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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3063 20060101AFI20220208BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20220208BHJP
   C25F 3/08 20060101ALI20220208BHJP
   C25F 5/00 20060101ALI20220208BHJP
   C25F 7/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
H01L21/306 L
H01L21/306 R
C25F3/08
C25F5/00
C25F7/00 L
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018043388
(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公開番号】P2019054227
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2017053310
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017185305
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】吉水 康人
(72)【発明者】
【氏名】明星 裕也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 冬馬
(72)【発明者】
【氏名】北川 白馬
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/159973(WO,A1)
【文献】特開2016-156038(JP,A)
【文献】特開2004-319609(JP,A)
【文献】特開2015-128161(JP,A)
【文献】特開平08-162425(JP,A)
【文献】特開2004-055615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3063
H01L 21/306
C25F 3/08
C25F 5/00
C25F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属を含む凹凸形状部分または多孔質形状部分を有する貴金属含有部材と、
薬液を供給する薬液供給部材と、を備え、
前記貴金属含有部材は、第1貴金属含有部材と、前記第1貴金属含有部材よりも凸部のピッチが小さい第2貴金属含有部材と、を有し、
所定の金属表面に前記凹凸形状部分の凸部または前記多孔質形状部分を接触させつつ、前記薬液を前記金属表面に供給して前記金属をエッチング除去する、基板処理装置。
【請求項2】
前記凹凸形状部分は、多孔質材を表面に有する凹凸面である、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記貴金属含有部材を昇降可能に保持する第1保持部材と、前記所定の金属表面を回転可能に保持する第2保持部材と、をさらに備える、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記貴金属は、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、およびパラジウム(Pd)の少なくともいずれかを含む、請求項1から3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記貴金属含有部材は、前記薬液供給部材と連通する複数の通液孔を有する、
請求項1から4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記薬液を冷却する冷却機構をさらに備える、請求項1からのいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
貴金属を含む凹凸形状部分または多孔質形状部分を有する貴金属含有部材と、
薬液を供給する薬液供給部材と、を備え、
所定の金属表面に前記凹凸形状部分の凸部または前記多孔質形状部分を接触させつつ、前記薬液を前記金属表面に供給して前記金属をエッチング除去する基板処理装置であって、
前記貴金属含有部材は、前記薬液供給部材と連通する複数の通液孔を有し、
前記貴金属含有部材は、前記複数の通液孔を通過した薬液とともに前記金属をエッチング除去する複数の毛状部材を有し、各毛状部材は、導電体と、前記貴金属を含む貴金属膜と、前記導電体と前記貴金属膜との間に設けられ、前記貴金属よりも比抵抗の小さい金属膜と、を有する、基板処理装置。
【請求項8】
前記貴金属含有部材は、前記貴金属のナノ粒子を含んだ担体または網状体を有する、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項9】
貴金属を含む凹凸形状部分または多孔質形状部分を有する貴金属含有部材と、
薬液を供給する薬液供給部材と、を備え、
所定の金属表面に前記凹凸形状部分の凸部または前記多孔質形状部分を接触させつつ、前記薬液を前記金属表面に供給して前記金属をエッチング除去する基板処理装置であって、
前記凸部に導電体が設けられている、基板処理装置。
【請求項10】
貴金属を含む凹凸形状部分または多孔質形状部分を有する貴金属含有部材と、
薬液を供給する薬液供給部材と、を備え、
所定の金属表面に前記凹凸形状部分の凸部または前記多孔質形状部分を接触させつつ、前記薬液を前記金属表面に供給して前記金属をエッチング除去する基板処理装置であって、
前記貴金属含有部材は、前記貴金属を含んだ複数の格子体を積層した格子積層体を有する、基板処理装置。
【請求項11】
基板上に金属膜を形成し、
貴金属を前記金属膜に接触させた状態で、薬液を前記金属膜に供給することによって、前記金属膜をエッチング除去する、基板処理方法であって、
前記貴金属を含む第1貴金属含有部材で前記金属膜をエッチングした後、前記第1貴金属含有部材よりも凸部のピッチが小さい第2貴金属含有部材で前記金属膜をエッチングする、基板処理方法
【請求項12】
前記金属膜をエッチング除去することで、前記金属膜に形成されたパターン表面を露出する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記薬液は、アルカリ性である、請求項1または1に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記貴金属は凹凸状の表面を有し、前記凹凸表面を前記金属膜に接触させた状態で、前記薬液を前記金属膜に供給する、請求項1から1のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記貴金属は多孔質状であり、前記多孔質状の貴金属を前記金属膜に接触させた状態で、前記薬液を前記金属膜に供給する、請求項1から1のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記薬液を冷却して前記金属膜をエッチングする、請求項1から1のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項17】
基板上に金属膜を形成し、
貴金属を前記金属膜に接触させた状態で、薬液を前記金属膜に供給することによって、前記金属膜をエッチング除去する、基板処理方法であって、
前記貴金属を含む毛状部材を前記金属膜に接触させながら、前記金属膜をエッチングする、基板処理方法。
【請求項18】
前記貴金属のナノ粒子を含んだ担体または網状体を前記金属膜に接触させながら、前記金属膜をエッチングする、請求項1から1のいずれかに記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理方法の一つに、基板上に形成された金属膜を除去するエッチング工程が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-81389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、より金属膜のエッチングに適した基板処理装置、および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る基板処理装置は、貴金属を含む凹凸形状部分または多孔質形状部分を有する貴金属含有部材と、薬液を供給する薬液供給部材と、を備え、所定の金属表面に前記凹凸形状部分の凸部または前記多孔質形状部分を接触させつつ、前記薬液を前記金属表面に供給して前記金属をエッチング除去する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図である。
図2】貴金属含有部材の底面の一部を拡大した拡大図である。
図3】(a)は、基板のエッチング処理前の状態を示し、(b)は、基板のエッチング処理後の状態を示す。
図4】第2実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図である。
図5】第2実施形態に係る基板のエッチング工程を説明するための模式図である。
図6】第3実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図である。
図7】基板と貴金属含有部材との接触部分を拡大した拡大図である。
図8】第4実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図である。
図9図8に示す基板処理装置の要部を拡大した拡大図である。
図10】(a)は第5実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図であり、(b)は(a)に示す切断線A-Aに沿った断面図である。
図11】(a)は第5実施形態の貴金属含有部材10の拡大図であり、(b)は、(a)に示す毛状部材の拡大図である。
図12】(a)は第6実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図であり、(b)は第1貴金属含有部材の拡大図であり、(c)は第2貴金属含有部材の拡大図である。
図13】(a)は第1貴金属含有部材の変形例を示す拡大図であり、(b)は第2貴金属含有部材の変形例を示す拡大図である。
図14】第7実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図である。
図15】(a)は第7実施形態における基板のエッチング処理前の状態を示し、(b)は基板のエッチング処理後の状態を示す。
図16】第8実施形態の貴金属含有部材に設けられた毛状部材の拡大図である。
図17】(a)は、第9実施形態に係る貴金属含有部材の概略的な構成を示す図であり、(b)および(c)は担体の変形例を示す。
図18】(a)は第10実施形態に係る貴金属含有部材の概略的な構成を示す図であり、(b)は網状体の拡大図である。
図19】第11実施形態に係る貴金属含有部材の底面の一部を拡大した拡大図である。
図20】(a)~(c)は、第11実施形態に係る貴金属含有部材の変形例を示す図である。
図21】第12実施形態に係る貴金属含有部材の底面の一部を拡大した拡大図である。
図22】格子積層体の分解斜視図である。
図23】第12実施形態におけるエッチング処理中の状態を示す。
図24】第13実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図である。図1に示す基板処理装置1は、基板100の処理装置であり、貴金属含有部材10と、薬液供給ノズル20(薬液供給部材)と、保持部材30(第1保持部材)と、保持部材31(第2保持部材)と、を備える。
【0009】
図2は、貴金属含有部材10の底面の一部を拡大した拡大図である。本実施形態では、貴金属含有部材10は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ウレタン、テフロン(登録商標)、イオン交換樹脂といった多孔質部材で構成されている。貴金属含有部材10の底面は、図2に示すように、凹凸面に形成されている。この凹凸面における凸部のピッチpが狭すぎると、薬液200が凹凸面内に入り込みにくくなる。その一方で、ピッチpが広すぎると、貴金属含有部材10と基板100との接触が不十分になることが懸念される。そのため、ピッチpは、数十μmの範囲内であることが望ましい。また、凹凸面の高さが低すぎると薬液200が凹凸面内に入り込みにくくなる。そのため、高さは、数十μm以上であることが望ましい。
【0010】
上記凹凸面には、基板100と部分的に接触する貴金属膜11が設けられている。貴金属膜11は、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、およびパラジウム(Pd)の少なくともいずれかを含んでいることが望ましい。また、貴金属膜11は、例えば、スパッタ法、無電解めっき法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、またはALD(Atomic Layer Deposition)法などによって、上記凹凸面に成膜される。無電解めっき法で貴金属膜11を成膜する場合には、貴金属膜11との密着性を高めるために貴金属含有部材10にイオン交換樹脂を用いることが望ましい。また、テフロンを用いた多孔質部材にスパッタ法で貴金属膜11を成膜する場合には、テフロン表面に予めプラズマ処理を施すことによって、薬液200に対する耐性を維持しつつ貴金属膜11との密着性を高めることができる。
【0011】
図1に戻って、本実施形態では、薬液供給ノズル20は、基板100と上記貴金属膜11との接触部分に向けてアルカリ性の薬液200を吐出するノズルを含む。薬液200は、アルカリ性液と酸化剤との混合液であることが望ましい。アルカリ性液には、例えば、コリン、アンモニア水、および水酸化ナトリウムを用いることができる。一方、酸化剤には、例えば、過酸化水素水およびオゾン水を用いることができる。なお、エッチング効果を高めるために、薬液供給ノズル20から供給される薬液200の温度は、80℃付近であることが望ましい。ただし、薬液200は、アルカリ性に限定されず、エッチング対象の貴金属膜11に含まれた成分に応じて酸性であってもよい。
【0012】
保持部材30は、貴金属含有部材10を昇降可能に保持する。保持部材30は、例えば、昇降機構に連結されているか、または、当該昇降機構の一部として構成されている。
【0013】
保持部材31は、基板100を回転可能に保持する。保持部材31は、例えば、回転機構に連結されているか、または、当該回転機構の回転軸として構成されている。保持部材31は、基板100を載置するステージと連結されていてもよい。
【0014】
次に、図3(a)および図3(b)を参照して、エッチング処理対象である基板100の構造について説明する。図3(a)は、基板100のエッチング処理前の状態を示し、図3(b)は、基板100のエッチング処理後の状態を示す。
【0015】
図3(a)に示すように、エッチング処理前の基板100には、金属膜101が設けられている。金属膜101は積層体102上に設けられている。積層体102は例えばシリコン等を含有する半導体基板上に設けられている。金属膜101は、積層体102にパターン(本実施形態では、積層体102を貫通するスリット)を形成するために積層体102上に形成されたマスクであり、例えば、タングステンを含んでいる。本実施形態において、積層体102のパターンは、例えば金属膜101に形成されたパターンをマスクにしてエッチングすることにより形成される。この金属膜101は、図3(b)に示すように、基板処理装置1のエッチング処理によって除去される。本実施形態において、基板100は積層体102を含むものとして記載し、基板100は換言するとパターンが形成された積層体102を有する半導体装置である。
【0016】
積層体102では、絶縁膜102aと導電膜102bとが交互に設けられている。絶縁膜102aは、例えば、酸化シリコン(SiO)を含んでいる。導電膜102bは、金属膜101と同じくタングステンを含んでいる。導電膜102bは、例えば、3次元メモリのワードラインに用いることができる。なお、基板100の構造は、上記構造に限定されず、何かしらのパターンが形成されているものであればよい。
【0017】
以下、本実施形態に係る基板処理装置1を用いた基板処理方法について説明する。ここでは、基板100のエッチング工程を説明する。
【0018】
まず、図1に示すように、保持部材31に保持された基板100に対して、保持部材30を用いて貴金属含有部材10を下降することによって、貴金属含有部材10の貴金属膜11を基板100の金属膜101に接触させる。このとき、基板100の積層体102、換言するとパターンの損傷を回避するために、基板100に加えられる貴金属含有部材10の圧力は、できるだけ小さいことが望ましい。
【0019】
次に、薬液供給ノズル20が、貴金属膜11と基板100の金属膜101の接触部分に向けて薬液200を吐出する。このとき、貴金属膜11は、図3(a)に示すように、貴金属含有部材10の凹凸面に設けられている。そのため、貴金属膜11の凸部は、パターンの各凸部に設けられた金属膜101はそれぞれと接触し、薬液200は、貴金属膜11の凹部と金属膜101との空隙に入り込み、パターンの各凸部に設けられた金属膜101に供給される。これにより、ガルバニック腐食が発生し、金属膜101のエッチングが促進される。
【0020】
その後、保持部材30を用いて貴金属含有部材10を上昇させると、保持部材31を用いて基板100を回転させる。その後、再び、貴金属含有部材10を下降させ、薬液供給ノズル20から薬液200を供給することによって、前回とは異なる位置に形成された金属膜101がエッチングされる。このようにして、不要な金属膜101が全て除去される。
【0021】
以上説明した本実施形態によれば、基板100の金属膜101に対して貴金属膜11の凸部を部分的に接触させた状態でアルカリ性の薬液200でエッチング処理している。そのため、貴金属膜11と接触している金属膜101は、ガルバニック腐食によって高いエッチング速度で除去される一方で、貴金属膜11と接触していない絶縁膜102aおよび導電膜102bは除去されない。よって、基板100のパターンを損傷させることなく金属膜101のエッチング速度を高めることができる。特に、本実施形態では、エッチング対象の金属膜101と、保護対象の導電膜102bとが、同じ金属(本実施形態ではタングステン)を含んでいたとしても、金属膜101のみを選択的にエッチングすることができ、所望のパターンを有する半導体装置を製造することができる。
【0022】
また、本実施形態では、貴金属含有部材10に多孔質部材を用いているので、この多孔質部材に薬液200を染み込ませることもできる。例えば、薬液供給ノズル20からこの多孔質部材に薬液200を直接供給すれば、薬液200を染み込ませることができる。この場合、新しい(未反応の)薬液200が、貴金属膜11と金属膜101との接触部分に常時供給されるので、金属膜101をより確実に除去することができる。なお、薬液200を貴金属含有部材10に直接供給する場合、貴金属含有部材10の凹凸面からの薬液200の透過を妨げないようにするため、貴金属膜11は、凹凸面の全面ではなく部分的に形成されていることが望ましい。ただし、貴金属膜11自体が多孔質部材の場合、貴金属含有部材10に凹凸面を形成しなくても薬液200は貴金属膜11を透過できる。
【0023】
なお、本実施形態では、薬液を金属膜101の表面に供給しやすいように凹凸表面を有する貴金属含有部材10の凹部を金属膜に接触させず、金属膜101と貴金属含有部材10表面との間に空間を設けている。しかし、貴金属含有部材10の表面は、必ずしも凹凸でなくともよい。薬液200を金属膜101に供給できるのであれば、平坦な貴金属表面を有する貴金属含有部材10を金属膜101に接触させても十分なエッチング効果が期待できる。例えば図1の基板処理装置1を用いて、薬液200を基板100の金属膜101のパターン間に直接供給しつつ、基板を回転させ、金属膜101を貴金属含有部材10の貴金属膜11表面に接触させれば金属膜101をエッチング除去できる。
【0024】
また、本実施形態では、貴金属含有部材10を、基板100上における金属膜101のパターンに接触させているが、他の金属表面、例えばウェハ状の基板100のべベル部に設けられた金属膜に接触させてもよい。この場合、基板100のべベル部に設けられた金属膜を剥離することができる。
【0025】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図である。図4に示す基板処理装置2は、貴金属含有部材10と、処理槽40(薬液供給部材)と、保持部材50(第1保持部材)と、保持部材51(第2保持部材)と、を備える。なお、貴金属含有部材10および基板100の構造については、第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0026】
処理槽40の底部には、供給口41が設けられている。処理槽40は、供給口41から供給されたアルカリ性の薬液200を貯留する。貴金属含有部材10および基板100は、この薬液200に浸漬する。
【0027】
保持部材50は、貴金属含有部材10を処理槽40まで搬送可能に保持する。保持部材50は、例えば、貴金属含有部材10の搬送機構に連結されているか、または当該搬送機構の一部として構成されている。
【0028】
保持部材51は、基板100を処理槽40まで搬送可能に保持する。保持部材51は、例えば、基板100の搬送機構に連結されているか、または当該搬送機構の一部として構成されている。
【0029】
以下、本実施形態に係る基板処理装置2を用いた基板処理方法について図5を用いて説明する。ここでも、第1実施形態と同様に、基板100のエッチング工程を説明する。図5は、第2実施形態に係る基板100のエッチング工程を説明するための模式図である。
【0030】
まず、保持部材50を用いて貴金属含有部材10を処理槽40へ搬送するとともに、保持部材51を用いて基板100を処理槽40へ搬送する。処理槽40内では、貴金属含有部材10と基板100とを接触させる。具体的には、貴金属含有部材10の貴金属膜11と基板100の金属膜101とを部分的に接触させる。このとき、基板100の積層体102の損傷を回避するために、金属膜101と貴金属膜11との接触部分の圧力は、できるだけ小さいことが望ましい。
【0031】
次に、アルカリ性の薬液200を供給口41から処理槽40内に供給する。薬液200が処理槽40内に貯留されると、図4に示すように、貴金属含有部材10および基板100は、薬液200に浸漬する。この薬液200は、貴金属膜11と金属膜101との空隙に入り込む。そのため、第1実施形態と同様に、ガルバニック腐食が発生し、金属膜101のエッチングが促進される。その後、貴金属含有部材10および基板100は、処理槽40から搬出され、当該貴金属含有部材10と別の基板100が処理槽40へ搬入される。
【0032】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、金属膜101をガルバニック腐食によってエッチングすることによって、基板100のパターンの損傷を回避しつつ、高いエッチング速度で金属膜101を除去できる。
【0033】
また、本実施形態では、処理槽40内で金属膜101を一括して除去している。したがって、第1実施形態に比べて、エッチング処理時間を短縮することができる。
【0034】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図である。図6に示す基板処理装置3は、貴金属含有部材10と、薬液供給ノズル20と、駆動機構60と、を備える。なお、薬液供給ノズル20および基板100の構造については、第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0035】
貴金属含有部材10の形状は、複数枚の基板100を保持するベルト形状である。ベルトの表面には、貴金属膜11(図6では不図示)が形成されている。貴金属膜11は、例えばシリコンゴム等の軟質部材上に堆積されていてもよいし、貴金属含有部材10自体が、薄い貴金属膜11のベルトとして成形されていてもよい。
【0036】
駆動機構60は、貴金属含有部材10に取り付けられている。駆動機構60が回転することによって、貴金属含有部材10は薬液供給ノズル20の下方で一方向Xに移動する。つまり、駆動機構60は、ベルトコンベア方式で複数枚の基板100を搬送する。
【0037】
以下、本実施形態に係る基板処理装置3を用いた基板処理方法について説明する。ここでも、第1実施形態と同様に、基板100のエッチング工程を説明する。
【0038】
まず、基板100を反転して貴金属含有部材10上に載置する。そのため、図7に示すように、基板100の金属膜101が貴金属含有部材10の貴金属膜11に接触する。続いて、駆動機構60が貴金属含有部材10を駆動して基板100を搬送する。基板100が薬液供給ノズル20の直下に到達すると、薬液供給ノズル20は、薬液200を吐出する。
【0039】
吐出された薬液200は、基板100から貴金属膜11へ拡散する。このとき、薬液200は、金属膜101と貴金属膜11との空隙にも入り込む。そのため、上述した他の実施形態と同様に、ガルバニック腐食が発生し、金属膜101のエッチングが促進される。
【0040】
その後、駆動機構60が貴金属含有部材10を駆動すると、次の基板100が薬液供給ノズル20の直下に到達し、当該基板100に設けられた金属膜101が同様に除去される。このようにして、貴金属含有部材10に載置された複数の基板100にそれぞれ設けられた金属膜101が、連続的に除去される。
【0041】
以上説明した本実施形態においても、金属膜101をガルバニック腐食によってエッチングすることによって、基板100のパターンの損傷を回避しつつ、高いエッチング速度で金属膜101を除去できる。
【0042】
また、本実施形態では、複数の基板100を連続的にエッチング処理できる。したがって、装置の稼働率を向上させることが可能となる。
【0043】
(第4実施形態)
図8は、第4実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図である。また、図9は、図8に示す基板処理装置4の要部を拡大した拡大図である。
【0044】
図8および図9に示すように、本実施形態に係る基板処理装置4は、貴金属含有部材10と、薬液供給ノズル20と、保持部材70(第1保持部材)と、保持部材71(第2保持部材)と、を備える。なお、薬液供給ノズル20および基板100の構造については、第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0045】
貴金属含有部材10は、複数の基板100を保持する円板状に形成されている。貴金属含有部材10の上面は、凹凸面である。この凹凸面には、図9に示すように、貴金属膜11が設けられている。なお、貴金属含有部材10は、第3実施形態と同様に、シリコンゴム等の軟質部材上に堆積されていてもよいし、貴金属含有部材10自体が、薄い円板として成形されていてもよい。
【0046】
保持部材70は、貴金属含有部材10を回転可能に保持する。保持部材70は、例えば、回転機構に連結されているか、または、当該回転機構の一部として構成されている。
【0047】
保持部材71は、複数の基板100を、貴金属含有部材10と同時に同じ方向に回転可能に保持する。保持部材71は、例えば、保持部材70と同じ回転機構に連結されているか、当該回転機構の一部として構成される。
【0048】
以下、本実施形態に係る基板処理装置4を用いた基板処理方法について説明する。ここでも、第1実施形態と同様に、基板100のエッチング工程を説明する。
【0049】
まず、保持部材71に保持された複数の基板100を、貴金属含有部材10の上に載置する。このとき、金属膜101が貴金属膜11に接触するように、各基板100は反転して保持部材71に保持されている。
【0050】
続いて、保持部材70を用いて貴金属含有部材10を回転させる。貴金属含有部材10の回転と同時に、基板100も同じ方向に回転する。そのため、貴金属含有部材10と基板100との間にはせん断応力がほぼかからない。
【0051】
次に、薬液供給ノズル20がアルカリ性の薬液200を貴金属含有部材10の中心に向けて吐出する。吐出された薬液200は、貴金属含有部材10の回転で発生する遠心力によって、貴金属含有部材10の外周に向かって拡散する。このとき、薬液200は、金属膜101と貴金属膜11との空隙にも入り込む。そのため、上述した他の実施形態と同様に、ガルバニック腐食が発生し、金属膜101のエッチングが促進される。
【0052】
以上説明した本実施形態においても、金属膜101を貴金属膜11と接触させることによって、エッチング速度を高めている。また、本実施形態では、基板100は、貴金属含有部材10と同時に同じ方向に回転するので、これらの間にせん断応力はほぼかからない。よって、基板100のパターンの損傷を回避することができる。
【0053】
(第5実施形態)
図10(a)は、第5実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図である。図10(a)に示すように、本実施形態の基板処理装置5は、薬液200を貴金属含有部材10へ直接供給する通液ノズル80(薬液供給部材)を備える。
【0054】
図10(b)は、図10(a)に示す切断線A-Aに沿った断面図である。図10(b)に示すように、本実施形態の貴金属含有部材10は、複数の通液孔105を有する。各通液孔105は、通液ノズル80と連通している。
【0055】
図11(a)は、貴金属含有部材10の拡大図である。図11(a)に示すように、本実施形態の貴金属含有部材10の底面には、ブラシのように束ねられた柔軟な複数の毛状部材12が設けられている。これらの毛状部材12は、貴金属含有部材10の凹凸形状部分を構成する。
【0056】
図11(b)は、毛状部材12の拡大図である。図11(b)に示すように、毛状部材12では、絶縁体121が芯部を構成している。この絶縁体121は、貴金属膜122で覆われている。絶縁体121は、例えばポリプロピレンを含み、貴金属膜122は例えば白金を含んでいる。貴金属膜122は、絶縁体121を部分的に覆っていてもよいし、絶縁体121全体を覆っていてもよい。また、絶縁体121は、貴金属のナノ粒子で覆われていてもよい。
【0057】
基板処理装置5では、通液ノズル80が薬液200を貴金属含有部材10へ供給すると、この薬液200は、通液孔105を通過して毛状部材12の側面に沿って流れる。これにより、例えば金属膜101(図3参照)のような被加工物をエッチングする際に、図11(b)に示すように、毛状部材12と金属膜101との接触箇所(エッチング箇所)が薬液200で満たされる。
【0058】
金属膜101と毛状部材12の先端部とが接触すると、金属膜101が高電位のアノード領域となり、毛状部材12が低電位のカソード領域となる。この電位差によって、ガルバニック腐食が発生する。このとき、腐食電流Icorrは、下記の式(1)に基づいて算出できる。
【0059】
corr=(Ecathode-Eanode)/(Relectrolyte+Ranode+Rcathode+Ra/e+Rc/e) (1)
式(1)において、起電力Eanodeおよび抵抗Ranodeは、アノード領域の起電力および抵抗をそれぞれ示す。起電力Ecathodeおよび抵抗Rcathodeは、カソード領域の起電力および抵抗をそれぞれ示す。抵抗Relectrolyteは、薬液200の抵抗を示す。接触抵抗Ra/eは、アノード領域と薬液200の接触抵抗、すなわち、金属膜101と薬液200との接触抵抗を示す。接触抵抗Rc/eは、カソード領域と薬液200との接触抵抗、すなわち、毛状部材12と薬液200との接触抵抗を示す。
【0060】
本実施形態では、毛状部材12の先端部が、エッチング時に撓るので、金属膜101と貴金属膜122との接触面積が大きくなる。そのため、アノード領域とカソード領域の接触抵抗Ra/cは、小さくなる。これにより、エッチング速度を効率的に高めることが可能になる。
【0061】
なお、本実施形態では、薬液200は、例えば、導電性の高い強アルカリ液であってもよい。この場合、抵抗Relectrolyte、接触抵抗Ra/e、および接触抵抗Rc/eが小さくなる。そのため、上記の式(1)によれば、腐食電流Icorrが増加するので、エッチング速度を高めることが可能になる。
【0062】
(第6実施形態)
図12(a)は、第6実施形態に係る基板処理装置6の概略的な構成を示す模式図である。図12(a)に示すように、本実施形態の基板処理装置6は、貴金属含有部材10の代わりに、第1貴金属含有部材10aおよび第2貴金属含有部材10bを備える点で、第1実施形態の基板処理装置1と異なる。
【0063】
図12(b)は、第1貴金属含有部材10aの拡大図である。図12(b)に示すように、第1貴金属含有部材10aの底面には、ブラシのように束ねられた柔軟な複数の毛状部材13が設けられている。これらの毛状部材13は、第1貴金属含有部材10aの凹凸形状部分を構成する。毛状部材13の表面には、第5実施形態で説明した毛状部材12と同様に、貴金属膜が形成されている。
【0064】
図12(c)は、第2貴金属含有部材10bの拡大図である。図12(c)に示すように、第2貴金属含有部材10bの底面には、凹凸形状を有するスポンジ14が設けられている。スポンジ14の表面にも、貴金属膜が形成されている。スポンジ14の凸部間のピッチp2(第2ピッチ)は、毛状部材13の先端間のピッチp1(第1ピッチ)よりも小さい。なお、第1貴金属含有部材10aおよび第2貴金属含有部材10bの構造は、上記の構造に限定されない。
【0065】
図13(a)は、第1貴金属含有部材10aの変形例を示す拡大図である。図13(a)に示すように、第1貴金属含有部材10aは、例えば、第1実施形態の貴金属含有部材10と同様に、第1貴金属膜11aで覆われた凹凸形状を有していてもよい。
【0066】
図13(b)は、第2貴金属含有部材10bの変形例を示す拡大図である。図13(b)に示すように、第2貴金属含有部材10bには、第1貴金属膜11aの表面に、第2貴金属膜11bが形成されていてもよい。第2貴金属膜11bのピッチp2(第2ピッチ)は、第1貴金属膜11aのピッチp1(第1ピッチ)よりも小さい。
【0067】
以下、本実施形態に係る基板処理装置6を用いた半導体装置の製造方法について説明する。基板処理装置6は、例えば、図3に示す積層体102上に形成された金属膜101の除去に用いられる。
【0068】
まず、保持部材30で第1貴金属含有部材10aを下降することによって、毛状部材13または第1貴金属膜11aを基板100の金属膜101に接触させる。
【0069】
次に、薬液供給ノズル20が、薬液200を吐出する。その結果、薬液200は、毛状部材12の隙間または貴金属膜11aの凹部に入り込んで金属膜101に供給される。これにより、ガルバニック腐食が発生し、金属膜101のエッチングが促進される。
【0070】
続いて、保持部材30を用いて第1貴金属含有部材10aを上昇させ、保持部材32(第3保持部材)を用いて第2貴金属含有部材10bを下降させる。その後、再び、薬液供給ノズル20から薬液200を供給することによって、金属膜101がエッチングされる。このとき、第2貴金属含有部材10bのピッチp2は第1貴金属含有部材10aのピッチp1よりも小さいので、表面積が大きい。そのため、金属膜101との接触面積が大きくなる。これにより、第1貴金属含有部材10aのエッチング時に残った金属膜101を除去することが可能となる。
【0071】
なお、第1貴金属含有部材10aおよび第2貴金属含有部材10bを組み合わせることは、被加工物の残渣を除去する目的以外にも適用できる。また、上述した方法の他に、第1貴金属含有部材10aおよび第2貴金属含有部材10bで交互にエッチングしてもよい。
【0072】
本実施形態に係る基板処理装置6によれば、ピッチの異なる貴金属含有部材を備えることによって、より確実に金属膜をエッチングすることができる。
【0073】
(第7実施形態)
図14は、第7実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図である。図14に示すように、本実施形態に係る基板処理装置7は、第1実施形態の基板処理装置1の構成要素に加えて、冷却機構90を備える。冷却機構90は、例えば薬液供給ノズル20の端部に設置され、薬液200を冷却する。冷却機構90は、例えば冷却ガスを用いて、薬液200を冷却する。
【0074】
図15(a)は、本実施形態における基板100のエッチング処理前の状態を示し、図15(b)は、本実施形態における基板100のエッチング処理後の状態を示す。本実施形態では、基板100の上に膜103が設けられ、この膜103の上に金属膜101が設けられている。膜103は、金属膜であってもよいし、絶縁膜であってもよい
【0075】
貴金属含有部材10を用いて金属膜101をエッチングする場合、高温および高濃度の薬液200を用いるとエッチング速度は高くなる。エッチング速度が必要以上に高くなると、金属膜101だけでなく膜103の一部もエッチングされることが懸念される。
【0076】
そこで、本実施形態では、冷却機構90で薬液200を冷却することによって、過剰なエッチングを回避できる。これにより、金属膜101のエッチング精度を向上させることが可能となる。
【0077】
なお、上記のような過剰なエッチングを回避するために、薬液200を希釈してもよい。この場合、薬液200の濃度が低下するので、膜103のエッチングを回避できる。よって、金属膜101のエッチング精度を向上させることが可能となる。
【0078】
また、冷却機構90は、基板100の下部に設置されてもよい。この場合、基板100が低温状態になるので、金属膜101のエッチング時に基板100を介して薬液200を冷却できる。
【0079】
さらに、本実施形態では、膜103の表面に、表面保護剤104を添加してもよい。表面保護剤104として、例えば防腐剤または被膜形成剤を用いることができる。表面保護剤104が防腐剤であり、膜103が金属膜である場合、膜103の腐食を抑制することができる。一方、表面保護剤104が被膜形成剤であり、膜103が絶縁膜である場合、膜103の溶解を抑制することができる。
【0080】
(第8実施形態)
図16は、第8実施形態の貴金属含有部材10に設けられた毛状部材15の拡大図である。本実施形態では、毛状部材15は、図11(a)に示す第5実施形態に係る貴金属含有部材10の毛状部材12の代わりに設けられている。
【0081】
毛状部材15では、導電体151が金属膜153で覆われ、金属膜153は、貴金属膜152で覆われている。導電体151は、例えば導電性カーボンを含み、貴金属膜152は例えば白金を含んでいる。金属膜153は、例えば銅のような貴金属よりも比抵抗の小さい金属を含んでいる。
【0082】
以上説明した本実施形態によれば、毛状部材15の芯部は、導電体151で構成されている。そのため、カソード領域の抵抗Rcathodeは、第5実施形態の毛状部材12よりも小さくなる。これにより、腐食電流Icorrが増加するので、エッチング速度を高めることが可能になる。
【0083】
さらに、本実施形態では、導電体151と貴金属膜152との間に、貴金属膜152よりも比抵抗の小さな金属膜153が形成されている。そのため、上記抵抗Rcathodeをさらに低減することができ、その結果、エッチング速度をより一層高めることが可能になる。
【0084】
(第9実施形態)
図17(a)は、第9実施形態に係る貴金属含有部材10の概略的な構成を示す図である。本実施形態では、貴金属を含んだ導電性の担体16が、図11(a)に示す第5実施形態に係る毛状部材15の代わりに貴金属含有部材10の底面に設けられている。担体16は、イオン交換樹脂等の多孔質材で構成される。担体16内には、例えば白金等のナノ粒子が含まれている。
【0085】
本実施形態では、通液ノズル80が薬液200を貴金属含有部材10へ供給すると、この薬液200は、貴金属含有部材10に形成された通液孔105を通過する。その後、薬液200は、担体16の内部を通過して担体16と被加工物との接触箇所に流出する。その後、担体16に含まれた貴金属および薬液200によって、被加工物はエッチングされる。
【0086】
以上説明した本実施形態によれば、担体16によって薬液200の通液性を確保しつつ、担体16に含まれた貴金属によってエッチングを促進することができる。
【0087】
なお、本実施形態では、担体16を例えば図17(b)に示す担体16aのように毛状に加工してもよい。または、担体16を例えば図17(b)に示す担体16bのような櫛形状に加工してもよい。この場合、薬液200の流路が拡大するので、エッチング箇所への薬液200の通液性を向上させることができる。
【0088】
(第10実施形態)
図18(a)は、第10実施形態に係る貴金属含有部材10の概略的な構成を示す図である。本実施形態では、貴金属を含んだ網状体17が、図11(a)に示す第5実施形態に係る毛状部材15の代わりに貴金属含有部材10の底面に設けられている。
【0089】
図18(b)は、網状体17の拡大図である。網状体17では、紐状の導電性カーボン171が網状に加工されている。導電性カーボン171には、貴金属のナノ粒子172が付着されている。
【0090】
本実施形態では、通液ノズル80が薬液200を貴金属含有部材10へ供給すると、この薬液200は、貴金属含有部材10に形成された通液孔105を通過する。その後、薬液200は、網状体17の隙間を通って網状体17と被加工物との接触箇所に流出する。その後、網状体17に含まれた貴金属のナノ粒子172および薬液200によって、被加工物はエッチングされる。
【0091】
以上説明した本実施形態によれば、網状体17によって、薬液200の通液性を確保しつつ、網状体17に含まれたナノ粒子172によってエッチングを促進することができる。
【0092】
(第11実施形態)
図19は、第11実施形態に係る貴金属含有部材の底面の一部を拡大した拡大図である。図19に示すように、中間部材18が貴金属膜11の凸部に形成されている。中間部材18は例えば導電性の金属、炭素を含む単体または化合物、またはポリマー等が考えられる。中間部材18は導電体であるので、金属膜101と貴金属含有部材10との電気的な接続は確保される。すなわち、金属膜101の腐食回路は成立する。より好ましくは、中間部材18は、炭素を含む単体または化合物である。炭素を含むことで還元電位が高くなり、腐食速度、すなわちエッチング速度を向上させることができる。
【0093】
本実施形態でも、薬液200を供給している間、貴金属膜11が金属膜101と直接的に接触していなくても、中間部材18を介して金属膜101をエッチングできる。
【0094】
さらに、本実施形態では、貴金属膜11が被加工物である金属膜101に直接的に接触しないので、貴金属膜11を構成する貴金属の摩耗による脱離を防止することができる。貴金属の脱離を防止することによって、貴金属による被加工物の汚染も防止することができる。
【0095】
なお、図19において、中間部材18は第1実施形態で示した貴金属含有部材10の凸部に設けられるように示したが、第1実施形態に限定されず、例えば第5実施形態および第8実施形態で示した毛状部材12、15の金属膜101との接触部分に設けられていてもよい。また、凸部のみに限定されず、貴金属含有部材10の凹部にも中間部材18が形成されていてもよい。
【0096】
上記毛状部材12、15に本実施形態の中間部材18を適用する場合、腐食速度をより向上させるために、薬液200の抵抗を下げることも考えられる。または、中間部材18の抵抗を下げることも考えられる。
【0097】
薬液200の抵抗を下げるために、例えば薬液200に塩を添加してもよいし、カソード領域となる毛状部材12、15とアノード領域となる金属膜101との距離を短くしてもよい。中間部材18の抵抗を下げるために、中間部材18の体積を大きくしてもよい。なお、中間部材18は、膜状でもよいし、繊維状の材料が複数積み重なったメッシュ状であってもよい。
【0098】
例えば、図20(a)に示すように、上記毛状部材12、15と被加工膜である金属膜101との間に、メッシュ状の中間部材18を設けることが考えられる。また、別の変形例として、図20(b)に示すように、白金粒子等の貴金属粒子を貴金属含有部材10とし、当該貴金属粒子を囲うようにメッシュ状の中間部材18を設けてもよい。この場合、メッシュ状の中間部材18は通液性を有するため、本実施形態の効果を有しつつ、金属膜101をエッチングすることが可能となる。さらに別の変形例として、図20(c)に示すように、板状の貴金属含有部材10の底面(下端)に、中間部材18を部分的に設けてもよい。この場合も、中間部材18を金属膜101に接触させながら金属膜101をエッチングすることが可能である。
【0099】
(第12実施形態)
図21は、第12実施形態に係る貴金属含有部材の底面の一部を拡大した拡大図である。図21に示すように、本実施形態に係る貴金属含有部材10は、複数の格子積層体19で構成される。複数の格子積層体19は、互いに直交する2方向(X方向およびY方向)に間隔をとって配列されている。格子積層体19間には、内部空間が設けられている。この内部空間は、薬液200の流路として機能する。
【0100】
図22は、格子積層体19の分解斜視図である。格子積層体19では、複数の格子体19a~19cが積層されている。なお、格子体の積層数および格子の数は、特に制限されない。格子体19a~19cは、貴金属を予め担持した細線を格子状に組むことによって形成できる。または、細線を格子状に組んだ後、その格子体に貴金属を担持することによっても形成できる。その後、これらの格子体を積層することによって格子積層体19を形成できる。
【0101】
図23は、本実施形態におけるエッチング処理中の状態を示す。図23に示すように、各格子体19a~19cを積層した格子積層体19によって、貴金属と金属膜101との接触面積が増加する。また、各格子体19a~19cの段差によって、薬液200の通液性が確保される。これにより、金属膜101のエッチング速度を高めることが可能となる。
【0102】
(第13実施形態)
図24は、第13実施形態に係る基板処理装置の概略的な構成を示す模式図である。本実施形態に係る貴金属含有部材10は、例えば、上述した毛状部材12、15のようなブラシ形状である。この貴金属含有部材10は、基板100の周りを回転できる。
【0103】
本実施形態の貴金属含有部材10を用いて基板100のベベル部100c(側面)を加工する場合、図24に示すように、薬液供給ノズル20からだけなく、通液ノズル80を通じて貴金属含有部材10からも薬液200をベベル部100cに供給する。このとき、基板100の表面100a(デバイス面)は下向きになっているので、薬液200が表面100aに流れ込むおそれがある。
【0104】
そこで、本実施形態では、基板100の下側から例えば窒素(N)ガス300を吹きかけることによって、薬液200を飛ばしている。さらに、表面100aを保護するために、板状のシールド22が基板100の下側に設置されている。
【0105】
以上説明した本実施形態によれば、基板100の表面100aだけでなく、裏面100bおよびベベル部100cも加工することができる。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0107】
10 貴金属含有部材、10a 第1貴金属含有部材、10b 第2貴金属含有部材、12,13,15 毛状部材、16 担体、17 網状体、18 中間部材、19 格子積層体、19a~19c 格子体、20 薬液供給ノズル(薬液供給部材)、30,50,70 第1保持部材、31,51,71 第2保持部材、40 処理槽(薬液供給部材)、60 駆動機構、80 通液ノズル(薬液供給部材)、90 冷却機構、105 通液孔、151 導電体、152 貴金属膜、153 金属膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
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図22
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