IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本光電工業株式会社の特許一覧

特許7020885微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具
<>
  • 特許-微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具 図1
  • 特許-微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具 図2
  • 特許-微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具 図3
  • 特許-微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具 図4
  • 特許-微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具 図5
  • 特許-微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具 図6
  • 特許-微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具 図7
  • 特許-微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具 図8
  • 特許-微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具 図9
  • 特許-微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具 図10
  • 特許-微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
G01N1/00 101H
G01N1/00 101K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017228681
(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公開番号】P2019100734
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】増田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】新井 研
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-345790(JP,A)
【文献】実開昭60-059943(JP,U)
【文献】特開2008-275353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の液体を採取するキャピラリーの一端が挿入され、この挿入により前記キャピラリーが一時固定される第1の穴と、この第1の穴に続く第1の空間と、を有する第1の通路と、
前記キャピラリーにより採取された液体を吸引する吸引管が挿入される第2の穴と、この第2の穴に連通する第2の空間を有し、前記第1の通路に連通する第2の通路と、
を有し、
前記第1の通路の中央を長手方向に伸びる第1の線と前記第2の通路の中央を長手方向に伸びる第2の線とのなす角度が、90度~90度±10度とされている微量液採取器具のアダプタ。
【請求項2】
前記第1の穴の周壁と前記第1の空間の周壁との境界には段差が形成され、
前記第1の空間の径が前記第1の穴の径より小径とされている請求項1に記載の微量液採取器具のアダプタ。
【請求項3】
前記第2の穴は、その入口から内部へ向かってテーパ状に形成され、前記第2の空間の径が前記第2の穴の最小径より小径とされている請求項1または2に記載の微量液採取器具のアダプタ。
【請求項4】
前記第2の空間と前記第2の通路が形状を有する基部と、
前記第1の穴が形成され、前記基部の第1の面にから外方へ突出した突出筒体と
を具備する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の微量液採取器具のアダプタ。
【請求項5】
検査対象の液体を採取するキャピラリーの一端が挿入され、この挿入により前記キャピラリーが一時固定される第1の穴と、この第1の穴に続く第1の空間と、を有する第1の通路と、前記キャピラリーにより採取された液体を吸引する吸引管が挿入される第2の穴と、この第2の穴に連通する第2の空間と、前記第1の通路に連通する第2の通路と、を有し、前記第1の通路の中央を長手方向に伸びる第1の線と前記第2の通路の中央を長手方向に伸びる第2の線とのなす角度が、90度~90度±10度とされている微量液採取器具のアダプタと、
前記第1の穴に挿入されたキャピラリーと
を具備する微量液採取器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液などの液体を採取する場合に用いられる微量液採取器具と、この微量液採取器具のアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、微量液採取器具を開示している。この微量液採取器具は、キャピラリーを挿入し一時固定するための結合孔と、キャピラリーにより収集した血液等の液体を上記キャピラリー側から吸引するための吸引側穴部とが、本体に形成されたものである。
【0003】
この微量液採取器具においては、キャピラリーの毛細管現象により液体を吸引する。従って、微量な血液を直接装置吸引部に運ぶことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4807587号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ある一定量以上の液体を吸引すると、液体の自重が液体の表面張力に勝りキャピラリーから液体が自重で落下するおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような微量液採取器具における現状に鑑みなされたもので、その目的は、液体を採取してから、測定機器の吸引管によって液体を吸引するまでの間に液体が自重で落下する危険性を低下させることができる微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る微量液採取器具のアダプタは、検査対象の液体を採取するキャピラリーの一端が挿入され、この挿入により前記キャピラリーが一時固定される第1の穴と、この第1の穴に続く第1の空間と、を有する第1の通路と、前記キャピラリーにより採取された液体を吸引する吸引管が挿入される第2の穴と、この第2の穴に連通する第2の空間を有し、前記第1の通路に連通する第2の通路と、を有し、前記第1の通路の中央を長手方向に伸びる第1の線と前記第2の通路の中央を長手方向に伸びる第2の線とのなす角度が、90度~90度±10度とされている。
【0008】
本発明の実施形態に係る微量液採取器具は、検査対象の液体を採取するキャピラリーの一端が挿入され、この挿入により前記キャピラリーが一時固定される第1の穴と、この第1の穴に続く第1の空間と、を有する第1の通路と、前記キャピラリーにより採取された液体を吸引する吸引管が挿入される第2の穴と、この第2の穴に連通する第2の空間と、前記第1の通路に連通する第2の通路と、を有し、前記第1の通路の中央を長手方向に伸びる第1の線と前記第2の通路の中央を長手方向に伸びる第2の線とのなす角度が、90度~90度±10度とされている微量液採取器具のアダプタと、前記第1の穴に挿入されたキャピラリーとを具備する。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の通路の中央を長手方向に伸びる第1の線と第2の通路の中央を長手方向に伸びる第2の線とのなす角度が、90度~90度±10度とされているので、液体を採取してから第2の穴の開口部を上に向けておけば、採取した液体が自重で落下する危険性を低下させることができる。このため、より多くの液体を微量液採取器具に保持することができ、分析のための液量が少ないことを原因とする測定精度の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る微量液採取器具のアダプタの実施形態を示す斜視図。
図2図1のA-A断面図。
図3】本発明に係る微量液採取器具の実施形態を示す斜視図。
図4図3の微量液採取器具を、図1と同じ断面により切断した断面図。
図5図1のA-A断面図に、第1の穴と第2の穴の角度を説明する補助線を加えた図。
図6図4に示した微量液採取器具の断面図において、第2の穴に吸引管が挿入された状態を示す断面図。
図7】本発明の実施形態に係る微量液採取器具を組み立てる場合に用いる組立治具を示す斜視図。
図8】本発明の実施形態に係る微量液採取器具を組み立てる過程の第1段階目を示す斜視図。
図9】本発明の実施形態に係る微量液採取器具を組み立てる過程の第2段階目を示す斜視図。
図10】本発明の実施形態に係る微量液採取器具を組み立てる過程の第3段階目を示す斜視図。
図11】本発明の実施形態に係る微量液採取器具を組み立てる過程の第4段階目を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下添付図面を参照して、本発明に係る微量液採取器具のアダプタ及び微量液採取器具の実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明に係る微量液採取器具のアダプタは、斜視図が図1に、図1のA-A断面図が図2に示されるように構成されている。微量液採取器具は、ガラスやプラスチックなどの樹脂により作成されている。
【0012】
微量液採取器具のアダプタ100は、本体ブロック30を有している。本体ブロック30は、キャピラリーが取り付けられ、このキャピラリーにより採取された液体を吸引する吸引管へ提供するポートが設けられたブロックである。本実施形態では、本体ブロック30は、直方体の形状を有する基部10と、この基部10の第1の面31から外方へ突出した突出筒体20とを備えている。更に、突出筒体20を正面(突出筒体20の円形端部の面)から見た場合に、基部10の例えば右側側壁には、ツマミ部11が突出して設けられている。ツマミ部11は、平板状であり、作業者が親指と人差し指で挟むことができる程度の大きさを有する。
【0013】
突出筒体20は、本体ブロック30の第1の面31において、基部10の中央部より底部側に寄った位置に設けられている。この突出筒体20には、その円形の正面中央から基部10へ向かって所定径を有する第1の穴21を有している。この第1の穴21は、上記突出筒体20内において、上記第1の面31に直交する方向に形成されている。この第1の穴21は、図3図4に示すようにキャピラリー40の一端が挿入され、一時固定される穴である。キャピラリー40としては、その外形寸法が例えば、0.8~2.0mmであり、容量が例えば、10~30μLのものを用いることができる。
【0014】
上記第1の穴21の終端部には、第1の空間22が連続して形成されている。第1の穴21と第1の空間22は、第1の通路70を構成する。本体ブロック30の第2の面32から内部へ向かって第2の穴23が形成されている。第2の穴23は、その入口から内部へ向かってテーパ状に形成されている。第2の穴23の奥には、第2の空間25が形成されている。第2の穴23と第2の空間25は、第2の通路80を構成する。
【0015】
前記第1の通路70は第2の通路80に連通している。図5に示されるように、上記第1の穴21と第1の空間22により構成される第1の通路70の中央を長手方向に延びる線L1(第1の線)と、上記第2の穴23と第2の空間25により構成される第2の通路80の中央を長手方向に延びる線L2(第2の線)のなす角度は、90度となっている。この角度は、90度~90度±10度であることを許容する。また、本実施形態では、線L1と線L2を含む平面は、第1の面31及び第2の面32に直交する面となっており、本体ブロック30の底面から垂直に立っている。しかし、線L1と線L2を含む平面が本体ブロック30の底面からに対し90度の状態から、左右(ツマミ部11側或いはツマミ部11側の逆側)に10度の範囲において傾斜して立った状態であっても良い。
【0016】
上記第2の穴23は、上記キャピラリー40により採取された液体を吸引する吸引管が挿入されるポートとして機能する。第1の面31と第2の面32は、基部10において隣接する面であり、互い直交する面である。図5に示すように、第1の面31に直交して隣接する第2の面32からは、上記第2の穴23が上記第2の面32に直交する方向に向かって上記本体ブロック30内において形成されている。第2の空間25は本体ブロック30内において第2の穴23に連通して形成されている。また、第2の穴23に連通する第2の空間25の径が、図6に示されるように、上記第2の穴23の最小径より小径とされている。第2の空間25の径は、測定機器における吸引管50の先端径より細径であり、吸引管50の挿入が上記第2の空間25において抑制される。
【0017】
図2図4に示すように、第1の穴21の周壁と第1の空間22の周壁との境界には段差24が形成され、第1の空間22の径が第1の穴21の径より小径とされている。上記第1の穴21の径は、この第1の穴21の入口から、上記第1の空間22の直前にかけて、上記キャピラリー40の外径と略同一に形成されている。上記段差24は、キャピラリー40を第1の穴21に挿入するときのストッパとして機能する。
【0018】
アダプタ100を用いて図3に示す微量液採取器具200を組み立てる場合には、図7図8に示す組立治具60を用いることができる。組立治具60は、ベース板61上に、キャピラリー40を位置決めして配置するための溝部62を有している。また、組立治具60には、溝部62に配置されたキャピラリー40に対しアダプタ100を、組み立てに最適な位置に配置するための配置台63が設けられている。
【0019】
上記ベース板61において、溝部62の一端側であって配置台63と反対方向の位置には、キャピラリー40の長手方向の移動を停止させるためのストッパ板64が立設形成されている。溝部62の長手方向の他端側であって配置台63に臨む位置には、溝部62内にセットされたキャピラリー40に対し突出筒体20を位置決めするために挟み込む一対の挟持部65、65が設けられている。
【0020】
配置台63の一方の側部には、摺動板66が立設されている。この摺動いた66は、配置台63にアダプタ100を配設して、溝部62内にセットされたキャピラリー40方向へ押してアダプタ100を摺動させるときのガイドとなる。更に、一対の挟持部65、65から溝部62側へ所定寸法離れた位置には、ストッパ67、67が設けられている。ストッパ67、67は、上記摺動板66を用いた摺動によりアダプタ100における突出筒体20の第1の穴21にキャピラリー40を挿入するときに適当な位置でキャピラリー40停止させる機能を有する。
【0021】
以上のような構成を有する組立治具60を用いて、微量液採取器具200を組み立てる手順を、以下に説明する。組立治具60の溝部62内にキャピラリー40を入れて、このキャピラリー40をストッパ板64側に押し付けてストッパ板64に当接させる(図8図9)。
【0022】
次に、アダプタ100を、突出筒体20側から配置台63へ近づけ、配置台63の上にセットする(図10)。次に、摺動板66に基部10の所定一面を摺動させて、アダプタ100をキャピラリー40方向へ押し付ける。アダプタ100の移動がストッパ67、67により停止するまで上記押し付けを続け、停止によりアダプタ100の突出筒体20における第1の穴21にキャピラリー40が挿入され一時固定された微量液採取器具200が完成する(図11)。
【0023】
完成した微量液採取器具200では、キャピラリー40の一端が段差24に当接することより、それ以上の挿入がなされず、第1の空間22に入り込むことがない。このため、測定機器の吸引管50が第2の穴23側から挿入された場合に、吸引管50の先端部が向かう第1の空間22にキャピラリー40が存在せず、吸引管50の先端部によってキャピラリー40が破損したり突出筒体20からキャピラリー40が押し出されたりすることなく、吸引管50によって血液などの検査対象液体を適切に吸引することができる。
【0024】
前述の通り、第2の空間25の径は、測定機器における吸引管50の先端径より細径であり、吸引管50の挿入が上記第2の空間25において抑制される。このため、吸引管50の先端部が第2の空間25を越えて底部に接触することなく、吸引管50の先端部が破損したり吸引管50の先端部が第1の空間22のから第2の空間25へ至る通路を塞ぐ状態となったりすることなく、吸引管50によって血液などの検査対象液体を適切に吸引することができる。
【0025】
完成した微量液採取器具200を使用する場合には、ツマミ部11を作業者が親指と人差し指で挟んで持ち、キャピラリー40の先端41を血液などの検査対象液体に投入する。このとき、キャピラリー40を水平に近い状態とすると好適である。すると、毛細管現象により検査対象液体がキャピラリー40内に入り込み、採取することができる。
【0026】
更に、検査対象液体がキャピラリー40内に入り込んだ状態において、ツマミ部11を親指と人差し指で挟んで持って、キャピラリー40を水平に近い状態に保ち、第2の穴の開口部を上に向けたままで、測定機器における吸引管50の先端部の直下へアダプタ100を移動させることができる。このため、液体がキャピラリー40内から自重で落下する危険性を低下させることができる。係る作用によって、より多くの液体を微量液採取器具200に保持することができ、分析のための液量が少ないことを原因とする測定精度の低下を防止できる。また、採取時の液量を概ねそのまま確保できるため測定項目の増加が期待される。
【0027】
上記実施形態においては、本体ブロック30を、基部10と、この基部10の第1の面31から外方へ突出した突出筒体20とを備えるものとした。しかしながら、本体ブロック30は、キャピラリーが取り付けられ、このキャピラリーにより採取された液体を吸引する吸引管へ提供するポートが設けられた一塊のブロックであれば良く、突出筒体20のように突出した部位を備えなくとも良い。また、基部10には、その例えば右側側壁に突出してツマミ部11が別途設けられているが、基部10自体がツマミ部11の機能を有する大きさや形状であるならば、ツマミ部11を別途設けなくとも良い。
【0028】
本発明に係る微量液採取器具のアダプタは、前記第1の穴の周壁と前記第1の空間の周壁との境界には段差が形成され、前記第1の空間の径が前記第1の穴の径より小径とされても良い。
【0029】
本発明に係る微量液採取器具のアダプタは、前記第2の穴は、その入口から内部へ向かってテーパ状に形成され、前記第2の空間の径が前記第2の穴の最小径より小径とされても良い。
【0030】
本発明に係る微量液採取器具のアダプタは、前記第2の空間と前記第2の通路80が形状を有する基部と、前記第1の穴が形成され、前記基部の第1の面にから外方へ突出した突出筒体とを具備しても良い。
【符号の説明】
【0031】
10 基部 11 ツマミ部
20 突出筒体 21 第1の穴
22 第1の空間 23 第2の穴
24 段差 25 第2の空間
30 本体ブロック 31 第1の面
32 第2の面 40 キャピラリー
41 先端 50 吸引管
60 組立治具 61 ベース板
62 溝部 63 配置台
64 ストッパ板 65 挟持部
66 摺動板 67 ストッパ
70 第1の通路 80 第2の通路
100 アダプタ 200 微量液採取器具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11