との掛かり部分を増加でき、ガラス25の脱落を一層防止できる。
【0043】
また、押さえ延出部421bは、室外側から見た場合に、室外側の外部から視認される。複数の押さえ延出部421bが、見付方向において押し縁部材27よりも框体30の内側に突出し、突出する先端側が凸となる円弧状に形成されるため、室外側の外部に露出して視認される部分は、
図1に示すように、框体30からガラス25側に突出する円弧状に形成される。また、複数の押さえ延出部421bは、同じ形状で、見付方向においてガラス25の端部側からガラスの内側に突出する。そのため、デザイン性を向上でき、意匠性を確保できる。
【0044】
本実施形態では、押さえ片42は、保持金具41に係合した状態でも見込方向で若干の移動が可能となっている。保持金具41と押さえ片42の係合を解除する場合は、係合部422の爪部422aを框体30側に押し込んで係合を解除し、押さえ片42を室内外側に移動させる。
【0045】
框体30に固定されたガラス外れ止め部材40の取付状態について説明する。まず、吊元側縦框(縦框)33に固定されるガラス外れ止め部材40aについて説明する。
図7は、本実施形態の建具1に適用されるガラス外れ止め部材40a及びその周囲を示す拡大横断面図である。
【0046】
図7に示すように、ガラス外れ止め部材40が吊元側縦框33に固定された状態では、押さえ部421が室外側ガラス25aの吊元側端部に室外側で対面した状態となる。また、複数の押さえ延出部421bは、見付方向において押し縁部材27よりも框体30の内側に突出し、突出する先端側が凸となるように円弧状に形成される。そのため、複数の押さえ延出部421bは、室外側から見た場合に、先端側の円弧状の部分が、
図1に示すように、框体30からガラス25側に突出して、室外側の外部から視認される。
【0047】
ガラス外れ止め部材40aは、保持金具41を框体30に取り付けた状態で加熱発泡材38を配置し、ガラス25を嵌め込んだ状態で押さえ片42を保持金具41に係合させる。加熱発泡材38は、ガラス25の4周を囲う帯状に形成されており、ガラス外れ止め部材40に差し掛かる部分では、保持金具41の台部41aのガラス25側の面に加熱発泡材38が載った状態となる。加熱発泡材38は、接着剤、接着テープ等を用いた接着固定やネジ等を用いた締結固定等、適宜の方法で框体30に固定される。
【0048】
保持金具41は、吊元側縦框33の中空部33bに配置される室外側縦框芯材33eに締結孔41cを通じてネジ45が締結固定されることにより、吊元側縦框33の見込面に固定される。上述のように、締結孔41cは、見込方向に長い長孔となっている。従って、吊元側縦框33及び室外側縦框芯材33eに対する加工位置を変えることなく、保持金具41の取付位置を見込方向(室内外方向)で調整することが可能となっている。例えば、室外側ガラス25aの室外側面から保持金具41の延出片41eまでの長さを距離d1とすると、距離d1は保持金具41の取付位置によって変わることになる。押さえ片42は保持金具41によって位置が決まるので、ガラス25と押さえ片42の位置関係は保持金具41の取付位置によって調整することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、押さえ片42は、保持金具41に係合された状態でも見込方向に若干移動可能となっているが、この移動範囲も保持金具41の位置によって決まるので、何れにしても保持金具41の取付位置によってガラス25とガラス外れ止め部材40aの位置関係が調整されることになる。
【0050】
以上、
図7を参照して吊元側縦框33に固定されるガラス外れ止め部材40aについて説明したが、戸先側縦框34でも同様の構成及び方法でガラス外れ止め部材40aが吊元側縦框33と同様に距離d1の設定で戸先側縦框34に固定される。
【0051】
次に、上框(横框)31に固定されるガラス外れ止め部材40bについて説明する。
図8は、本実施形態の建具1に適用されるガラス外れ止め部材40b及びその周囲を示す拡大縦断面図である。
【0052】
図8に示すように、ガラス外れ止め部材40bが上框31に固定された状態では、押さえ部421が室外側ガラス25aの上端部に室外側で対面した状態となる。また、複数の押さえ延出部421bは、見付方向において押し縁部材27よりも框体30の内側に突出し、突出する先端側が凸となるように円弧状に形成される。そのため、複数の押さえ延出部421bは、室外側から見た場合に、先端側の円弧状の部分が、框体30からガラス25側に突出して、室外側の外部から視認される。
【0053】
なお、ガラス外れ止め部材40bを上框31に固定する方法は、吊元側縦框33に固定する場合と基本的に同様であるが、ガラス25とガラス外れ止め部材40bの位置関係は、ガラス25とガラス外れ部材40aの位置関係とは異なるように、保持金具41が固定される。本実施形態では、縦框(吊元側縦框33及び戸先側縦框34)に設定されるガラス25に対するガラス外れ止め部材40の位置関係を示す距離d1よりも、上框31のガラス25に対するガラス外れ止め部材40の位置関係を示す距離d2の方が長くなるように設定される。即ち、上框31のガラス外れ止め部材40は、縦框(吊元側縦框33及び戸先側縦框34)に比べて相対的に隙間が大きくなるようにレイアウトされる。ここで、複層ガラス25は、縦と横で反りや歪みの生じる大きさが異なるため、ガラスの変形を吸収できるように距離d2の方が距離d1よりも大きく構成されている。
【0054】
以上、
図8を参照して上框31に固定されるガラス外れ止め部材40bについて説明したが、下框32でも同様の構成及び方法でガラス外れ止め部材40bが上框31と同様に距離d2の設定で下框32に固定される。
【0055】
以上説明した上記実施形態の構成によれば、以下のような効果を奏する。
建具1は、樹脂製の框体30及び框体30の内側に納められるガラス25を備え、ガラス25の端部の見込方向一側の面を押圧する押し縁部材27と、框体30を構成する縦框33,34及び横框31,32のそれぞれに固定されるガラス外れ止め部材40と、を備え、ガラス外れ止め部材40は、見込方向においてガラス25の端部の見込方向一側の面と押し縁部材27との間に配置され、ガラス25の端部に見込方向一側で対面する押さえ部421を有する押さえ片42と、押さえ片42を保持し、縦框33,34又は横框31,32に固定される保持金具41と、を有し、押さえ部421は、ガラス25の端部の見込方向一側の面に沿って延びるとともに見付方向において押し縁部材27よりも框体30の内側に突出する押さえ延出部421bを有する。
【0056】
これにより、押さえ片42の押さえ延出部421bが押し縁部材27よりも見付方向における框体30の内側に突出するため、押さえ部421とガラス25の端部との重なり部分が、押さえ延出部421bが形成されない場合よりも多くなり、ガラス25の端部との掛かり部分が増加する。これにより、押さえ片42におけるガラス25の端部との掛かり部分を増加でき、ガラス25の脱落を一層防止できる。
【0057】
また、本実施形態では、押さえ延出部421bは、突出する先端側が凸となる円弧状に形成される。これにより、室外側の外部に露出して視認される部分は、框体30からガラス25側に突出する円弧状に形成される。従って、デザイン性を向上でき、意匠性を確保できる。
【0058】
また、本実施形態では、押さえ部421の押さえ延出部421bは、金属製(例えば、ステンレス鋼)である。また、押し縁部材27は、樹脂製である。そのため、火災発生時に樹脂製の押し縁部材27が溶融しても、押し縁部材27よりも内側に突出する金属製の押さえ延出部421bは溶融しにくいため、防火性能を向上できる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、框体及びガラスを備える種々の建具に本発明を適用できる。また、ガラス外れ止め部材の構成も適宜変更することができる。例えば、室内外の両方に押さえ片を有する構成や室内側にのみ押さえ片を有する構成とすることも場合によっては可能である。
【0060】
上記実施形態では、開閉可能な障子を備える建具として縦辷り窓を例に説明したが、横辷り窓や引違い窓のような開閉可能な障子を備える建具にも本発明を適用できる。また、FIX窓のような框体の内側に窓を固定する建具に本発明を適用することができる。
【0061】
また、上記実施形態の枠体10及び框体30は、何れも樹脂製であるが、枠体10及び框体30の見込方向室外側及び室内側の少なくとも何れか一方に、アルミ等の金属製のカバー部材を追加的に配置する構成としてもよい。即ち、樹脂製の枠及び樹脂製の框は、その内部、室内側又は室外側に金属部材を取り付けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 建具
25 ガラス
27 押し縁部材
30 框体
31 上框(横框)
32 下框(横框)
33 吊元側縦框(縦框)
34 戸先側縦框(縦框)
40 ガラス外れ止め部材
41 保持金具(保持部)
42 押さえ片
421 押さえ部
421b 押さえ延出部(突出部)