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特許7020958情報提供システム、情報提供装置、情報提供方法及びコンピュータプログラム
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  • 特許-情報提供システム、情報提供装置、情報提供方法及びコンピュータプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】情報提供システム、情報提供装置、情報提供方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20220208BHJP
   G06Q 10/00 20120101ALI20220208BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q10/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018028224
(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公開番号】P2019144832
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀口 真史
【審査官】岸 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-308182(JP,A)
【文献】特開2006-200865(JP,A)
【文献】特開2008-241156(JP,A)
【文献】特開2015-137795(JP,A)
【文献】特開2009-109034(JP,A)
【文献】特開2008-241151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の環境パラメータを計測するセンサと、
前記室内の環境に対するクレーム内容及び前記クレーム内容に対する要求の強さを含むクレーム情報の入力を受け付ける受付端末と、
前記環境パラメータと、前記クレーム情報とに基づいて、前記要求の強さに応じた空調機の設定値の情報を、建物の管理者が操作する管理者装置に提供する情報提供装置と、
を備え
前記情報提供装置は、前記クレーム情報に応じて予め設定されている重み付け係数を、前記環境パラメータと、前記空調機に設定されている情報とに基づいて得られる負荷に乗算することによって前記負荷の値を補正し、補正後の負荷の値を用いて前記設定値を算出する情報提供システム。
【請求項2】
室内の環境パラメータを計測するセンサと、
前記室内の環境に対するクレーム内容及び前記クレーム内容に対する要求の強さを含むクレーム情報の入力を受け付ける受付端末と、
前記環境パラメータと、前記クレーム情報とに基づいて、前記要求の強さに応じた空調機の設定値の情報を、建物の管理者が操作する管理者装置に提供する情報提供装置と、
を備え
前記情報提供装置は、前記設定値の提供後、前記設定値を戻すための所定の条件を満たした場合には、設定値を戻す旨の情報を前記管理者装置に提供する情報提供システム。
【請求項3】
室内の環境パラメータと、前記室内の環境に対するクレーム内容及び前記クレーム内容に対する要求の強さを含むクレーム情報とを取得する取得部と、
前記環境パラメータと、前記クレーム情報とに基づいて、前記要求の強さに応じた空調機の設定値を算出する演算部と、
算出された前記設定値を、建物の管理者が操作する管理者装置に提供する提供部と、
を備え
前記演算部は、前記クレーム情報に応じて予め設定されている重み付け係数を、前記環境パラメータと、前記空調機に設定されている情報とに基づいて得られる負荷に乗算することによって前記負荷の値を補正し、補正後の負荷の値を用いて前記設定値を算出する情報提供装置。
【請求項4】
室内の環境パラメータと、前記室内の環境に対するクレーム内容及び前記クレーム内容に対する要求の強さを含むクレーム情報とを取得する取得部と、
前記環境パラメータと、前記クレーム情報とに基づいて、前記要求の強さに応じた空調機の設定値を算出する演算部と、
算出された前記設定値を、建物の管理者が操作する管理者装置に提供する提供部と、
を備え
前記提供部は、前記設定値の提供後、前記設定値を戻すための所定の条件を満たした場合には、設定値を戻す旨の情報を前記管理者装置に提供する情報提供装置。
【請求項5】
コンピュータが、
室内の環境パラメータと、前記室内の環境に対するクレーム内容及び前記クレーム内容に対する要求の強さを含むクレーム情報とを取得する取得ステップと、
前記環境パラメータと、前記クレーム情報とに基づいて、前記要求の強さに応じた空調機の設定値を算出する演算ステップと、
算出された前記設定値を、建物の管理者が操作する管理者装置に提供する提供ステップと、
有し、
前記演算ステップにおいて、前記クレーム情報に応じて予め設定されている重み付け係数を、前記環境パラメータと、前記空調機に設定されている情報とに基づいて得られる負荷に乗算することによって前記負荷の値を補正し、補正後の負荷の値を用いて前記設定値を算出する情報提供方法。
【請求項6】
コンピュータが、
室内の環境パラメータと、前記室内の環境に対するクレーム内容及び前記クレーム内容に対する要求の強さを含むクレーム情報とを取得する取得ステップと、
前記環境パラメータと、前記クレーム情報とに基づいて、前記要求の強さに応じた空調機の設定値を算出する演算ステップと、
算出された前記設定値を、建物の管理者が操作する管理者装置に提供する提供ステップと、
有し、
前記提供ステップにおいて、前記設定値の提供後、前記設定値を戻すための所定の条件を満たした場合には、設定値を戻す旨の情報を前記管理者装置に提供する情報提供方法。
【請求項7】
室内の環境パラメータと、前記室内の環境に対するクレーム内容及び前記クレーム内容に対する要求の強さを含むクレーム情報とを取得する取得ステップと、
前記環境パラメータと、前記クレーム情報とに基づいて、前記要求の強さに応じた空調機の設定値を算出する演算ステップと、
算出された前記設定値を、建物の管理者が操作する管理者装置に提供する提供ステップと、
をコンピュータに実行させ
前記演算ステップにおいて、前記クレーム情報に応じて予め設定されている重み付け係数を、前記環境パラメータと、前記空調機に設定されている情報とに基づいて得られる負荷に乗算することによって前記負荷の値を補正し、補正後の負荷の値を用いて前記設定値を算出するためのコンピュータプログラム。
【請求項8】
室内の環境パラメータと、前記室内の環境に対するクレーム内容及び前記クレーム内容に対する要求の強さを含むクレーム情報とを取得する取得ステップと、
前記環境パラメータと、前記クレーム情報とに基づいて、前記要求の強さに応じた空調機の設定値を算出する演算ステップと、
算出された前記設定値を、建物の管理者が操作する管理者装置に提供する提供ステップと、
をコンピュータに実行させ
前記提供ステップにおいて、前記設定値の提供後、前記設定値を戻すための所定の条件を満たした場合には、設定値を戻す旨の情報を前記管理者装置に提供するためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報提供システム、情報提供装置、情報提供方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルやホテル等の建物に設置される空気調和機(以下「空調機」という。)の制御では、主に空調の設定変更によって省エネルギー化が実現されていた。しかしながら、省エネルギー化のために設定温度が過度に設定されてしまい、建物内の快適性が損なわれてしまうことがある。ビルやホテル等の人が在室する建物では、エネルギー削減と快適性のように、表裏一体の運用が求められている。そのため、管理者は、突発的な空調対応に追われることも多く、管理者の負荷が多くなってしまう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-137795号公報
【文献】特開2006-276992号公報
【文献】特開2007-132577号公報
【文献】特開2014-74509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ビルやホテル等の建物の管理者の負荷を低減することができる情報提供システム、情報提供装置、情報提供方法及びコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の情報提供システムは、センサと、受付端末と、情報提供装置とを持つ。センサは、室内の環境パラメータを計測する。受付端末は、室内の環境に対するクレーム内容及び前記クレーム内容に対する要求の強さを含むクレーム情報の入力を受け付ける。情報提供装置は、環境パラメータと、クレーム情報とに基づいて、要求の強さに応じた空調機の設定値の情報を、建物の管理者が操作する管理者装置に提供する。情報提供装置は、クレーム情報に応じて予め設定されている重み付け係数を、環境パラメータと、空調機に設定されている情報とに基づいて得られる負荷に乗算することによって負荷の値を補正し、補正後の負荷の値を用いて設定値を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の情報提供システムのシステム構成を示す図。
図2】実施形態におけるシステムサーバの機能構成を表す概略ブロック図。
図3】重み付け情報テーブルの具体例を示す図。
図4】情報提供システムの処理の流れを示すシーケンス図。
図5】システムサーバにおける設定値を戻すための処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の情報提供システム、情報提供装置、情報提供方法及びコンピュータプログラムを、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の情報提供システム100のシステム構成を示す図である。情報提供システム100は、中央監視システム10、センサ20、受付端末30、LCS40、上位システム50及び中継装置60を備える。以下の説明では、中央監視システム10と、LCS40と、上位システム50との間の通信は、内部ネットワークを介した通信として説明し、上位システム50と、中継装置60との間の通信は、外部ネットワークを介した通信として説明する。中継装置60には、管理者側通信装置70が接続される。
【0008】
中央監視システム10と、LCS40と、上位システム50との間の通信には、BACnet/IP又はSQL/JDBC等のインテリジェントビル用ネットワークのための通信プロトコル規格が用いられる。また、上位システム50と、中継装置60との間の通信には、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)又はSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)が用いられる。
【0009】
また、上位システム50と、中継装置60との間には、ファイアウォール80が設けられる。ファイアウォール80は、外部ネットワークと、内部ネットワークとの間で、予め決められた通信のみを通過させ、外部ネットワークから内部ネットワークへの特定の通信を阻止する。
【0010】
中央監視システム10は、空調機の管理対象となるビルに設けられる。中央監視システム10は、ビル内の空調機を統括して監視する。中央監視システム10は、単数又は複数のLCS(Local Control Server)11、GCS(Global Control Server)12、HIS(Human Interface Station)13及び監視対象設備14を備える。
【0011】
LCS11は、監視対象設備14の機器の状態監視や監視対象設備14の自動制御機能を有する。監視対象設備14は、例えば空調機である。LCS11は、監視対象設備14の稼働状況、給気風量、室内設定温度、室内設定湿度等の空調関連の情報や外気量、外気絶対湿度等の外気条件に関する情報を取得する。LCS11は、取得した情報をGCS12に出力する。
【0012】
GCS12は、LCS11を統括して監視する。GCS12は、LCS11から出力された情報を収集して保存する。GCS12は、HIS13からの指示に応じて、保存している情報をHIS13上に表示させる。また、GCS12は、保存している情報を上位システム50に出力する。
HIS13は、監視対象設備14の状態表示、警報通知及び設定操作を行うための情報処理装置である。HIS13は、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置で構成される。
以下の説明では、中央監視システム10から上位システム50に出力される情報を監視情報と記載する。
【0013】
センサ20は、ビル内の部屋の温度、湿度及びCO2等の環境パラメータを計測する。センサ20は、例えば執務室に設置される。なお、センサ20は、部屋内のレイアウト変更により、有線のセンサでは対応出来ないエリアに設置されるのが望ましい。センサ20は、例えば温湿度センサやCO2センサ等のセンサである。なお、センサ20は、温湿度センサやCO2センサに限らず、部屋内の環境パラメータを計測可能なセンサであれば無線、有線を問わずどのようなセンサであってもよい。センサ20は、計測した結果と、センサ20を識別するための識別情報とをセンサ情報としてLCS40に出力する。
【0014】
受付端末30は、ビル内の部屋の環境に対するクレーム情報の入力を部屋に位置している人物から受け付ける。例えば、受付端末30は、部屋の環境に対するクレームの内容と、その内容に対する要求の強さを表す強度とをクレーム情報として受け付ける。クレームの内容は、例えば部屋が暑い、部屋が寒い、空調機の風量が強い、空調機の風量が弱い等の情報である。ここでのクレーム情報には、クレームが発生している部屋・階数・場所等のエリア情報を含めてもよい。
【0015】
強度は、複数段階(例えば、5段階)で表される。数字が高くなるほど、環境に対する要求が高いことを意味する。なお、強弱の選択は、5段階に限らず、5段階よりも少なくてもよいし、5段階よりも多くてもよい。受付端末30は、例えばビル内の部屋(例えば、執務室)に設置される。受付端末30は、入力を受け付けたクレーム情報に、受付端末30を識別するための識別情報を対応付けてLCS40に出力する。
【0016】
LCS40は、センサ20から出力されるセンサ情報と、受付端末30から出力されるクレーム情報とを上位システム50に出力する。
【0017】
上位システム50は、情報提供システム100内の設備を統括して制御する。上位システム50は、システムサーバ51及びWebサーバ52を備える。
システムサーバ51は、中央監視システム10及びLCS40から得られる各情報を用いて、空調機に設定すべき設定値を算出し、算出した設定値の情報を、Webサーバ52を介して管理者側通信装置70に提供する。提供する設定値としては、例えば室内設定温度及び室内設定湿度である。また、システムサーバ51は、クレーム情報を、Webサーバ52を介して管理者側通信装置70に提供する。システムサーバ51は、情報提供装置の一例である。
Webサーバ52は、システムサーバ51の制御に従って、設定値の情報を管理者側通信装置70に送信する。
【0018】
中継装置60は、上位システム50と管理者側通信装置70との間の通信を中継する。
管理者側通信装置70は、ビルの管理者が操作する通信装置である。管理者側通信装置70は、上位システム50から送信された設定値の情報及びクレーム情報を表示する。管理者側通信装置70は、例えばノート型パーソナルコンピュータやタブレット端末等の情報処理装置を用いて構成される。
【0019】
図2は、実施形態におけるシステムサーバ51の機能構成を表す概略ブロック図である。
システムサーバ51は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、プログラムを実行する。プログラムの実行によって、システムサーバ51は、取得部511、取得情報記憶部512、重み付け情報記憶部513、演算部514、提供部515を備える装置として機能する。なお、システムサーバ51の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0020】
取得部511は、各種情報を取得する。例えば、取得部511は、中央監視システム10から監視情報を取得する。また、例えば、取得部511は、LCS40からクレーム情報及びセンサ情報を取得する。
取得情報記憶部512は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。取得情報記憶部512は、取得部511によって取得された情報を記憶する。
【0021】
重み付け情報記憶部513は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。重み付け情報記憶部513は、重み付け情報テーブルを記憶する。重み付け情報テーブルには、クレームの内容と、強度との組み合わせ毎に、重み付けに用いられる係数(以下「重み付け係数」という。)が登録されている。
【0022】
図3は、重み付け情報テーブルの具体例を示す図である。
図3に示すように、重み付け情報テーブルには、クレームの内容(例えば、暑い、寒い、風量強い、風量弱い)と、強度(例えば、1、2、3、4、5)との組み合わせ毎に、負荷に対する重み付け係数が登録されている。ここで、負荷とは、演算部514により算出される室内負荷及び外気負荷である。
【0023】
図3に示す例では、クレーム内容が“暑い”の場合には、強度が高くなるにつれて重み付け係数が高くなるように設定されている。これは、部屋が暑いことが想定されるため、強度が高くなるにつれて、室内設定温度や室内設定湿度が低くなるようにするためである。
また、図3に示す例では、クレーム内容が“寒い”の場合には、強度が高くなるにつれて重み付け係数が低くなるように設定されている。これは、部屋が寒いことが想定されるため、強度が高くなるにつれて、室内設定温度や室内設定湿度が高くなるようにするためである。
【0024】
また、図3に示す例では、クレーム内容が“風量強い”の場合には、強度が高くなるにつれて重み付け係数が低くなるように設定されている。例えば、風量が強い場合には部屋が寒いことが想定される。したがって、強度が高くなるにつれて、室内設定温度や室内設定湿度を高くしたり、風量を強めるためインバータ周波数を下げたりするためである。
また、図3に示す例では、クレーム内容が“風量弱い”の場合には、強度が高くなるにつれて重み付け係数が高くなるように設定されている。例えば、風量が弱い場合には部屋が暑いことが想定される。したがって、強度が高くなるにつれて、室内設定温度や室内設定湿度を低くしたり、風量を弱めるためインバータ周波数を上げたりするためである。
【0025】
図2に戻って、説明を続ける。
演算部514は、取得情報記憶部512に記憶されている各情報と、重み付け情報テーブルとに基づいて、空調機に設定すべき設定値を算出する。
提供部515は、演算部514によって算出された設定値の情報と、クレーム情報とを、Webサーバ52を介して管理者側通信装置70に提供する。
【0026】
図4は、情報提供システム100の処理の流れを示すシーケンス図である。
受付端末30は、クレーム情報の入力を受け付ける(ステップS101)。中央監視システム10は、各種情報を取得する(ステップS102)。具体的には、中央監視システム10のLCS11は、監視対象設備14の給気風量、室内設定温度、室内設定湿度等の情報や外気量、外気絶対湿度の情報を取得する。LCS11は、取得した情報をGCS12に出力する。GCS12は、LCS11から得られた情報を監視情報として上位システム50に出力する(ステップS103)。
【0027】
センサ20は、環境パラメータを計測する(ステップS104)。なお、図4では、1台のセンサ20を用いて説明しているが、各部屋にセンサ20が設置されている場合には、各部屋に設置されているセンサ20は、自装置が設置されている部屋の環境パラメータを計測する。センサ20は、計測した結果と、センサ20を識別するための識別情報とをセンサ情報としてLCS40を介して上位システム50に出力する(ステップS105)。
受付端末30は、クレーム情報が入力されると、入力されたクレーム情報に識別情報を対応付けてLCS40を介して上位システム50に出力する(ステップS106)。
【0028】
取得部511は、監視情報、センサ情報及びクレーム情報を取得する。取得部511は、取得した監視情報、センサ情報及びクレーム情報を取得情報記憶部512に記憶する(ステップS107)。演算部514は、取得情報記憶部512に記憶されている監視情報、センサ情報及びクレーム情報と、重み付け情報テーブルとに基づいて設定値を演算する。具体的には、まず演算部514は、監視情報及びセンサ情報を用いて、以下の式1~式4に基づいてある部屋の室内負荷及び外気負荷を算出する(ステップS108)。なお、演算部514は、複数の部屋について室内負荷及び外気負荷を算出する場合には、部屋毎に得られる情報を用いてそれぞれの部屋の室内負荷及び外気負荷を算出する。
【0029】
(式1):室内負荷(顕熱)=0.34×給気風量[m3/h]×(室内温度-室内設定温度)
(式2):室内負荷(潜熱)=0.83×給気風量[m3/h]×(室内絶対湿度-室内設定湿度)
(式3):外気負荷(顕熱)=0.34×外気量[m3/h]×(外気温度-室内温度)
(式4):外気負荷(潜熱)=0.83×外気量[m3/h]×(外気絶対湿度-室内絶対湿度)
【0030】
次に、演算部514は、重み付け情報テーブルを参照し、クレーム情報で示されるクレーム内容及び強度に応じた重み付け係数を取得する。例えば、演算部514は、クレーム情報で示されるクレーム内容が“暑い”であり、強度が“3”の場合には、重み付け係数として“1.3”を取得する。次に、演算部514は、算出した各負荷(室内負荷(顕熱)、室内負荷(潜熱)、外気負荷(顕熱)及び外気負荷(潜熱))それぞれに対して、取得した重み付け係数を乗じることによって各負荷の値を補正する。これにより、室内負荷(顕熱)、室内負荷(潜熱)、外気負荷(顕熱)及び外気負荷(潜熱)の補正後の値が得られる。
【0031】
次に、演算部514は、得られた補正後の外気負荷(顕熱)の値と、上記の式3とを用いて、室内温度を算出する。ここで、外気量及び外気温度は、ステップS108の処理で用いられた値が使用される。なお、外気量は、CO2制御時の風量を下限値とする。また、演算部514は、得られた補正後の外気負荷(潜熱)の値と、上記の式4とを用いて、室内絶対湿度を算出する。ここで、外気量及び外気絶対湿度は、ステップS108の処理で用いられた値が使用される。なお、外気量は、CO2制御時の風量を下限値とする。
【0032】
また、演算部514は、得られた補正後の室内負荷(顕熱)の値と、上記の式1とを用いて、室内設定温度を算出する。ここで、給気風量はステップS108の処理で用いられた値が使用され、室内温度は補正後の外気負荷(顕熱)の値で得られた室内温度が使用される。この処理で得られた室内設定温度が、提供される設定値の一つである。
【0033】
また、演算部514は、得られた補正後の室内負荷(潜熱)の値と、上記の式2とを用いて、室内設定湿度を算出する。ここで、給気風量はステップS108の処理で用いられた値が使用され、室内絶対湿度は補正後の外気負荷(潜熱)の値で得られた室内絶対湿度が使用される。この処理で得られた室内設定湿度が、提供される設定値の一つである。
【0034】
演算部514は、得られた設定値を提供部515に出力する。提供部515は、演算部514から出力された設定値と、取得情報記憶部512に記憶されているクレーム情報とを、Webサーバ52を介して管理者側通信装置70に提供する(ステップS109)。なお、提供部515は、室内設定湿度については、空気線図により室内設定温度と室内絶対湿度とを用いて室内設定湿度の情報を提供する。
管理者側通信装置70は、上位システム50から送信された設定値の情報及びクレーム情報を表示する(ステップS110)。ビルの管理者は、表示された設定値の情報及びクレーム情報を参照し、機器を制御する。
【0035】
以上のように構成された情報提供システム100によれば、ビル内で従来得られる情報(、監視対象設備14の給気風量、室内設定温度、室内設定湿度等の情報)の他に、部屋に位置している人物からのクレーム情報と、部屋に設置されたセンサ20から得られるセンサ情報を加味することによって部屋内の負荷、給気風量等を想定して設定値を提供する。これにより、ビルの管理者は、簡便に空調を制御することができる。そのため、ビルの管理者の付加を軽減することが可能になる。
【0036】
また、情報提供システム100では、クレームの内容及び強度に応じた重み付け係数を用いて、設定値を算出している。これにより、クレームの内容のみならず、そのクレームの要求度合いを加味した設定値を提供する。これにより、ビルの管理者は、ビルを使用する人物の要求を踏まえて空調を制御することができる。
【0037】
以下、情報提供システム100の変形例について説明する。
上位システム50の提供部515は、ビルの管理者がメールサーバを所有している場合には、設定値の情報をメールで提供してもよい。このように構成される場合、システムサーバ51は、ビルの管理者がメールサーバを所有しているか否かの情報を予め記憶する。そして、提供部515は、ビルの管理者がメールサーバを所有しているか否かに応じて、設定値の情報の提供方法を切替えてもよい。なお、ビルの管理者がメールサーバを所有している場合、提供部515は設定値の情報をメールで提供するとともに、HTTPにより設定値の情報を提供してもよい。
本実施形態では、提供部515が提供する設定値が、室内設定温度及び室内設定湿度である場合を説明したが、提供部515が提供する設定値はこれに限られない。例えば、提供部515が提供する設定値は、給気設定温度、省エネに関わる設定項目等も設定値として提供してもよい。省エネに関わる設定項目とは、風量、空調機のプロセッサの周波数等である。
【0038】
管理者側通信装置70は、上位システム50から提供された情報を記憶しておき、類似する条件が発生した場合にはその情報を表示するように構成されてもよい。
また、システムサーバ51は、設定値の情報を提供した後に所定の条件を満たした場合には、設定値を戻す旨の情報を提供するように構成されてもよい。
図5は、システムサーバ51における設定値を戻すための処理の流れを示すフローチャートである。なお、図5の処理開始時には、システムサーバ51が、既に設定値の情報を管理者側通信装置70に提供しているものとする。
【0039】
取得部511は、監視情報、センサ情報及びクレーム情報等の各種情報を取得する(ステップS201)。取得部511は、取得した監視情報、センサ情報及びクレーム情報を取得情報記憶部512に記憶する(ステップS202)。演算部514は、取得情報記憶部512に記憶されている監視情報、センサ情報及びクレーム情報と、重み付け情報テーブルとに基づいて設定値を演算する(ステップS203)。
【0040】
提供部515は、設定値を戻すための所定の条件を満たすか否かを判定する(ステップS204)。設定値を戻すための所定の条件は、例えば室内温度から室内設定温度を減算した値が第1の範囲内の値である場合、又は、室内湿度から室内設定湿度を減算した値が第2の範囲内の値である場合のいずれか又は両方である。第1の範囲は、例えば±0.1℃である。第2の範囲は、例えば±5%である。
【0041】
提供部515は、室内温度から室内設定温度を減算した値が第1の範囲内の値である場合、又は、室内湿度から室内設定湿度を減算した値が第2の範囲内の値である場合のいずれか又は両方が満たされた場合に所定の条件が満たされたと判定する。一方、室内温度から室内設定温度を減算した値が第1の範囲内の値である場合、又は、室内湿度から室内設定湿度を減算した値が第2の範囲内の値である場合の両方が満たされなかった場合に所定の条件が満たされていないと判定する。
【0042】
所定の条件が満たされた場合(ステップS204-YES)、提供部515は設定値を戻す旨の情報を、Webサーバ52を介して管理者側通信装置70に提供する(ステップS205)。提供部515は、設定値を戻す旨の情報として、室内設定温度及び室内設定湿度の両方を元に戻す旨の情報と、戻すための設定値の情報とを含めて管理者側通信装置70に提供する。なお、提供部515は、設定値を戻す旨の情報として、室内設定温度及び室内設定湿度のいずれか一方を戻す旨の情報と、戻すための設定値の情報とを含めて管理者側通信装置70に提供してもよい。
一方、所定の条件が満たされていない場合(ステップS204-NO)、システムサーバ51は図5の処理を終了する。
【0043】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、室内の環境パラメータを計測するセンサ20と、室内の環境に対するクレーム内容及び強度を含むクレーム情報の入力を受け付ける受付端末30と、環境パラメータと、クレーム情報とに基づいて、要求の強さに応じた空調機の設定値の情報を、管理者側通信装置70に提供するシステムサーバ51を持つことにより、ビルやマンション等の建物の管理者の負荷を低減することができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
10…中央監視システム,11…LCS,12…GCS,13…HIS,14…監視対象設備,20…センサ,30…受付端末,40…LCS,50…上位システム,51…システムサーバ,52…Webサーバ,60…中継装置,70…管理者側通信装置,80…ファイアウォール,511…取得部,512…取得情報記憶部,513…重み付け情報記憶部,514…演算部,515…提供部
図1
図2
図3
図4
図5