(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】ケーブル巻取装置及びケーブル巻取方法
(51)【国際特許分類】
B65H 54/56 20060101AFI20220208BHJP
B65H 75/34 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B65H54/56 A
B65H75/34
(21)【出願番号】P 2018037217
(22)【出願日】2018-03-02
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2017070976
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山路 仁梨
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 紀之
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/172811(WO,A1)
【文献】特開2015-172515(JP,A)
【文献】特開2017-015427(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0056030(US,A1)
【文献】特開昭60-128817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/56-54/88
B65H 75/34-75/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ部と、複数の電極を有するコネクタ部と、前記センサ部と前記コネクタ部とを電気的に導通させるためのケーブルと、を備えたガスセンサのうち、前記センサ部と前記コネクタ部との一方を保持する第1保持部と、
前記ケーブルを巻き取るための巻取部と、
前記巻取部の周囲を回るように前記第1保持部を回転移動させることで、前記ケーブルを前記巻取部に巻き取らせる巻取機構と、
前記センサ部と前記コネクタ部との他方が前記巻取部に接近する方向に移動するのを許容しつつ該他方を保持する第2保持部と、
を備えたケーブル巻取装置。
【請求項2】
前記第2保持部は、前記他方が前記巻取部に接近する方向に移動する際に前記ケーブルに張力を加えるように構成されている、
請求項
1に記載のケーブル巻取装置。
【請求項3】
前記第1,第2保持部は、前記ケーブルの両端を結ぶ直線が前記回転移動の回転軸方向に垂直な平面に対して傾斜するような位置関係で、前記センサ部と前記コネクタ部とを保持する、
請求項
1又は
2に記載のケーブル巻取装置。
【請求項4】
請求項
3に記載のケーブル巻取装置であって、
前記第1保持部及び前記第2保持部の少なくとも一方を、前記回転移動の回転軸方向に沿って移動させることで、前記ケーブルの両端を結ぶ直線の前記傾斜の角度を変更する傾斜角変更機構、
を備えたケーブル巻取装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のケーブル巻取装置であって、
前記巻取部は、長手方向が前記回転移動の回転軸に沿って配設された巻取治具を複数有しており、
前記複数の巻取治具の互いの距離を変更することで前記巻取部に巻き取られる前記ケーブルの巻取り径を変更する巻取径変更機構、
を備えたケーブル巻取装置。
【請求項6】
被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ部と、複数の電極を有するコネクタ部と、前記センサ部と前記コネクタ部とを電気的に導通させるためのケーブルと、を備えたガスセンサのうち、前記センサ部と前記コネクタ部との一方を保持する第1保持部と、前記ケーブルを巻き取るための巻取部と、前記第1保持部を回転移動させる巻取機構と、
前記センサ部と前記コネクタ部との他方が前記巻取部に接近する方向に移動するのを許容しつつ該他方を保持する第2保持部と、を備えたケーブル巻取装置を用いたケーブル巻取方法であって、
(a)前記第1保持部が前記一方を保持
し且つ前記第2保持部が前記他方を保持した状態にするステップと、
(b)前記巻取機構が前記巻取部の周囲を回るように前記第1保持部を回転移動させることで、前記ケーブルを前記巻取部に巻き取らせるステップと、
を含むケーブル巻取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル巻取装置及びケーブル巻取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガスなどの被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサとしては、センサ素子などを備えたセンサ本体と、外部接続部と、センサ本体と外部接続部とを電気的に接続する複数のリード線を束ねたケーブルと、を備えたものが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなガスセンサは、ケーブルを巻き取った状態で搬送される場合がある。そして、例えば人間の手作業のみでケーブルを巻き取ると、巻取り径を一定にすることが難しいなど、複数のガスセンサ間で巻き取り後の状態にばらつきが生じる場合があった。そのため、複数のガスセンサのケーブルを同じように精度良く巻き取ることができる装置が望まれていた。しかし、ガスセンサのケーブルを巻き取る装置は知られていなかった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、複数のガスセンサのケーブルを同じように精度良く巻き取ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のケーブル巻取装置は、
被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ部と、複数の電極を有するコネクタ部と、前記センサ部と前記コネクタ部とを電気的に導通させるためのケーブルと、を備えたガスセンサのうち、前記センサ部と前記コネクタ部との一方を保持する第1保持部と、
前記ケーブルを巻き取るための巻取部と、
前記巻取部の周囲を回るように前記第1保持部を回転移動させることで、前記ケーブルを前記巻取部に巻き取らせる巻取機構と、
を備えたものである。
【0008】
このケーブル巻取装置では、第1保持部がガスセンサのセンサ部とコネクタ部との一方を保持し、その状態で第1保持部が巻取部の周囲を回るように第1保持部を回転移動させることで、ケーブルを巻取部に巻き取らせる。そのため、例えば人間が手作業のみでケーブルの巻き取りを行う場合と比較して、複数のガスセンサのケーブルを同じように精度良く巻き取ることができる。
【0009】
この場合において、本発明のケーブル巻取装置は、前記第1保持部による前記一方の保持と解放とを切り替える第1保持切替部と、前記第1保持部が前記一方を保持するよう前記第1保持操作部を制御し前記第1保持部が前記回転移動するよう前記巻取機構を制御する制御部と、を備えていてもよい。
【0010】
本発明のケーブル巻取装置は、前記センサ部と前記コネクタ部との他方が前記巻取部に接近する方向に移動するのを許容しつつ該他方を保持する第2保持部、を備えていてもよい。こうすれば、第2保持部は、センサ部とコネクタ部との他方の移動を許容することで巻取機構によるケーブルの巻取りは阻害しないようにしつつ、他方を保持できる。そのため、例えば巻取り時に他方を保持しない場合と比較して、巻取り時に他方が他の物体に衝突することなどを抑制して、他方の損傷を抑制できる。
【0011】
本発明のケーブル巻取装置において、前記第2保持部は、前記他方が前記巻取部に接近する方向に移動する際に前記ケーブルに張力を加えるように構成されていてもよい。こうすれば、張力によりケーブルがたわまないようにしつつ巻取部にケーブルを巻き取らせることができる。
【0012】
この場合において、前記他方が前記巻取部に接近する方向は、水平面と交差する方向であってもよい。こうすれば、ガスセンサの自重によってケーブルの巻き取り時にケーブルに張力を加えることができる。そのため、例えばケーブルに張力を加えるために動力を出力する機構を省略することができるなど、装置構成を簡略化しつつケーブルのたわみを抑制できる。
【0013】
第2保持部を備える態様の本発明のケーブル巻取装置において、前記第1,第2保持部は、前記ケーブルの両端を結ぶ直線が前記回転移動の回転軸方向に垂直な平面に対して傾斜するような位置関係で、前記センサ部と前記コネクタ部とを保持してもよい。こうすれば、例えばケーブルの両端を結ぶ直線が回転移動の回転軸方向に垂直な平面と平行になっている場合と比較して、巻取部に巻き取られたケーブル同士が径方向に重なってしまうことを抑制できる。そのため、巻き取られたケーブルの外径が増大してしまうのを抑制できる。
【0014】
この場合において、本発明のケーブル巻取装置は、前記第1保持部及び前記第2保持部の少なくとも一方を、前記回転移動の回転軸方向に沿って移動させることで、前記ケーブルの両端を結ぶ直線の前記傾斜の角度を変更する傾斜角変更機構、を備えていてもよい。こうすれば、傾斜角変更機構によって傾斜の角度をケーブルに応じて適切に調整することで、巻取部に巻き取られたケーブル同士が径方向に重なったり互いに離れすぎたりすることを抑制できる。
【0015】
本発明のケーブル巻取装置において、前記巻取部は、長手方向が前記回転移動の回転軸に沿って配設された巻取治具を複数有しており、前記複数の巻取治具の互いの距離を変更することで前記巻取部に巻き取られる前記ケーブルの巻取り径を変更する巻取径変更機構を備えていてもよい。こうすれば、巻取り径を変更できるから、所望の巻取り径でケーブルの巻き取りを行いやすい。この場合において、前記巻取径変更機構は、前記複数の巻取治具の各々と前記回転移動の回転軸との距離を変化させることで、前記巻取り径を変更してもよい。また、前記巻取径変更機構は、前記複数の巻取り治具の各々を前記回転軸の径方向に沿って移動させることで前記巻取り径を変更してもよい。
【0016】
本発明のケーブル巻取方法は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ部と、複数の電極を有するコネクタ部と、前記センサ部と前記コネクタ部とを電気的に導通させるためのケーブルと、を備えたガスセンサのうち、前記センサ部と前記コネクタ部との一方を保持する第1保持部と、前記ケーブルを巻き取るための巻取部と、前記第1保持部を回転移動させる巻取機構と、を備えたケーブル巻取装置を用いたケーブル巻取方法であって、
(a)前記第1保持部が前記一方を保持するステップと、
(b)前記巻取機構が前記巻取部の周囲を回るように前記第1保持部を回転移動させることで、前記ケーブルを前記巻取部に巻き取らせるステップと、
を含むものである。
【0017】
このケーブル巻取方法では、上述したケーブル巻取装置と同様に、例えば人間が手作業のみで巻き取りを行う場合と比較して、複数のガスセンサのケーブルを同じように精度良く巻き取ることができる。本発明のケーブル巻取方法において、上述した本発明のケーブル巻取装置の種々の態様を採用してもよいし、上述した本発明のケーブル巻取装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】ケーブル巻取装置20の構成の概略を示す部分断面図。
【
図4】巻取径変更機構40が巻取り径を変更する場合の第1,第2クラッチ50,60の状態を示す説明図。
【
図6】第1保持切替部77が第1保持部71を切り替える様子を示す説明図。
【
図7】ケーブル16を巻取部48に巻き取らせる様子を示す説明図。
【
図8】巻取り完了時のケーブル16の様子を示す説明図。
【
図9】搬送用トレイ95が複数のガスセンサ10を収容する様子を示す説明図。
【
図10】変形例のケーブル巻取装置20Aの構成の概略を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1はガスセンサ10の構成の概略を示す説明図、
図2は本発明の一実施形態であるケーブル巻取装置20の構成の概略を示す部分断面図、
図3はケーブル巻取装置20の概略左面図、
図4は巻取径変更機構40が巻取り径を変更する場合の第1,第2クラッチ50,60の状態を示す説明図である。
図5は巻取り径が変更される様子を示す説明図である。
図5(a)は、巻取り径が最大の状態の説明図、
図5(b)は
図5(a)から巻取り径を小さくした状態の説明図である。
図5の左列は、第1ガイド部材45の左側から見た第1ガイド部材45,第2ガイド部材47及び巻取部48の様子を示している。
図5の中央列は、
図5の左列に示した状態における第1ガイド部材45のみを示し、
図5の右列は、
図5の左列に示した状態における第2ガイド部材47及び巻取治具49のみを示している。
図6は第1保持切替部77が第1保持部71を切り替える様子を示す説明図である。なお、
図2の左右方向がX軸方向であり、
図2の上下方向がZ軸方向であり、
図2の上下左右に垂直な方向(
図3に示す前後方向)がY軸方向である。
【0020】
ガスセンサ10は、
図1に示すように、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ部12と、複数の電極14bを有するコネクタ部14と、センサ部12とコネクタ部14とを電気的に導通させるためのケーブル16と、を備えている。このガスセンサ10は、例えば車両の排ガス管に取り付けられて被測定ガスとしての排気ガスに含まれるNOxやO
2等の特定ガスの濃度を測定するために用いられる。センサ部12は、内部に図示しないセンサ素子を有しており、センサ素子を覆う金属製の保護カバー及び金属製の外筒などを有している。保護カバーには被測定ガスの導入孔が配設されている。コネクタ部14は、略平板状の形状の本体部と、本体部から
図1の紙面手前側に突出するコネクタ14aと、コネクタ14aの内側の開口に露出する複数の電極14bとを有している。コネクタ部14は、例えば車両の制御ユニットなどに接続される。ケーブル16は、図示しない複数のリード線と、複数のリード線を被覆し絶縁性且つ可撓性を有するチューブとを備えている。ケーブル16内の複数のリード線の各々は、センサ部12のセンサ素子の電極とコネクタ部14の電極14bとを電気的に導通している。ケーブル16の長さは、特に限定するものではないが、例えば0.5m~2mとしてもよい。
【0021】
ケーブル巻取装置20は、
図2に示すように、回転軸22と、巻取機構30と、巻取径変更機構40と、巻取部48と、第1クラッチ50と、圧力切替部55と、第2クラッチ60と、第1保持部71と、第1保持切替部77と、第2保持部81と、制御装置90と、を備えている。
【0022】
回転軸22は、軸方向がX軸に沿うように配置されており、ベアリング24,24を介して支柱23に回転可能に支持されている。
【0023】
巻取機構30は、ガスセンサ10のコネクタ部14を保持する第1保持部71を、巻取部48の周囲を回るように回転移動させる機構である。巻取機構30は、巻取用ギア31と、ベアリング32,32と、ベルト34と、回転板35と、接続部材36と、を備えている。また、巻取機構30は、
図3に示すように、巻取用モータ33と、ギア33aとを備えている。巻取用ギア31は、支柱23の左側に回転軸22と同軸に配置された円板状の部材である。巻取用ギア31は、ベアリング32,32を介して回転軸22に取り付けられており、回転軸22に対して独立して回転可能である。巻取用モータ33は、巻取機構30の駆動源であり、
図3に示すように支柱23の前方に取り付けられている。巻取用モータ33は、例えばエンコーダなどの回転位置検出器を備えたサーボモータとして構成されている。ギア33aは、巻取用モータ33の駆動軸に取り付けられている。巻取用ギア31とギア33aとの間にはベルト34が掛け渡されている。ベルト34は本実施形態ではゴムベルトとした。回転板35は、巻取用ギア31の左側に回転軸22と同軸に配置された円板状の部材である。回転板35の中心に左面視で円形の貫通孔が配設されており、この貫通孔に第1ガイド部材45が同軸に取り付けられている。回転板35の外周部分には第1保持部71が取り付けられており、回転板35が回転すると第1保持部71も一体的に回転する。接続部材36は、回転板35と巻取用ギア31とを接続する部材である。接続部材36は、例えば棒状の部材であり、回転板35及び巻取用ギア31の周方向に沿って複数配設されている(
図2では2個のみ図示)。接続部材36は、回転軸22と同軸の円筒状の部材であってもよい。接続部材36によって、巻取用ギア31と回転板35とは一体的に回転する。この巻取機構30では、巻取用モータ33が回転駆動力を出力すると、ギア33a及びベルト34を介して巻取用ギア31に回転駆動力が伝達される。そして、巻取用ギア31,回転板35,接続部材36及び第1保持部71が一体的に回転する。
【0024】
巻取径変更機構40は、巻取部48が有する複数の巻取治具49の互いの距離を変更することで巻取部48に巻き取られるケーブル16の巻取り径を変更する機構である。巻取径変更機構40は、
図2に示すように、径変更用ギア41と、ベアリング42,42と、径変更用モータ43と、ギア43aと、ベルト44と、第1ガイド部材45と、第2ガイド部材47と、を備えている。径変更用ギア41は、支柱23の右側に回転軸22と同軸に配置された円板状の部材である。径変更用ギア41は、ベアリング42,42を介して回転軸22に取り付けられており、回転軸22に対して独立して回転可能である。径変更用モータ43は、巻取径変更機構40の駆動源であり、
図3に示すように支柱23に取り付けられている。径変更用モータ43は、例えばエンコーダなどの回転位置検出器を備えたサーボモータとして構成されている。ギア43aは、径変更用モータ43の駆動軸に取り付けられている。径変更用ギア41とギア43aとの間にはベルト44が掛け渡されている。ベルト44は本実施形態ではゴムベルトとした。第1ガイド部材45は、貫通孔46a~46d(
図5参照)を有する円板状の部材であり、上述したように回転板35の中心に回転板35と同軸に取り付けられている。貫通孔46a~46dを貫通孔46と総称する。第2ガイド部材47は、回転軸22の左端に回転軸22と同軸に取り付けられている。第2ガイド部材47は、溝47a~47d(
図5参照)を有する円板状の部材である。この巻取径変更機構40では、第1クラッチ50がオフ且つ第2クラッチ60がオンの状態(
図4に示す状態)で、径変更用モータ43からの回転駆動力により径変更用ギア41が回転すると、径変更用ギア41及び第2クラッチ60を介して回転軸22及び第2ガイド部材47が回転する。詳細は後述するが、回転軸22の回転により第1ガイド部材45に対して第2ガイド部材47が相対的に回転する(第1ガイド部材45に対する第2ガイド部材47の回転位置がずれる)ことで、巻取部48の巻取り径が変更されるようになっている。なお、回転軸22及び後述するオン状態の第2クラッチ60も、巻取径変更機構40の一部を構成する。
【0025】
巻取部48は、ガスセンサ10のケーブル16を巻き取るための部材である。巻取部48は、巻取治具49a~49dを有している。巻取治具49a~49dを巻取治具49と総称する。巻取治具49a~49dの各々は、略円柱状の部材であり、長手方向(軸方向)がX軸に沿うように配設されている。巻取治具49a~49dは、第1ガイド部材45の周方向に沿って等間隔に配置されている。巻取治具49a~49dの各々は、
図2及び
図5に示すように、第2ガイド部材47の溝47a~47dの各々に右端部が挿入されている。これにより、巻取治具49a~49dの各々は、溝47a~47dの各々に沿って摺動可能となっている。また、巻取治具49a~49dの各々は、第2ガイド部材47の左側に配置された第1ガイド部材45の貫通孔46a~46dの各々を貫通して、第1ガイド部材45よりも左側に突出している。巻取治具49a~49dのうち第1ガイド部材45よりも左側に突出した部分が、ケーブル16を巻き取る。
【0026】
ここで、第1ガイド部材45の貫通孔46a~46dの各々は、左面視で、長手方向が第1ガイド部材45の径方向に沿った略長方形状(本実施形態では角丸の長方形)をしている。貫通孔46a~46dの各々は、それぞれ巻取治具49a~49dと略同じ幅をしている。貫通孔46a~46dは、左面視で全体として回転対称(ここでは4回対称)になるような形状をしている。巻取治具49a~49dの各々は、貫通孔46a~46dの各々に沿って第1ガイド部材45の径方向に移動可能である。また、第2ガイド部材47の溝47aは、第2ガイド部材47の中心軸から最も遠い部分と最も近い部分とが第2ガイド部材47の周方向にずれており、その両方の部分を円弧状の曲線で結んだような形状をしている。溝47b~47dについても溝47aと同様の形状をしており、溝47a~47dは、左面視で全体として回転対称(ここでは4回対称)になるような形状をしている。このように、貫通孔46a~46dと溝47a~47dとは形状が異ならせてあり、この貫通孔46a~46dと溝47a~47dとの位置関係によって巻取治具49a~49dの位置が規制されるようになっている。例えば、巻取治具49aは、貫通孔46a及び溝47aによって位置が規制されており、左面視で貫通孔46aと溝47aとが重複する部分に位置するようになっている。巻取治具49b~49dについても同様である。そのため、第1ガイド部材45に対する第2ガイド部材47の回転位置がずれる、すなわち貫通孔46a~46dと溝47a~47dとの位置関係が変化すると、巻取治具49a~49dの各々は第1ガイド部材45の中心からの距離が変化して、巻取部48の巻取り径が変更される。例えば、
図5(a)では、左面視で、貫通孔46a~46dのうち第1ガイド部材45の中心軸から最も遠い部分と、溝47a~47dのうち第2ガイド部材47の中心軸から最も遠い部分と、が重複するように第1ガイド部材45と第2ガイド部材47とが位置している。この状態では、巻取治具49a~49dの各々も第1ガイド部材45及び第2ガイド部材47の中心軸から最も遠い部分に位置することになり、巻取部48の巻取り径(ここでは巻取治具49a~49dの全てを囲み且つ全てに接する円の径)は最大の状態になっている。この状態から第2ガイド部材47が左回りに回転すると、
図5(b)に示すように貫通孔46a~46dと溝47a~47dとの重複部分が変化することで、巻取治具49a~49dの各々は第1ガイド部材45の中心軸に近づいていき、巻取り径が小さくなる。このように、第1ガイド部材45に対する第2ガイド部材47の回転位置が変更されることで、ケーブル16の巻取り径を変更できるようになっている。特に限定するものではないが、巻取り径は、例えば50mm~105mmの間で調整可能であってもよい。
【0027】
第1クラッチ50は、巻取用ギア31と回転軸22との間で回転動力が伝達されるか否かを切り替える機構である。第1クラッチ50は、小径部材51と、ピストン52と、押圧部材53と、大径部材54と、を備えている。小径部材51は、回転軸22と同軸に取り付けられた略円筒状の部材であり、回転軸22と一体的に回転する。大径部材54は、回転軸22及び小径部材51と同軸になるように巻取用ギア31に取り付けられた略円筒状の部材であり、巻取用ギア31と一体的に回転する。ピストン52は、小径部材51の周方向に沿って複数(
図2では2個のみ図示)配設された棒状の部材である。押圧部材53は、複数のピストン52の左端に取り付けられた略円板状の部材である。押圧部材53は、中心を回転軸22が貫通しており、回転軸22と同軸になるように配置されている。小径部材51及びピストン52は、エアーの圧力の有無で動作するエアシリンダとして構成されている。具体的には、ピストン52は、小径部材51内部に配設された図示しないスプリングなどの弾性部材によって左側に押圧されている。また、巻取用ギア31及び大径部材54内に配設された通路58を介して小径部材51内にエアーによる圧力が供給されると、その圧力が小径部材51内の弾性部材の押圧力に打ち勝つことでピストン52が右側に移動する。これにより、通路58内に圧力が供給されている状態では、複数のピストン52及び押圧部材53が右側に移動するため、大径部材54のうち押圧部材53の左方に位置する被押圧部材54aと押圧部材53とが左右に離間し、両者の間で回転動力は伝達されない(
図4)。この
図4の状態(オフ状態とも言う)では、大径部材54及び小径部材51は互いに独立に回転し、巻取用ギア31及び回転軸22も互いに独立に回転する。一方、通路58を介して小径部材51内にエアーが供給されていない状態では、複数のピストン52及び押圧部材53が左側に移動して、押圧部材53が被押圧部材54aを押圧する(
図2)。この
図2の状態(オン状態とも言う)では、押圧部材53が被押圧部材54aを押圧することで両者の間で回転動力が伝達され、両者は一体的に回転する。そのため、押圧部材53及び大径部材54を介して回転軸22と巻取用ギア31とが一体的に回転する。押圧部材53と被押圧部材54aとは、静止摩擦力により一体的に回転するように構成されていてもよいし、両部材に設けられた凸部の係合などにより一体的に回転するように構成されていてもよい。
【0028】
圧力切替部55は、第1クラッチ50のオン状態とオフ状態とを切り替えるための切替機構である。圧力切替部55は、X軸シリンダ56と、移動ブロック57と、を有している。X軸シリンダ56及び移動ブロック57は、支柱23の内部に設けられた空間に配置され、巻取用ギア31の右方に位置している。X軸シリンダ56は、例えばエアシリンダとして構成され、ピストンロッドをX軸方向に沿って移動させることで移動ブロック57をX軸方向(左右)に移動させる。移動ブロック57は、配管57aを備えており、この配管57aには図示しない圧力供給源からエアーを供給可能に構成されている。
図2,
図3のように第1保持部71が回転板35の上端に位置している状態でX軸シリンダ56が移動ブロック57を左側に移動させると、移動ブロック57が巻取用ギア31に押圧されて配管57aと通路58とが連通する。これにより、通路58にエアーの圧力が供給されて、第1クラッチ50は上述したオフ状態になる。一方、X軸シリンダ56が移動ブロック57を右側に移動させた状態では、移動ブロック57と巻取用ギア31とが離間することで通路58にエアーの圧力は供給されない状態になり、第1クラッチ50は上述したオン状態になる。このように、圧力切替部55は、通路58の圧力の有無を切り替えることで、第1クラッチ50のオン状態とオフ状態とを切り替える。
【0029】
第2クラッチ60は、径変更用ギア41と回転軸22との間で回転動力が伝達されるか否かを切り替える機構である。第2クラッチ60は、例えば電磁クラッチとして構成され、本体部61と、アーマチュア62と、を備えている。本体部61は、回転軸22と同軸になるように径変更用ギア41に取り付けられた略円筒状の部材であり、径変更用ギア41と一体的に回転する。アーマチュア62は、回転軸22と同軸に取り付けられており、回転軸22と一体的に回転する。本体部61は内部に図示しないコイルを有しており、このコイルに通電されることでアーマチュア62は本体部61側に吸引されて、本体部61とアーマチュア62とが係合した状態になる(
図4)。この
図4の状態(オン状態とも言う)では、本体部61とアーマチュア62とが係合することで両者の間で回転動力が伝達され、両者は一体的に回転する。そのため、第2クラッチ60を介して径変更用ギア41と回転軸22とが一体的に回転する。一方、径変更用ギア41のコイルに通電されていない状態では、アーマチュア62は第2クラッチ60が有する図示しないスプリングの弾性力などにより左側に引っ張られることで本体部61とアーマチュア62とが左右に離間し、両者の間で回転動力は伝達されない(
図2)。この
図2の状態(オフ状態とも言う)では、径変更用ギア41及び回転軸22は互いに独立して回転する。
【0030】
第1保持部71は、ガスセンサ10のうちセンサ部12とコネクタ部14との一方を保持する機構であり、本実施形態ではコネクタ部14を保持する。第1保持部71は、挟持部72,72と、スプリング73と、被操作部74と、Y軸レール75と、固定部材76とを有している(
図2,
図3,
図6参照)。挟持部72,72は、例えば板状の部材であり、互いに前後に配置されている。後側の挟持部72は、固定部材76を介して回転板35に取り付けられている。前側の挟持部72は、被操作部74に取り付けられている。スプリング73は、両端がそれぞれ挟持部72,72に取り付けられた弾性部材であり、挟持部72,72に対して互いがY軸方向に近づく方向に張力を作用させる。第1保持部71は、このスプリング73の張力により、挟持部72,72の間に配置されたコネクタ部14を挟持部72,72によって挟持して保持する。被操作部74は、固定部材76の左側に配設されたY軸レール75に沿って前後に移動可能である。この被操作部74は、上方に突出した部分とその部分の上端からさらに右側に突出した部分とを有しており、この右側に突出した部分が前方に押圧されるとY軸レール75に沿って前方に移動する。この被操作部74の移動に伴って、前側の挟持部72も前方に移動する。固定部材76は、回転板35の右側に位置し、
図2,
図3における回転板35の上端付近で回転板35に取り付けられている。これにより、回転板35と第1保持部71とは一体的に回転する。
【0031】
第1保持切替部77は、第1保持部71の保持状態と解放状態とを切り替えるための切替機構である。第1保持切替部77は、X軸シリンダ77aと、Y軸シリンダ77bと、X軸レール78と、を備えており、これらは支柱23の上部に配置されている。X軸シリンダ77aは、例えばエアシリンダとして構成され、ピストンロッドをX軸方向に沿って移動させることでY軸シリンダ77bをX軸方向(左右)に移動させる。Y軸シリンダ77bは、X軸レール78に沿ってX軸方向に移動可能である。Y軸シリンダ77bは、例えばエアシリンダとして構成され、ピストンロッドをY軸方向に沿って移動させることで被操作部74を後方に移動させる。被操作部74は回転板35と共に回転移動するが、被操作部74が所定位置(ここでは
図2,
図3に示す位置)にあるときには、Y軸シリンダ77bによって移動可能な状態になる。
【0032】
第2保持部81は、ガスセンサ10のうちセンサ部12とコネクタ部14との他方を保持する機構であり、本実施形態ではセンサ部12を保持する。第2保持部81は、第1保持部71及び巻取部48よりも下方に位置している。第2保持部81は、挟持部82,82と、Z軸レール83と、を備えている。挟持部82,82は、例えば板状の部材であり、互いに前後に配置されている。本実施形態では、挟持部82,82は可動せず、挟持部82,82の凹部にセンサ部12の一部(ここではフランジ部)が嵌まり込むことにより、センサ部12が保持される。ただし、挟持部82,82の少なくとも一方が前後に移動可能であり、且つ第2保持部81が挟持部82,82に対して互いがY軸方向に近づく方向に張力を作用させる図示しないスプリングを有しており、このスプリングの張力により挟持部82,82がセンサ部12を保持してもよい。また、第2保持部81は、挟持部82,82の少なくとも一方を移動(例えば前後への移動又は回転移動など)させてセンサ部12の保持と解放とを切り替えるための切替機構を有していてもよい。この切替機構は、例えばエアシリンダなど、エアーの圧力によって挟持部82,82の少なくとも一方を移動させる機構としてもよい。Z軸レール83は、支柱84に取り付けられている。挟持部82,82は、このZ軸レール83に沿って上下に移動可能である。これにより、第2保持部81は、センサ部12が上下に移動するのを許容しつつセンサ部12を保持する。第2保持部81の挟持部82,82は、
図2に示すように、第1保持部71の挟持部72,72の真下ではなく、挟持部72,72の下方且つ左側にずれた位置に配置されている。これにより、第1,第2保持部71,81は、ケーブル16の両端を結ぶ直線が第1保持部71の回転移動の回転軸方向(ここではX軸方向)に垂直な平面(ここではYZ平面)に対して傾斜するような位置関係で、センサ部12とコネクタ部14とを保持する。すなわち、ケーブル16のうちセンサ部12側の端部とコネクタ部14側の端部とを結んだ直線(
図2ではケーブル16に沿った直線)とYZ平面とのなす角θ1が0°超過90°未満となるように、第1保持部71及び第2保持部81の配置が定められている。なす角θ1は、45°以下としてもよいし、30°以下としてもよい。
【0033】
制御装置90は、制御部の一例である。制御装置90は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶するROM、作業領域として用いられるRAM、各種データを記憶するHDDなどを備えている。制御装置90はケーブル巻取装置20全体を制御する。制御装置90には、LCDなどの表示部91と、キーボードやマウスなどの操作部92と、が接続されている。制御装置90は、巻取用モータ33,径変更用モータ43,X軸シリンダ56,第2クラッチ60,X軸シリンダ77a,Y軸シリンダ77b,及び表示部91に制御信号を出力する。また、制御装置90は、巻取用モータ33及び径変更用モータ43からの位置検出信号,及び操作部92からの操作信号などを入力する。
【0034】
次に、こうして構成されたケーブル巻取装置20の動作について説明する。ケーブル巻取装置20によるケーブル巻取方法は、
(a)第1保持部71がセンサ部12とコネクタ部14との一方(ここではコネクタ部14)を保持するステップと、
(b)巻取機構30が巻取部48の周囲を回るように第1保持部71を回転移動させることで、ケーブル16を巻取部48に巻き取らせるステップと、
を含む。
【0035】
ケーブル巻取装置20は、ステップ(a)を行う前に、必要に応じて巻取部48の巻取り径を調整する。例えば、操作部92を介して作業者から巻取り径を指定する情報を入力すると、制御装置90は、取得した情報に基づいて巻取り径の調整を行う。制御装置90は、まず、
図4に示すように第1クラッチ50がオフ状態且つ第2クラッチ60がオン状態になるように、第1クラッチ50及び第2クラッチ60を制御する。制御装置90は、圧力切替部55のX軸シリンダ56を動作させて通路58に圧力を供給することにより、第1クラッチ50をオフ状態にする。制御装置90は、本体部61のコイルに通電することにより、第2クラッチ60をオン状態にする。そして、制御装置90は、この状態で径変更用モータ43を回転させる。これにより、径変更用モータ43からの回転駆動力は径変更用ギア41,第2クラッチ60,及び回転軸22を介して第2ガイド部材47に伝達され、第2ガイド部材47が回転する。一方、第1クラッチ50がオフ状態であるため、径変更用モータ43からの回転駆動力は回転板35及び第1ガイド部材45には伝達されない。これにより、上述したように第1ガイド部材45に対する第2ガイド部材47の回転位置が変更されて、ケーブル16の巻取り径が変更される。制御装置90は、径変更用モータ43の回転量を制御することで、指定された巻取り径になるように第2ガイド部材47を回転させる。巻取り径を変更する際には、制御装置90は、巻取用モータ33が備える電磁ブレーキを動作させて、第1ガイド部材45が回転しないようにしてもよい。ここでは、巻取部48の巻取り径は最大の状態に調整された場合を例として、以降の説明を行う。
【0036】
巻取り径を調整すると、制御装置90は、ステップ(a)の準備として、まず、
図2に示すように第1クラッチ50がオン状態且つ第2クラッチ60がオフ状態になるように、第1クラッチ50及び第2クラッチ60を制御する。この状態では、径変更用モータ43からの回転駆動力は回転軸22には伝達されなくなる。また、巻取用モータ33からの回転駆動力は回転板35及び第1保持部71に伝達されるだけでなく、第1クラッチ50及び回転軸22を介して第2ガイド部材47にも伝達される。これにより、回転板35,第1ガイド部材45,及び第1保持部71が一体的に回転するだけでなく、第2ガイド部材47及び巻取部48もこれらと一体的に回転する。したがって、この状態では第1ガイド部材45と第2ガイド部材47との位置関係がずれることはない。そして、制御装置90は、必要に応じて巻取用モータ33を回転駆動させて、第1保持部71を
図2,
図3に示す所定位置に移動させる。すなわち、制御装置90は、第1保持部71を第1保持切替部77によって切替可能な状態にする(
図2,
図3,及び
図6(a))。
【0037】
ステップ(a)の準備を行うと、制御装置90は、ステップ(a)として、まず、X軸シリンダ77aによりY軸シリンダ77bを左に移動させる(
図6(b))。続いて、制御装置90は、X軸シリンダ77aにより被操作部74を後方に移動させる(
図6(c))。これにより、挟持部72,72同士の距離が開いて解放状態になり、挟持部72,72の間にコネクタ部14を挿入可能になる。そして、制御装置90は、コネクタ部14が挿入された後にX軸シリンダ77a,Y軸シリンダ77bを動作させて被操作部74の後方への移動を解除する(
図6(d))。これにより、被操作部74及び前方の挟持部72はスプリング73の張力で後方に移動し、挟持部72,72の間にコネクタ部14が保持される。なお、挟持部72,72間へのコネクタ部14の挿入は、例えばケーブル巻取装置20が備える図示しないロボットアームを制御装置90が制御して、このロボットアームにより行ってもよい。あるいは、作業者が挟持部72,72間にコネクタ部14を挿入してもよい。挟持部72,72間に保持されているコネクタ部14の向きは、所定の向きになるように調整することが好ましい。すなわち、ケーブル16の巻き取りを複数のガスセンサ10について順次行うにあたり、コネクタ部14の向きが常に同じになるようにすることが好ましい。本実施形態では、所定の向きは、
図6(d)に示すように、コネクタ14aが前方を向く向きとして定められている。
【0038】
ステップ(a)の後、
図2に示すように
センサ部12が
第2保持部81に保持された状態にするステップを行う。このステップは、挟持部72,72へのコネクタ部14の挿入と同様に、制御装置90がロボットアームを制御して行ってもよいし、作業者が行ってもよい。この状態では、上述したようにケーブル16のうちセンサ部12側の端部とコネクタ部14側の端部とを結んだ直線(
図2ではケーブル16に沿った直線)とYZ平面とのなす角θ1が0°超過90°未満となる。この状態において、挟持部82,82はZ軸レール83に沿った上下の移動範囲の最下端よりも少し上方に位置することが好ましい。これにより、ステップ(b)の巻取り開始前の状態において、センサ部12及び挟持部82,82の自重によりケーブル16に張力がかかり、ケーブル16がたわまずに伸びた状態になる。
【0039】
上述したステップ(a),巻取り径の調整、及び第2保持部81によるセンサ部12の保持は、順序を入れ替えて行ってもよい。
【0040】
次に、制御装置90は、ステップ(b)を行う。すなわち、第1クラッチ50がオン状態且つ第2クラッチ60がオフ状態となっている状態で、制御装置90は巻取用モータ33を回転駆動させる。
図7は、ケーブル16を巻取部48に巻き取らせる様子を示す説明図である。
図7(a)は、
図2と同じ状態すなわち巻取り開始時の状態であり、
図7(b)は第1保持部71を右回りに90°回転させた状態、
図7(c)は第1保持部71を180°回転させた状態、
図7(d)は第1保持部71を1回転させた状態の説明図である。制御装置90が巻取用モータ33を回転駆動させることにより、
図7(a)の状態から、第1保持部71,回転板35及び巻取部48が回転していき、これに伴ってコネクタ部14も回転することで、ケーブル16は巻取部48に巻き取られていく(
図7(b)~(d))。このとき、挟持部82,82はZ軸レール83によって上方に移動可能であるため、ケーブル16の巻取りに伴って挟持部82,82及びセンサ部12も上方に移動していく。また、このときケーブル16にはセンサ部12及び挟持部82,82の自重により張力がかかる。
図7(d)は、第1保持部71を1回転させた状態、すなわちケーブル16の巻数が値1である状態を示している。制御装置90は、必要に応じて第1保持部71を2周以上回転させて、ケーブル16の巻き数を2以上としてもよい。特に限定するものではないが、ケーブル16の巻数は、値1~3の間で可変としてもよい。制御装置90は、例えば操作部92を介して作業者から巻数を指定する情報を入力して、入力した情報に基づいて巻数を決定して第1保持部71を回転させる回数を決定してもよい。本実施形態では、ステップ(b)における巻数を値1とした。
【0041】
図8は、巻取り完了時のケーブル16の様子を示す説明図である。
図8は、
図7(d)の状態の正面図に相当する。
図8に示すように、ケーブル16は螺旋状に巻取部48に巻付けられており、巻取部48に巻き取られたケーブル16同士が径方向に重なっていない。すなわち、巻取部48に巻き取られたケーブル16のさらに外側にケーブル16が巻き付くような状態になっていない。
図2に示したように、なす角θ1が0°超過90°未満となるように第1保持部71と第2保持部81とが配置されていることで、このようにケーブル16を螺旋状に巻き取らせやすい。
図8に示す、ケーブル16のうち巻取部48に巻き取られた部分とYZ平面とのなす角θ2は、例えば0°超過且つなす角θ1未満になってもよい。
【0042】
以上のように制御装置90がガスセンサ10のケーブル16の巻取りを完了すると、ガスセンサ10の取り外しを行う。例えば、作業者がケーブル16のうち巻取部48に巻き取られた部分を結束バンドなどで束ねた後に、制御装置90が第1保持切替部77を制御して挟持部72,72を解放状態(
図6(c))とし、作業者がケーブル16を巻取部48から外して、ガスセンサ10を取り外す。ケーブル16を束ねる作業及びガスセンサ10の取り外し作業の少なくとも一方についても、制御装置90がロボットアームなどを用いて自動的に行ってもよい。取り外されたガスセンサ10は、例えば
図9に示す搬送用トレイ95に順次収容され、搬送用トレイ95ごと搬送される。ケーブル巻取装置20は、複数のガスセンサ10について順次ケーブル16の巻取りを行っていく。
図9に示す搬送用トレイ95は、センサ部12,コネクタ部14,ケーブル16の各々を収容可能な窪みである第1~第3収納部95a~95cが設けられている。第1,第2収納部95a,95bの各々は、収容可能なガスセンサ10の数(ここでは5個)に対応して複数設けられている。第3収納部95cは、複数のガスセンサ10で共通である。このように搬送用トレイ95にガスセンサ10を収納する場合、複数のガスセンサ10のケーブル16が同じように巻き取られていないと、うまく収納できない場合がある。例えば、ケーブル16の巻取り部に対するコネクタ部14の向きがケーブル16の軸を中心として90°回転した状態(
図9においてコネクタ14aが紙面手前を向くような状態)になっていると、コネクタ部14が第1収納部95a内に収まらなかったり、搬送用トレイ95から紙面手前方向にコネクタ部14が突出してしまったりする場合がある。あるいは、ケーブル16の巻取り径が複数のガスセンサ10間で異なると、ケーブル16のうち巻き取られた部分以外の部分の長さ、すなわち巻き取られた部分とセンサ部12との接続部分の長さ及び巻き取られた部分とコネクタ部14との接続部分の長さが複数のガスセンサ10間で異なる場合がある。このような場合は、接続部分の長さによってはセンサ部12及びコネクタ部14の少なくとも一方が対応する第1,第2収納部95a,95bに収納できなくなることがある。例えば作業者の手作業のみでケーブル16を巻き取ると、これらの状態が発生しやすい。これに対して本実施形態のケーブル巻取装置20では、常に一定の巻取り径でケーブル16を巻き取ったり、コネクタ部14の向きを同じ向きにしたりしやすい。そのため、搬送用トレイ95にガスセンサ10を収容しやすい。
【0043】
以上詳述した本実施形態のケーブル巻取装置20によれば、第1保持部71がガスセンサ10のセンサ部12とコネクタ部14との一方(ここではコネクタ部14)を保持し、その状態で第1保持部71が巻取部48の周囲を回るように巻取機構30が第1保持部71を回転移動させることで、ケーブル16を巻取部48に巻き取らせる。これにより、例えば人間が手作業のみでケーブル16の巻き取りを行う場合と比較して、複数のガスセンサ10のケーブル16を同じように精度良く巻き取ることができる。
【0044】
また、ケーブル巻取装置20は、センサ部12とコネクタ部14との他方(ここではセンサ部12)が巻取部48に接近する方向(ここでは略上方)に移動するのを許容しつつセンサ部12を保持する第2保持部81を備えている。これにより、第2保持部81は、センサ部12の移動を許容することで巻取機構30によるケーブル16の巻取りは阻害しないようにしつつ、センサ部12を保持できる。そのため、例えば巻取り時にセンサ部12を保持しない場合と比較して、巻取り時にセンサ部12が他の物体に衝突することなどを抑制して、センサ部12の損傷を抑制できる。
【0045】
さらに、第2保持部81は、センサ部12が巻取部48に接近する方向(ここでは略上方)に移動する際にケーブル16に張力を加えるように構成されている。したがって、張力によりケーブル16がたわまないようにしつつ巻取部48にケーブル16を巻き取らせることができる。しかも、第2保持部81は巻取部48よりも下方に位置しており、センサ部12が巻取部48に接近する方向(ここでは略上方)は、水平面(ここではXY平面)と交差する方向である。これにより、ガスセンサ10の自重によってケーブル16の巻き取り時にケーブル16に張力を加えることができる。そのため、本実施形態のケーブル巻取装置20は、例えばケーブル16に張力を加えるために動力を出力する機構(例えば第2保持部81に対して下方に力を加える動力を出力する機構)を省略している。これにより、ケーブル巻取装置20の装置構成を簡略化しつつケーブル16のたわみを抑制できる。
【0046】
さらにまた、第1,第2保持部71,81は、ケーブル16の両端を結ぶ直線が第1保持部71の回転移動の回転軸方向に垂直な平面(ここではYZ平面)に対して傾斜するような位置関係で、センサ部12とコネクタ部14とを保持する。これにより、例えばケーブル16の両端を結ぶ直線がYZ平面と平行になっている場合(
図2のなす角θ1が0°の場合)と比較して、巻取部48に巻き取られたケーブル16同士が径方向に重なってしまうことを抑制できる。そのため、巻き取られたケーブル16の外径が増大してしまうのを抑制できる。
【0047】
そしてまた、巻取部48は、長手方向が第1保持部71の回転移動の回転軸に沿って配設された巻取治具49を複数有している。そして、ケーブル巻取装置20は、複数の巻取治具49の互いの距離を変更することで巻取部48に巻き取られるケーブル16の巻取り径を変更する巻取径変更機構40を備えている。これにより、ケーブル16の巻取り径を変更できるから、所望の巻取り径でケーブル16の巻き取りを行いやすい。
【0048】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、ケーブル巻取装置20は巻取径変更機構40を備えていたが、これに限らず、巻取り径は常に固定としてもよい。あるいは、巻取径変更機構40を備えずに、作業者が巻取り径を変更できるようにケーブル巻取装置20が構成されていてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、巻取部48は4個の巻取治具49を有していたが、これに限られない。例えばケーブル16の柔軟性に応じて、巻取治具49の数を定めてもよい。ただし、巻取治具49は3個以上とすることが好ましく、4個以上とすることがより好ましい。また、巻取り径を変更しないのであれば、巻取部48は複数の巻取治具49を備える必要はなく、例えば巻取部48は巻取り径と同じ外形の円柱状の部材としてもよい。
【0051】
上述した実施形態では、
図2のなす角θ1が0°超過90°未満となるように、第1保持部71及び挟持部82の配置が定められていたが、これに限らずなす角θ1が0°となるように第1保持部71及び第2保持部81の配置が定められていてもよい。例えばコネクタ部14の真下でセンサ部12を保持するように第1保持部71及び第2保持部81の配置が定められていてもよい。
【0052】
上述した実施形態では、第1保持部71がコネクタ部14を保持し第2保持部81がセンサ部12を保持したが、これに限らず保持する部分を逆にしてもよい。また、ケーブル巻取装置20が第2保持部81を備えなくてもよい。
【0053】
上述した実施形態では、第2保持部81が上下に移動可能であることで、ケーブル16が巻取部48に巻き取られる際にセンサ部12及び挟持部82,82の自重によりケーブル16に張力を加えたが、これに限られない。例えば第2保持部81に対して巻取部48から離間する方向(例えば下方向)に力を加えるための動力を出力する機構をケーブル巻取装置20が備えていてもよい。例えば、第2保持部81が、動力を出力してZ軸レール83に沿って挟持部82,82を上下に移動させるスライダなどの移動機構を備えていてもよい。この移動機構は、例えばモータとボールネジとの組合せなどの動力出力機構を備えていてもよい。この場合において、巻取用モータ33による巻取部48の回転速度と動力出力機構による第2保持部81の上昇速度とを連動させる機構をさらに備えていてもよい。あるいは、制御装置90が、巻取部48の回転速度と第2保持部81の上昇速度とを連動させるように巻取用モータ33及び動力出力機構を制御してもよい。巻取部48の回転速度と第2保持部81の上昇速度とを連動させることで、ケーブル16に加わる張力を巻取部48の回転速度に応じて適切な値に調整することができる。これにより、センサ部12及び挟持部82,82の自重のみでケーブル16に張力を加える場合と比較して、自重が軽すぎることによるケーブル16のたわみをより抑制したり、自重が重すぎることによるケーブル16の引っ張りすぎをより抑制したりできる。また、センサ部12及び挟持部82,82の自重によりケーブル16に張力を加えない場合は、挟持部82,82がセンサ部12の移動を許容する方向が水平面と平行であってもよい。例えば、ケーブル巻取装置20において、第1保持部71の回転軸及び巻取部48の長手方向が上下方向に沿っており、第1保持部71と第2保持部81とが同じ水平面上に配置されており、第2保持部81はケーブル16の巻取りに伴ってセンサ部12が水平方向に移動するのを許容するように構成されていてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、巻取径変更機構40は、第1ガイド部材45に対する第2ガイド部材47の位置(回転位置)をずらすことで、巻取部48の巻取り径を変更したが、これに限らずどのような機構で巻取部48の巻取り径を変更してもよい。また、貫通孔46a~46d及び溝47a~47dの形状は、上述した実施形態に限られない。例えば、左面視での貫通孔46a~46dの形状と溝47a~47dの形状とを、上述した実施形態と逆にしてもよい。あるいは、溝47a~47dの左面視の形状を略長方形状(例えば角丸の長方形状)としてもよい。この場合も、溝47a~47dの各々が、第2ガイド部材47の中心軸から最も遠い部分と最も近い部分とが第2ガイド部材47の周方向にずれている形状をしていれば、上述した実施形態と同様に巻取り径を変更できる。
【0055】
上述した実施形態では、ケーブル巻取装置20は、第1保持部71と一体的に巻取部48を回転させたが、これに限られない。例えば、巻取部48は回転させなくてもよい。
【0056】
上述した実施形態では、第1クラッチ50はエアーの圧力の有無によりオン状態とオフ状態とが切り替わる機構としたが、これに限られない。例えば第1クラッチ50は第2クラッチ60と同様の電磁クラッチとしてもよい。
【0057】
上述した実施形態では、第1保持部71及び第2保持部81の配置が定められておりなす角θ1が固定であったが、これに限られない。ケーブル巻取装置20は、第1保持部71及び第2保持部81の少なくとも一方を、第1保持部71の回転移動の回転軸方向に沿って移動させることで、なす角θ1を変更する傾斜角変更機構、を備えていてもよい。例えば
図10に示す変形例のケーブル巻取装置20Aを採用してもよい。このケーブル巻取装置20Aは、上述したケーブル巻取装置20の構成要素に加えて、第2保持部移動機構85(傾斜角変更機構の一例)を備えている。第2保持部移動機構85は、挟持部82,82とレール83との間に配設されている。第2保持部移動機構85は、例えばモータとボールネジとを備えており、レール83に対して挟持部82,82を左右方向に移動させる。また、第2保持部移動機構85はレール83に沿って上下に移動可能であり、これにより挟持部82,82も第2保持部移動機構85と一体的に上下に移動する。第2保持部移動機構85は、挟持部82,82を左右に移動させることで、なす角θ1を変更する。ここで、
図8に示した巻取後のなす角θ2は、巻取前のなす角θ1とケーブル16の長さとによって変化する。そして、なす角θ2が小さすぎると巻取部48に巻き取られたケーブル16同士が径方向に重なってしまう場合があり、なす角θ2が大きすぎると巻取部48に巻き取られたケーブル16同士が離れすぎてしまう場合がある。第2保持部移動機構85によってなす角θ1をケーブル16に応じて(例えばケーブル16の長さや太さに応じて)適切に調整することで、なす角θ2を適切に調整できる。例えば、制御装置90が、ケーブル16の長さや太さなどの情報に基づいて第2保持部移動機構85を制御して、なす角θ1を調整してもよい。また、制御装置90は、巻取り中にも第2保持部移動機構85を制御してケーブル16の傾斜の角度を調整してもよい。
図10のケーブル巻取装置20Aでは、第2保持部移動機構85がなす角θ1を調整したが、例えば第2保持部移動機構85と同様の機構を第1保持部71の挟持部72,72と固定部材76との間に配設して、この機構により第1保持部71(特に挟持部72,72)を左右方向に移動させるようにしてもよい。こうしても、なす角θ1を変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、自動車の排気ガスなどの被測定ガスにおけるNOxなどの特定ガス濃度を検出するガスセンサの製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 ガスセンサ、12 センサ部、14 コネクタ部、14a コネクタ、14b 電極、16 ケーブル、20,20A ケーブル巻取装置、22 回転軸、23 支柱、24 ベアリング、30 巻取機構、31 巻取用ギア、32 ベアリング、33 巻取用モータ、33a ギア、34 ベルト、35 回転板、36 接続部材、40 巻取径変更機構、41 径変更用ギア、42 ベアリング、43 径変更用モータ、43a ギア、44 ベルト、45 第1ガイド部材、46,46a~46d 貫通孔、47 第2ガイド部材、47a~47d 溝、48 巻取部、49,49a~49d 巻取治具、50 第1クラッチ、51 小径部材、52 ピストン、53 押圧部材、54 大径部材、54a 被押圧部材、55 圧力切替部、56 X軸シリンダ、57 移動ブロック、57a 配管、58 通路、60 第2クラッチ、61 本体部、62 アーマチュア、71 第1保持部、72 挟持部、73 スプリング、74 被操作部、75 Y軸レール、76 固定部材、77 第1保持切替部、77a X軸シリンダ、77b Y軸シリンダ、78 X軸レール、81 第2保持部、82 挟持部、83 Z軸レール、84 支柱、85 第2保持部移動機構、90 制御装置、91 表示部、92 操作部、95 搬送用トレイ、95a~95c 第1~第3収納部。