(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】撮像レンズ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20220208BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
G02B13/04 D
G02B13/18
(21)【出願番号】P 2018014388
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【氏名又は名称】吉村 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(74)【代理人】
【識別番号】100169247
【氏名又は名称】小野 佳世
(72)【発明者】
【氏名】中井 正剛
(72)【発明者】
【氏名】帯金 靖彦
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-277740(JP,A)
【文献】特開2011-059494(JP,A)
【文献】特開平07-063991(JP,A)
【文献】特開平03-282408(JP,A)
【文献】特開平03-288113(JP,A)
【文献】特開2004-205796(JP,A)
【文献】特開昭64-057221(JP,A)
【文献】特開昭62-211611(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107436479(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側より順に配置された、負の屈折力を有する第1レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、物体側面が凸面の正の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズと、負の屈折力を有する第6レンズと、正の屈折力を有する第7レンズとから構成され
、
前記第4レンズ、前記第5レンズ及び前記第7レンズのうち、二以上のレンズが以下の条件を満足する硝材からなることを特徴とする撮像レンズ。
-15 < dndt_p/dndt6 < 0 ・・・(3)
但し、
dndt_p:硝材のd線に対する相対屈折率の温度係数
dndt6 :前記第6レンズの硝材のd線に対する相対屈折率の温度係数
【請求項2】
以下の条件式を満足する請求項1に記載の撮像レンズ。
0 < f1/f2 < 1.0 ・・・(1)
但し、
f1:前記第1レンズの焦点距離
f2:前記第2レンズの焦点距離
【請求項3】
以下の条件式を満足する請求項1又は請求項2に記載の撮像レンズ。
0 < -f12/f4567 < 1.0 ・・・(2)
但し、
f12:前記第1レンズ及び前記第2レンズの合成焦点距離
f4567:前記第4レンズ、前記第5レンズ、前記第6レンズ及び前記第7レンズの合成焦点距離
【請求項4】
前記第5レンズと前記第6レンズとは接合されている請求項1から
請求項3のいずれか一項に記載の撮像レンズ。
【請求項5】
以下の条件式を満足する請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載の撮像レンズ。
f0 / (4×YS1) ≦ 1.0 ・・・(4)
但し、
f0 :当該撮像レンズ全系の焦点距離
YS1:前記第1レンズの物体側面における軸上光線の上線最大光線高さ
【請求項6】
前記第4レンズから前記第7レンズのうち、少なくとも一以上のレンズは、光軸に対して垂直方向に位置を変更可能に支持される請求項1から
請求項5のいずれか一項に記載の撮像レンズ。
【請求項7】
前記第4レンズから前記第7レンズのうち、少なくとも一以上のレンズは、光軸方向に位置を変更可能にレンズ支持部に支持される請求項1から
請求項6のいずれか一項に記載の撮像レンズ。
【請求項8】
以下の条件式を満足する請求項1から
請求項7のいずれか一項に記載の撮像レンズ。
0.1 < {(Yim/tan(θim))/f0}
2 < 0.4 ・・・(5)
但し、
Yim:有効像円の像高
θim:有効像円の入射半画角
f0 :当該撮像レンズ全系の焦点距離
【請求項9】
請求項1から
請求項8のいずれか一項に記載の撮像レンズと、当該撮像レンズが形成する光学像を受光して電気的画像信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、撮像レンズ及び撮像装置に関し、特に、センシングカメラに好適な撮像レンズ及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を用いた撮像装置が普及している。近年においては、撮像素子の高画素化が進み、小型軽量で暗い環境下(低照度条件下)においても被写体像を解像度よく取得することのできる撮像レンズが求められている。
【0003】
また、近年では、一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ、デジタルスチルカメラ等のユーザによって携帯可能な撮像装置の他、車載用撮像装置、監視用撮像装置、防犯用撮像装置等の特定の目的の下で使用される撮像装置の普及も進んでいる。さらに、近年では、車載用撮像装置をセンシングカメラとして用い、車載用撮像装置で取得した画像を解析することにより種々の運転支援を行うことが行われている。今後の自動運転システムへの実現に向けて、センシングカメラとしての車載用撮像装置の重要性が増している。
【0004】
車載用撮像装置等に適用可能な撮像レンズとして、最も物体側に負レンズを配置した比較的画角の広い撮像レンズが種々提案されている。例えば、特許文献1には、物体側から順に負レンズ、正レンズ、正レンズ、負レンズ及び正レンズから構成された撮像レンズが提案されている。また、特許文献2には、物体側から順に配置された負レンズ、メニスカス形状のレンズ、正レンズ、負レンズ、正レンズ及び非球面を有するレンズから構成された撮像レンズが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-107532号公報
【文献】特開2016-188895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示の撮像レンズでは、最も物体側に配置されたレンズの外径の小型化が十分ではない。一方、特許文献2に開示の撮像レンズは、最も物体側に配置されたレンズの外径が小さく、車載用撮像装置の撮像レンズに好ましく適用することができる。また、当該特許文献2に開示の撮像レンズは、特許文献1に開示の撮像レンズと比較すると、広角化が図られているため、撮像可能な範囲の広い車載用撮像装置を実現することができる。このような画角の広い撮像レンズを適用すれば、車両の周囲に存在する障害物の検出や、信号機及び道路交通標識等の認識などを広範囲に行うことができる。
【0007】
ところで、自動運転システムの実現においては、例えば、高速道路走行中の先行車などの遠方の物体を精度よく検出することが求められる。上記特許文献2に開示の撮像レンズでは車両周囲に存在する物体(障害物、信号機、道路交通標識等)を広い範囲で検出することが可能であるものの、遠方の物体を検出することは困難である。そのため、特許文献2に記載の撮像レンズをセンシングカメラに適用した場合、遠方の物体の検出はミリ波レーダー装置などの他のセンシングデバイスを併用する必要がある。
【0008】
そこで、本件発明の課題は、全体を小型に構成しつつ、遠方の物体を高解像度で結像することができる画角の広い撮像レンズ及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本件発明に係る撮像レンズは、物体側より順に配置された、負の屈折力を有する第1レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、物体側面が凸面の正の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズと、負の屈折力を有する第6レンズと、正の屈折力を有する第7レンズとから構成されることを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本件発明に係る撮像装置は、上記記載の撮像レンズと、当該撮像レンズが形成する光学像を受光して電気的画像信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、全体を小型に構成しつつ、遠方の物体を高解像度で結像することができる画角の広い撮像レンズ及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本件発明の実施例1の撮像レンズのレンズ構成例を示す断面図である。
【
図2】実施例1の撮像レンズの無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図3】本件発明の実施例2の撮像レンズのレンズ構成例を示す断面図である。
【
図4】実施例2の撮像レンズの無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図5】本件発明の実施例3の撮像レンズのレンズ構成例を示す断面図である。
【
図6】実施例3の撮像レンズの無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図7】本件発明の実施例4の撮像レンズのレンズ構成例を示す断面図である。
【
図8】実施例4の撮像レンズの無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本件発明に係る撮像レンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。
【0014】
1.撮像レンズ
1-1.撮像レンズの光学構成
まず、本件発明に係る撮像レンズの実施の形態を説明する。本実施の形態の撮像レンズは、負の屈折力を有する第1レンズと、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、物体側面が凸面の正の屈折力を有する第4レンズと、正の屈折力を有する第5レンズと、負の屈折力を有する第6レンズと、正の屈折力を有する第7レンズとから構成される。当該撮像レンズでは、第1レンズに負の屈折力を配置し、第2レンズを物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズとすることで、物体側に強い負の屈折力を配置することが容易になり、負の歪曲を発生させやすくすることができる。そして、第3レンズと第4レンズに正の屈折力を配置することで、第1レンズ及び第2レンズにおいて発散した光束を第3レンズ及び第4レンズにより緩やかに収束させることができる。そのため、Fナンバーの明るい大口径のレンズでも偏芯敏感度を低減することができる。なお、Fナンバーの値が小さいほど、明るい大口径のレンズになる。さらに、第5レンズに正の屈折力を配置し、第6レンズに負の屈折力を配置することで、各レンズで発生する諸収差を良好に補正することが可能になる。そして、最も像側に配置される第7レンズに正の屈折力を配置することで、第6レンズにおいて発散した光束を第7レンズにより収束して像面湾曲を良好に補正することができる。
【0015】
ここで、当該撮像レンズは、遠方の物体を高解像度で結像することができ、これと同時に広画角化を図ることを目的とする。遠方の物体を高解像度で結像可能とするには、焦点距離の長い撮像レンズを用いる必要がある。焦点距離の長い撮像レンズは、焦点距離の短い撮像レンズと比較すると角度分解能が高いためである。しかしながら、焦点距離の長い撮像レンズは、焦点距離の短い撮像レンズと比較すると画角が狭い。そこで本件発明では、通常の撮像レンズと比較した場合に、上記構成を採用することにより、全体を小型に構成しつつ、負の歪曲を大きく発生させるものとした。そのため、本件発明によれば、光軸近傍においては高い角度分解能を維持しつつ、焦点距離に比して広い画角を得ることができ、且つ、光学性能の高い撮像レンズを実現可能とした。なお、「撮像画角1度当たりのイメージセンサ(撮像素子)上の画素数」を「角度分解能」と定義するものとする。また、光軸近傍とは、当該撮像レンズの結像範囲のうち、中心(光軸)から半画角10°程度の範囲内をいうものとする。
【0016】
上記のように、当該撮像レンズは近軸付近における角度分解能が高く、且つ、画角が広い。そのため、当該撮像レンズをセンシングカメラの撮像光学系に適用し、車両の進行方向前方をセンシングすれば、高速道路走行中の先行車などの遠方の物体を精度よく検出することが可能になる。これと同時に、車両の周囲に存在する障害物や、信号機や道路交通標識などを広い範囲で検出し、又は認識することが可能になる。なお、遠方の物体とは、例えば、100m~200m程度前方の物体を意味し、広い範囲とは半画角45°~65°程度の範囲を意味するが、撮像対象物の位置などに応じて、これらの範囲は適宜調整することができる。
【0017】
以下、各レンズについて説明する。
【0018】
(1)第1レンズ
第1レンズは負の屈折力を有する限り、凹レンズ、両凹レンズ、メニスカスレンズ等、その形状等は特に限定されるものではない。第1レンズに強い負の屈折力を配置しつつ、像面湾曲、球面収差、軸上コマ収差などの諸収差の発生を抑制し、光学性能の高い撮像レンズを得る上で像側面は凹面であることが好ましい。また、第1レンズの物体側面は負の歪曲を大きく発生させる上で凹面であることが好ましい。但し、第1レンズの像側面が凹面である場合、第1レンズの物体側面は凸面であってもよい。すなわち、第1レンズは物体側凸形状の負のメニスカスレンズであってもよい。
【0019】
(2)第2レンズ
第2レンズは負の屈折力を有し、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズである。第2レンズについても負の屈折力を配置することで当該撮像レンズの物体側に強い負の屈折力を配置し、負の歪曲を大きく発生させることで周辺画角を効果的に広くとることができる。
【0020】
(3)第3レンズ
第3レンズは正の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ形状は特に限定されるものではない。例えば、球面収差の発生を抑制しつつ、使用雰囲気温度の変化に伴う焦点位置の変動や画角の変動を抑制するという観点から、第3レンズは両凸レンズであることが好ましい。
【0021】
(4)第4レンズ
第4レンズは正の屈折力を有し、物体側面が凸面のレンズである。第4レンズの物体側面を凸面とすることにより、球面収差や軸上コマ収差などを良好に補正することができ、光学性能の高い撮像レンズを得ることができる。像側面は平面、凹面、凸面のいずれの形状であってもよいが、球面収差や軸上コマ収差をより良好に補正しつつ、雰囲気温度の変化に伴う焦点位置の変動や画角の変動を抑制するという観点から、第4レンズの像側面は凸面であることが好ましい。
【0022】
(5)第5レンズ及び第6レンズ
第5レンズは正の屈折力を有するレンズである限り、その具体的なレンズ形状は特に限定されるものではない。第6レンズについても、当該第6レンズが負の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ形状は特に限定されるものではない。これらの正負2枚のレンズにより、中心から周辺の色収差を良好に補正することができ、遠方の物体を高解像度で結像することができる。
【0023】
また、第5レンズ及び第6レンズは接合されていることが好ましい。第5レンズ及び第6レンズを接合レンズとすることで、当該撮像レンズを製造するときのレンズの組み付け作業が容易になり、偏芯敏感度を低くすることができる。また、偏芯敏感度を低くすることができるため、レンズの組み付け作業時に他のレンズと光軸がずれることによって生じる、すなわち相対偏芯により生じる光学性能の低下を抑制することができる。
【0024】
なお、第5レンズ及び第6レンズが接合レンズとして構成される場合、諸収差の補正を良好に行う上で、第5レンズ及び第6レンズの合成焦点距離は負であることが好ましい。
【0025】
(6)第7レンズ
第7レンズは正の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ形状は特に限定されるものではない。当該撮像レンズの最も像側に正の屈折力を有する第7レンズを配置することで、片ボケを良好に補正することができる。なお、片ボケとは画像の周辺のうち、特定の方向だけ他方向と比べると解像度が低下することをいう。
【0026】
(7)レンズ硝材
本件発明に係る撮像レンズを構成する第1レンズから第7レンズはいずれもガラスレンズであることが好ましい。ガラスレンズはプラスチックと比較すると、熱的安定性が高く、温度変動に伴う膨張・収縮が小さい。そのため、全てのレンズをガラスレンズとすることで、使用雰囲気温度が変化しても焦点位置の変動や画角の変動を良好に抑制することができる。
【0027】
(8)絞り
本件発明に係る撮像レンズにおいて、絞り(開口絞り)の配置場所は、特に限定されるものではない。しかしながら、絞りの位置が撮像レンズの像面に近くなる程、像面に対する結像光の入射角度が大きくなる。結像光の入射角度が大きくなると、製造バラツキが生じやすくなったり、焦点位置の変動や画角の変動が生じやすくなる。そのため、所望の画角を達成することが困難になり、要求される撮像範囲を撮像することが困難になる。当該観点から、絞りは、第4レンズよりも物体側に配置されることが好ましい。
【0028】
1-2.各レンズの支持機構
(1)光軸に対して垂直方向
当該撮像レンズを構成する上記第1レンズから第7レンズはレンズ枠(レンズ支持部)を介して鏡筒に固定される。レンズ枠には各レンズを保持する保持部が設けられる。保持部は、各レンズが略同軸(同軸の場合を含む)に配置され、且つ、各レンズ間の間隔が所定の間隔になるように位置決めされてレンズ枠に固定されている。なお、各保持部にはレンズを挿入するための溝部が設けられており、溝部にレンズの外周部(コバ部)を挿入することで、各レンズが略同軸に位置決めされる。各レンズを溝部に挿入する際の挿入深さなどは微調整が可能である。例えば、物体側から順に各レンズを保持部に保持させる際に、軸合わせのために各レンズの挿入深さを調整した後に接着剤などにより保持部に各レンズを固定することができる。
【0029】
ここで、レンズ枠は、全てのレンズ保持部を一体に備えた一つの部品(ユニット)として構成されていてもよいが、例えば、複数のレンズ枠ユニットから構成されることも好ましい。レンズ枠を複数のレンズ枠ユニットから構成することにより、軸合わせや光軸上のレンズ間の間隔などをより精度よく調整することが可能になる。
【0030】
例えば、レンズ枠を、第1のレンズ枠と、この第1のレンズ枠に対して光軸に垂直方向に位置を変更可能に連結された第2のレンズ枠とを備える構成としてもよい。この際、第2のレンズ枠には、第4レンズから第7レンズのうち少なくとも一以上のレンズを保持する保持部を設け、第1のレンズ枠には残りのレンズを保持するための保持部を設ける。第2のレンズ枠には、他のレンズと比較して偏芯敏感度の高いレンズを保持固定することが好ましい。
【0031】
そのように構成することで、各レンズ枠にレンズを調芯し固定した後、第1のレンズ枠に対して、第2のレンズ枠を光軸に対して垂直方向に位置を調整して、再度、調芯作業を行うことができる。その結果、レンズの組み立て作業時に偏芯に伴う軸上コマ収差、球面収差、片ボケなどの調整などを行うことができ、レンズの組み立て作業に伴う光学性能の劣化を防止することができる。なお、第1のレンズ枠に対して第2のレンズ枠の位置を調整した後は、第1のレンズ枠に対して第2のレンズ枠を接着剤などで固定し、第1のレンズ枠に対して第2のレンズ枠の位置が変動しないようにすることが好ましい。
【0032】
当該撮像レンズにおいて、例えば、第5レンズ及び第6レンズは、他のレンズと比較すると偏芯敏感度が高い。そのため、第5レンズ及び第6レンズを第2のレンズ枠に保持させることで、第1のレンズ枠に対して、第2のレンズ枠の位置を光軸に垂直方向に変更して位置決めすることで精度よく、且つ、簡易に調芯作業を行うことができる。
【0033】
また、当該撮像レンズの他の好ましい態様として、レンズ枠を上記のとおり第1のレンズ枠と、当該第1のレンズ枠に対して光軸に垂直方向に位置を変更可能に連結された第2のレンズ枠とを備える構成とし、当該撮像レンズに振動が加わったときに第2のレンズ枠をアクチュエータなどにより光軸に対して垂直方向に移動させることで、像ブレを補正するための防振群として用いてもよい。
【0034】
(2)光軸方向
さらに、当該撮像レンズにおいて、レンズ枠を、第1のレンズ枠と、この第1のレンズ枠に対して光軸方向に位置を変更可能に連結された第3のレンズ枠とを備える構成としてもよい。この際、第3のレンズ枠には、第4レンズから第7レンズのうち少なくとも一以上のレンズを保持する保持部を設け、第1のレンズ枠には残りのレンズを保持するための保持部を設けることができる。
【0035】
当該撮像レンズが上述した第2のレンズ枠を備える場合、上記第2のレンズ枠と第3のレンズ枠は同じレンズ枠として構成されていてもよいし、異なるレンズ枠として構成されていてもよい。第2のレンズ枠と第3のレンズ枠とが同じレンズ枠として構成されている場合、当該レンズ枠は第1のレンズ枠に対して光軸に垂直方向に位置を変更可能に連結されると共に、光軸方向に対して位置を変更可能に連結される。
【0036】
また、第2のレンズ枠と第3のレンズ枠とが異なるレンズ枠として構成される場合、第3のレンズ枠には第4レンズから第7レンズのうち、第2のレンズ枠に保持固定されたレンズ以外のレンズを保持固定することができる。
【0037】
いずれの場合であっても、第1のレンズ枠に対して第3のレンズ枠を光軸方向に位置を変更可能に連結することにより、各レンズ枠にレンズを調芯固定した後に、第1のレンズ枠に保持固定されたレンズと、第3のレンズ枠に保持固定されたレンズとの間隔を調整することができる。
【0038】
なお、第1のレンズ枠に対して第3のレンズ枠の位置を調整した後は、第1のレンズ枠に対して第3のレンズ枠を接着剤などで固定し、第1のレンズ枠に対して第3のレンズ枠の位置が変動しないようにすることが好ましい。
【0039】
1-3.条件式
当該撮像レンズでは、次に説明する条件式を少なくとも1つ以上満足することが好ましい。
【0040】
1-3-1.条件式(1)
0 < f1/f2 < 1.0 ・・・(1)
但し、
f1:第1レンズの焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
【0041】
条件式(1)は、第2レンズの焦点距離に対する第1レンズの焦点距離の比を規定した式である。当該撮像レンズにおいて、第1レンズ及び第2レンズは共に負の屈折力を有する。上記条件式(1)を満足する場合、第1レンズには強い負の屈折力が配置され、大きな負の歪曲を発生させることができる。そのため、近軸付近における角度分解能を高く維持しつつ、広い画角を得ることができる。従って、当該撮像レンズをセンシングカメラの撮像光学系に適用し、車両の進行方向前方をセンシングすれば、高速道路走行中の先行車などの遠方の物体を精度よく検出することができ、且つ、車両の周囲に存在する障害物や、信号機や道路交通標識などを広い範囲で検出することができる。
【0042】
これに対して、条件式(1)の数値が上限値以上になると、第1レンズの屈折力が第2レンズの屈折力以下になる。この場合、発生する歪曲量が小さくなる。そのため、焦点距離に比して画角の広い撮像レンズを得ることが困難になるため好ましくない。なお、第1レンズ及び第2レンズは負の屈折力を有するため、条件式(1)の数値が0以下になることはない。なお、条件式(1)の数値が0以下であるとき、第1レンズ又は第2レンズのいずれかが正の屈折力を有するレンズとなる。この場合、正の歪曲が発生し、画角が狭くなる。そのため、広い画角を実現するには、物体側のレンズの外径を大きくする必要があり、当該撮像レンズの小型化を図ることが困難になる。
【0043】
上記効果を得る上で、条件式(1)の上限値は0.8であることがより好ましく、0.6であることがさらに好ましく、0.5であることが一層好ましく、0.4であることがより一層好ましい。また、条件式(1)の下限値は0.1であることが好ましい。
【0044】
1-3-2.条件式(2)
当該撮像レンズは、以下の条件式(2)を満足することが好ましい。
0 < -f12/f4567 < 1.0 ・・・(2)
但し、
f12:第1レンズ及び第2レンズの合成焦点距離
f4567:第4レンズ、第5レンズ、第6レンズ及び第7レンズの合成焦点距離
【0045】
条件式(2)は、第4レンズ~第7レンズの合成焦点距離に対する第1レンズ及び第2レンズの合成焦点距離の比を規定する式である。条件式(2)を満足する場合、遠方の物体を高い解像度で撮像可能な焦点距離を維持しつつ、通常の撮像レンズよりも大きな負の歪曲を発生させる上で好適な屈折力配置とすることができる。また、諸収差の発生を抑制して、結像性能の高い撮像レンズを得ることが容易になる。
【0046】
これに対して、条件式(2)の数値が上限値以上になると当該撮像レンズの物体側に配置される負の屈折力が小さくなるため、歪曲量が不足し、当該撮像レンズの広画角化を図ることが困難になる。
【0047】
上記効果を得る上で、条件式(2)の上限値は、0.9であることがより好ましく、0.8であることがさらに好ましい。また、条件式(2)の下限値は、0.2であることがより好ましく、0.4であることがさらに好ましい。
【0048】
1-3-3.条件式(3)
当該撮像レンズにおいて、第4レンズ、第5レンズ及び第7レンズのうち、少なくともいずれか一のレンズは、以下の条件を満足する硝材からなることが好ましい。
-15 < dndt_p/dndt6 < 0 ・・・(3)
但し、
dndt_p:硝材のd線に対する相対屈折率の温度係数
dndt6 :第6レンズの硝材のd線に対する相対屈折率の温度係数
【0049】
当該撮像レンズでは、第1レンズ及び第2レンズにより光束を発散させる。そのため、当該撮像レンズにおいて像側に配置される正の屈折力を有する第4レンズ、第5レンズ及び第7レンズが雰囲気温度の変化に伴い屈折率が変化すると、焦点位置の変動や画角の変動が生じやすくなる。そのため、当該撮像レンズにおいて像側に配置される正の屈折力を有する第4レンズ、第5レンズ及び第7レンズのうち、少なくともいずれか一のレンズが上記条件式(3)を満足することで、使用雰囲気温度が変化したときも焦点位置の変動や画角の変動を抑制することができ、温度特性の良好な撮像レンズを実現することができる。
【0050】
ここで、温度特性のより良好な撮像レンズを実現する上で、第4レンズ、第5レンズ及び第7レンズのうち、二以上のレンズが条件式(3)を満足する硝材からなることがより好ましく、第4レンズ、第5レンズ及び第7レンズの全てのレンズが条件式(3)を満足する硝材からなることがより好ましい。なお、温度特性が良好であるとは、雰囲気温度が変化したときの焦点位置の変動や画角の変動が小さいことを意味する。
【0051】
上記効果を得る上で、条件式(3)の上限値は、-1であることがより好ましく、-1.5であることがさらに好ましく、-2.0であることが一層好ましく、-2.5であることがより一層好ましい。また、条件式(3)の下限値は、-10であることがより好ましく、-8であることがさらに好ましく、-6であることが一層好ましく、-4であることがより一層好ましく、-3であることがさらに一層好ましい。
【0052】
1-3-4.条件式(4)
当該撮像レンズは、以下の条件式を満足することも好ましい。
f0/(4×YS1) ≦ 1.0 ・・・(4)
但し、
f0 :当該撮像レンズ全系の焦点距離
YS1:第1レンズの物体側面における軸上光線の最大上線光線高さ
【0053】
上記条件式を満足する場合、F値が2.0以下の明るい大口径の撮像レンズとなる。そのため、夜間などの暗い環境下においても鮮明な被写体像を取得することができる。従って、当該撮像レンズをセンシングカメラの撮像光学系に適用した場合、昼夜問わず、良好な遠距離センシング及び近距離センシングを実現することができる。
【0054】
上記条件式の上限値が小さいほど、F値が小さく明るい撮像レンズを実現することができる。従って、上記条件式の上限値は、0.95であることがより好ましく、0.90であることがさらに好ましく、0.85であることが一層好ましい。なお、当該撮像レンズ全系の焦点距離は0より大であるため、下限値が0より大であることは自明である。
【0055】
1-3-5.条件式(5)
当該撮像レンズは、以下の条件式を満足することも好ましい。
0.1 < {(Yim/tan(θim))/f0}2 < 0.4 ・・・(5)
但し、
Yim:有効像円の像高
θim:有効像円の入射半画角
f0 :当該撮像レンズ全系の焦点距離
【0056】
ここで、有効像円は像面に結像できる範囲(撮影可能な最大範囲)を表すイメージサークルの有効径を意味する。条件式(5)を満足させることにより、中心から周辺に向かうにつれて軸外光線の像面に対する入射角が小さくなるため、光軸近傍においては高い角度分解能を維持しつつ、当該撮像レンズの焦点距離に比して広い画角を達成することができる。
【0057】
これに対して、条件式(5)の数値が上限値以上になると、歪曲量が不足し、広画角化を実現することが困難になる。一方、条件式(5)の数値が下限値以下になると、歪曲量が大きくなりすぎて、画像の周辺が圧縮されてしまう。すなわち、画像の周辺の解像度が低下する。そのため、センシング等の際に画像の周辺に写り込んだ被写体を認識することが困難になるため、好ましくない。
【0058】
上記効果を得る上で、条件式(5)の上限値は、0.35であることがより好ましく、0.30であることがさらに好ましい。また、条件式(5)の下限値は、0.15であることがより好ましい。
【0059】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係る撮像レンズと、当該撮像レンズが形成する光学像を受光して電気的画像信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とする。
【0060】
ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCDセンサ(Charge Coupled Device)やCMOSセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよいし、一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラ等のレンズ交換式の撮像装置であってもよいのは勿論である。
【0061】
本件発明に係る撮像装置は、鑑賞目的で被写体を撮像するために用いられる一般の撮像装置の他、車載用撮像装置等のように、車体あるいは建造物等に据付固定され、監視、或いはセンシング等の特定の目的の下で使用される据付固定型の撮像装置に用いることができる。本件発明に係る撮像レンズは、通常の撮像レンズよりも大きな負の歪曲を発生させることにより、全体を小型に構成しつつ、遠方の物体を高解像度で撮像することができ、焦点距離に比して広い画角を実現している。そのため、撮像装置の存在を車体等の外側から目立ちにくくすることができる。そして、1台の撮像装置で遠方に位置する物体を撮像することができ、且つ、周囲を広い範囲で撮像することができる。そのため、3車線、5車線などの広い道路を高速走行中においても、当該撮像装置を用いて前方センシングを行えば、前方の先行車両を精度よく検出することができるとともに、車線変更等を行う際の左右確認を同時に行うことができる。このように当該撮像装置は車載用撮像装置等の各種移動体(陸上移動体、空中移動体、海上移動体)に搭載され、各移動体の進行方向前方及び周囲の物体を検出或いは認識するために用いられるセンシングカメラに好適である。なお、上記移動体には自動車、飛行機、船舶等の乗り物の他、無人航空機(ドローン等)或いは無人探査機等、さらには、自立二足歩行型ロボット等の自立移動機能を備えたロボット(掃除ロボット等含む)の各種移動体を含むものとする。
【0062】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下に挙げる各実施例の撮像レンズは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、銀塩フィルムカメラ等の撮像装置(光学装置)に用いられる撮像撮像レンズであり、特に、車載用撮像装置等に好ましく適用することができ、各種移動体に搭載されるセンシングカメラに好ましく適用することができる。また、各レンズ断面図において、図面に向かって左方が物体側、右方が像側である。
【実施例1】
【0063】
(1)撮像レンズの構成
図1は、本件発明に係る実施例1の撮像レンズの構成を示すレンズ断面図である。当該撮像レンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する両凹形状の第1レンズG1と、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負の屈折力を有する第2レンズG2と、正の屈折力を有する両凸形状の第3レンズG3と、正の屈折力を有する両凸形状の第4レンズG4と、正の屈折力を有する両凸形状の第5レンズG5及び負の屈折力を有する両凹形状の第6レンズG6が接合された接合レンズと、正の屈折力を有する両凸形状の第7レンズG7とから構成される。後掲する表1に示すとおり、第3レンズG3の両面、第4レンズG4の両面、第7レンズG7の両面はそれぞれ非球面である。当該撮像レンズは焦点距離が固定の固定焦点レンズである。
【0064】
なお、図中、「IP」は像面を示す。当該像面は、上述した、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子の撮像面である。当該撮像レンズの物体側から入射した光は、像面に結像する。固体撮像素子は受光した光学像を電気的画像信号に変換する。撮像装置等が備える画像処理部(画像処理プロセッサ等)により、撮像素子から出力された電気的画像信号に基づき、被写体の像に対応したデジタル画像が生成される。当該デジタル画像は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やメモリカード、光ディスク、磁気テープなどの各種記録媒体に記録することが可能である。なお、当該撮像装置を車両に搭載し、センシング目的で用いる場合当該デジタル画像は上記記録媒体に記録せずとも、RAM等に一時的に記録された上記デジタル画像に基づき先行車両の認識や先行車両との距離、車両の周囲に存在する障害物や、信号機や道路交通標識等の認識の有無等の認識がリアルタイムで行われる。
【0065】
また、像面IPの物体側に示す「G」は光学ブロックである。当該光学ブロックGは、光学フィルタや、フェースプレート、水晶ローパスフィルタ、赤外カットフィルタ等に相当する。これらの符号(IP、G)は、他の実施例で示す各図においても同様のものを示すため、以下では説明を省略する。
【0066】
(2)数値実施例
実施例1で採用した撮像レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表1に当該撮像レンズのレンズデータを示す。表1において、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の番号、「r」はレンズ面の曲率半径(但し、rの値がINFである面は、その面が平面であることを示す。)、「d」は物体側からi番目(iは自然数)のレンズ面と、i+1番目のレンズ面とのレンズ面の光軸上の間隔、「nd」はd線(波長λ=587.56nm)に対する屈折率、「νd」はd線に対するアッベ数を示している。但し、レンズ面が非球面である場合、表中の面番号の次に「※」を付している。また、非球面である場合には、「r」の欄にはその近軸曲率半径を示している。また、面番号に記載の「G」、「IP」は光学ブロック、像面を示している。
【0067】
表2に、当該撮像レンズの諸データを示す。具体的には、当該撮像レンズの焦点距離(mm)、Fナンバー(F値)、半画角(°)、像高(mm)、レンズ全長(mm)、バックフォーカス(BF)(mm)を示している。ここで、レンズ全長は、第1レンズの物体側面から最も像側に配置された第nレンズ、ここでは第7レンズG7の像側面までの光軸上の距離に、バックフォーカスを加えた値である。また、バックフォーカスは第nレンズの像側面から近軸像面までの距離を空気換算した値である。表2には、雰囲気温度が20℃、105℃、-30℃のときの値をそれぞれ示している。
【0068】
表3に非球面データを示す。非球面データとして、表1に示した非球面について、その形状を下記式で定義した場合の非球面係数を示す。なお、非球面係数は、光軸からの高さhの位置での光軸方向の変位を面頂点基準として、以下の非球面式により表すことができる。表3において、「E-a」は「×10-a」を意味している。
【0069】
【数1】
但し、cが曲率(1/r)、hが光軸からの高さ、kが円錐係数(コーニック定数)、A4、A6、A8、A10、A12が各次数の非球面係数である。また、非球面係数及びコーニック定数の数値における「E±m」(mは整数を表す。)という表記は、「×10
±m」を意味している。
【0070】
表4は、第4レンズから第7レンズを構成する各硝材のd線に対する相対屈折率の温度係数(単位:1×10-6/K)を示す。なお、表中に示す「10^-6」は、「10-6」を意味する。
【0071】
また、当該撮像レンズの上記各条件式(1)~条件式(5)の数値を以下に示す。これらの数値は、表17に他の実施例の数値と共にまとめて示す。
条件式(1):0.31(f1=-7.98,f2=-26.01)
条件式(2):0.43(f12=-5.95,f4567=13.89)
条件式(3):-2.68(第4レンズ),-2.64(第5レンズ),-2.68(第7レンズ)
条件式(4):0.80(f0=4.93,YS1=1.55)
条件式(5):0.24(Yim=4.22,θim=60.00,f0=4.93)
【0072】
これらの各表に関する事項は、他の実施例で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0073】
図2に、当該撮像レンズの無限遠合焦時における縦収差図を示す。
図2に示す縦収差図は、図面に向かって左側から順に、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)である。球面収差を表す図において、縦軸は開放F値(Fno)を表し、d線(波長587.56nm)における球面収差、C線(波長656.27nm)における球面収差、g線(波長435.84nm)における球面収差を示している。
【0074】
非点収差を表す図において、縦軸は像高(y)を表す。実線はd線(波長587.56nm)におけるサジタル方向(S)を示し、破線はd線におけるメリディオナル方向(T)を示している。
【0075】
歪曲収差を表す図において、縦軸に像高(y)を取り、d線(波長587.56nm)における歪曲収差(ディストーション)を示している。
図2に示すとおり、当該撮像レンズは大きな負の歪曲収差を有する。これらの縦収差図に関する事項は、他の実施例で示す縦収差図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【実施例2】
【0080】
(1)撮像レンズの構成
図3は、本件発明に係る実施例2の撮像レンズの構成を示すレンズ断面図である。当該撮像レンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する両凹形状の第1レンズG1と、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負の屈折力を有する第2レンズG2と、正の屈折力を有する物体側が凸形状の第3レンズG3と、正の屈折力を有する両凸形状の第4レンズG4と、正の屈折力を有する像側が凸形状の第5レンズG5及び負の屈折力を有する両凹形状の第6レンズG6が接合された接合レンズと、正の屈折力を有する両凸形状の第7レンズG7とから構成される。後掲する表5に示すとおり、第2レンズG2の両面、第3レンズG3の両面、第4レンズG4の両面、第7レンズG7の両面はそれぞれ非球面である。当該撮像レンズは焦点距離が固定の固定焦点レンズである。
【0081】
(2)数値実施例
次に、実施例2で採用した撮像レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表5~表8に当該撮像レンズのレンズデータ、当該撮像レンズの諸データ、非球面データ、第4レンズから第7レンズを構成する各硝材のd線に対する相対屈折率の温度係数(単位:1×10-6/K)をそれぞれ示す。
【0082】
また、当該撮像レンズの上記各条件式(1)~条件式(5)の数値を以下に示す。これらの数値は、表17に他の実施例の数値と共にまとめて示す。
条件式(1):0.13(f1=-7.98,f2=-61.51)
条件式(2):0.66(f12=-8.44,f4567=12.76)
条件式(3):-2.68(第4レンズ),-0.91(第5レンズ),-2.68(第7レンズ)
条件式(4):0.80(f0=5.72,YS1=1.79)
条件式(5):0.17(Yim=4.28,θim=61.30,f0=5.72)
【0083】
そして、
図4に、当該撮像レンズの無限遠合焦時における縦収差図を示す。
図4に示すとおり、当該撮像レンズは大きな負の歪曲収差を有する。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【実施例3】
【0088】
(1)撮像レンズの構成
図5は、本件発明に係る実施例3の撮像レンズの構成を示すレンズ断面図である。当該撮像レンズは、物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第1レンズG1と、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負の屈折力を有する第2レンズG2と、正の屈折力を有する両凸形状の第3レンズG3と、正の屈折力を有する両凸形状の第4レンズG4と、正の屈折力を有する両凸形状の第5レンズG5及び負の屈折力を有する両凹形状の第6レンズG6が接合された接合レンズと、正の屈折力を有する両凸形状の第7レンズG7とから構成される。後掲する表9に示すとおり、第1レンズG1の両面、第3レンズG3の両面、第4レンズG4の両面、第7レンズG7の両面はそれぞれ非球面である。当該撮像レンズは焦点距離が固定の固定焦点レンズである。
【0089】
(2)数値実施例
次に、実施例3で採用した撮像レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表9~表12に当該撮像レンズのレンズデータ、当該撮像レンズの諸データ、非球面データ、第4レンズから第7レンズを構成する各硝材のd線に対する相対屈折率の温度係数(単位:1×10-6/K)をそれぞれ示す。
【0090】
また、当該撮像レンズの上記各条件式(1)~条件式(5)の数値を以下に示す。これらの数値は、表17に他の実施例の数値と共にまとめて示す。
条件式(1):0.27(f1=-11.37,f2=-41.49)
条件式(2):0.98(f12=-10.20,f4567=10.41)
条件式(3):-2.68(第4レンズ),-2.64(第5レンズ),-2.68(第7レンズ)
条件式(4):0.80(f0=5.68,YS1=1.78)
条件式(5):0.19(Yim=4.27,θim=60.00,f0=5.68)
【0091】
そして、
図6に、当該撮像レンズの無限遠合焦時における縦収差図を示す。
図6に示すとおり、当該撮像レンズは大きな負の歪曲収差を有する。
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【実施例4】
【0096】
(1)撮像レンズの構成
図7は、本件発明に係る実施例4の撮像レンズの構成を示すレンズ断面図である。当該撮像レンズは、物体側から順に、両凹形状の第1レンズG1と、物体側に凹面を向けたメニスカス形状の負の屈折力を有する第2レンズG2と、正の屈折力を有する物体側が凸形状の第3レンズG3と、正の屈折力を有する両凸形状の第4レンズG4と、正の屈折力を有する両凸形状の第5レンズG5と、負の屈折力を有する両凹形状の第6レンズG6と、正の屈折力を有する両凸形状の第7レンズG7とから構成される。後掲する表13に示すとおり、第3レンズG3の両面、第4レンズG4の両面、第7レンズG7の両面はそれぞれ非球面である。当該撮像レンズは焦点距離が固定の固定焦点レンズである。
【0097】
(2)数値実施例
次に、実施例4で採用した撮像レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表13~表16に当該撮像レンズのレンズデータ、当該撮像レンズの諸データ、非球面データ、第4レンズから第7レンズを構成する各硝材のd線に対する相対屈折率の温度係数(単位:1×10-6/K)をそれぞれ示す。
【0098】
また、当該撮像レンズの上記各条件式(1)~条件式(5)の数値を以下に示す。これらの数値は、表17に他の実施例の数値と共にまとめて示す。
条件式(1):0.23(f1=-7.78,f2=-34.40)
条件式(2):0.54(f12=-6.36,f4567=11.72)
条件式(3):-2.68(第4レンズ),-2.64(第5レンズ),-2.68(第7レンズ)
条件式(4):0.83(f0=4.93,YS1=1.48)
条件式(5):0.28(Yim=4.20,θim=58.20,f0=4.93)
【0099】
そして、
図8に、当該撮像レンズの無限遠合焦時における縦収差図を示す。
図8に示すとおり、当該撮像レンズは大きな負の歪曲収差を有する。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、全体を小型に構成しつつ、遠方の物体を高解像度で撮像することができる画角の広い撮像レンズ及び撮像装置を提供することができる。そのため、各種移動体(陸上移動体、空中移動体、海上移動体)に搭載される撮像装置、監視用撮像装置、防犯用撮像装置等の種々の建造物等に据付固定される撮像装置に好適であり、特に、各種移動体に搭載され、各移動体の進行方向前方及び周囲の物体を検出或いは認識するために用いられるセンシングカメラに好適である。
【符号の説明】
【0106】
G1・・・第1レンズ
G2・・・第2レンズ
G3・・・第3レンズ
G4・・・第4レンズ
G5・・・第5レンズ
G6・・・第6レンズ
G7・・・第7レンズ
G ・・・光学ブロック
IP・・・像面