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特許7020924IgG4κ/λハイブリッド抗体の検出によってIgG4関連疾患を検出またはモニタリングする方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】IgG4κ/λハイブリッド抗体の検出によってIgG4関連疾患を検出またはモニタリングする方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
G01N33/53 N
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2017568262
(86)(22)【出願日】2016-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-07-19
(86)【国際出願番号】 GB2016051939
(87)【国際公開番号】W WO2017001841
(87)【国際公開日】2017-01-05
【審査請求日】2019-06-06
(31)【優先権主張番号】1511364.0
(32)【優先日】2015-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514212652
【氏名又は名称】ザ バインディング サイト グループ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100164563
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 貴英
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ ウォリス
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ハーディング
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-050369(JP,A)
【文献】特表2008-528995(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0008806(US,A1)
【文献】特開2005-249592(JP,A)
【文献】Elizabeth Young, Emma Lock, et al.,Estimaton of polyclonal IgG4 hybrids in normal human serum,Immunology,英国,2014年07月10日,vol. 142, no. 3, 406-413
【文献】Shapiro RI, Plavina T, et al.,Development and validation of immunoassays to quantify the half-antibody exhange of an IgG4 antibody, natalizumab (Tysabri) with endogenous IgG4,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analyis,米国,2011年04月01日,vol. 55, issue 1, 168-175
【文献】Mahmud Abo Salook, Carlos Benbassat, et al.,IgG4-related thyroiditis: a case report and review of literature,Endocrinology, Diabetes & Metabolism Case Reports,米国,2014年,2014: 140037
【文献】Evgenii A. Lekchnov, Sergey E. Sedykh, et al.,Human placenta: relative content of antibodies of different classes and subclasses (IgG1-IgG4) containing lambda- and kappa-light chains and chimeric lambda-kappa-immunoglobulins,International Immunology,日本,2015年06月01日,Vol. 27, No. 6, pp. 297-306
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のIgG4関連疾患を検出またはモニタリングするための方法であって、
サンプル中で、
(i)IgG重鎖クラス;および
(ii)κ軽鎖およびλ軽鎖の両方に結合したIgG4重鎖;
および場合によっては、
(iii)同じ重鎖クラスを有するが、κ軽鎖のみ、またはλ軽鎖のみに結合した免疫グロブリン
を有する、2つ以上の免疫グロブリンの相対量の間の比を検出すること
を含み、
前記方法は、
(i)前記免疫グロブリンを前記免疫グロブリンに特異的な結合剤に結合させ、ここで前記結合剤は、基材に固定化されているか、レポーター分子と複合化されており、
(ii)前記結合剤に結合した、又はレポーター分子と複合化された免疫グロブリンを検出する、標識化された検出剤を使用すること
を含む結合アッセイによる、前記免疫グロブリンの定量的検出を含み、
前記比は、以下:
(i)IgG重鎖クラスに特異的な少なくとも1つの結合剤;および
a)κ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、λ軽鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;および/または
b)λ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、κ軽鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;および/または
c)κ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、λ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;
を使用するか、あるいは、
(ii)κ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、λ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤の組み合わせ
を使用して、決定される、方法。
【請求項2】
IgG4κ/λハイブリッド分子の量を検出する方法であって、
サンプル中で、
(i)κ軽鎖とλ軽鎖の両方に結合したIgG4重鎖;
および場合によっては、
(iii)同じ重鎖クラスを有するが、κ軽鎖のみ、またはλ軽鎖のみに結合した免疫グロブリン
を有する免疫グロブリンの量を検出すること
を含み、
前記方法は、
(i)前記免疫グロブリンを前記免疫グロブリンに特異的な結合剤に結合させ、ここで前記結合剤は、基材に固定化されているか、レポーター分子と複合化されており、および
(ii)前記結合剤に結合した、又はレポーター分子と複合化された免疫グロブリンを検出する、標識化された検出剤を使用すること
を含む結合アッセイによる、前記免疫グロブリンの定量的検出を含み、
前記IgG4κ/λハイブリッド分子の量が、以下:
(i)以下:
a)κ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、λ軽鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;および/または
b)λ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、κ軽鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;および/または
c)κ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、λ軽鎖に結合したIgG重鎖クラスに特異的な結合剤の組み合わせ;
を使用するか、あるいは、
(ii)κ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、λ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤の組み合わせ
を使用して、決定される、方法。
【請求項3】
前記IgG重鎖クラスがIgG4である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
抗体を含む酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して前記比が決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
フローサイトメトリーまたは蛍光標識ビーズを使用して前記結合が決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルが、全血、血漿、血清、尿、脳脊髄液、リンパ液、組織、または腫瘍組織であり、最も典型的には、全血、血漿、または血清である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
結果が、
i)IgG4関連疾患の治療に対する対象の応答;および/または
ii)対象の環境からの抗原の除去;および/または
iii)IgG4関連疾患またはアレルギー応答のさらなる特徴づけ、
を決定するために使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
IgG4アイソアロタイプK409の存在を決定する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
サンプル中の遊離したκ軽鎖および/または遊離したλ軽鎖の、存在および/または量を検出する工程をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
遊離したκ軽鎖と遊離したλ軽鎖の量の比が決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記遊離したκ軽鎖および/または前記遊離したλ軽鎖は、遊離したκ軽鎖および/または遊離したλ軽鎖に特異的な抗体または結合剤によって検出される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
合成抗体調製物の中のκ軽鎖およびλ軽鎖の両方に結合したIgG4重鎖の量または割合を決定する方法であって、
前記合成抗体調製物のサンプル中で、
(i)IgG重鎖クラス;および
(ii)κ軽鎖およびλ軽鎖の両方に結合したIgG4重鎖;
および場合によっては、
(iii)同じ重鎖クラスを有するが、κ軽鎖のみ、またはλ軽鎖のみに結合した免疫グロブリン
を有する、2つ以上の免疫グロブリンの相対量の間の比を検出すること
を含み、
前記方法は、
(i)前記免疫グロブリンを前記免疫グロブリンに特異的な結合剤に結合させ、ここで前記結合剤は、基材に固定化されているか、レポーター分子と複合化されており、
(ii)前記結合剤に結合した、又はレポーター分子と複合化された免疫グロブリンを検出する、標識化された検出剤を使用すること
を含む結合アッセイによる、前記免疫グロブリンの定量的検出を含み、
前記κ軽鎖およびλ軽鎖の両方に結合したIgG4重鎖の量または割合が、以下:
(i)IgG重鎖クラスに特異的な少なくとも1つの結合剤;および
a)κ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、λ軽鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;および/または
b)λ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、κ軽鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;および/または
c)κ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、λ軽鎖に結合したIgG重鎖クラスに特異的な結合剤の組み合わせ;
を使用するか、あるいは、
(ii)κ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、λ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤の組み合わせ
を使用して、決定される、方法。
【請求項13】
(i)以下:
a)κ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、λ軽鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;および/または
b)λ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、κ軽鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;および/または
c)κ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、λ軽鎖に結合したIgG重鎖クラスに特異的な結合剤の組み合わせ;あるいは、
(ii)κ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤と、λ軽鎖に結合したIgG4重鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;
および場合によっては、
(iii)IgG4に特異的な結合剤、およびIgG重鎖クラスに特異的な結合剤、
を含む、アッセイキット。
【請求項14】
所定量の実質的に純粋なIgG4κ/λハイブリッドを含む、請求項13に記載のアッセイキット。
【請求項15】
IgG重鎖クラスに特異的な少なくとも1つの結合剤を含む、請求項13または14に記載のアッセイキット。
【請求項16】
請求項15のアッセイキットによって実施される方法であって、
(i)IgG重鎖クラスに特異的な結合剤;および、
a)κ軽鎖に結合したIgG重鎖クラスに特異的な結合剤と、κ軽鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;および/または
b)λ軽鎖に結合したIgG重鎖クラスに特異的な結合剤と、λ軽鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;および/または
c)κ軽鎖に結合したIgG重鎖クラスに特異的な結合剤と、λ軽鎖に結合したIgG重鎖クラスに特異的な結合剤の組み合わせ;
を有する、2つ以上の免疫グロブリンの相対量の間の比が検出される、方法。
【請求項17】
(i)IgG4κ軽鎖に特異的な結合剤と;
(ii)IgG4λ軽鎖に特異的な結合剤と;
(iii)所定量の実質的に純粋なIgG4λ/κハイブリッドと
を含む、アッセイキット。
【請求項18】
前記結合剤または検出剤が、抗原特異的アプタマー、抗体、またはその抗原特異的フラグメントである、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法またはキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体または結合剤(例えば、IgGクラスと重鎖サブクラスを含んでいて、1つのκ軽鎖クラス、または1つのλ軽鎖クラス、または複数の軽鎖クラスに結合することをさらに特徴とする免疫グロブリンに対して特異的な抗体)を使用してIgG4関連疾患を検出またはモニタリングするためのアッセイキットおよび方法に関する。当該アッセイを、例えばIgG4関連疾患の検出に使用する組成物および方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
抗体分子(免疫グロブリンとしても知られる)は二重の対称性を有しており、2本の重鎖と2本の軽鎖からなり、それぞれが可変領域と定常領域を含んでいる。重鎖と軽鎖の可変領域は合わさって抗原結合部位を形成するため、両方の鎖が抗体分子の抗原結合特異性に寄与する。抗体の基本的な四量体構造は、ジスルフィド結合によって共有結合した2本の重鎖を含んでいる。それぞれの重鎖は、やはりジスルフィド結合によって軽鎖に結合している。これによって、実質的に「Y」形状の分子が生じる。
【0003】
重鎖は、抗体に見られる2種類の鎖のうち、より小さな軽鎖(25,000 D)と比較して大きい方であり、典型的な分子量は50,000~77,000 Dである。
【0004】
重鎖にはγ、α、μ、δ、εという5つの主要なクラスが存在していて、これらがそれぞれIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの重鎖を構成する。IgGは、正常なヒト血清の主要な免疫グロブリンであり、全免疫グロブリンプールの70~75%を占める。これは、二次免疫応答の主要な抗体である。IgGは、2本の重鎖+2本の軽鎖からなる単一の四量体を形成する。
【0005】
IgMは全免疫グロブリンプールの約10%を占める。この分子は、J鎖と合わさって、5つの基本的な4鎖構造からなる五量体を形成する。個々の重鎖は約65,000の分子量を持ち、分子全体は約970,000の分子量を持つ。IgMは血管内プールにほぼ限定されていて、一次免疫応答において産生される主要な抗体である。
【0006】
IgAはヒト血清免疫グロブリンプールの15~20%を占める。IgAの80%超が単量体として生じる。しかしIgAのいくらか(分泌型IgA)は二量体の形で存在する。
【0007】
IgDは、成熟したBリンパ球の形質膜に存在し、血漿中の全免疫グロブリンの1%超を占める。
【0008】
IgEは、血清免疫グロブリンの最も少ないアイソタイプであり、マスト細胞と好塩基球の表面にあるFc受容体に結合した状態で見いだされることが最も一般的である。
【0009】
5つの主要なクラスに加え、IgGには4つのサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)が存在している。それに加え、IgAには2つのサブクラス(IgA1とIgA2)が存在している。健康な成人の血清では、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4は、全IgGプールの60~70%、14~20%、4~8%、2~6%をそれぞれ占める。これらの割合は、ある種の疾患では変化する可能性がある。
【0010】
したがってIgG4は、ヒト血漿中の最も少ないIgGサブクラスだが、通常の濃度範囲の100倍は0.01~2.1 g/lであり、平均範囲は0.35~0.51 mg/mlである。IgG4の定常領域は、他のIgGサブクラスとアミノ酸配列が95%一致する。IgG4は半減期が約21日であり、新生フラグメント結晶化可能受容体(FcRn)を媒介としたプロセスによってリサイクルされる。
【0011】
抗体の軽鎖には2種類ある。すなわちラムダ(λ)とカッパ(κ)である。ヒトではκ分子がλ分子の約2倍多く作られるが、この割合はいくつかの哺乳動物では非常に異なっている。それぞれの鎖は1本のポリペプチド鎖に約220個のアミノ酸を含んでいて、そのポリペプチド鎖が折り畳まれて1つの定常領域と1つの可変領域になる。形質細胞は、5種類の重鎖のうちの1つと、κ分子またはλ分子を産生する。通常は、合成される重鎖よりも約40%過剰な遊離した軽鎖が産生される。軽鎖分子は、重鎖分子に結合していない場合、「遊離した軽鎖分子」として知られる。κ軽鎖は通常は単量体として見いだされる。λ軽鎖は二量体を形成する傾向がある。
【0012】
抗体の古典的なパラダイムは、1つの成熟した形質細胞が1種類の免疫グロブリン重鎖(ヒトではγ、α、μ、δ、ε)と1種類の免疫グロブリン軽鎖(κまたはλ)を産生するというものである。これらがその細胞内で合わさって、2本の同じ重鎖と2本の同じ軽鎖からなる四量体分子を形成する。IgG4分子はダイナミックであり、半数の分子が交換されてハイブリッド二重特異性(1価)抗体となることができる。このプロセスは「Fabアーム交換」としても知られ、可能性のある免疫療法においてIgG4の抗炎症特性に焦点を当てた研究で最初に特徴づけられた(van der Neut Kolfschoten他、2007年)。
【0013】
IgG4は古典的な代わりの補体経路を活性化することがなく、マクロファージと食細胞のFc受容体に対して弱い親和性しか持たない。Fabアーム交換は抗体をうまく1価にするため、Fabアーム交換を受けたIgG4について、IgG4が抗原に架橋する能力を制限する。Fabアーム交換を受けたIgG4分子(ハイブリッドIgG4分子)は、2本の異なるκ軽鎖(1本がそれぞれの重鎖に結合する)、または2本の異なるλ軽鎖(1本がそれぞれの重鎖に結合する)、または1本のκ軽鎖と1本のλ軽鎖(それぞれの重鎖に結合する)を持つことができる。最後のものはIgG4κ/λ混合ハイブリッド分子と呼ばれる。したがってIgG4の上方調節は、免疫応答を抑制できる可能性があると考えられる。IgG4の産生には通常は抗原への長期の曝露とTヘルパー2(Th2)サイトカインの増加が関係していて、それが、アレルギー反応とIgE産生を媒介する。IgG4は、IgEとは異なり、マスト細胞と好塩基球への強い結合親和性を示さない。IgG4は、リウマチ因子相互作用と同様、IgGクラスとIgEクラスの抗体とそのFcドメインを通じて相互作用することが報告されている。
【0014】
Fabアーム交換は、異なるIgG4分子間での重鎖-軽鎖対(半抗体)の交換を含んでいて、ヒンジ領域に新たなジスルフィドを再形成している可能性があるが、重鎖-軽鎖ジスルフィド結合は破壊しない。したがって上に説明したように、非対称な免疫グロブリンまたはハイブリッド免疫グロブリンの生成が可能になる(図1も参照のこと)。IgG4のコアヒンジ内の位置228にあって、鎖間ジスルフィドより鎖内ジスルフィドの形成を可能にするセリン残基と、CH3ドメイン内の位置409にあるアルギニンが、このメカニズムの制御に関与している。他のIgGサブクラスで見られるこれら両方の位置の代替アミノ酸は、この交換プロセスをなくすか低減させるが、その代替アミノ酸は、IgG4アイソアロタイプ分子では見られることが少ない。
【0015】
IgG4を例外としてすべての抗体サブクラスは唯一のGmアロタイプを有する。IgG4は、位置309のアイソアロタイプ(そのことによってロイシンがバリンに変化する(L309/K409))と、位置409のアイソアロタイプ(そのことによってアルギニンがリシンに変化する(R409/K409))を持つ。R409 IgG4アイソアロタイプではアルギニン残基R409によってIgG4 Fabアーム交換が可能になるのに対し、K409 IgG4アイソアロタイプではリシン残基K409になることで、Fabアーム交換を受けないIgG1、IgG2、IgG3に似たものになる。
【0016】
半分子交換は、生理学的な役割を果たしている可能性がある。なぜなら自然に産生されるこれら二重特異性分子は、抗原に架橋したり、リンパ様応答を誘導したりすることができず、炎症反応を阻止する可能性があるからである。Fabアーム交換はIgG4抗体を効果的に1価にするため、インビトロで抗原に架橋する能力を制限する。IgG4におけるκ軽鎖の使用の偏りは、IgGクラスそのものにおけるよりもはるかに大きく、それぞれ約5:1であると報告されている(Young他、2014年)。
【0017】
したがってIgG重鎖特異的クラスであるIgG4は、重鎖に結合した軽鎖によって決まる3つの異なる形態で存在することができる。第1の形態は、2本のκ軽鎖(1本が2本の重鎖のそれぞれに結合する)に結合したIgG4分子として存在する(IgG4κ)。第2の形態は、2本のλ軽鎖(1本が2本の重鎖のそれぞれに結合する)に結合したIgG4分子として存在する(IgG4λ)。最後に、他のアイソフォームが、2本の軽鎖(一方がκ軽鎖であり、他方がλ軽鎖である)に結合したIgG4分子として存在する(IgGκ/λ)。それは、いわゆるIgGκ/λ混合ハイブリッド分子である。
【0018】
Fabアーム交換を受けていないIgG4κ分子とIgGλ分子に対するIgGκ/λ混合ハイブリッド分子の正確な割合は、健康な対象の間で大きく変動するが、全IgG4の大きな割合を占めることが予想される。IgGκ/λ混合ハイブリッド分子は、全IgG4免疫グロブリンの20~30%であると報告されている。同様の値が、Young他、2014年(21~33%)と、Silva他、2015年(28%)で報告されている。
【0019】
IgG4抗体の産生増加は、標的臓器へのIgG4発現細胞の浸潤を特徴とする多数の増殖性疾患、自己免疫疾患、慢性炎症疾患と関係している。これらの疾患は、まとめてIgG4関連疾患として知られる。抗原への慢性的な曝露により血清IgG4も増加する。Karagiannis他、2013年には、IgG4レベルの上昇が、液性免疫応答をIgEに支配される応答から転じさせることが提案されている。しかしIgG4関連疾患においてIgG4が病因であるかどうかや、宿主の反応を媒介するかどうかは、わかっていない。IgG4関連疾患の疫学はあまりよく知られていないが、日本人集団における発生率は10万人当たり0.28~1.08であると報告されている。
【0020】
IgG4関連疾患には、特定の病理的特徴、血清学的特徴、臨床的特徴を共有する一群の異常が含まれる。共通する特徴には、臓器の腫瘍様膨張、IgG4陽性形質細胞とCD4+Tリンパ球が豊富なリンパ形質細胞性浸潤、閉塞性静脈炎、線維芽細胞と炎症細胞が荷車の車輪のように配置されて見えることを典型とする特徴的な「花むしろ状」パターンを有する程度の繊維症を含めることができる。軽度の組織好酸球増加症も一般的である。対象は、臓器の質量増加や、臓器のびまん性腫大を示すことがしばしばある。60~90%の対象で多数の臓器が冒される。
【0021】
IgGとIgG4の血清濃度上昇が、IgG4関連疾患を有する対象の60~70%に見られる。成人におけるIgG4の正常値の上限は約2.1 g/lである。IgG4関連疾患の重篤度の上昇は、血清IgG4の量の増加と相関している。IgG4関連疾患におけるIgG4測定の感度は約50~100%の範囲だが、これらの疾患の多くにおけるIgG4測定の感度は明確になっていない。典型的には、対象はグルココルチコイドに応答するため、グルココルチコイド応答性がこれら疾患の1つの診断基準と見なされている。IgG4のレベルは、グルココルチコイド治療に応答して低下する。
【0022】
IgG4関連疾患で影響を受ける一般的な臓器は、頻度の順に、膵臓、唾液腺、腎臓、涙腺、大動脈、胆管、肺、傍脊椎、眼窩、後腹膜、動脈である(Inoue他、2015年)。
【0023】
通常は、IgG4関連疾患は、中年と老年の男性により一般的に発生する。しかし頭と首の臓器のIgG4関連疾患は、男性と女性の両方で同じように見られる。IgG4関連疾患に含まれる主な異常は、1型のIgG4関連自己免疫膵臓炎、唾液腺疾患(ミクリッツ病)、眼窩疾患、後腹膜線維症である。IgG4関連疾患は、悪性疾患、特にリンパ腫と胃がんのリスクを増大させるようにも見える。
【0024】
IgG4関連疾患の病因はほとんどわかっていないままである。血清と組織におけるIgG4の上昇は、IgG4関連疾患に特有ではない。これは、多中心キャッスルマン病、アレルギー性疾患、チャーグ-ストラウス症候群などの他の異常でも起こる。アレルギー応答には、冒された組織におけるIgEの血清レベルの上昇と、Th2サイトカイン(IL-10、TGF-β)のレベル上昇が含まれることがしばしばある。それに加え、IgG4関連疾患を有する対象では、アレルギー性鼻炎と気管支性喘息の割合が増加している。IgG4関連疾患を有する対象の40%までが末梢好酸球増加症を有する。
【0025】
IgG4関連疾患は、現在は、レントゲン写真判読や、組織サンプルの組織学的検査の際に診断される。組織サンプルは侵襲的コア針生検を使用して抽出される。組織サンプルでは、IgG4陽性形質細胞とリンパ球によるリンパ形質細胞性組織浸潤の兆候に、花むしろ状の特徴を有する線維症と閉塞性静脈炎が伴っていることが観察される。組織IgG4陽性細胞のカウント数と、IgG4陽性細胞に対するIgG4陰性細胞の比も考慮する。しかし細胞のカウント数は、組織間、対象間で大きく変動する。線維性組織の領域を同定するのにPET検査、CT検査、MRI検査も推奨される。血清中の全IgG4のレベルは測定可能だが、診断のみを目的とするとは見なされない。なぜならそのレベルは、IgG4関連疾患に関して十分に高感度であるとも特異的であるとも考えられていないからである。
【0026】
IgG4関連疾患は自己免疫膵炎の患者で最初に観察されたが、自己免疫膵炎は膵臓がんと間違われる可能性がある。IgG4の上昇は膵臓がんで見られる可能性があるが、自己免疫膵炎におけるよりも少ない。1型自己免疫膵炎をステロイドで治療するとIgG4が低下するため、この疾患は膵臓がんと区別される。したがってIgG4を測定することが、膵臓がんが自己免疫膵炎ではないこととその逆を確認する上で役に立つ。IgG4の上昇は、IgG4関連硬化性胆管炎でも観察することができるが、原発性の硬化性胆管炎および/または胆管癌では観察されないため、診断に役立つ可能性がある。なぜなら生検が、IgG4関連硬化性胆管炎の組織学的特徴を明らかにするのに十分なほど深くまで達することは稀だからである。
【0027】
IgG4は、いくつかの炎症性疾患でIL-10によって駆動されるTh2免疫応答に存在することも示されている。Th2を媒介とする炎症も、通常は腫瘍の増殖を示唆している。黒色腫では、IgG4が腫瘍細胞に浸潤して腫瘍の周囲に蓄積することが示されている(Karagiannis他、2014年)。IgG4はIgG1の抗腫瘍機能を抑制することも示されている。それはおそらく、Fc受容体の結合がない状態でIgG4が腫瘍抗原に結合し、その腫瘍抗原への非IgG4抗体の結合をさらに阻止することで、IgG1の抗腫瘍免疫機能を効果的に阻止することによるのであろう。IgG4はFc受容体の拮抗を通じて抗腫瘍機能を抑制できる可能性があることも示唆されている(Karagiannis他、JCI、2013年)。この研究は、黒色腫におけるIgG4クラスの産生への切り換えの指標としてのIgG4:全IgGの比に焦点を当てている。この研究は、将来の治療薬を設計する際にIgG4免疫調節を刺激することを回避することの必要性も強調している。したがってIgG4は、免疫抑制効果と低い細胞毒性能力を持つと見なされている。
【0028】
出願人は、遊離したκ軽鎖の検出と、それとは別に遊離したλ軽鎖の検出が可能な高感度アッセイを以前に開発した。この方法では、遊離したκ軽鎖または遊離したλ軽鎖に向かうポリクローナル抗体を用いる。WO97/17372では、そのような抗体を可能な多数のさまざまな抗原の1つとして生じさせうることも議論された。この文献には、動物を寛容化して、その動物に、先行技術で産生させることができるよりも特異的な望む抗体を産生させることのできる方法が開示されている。遊離軽鎖アッセイ(Freelite(商標))では、遊離したλ軽鎖または遊離したκ軽鎖に結合する抗体を用いる。遊離した軽鎖の濃度は、比濁測定または濁度測定によって決定される。この形態のアッセイは高感度である。軽鎖のクローン産生の兆候は、軽鎖多発性骨髄腫におけるように、血清中の遊離したλ軽鎖に対する遊離したκ軽鎖が異常な比であることを明らかにすることによって与えられる。
【0029】
抗体の比の測定は、疾患の診断とモニタリングに役立つ。さらに、その疾患を治療する場合、その技術によってその疾患の進行をモニタリングすることが可能になる。その疾患の治療がうまくいっているのであれば、遊離した軽鎖は血液中での寿命が比較的短いため濃度が変化し、正常な血清で観察される正常な濃度により近づくであろう。
【0030】
出願人は、EP1842071とEP2306202に開示されているように、例えばIgGλとIgGκの識別を可能にすると考えられる抗体とアッセイ(Hevylite(商標))も実現した。出願人は、完全な免疫グロブリンに対して特異的で、重鎖クラスと軽鎖タイプの両方に対する特異性を有する抗体を作製した。出願人は、WO2011/021041に開示されているように、結合したλ鎖またはκ鎖に加え、特定の重鎖クラス、それどころか重鎖サブクラスの産生に付随する疾患の迅速な同定を可能にする、および/または進行を追跡するため、例えばIgGλとIgGκの比の迅速な定量的測定を可能にするアッセイも実現した。
【0031】
本発明者らは、ある重鎖クラスと同時にある軽鎖タイプに特異的な抗体を用いて免疫グロブリンの組成を明らかにすることにより、またはある重鎖クラスに対する第1の抗体と、その重鎖に結合する軽鎖タイプを明らかにする第2の抗体を用いることにより、特定の免疫グロブリン関連疾患のための高感度アッセイを実現した。開発されたアッセイにより、疾患の進行に対する感度を例えばSPEよりも高くすることが可能になる。現在のところ、血清中の混合ハイブリッドと単独型の軽鎖IgG4分子を識別する血清学的アッセイは存在していない。重鎖-軽鎖特異的アッセイが出願人によってHevylite(商標)として実現されている。Hevylite(商標)では、重鎖-軽鎖特異的であって、λ軽鎖またはκ軽鎖に結合した特定の重鎖クラスを有する免疫グロブリン同士を識別することのできる捕獲抗体を使用する。しかしHevylite(商標)自体は、IgG4混合ハイブリッド分子をλ軽鎖またはκ軽鎖のみを有するIgG4から識別することができない。なぜなら、Hevylite(商標)には非常に特異的な抗IgG4捕獲抗体が必要とされるからである。Hevylite(商標)を用いてサンプル中でκ軽鎖に結合したIgG4分子の量を測定する場合には、κ鎖に結合したすべてのIgG4分子でプラスの結果が得られるであろう。ここには単独型κ軽鎖IgG4と混合ハイブリッドIgG4が含まれると考えられるが、混合ハイブリッドIgG4はλ軽鎖も含むため、まったく異なるクラスの分子である。
【0032】
したがってHevylite(商標)自体はハイブリッドIgG4と単独型軽鎖IgG4を識別することができないため、単独型軽鎖IgG4の増加の測定が不正確になる。Hevylite(商標)は、悪性形質細胞疾患におけるモノクローナル重鎖-軽鎖特異的抗体の増殖の検出にも関係している。IgG4は全IgGの非常にわずかな割合(約4%)しか占めていないため、悪性形質細胞疾患でIgG4分子が増殖することは非常に稀である。したがってHevylite(商標)は、単独で使用するとき、IgG4関連疾患の診断またはモニタリングに用いるのには適していないと考えられる。
【0033】
IgG4κ/λハイブリッドの検出にはHevylite(商標)の使用を控えることが出願人によって報告されている(Young他、2014年)。IgG4半分子交換に関する以前の研究の大半は、精製したモノクローナル分子または抗原特異的IgG4分子をヒト血漿または動物血漿に添加して用いることによって可能になっていた。本出願人は、異なる分析-抽出手続きを使用してIgG4ハイブリッド(IgG4κ/λ)とIgG4単独型軽鎖(IgG4κとIgG4λ)を捕獲、精製、同定することが可能であることを認識した。抽出プロセスにより、ポリクローナルIgG4の非常に純粋なサンプルが得られ、他の血漿タンパク質は存在していなかった。さらなる分画によってIgG4κ、IgG4λ、IgG4κ/λの純粋なサンプルが得られた。
【0034】
そこで出願人は、ELISAと免疫沈降とHevylite(商標)の組み合わせを使用して、これら精製サンプル中のIgG4κ/λの割合を推定した。表1に、全IgGアッセイを使用するか、抗κ捕獲抗体または抗λ捕獲抗体を用いたHevylite(商標)を使用して各分画を測定した結果を示す。サンプル中のIgGの全量と比較すると、Hevylite(商標)アッセイのそれぞれで捕獲されたIgG4の量の間に違いが存在している。Hevylite(商標)はIgG4κ/λ混合ハイブリッド分子を識別できないため、ハイブリッドを検出するときに両方のHevylite(商標)アッセイでプラスの結果が生じることで、これらの分子が二重にカウントされたことが明らかである。抗κ捕獲抗体を用いたHevylite(商標)アッセイと抗λ捕獲抗体を用いたHevylite(商標)アッセイの両方が、IgG4κ/λ混合ハイブリッドが検出されたことを示していて、しかもどちらの結果も全量とは等しくないため、アッセイの較正に影響することが証明される。さらに、出願人は、アッセイの較正に対するIgG4κ/λ混合ハイブリッド分子の影響はわかっていないことをコメントする。
【0035】
出願人は、対象からのサンプル中の免疫グロブリンを検出できて初期精製工程を必要としないアッセイが存在することには利点があると認識した。そのようなアッセイにより、結果を得るまでの時間が短くなり、労働集約的な作業がより少なくなる。アフィニティカラムやHPLCといった特殊な装置や技術を持つ必要もなくなるため、クリニックで用いるのに理想的である。
【0036】
出願人は、Hevylite(商標)IgGκ抗体とHevylite(商標)IgGλ抗体がそれぞれIgGκ、IgGλと反応するだけでなく、IgGκHevylite(商標)抗体とIgGλHevylite(商標)抗体の両方がIgG4 IgG4κ/λ混合ハイブリッド分子とも反応することを以前に示している。これは、IgG Hevylite抗体がIgG4 IgG4κ/λ混合ハイブリッド分子を検出するのに適していないことを示していた。IgG4κ/λハイブリッドの割合は、Hevylite(商標)を使用してこうした違いが見いだされた後にSDS-PAGE分析をしてようやく明確になった。これらの結果は、生体内Fabアーム交換の結果としてIgG4κ/λハイブリッドのかなりの割合(約30%)が正常で健康なヒトの血清に存在していることを示していた。
【0037】
IgG4κ/λ混合ハイブリッドの存在と測定結果は本分野で知られているとはいえ、その測定結果が有用である証拠は存在していなかった。IgG4関連疾患を有する人は、Fabアーム交換を弱めるIgG4のK409変異の頻度が実質的に増加していないことが報告されている(Ahmad他、2014年)。このことが示唆しているのは、混合ハイブリッド分子のダイナミクスはIgG4関連疾患では影響を受けないため、IgG4関連疾患の診断またはモニタリングにおいて選択されることはないと考えられるということである。
【0038】
別の研究では、治療用抗体が、生体内で内在性ヒトIgG4とのFabアーム交換に関与することが報告されているが、臨床におけるその重要性についてはコメントがなく(Labrijn他、2009年)、IgG4κ/λハイブリッドへの具体的な言及もない。さらに、IgG4κ/λ混合ハイブリッドのレベルを求めることのできるアッセイの開発では、IgG4κ/κハイブリッドまたはIgG4λ/λハイブリッドのレベルを明らかにできることが望ましいが、それはできない可能性が大きい。したがって、IgG4κ/λ混合ハイブリッドの正確なレベルを求めるためのより簡単で効果的なアッセイを実現する動機はこれまでなかった。
【0039】
Fabアーム交換を抑制するS228P変異を持っていてIL-6に対して生じるIgG4分子のみを検出する非常に特異的な抗IL-6 IgG4 S228P変異抗体を用いたMSD(メゾスケール発見)イムノアッセイが開発されている(Silva他、2015年)。これは、抗原特異性に依存しているため、サンプル中のIgG4κ/λハイブリッドの全数を測定するのに用いることはできない。さらに、Silvaら(2015年)には、IgG4κ/λハイブリッドの数の測定、さらにはFabアーム交換の推定が臨床的に重要であることの示唆はない。
【0040】
IgG4抗体の単離またはアミノ酸修飾をカバーする多数の特許出願が存在している。アメリカ合衆国特許出願公開第2004/092719号には、抗体調製の際に重鎖間ジスルフィド結合が欠けたIgG4抗体を単離する方法が開示されており、EP1810979には、免疫療法のための安定化されたヒトIgG4抗体が開示されている。アメリカ合衆国特許出願公開第2013/323236号には、免疫療法における好ましい特性を付与するため、特定の重鎖アミノ酸置換を含むIgG4抗体が開示されている。WO2013/124451、WO2013/124450、EP2626372には、免疫療法のための二重特異性重鎖修飾が開示されている。アメリカ合衆国特許出願公開第2011/293607号にも、アミノ酸修飾を有するIgG4抗体が開示されているが、その修飾は定常領域におけるものである。どの先行技術も、IgG4κ/λハイブリッドの単離または定量的測定に関するものではない。
【0041】
出願人は、Karagiannisら(2014年)に報告されている黒色腫の中の腫瘍の生存におけるIgG4のレベルと全IgGの間の関係や、IgG4関連疾患の存在または重篤度におけるIgG4のレベルと全IgGの間の関係が、全IgG4抗体プールの中のIgG4κ/λハイブリッド抗体の割合の影響を受けている可能性があると仮定した。出願人は、全IgG4のレベルに対するIgG4κ/λハイブリッドの比がある種のIgG4関連疾患(皮膚に水疱を生じさせる天疱瘡や自己免疫膵炎など)では乱されることを明らかにした。IgG4抗体は、IgG1抗体の補体固定作用に拮抗することで炎症を抑制することが知られているため、出願人は、IgG4κ/λハイブリッドの割合がこの効果を変える可能性があると推測している。IgG4抗体は、Fc受容体の結合を通じ、抗体を媒介とした細胞の殺傷に干渉するようにも見える(Karagiannis他、2014年)。
【0042】
IgG4混合ハイブリッド抗体を精製して分析する1つの方法が最近報告された(Yang他、2015年)。精製したヒトIgGをIgG4モノクローナル抗体と混合し、生じた半分子交換の量を、混合モードクロマトグラフィでIgG4混合ハイブリッド抗体を分離することによって検出した。次に、IgG4モノクローナル抗体との半分子交換を受けたIgG4混合ハイブリッド抗体を、UV吸収またはタンパク質蛍光を使用して定量的に測定した。この方法には、ヒト対象からのIgGサンプルと産生されたモノクローナルIgG4抗体の両方を精製するいくつかの工程が含まれる。これは、IgG4混合ハイブリッドを測定する長くて労働集約的な方法であるため、特殊な装置(質量分析器など)なしには実施できないと考えられる。さらに、Yangは、イムノアッセイを使用したIgG4混合ハイブリッドの測定は、現在のところ、一方のハイブリッドFabアームのための抗原を固相に固定化し、第2のFabアームに対する抗イディオタイプ抗体、またはその他方のアームのための抗κ抗体または抗λ抗体を用いる場合に限定されていることを教示している。Yangは、そうすることで投与された抗体と内在性IgG4の間で多重交差反応が起こる可能性があることを強調し、IgG4混合ハイブリッド抗体の測定にイムノアッセイを使用すると正確にならないと結論している。
【発明の概要】
【0043】
出願人は、対象に直接由来する精製されていないサンプルからIgG4κ/λハイブリッドの存在を検出するための非常に特異的な定量血清学的アッセイの開発が可能であると認識した。先行技術においてIgG4κ/λの割合を分析する以前のあらゆる試みは、IgG4の分画を精製した後、SDS-PAGEまたは免疫沈降で分析することを含む長大なプロトコルを使用している。出願人は、自己免疫膵炎や天疱瘡などのIgG4関連疾患を診断またはモニタリングすることを目的として、重軽鎖特異的抗体に関する彼らの知見を使用し、全IgG4に対するIgG4κ/λハイブリッドの比を明らかにするイムノアッセイを開発した。
【0044】
本発明の第1の側面により、IgG4関連疾患を検出またはモニタリングするための方法であって、サンプル中で、
(i)IgG重鎖クラス;
(ii)κ軽鎖およびλ軽鎖の両方に結合するIgG4重鎖クラス;
および場合によっては、
(iii)同じ重鎖クラスを有するが、κ軽鎖のみ、またはλ軽鎖のみに結合した免疫グロブリン
を有する、抗体の相対量の間の比を検出すること
を含み、
前記方法は、
(i)前記免疫グロブリンを前記免疫グロブリンに特異的な結合剤に結合させ、ここで前記結合剤は、基材に固定化されているか、レポーター分子と複合化されており、
(ii)前記結合剤に結合した、又はレポーター分子と複合化された免疫グロブリンを検出する、標識化された検出剤を使用すること
を含む、前記免疫グロブリンの定量的検出を含む、方法が提供される。
【0045】
この方法は、好ましくは、サンプル中の免疫グロブリンの量を定量的に測定する。
【0046】
未結合の免疫グロブリンを除去するために、結合剤(例えば固定化された結合剤)に結合した免疫グロブリンは、洗浄されてもよい。
【0047】
上記の工程(iii)は、κ軽鎖またはλ軽鎖に結合したIgG4重鎖クラスの全量を決定するために使用されてもよい。IgG4の全量は、工程(i)を使用して決定される。κ軽鎖とλ軽鎖の両方に結合したIgG4重鎖クラスの全量も工程(ii)を使用して決定され、工程(i)からのIgG4の全量から差し引かれる。残った分画は、κ軽鎖またはλ軽鎖に結合したIgG4重鎖クラスの全量を示している。
【0048】
本発明者らは、単独の抗体を組み合わせて使用して、異なる重鎖クラス/単独軽鎖タイプ抗体と重鎖クラス/ハイブリッド軽鎖タイプ抗体を識別できることを見いだした。したがって本発明の方法は、
(i)IgG重鎖クラスに特異的な少なくとも1つの結合剤;および、
a)κ軽鎖に結合したIgG重鎖クラスに特異的な結合剤と、λ軽鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;および/または
b)λ軽鎖に結合したIgG重鎖クラスに特異的な結合剤と、κ軽鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;および/または
c)κ軽鎖に結合したIgG重鎖クラスに特異的な結合剤と、λ軽鎖に結合したIgG重鎖クラスに特異的な結合剤の組み合わせ;
を使用して決定され得る。
【0049】
IgG4λ特異的結合剤は、IgG4に結合することができる。IgG4は、IgG4κ特異的結合剤にも結合する。結合の量は、所定の濃度のIgG4κ/λ混合ハイブリッドについて得られた較正曲線から求めることができる。
【0050】
図2は、抗IgG4κ捕獲抗体と抗λ検出抗体、または抗IgG4λ捕獲抗体と抗κ検出抗体を組み合わせてIgGκ/λ混合ハイブリッドを検出する2つの実例を示している。
【0051】
検出する免疫グロブリンに特異的な結合剤は、好ましくは、抗体またはそのフラグメントであるか、またはアプタマーである。本発明のあらゆる側面で用いる抗体のフラグメントは、FabフラグメントまたはF(ab')2フラグメントであってもよい。アプタマーは、大きな親和性と特異性を有する短い一本鎖のDNA分子またはRNA分子であり、「核酸抗体」と呼ぶことができる。
【0052】
検出する重鎖クラスは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4から選択することができ、最も好ましくはIgG4である。すべてのクラスの組み合わせも全IgGとして検出することができる。
【0053】
サンプルは、アフィニティ精製または吸着による検出法における使用前に、場合によっては、IgG重鎖サブクラスに関して富化されてもよい。
【0054】
本発明の方法は、以下の方法の1つ以上を使用して使用されてもよい。ここで、サンプル中の抗体に対する結合剤の結合は、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、フローサイトメトリー、または蛍光標識したビーズ(Luminex(商標)ビーズなど)を使用することによって決定される。これらのアッセイ法は、シングルプレックス(目的の1つの分析物を測定する)であってもよいし、またはマルチプレックス(目的の多数の分析物を測定する)であってもよい。あるいは、特異的結合剤を用いてマイクロアレイアッセイが生成されてもよい。
【0055】
上に記載したようにして検出される特定のIgG重鎖クラスの全量、またはIgGの全量は、多重ELISAアッセイの一部として、または上記のa)、および/またはb)、および/またはc)の検出工程とともに実施されるシングルプレックスアッセイとして測定されることが好ましい。
【0056】
全IgG4に対するIgG4κ/λ混合ハイブリッドの比、または全IgGに対するIgG4κ/λ混合ハイブリッドの比は、免疫学的に決定されることが好ましく、ELISAによって決定されることが最も好ましい。ELISA型のアッセイそれ自体は本分野で周知である。このアッセイでは、特異的結合剤(例えば血液型を検出するための抗体など)、細胞表面マーカー、薬、および毒素を用いる。本発明の場合、このタイプのアッセイは、本発明の方法のために使用されている。
【0057】
ELISAでは、特異的抗原を検出するのに抗体または他の結合剤(例えばアプタマー)、または抗体のフラグメントを使用する。アッセイで使用する1つ以上の抗体、アプタマー、抗体フラグメントは、基質を検出可能な分析物に変換することのできる酵素で標識することができる。そのような酵素に含まれるのは、西洋ワサビのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、本分野で知られている他の酵素である。あるいは他の検出可能なタグまたは標識を用いることができる。その中に含まれるのは、放射性同位体、本分野で知られている多彩な着色標識や蛍光標識(フルオレセイン、Alexa fluor、Oregon Green、BODIPY、ローダミンレッド、Cascade Blue、Marina Blue、Pacific Blue、Cascade Yellow、ゴールドなど)、ビオチン(例えばInvitrogen Ltd社(イギリス)から入手できる)などの共役体である。染料ゾル、金属ゾル、着色ラテックスも使用することができる。これら標識の1つ以上を、本明細書に記載したさまざまな本発明によるELISAアッセイ、または本明細書に記載した他のアッセイ、標識した抗体、キットで用いることができる。
【0058】
ELISA型のアッセイの構成それ自体は本分野で周知である。例えば抗原に特異的な「結合抗体」は、基材の表面に固定化される。この場合、抗原は、λ軽鎖に結合するか、κ軽鎖に結合するか、λ軽鎖とκ軽鎖の両方に結合したIgG重鎖または特定のサブクラスのIgG重鎖を含む抗体である。「結合抗体」は、本分野で周知の方法によって基材の表面に固定化することができる。サンプル中の抗原は「結合抗体」によって結合し、その「結合抗体」を通じて抗原を基材に結合させる。
【0059】
未結合の抗体は洗い流すことができる。
【0060】
ELISAアッセイにおいて、結合抗体ではなく目的の抗原の異なる部分に対して特異的な、標識化された「検出抗体」を使用することにより、結合した抗体の存在が決定され得る。
【0061】
フローサイトメトリーを使用して目的の抗体の結合を検出し、比を測定することができる。この技術は本分野で例えばセルソーティングとして周知である。しかしこの技術は、標識した粒子(例えばビーズ)の検出とそのサイズの測定にも使用することができる。多数の教科書にフローサイトメトリーが記載されていて、例えば『Practical Flow Cytometry』、第3版(1994年)、H. Shapiro著、Alan R. Liss社、ニューヨークと、 『Flow Cytometry, First Principles』(第2版)2001年、A.L. Given著、Wiley Liss社がある。
【0062】
結合抗体の1つ(重鎖クラスに特異的な抗体など)は、ビーズ(ポリスチレンビーズやラテックスビーズなど)に結合する。ビーズは、サンプルおよび第2の検出抗体(λ軽鎖に対して特異的な抗体など)と混合する。検出抗体は、サンプル中で検出される抗体に結合する検出可能な標識で標識することが好ましい。そうすることで、調べる抗体が存在するとき、標識されたビーズが得られる。
【0063】
その後、標識されたビーズはフローサイトメトリーによって検出され得る。異なる標識(例えば異なる蛍光標識)を、例えば抗λ抗体および抗κ抗体のために使用することができる。そうすることで、所与の重鎖クラスの全量を同定する作業と組み合わせて実施するとき、結合した各タイプの抗体の量を同時に求めることと、所与の重鎖クラスに関してκ/λハイブリッド:単独型のκまたはλの比を迅速に同定することが可能になる。
【0064】
あるいは、またはそれに加えて、異なるサイズのビーズを、例えば異なるクラスの特異的抗体で使用することができる。フローサイトメトリーは、異なるサイズのビーズを識別できるため、サンプル中の各重鎖クラスの量を迅速に求めることが可能である。
【0065】
代わりの方法では、例えば蛍光標識したビーズ(市販されているLuminex(商標)ビーズなど)に結合した抗体を用いる。異なるビーズが異なる抗体とともに使用される。異なるビーズを異なる蛍光体混合物で標識することで、特定の重鎖クラスまたは重鎖サブクラスに関する単独型またはハイブリッド型の比を蛍光波長によって決定することが可能になる。Luminex(商標)ビーズは、Luminex(商標)社(オースチン、テキサス州、アメリカ合衆国)から入手できる。
【0066】
目的の免疫グロブリンは、時間分解蛍光(HTRF)アッセイのプラットフォームを使用して検出することもできる。均質アッセイは、簡単な混合と読み取りの手続きを必要とするが、分離や洗浄といった多数の処理工程は必要としない。HTRF技術は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に蛍光の時間分解測定(TR)を組み合わせたものである。FRETは、1つのタンパク質が別のタンパク質(その両方にドナー蛍光体またはアクセプター蛍光体が付着している)と相互作用するとき密に接触する2つの蛍光体の間のエネルギー移動に依存している。例えば(蛍光の持続時間が長い)ドナー蛍光体を抗IgG4κ抗体に付着させることができよう。次に、サンプルからの目的のタンパク質(IgG4κ/λ混合ハイブリッド抗体)をドナーで標識した抗IgG4κ抗体に結合させることが考えられる。次に抗λ抗体を添加することができよう。この抗体には(蛍光の持続時間が短い)アクセプタ蛍光体を付着させることができ、IgG4κ/λ混合ハイブリッド抗体にも結合すると考えられる。標識されたこれら2つのタンパク質(抗IgG4κ抗体と抗λ抗体)が近接するとき(例えばIgG4κ/λ混合ハイブリッド抗体に結合するとき)、ドナー蛍光体とアクセプター蛍光体の間のエネルギー移動のレベルを蛍光の放出として検出することができる。この情報を使用して、サンプル中の特定の目的のタンパク質の量を知ることができる。
【0067】
目的の免疫グロブリンは、ラテラルフローアッセイのプラットフォーム、好ましくはラテラルフローサンドイッチアッセイのプラットフォームを使用して検出することもできる。ラテラルフローサンドイッチアッセイでは、結合剤(典型的には抗体)の標識に用いられる着色粒子または蛍光粒子を使用する。標識した抗体を用い、サンプル由来で一連のキャピラリー床を通過する目的の抗原を検出する。標識した抗体は、通常は、キャピラリー床の1つの表面に固定化されていて、サンプル中の目的の抗原に遭遇したときに抗原-抗体複合体を形成する。サンプルの流れが一連のキャピラリー床を通過するにつれて、キャピラリー床に抗体を固定化しているマトリックスが溶解することで抗原-抗体複合体が遊離してさらに移動し、第2の特異的結合剤(典型的には抗体)に結合する。着色/蛍光バンドを、サンプル中の抗原の存在または量の指標となる抗原-抗体粒子の蓄積として観察することができる。
【0068】
サンプルは、動物の血液に由来する組織または体液(全血、血漿、血清)から得られることが好ましい。動物は例えば哺乳動物であり、ヒトであることが好ましいが、動物としてそれに加え、アカゲザル(Macaca mulatta)、カニクイザル(Macaca fascicularis)、ウサギ(Oryctolagus cuniculus)、モルモット(Cavia porcellus)、ラット(Rattus norvegicus)、ウマ(Equus caballus)、ヒツジ(Ovis aries)、ウシ(Bos taurus)、ロバ(Equus asinus)、マウス(Mus musculus)、ヤギ(Capra hircus)、ブタ(Sus scrofa)が挙げられる(Labrijn他、2011年)。それに加え、他の哺乳動物(マウスなど)が別のクラス(IgG3)の軽鎖混合ハイブリッド抗体を示すことができる。それに加え、組織(腫瘍組織、尿、唾液、脳脊髄液、リンパ液が好ましい)中のそのようなタンパク質を同定することができる。組織または体液は、身体内の特定の領域(例えば腫瘍を取り囲んでいる局所的な組織または流体)から採取することができる。サンプルはインビトロでアッセイされることが好ましい。
【0069】
ヒト抗体の存在は、例えばヒツジ、ウマ、ヤギ、ロバ、ウサギ、ニワトリ、マウス、ラットからの抗ヒト抗体を用いて決定され得る。
【0070】
重鎖-軽鎖特異的なペアまたはハイブリッドペアの測定は、自動化することができる。さらに、この技術はより感度が高いため、さまざまな免疫グロブリンの量を定量的に求めることが可能である。この技術は、疾患を診断する助けにすることと、治療(例えばグルココルチコイド処置)に対する疾患の反応をモニタリングすることの両方に用いることができる。この技術は、IgG4関連疾患で腫瘍の存在を検出するのにも用いることができる。この技術は、将来の疾患進行と対象生存のリスクを予測するのにも使用することができる。これらの値はリスクの割合として計算することができる。この方法は、治療に対するアレルギーの応答をモニタリングするのにも使用することができる。この方法は、特定の抗原が対象の環境から除去されているかどうかを知るのにも使用することができる。
【0071】
IgG4関連疾患は、IgG4関連全身疾患、IgG4症候群、IgG4随伴疾患、IgG4関連硬化性疾患、IgG4関連全身硬化性疾患、IgG4関連自己免疫疾患、IgG4陽性多臓器リンパ増殖症候群、超IgG4疾患、全身性IgG4関連形質細胞症候群、IgG4関連多焦点全身性線維症、多焦点線維性硬化症、多焦点特発性線維性硬化症として知られているであろう。
【0072】
IgG4関連疾患の選択は、1型(IgG4関連)自己免疫膵炎、IgG4関連硬化性胆管炎、ミクリッツ病(またはIgG4関連の涙腺炎と唾液腺炎)、硬化性唾液腺炎(またはキュットナー腫瘍、IgG4関連顎下腺疾患)、IgG4関連眼窩炎症またはIgG4関連眼窩炎性偽腫瘍、慢性硬化性涙腺炎(または涙腺肥大、IgG4関連涙腺炎)、後腹膜線維症(またはオーモンド病)とそれに関連する異常(IgG4関連後腹膜線維症、IgG4関連腸間膜炎)、慢性硬化性の大動脈炎と大動脈周囲炎(またはIgG4関連の大動脈炎または大動脈周囲炎)、多焦点線維硬化症、橋本甲状腺炎の線維性バリアント、リーデル甲状腺炎(またはIgG4関連甲状腺疾患)、IgG4関連の間質性肺炎と肺炎性偽腫瘍(またはIgG4関連肺疾患)、IgG4関連腎疾患(IgG4関連の二次的な尿細管間質性腎炎と膜性腎症が含まれる)、IgG4関連下垂体炎、IgG4関連硬膜炎、IgG4関連中線破壊性疾患、IgG4関連リンパ節腫脹、IgG4関連眼窩筋炎、IgG4関連皮膚疾患(天疱瘡、皮膚偽リンパ腫)、IgG4関連肝障害、肝炎、偽腫瘍、自己免疫膵炎に付随するリンパ形質細胞性胃炎、硬化性乳腺炎、乳房の炎症性偽腫瘍、前立腺炎、収縮性心膜炎、炎症性大動脈瘤、シェーグレン症候群、リンパ形質細胞性硬化性膵炎、家族性多焦点線維硬化症、キュットナー腫瘍、好酸球性血管中心性線維症、ロザイ-ドルフマン病、縦隔線線維症、動脈周囲炎、豊富な尿細管間質性沈着物を伴う特発性低補体性尿細管間質性腎炎、IgG4関連鼻咽頭疾患からなされることが好ましい。IgG4関連疾患に冒される一般的な臓器は、頻度の順に、膵臓、唾液腺、腎臓、涙腺、大動脈、胆管、肺、傍脊椎、眼窩、後腹膜、動脈である。それに加え、黒色腫などのがんやアレルギーがIgG4の上昇を示す可能性があり、IgG4関連疾患と見なすことができる。
【0073】
本明細書に記載した方法またはキットは、IgG4関連疾患の炎症マーカーであるVEGF、IL-10、TGF-β、Th2サイトカインなどを同時にアッセイすることを含んでいてもよい。
【0074】
IgG4アイソアロタイプK409の存在は、通常は、PCRとPCR後の分析などの方法を使用して検査される。対象が二倍体K409変異を持っている場合、検出すべきIgG4混合ハイブリッド分子は存在しないであろう。対象が半数体K409変異を持っている場合、IgG4混合ハイブリッド分子とIgG4単独型軽鎖分子の割合は崩れて低下するであろう。図6Aは、IgG4混合ハイブリッド分子に対するIgG4の比を検出するときの異常値をはっきりと示している。したがってこれら異常値を同定することを使用して、半数体K409変異を持つ対象であるか二倍体K409変異を持つ対象であるかを同定することができる。
【0075】
この方法はまた、合成抗体調製物(例えば、免疫療法のための生物学的薬剤として作製されるモノクローナル抗体)中のκ軽鎖抗体およびλ軽鎖抗体の両方に結合するIgG4重鎖クラスの量または割合を決定するために使用され得る。この方法は、合成抗体調製物のサンプル中で、
(i)κ軽鎖およびλ軽鎖の両方に結合したIgG4重鎖クラス;
および場合によっては、
(ii)同じ重鎖クラスを有するが、κ軽鎖のみ、またはλ軽鎖のみに結合した免疫グロブリン
を有する、2つ以上の免疫グロブリンの相対量の比を検出することを含み、
前記方法は、
(i)前記免疫グロブリンを前記免疫グロブリンに特異的な結合剤に結合させ、ここで前記結合剤は、基材に固定化されているか、レポーター分子と複合化されており、
(ii)前記結合剤に結合した、又はレポーター分子と複合化された免疫グロブリンを検出する、標識化された検出剤を使用すること
を含む結合アッセイによる、前記免疫グロブリンの定量的検出を含む。
【0076】
ポリクローナル抗体を使用することが好ましく、それに加えてモノクローナルも使用することができる。ポリクローナル抗体により、例えば同じクラスの異なる免疫グロブリンをモニタリングするための改良されたアッセイを実現することが可能になる。ポリクローナル抗体により、複数の異なる抗体を、特定のIgG重鎖-軽鎖の組み合わせのための異なるエピトープに対して生成させることが可能になる。こうすることで、異なる免疫グロブリン同士がわずかに異なるようにできるが、それでも同じIgG重鎖-軽鎖の組み合わせを含んでいる。本発明のさまざまな側面で用いるポリクローナル抗体は、WO97/17372に示した方法によって作製することができる。こうすることで、非常に特異的なポリクローナル抗体を作製することが可能になる。
【0077】
サンプルは、そのサンプル中の遊離したλ軽鎖または遊離したκ軽鎖を測定することによってさらに特徴づけがなされてもよい。遊離したλ軽鎖または遊離したκ軽鎖の全量も測定することができる。遊離したκ軽鎖に対する遊離したλ軽鎖の比も得ることができる。これは、遊離したλ軽鎖または遊離したκ軽鎖に特異的な抗体(例えばThe Binding Site Ltd社(バーミンガム、イギリス)によって商標Freelite(商標)とCombylite(商標)のもとで市販されている抗体)を用いて実施することが好ましい。
【0078】
全IgGまたは特定のIgG重鎖サブクラスの検出と、κ軽鎖とλ軽鎖の両方に特異的に結合するIgG重鎖サブクラスの検出から得られる比の値を、各種のIgG4関連疾患に関する正常な範囲または基準値と比較することができる。正常な範囲は、典型的には、比の中央値が0.328、比の平均値が0.358であり、標準偏差は0.1272である。この比の値を使用して、1つのタイプのIgG4関連疾患の特徴を、その疾患に特有の範囲に応じてさらに明確にするのにも使用できる。
【0079】
本発明のさらに別の側面により、
(i)特定の軽鎖クラスに結合するIgG4重鎖クラスに特異的な結合剤と;
(ii)反対側の軽鎖クラスに特異的な結合剤と;場合によっては
(iii)IgG4に特異的な結合剤と、1つのIgG重鎖クラスに特異的な結合剤
を含むアッセイキット、好ましくはELISAが提供される。
【0080】
キットのさらに別の側面は、所定量のIgG4κ/λ混合ハイブリッド較正剤を含むことができる。
【0081】
反対側の軽鎖クラスは、前記IgG4重鎖クラスに特異的な結合剤がλ軽鎖に結合するときにはκであると考えられ、反対側の軽鎖は、前記IgG4重鎖クラスに特異的な結合剤がκ軽鎖に結合するときにはλであると考えられる。
【0082】
当該キットのさらに別の側面は、全IgG4に対するIgG4κ/λ混合ハイブリッドの比、または全IgGに対するIgG4κ/λ混合ハイブリッドの比を、
(i)IgG重鎖クラスに特異的な少なくとも1つの結合剤;および
a)κ軽鎖に結合するIgG重鎖クラスに特異的な結合剤と、λ軽鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;および/または
b)λ軽鎖に結合するIgG重鎖クラスに特異的な結合剤と、κ軽鎖に特異的な結合剤の組み合わせ;および/または
c)κ軽鎖に結合するIgG重鎖クラスに特異的な結合剤と、λ軽鎖に結合するIgG重鎖クラスに特異的な結合剤の組み合わせ
を有する、2つ以上の免疫グロブリンの相対量の間で検出する方法において使用するためのキットである。
【0083】
このキットのさらに別の側面は、IgGκ/λ混合ハイブリッド分子の量を検出し、較正剤と比較する方法における使用であり、このキットは、
(a)κ軽鎖に特異的な結合剤と;
(b)λ軽鎖に特異的な結合剤と;
(c)所定量のIgG4λ/κ混合ハイブリッド較正剤
を含んでいる。
【0084】
較正剤は、アッセイを較正するために使用される。典型的には、実質的に純粋なハイブリッドIgGκ/λを適切な緩衝液で希釈して較正剤を形成する。
【0085】
キットの中に含める結合剤または検出剤として、抗原特異的アプタマー、抗体、その抗原特異的なフラグメントが可能である。
【0086】
抗体、標識などは、上に説明したようなものであることが好ましい。
【0087】
IgG重鎖クラスに特異的な抗体、または特定の軽鎖クラスに結合したIgG4重鎖クラスに特異的な抗体は、基材に固定化されることが好ましい。基材としてビーズでもよいが、マイクロタイタープレートウェルであることが好ましい。
【0088】
1つ以上の抗体が、検出可能な標識を備えていることが好ましい。酵素(例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビのペルオキシダーゼ)などの間接的標識を用いることができ、35Sなどの放射性標識も可能である。例えばマルチプレックスアッセイで組み合わせて用いる場合には、それぞれのタイプの検出抗体に異なる検出可能な標識を標識することができる。
【0089】
1つ以上の対照(または較正剤)、例えば既知量の所定のモノクローナルタンパク質(精製したIgG、IgG4、IgG4λ/κ、またはそのフラグメントなど)を、このELISAとまったく別のELISA、フローサイトメトリー、Luminex(商標)、本明細書に記載した他のアッセイに提供することができる。較正剤は、典型的には、国際標準濃度と結びついている。較正剤として、例えば、IgG4λまたはIgG4κが存在しない少なくとも98%w/wの純粋な混合ハイブリッドIgG4λ/κが可能である。アッセイは、これらの値と比較し、標準単位で報告することができる。フラグメントは、使用するとき、例えばクラスおよび/または軽鎖タイプを検出するための抗原決定基を保持することになろう。
【0090】
捕獲ビーズとLuminexビーズを備えたフローサイトメトリーキットも提供される。これらのキットは、抗体またはそのフラグメント、またはそれに加えてアプタマーのうちで、IgG重鎖クラスおよび/またはIgG重鎖サブクラスに特異的なもの、および/または特定の軽鎖クラスに結合するIgG4重鎖クラスに特異的なものを含むことが好ましい。異なる抗体のタイプのそれぞれは、組み合わせて用いる場合、異なるサイズのビーズに付着させる。キットは、本発明の方法の抗体を通じてビーズに結合したサンプルに由来する抗体の存在を検出するための標識した抗体をさらに含むことが好ましい。
【0091】
競合アッセイ、ラテラルフロー免疫クロマトグラフィアッセイ、HTRFプラットフォームアッセイも提供される。
【0092】
本発明のキットは、遊離したλ軽鎖または遊離したκ軽鎖に特異的な抗体をさらに含むことができる。あるいは全遊離軽鎖(FLC)の濃度を測定するための全抗FLC抗体を、例えば所定の基準に対する全FLCをさらに測定するために提供すること、または使用することができる。
【0093】
キットはさらに、このキット、基材、緩衝液、標識、保存剤、対照を使用するための1つ以上の指示を含むことができる。
【0094】
ここで本発明を、以下の図面を参照しつつ、単なる例示として記述することにする。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1-1】図1-1は、IgG4半分子交換の模式図を示している。
図1-2】図1-2(表1)は、正常なヒトの血清から精製したポリクローナルのIgG4κ、IgG4λ、混合軽鎖IgG4ハイブリッドをイムノアッセイによって定量した結果を示している(Young他、2014年から引用)。IgGκ/λハイブリッドは、両方のHevylite Gアッセイで明確に検出される。
図2a図2aは、抗IgG4κ捕獲抗体と抗λ検出抗体、または抗IgG4λ捕獲抗体と抗κ検出抗体を組み合わせてIgGκ/λ混合ハイブリッドを検出する2つの実例を示している。
図2b図2bは、抗IgG4κ捕獲抗体と抗λ検出抗体、または抗IgG4λ捕獲抗体と抗κ検出抗体を組み合わせてIgGκ/λ混合ハイブリッドを検出する2つの実例を示している。
図3図3は、本発明で最適化したアッセイパラメータを用いた5点較正曲線を示している。動作範囲は、1/5000サンプル希釈液を用いると18.5~1500 mg/lである。較正剤は、(Optilite G4アッセイによって定量した)純粋な精製IgG4MMであり、較正剤希釈剤は、IgG4が欠乏した血清を1/5000に希釈したものであり、サンプル希釈剤は、標準ELISA緩衝液T271であり、共役体は、a-κ-Peroxを1/3000に希釈したものである。すべての工程が室温で30分間実施される。
図4図4は、試験した3つのサンプルが較正曲線の下部、中央部、上部に対応することを示す。サンプルセット内の変動係数CVの値を示してある。これは、アッセイ間で精度がよく一致していることを示している。較正曲線の3つの領域(25、85、580 mg/l IgG4MM)が標的となり、サンプルごとに同じものを16通り用意した。
図5A図5Aは、EIAを使用して90人の健康な対照で求めた全IgG4のレベルを示す(異常値は除外)。
図5B図5Bは、EIAを使用して90人の健康な対照で求めた全IgG4κ/λ混合ハイブリッドのレベルを示す(異常値は除外)。
図5C図5Cは、EIAを使用して90人の健康な対照で求めた全IgG4のレベルに対する全IgG4κ/λ混合ハイブリッドのレベルの比を示す(異常値は除外)。
図6A図6Aは、全IgG4と全IgG4κ/λ混合ハイブリッドの直線プロットを、同定された異常値を含めて示している。
図6B図6Bは、全IgG4と全IgG4κ/λ混合ハイブリッドの直線プロットを、同定された異常値を除外して示している。
図7図7は、既知のIgG4関連疾患(天疱瘡/類天疱瘡と1型自己免疫膵炎(AIP))を有する患者に由来する臨床サンプルでEIAを使用して求めた全IgG4κ/λ混合ハイブリッドに対する全IgG4の比を示す。
【実施例
【0096】
酵素イムノアッセイ(EIA)
抗原捕獲EIAを使用してIgG4κ/λハイブリッドのレベルを測定した。22℃の湿潤な箱の中で、EIAプレート(Maxisorp(商標)平底透明96ウエルプレート;Nunc社、ロスキルデ、デンマーク国)を、2.5μg/mlのIgG4λを含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で一晩被覆した。その被覆溶液を除去した後、Stabicoat(商標)(SurModics社、エデン・プレリー、ミネソタ州、アメリカ合衆国)を22℃で30分間用いてプレートをブロックした。ブロックの除去後、プレートを真空下で乾燥させ、乾燥剤の袋を収容したホイル製パウチの中に密封した。希釈した患者サンプルを、2通り用意したすべてのストリップに添加した。IgG4が欠乏した血清中の精製IgG4κ/λハイブリッド(1/5000)を較正剤として用い、3回希釈して300 ng/mlから3.7 ng/mlにした。0.1%Tween(商標)(PBS-T)サンプル希釈剤を含むPBSの中で血清サンプルを1/5000に希釈し、22℃で30分間インキュベートした。0.1%Tween(商標)-Tを含むPBSで洗浄(Bio-Teck instruments Inc社、ヴァーモント州、アメリカ合衆国)した後、結合したIgG4κ/λハイブリッドを、10%StabiZyme-HRP(SurModics社)を含む生理食塩水の中で1/3000に希釈した抗κ-HRP(BindingSite社、イギリス)によって検出した。さらに30分間インキュベートして洗浄した後、テトラメチルベンジジン(TMB、SurModics社)溶液を用いてプレートを現像し、吸光度を450 nmで測定した(Bio-Teck EL800マイクロプレートリーダー)。得られた較正範囲は、18.5~1500 mg/lである。
【0097】
抗原捕獲EIAを使用してIgG4のレベルを測定した。22℃の湿潤な箱の中で、EIAプレートを、5.0μg/mlのモノクローナル抗IgG4クローンHP6025(Sigma Aldrich社)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で被覆した。その被覆溶液を除去した後、Stabilcoat(商標)を22℃で30分間用いてプレートをブロックした。ブロックを除去した後、プレートを真空下で乾燥させ、乾燥剤の袋を収容したホイル製パウチの中に密封した。希釈した患者サンプルを、2通り用意したすべてのストリップに添加した。濁度測定IgG4較正流体をサンプル希釈剤の中で希釈し、339.33 ng/ml~1.40 ng/mlの範囲にした。血清サンプルを、0.1%Tween(商標)(PBS-T)サンプル希釈剤を含むPBSの中で1/20000に希釈し、22℃で30分間インキュベートした。0.1%Tween(商標)-Tを含むPBSで洗浄した後、結合したIgG4を、10%StabiZyme-HRPを含む生理食塩水の中で1/8000に希釈した抗IgG-HRP(BindingSite社、イギリス)によって検出した。さらに30分間インキュベートして洗浄した後、TMB溶液を用いてプレートを現像し、吸光度を450 nmで測定した(Bio-Teck EL800マイクロプレートリーダー)。得られた較正範囲は、27.93~6787 mg/lに等しい。
【0098】
結果
EIAを使用して90人の健康な対象で全IgG4とIgG4κ/λハイブリッドのレベル(異常値は除外)を求めた(図5A図5C)。全IgG4の濃度は17.25 mg/lと1587.7 mg/lの間であり、中央値は267.44 mg/l、平均値は350.217 mg/l、標準偏差は290.587である(図5A)。非パラメトリック百分位数法(CLSI C28-A3)によって求めた95%基準範囲は28.9~1603 mg/lであり、この値は血清IgG4に関して公開されている予想範囲内である。IgG4κ/λハイブリッドのレベルは16.309 mg/lと494.3 mg/lの間であり、中央値は84.085 mg/l、平均値は108.284 mg/l、標準偏差は82.7324である(図5B)。非パラメトリック百分位数法(CLSI C28-A3)によって求めた95%基準範囲は20.3~460 mg/lである。全IgG4に対するIgG4κ/λハイブリッドの比は0.163と0.9450の間の範囲であり、中央値は0.328、平均値は0.353、標準偏差は0.127525であった(図5C)。全IgG4とIgG4κ/λハイブリッドの直線プロットに同定された異常値を含めたもの(図6A)または含めないもの(図6B)は、R2値が0.95、勾配が0.27と0.28の間であった。この勾配は、全ポリクローナルIgG4の27~28%がIgG4κ/λハイブリッド分子で構成されていることを示している。これは、ポリクローナルIgG4の精製、分画、定量によって得られた公開値とよく一致している(Young他、2014年)。この分析により、IgG4κ/λハイブリッドなしの3つのサンプルが同定された。これらは、Fabアーム交換を受けていないIgG4のK409アイソアロタイプ変異体を有する人たちに由来する可能性が大きい(Brusco他、1998年)。
【0099】
既知のIgG4関連疾患(天疱瘡/類天疱瘡と1型自己免疫膵炎(AIP))からの臨床サンプルでも、全IgG4とIgG4κ/λハイブリッドのEIAを使用した(図7)。天疱瘡/類天疱瘡の6つの患者サンプルでは、全IgG4は141.3 mg/lと429.3 mg/lの間であり、中央値は234.2 mg/l、平均値は257.9 mg/l、標準偏差は118.7であることがわかった。IgG4κ/λハイブリッドのレベルは28.35 mg/lと111.2 mg/lの間であり、中央値は57.33 mg/l、平均値は66.18 mg/l、標準偏差は30.89であることがわかった。全IgG4に対するIgG4κ/λハイブリッドの比は0.2000と0.3400の間の範囲であり、中央値は0.2500、平均値は0.2580、標準偏差は0.05119であった。全IgG4に対するIgG4κ/λハイブリッドの比は、天疱瘡/類天疱瘡サンプルでは健康な正常者と比べて有意に小さかった(P=0.0003、マン-ホイットニーU検定)。IgG4とIgG4κ/λハイブリッドのEIAを使用して9つのAIPサンプルを分析した。全IgG4は16138 mg/lと59478 mg/lの間であり、中央値は26405 mg/l、平均値は35421 mg/l、標準偏差は117514であることがわかった。IgG4κ/λハイブリッドのレベルは4100 mg/lと18711 mg/lの間であり、中央値は7929 mg/l、平均値は9996 mg/l、標準偏差は5359であることがわかった。全IgG4に対するIgG4κ/λハイブリッドの比は0.2400と0.3100の間の範囲であり、中央値は0.2800、平均値は0.2778、標準偏差は0.02635であった。全IgG4に対するIgG4κ/λハイブリッドの比は、AIPサンプルでは健康な正常者と比べてわずかに小さかった(P=0.0347、マン-ホイットニーU検定)。
【0100】
参考文献
【表1】
【表2】
図1-1】
図1-2】
図2a
図2b
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7