(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】独立気泡発泡シート、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
C08J 9/06 20060101AFI20220208BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C08J9/06 CES
G09F9/00 302
G09F9/00 342
(21)【出願番号】P 2017520997
(86)(22)【出願日】2017-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2017013108
(87)【国際公開番号】W WO2017170793
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2019-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2016065534
(32)【優先日】2016-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】矢野 秀明
(72)【発明者】
【氏名】土肥 彰人
(72)【発明者】
【氏名】永井 麻美
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-218077(JP,A)
【文献】特開2002-265661(JP,A)
【文献】特開2005-350571(JP,A)
【文献】特開2012-025916(JP,A)
【文献】特開2007-136966(JP,A)
【文献】特開2012-227977(JP,A)
【文献】特開2015-196234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25に分割した領域と1cm×1cmの正方形の領域の面積が小さくなるいずれかの領域であって、厚みに対して1~99%の深さを有する凹部を少なくとも1箇所有する領域を9以上有する独立気泡発泡シートであって、
前記独立気泡発泡シートの厚みが、0.03~0.6mmであり、
前記凹部のシートの上からみた形状が、線状、四角形、三角形、多角形、及びこれらを組み合わせた形状から選択され、
前記独立気泡発泡シートが、表示装置の内部において、表示パネルの衝撃吸収材として使用されるものである独立気泡発泡シート。
【請求項2】
シート全面に対する前記凹部の面積比率が、1~90%である請求項1に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項3】
前記凹部が、線状である請求項1又は2に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項4】
前記凹部の幅が、0.1~2mmである請求項3に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項5】
前記凹部が、少なくとも2つの領域に渡って存在する請求項1~4のいずれか1項に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項6】
MDにおける平均気泡径が25~300μmであり、TDにおける平均気泡径が30~330μmである気泡を有する請求項1~5のいずれか1項に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項7】
密度が、60~600kg/m
3である請求項1~6のいずれか1項に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項8】
独立気泡率が、90~100%である請求項1~7のいずれか1項に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項9】
25%圧縮強度が、3~90kPaである請求項1~8のいずれか1項に記載の独立気泡発泡シート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の独立気泡発泡シートと、表示パネルとを備える表示装置。
【請求項11】
前記表示パネルが、前記独立気泡発泡シートの上に配置される請求項10に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立気泡発泡シート、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パーソナルコンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット等の携帯機器は、薄型化及び軽量化が望まれており、中でもスマートフォンの薄型化及び軽量化の要求は年々高まっている。携帯機器の薄型化及び軽量化に伴い、表示装置の前面側に配置されるガラス板、アクリル板等により構成される前面板、及び表示パネルも薄型化されている。しかし、前面板及び表示パネルが薄型化されると、前面板及び表示パネルが割れやすくなる。
【0003】
従来、携帯機器において、携帯する日常において繰り返して加えられる衝撃による表示装置の破損及び故障を防止するために、表示パネルの背面側の全面に渡って、又は周縁に衝撃吸収シートが配置されることが知られている。衝撃吸収シートは、繰り返して加えられる衝撃に対する衝撃吸収性を得るため、高い柔軟性等が求められており、発泡シートが広く使用されている。発泡シートとしては、例えば、特許文献1に記載されるように、多数の独立気泡を内包したポリエチレン系架橋発泡シートが知られている。また、ウレタン系発泡シートやゴム系発泡シート等も使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示パネルの背面側の全面に渡って、又は周縁に衝撃吸収シートが配置される場合、携帯機器においては、通常1mm未満の極薄のものが使用される。しかし、特許文献1に記載の発泡シートでは、そのような極薄とすると、日常生活において繰り返して加えられる衝撃に対する衝撃吸収性能が優れているとはいえない場合があり、前面板、表示パネルの割れを十分に防止できない場合があった。
【0006】
本発明は、以上の問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、高い衝撃吸収性を有する発泡シート、及びこれを備える表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記の発明により下記の発明により解決できることを見出した。すなわち、本発明は、下記の発泡シート、及びこれを備える表示装置を提供するものである。
【0008】
[1]25に分割した領域と1cm×1cmの正方形の領域の面積が小さくなるいずれかの領域であって、厚みに対して1~99%の深さを有する凹部を少なくとも1箇所有する領域を9以上有する独立気泡発泡シート。
[2]上記[1]に記載の独立気泡発泡シートと、表示パネルとを備える表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、高い衝撃吸収性を有する独立気泡発泡シート、及びこれを備える表示装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】25に分割した領域を説明するための概念図である。
【
図2】本発明の独立気泡発泡シートの一態様を示す模式図である。
【
図3】本発明の独立気泡発泡シートの一態様を示す模式図である。
【
図4】本発明の表示装置を示す模式的な断面図である。
【
図5】ガラス割れ高さを測定するための積層体を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の独立気泡発泡シートについて説明する。なお、本明細書において、数値範囲の記載に関する「以上」「以下」の数値は任意に組み合わせできる数値である。また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示し、段階的に記載される最小値及び最大値は、任意に組み合わせてもよい。
【0012】
[独立気泡発泡シート]
本発明の独立気泡発泡シート(以下、単に「発泡シート」と称することがある。)は、25に分割した領域と1cm×1cmの正方形の領域の面積が小さくなるいずれかの領域であって、厚みに対して1~99%の深さを有する凹部を少なくとも1箇所有する領域を9以上有するものである。本発明においては、凹部が存在する領域を9以上有するという構成とすることで、25%圧縮強度を小さくして高い衝撃吸収性が得られるとともに、優れた耐プーリング性も得られる。より具体的には、凹部がシート上にある程度均一に存在するような構成とすることで、発泡シート自体の25%圧縮強度が低減して適度に柔らかくなり、高い衝撃吸収性が得られる。またこの適度な柔らかさにより、表示装置の操作の際に生じる応力が緩和され、副次的に優れた耐プーリング性も得られる。なお、プーリング性とは、押圧による液晶の滲みのことを意味する。
【0013】
25に分割した領域(以下、単に「25分割領域」と称することがある。)は、独立気泡発泡シートの縦方向と横方向とをそれぞれ5等分して設定する領域である。例えば、独立気泡発泡シートが正方形又は長方形のような四つの角度が90°の四角形である場合、
図1の1-aに示されるように、縦横の辺を五等分にして分割して設定する25の領域のことを、25分割領域とする。シートが正方形又は長方形以外の形状、例えば、
図1の1-bに示される平行四辺形の場合は、その外接する正方形又は長方形の縦横の辺を五等分にして分割して設定する25の領域のことを、25分割領域とする。また、
図1の1-cに示される楕円形のような略円形の場合も、
図1の1-bと同様に、外接する四角形について、縦横の辺を五等分にして分割して設定する25の領域のことを、25分割領域とする。
なお、正方形、長方形以外の形状で、例えば
図1の1-dに示される、1-bをより寝かせた平行四辺形のような形状の場合、25の領域うち、シートが全く存在しない領域が存在するが(1-dの場合は左上に2つ、右下に2つの計4つ)、これらも含めて25分割領域とする。
【0014】
また、例えば、
図1の1-aで、シートの大きさが20cm×20cmの正方形の場合、25の領域に分割すると、一つの領域は4cm×4cmの正方形となる。このような場合は、25分割領域よりも、1cm×1cmの正方形の領域(以下、単に「正方形領域」と称することがある。)の面積の方が小さいため、正方形領域を本発明における領域とする。正方形領域の設定の方法は、上記の25分割領域の縦横の辺を五等分にして分割した点を、1cmで分割した以外は、25分割領域の設定方法と同じである。
【0015】
本発明において、領域を、25分割領域、及び正方形領域のいずれか面積が小さくなる方とするのは、タッチパネルを操作する際の人の指が該タッチパネルに触れる面積を考慮したものである。例えば、4cm×4cmの正方形の領域に、凹部を少なくとも1箇所有したとしても、指が触れる箇所、又はその近傍に凹部が存在しなければ、耐プーリング性は確実に得られない場合がある。よって、本発明は、領域の面積は最大でも1cm×1cmの1cm2とし、該領域中に凹部を存在させることで、副次的に得られる耐プーリング性を向上させることもできる。
【0016】
衝撃吸収性及び耐プーリング性を向上させる観点から、凹部を有する領域の数は、10以上が好ましく、12以上がより好ましく、14以上が更に好ましい。
また、領域が正方形領域であるとき、25分割領域は1cm×1cmの正方形の面積1cm2より大きくなる、すなわち、シート全面の面積は25cm2よりも大きくなるため、正方形領域が25以上存在することがある。この場合、厚みに対して1~99%、好ましくは1~90%の深さを有する凹部を有する領域の、全領域に対する割合は、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上が更に好ましい。全領域に対する凹部を有する領域の割合が上記範囲内であると、衝撃吸収性及び耐プーリング性が向上する。
【0017】
凹部は、発泡シートの厚みに対して1~99%の深さを有する。凹部の深さが、シートの厚みに対して1~99%であると、衝撃吸収性、及び耐プーリング性が向上する。これと同様の観点、及び加工の容易性を考慮すると、凹部の深さは、シートの厚みに対して5~95%が好ましく、10~90%が好ましく、20~80%が更に好ましい。
【0018】
凹部の、シートの上からみた形状(以下、単に「形状」と称することがある。)は、特に制限はないが、直線、曲線等の線状、円形、楕円形、及びこれに類する形状等の略円形、正方形、長方形、平行四辺形、台形、及びこれに類する形状等の略四角形、正三角形、直角二等辺三角形、及びこれに類する形状等の略三角形、その他、五角形、六角形、及びこれに類する形状等の略多角形、及びこれらを組み合わせた形状から適宜選択して採用することができる。また、形状の種類としては単独でもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。例えば、線状の凹部が単独で存在していてもよいし、線状の凹部と円形の凹部とが同時に存在していてもよいし、直線の凹部と曲線の凹部という異なる形状の線状が同時に存在していてもよい。
【0019】
凹部のシートの断面でみた形状(以下、単に「断面形状」と称することがある。)も、特に制限はなく、V字形、正方形、長方形、台形等の略四角形、半円形、半楕円形等の略半円形のいずれであってもよい。
【0020】
凹部の形状は、凹部を形成する方法に起因する。例えば、カッターを用いて切り傷により凹部を形成した場合は、凹部の形状は線状を呈し、かつ断面形状はV字形となり、エンボスロールを用いて凹部を形成した場合は、凹部の形状は略四角形、又は略円形を呈し、かつ断面形状は略四角形、又は略半円形となり、針ロールを用いて凹部を形成した場合は、凹部の形状は略円形を呈し、かつ断面形状はV字形となる。
衝撃吸収性及び耐プーリング性を向上させ、また凹部の加工が容易な点を考慮すると、カッターを用いて切り傷により凹部を形成することが好ましい。すなわち、本発明においては、線状の凹部であることが好ましい。
【0021】
凹部の形状が線状を呈する場合、凹部の幅は0.1~2mmが好ましく、0.3~1.5mmがより好ましく、0.4~1mmが更に好ましい。幅が上記範囲内であると、衝撃吸収性、及び耐プーリング性が向上し、凹部の加工も容易である。
また、凹部の形状が線状を呈する場合、該線状の凹部は、衝撃吸収性及び耐プーリング性がより向上する観点から、少なくとも2つの領域に渡って存在することが好ましい。
【0022】
凹部の形状が略四角形の場合、一辺の長さは0.1~4.5mmが好ましく、0.2~3mmがより好ましく、0.3~2mmが更に好ましく、0.5~1.5mmが特に好ましい。また、一辺の長さはシート全面の一辺の長さ(シート形状が四角形ではない場合は、外接する四角形の一辺の長さ)に対する割合としては、2~90%の長さが好ましく、5~60%の長さがより好ましく、15~40%の長さが更に好ましい。
また、凹部の形状が線状、略四角形以外の形状、すなわち略円形、略三角形、略多角形等の場合、上記略四角形の中に内接する大きさであることが好ましい。
【0023】
シート全面における凹部の面積比率は、1~90%であることが好ましい。面積比率が1~90%であれば、衝撃吸収性、耐プーリング性がより向上する。また、これと同様の観点から、凹部の形状が線状の場合の凹部の面積比率は3~50%がより好ましく、5~30%が更に好ましい。また、凹部の形状が線状以外の場合、凹部の面積比率は10~90%がより好ましく、20~85%が更に好ましい。
【0024】
(独立気泡発泡シートの各種態様)
より具体的に、本発明の発泡シートの態様について図面を用いて説明する。
図2及び3に本発明の発泡シートの態様の一例を示す。
図2及び3に示される態様はあくまで一例を示すものであり、本発明の発泡シートは
図2及び3に示される態様に制限されることはない。
【0025】
図2に示される各態様は、領域が25分割領域のものであり、各種パターンの凹部を有するものである。
2-aのシートは、直線の凹部を複数本有するものである。25分割領域中、右端の5つの領域には凹部は存在しないが、それ以外の20の領域に直線の凹部が存在する。2-aのシートのように、凹部が存在しない領域を有していても、該領域における衝撃吸収性及び耐プーリング性は、凹部を有する領域が9以上あれば、他の領域の凹部の存在により補われるため、シート全体としての高い衝撃吸収性と優れた耐プーリング性とが得られる。また、1つの領域において、複数の直線の凹部を有していてもよい。
【0026】
2-bのシートも、線状の凹部を複数本有するものであり、2-aのように縦だけでなく、縦の直線の凹部と横の直線の凹部とが存在している。2-bのシートの場合は、全ての領域が凹部を有するものとなっており、また1つの領域において、縦横の複数の直線の凹部を有していてもよいことが示されている。2-cのシートは、曲線の凹部を複数本有するものであり、左上の2つ及び右下の2つの計4つの領域で凹部は存在しないが、それ以外の21の領域は、曲線の凹部を有する領域となっている。
【0027】
2-dのシートは、四角形の凹部を複数個有するものである。このシートは、全領域において凹部を有しており、例えば左上の領域には凹部が一箇所存在し、1つ下の領域には凹部が二箇所存在し、その1つ右の領域には凹部が四箇所存在している。
【0028】
2-eのシートは、円形の凹部を複数個有するものである。この場合、一番下の列の5つの領域で凹部は存在しないが、それ以外の20の領域は、少なくとも1箇所の円形の凹部を有する領域となっている。2-eに示されるように、凹部の形状は途中で切れたような形状であってもよい。また、凹部の配列は2-dのシートのように規則性を有していてもよいし、2-eのシートのように不規則であってもよい。
2-fのシートも、円形の凹部を複数個有するものである。2-eのシートに比べて凹部の数は少なく、また凹部を有する領域も9と少ないが、このような態様でも、本発明の構成を有しており、高い衝撃吸収性と優れた耐プーリング性とを有するシートとなり得る。
【0029】
2-gのシートは、シート内に四角形の凹部を1つ有するものである。このシートは、全領域において凹部を有している。2-gのシートに示されるように、一つの領域の全面が凹部であってもよいが、衝撃吸収性と耐プーリング性を向上させる観点から、全面が凹部である領域の数は12以下が好ましく、10以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。また、領域が正方形領域であるときは、該正方形領域の数は、全領域数に対して50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、35%以下が更に好ましい。
なお、25分割領域の場合、全面が凹部である領域の数が25のときは、全面が凹部になってしまう、すなわちシート全面にわたって結果として凹部が存在しないシートとなってしまうため、本発明の効果が得られないのは言うまでもない。これは、正方形領域の場合、その全ての正方形領域の全面が凹部であるときも、同様である。
【0030】
2-hのシートは、シート内に正方形の開口部を有しており、額縁状となったシートの周縁部に、縦横の直線の凹部が存在するものである。このシートは、周縁部の16の領域において複数の凹部を有している。
2-hのシートで示されるように、本発明の発泡シートは、開口部を有していてもよい。この場合、開口部の形状は特に制限はなく、凹部の形状として例示した形状、例えば、線状、略円形、略四角形、略三角形、略多角形、及びこれらを組み合わせた形状が挙げられる。また、開口部は2-hのシートで示されるように1箇所であってもよいし、複数箇所あってもよい。
【0031】
開口部を有する場合、シート全面に対する開口部の面積比率は、1~90%が好ましく、10~85%がより好ましく、20~85%が更に好ましい。開口部の面積比率が上記範囲内であると、凹部を十分に形成することができ、衝撃吸収性及び耐プーリング性が向上する。
【0032】
図3に示される各態様は、領域が正方形領域のものであり、各種パターンの凹部を有するものである。
図3には二例しか示されていないが、例えば、
図2に示される各種パターンの凹部と同じパターンの凹部を有するものであって、領域が正方形領域となるシートも、本発明の発泡シートとなり得る。
3-aのシートは、上記2-aのシートと同じパターンの凹部を有するものであるが、25分割領域では1cm
2以上の面積となるため、領域として正方形領域が適用されるシートである。このシートは、左端、右端、及び左から6番目の列の領域で凹部が存在しないが、他の領域では凹部を有している。凹部を有する領域の数は54であり、全領域(81)に対する、凹部を有する領域の割合は、66.7%である。
【0033】
3-bのシートは、3-aのシートと同じように、直線の凹部を複数本有しており、凹部を有する領域は上から二列目、下から二列目、左から三列目、及び右から三列目の領域で囲まれた、合計35の領域に凹部が存在している。全領域(81)に対する凹部を有する領域(35)の割合は、43.2%である。領域が正方形領域の場合、凹部を有する領域が9以上あれば、高い衝撃吸収性及び優れた耐プーリング性は得られるが、上記の通り40%以上の領域が凹部を有すると、衝撃吸収性及び耐プーリング性は向上する。
【0034】
(独立気泡発泡シートの性能)
本発明の発泡シートは独立気泡体で構成される独立気泡発泡シートである。独立気泡体とは、独立気泡率が70%以上であることを意味する。すなわち、発泡シートの内部に包含された気泡は概ね独立気泡となっている。衝撃吸収性及び耐プーリング性を向上させる観点から、独立気泡率は、好ましくは90~100%、より好ましくは95~100%である。
【0035】
独立気泡率は、下記の要領で測定できる。
まず、発泡シートから一辺が5cmの平面正方形状の試験片を切り出す。そして、試験片の厚みを測定して試験片の見掛け体積V1を算出すると共に、試験片の質量W1を測定する。次に、気泡の占める体積V2を下記式に基づいて算出する。なお、試験片を構成している樹脂材料の密度はρ(g/cm3)とする。
気泡の占める体積V2=V1-W1/ρ
続いて、試験片を23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に15kPaの圧力を3分間にわたり加える。その後、水中で加圧から解放し、1分間静置した後、試験片を水中から取り出して試験片の表面に付着した水分を除去して試験片の質量W2を測定し、下記式に基づいて連続気泡率F1及び独立気泡率F2を算出する。
連続気泡率F1(%)=100×(W2-W1)/V2
独立気泡率F2(%)=100-F1
【0036】
発泡シート中の気泡が独立気泡であると、押圧に対する反発力が大きいため、一般的に耐プーリング性の発現に有効である。一方、反発力が大きすぎると、衝撃吸収性が低下する場合があり、衝撃吸収性と耐プーリング性とは相反する性能といえる。本発明においては、この独立気泡発泡シートに凹部を設けることにより、25%圧縮強度等により指標される反発力を低減させることを見出し、独立気泡発泡シートであるにも関わらず、反発力が小さいものとすることで、衝撃吸収性、及び耐プーリング性の向上を可能とした。
【0037】
発泡シートの25%圧縮強度は、凹部を設ける前の発泡シートについては、40~200kPaが好ましく、50~180kPaがより好ましく、60~170kPaが更に好ましい。凹部を設けた後の、本発明の発泡シートの25%圧縮強度は、3~90kPaが好ましい。更に、15~90kPaが好ましく、20~80kPaがより好ましく、30~70kPaが更に好ましい。また、凹部を設ける前と後とにおける25%圧縮強度の低減率は、好ましくは15~80%、より好ましくは30~75%、更に好ましくは50~70%の範囲となる。
このように、本発明の発泡シートは、凹部を設けることで、独立気泡であるにも関わらず25%圧縮強度が低減し、衝撃吸収性、及び耐プーリング性が向上する。本明細書において、25%圧縮強度は、JIS K 6767に準拠して測定される値である。また、25%圧縮強度の低減率は、下記の式で表される数値である。
fΔ=(f0-f1)/f0×100
fΔ:25%圧縮強度の低減率(%)
f0:凹部を設ける前の発泡シートの25%圧縮強度(kPa)
f1:凹部を設けた後の発泡シートの25%圧縮強度(kPa)
【0038】
発泡シートの厚みは、表示装置に用いる場合に所望される厚み、及び衝撃吸収性、耐プーリング性の得られやすさ等を考慮すると、0.03~0.6mmが好ましく、0.05~0.5mmがより好ましく、0.06~0.3mmが更に好ましい。
【0039】
発泡シートの密度は、衝撃吸収性、耐プーリング性を向上させる観点から、60~600kg/m3が好ましく、60~400kg/m3が好ましく、150~600kg/m3がより好ましく、180~480kg/m3が更に好ましい。
【0040】
発泡シートにおける気泡の平均気泡径は、MDにおいて25~300μmが好ましく、30~300μmがより好ましく、35~230μmが更に好ましく、50~180μmが最も好ましい。TDにおいては、30~330μmが好ましく、50~300μmがより好ましく、60~250μmが更に好ましい。また、ZDにおいて10~80μmが好ましく、15~75μmがより好ましく、20~70μmが更に好ましい。気泡の平均気泡径が上記範囲内であると、衝撃吸収性、耐プーリング性を向上させることができる。
【0041】
発泡シートは、後述する樹脂材料の樹脂シート等を架橋、発泡することで得られるものである。発泡シートの架橋度は、通常、5~60質量%程度となるものであるが、好ましくは10~40質量%である。
架橋度は、以下の測定方法で測定されるものである。発泡シートから100mgの試験片を採取し、試験片の質量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の質量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出する。
架橋度(質量%)=100×(B/A)
【0042】
(原料樹脂)
本発明の独立気泡発泡シートを構成する原料樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂のいずれであってもよく、衝撃吸収性及び耐プーリング性を考慮すると、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
【0043】
本発明において好ましい材料である、ポリオレフィン系樹脂について説明する。
発泡シートを形成するために使用されるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはこれらの混合物が挙げられ、衝撃吸収性及び耐プーリング性を向上させる観点から、これらの中ではポリエチレン系樹脂が好ましい。より具体的には、チーグラー・ナッタ化合物、メタロセン化合物、酸化クロム化合物等の重合触媒で重合されたポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物が挙げられ、これらの中では、メタロセン化合物の重合触媒で重合されたポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0044】
ポリエチレン系樹脂は、エチレン単独重合体でもよいが、エチレンと必要に応じて少量(例えば、全モノマーの30質量%以下、好ましくは1~10質量%)のα-オレフィンとを共重合することにより得られるポリエチレン系樹脂が好ましく、その中でも、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0045】
メタロセン化合物の重合触媒により得られた、ポリエチレン系樹脂、特に直鎖状低密度ポリエチレンを用いることにより、柔軟性、機械強度、耐プーリング性を向上させた発泡シートを得やすくなる。また、後述するように、発泡シートを薄厚にしても高い性能を維持しやすくなる。
【0046】
ポリエチレン系樹脂を構成するα-オレフィンとして、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、及び1-オクテン等が挙げられる。なかでも、炭素数4~10のα-オレフィンが好ましい。
また、ポリエチレン系樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体も好ましく用いられる。エチレン-酢酸ビニル共重合体は、通常、エチレン単位を50質量%以上含有する共重合体である。
【0047】
メタロセン化合物の重合触媒により得られたポリエチレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、又はこれらの混合物は、発泡シートにおいて樹脂全量に対して好ましくは50質量%以上含有され、さらに好ましくは60質量%以上、最も好ましくは100質量%含有される。
【0048】
また、ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン単位を50質量%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は複数種を併用してもよい。
プロピレン-α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等が挙げられ、これらの中では、炭素数6~12のα-オレフィンが好ましい。
【0049】
好適なメタロセン化合物としては、遷移金属をπ電子系の不飽和化合物で挟んだ構造を有するビス(シクロペンタジエニル)金属錯体等の化合物が挙げられる。より具体的には、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、及び白金等の四価の遷移金属に、1又は2以上のシクロペンタジエニル環又はその類縁体がリガンド(配位子)として存在する化合物が挙げられる。
このようなメタロセン化合物は、活性点の性質が均一であり各活性点が同じ活性度を備えている。メタロセン化合物を用いて合成した重合体は、分子量、分子量分布、組成、組成分布等の均一性が高くなるため、メタロセン化合物を用いて合成した重合体を含むシートを架橋した場合には、架橋が均一に進行する。均一に架橋されたシートは、均一に延伸しやすくなるため、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの厚みを均一にしやすくなり、薄厚にしても高い性能を維持しやすくなる。
【0050】
リガンドとしては、例えば、シクロペンタジエニル環、インデニル環等が挙げられる。これらの環式化合物は、炭化水素基、置換炭化水素基又は炭化水素-置換メタロイド基により置換されていてもよい。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種アミル基、各種ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種セチル基、フェニル基等が挙げられる。なお、「各種」とは、n-、sec-、tert-、iso-を含む各種異性体を意味する。
また、環式化合物をオリゴマーとして重合したものをリガンドとして用いてもよい。
更に、π電子系の不飽和化合物以外にも、塩素や臭素等の一価のアニオンリガンド又は二価のアニオンキレートリガンド、炭化水素、アルコキシド、アリールアミド、アリールオキシド、アミド、アリールアミド、ホスフィド、アリールホスフィド等を用いてもよい。
【0051】
四価の遷移金属やリガンドを含むメタロセン化合物としては、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル-t-ブチルアミドジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
メタロセン化合物は、特定の共触媒(助触媒)と組み合わせることにより、各種オレフィンの重合の際に触媒としての作用を発揮する。具体的な共触媒としては、メチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素系化合物等が挙げられる。なお、メタロセン化合物に対する共触媒の使用割合は、10~100万モル倍が好ましく、50~5,000モル倍がより好ましい。
【0052】
チーグラー・ナッタ化合物は、トリエチルアルミニウム-四塩化チタン固体複合物であって、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と、有機アルミニウム化合物と、芳香族カルボン酸エステルとを組み合わせる方法(特開昭56-100806号、特開昭56-120712号、特開昭58-104907号の各公報参照)、及びハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させる担持型触媒の方法(特開昭57-63310号、特開昭63-43915号、特開昭63-83116号の各公報参照)等で製造されたものが好ましい。
【0053】
上記ポリエチレン系樹脂としては、発泡シートの柔軟性、機械強度、及び回復速度を高めるために、低密度であることが好ましい。上記ポリエチレン系樹脂の密度は、具体的には、0.920g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.880~0.915g/cm3、更に好ましくは0.885~0.910g/cm3である。なお、密度はASTM D792に準拠して測定したものである。
【0054】
なお、ポリオレフィン系樹脂としては、上記したポリオレフィン系樹脂以外の樹脂も使用可能であり、ポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂以外の樹脂を、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂にさらに混合して使用してもよい。
さらに、ポリオレフィン系樹脂には、後述する各種添加剤やその他の成分を混合してもよく、発泡シートは、添加剤、その他の成分等を含むポリオレフィン系樹脂を架橋、発泡されたものであることが好ましい。
発泡シートに含有されるその他の成分としては、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂、ゴムが挙げられ、これらは合計で、ポリオレフィン系樹脂よりも含有量が少なく、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは30質量部以下程度である。
【0055】
(発泡シートの製造方法)
本発明の発泡シートの製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の工程(1)~(5)を含む方法が挙げられる。
工程(1):原料樹脂、熱分解型発泡剤等の添加剤、及び必要に応じて添加される他の添加剤等の樹脂材料を、熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度で溶融、混練して公知の成形方法により樹脂シートに成形する工程
工程(2):工程(1)で得られた樹脂シートを架橋する工程
工程(3):樹脂シートを、熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させる工程
工程(4):樹脂シートを、延伸する工程
工程(5):延伸して得た発泡シートに凹部を形成する工程
以上の工程(1)~(5)は、この工程順に行ってもよいが、必ずしもこの工程順に行う必要はなく、例えば工程(4)の後に工程(3)を行ってもよい。また、2つの工程を同時に行ってもよく、例えば、工程(3)と(4)を同時に行ってもよい。
【0056】
(工程(1))
工程(1)では、原料樹脂、熱分解型発泡剤等の添加剤、及び他の添加剤等の樹脂材料を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機等に供給して、熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度で溶融、混練して、押出成形等により押し出して、樹脂材料をシート状の樹脂シートとする。
ここで、熱分解型発泡剤以外の他の添加剤としては、分解温度調節剤、架橋助剤、酸化防止剤、気泡核剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等が挙げられる。また、原料樹脂は、上記したようにポリオレフィン系樹脂が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂とポリオレフィン系樹脂以外の樹脂成分との混合物でもよいし、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂成分であってもよい。
【0057】
熱分解型発泡剤としては、例えば、原料樹脂の溶融温度より高い分解温度を有するものを使用することができる。例えば、分解温度が160~270℃の有機系又は無機系の化学発泡剤を用いることができる。
【0058】
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;ヒドラゾジカルボンアミド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体;トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等、が挙げられる。
無機系発泡剤としては、酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物、ニトロソ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミンがより好ましく、アゾジカルボンアミドが更に好ましい。これらの熱分解型発泡剤は、単独で又は複数種を組み合わせて使用することができる。
【0059】
熱分解型発泡剤の添加量は、原料樹脂(例えば、ポリオレフィン系樹脂)100質量部に対して1~10質量部が好ましく、1.5~5質量部がより好ましく、1.5~3質量部が更に好ましい。
【0060】
他の添加剤として用い得る分解温度調節剤は、熱分解型発泡剤の分解温度を低くしたり、分解速度を速めたり調節するものとして配合されるものである。具体的な化合物としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、尿素等が挙げられる。分解温度調節剤は、発泡シートの表面状態等を調整するために、例えば原料樹脂100質量部に対して0.01~5質量部配合する。
【0061】
架橋助剤としては、多官能モノマー等が挙げられる。架橋助剤をポリオレフィン系樹脂に添加することによって、後述する工程(2)において照射する電離性放射線量を低減して、電離性放射線の照射に伴う樹脂分子の切断、劣化を防止する。
【0062】
架橋助剤としては、具体的には、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等の1分子中に3個の官能基を持つ化合物;1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物;フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等、が挙げられる。これらの架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用する。
【0063】
架橋助剤の添加量は、原料樹脂100質量部に対して0.2~10質量部が好ましく、0.3~5質量部がより好ましく、0.5~5質量部が更に好ましい。該添加量が0.2質量部以上であると発泡シートが所望する架橋度を安定して得ることが可能となり、10質量部以下であると発泡シートの架橋度の制御が容易となる。
【0064】
また、酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0065】
(工程(2))
工程(2)では、工程(1)で得た樹脂シートを架橋する。工程(2)における架橋は、電離性放射線を樹脂シートに照射して行うことが好ましい。電離性放射線としては、α線、β線、γ線、電子線等が挙げられるが、電子線がより好ましい。樹脂シートに対する電離性放射線の照射量は、1~10Mradが好ましく、1.5~8Mradがより好ましい。また、架橋助剤を用いる場合の電離性放射線の照射量は0.3~8Mradが好ましく、0.5~5.5Mradがより好ましい。
電離性放射線の照射量は、上記下限値以上とすることで、樹脂シートの発泡に必要な剪断粘度を付与しやすくなる。また、上記上限値以下とすることで樹脂シートの剪断粘度が高くなりすぎず発泡性が良好になる。そのため、上記した密度の発泡シートを得やすくなり、さらには発泡シートの外観も良好となる。
ただし、架橋の進行度は、通常、原料樹脂、添加剤の種類等により影響されるため、電離性放射線の照射量は、通常は架橋度を測定しながら調整し、上記した架橋度となるようにする。
【0066】
(工程(3))
工程(3)では、樹脂シートを、熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡する。通常、本工程(3)は、上記工程(2)の後に実施する。
加熱発泡させる温度は、熱分解型発泡剤の分解温度によるが、通常140~300℃、好ましくは160~260℃である。また、樹脂シートを発泡させる方法としては、特に制限はなく、例えば、熱風により加熱する方法、赤外線により加熱する方法、塩浴による方法、オイルバスによる方法等が挙げられ、これらは併用してもよい。
【0067】
(工程(4))
工程(4)では、樹脂シートを、延伸する。延伸により、得られる発泡シートの気泡の平均気泡径、気泡数、発泡シートの厚み等を調整することができる。延伸は、樹脂シートを発泡させた後に行ってもよいし、樹脂シートを発泡させつつ行ってもよい。延伸は、例えば一軸延伸機、二軸延伸機等の公知の装置で行うとよい。
なお、樹脂シートを発泡させた後に延伸を行う場合には、樹脂シートを冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて延伸したほうがよいが、樹脂シートを冷却した後、再度、加熱して溶融又は軟化状態とした上で延伸してもよい。
【0068】
また、上記では架橋を電離性放射線を使用して行う例を説明したが、ポリオレフィン系樹脂に、添加剤として有機過酸化物等の架橋剤を配合しておき、ポリオレフィン系樹脂を加熱して有機過酸化物を分解させる方法等で行ってもよい。そのような有機過酸化物としては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0069】
有機過酸化物の添加量は、原料樹脂100質量部に対し、0.01~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。有機過酸化物の添加量が上記範囲内であると、樹脂材料の架橋が進行しやすく、また、発泡シート中における有機過酸化物の分解残渣の量を抑制する。
また、樹脂材料は、上記発泡剤を使用する代わりに、炭酸ガスやブタンガスに代表されるガス発泡により発泡させてもよいし、メカニカルフロス法により発泡させてもよい。
【0070】
(工程(5))
工程(5)は、延伸して得られた発泡シートに凹部を形成する工程である。凹部を形成する方法は特に限定されず、例えば、エンボスロールを用いて凹部を形成する方法、針ロールを用いて凹部を形成する方法、カッターを用いて凹部を形成する方法などを例示することができる。
【0071】
(発泡シートの使用形態及び用途)
本発明の発泡シートは、そのままで用いることもできるが、いずれか一方の面又は両面に粘着剤層を設けて用いてもよい。粘着剤層の厚みは、好ましくは5~200μmであり、より好ましくは7~150μmである。
発泡シートの一方の面又は両面に設けられる粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
【0072】
発泡シートに粘着剤層を設ける方法としては、例えば、発泡シートの少なくとも一方の面にコーター等の塗工機を用いて粘着剤を塗布する方法、発泡シートの少なくとも一方の面にスプレーを用いて粘着剤を噴霧、塗布する方法、発泡シートの一方の面に刷毛を用いて粘着剤を塗布する方法等が挙げられる。
【0073】
本発明の発泡シートは、アクリル板、ガラス板等の前面板、又は該前面板に設けられるタッチパネルと表示装置の本体とを接着するための接着材として用いることができる。この場合、発泡シートは額縁状となるように開口部を設けて用いる、又は所望の形状、例えば短冊型にカットして用いることができる。本発明の発泡シートを接着材として用いる場合、発泡シートが独立気泡体であり、気泡が連通していないことから、フレームに応力が加わった際に、該フレームと前面板との間に生じるギャップからの埃、水分等の浸入を抑制することも可能となる。また、衝撃吸収性により、前面板の破損を抑制する効果も得られる。
【0074】
また、本発明の発泡シートは、例えば、液晶パネル等の表示パネルの衝撃吸収材として使用することができる。表示パネルの衝撃吸収材は、表示パネルの背面側に配置され、表示パネルに作用される衝撃を吸収して、表示パネルの破損、故障を防止するというものである。本発明の発泡シートは、衝撃吸収性とともに、耐プーリング性も有するため、表示パネルの背面側に衝撃吸収材として配置されることで、表示パネルの表面が押圧されることで生じるプーリングの発生をも防止し得る。
なお、上記の表示装置を構成する前面板、タッチパネル、表示装置、接着材、フレーム、表示パネル、衝撃吸収材等の用語については、後述する。
【0075】
[表示装置]
本発明の表示装置は、本発明の独立気泡発泡シートと、表示パネルとを備えるものであり、本発明の発泡シートは、後述する衝撃吸収材13、接着材16の少なくともいずれか一方に用いられる。本発明の表示装置の一例を、
図4を用いて説明する。
図4に示される表示装置10は、表示パネル11、表示パネル11の前面側に設けられる前面板12、該前面板12とフレーム15とを接着する接着材16、表示パネル11の背面側に配置される衝撃吸収材13等を備えている。
【0076】
表示パネル11は、衝撃吸収材13の上に配置されており、2枚のガラス基材間に、液晶層等を配置した液晶表示素子、有機EL表示素子等の表示素子を少なくとも含むユニットであるが、表示素子以外にも、保護フィルム、偏光素子、位相差フィルム等が積層されたものであってもよい。また、表示パネル11は、表示素子が液晶表示素子である場合等には、表示素子の背面側に設けられたバックライトユニットをさらに備える。なお、表示パネル11は、液晶表示素子を含むことが好ましい。
【0077】
前面板12は、表示パネル11等を保護するためのカバー板材を含む。カバー板材は、光透過性を有していれば特に限定されないが、アクリル板、ガラス板等が挙げられる。前面板12は、カバー板材以外の部材をさらに含んでいてもよく、例えば、表示装置10がタッチパネル式のものである場合には、カバー板材の下面側にタッチパネルユニット(図示せず)が積層されていてもよい。
【0078】
衝撃吸収材13は、表示パネル11及び前面板12に衝撃が加わったときに、その衝撃を吸収するために設けられるものであり、通常発泡シートが用いられる。この発泡シートとしては、高い衝撃吸収性を有する本発明の独立気泡発泡シートが好適に用いられる。また、本発明の発泡シートは耐プーリング性に優れることから、衝撃吸収材13に該発泡シートを用いると、前面板12を通じて表示パネル11が押圧されることで生じるプーリングの発生をも防止し得る。
【0079】
前面板12は、フレーム15によって支持される。フレーム15は、四角枠状を呈するとともに、内周側の高さが低くなって嵌合部15Aが設けられている。前面板12は、嵌合部15Aに嵌合されるように配置される。なお、前面板12は、嵌合部15Aに配置された接着材16により嵌合部15Aに接着されることでフレーム15に固定される。接着材16には、基材の両面に粘着剤層が設けられた両面テープ等が用いられる。この両面テープの基材としては、本発明の発泡シートが好適に用いられる。本発明の発泡シートは衝撃吸収性に優れるため、前面板12への衝撃を緩和し、該前面12の破損を抑制することができる。なお、本発明の発泡シートは独立気泡体であり、気泡が連通していないことから、使用中にフレームに応力が加わった場合に、該フレームと前面板との間に生じるギャップからの埃、水分等の浸入を抑制することも可能となるという効果も得られる。
【0080】
表示パネル11は、接着層17を介して前面板12の背面に接着され、それにより、前面板12と一体となりフレーム15により支持される。なお、接着層17は、OCA(Optically Clear Adhesive)と呼ばれる光透過性を有する接着剤層、又は粘着剤層により構成される。
【0081】
また、表示パネル11の背面側には、表示パネル11と一定の間隔を置いて配置されるプレート18が設けられる。プレート18は、フレーム15に固定されている。プレート18の表面上に配置される衝撃吸収材13と表示パネル11との間には、クリアランスが設けられていてもよい。
【0082】
本発明の表示装置は、ノート型パーソナルコンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット等の携帯機器に好適に設けられる。
また、本発明の表示装置は、タッチパネルユニットを備える、タッチパネル式のものであってもよい。タッチパネルの表面は、高速で繰り返し押圧されるが、衝撃吸収材13として本発明の発泡シートを用いた場合、プーリングの発生を抑制するので、表示装置の表示性能が改善される。
【0083】
なお、本発明の表示装置について、
図4を用いて説明してきたが、
図4に示される表示装置は、本発明の表示装置の一例を示すものであって、種々の改変が可能である。例えば、表示パネル11及び前面板12は、フレーム15以外の部材によって支持されていてもよいし、衝撃吸収材13は、プレート18以外の部材の上に配置されていてもよい。また、各部材に用いられる材料も、一例を記載したにすぎず、これらの部材に通常用いられる材料からなるものを用いることができる。
【実施例】
【0084】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、本明細書における各種物性、評価方法は、以下のとおりである。
<厚み>
JIS K6767の方法に従って測定した。
<密度>
JIS K6767の方法に従って測定した。
<25%圧縮強度>
発泡シートの25%圧縮強度は、JIS K6767の方法に従い、具体的には、測定装置(ORIENTEC社製、製品名「TENSILON RTG-1250」)を用いて、3回繰り返して測定し、その平均値を25%圧縮強度とした。
【0085】
<平均気泡径>
発泡シートを50mm四方にカットし、液体窒素に1分間浸した後にMD及びTDそれぞれに沿って厚み方向に切断して、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、製品名「VHX-900」)を用いて200倍の拡大写真を撮り、MD、TDそれぞれにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡についてMD、ZDの気泡径、及びTD、ZDの気泡径を測定し、その操作を5回繰り返した。そして、全ての気泡のMD、TDそれぞれの気泡径の平均値をMD、TDの平均気泡径とするとともに、以上の操作によって測定された全てのZDの気泡径の平均値をZDの平均気泡径とした。
【0086】
<独立気泡率>
発泡シートの独立気泡率は、明細書記載の方法で測定したものである。
【0087】
[衝撃吸収性評価(ガラス割れ高さ)]
図5に示すように、ガラス板(100mm×100mmの正方形、厚み:0.55mm、コーニング社製、商品名「ゴリラガラス3」)の上に、その両面に両面PETテープ(世紀水化学工業株式会社製、商品名「LCD部材固定用両面テープ 3801X」を貼りつけた発泡シート(100mm×100mm)をガラス板の両端に貼付け、発泡シートを介してアクリル板(厚み10mm:、三菱レイヨン株式会社製、商品名「アクリライト」)を積層した積層体を作製した。この積層体を、ガラス面を下にして落下させる。10cmの高さから10回落下させて割れなければ、更に10cm上(20cmの高さ)から10回落下させていき、割れたときの高さをガラス割れ高さとし、衝撃吸収性の指標とした。ガラス割れ高さが高いほど、繰り返し加えられる衝撃に対する衝撃吸収性に優れることを意味する。
【0088】
[耐プーリング性評価]
50mm×70mmの発泡シートの上に4.7インチの液晶パネルを配置させ、液晶パネルの表面に押し棒を用いて荷重をかけて、以下の基準で評価した。ここで、押し棒はφ15mmであり、その先端にはゴム(硬度:30)を設け、人間の指で押すことを想定した押し棒とした。
A:荷重6N以上で、プーリングは発生しなかった。
B:荷重3N以上5N未満で、わずかにプーリングが発生した。
C:荷重3N未満でプーリングが発生した。
【0089】
[実施例1]
ポリエチレン系樹脂としてのメタロセン化合物を用いて得られた直鎖状低密度ポリエチレン(エクソン・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」)100質量部と、発泡剤としてのアゾジカルボンアミド2質量部と、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.3質量部と、酸化亜鉛1質量部とを押出機に供給して130℃で溶融混練し、その後、厚み約0.2mmの樹脂シートとして押出した。
次に、樹脂シートを、その両面に加速電圧800kVの電子線を5Mrad照射して架橋した後、熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させるとともに、発泡させながらMDの延伸倍率1.3倍、TDの延伸倍率2.0倍で延伸させて、厚み0.06mmの発泡シートを得た。得られた発泡シートの架橋度は25%であり、25%圧縮強度は118kPaだった。この発泡シートを5cm×5cmの正方形にカットし、
図2の2-bで示されるパターンとなるよう、エンボスロールを用いて縦に8本、横に8本の線状の凹部(幅:0.5mm、長さ:40mm、線間距離:5mm、深さ:20%、凹部を有する領域数:25、凹部面積比率:12%)を設けて、実施例1の発泡シートとした。実施例1の発泡シートについて、上記の方法により、厚み、密度、圧縮強度、平均気泡径(MD、TD、ZD)、独立気泡率を測定した。測定値を表1に示す。また、上記の方法により、衝撃吸収性、耐プーリング性を評価した。その結果を表1に示す。
【0090】
[実施例2~6]
表1の密度、MD、TD、ZDの気泡径となるように、発泡剤の質量部、MDの延伸倍率及びTDの延伸倍率を調整した点以外は、実施例1と同様に実施した。ただし、実施例6においては、さらに、照射される電子線を7Mradに変更した。
【0091】
[比較例1、2]
表1の密度、MD、TD、ZDの気泡径となるように、発泡剤の質量部、MDの延伸倍率及びTDの延伸倍率を調整した点、及び凹部を設けなかった点以外は、実施例1と同様に発泡シートを作製し、上記の方法により、各性状を測定し、衝撃吸収性、耐プーリングの評価をした。
【0092】
[比較例3、4]
比較例3、4では、発泡シートとして市販品であるSCF400(日東電工社製)、Poron(株式会社ロジャースイノアック社製)について、上記の方法により、各性状を測定し、また評価した。
【0093】
[比較例5]
実施例1で、凹部を設けなかった点以外は、実施例1と同様に発泡シートを作製し、各性状を測定し、評価した。
【0094】
[比較例6]
実施例1で、発泡シートとして市販品であるPoron(株式会社ロジャースイノアック社製)を用いた以外は、実施例1と同様に発泡シートを作製し、各性状を測定し、評価した。
【0095】
【0096】
以上の実施例1~6から明らかなように、本発明の発泡シートは、高い衝撃吸収性を有すること、また優れた耐プーリング性を有することが確認された。一方、凹部を有しない比較例1及び2の発泡シートは、実施例の発泡シートに比べて、衝撃吸収性、耐プーリング性が不足しており、実施例1で用いた発泡シートであって凹部を有しない発泡シートを用いた比較例5についても、衝撃吸収性、耐プーリング性が不足していることが確認された。連続気泡の発泡シートを用いた比較例3及び4では、衝撃吸収性、耐プーリング性ともに実施例の発泡シートには至らず不足しており、同じく連続気泡の発泡シートを用い、凹部を設けた発泡シートを用いた比較例6でも、耐プーリング性ともに実施例の発泡シートには至らず不足していることが確認された。また、比較例6の結果から、連続気泡の発泡シートに凹部を設けても、25%圧縮強度はほとんど低減せず、25%圧縮強度の低減効果は、独立気泡の発泡シートに特有の現象であることが確認された。
【符号の説明】
【0097】
10 表示装置
11 表示パネル
12 前面板
13 衝撃吸収材
15 フレーム
16 接着材
17 接着層
18 プレート