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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】車両骨格構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20220208BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20220208BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20220208BHJP
   B60R 19/04 20060101ALI20220208BHJP
   B60R 19/20 20060101ALI20220208BHJP
   B60R 21/02 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B62D25/08 D
B62D25/20 F
B62D21/15 Z
B60R19/04 M
B60R19/20 B
B60R21/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018013416
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2019130976
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 尚裕
(72)【発明者】
【氏名】高柳 旬一
(72)【発明者】
【氏名】宇野 巧
(72)【発明者】
【氏名】北口 和章
(72)【発明者】
【氏名】鈴森 理生
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健一郎
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-035403(JP,A)
【文献】米国特許第06334639(US,B1)
【文献】特開平11-091503(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19963068(DE,A1)
【文献】特開2014-221617(JP,A)
【文献】特表2007-531888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04,
B60R 19/00,21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と衝突体との衝突を予測する予測手段と、
閉断面構造を構成し車両幅方向又は車両前後方向に沿って延在された骨格部材における延在方向の中央部かつその内部に配設され、前記予測手段が前記衝突体との衝突を予測した場合に前記骨格部材内にガスを充填させるインフレータと、
前記骨格部材に設けられ、当該骨格部材の延在方向に沿って区画された複数の空間部のうち、前記予測手段による予測結果に基づいて前記衝突体の衝突領域側の空間部内へ前記インフレータのガスを充填させるインフレータ制御手段と、
を有する車両骨格構造。
【請求項2】
車両と衝突体との衝突を予測する予測手段と、
閉断面構造を構成し車両幅方向又は車両前後方向に沿って延在された骨格部材の内部に配設され、前記予測手段が前記衝突体との衝突を予測した場合に前記骨格部材内にガスを充填させるインフレータと、
前記骨格部材に設けられ、当該骨格部材の延在方向に沿って区画された複数の空間部のうち、前記予測手段による予測結果に基づいて前記衝突体の衝突領域側の空間部内へ前記インフレータのガスを充填させるインフレータ制御手段と、
を備え、
前記インフレータ制御手段は、
前記骨格部材内を複数の空間部に区画する複数の仕切板にそれぞれ形成され、隣接する空間部同士を連通させる開口部にそれぞれ設けられ、当該開口部をそれぞれ開閉可能とする複数の開閉バルブと、
前記開閉バルブの開閉を制御し、前記予測手段による予測結果に基づき、前記衝突体の衝突領域側に位置する前記開閉バルブを開放すると共に当該衝突体の衝突領域から離れた側に位置する前記開閉バルブを閉止するバルブ制御部と、
を含んで構成されている車両骨格構造。
【請求項3】
前記インフレータは、前記骨格部材の延在方向の中央部に設けられている請求項1又は請求項2に記載の車両骨格構造。
【請求項4】
前記複数の開閉バルブは、それぞれ前記仕切板における前記インフレータ側に取付けられている請求項2に記載の車両骨格構造。
【請求項5】
前記骨格部材は、前記車両の車両前後方向の前端部において車両幅方向に沿って延在されたバンパリインフォースメントである請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両骨格構造。
【請求項6】
前記骨格部材は、前記車両の車両幅方向の両端部において車両前後方向に沿ってそれぞれ延在されたロッカである請求項1~請求項5の何れか1項に記載の車両骨格構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の骨格構造において、ロッカ(sill;以下「骨格部材」という)の内部にエアバッグ(gas bag)及びインフレータ(gas generator)が内蔵され、車両の衝突を検知した場合、このインフレータによってエアバッグを膨張させることにより、衝突荷重に対して骨格部材の耐力を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】DE19963068A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この先行技術では、骨格部材全体にガスを送出させる必要があり、容積に応じてインフレータなどのガス供給装置は大きくなり、質量、コストの観点でさらなる改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、衝突体の衝突領域側における骨格部材の耐力を向上させると共に、質量の増加、コストの増加を抑制することができる車両骨格構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両骨格構造は、車両と衝突体との衝突を予測する予測手段と、閉断面構造を構成し車両幅方向又は車両前後方向に沿って延在された骨格部材における延在方向の中央部かつその内部に配設され、前記予測手段が前記衝突体との衝突を予測した場合に前記骨格部材内にガスを充填させるインフレータと、前記骨格部材に設けられ、当該骨格部材の延在方向に沿って区画された複数の空間部のうち、前記予測手段による予測結果に基づいて前記衝突体の衝突領域側の空間部内へ前記インフレータのガスを充填させるインフレータ制御手段と、を有している。
【0007】
請求項1に記載の車両骨格構造では、車両と衝突体との衝突を予測する予測手段が設けられている。一方、閉断面構造を構成する骨格部材は、車両幅方向又は車両前後方向に沿って延在されている。この骨格部材における延在方向の中央部かつその内部には、インフレータが配設されており、予測手段が衝突体との衝突を予測した場合に、当該インフレータによって骨格部材内にガスが充填されるようになっている。その上で、さらに、本発明では、当該骨格部材において、内部を複数の空間部によって区画し、衝突体の衝突領域(衝突が予測される部位)側の空間部内へインフレータのガスが充填されるように設定されている。
【0008】
これにより、本発明では、衝突体との衝突を予測した場合、骨格部材において、衝突体の衝突領域側の空間部内の内圧を高めて衝突体の衝突領域側を強化し、かつ衝突荷重に対する耐力を向上させることが可能となる。
【0009】
よって、本発明では、骨格部材の設計時において、衝突荷重に対して設定される軸圧縮耐力や曲げ耐力等、車両において適用される部位によって必要とされる耐力を下げることができ、その分、肉厚を薄くすることができる。その結果、骨格部材自体の軽量化を図ることができ、骨格部材自体のコストを低減させることができる。
【0010】
請求項2に記載の車両骨格構造は、車両と衝突体との衝突を予測する予測手段と、閉断面構造を構成し車両幅方向又は車両前後方向に沿って延在された骨格部材の内部に配設され、前記予測手段が前記衝突体との衝突を予測した場合に前記骨格部材内にガスを充填させるインフレータと、前記骨格部材に設けられ、当該骨格部材の延在方向に沿って区画された複数の空間部のうち、前記予測手段による予測結果に基づいて前記衝突体の衝突領域側の空間部内へ前記インフレータのガスを充填させるインフレータ制御手段と、を備え、前記インフレータ制御手段は、前記骨格部材内を複数の空間部に区画する複数の仕切板にそれぞれ形成され、隣接する空間部同士を連通させる開口部にそれぞれ設けられ、当該開口部をそれぞれ開閉可能とする複数の開閉バルブと、前記開閉バルブの開閉を制御し、前記予測手段による予測結果に基づき、前記衝突体の衝突領域側に位置する前記開閉バルブを開放すると共に当該衝突体の衝突領域から離れた側に位置する前記開閉バルブを閉止するバルブ制御部と、を含んで構成されている。
【0011】
請求項2に記載の車両骨格構造では、車両と衝突体との衝突を予測する予測手段が設けられている。一方、閉断面構造を構成する骨格部材は、車両幅方向又は車両前後方向に沿って延在されている。この骨格部材の内部には、インフレータが配設されており、予測手段が衝突体との衝突を予測した場合に、当該インフレータによって骨格部材内にガスが充填されるようになっている。その上で、さらに、本発明では、当該骨格部材において、内部を複数の空間部によって区画し、衝突体の衝突領域(衝突が予測される部位)側の空間部内へインフレータのガスが充填されるように設定されている。
これにより、本発明では、衝突体との衝突を予測した場合、骨格部材において、衝突体の衝突領域側の空間部内の内圧を高めて衝突体の衝突領域側を強化し、かつ衝突荷重に対する耐力を向上させることが可能となる。
よって、本発明では、骨格部材の設計時において、衝突荷重に対して設定される軸圧縮耐力や曲げ耐力等、車両において適用される部位によって必要とされる耐力を下げることができ、その分、肉厚を薄くすることができる。その結果、骨格部材自体の軽量化を図ることができ、骨格部材自体のコストを低減させることができる。
また、本発明では、インフレータ制御手段は、複数の開閉バルブと、バルブ制御部と、を含んで構成されている。本発明では、複数の仕切板によって、骨格部材内が複数の空間部に区画されている。当該複数の仕切板には、開口部がそれぞれ形成されており、当該開口部によって、隣接する空間部同士が連通している。
【0012】
また、開口部には、開閉バルブがそれぞれ設けられており、当該開口部をそれぞれ開閉可能としている。そして、当該開閉バルブは、バルブ制御部によって開閉が制御されており、当該バルブ制御部は、予測手段による予測結果に基づき、衝突体の衝突領域側に位置する開閉バルブが開放されると共に当該衝突体の衝突領域から離れた側に位置する開閉バルブが閉止される。
【0013】
すなわち、骨格部材において、衝突体の衝突領域側に位置する開閉バルブが開放されることにより、当該開閉バルブを通じて空間部内には、インフレータのガスが充填される。一方、当該骨格部材において、衝突体の衝突領域から離れた側に位置する開閉バルブは閉止されるため、当該開閉バルブが設けられた空間部は閉塞され、インフレータのガスは充填されない。
【0014】
つまり、本発明では、骨格部材において、衝突体の衝突領域から離れた側にはインフレータのガスは充填されないようにして、衝突荷重に対して、衝突体の衝突領域側の部位における耐力を効果的に上げるようにしている。また、骨格部材の内部に複数の仕切板を設けることにより、骨格部材自体の衝突荷重に対する耐力は向上する。
【0015】
請求項3に記載の車両骨格構造は、請求項1又は請求項2に記載の車両骨格構造において、前記インフレータは、前記骨格部材の延在方向の中央部に設けられている。
【0016】
例えば、インフレータが骨格部材の延在方向の一端部に設けられた場合、衝突体の衝突領域が骨格部材の延在方向の一端部側の場合と骨格部材の延在方向の他端部側の場合とで、衝突体の衝突領域に対してインフレータのガスが充填される際に時間差が生じてしまう。
【0017】
このため、請求項3に記載の車両骨格構造では、インフレータが骨格部材の延在方向の中央部に設けられている。これにより、衝突体の衝突領域が骨格部材の延在方向の一端部側の場合と骨格部材の延在方向の他端部側の場合とで、衝突体の衝突領域に対してインフレータのガスが充填される際に、時間的に略同じ条件で迅速かつ効率的にガスを充填させることができる。
【0018】
請求項4に記載の車両骨格構造は、請求項2に記載の車両骨格構造において、前記複数の開閉バルブは、それぞれ前記仕切板における前記インフレータ側に取付けられている。
【0019】
インフレータによって空間部内にガスが充填される際、インフレータから噴出されたガスによって仕切板は押圧される。開閉バルブは、仕切板に形成された開口部に設けられているため、例えば、当該仕切板において、インフレータとは反対側に開閉バルブが設けられた場合、仕切板の開口部を通じて空間部内へ充填されるガスにより、開閉バルブは押圧され当該開閉バルブが開口部から外れる可能性がある。
【0020】
このため、請求項4に記載の車両骨格構造では、複数の開閉バルブは、それぞれ仕切板におけるインフレータ側に取付けられている。これにより、仕切板の開口部を通じて空間部内へ充填されるガスによって開閉バルブが押圧されたとしても、当該開閉バルブは、仕切板によって移動が規制されるため、開口部からの外れが抑制される。
【0021】
請求項5に記載の車両骨格構造は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両骨格構造において、前記骨格部材は、前記車両の車両前後方向の前端部において車両幅方向に沿って延在されたバンパリインフォースメントである。
【0022】
請求項5に記載の車両骨格構造では、骨格部材は、車両の車両前後方向の前端部において車両幅方向に沿って延在されたバンパリインフォースメントであり、車両の前面衝突時に、当該バンパリインフォースメントにおいて、衝突体の衝突領域側の耐力を上げることができる。
【0023】
請求項6に記載の車両骨格構造は、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の車両骨格構造において、前記骨格部材は、前記車両の車両幅方向の両端部において車両前後方向に沿ってそれぞれ延在されたロッカである。
【0024】
請求項6に記載の車両骨格構造では、骨格部材は、車両の車両幅方向の両端部において車両前後方向に沿ってそれぞれ延在されたロッカであり、車両の側面衝突時に、当該ロッカにおいて、衝突体の衝突領域側の耐力を上げることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、請求項1に記載の車両骨格構造は、本発明は上記事実を考慮し、衝突体の衝突領域側における骨格部材の耐力を向上させると共に、質量の増加、コストの増加を抑制することができる、という優れた効果を有する。
【0026】
請求項2に記載の車両骨格構造は、骨格部材において、衝突体の衝突領域から離れた側にインフレータのガスが充填されないようにして、衝突荷重に対して、衝突体の衝突領域側における耐力を効果的に上げるようすることができる、という優れた効果を有する。
【0027】
請求項3に記載の車両骨格構造は、骨格部材における衝突体の衝突領域に対して、迅速かつ効率的にガスを充填させることができる、という優れた効果を有する。
【0028】
請求項4に記載の車両骨格構造は、インフレータから噴出されたガスにより仕切板の開口部から開閉バルブが外れないようにすることができる、という優れた効果を有する。
【0029】
請求項5に記載の車両骨格構造は、車両の前面衝突時において、バンパリインフォースメントの耐力を効果的に上げることができる、という優れた効果を有する。
【0030】
請求項6に記載の車両骨格構造は、車両の側面衝突時において、ロッカの耐力を効果的に上げることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施形態に係る車両骨格構造が適用された車両下部を概略的に示す概略平面図である。
図2図1における車両の前端部が拡大された一部拡大平面図である。
図3】本実施形態に係る車両骨格構造の構成を示すブロック図である。
図4図2において、(A)はバンパリインフォースメントの右側に衝突体が衝突する前の状態を示す平面図であり、(B)はバンパリインフォースメントの右側に衝突体が衝突したときの状態を示す平面図である。
図5図2において、(A)はバンパリインフォースメントの左側に衝突体が衝突する前の状態を示す平面図であり、(B)はバンパリインフォースメントの左側に衝突体が衝突したときの状態を示す平面図である。
図6】本実施形態に係る車両骨格構造の作用を示すブロックである。
図7図1における車両左側が拡大された一部拡大平面図である。
図8図7において、(A)はロッカの前部に衝突体が衝突する前の状態を示す平面図であり、(B)はロッカの前部に衝突体が衝突したときの状態を示す平面図である。
図9図2において、(A)はロッカの後部が衝突体が衝突する前の状態を示す平面図であり、(B)はロッカの後部に衝突体が衝突したときの状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態に係る車両下部構造について図面に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印RH及び矢印LHは、それぞれ本発明の一実施形態に係る車両床部構造が適用された車両の前方向、上方向、右方向、左方向を示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、前方向を向いた場合の左右を示すものとする。
【0033】
(車両骨格構造の構成)
まず、本実施の形態に係る車両骨格構造の構成について説明する。
【0034】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両骨格構造10が適用された車両11の車両下部12が示されている。一般に、車両11の車両前部14には、パワーユニットルーム16が設けられており、当該パワーユニットルーム16には、車両11の車両幅方向の両側部において、車両前後方向に沿って左右一対のフロントサイドメンバ18がそれぞれ延在している。
【0035】
左右一対のフロントサイドメンバ18の前端には、車両前端において車両幅方向に沿ってバンパリインフォースメント(骨格部材)20が延在されている。このバンパリインフォースメント20は、閉断面構造を有する車両骨格部材とされており、溶接や締結等により左右一対のフロントサイドメンバ18に結合されている。なお、図示はしないが、フロントサイドメンバ18の前端とバンパリインフォースメント20の間に、衝撃吸収部材として別途クラッシュボックスが介在されてもよいのは勿論のことである。
【0036】
一方、左右一対のフロントサイドメンバ18の後端は、ダッシュパネル22にそれぞれ結合されている。このダッシュパネル22は、パワーユニットルーム16と車室24とを区画しており、ダッシュパネル22の下端には、車室24の床部を構成する図示しないフロアパネルの前端が結合され、ダッシュパネル22とフロアパネルとは一体化されている。
【0037】
また、フロアパネルの車両幅方向の両側には、車両前後方向に沿って左右一対のロッカ(骨格部材)26がそれぞれ延在されており、左右一対のロッカ26は、ダッシュパネル22の車両幅方向の両端部に対して、直接的又は間接的にそれぞれ結合されている。そして、当該左右一対のロッカ26は、それぞれ閉断面構造を有する車両骨格部材とされている。
【0038】
ここで、本実施形態における骨格部材として、バンパリインフォースメント20及びロッカ26が適用可能とされる。以下の説明では、バンパリインフォースメント20とロッカ26を分けて説明する。
【0039】
(バンパリインフォースメントの構成)
まず、本実施形態におけるバンパリインフォースメント20の構成について説明する。
【0040】
本実施形態では、バンパリインフォースメント20は、例えば、アルミニウム合金等の金属によって形成されており、押出し加工や引抜き加工などによって形成された閉断面構造とされている。そして、バンパリインフォースメント20の車両幅方向(延在方向)の両端部には、溶接等によって板状の蓋部が結合されており、これにより、バンパリインフォースメント20の内部28が閉塞されている。
【0041】
なお、当該バンパリインフォースメント20が鋼板で形成されてもよいのは勿論のことである。バンパリインフォースメント20が鋼板で形成された場合、例えば、当該バンパリインフォースメント20は、図示はしないが、車両前後方向の前部を構成するフロント部と車両前後方向の後部を構成するリア部とで二分され、フロント部とリア部は、溶接等によって互いに接合される。
【0042】
また、図2に示されるように、本実施形態では、バンパリインフォースメント20の内部28には、バンパリインフォースメント20の右側から順番に仕切板30、32が設けられており、当該仕切板30、32によって、バンパリインフォースメント20内には、空間部34、36、38が設けられている。つまり、バンパリインフォースメント20の内部28は、仕切板30によって空間部34と空間部36とに区画されると共に、仕切板32によって空間部36と空間部38とに区画されている。
【0043】
そして、本実施形態では、バンパリインフォースメント20の車両幅方向に沿った仕切板30、32の位置は、空間部34、36、38の容積が略同じになるように設定されている。しかし、本発明における実施形態は、これに限るものではない。例えば、バンパリインフォースメント20の車両幅方向の中央部に設けられた空間部36の容積が、バンパリインフォースメント20の車両幅方向の両端部にそれぞれ設けられた空間部38、34の容積よりも大きくなるように設定されてもよい。なお、後述するロッカ26においてもこれと同様である。
【0044】
また、バンパリインフォースメント20の車両幅方向(延在方向)の中央部に位置する空間部36内には、インフレータ40が配設されている。インフレータ40は、図示しないガス発生部を備えており、インフレータ40が作動することで、バンパリインフォースメント20の内部28へガスが供給されるように構成されている。
【0045】
当該インフレータ40は、図3に示されるように、インフレータ制御装置41の一部を構成し、車両11に設けられたECU(Electronic Control Unit;バルブ制御部)42(後述する)と電気的に接続されており、ECU42からの信号によって、作動するようになっている。
【0046】
一方、図2に示されるように、バンパリインフォースメント20の内部28に設けられた仕切板30、32には、開口部44、46がそれぞれ形成されており、仕切板30の開口部44を通じて空間部34と空間部36とが連通可能とされ、仕切板32の開口部46を通じて空間部36と空間部38とが連通可能とされている。そして、開口部44、46には、インフレータ制御装置41の一部を構成するリリーフバルブ(開閉バルブ)48、50が設けられている。例えば、リリーフバルブ48、50は、図示はしないが、開口部44、46内に挿通可能な本体部と開口部44、46よりも大径とされる頭部とを含んで構成されており、当該頭部が仕切板30、32の空間部36側、つまりインフレータ40側にそれぞれ固定されている(取付けられている)。なお、これらのリリーフバルブ48、50は、前述したECU42(図3参照)からの信号に基づいて、開口部44、46を開閉可能としている。
【0047】
ここで、図3に示されるように、ECU42は、例えば、衝突予測センサ(予測手段)52と電気的に接続されている。この衝突予測センサ52は、図示はしないが、例えば、カメラ、レーダー(Radar)、及びライダー(LIDER:Laser Imaging Detection and Ranging)のうち少なくとも一つを含んでいる。
【0048】
カメラは、例えば、車両のフロントガラスの上部の室内側に設けられており、車両の外部状況を撮影することにより撮像情報を取得する。そして、当該カメラによって取得された撮像情報は、ECU42へ送信される。また、カメラは、ステレオカメラが用いられる。ステレオカメラの場合、両眼視差を再現するように配置された二つの撮像部を有しており、撮像情報には、奥行き方向の情報も含まれる。なお、カメラは、単眼カメラであってもよいが、この場合、衝突体との距離を検出するため、例えば、後述するレーダー等と併用される。
【0049】
一方、レーダーは、電波(例えばミリ波)を車両の周囲に送信し、障害物で反射された電波を受信することで障害物との距離を検出する。そして、当該レーダーによって検出された障害物情報は、ECU42へ送信される。また、ライダーは、光を車両の周囲に送信し、障害物で反射された光を受信することで反射点までの距離を計測し、障害物との距離を検出する。そして、当該ライダーによって検出された障害物情報は、ECU42へ送信される。
【0050】
本実施形態では、衝突予測センサ52からの障害物情報に基づいてリリーフバルブ48、50(開放又は閉止)が作動するようになっている。なお、本実施形態では、リリーフバルブ48、50の通常状態では、当該リリーフバルブ48、50は閉止された状態で設定されている。
【0051】
このため、厳密にいえば、リリーフバルブ48、50の通常状態において、リリーフバルブ48、50が作動すると、当該リリーフバルブ48、50は開放され、作動しない状態では、リリーフバルブ48、50は閉止された状態が維持されることとなる。しかし、本実施形態では、説明の便宜上、リリーフバルブ48、50の元の状態は問わないこととする。つまり、リリーフバルブ48、50が作動することによって、リリーフバルブ48、50は開放又は閉止されるとする。なお、リリーフバルブ48は通常状態において、リリーフバルブ48、50が開放された状態で設定されてもよいのは勿論のことである。
【0052】
(バンパリインフォースメントの作用及び効果)
次に、本実施形態におけるバンパリインフォースメント20の作用及び効果について説明する。
【0053】
図6に示されるように、本実施形態では、ステップ100において、衝突予測センサ52(図3参照)により車両11(図4(A)参照)の前面衝突が予測されると、この衝突予測センサ52からの障害物情報に基づき、ECU42(図3参照)では車両11の前面衝突が不可避であるか否かが判断される。
【0054】
そして、ステップ102において、車両11の前面衝突が不可避であると判断された場合、ステップ104において、ECU42によってリリーフバルブ48、50(図3参照)が作動する(後述する)。リリーフバルブ48、50の作動により、当該リリーフバルブ48、50が開放、閉止すると、ステップ106において、インフレータ40が作動し、ステップ108において、車両11が衝突体Aに衝突することとなる。
【0055】
具体的に説明すると、例えば、図4(A)に示されるように、衝突予測センサ52からの障害物情報に基づいて、バンパリインフォースメント20の右側(衝突体Aの衝突領域)が衝突体A(に対して相対的)に衝突すると予測された場合(図6におけるステップ100、102)、ECU42によって、仕切板30の開口部44に設けられたリリーフバルブ48が開放されると共に、仕切板32の開口部46に設けられたリリーフバルブ50は閉止される(図6におけるステップ104)。
【0056】
これにより、開口部44は開放されると共に開口部46は閉止され、バンパリインフォースメント20内において、当該開口部44を通じて空間部34と空間部36は連通すると共に空間部38は閉塞された空間とされる。この状態で、図4(B)に示されるように、インフレータ40が作動し、インフレータ40内のガスが噴出する(図6におけるステップ106)。
【0057】
インフレータ40は、バンパリインフォースメント20の空間部36内に配設されているため、当該インフレータ40の作動により噴出したガスは、空間部36から開口部44を通じて空間部34内へ流動する。そして、バンパリインフォースメント20内において、空間部36及び空間部34内にインフレータ40内のガスが充填された後、車両11は衝突体Aに衝突する(図6におけるステップ108)。
【0058】
すなわち、本実施形態では、車両11が衝突体Aに衝突する前に、図4(B)に示すバンパリインフォースメント20の空間部36及び空間部34内において、インフレータ40内のガスが充填されている。これにより、バンパリインフォースメント20において、衝突体Aの衝突領域側に位置する空間部34内の内圧は高まり、衝突体Aの衝突領域側は強化され衝突荷重に対する耐力が向上することとなる。
【0059】
一方、図5(A)に示されるように、衝突予測センサ52(図3参照)からの障害物情報に基づいて、バンパリインフォースメント20の左側(衝突体Aの衝突領域)が衝突体Aに衝突すると予測された場合(図6におけるステップ100、102)は、ECU42(図3参照)により、仕切板30側に設けられたリリーフバルブ48が閉止されると共に、仕切板32側に設けられたリリーフバルブ50が開放される(図6におけるステップ104)。
【0060】
これにより、バンパリインフォースメント20内において、空間部34は閉塞されると共に開口部46を通じて空間部36と空間部38は連通する。この状態で、図5(B)に示されるように、インフレータ40が作動し、インフレータ40内のガスが噴出する(図6におけるステップ106)。
【0061】
インフレータ40から噴出したガスは、空間部36から開口部46を通じて空間部38内へ流動する。そして、バンパリインフォースメント20内において、空間部36及び空間部38内にインフレータ40内のガスが充填された後、車両11が衝突体Aに衝突する(図6におけるステップ108)。
【0062】
すなわち、本実施形態では、車両11が衝突体Aに衝突する前に、図5(B)に示すバンパリインフォースメント20内では、空間部36及び空間部38内において、インフレータ40内のガスが充填されている。これにより、バンパリインフォースメント20において、衝突体Aの衝突領域側に位置する空間部38内の内圧は高まり、衝突体Aの衝突領域側は強化され衝突荷重に対する耐力が向上することとなる。
【0063】
なお、図示はしないが、衝突予測センサ52からの障害物情報に基づいて、バンパリインフォースメント20の車両幅方向の中央部(衝突体の衝突領域)が衝突体Aに衝突すると予測された場合(図6におけるステップ100、102)は、リリーフバルブ48、50が閉止され、空間部34と空間部38は閉塞される(図6におけるステップ104)。
【0064】
このため、インフレータ40のガスは、バンパリインフォースメント20内の空間部36のみに充填され(図6におけるステップ106)、当該空間部36にガスが充填された後、車両11が衝突体Aに衝突する(図6におけるステップ108)。
【0065】
すなわち、本実施形態では、車両11が衝突体Aに衝突する前に、バンパリインフォースメント20内では、空間部36内において、インフレータ40内のガスが充填されている。これにより、バンパリインフォースメント20において、衝突体Aの衝突領域側に位置する空間部36内の内圧は高まり、衝突体Aの衝突領域側は強化され衝突荷重に対する耐力が向上することとなる。
【0066】
一般に、バンパリインフォースメントでは、車両の前面衝突に対して必要とされる耐力に基づいて設計がなされる。ここで、車両の前面衝突において、車両の正面全面が衝突する対称衝突(以下、「フルラップ衝突」という)と車両の正面の片側が衝突する非対称衝突(以下、「オフセット衝突」という)とを比較した場合、バンパリインフォースメントにおいて、オフセット衝突の場合の方が、フルラップ衝突の場合よりも車両の前面衝突に対して大きい耐力を必要とする。
【0067】
そして、オフセット衝突の中でも、フロントサイドメンバよりも車両幅方向の外側での前面衝突(以下、「微小ラップ衝突」という)では、バンパリインフォースメントにおいて、さらに大きい耐力を必要とする。したがって、バンパリインフォースメントでは、この微小ラップ衝突に対して必要とされる耐力を考慮して設計がなされることとなる。
【0068】
このように、微小ラップ衝突に対して必要とされる耐力に基づいてバンパリインフォースメントが設計された場合、フルラップ衝突に対して必要とされる耐力に基づいてバンパリインフォースメントが設計された場合と比較して、バンパリインフォースメントの耐力を上げるために、例えば、肉厚が厚く設定される。このように、バンパリインフォースメントの肉厚を厚くすると、その分、バンパリインフォースメント自体の質量が大きくなってしまい、バンパリインフォースメント自体のコストも高くなってしまう。
【0069】
これに対して、本実施形態では、衝突体との衝突が予測されたときに、バンパリインフォースメントにおける衝突体の衝突領域側の耐力を上げるようにしている。
【0070】
すなわち、本実施形態では、例えば、前述した図4(B)に示されるように、衝突体Aとの衝突を予測した場合、バンパリインフォースメント20において、衝突体Aの衝突領域側の空間部34内の内圧を高めて衝突体Aの衝突領域側を強化し、車両11の前面衝突に対して耐力を向上させることが可能となる。
【0071】
よって、本実施形態では、バンパリインフォースメント20の設計時において、車両の前面衝突に対して設定される耐力を下げることができ、その分、肉厚を薄くすることができる。その結果、バンパリインフォースメント20自体の軽量化を図ることができ、バンパリインフォースメント20自体のコストを低減させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、バンパリインフォースメント20内の一部にインフレータ40のガスを充填させるようにするため、バンパリインフォースメント20内の全体に亘ってインフレータ40のガスを充填させるようにする場合と比較して、インフレータ40の小型化が可能となる。
【0073】
また、本実施形態では、図3に示されるように、バンパリインフォースメント20(図2参照)において、衝突に対する耐力を制御するインフレータ制御装置41は、ECU42と複数のリリーフバルブ48、50を備えている。さらに、本実施形態では、図2に示されるように、複数の仕切板30、32によって、バンパリインフォースメント20の内部28が複数の空間部34、36、38に区画されている。そして、当該複数の仕切板30、32には、開口部44、46がそれぞれ形成されており、当該開口部44によって、隣接する空間部34と空間部36とが連通し、開口部46によって、隣接する空間部36と空間部38とが連通している。
【0074】
また、開口部44、46には、リリーフバルブ48、50がそれぞれ設けられており、当該開口部44、46をそれぞれ開閉可能としている。そして、当該リリーフバルブ48、50は、ECU42によって開閉が制御されており、当該ECU42は、衝突予測センサ52による予測結果に基づき、例えば、図4(A)に示されるように、衝突体Aの衝突領域側に位置するリリーフバルブ48が開放されると共に当該衝突体Aの衝突領域から離れた側に位置するリリーフバルブ50が閉止される。
【0075】
すなわち、バンパリインフォースメント20において、衝突体Aの衝突領域側に位置するリリーフバルブ48が開放されることにより、当該リリーフバルブ48を通じて空間部34内には、インフレータ40のガスが充填される。一方、当該バンパリインフォースメント20において、衝突体Aの衝突領域から離れた側に位置するリリーフバルブ50は閉止されるため、当該リリーフバルブ50が設けられた空間部38は閉塞され、インフレータ40のガスは充填されない。
【0076】
つまり、本実施形態では、バンパリインフォースメント20において、衝突体Aの衝突領域から離れた側にはインフレータ40のガスは充填されないようにして、衝突荷重に対して、衝突体の衝突領域側の部位における耐力を効果的に上げるようにしている。また、本実施形態では、バンパリインフォースメント20の内部28に複数の仕切板30、32を設けることにより、バンパリインフォースメント20自体の衝突荷重に対する耐力は向上する。
【0077】
また、本実施形態では、バンパリインフォースメント20の車両幅方向(延在方向)の中央部に位置する空間部36内にインフレータ40が配設されている。例えば、図示はしないが、インフレータ40がバンパリインフォースメント20の車両幅方向の一端部に設けられた場合、衝突体Aの衝突領域がバンパリインフォースメント20の車両幅方向の一端部側の場合とバンパリインフォースメント20の車両幅方向の他端部側の場合とで、衝突体Aの衝突領域に対してインフレータ40のガスが充填される際に時間差が生じてしまう。
【0078】
このため、本実施形態では、図2に示されるように、バンパリインフォースメント20の車両幅方向の中央部に位置する空間部36内にインフレータ40が配設されることで、衝突体Aの衝突領域がバンパリインフォースメント20の車両幅方向の一端部側の場合とバンパリインフォースメント20の車両幅方向の他端部側の場合とで、衝突体Aの衝突領域に対してインフレータ40のガスが充填される際に、時間的に略同じ条件で迅速かつ効率的にガスを充填させることができる。
【0079】
ところで、図2に示されるように、インフレータ40によって空間部34内にガスが充填される際、インフレータ40から噴出されたガスによって仕切板30、32は押圧される。リリーフバルブ48、50は、仕切板30、32に形成された開口部44、46に設けられているため、例えば、当該仕切板30、32において、インフレータ40とは反対側にリリーフバルブ48、50が設けられた場合、仕切板30、32の開口部44、46を通じて、空間部34、38内へ充填されるガスによってリリーフバルブ48、50が押圧され、当該リリーフバルブ48、50が開口部44、46から外れる可能性がある。
【0080】
このため、本実施形態では、図示はしないが、リリーフバルブ48、50の頭部が仕切板30、32の空間部36側、つまりインフレータ40側にそれぞれ固定されている。したがって、例えば、仕切板30の開口部44を通じて空間部34内へ充填されるガスによってリリーフバルブ48が押圧されたとしても、当該リリーフバルブ48の頭部は仕切板30に当接しているため、当該仕切板30によってリリーフバルブ48の移動は規制される。したがって、本実施形態によれば、リリーフバルブ48は、開口部44からの外れが抑制されることとなる。なお、リリーフバルブ50においても、リリーフバルブ48と同様である。
【0081】
また、本実施形態では、バンパリインフォースメント20の内部28は閉塞されているが、インフレータ40内のガスが噴出したときに、バンパリインフォースメント20内において、内圧が高まるに十分な閉塞性が担保されていればよいため、バンパリインフォースメント20の内部28は完全な閉塞状態に限るものではない。以下で説明するロッカ26においても当該バンパリインフォースメント20と同様である。
【0082】
さらに、本実施形態では、図2に示されるように、バンパリインフォースメント20内を区画する仕切板30、32に開口部44、46をそれぞれ形成し、当該開口部44、46にリリーフバルブ48、50をそれぞれ設けて開口部44、46を開閉可能とすることで、所定の空間部内へインフレータ40内のガスが充填されるようにしている。しかし、本発明では、所定の空間部内へインフレータ40内のガスを充填することができればよいため、これに限るものではない。例えば、図示はしないが、インフレータ自体に複数のバルブが設けられ、所定のバルブの開放により、区画された所定の空間部とインフレータ内とが連通するようになっていてもよい。
【0083】
(ロッカの構成)
一方、本実施形態におけるロッカの構成について説明する。
【0084】
本実施形態におけるロッカ26もまた、当該バンパリインフォースメント20と同様の構成となっている。すなわち、当該ロッカ26もアルミニウム合金等の金属によって形成され、押出し加工や引抜き加工などによって形成された閉断面構造とされている。
【0085】
そして、ロッカ26の車両前後方向(延在方向)の両端部には、溶接等によって板状の蓋部が結合されており、これにより、ロッカ26の内部54が閉塞されている。なお、当該ロッカ26もバンパリインフォースメント20と同様に鋼板で形成されてもよいのは勿論のことである。ロッカ26が鋼板で形成された場合、例えば、当該ロッカ26は、図示はしないが、車両幅方向の外側を構成するアウタ部と車両幅方向の内側を構成するインナ部とで二分され、アウタ部とインナ部は、溶接等によって互いに接合される。
【0086】
また、本実施形態では、ロッカ26の内部54には、バンパリインフォースメント20と同様に、ロッカ26の前側から順番に仕切板56、58が設けられており、当該仕切板56、58によって、ロッカ26内には、空間部60、62、64が設けられている。
【0087】
つまり、ロッカ26の内部54は、仕切板56によって空間部60と空間部62とに区画されると共に、仕切板58によって空間部62と空間部64とに区画されている。そして、ロッカ26の車両前後方向の中央部に位置する空間部62内にインフレータ66が配設されている。
【0088】
また、当該仕切板56、58には、開口部68、70がそれぞれ形成されており、仕切板56の開口部68を通じて空間部60と空間部62とが連通可能とされ、仕切板58の開口部70を通じて空間部62と空間部64とが連通可能とされている。そして、開口部68、70には、インフレータ制御装置41の一部を構成するリリーフバルブ(開閉バルブ)72、74がそれぞれ取付けられており、リリーフバルブ72、74は、仕切板56、58のインフレータ66側にそれぞれ取付けられている。
【0089】
また、これらのリリーフバルブ72、74は、ECU42にそれぞれ電気的に接続されており、このECU42からの信号に基づいて、開口部68、70を開閉可能としている。なお、リリーフバルブ72、74の開閉動作における作用は、リリーフバルブ48、50と略同じであるため、説明を割愛する。
【0090】
(ロッカの作用及び効果)
また、本実施形態におけるロッカの作用及び効果について説明する。なお、バンパリインフォースメント20と略同じ内容については説明を割愛する。
【0091】
本実施形態では、例えば、図8(A)に示されるように、衝突予測センサ52からの障害物情報に基づいて、車両11の側面衝突が予測された場合について説明する。ここでは、衝突予測センサ52による障害物情報によりロッカ26の前側(衝突体Bの衝突領域)が衝突体B(に対して相対的)に衝突すると予測された場合、ECU42によって、仕切板56に設けられたリリーフバルブ72が開放されると共に、仕切板58に設けられたリリーフバルブ74は閉止される。
【0092】
これにより、開口部68は開放されると共に開口部70は閉止され、ロッカ26内において、当該開口部68を通じて空間部60と空間部62は連通すると共に空間部64は閉塞される。この状態で、図8(B)に示されるように、インフレータ66が作動し、インフレータ66内のガスが噴出する。
【0093】
当該インフレータ66は、ロッカ26の空間部62内に配設されているため、当該インフレータ66の作動により噴出したガスは、空間部62から開口部68を通じて空間部60内へ流動する。そして、ロッカ26内において、空間部62及び空間部60内にインフレータ66内のガスが充填された後、車両11は衝突体Bに衝突する。
【0094】
すなわち、本実施形態では、車両11が衝突体Bに衝突する前に、図8(B)に示すロッカ26の空間部62及び空間部60内において、インフレータ66内のガスが充填されている。これにより、ロッカ26において、衝突体Bの衝突領域側に位置する空間部60内の内圧は高まり、衝突体Bの衝突領域側は強化され衝突荷重に対する耐力が向上することとなる。
【0095】
一方、図9(A)に示されるように、衝突予測センサ52(図3参照)からの障害物情報に基づいて、ロッカ26の後部(衝突体Bの衝突領域)が衝突体Bに衝突すると予測された場合は、ECU42(図3参照)により、仕切板56側に設けられたリリーフバルブ72が閉止されると共に、仕切板58側に設けられたリリーフバルブ74が開放される。
【0096】
これにより、ロッカ26内において、空間部60は閉塞されると共に開口部70を通じて空間部62と空間部64は連通する。この状態で、図9(B)に示されるように、インフレータ66が作動し、インフレータ66内のガスが噴出する。
【0097】
インフレータ66から噴出したガスは、空間部62から開口部70を通じて空間部64内へ流動する。そして、ロッカ26内において、空間部62及び空間部64内にインフレータ66内のガスが充填された後、車両11が衝突体Bに衝突する。
【0098】
すなわち、本実施形態では、車両11が衝突体Bに衝突する前に、図9(B)に示すロッカ26内では、空間部62及び空間部64内において、インフレータ66内のガスが充填されている。これにより、ロッカ26において、衝突体Bの衝突領域側に位置する空間部64内の内圧は高まり、衝突体Bの衝突領域側は強化され衝突荷重に対する耐力が向上することとなる。
【0099】
なお、図示はしないが、衝突予測センサ52からの障害物情報に基づいて、ロッカ26の車両前後方向の中央部(衝突体の衝突領域)が衝突体Bに衝突すると予測された場合は、リリーフバルブ72、74が閉止され、空間部60と空間部64は閉塞される。このため、インフレータ66のガスは、ロッカ26内の空間部62のみに充填され、当該空間部62内にガスが充填された後、車両11が衝突体Bに衝突する。
【0100】
以上のように、本実施形態では、バンパリインフォースメント20同様、車両11が衝突体Bに衝突する前に、ロッカ26内では、空間部62内において、インフレータ66内のガスが充填されている。これにより、ロッカ26において、衝突体Bの衝突領域側に位置する空間部60内の内圧は高まり、衝突体Bの衝突領域側は強化され衝突荷重に対する耐力が向上することとなる。
【0101】
よって、本実施形態では、ロッカ26の設計時において、車両の側面衝突に対して設定される耐力を下げることができ、その分、肉厚を薄くすることができる。その結果、ロッカ26自体の軽量化を図ることができ、ロッカ26自体のコストを低減させることができる。
【0102】
また、本実施形態では、バンパリインフォースメント20同様、ロッカ26内の全体に亘ってインフレータ66のガスを充填させるようにする場合と比較して、インフレータ66の小型化が可能となる。
【0103】
さらに、本実施形態では、バンパリインフォースメント20同様、衝突体Bの衝突領域から離れた側にはインフレータ66のガスは充填されないようにして、衝突荷重に対して、衝突体Bの衝突領域側の部位における耐力を効果的に上げるようにしている。また、本実施形態では、ロッカ26の内部54に複数の仕切板56、58を設けることにより、ロッカ26自体の衝突荷重に対する耐力は向上する。
【0104】
また、本実施形態では、ロッカ26の車両前後方向(延在方向)の中央部に位置する空間部36内にインフレータ40が配設されることで、衝突体Aの衝突領域がロッカ26の前部側の場合とロッカ26の後部側の場合とで、衝突体Bの衝突領域に対してインフレータ66のガスが充填される際に、時間的に略同じ条件で迅速かつ効率的にガスを充填させることができる。
【0105】
なお、本実施形態では、本発明における骨格部材として、バンパリインフォースメント20及びロッカ26を適用させて説明したが、これに限るものではなく、バンパリインフォースメント20及びロッカ26のうち、何れか一方のみを適用させてもよい。
【0106】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0107】
10 車両骨格構造
11 車両
12 車両下部(車両)
14 車両前部(車両)
20 バンパリインフォースメント(骨格部材)
26 ロッカ(骨格部材)
30 仕切板
32 仕切板
34 空間部
36 空間部
38 空間部
40 インフレータ
41 インフレータ制御装置(インフレータ制御手段)
42 ECU (バルブ制御部、インフレータ制御手段)
44 開口部
46 開口部
48 リリーフバルブ(開閉バルブ、インフレータ制御手段)
50 リリーフバルブ(開閉バルブ、インフレータ制御手段)
52 衝突予測センサ(予測手段)
56 仕切板
58 仕切板
60 空間部
62 空間部
64 空間部
66 インフレータ
68 開口部
70 開口部
72 リリーフバルブ(開閉バルブ、インフレータ制御手段)
74 リリーフバルブ(開閉バルブ、インフレータ制御手段)
A 衝突体
B 衝突体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9