(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】ロータおよびモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/28 20060101AFI20220208BHJP
H02K 1/30 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
H02K1/28 A
H02K1/30 Z
(21)【出願番号】P 2018043705
(22)【出願日】2018-03-12
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】古林 一美
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-78824(JP,A)
【文献】特開平3-49543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
H02K 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の周りに前記回転軸に対して同軸状に配置された円筒状のロータマグネットと、
前記回転軸が固定された中心穴を備え、前記回転軸の軸線方向の外側に向く第1端面の外周縁が前記ロータマグネットの内周面に接着剤により固定された板状のブシュと、
を有し、
前記第1端面では、溝状の凹部およびリブ状の凸部のうちの一方からなる壁形成部が前記外周縁から径方向内側に離間する位置に周方向に延在するように形成されており、
前記接着剤は、前記壁形成部の径方向外側に向く周面からなる流出防止壁と前記ロータマグネットの内周面との間に設けられて前記ブシュと前記ロータマグネットとを接着固定していることを特徴とするロータ。
【請求項2】
前記ブシュは、金属板であり、
前記ブシュにおいて前記回転軸の軸線方向の内側に向く第2端面では、前記壁形成部と重なる位置に前記凹部および前記凸部のうちの他方が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記凸部および前記凹部のいずれにおいても、径方向内側の周面および径方向外側の周面が斜面になっていることを特徴とする請求項1または2に記載のロータ。
【請求項4】
前記ブシュには、前記軸線方向に貫通する貫通穴が形成されていることを特徴とする請求項1から3までの何れか一項に記載のロータ。
【請求項5】
前記貫通穴は、前記壁形成部と繋がっていることを特徴とする請求項4に記載のロータ。
【請求項6】
前記流出防止壁は撥水性を備えていることを特徴とする請求項1から5までの何れか一項に記載のロータ。
【請求項7】
前記ブシュは、前記軸線方向で離間する2か所に設けられていることを特徴とする請求項1から6までの何れか一項に記載のロータ。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載のロータと、前記ロータマグネットに径方向外側で対向するステータと、を有することを特徴とするモータ。
【請求項9】
前記第1端面において前記壁形成部より径方向内側にワッシャが重なるように設けられていることを特徴とする請求項8に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸にロータマグネットがブシュを介して固定されたロータ、および前記ロータを備えたモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータに用いられるロータは、回転軸の周りにロータマグネットを備えている。かかるロータを構成する際、円柱状のロータマグネットの中心穴に回転軸を挿入した構造の場合、ロータマグネットの体積が大きいので、ロータマグネットのコストの増大や、ロータが重くなるという欠点を有している。そこで、回転軸が中心穴に圧入されたブシュの外周縁を円筒状のロータマグネットの内周面と接着剤によって固定した構造が提案されている(特許文献1参照)。かかる構造によれば、回転軸とロータマグネットとの間を中空にすることができるので、ロータの軽量化を図ることができるとともに、ロータマグネットの体積を小さくすることができる。また、特許文献1では、ブシュの外周縁に段部を形成しておき、段部によって接着剤の溜まり部を形成することにより、ブシュとロータマグネットとを確実に固定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のモータにおいて、十分な量の接着剤を設けるには、接着剤の溜まり部を十分な大きさとする必要がある。しかしながら、特許文献1に記載のモータのように、ブシュの外周縁に形成した段部によって接着剤の溜まり部を形成した構造において、接着剤の溜まり部を十分な大きさとするには、段部を幅広に形成した構造や段部を深く形成した構造とする必要があるが、ブシュの厚さ等によっては、適正な段部をブシュの外周縁に設けることができないことがある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、回転軸にロータマグネットを固定するためのブシュとロータマグネットの内周面との間に適正な量の接着剤を設けることのできるロータおよびモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解消するため、本発明に係るロータは、回転軸と、前記回転軸の周りに前記回転軸に対して同軸状に配置された円筒状のロータマグネットと、前記回転軸が固定された中心穴を備え、前記回転軸の軸線方向の外側に向く第1端面の外周縁が前記ロータマグネットの内周面に接着剤により固定された板状のブシュと、を有し、前記第1端面では、溝状の凹部およびリブ状の凸部のうちの一方からなる壁形成部が前記外周縁から径方向内側に離間する位置に周方向に延在するように形成されており、前記接着剤は、前記壁形成部の径方向外側に向く周面からなる流出防止壁と前記ロータマグネットの内周面との間に設けられて前記ブシュと前記ロータマグネットとを接着固定していることを特徴とする。
【0007】
本発明では、回転軸とロータマグネットとの間を中空にすることができるので、ロータの軽量化を図ることができるとともに、ロータマグネットの体積を小さくすることができる。また、ブシュの第1端面では、外周縁から径方向内側に離間する位置に形成された壁形成部の径方向外側に向く周面によって流出防止壁が形成されている。このため、流出防
止壁とロータマグネットの内周面との間に接着剤を配置した際、接着剤が径方向内側に流出しようとした場合でも、接着剤は、流出防止壁に堰き止められるので、径方向内側に流出しにくい。従って、流出防止壁とロータマグネットの内周面との間に十分な量の接着剤を設けることができるので、ブシュとロータマグネットとを強固に接着することができる。
【0008】
本発明において、前記ブシュは金属板であり、前記ブシュにおいて前記回転軸の軸線方向の内側に向く第2端面では、前記壁形成部と重なる位置に前記凹部および前記凸部のうちの他方が形成されている態様を採用することができる。すなわち、ブシュ(金属板)に対するプレス加工によって壁形成部を形成する態様を採用することができる。従って、ブシュを効率よく製造することができる。この場合でも、ブシュ(金属板)に対するプレス加工を外周縁から径方向内側に離間した位置に行えばよいので、ブシュ(金属板)に対するプレス加工を外周縁に対して行う場合より、壁形成部やブシュの外周縁を適正な形状に仕上げやすい。
【0009】
本発明において、前記凸部および前記凹部のいずれにおいても、径方向内側の周面および径方向外側の周面が斜面になっている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ブシュ(金属板)に対するプレス加工によって壁形成部を形成しやすい。
【0010】
本発明において、前記ブシュには、前記軸線方向に貫通する貫通穴が形成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ブシュによって回転軸に対してロータマグネットを固定した状態でロータマグネットおよびブシュによって囲まれた空間は、ブシュの貫通穴を介して外側と連通している。従って、環境温度等が変化して、ロータマグネットおよびブシュによって囲まれた空間内の空気が膨張あるいは収縮しても、ブシュが軸線方向に移動することに起因する接着剤の剥離を抑制することができる。この場合、前記貫通穴は、前記壁形成部と繋がっている態様を採用することができる。かかる態様によれば、貫通穴によって、接着剤が径方向内側に流出することを抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記流出防止壁は撥水性を備えている態様を採用することができる。かかる態様によれば、撥水性の流出防止壁によって、接着剤が径方向内側に流出ことを効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明において、前記ブシュは、前記軸線方向で離間する2か所に設けられている態様を採用することができる。
【0013】
本発明に係るロータを用いたモータは、前記ロータマグネットに径方向外側で対向するステータを有している。かかるモータでは、前記第1端面において前記壁形成部より径方向内側にワッシャが重なるように設けられている態様を採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、回転軸とロータマグネットとの間を中空にすることができるので、ロータの軽量化を図ることができるとともに、ロータマグネットの体積を小さくすることができる。また、ブシュの第1端面では、外周縁から径方向内側に離間する位置に形成された壁形成部の径方向外側に向く周面によって流出防止壁が形成されている。このため、流出防止壁とロータマグネットの内周面との間に接着剤を配置した際、接着剤が径方向内側に流出しようとした場合でも、接着剤は、流出防止壁に堰き止められるので、径方向内側に流出しにくい。従って、流出防止壁とロータマグネットの内周面との間に十分な量の接着剤を設けることができるので、ブシュとロータマグネットとを強固に接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1に示すモータに用いたロータの断面図である。
【
図3】
図2に示すロータを軸線方向からみた説明図である。
【
図4】
図2に示すロータからロータマグネットを省略した様子を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す状態から各部材を分解したロータの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明を適用したロータおよびモータを説明する。以下に説明するモータ1では、回転軸12の回転中心軸線を軸線Lとし、回転軸12の回転中心軸線が延在している方向を軸線L方向とする。また、回転軸12が突出している一方側を出力側L1とし、回転軸12が突出している側とは反対側(他方側)を反出力側L2として説明する。
【0017】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したモータの断面図である。
図1に示すモータ1は、ステッピングモータ1aであり、回転軸12の径方向外側にロータマグネット11を備えたロータ10と、ロータマグネット11の外周面に対向する筒状のステータ20とを有している。ロータマグネット11の外周面には、N極とS極が周方向において交互に配置されている。
【0018】
ステータ20は、軸線L方向に重ねて配置された一対のステータ組21、22を有しており、ステータ組21、22は各々、インシュレータ216、226と、インシュレータ216、226に巻回されたコイル213、223と、インシュレータ216、226の軸線L方向の両側に配置されたステータコア211、212、ステータコア221、222とを備えている。ステータコア211は、インシュレータ216の出力側L1の面に被さる外ステータコアであり、ステータコア212は、インシュレータ216の反出力側L2の面に被さる内ステータコアである。ステータコア221は、インシュレータ226の反出力側L2の面に被さる外ステータコアであり、ステータコア222は、インシュレータ226の出力側L1の面に被さる内ステータコアである。ステータコア211、221は、断面U字形状を有しており、外周側の筒状部によってモータケースが構成されている。
【0019】
ステータコア211、212、221、222は各々、インシュレータ216、226の内周面に沿って起立する複数の極歯217、227を備えている。ステータ組21を構成した状態で、ステータコア211に形成された極歯217は、ステータコア212に形成された極歯217の間に入り込み、ステータコア211に形成された極歯217とステータコア212に形成された極歯217とは、周方向に交互に配置された状態となる。また、ステータ組22を構成した状態で、ステータコア221に形成された極歯227は、ステータコア222に形成された極歯227の間に入り込み、ステータコア221に形成された極歯227とステータコア222に形成された極歯227とは、周方向に交互に配置された状態となる。
【0020】
インシュレータ216、226には端子台218、228が一体に形成され、かかる端子台218、228に端子219、229が固定されている。ステータ20の両端面のうち、出力側L1の端部23には出力側端板25が固定され、反出力側L2の端部24には反出力側端板26が固定されている。
【0021】
本形態では、出力側端板25を利用して回転軸12を出力側L1で回転可能に支持する出力側ラジアル軸受7が保持されている。より具体的には、出力側端板25には穴251が形成されており、出力側ラジアル軸受7は、穴251に嵌った状態で出力側端板25に
保持されている。出力側ラジアル軸受7は、穴251に嵌った筒部71と、筒部71に対して出力側L1で拡径して筒部71より大径のフランジ部72とを有している。出力側ラジアル軸受7は、焼結含油軸受等からなる。また、反出力側端板26を利用して回転軸12を反出力側L2で回転可能に支持する反出力側ラジアル軸受8が保持されている。より具体的には、反出力側端板26には穴261が形成されており、反出力側ラジアル軸受8は、穴261に嵌った状態で反出力側端板26に保持されている。反出力側ラジアル軸受8は、穴261に嵌った筒部81と、筒部81に対して出力側L1で拡径して筒部81より大径のフランジ部82とを有している。反出力側ラジアル軸受8は、焼結含油軸受からなる。
【0022】
モータ1において、出力側ラジアル軸受7とロータ10との間には、回転軸12が貫通する環状のワッシャ41が配置されている。また、反出力側ラジアル軸受8とロータ10との間には、反出力側L2から出力側L1に向けて、環状のワッシャ42、環状の皿バネやコイルバネ等からなる付勢部材43、および環状のワッシャ44が配置されており、ロータ10は、付勢部材43によって出力側L1に向けて付勢されている。
【0023】
(ロータ10の構成)
図2は、
図1に示すモータ1に用いたロータ10の断面図である。
図3は、
図2に示すロータ10を軸線方向からみた説明図であり、
図3(a)、(b)は各々、出力側L1からみた正面図、および反出力側L2からみた背面図である。
図4は、
図2に示すロータ10からロータマグネット11を省略した様子を示す斜視図であり、
図4(a)、(b)は各々、出力側L1からみた斜視図、および反出力側L2からみた斜視図である。
図5は、
図4に示す状態から各部材を分解したロータ10の分解斜視図であり、
図5(a)、(b)は各々、出力側L1からみた分解斜視図、および反出力側L2からみた分解斜視図である。なお、
図4では、接着剤18、19の図示を省略してある。
【0024】
図2に示すように、ロータ10は、回転軸12と、回転軸12の周りに回転軸12に対して同軸状に配置された円筒状のロータマグネット11と、回転軸12とロータマグネット11とを連結するための板状の2つのブシュ(第1ブシュ14および第2ブシュ15)とを有している。第1ブシュ14および第2ブシュ15はいずれも、金属板からなる。本形態において、第1ブシュ14および第2ブシュ15はいずれも、厚さが1mm~2mm程度の鉄系の金属板からなる。より具体的には、第1ブシュ14および第2ブシュ15はいずれも、ステンレンス性の非磁性の金属板からなる。
【0025】
図2、
図3、
図4および
図5に示すように、第1ブシュ14は、回転軸12が圧入等により固定された中心穴140を備えた円板であり、ロータマグネット11の内周面110に接着剤18(
図2および
図3参照)により固定されている。より具体的には、第1ブシュ14は、ロータマグネット11の出力側L1の端部111より反出力側L2に引っ込んだ位置に配置されており、接着剤18は、第1ブシュ14の出力側L1(外側)の第1端面141の外周部分とロータマグネット11の内周面110の双方に接するように設けられて、少なくとも、第1ブシュ14の第1端面141の外周縁141aとロータマグネット11の内周面110とを接着固定している。本形態において、接着剤18は紫外線硬化型接着剤である。
【0026】
第1ブシュ14の外径は、ロータマグネット11の内径より小さい。このため、第1ブシュ14の外周縁141aとロータマグネット11の内周面110との間には隙間144が空いている。従って、接着剤18は、一部が隙間144の内部まで進入して、第1ブシュ14とロータマグネット11とを接着している。
【0027】
第1ブシュ14の第1端面141では、溝状の凹部およびリブ状の凸部のうちの一方か
らなる壁形成部145が外周縁141aから径方向内側に離間する位置で周方向に延在するように形成されている。本形態において、壁形成部145は、第1ブシュ14に対するプレス加工によって形成される。従って、第1ブシュ14において軸線L方向の内側に向く第2端面142では、壁形成部145と重なる位置に凹部および凸部のうちの他方が形成されている。
【0028】
本形態においては、壁形成部145が第1端面141に形成されたリブ状の凸部からなるため、第2端面142において壁形成部145と重なる位置には凹部146が形成されている。ここで、壁形成部145(凸部)および凹部146は、径方向内側に位置する周面および径方向外側に位置する周面が斜面になっている。かかる第1ブシュ14において、壁形成部145(凸部)の周面のうち、径方向外側で径方向外側に向く周面145aは、接着剤18に対する流出防止壁147を構成している。
【0029】
第1ブシュ14には、貫通穴143が形成されている。本形態において、貫通穴143は、流出防止壁147および凹部146と重なる位置に形成されている。従って、貫通穴143は、流出防止壁147および凹部146と繋がっており、貫通穴143の一部は、壁形成部145から径方向内側に張り出している。本形態において、貫通穴143の縁のうち、軸線Lから径方向外側に最も離間する部分は、壁形成部145の外縁と重なっている。
【0030】
このように構成した第1ブシュ14において、第1端面141にワッシャ41を重ねると、ワッシャ41は、壁形成部145より径方向内側の円形領域に重なる。この状態で、ワッシャ4は貫通穴143のうち、流出防止壁147より内側に位置する部分に重なる。
【0031】
第2ブシュ15は、第1ブシュ14と同一の部品を第1ブシュ14から反出力側L2に配置することによって構成されている。従って、第2ブシュ15は、ロータマグネット11の反出力側L2の端部112より出力側L1に引っ込んだ位置で接着剤19によってロータマグネット11の内周面110と固定されている。接着剤19は、第2ブシュ15の反出力側L2(外側)の第1端面151の外周部分とロータマグネット11の内周面110の双方に接するように設けられて、少なくとも、第2ブシュ15の第1端面151の外周縁151aとロータマグネット11の内周面110とを接着固定している。本形態において、接着剤19は紫外線硬化型接着剤である。
【0032】
第2ブシュ15の外径は、ロータマグネット11の内径より小さい。このため、第2ブシュ15の外周縁151aとロータマグネット11の内周面110との間には隙間154が空いている。従って、接着剤19は、一部が隙間154の内部まで進入して、第2ブシュ15とロータマグネット11とを接着している。
【0033】
第2ブシュ15の第1端面151では、溝状の凹部およびリブ状の凸部のうちの一方からなる壁形成部155が外周縁151aから径方向内側に離間する位置で周方向に延在するように形成されている。本形態において、壁形成部155は、第2ブシュ15に対するプレス加工によって形成される。従って、第2ブシュ15において軸線L方向の内側に向く第2端面152では、壁形成部155と重なる位置に凹部および凸部のうちの他方が形成されている。
【0034】
本形態においては、壁形成部155が第1端面151に形成された凹部からなるため、第2端面152において壁形成部155と重なる位置には凸部156が形成されている。ここで、壁形成部155(凹部)および凸部156は、径方向内側に位置する周面および径方向外側に位置する周面が斜面になっている。かかる第2ブシュ15において、壁形成部155(凹部)の周面のうち、径方向内側で径方向外側に向く周面155aは、接着剤
19に対する流出防止壁157を構成している。
【0035】
本形態において、第2ブシュ15には、貫通穴153が形成されている。本形態において、貫通穴153は、流出防止壁157および凸部156と重なる位置に形成されている。従って、貫通穴153は、流出防止壁157および凸部156と繋がっており、貫通穴153の一部は、壁形成部155から径方向内側に張り出した状態にある。本形態において、貫通穴153の縁のうち、軸線Lから径方向外側に最も離間する部分は、壁形成部155の外縁と重なっている。
【0036】
このように構成した第2ブシュ15において、第1端面151にワッシャ44を重ねると、ワッシャ44は、壁形成部155より内側の円形領域に重なる。この状態で、ワッシャ44は貫通穴153のうち、壁形成部155より内側に位置する部分に重なる。
【0037】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ロータ10において、回転軸12とロータマグネット11との間を中空にすることができるので、ロータ10の軽量化を図ることができるとともに、ロータマグネット11の体積を小さくすることができる。
【0038】
また、第1ブシュ14の第1端面141では、外周縁141aから径方向内側に離間する位置に形成された壁形成部145の径方向外側に向く周面145aによって流出防止壁147が形成されている。このため、流出防止壁147とロータマグネット11の内周面110との間に接着剤18を配置した際、接着剤18が径方向内側に流出しようとした場合でも、接着剤18は、流出防止壁147に堰き止められるので、径方向内側に流出しにくい。従って、流出防止壁147とロータマグネット11の内周面110との間に十分な量の接着剤を設けることができるので、第1ブシュ14とロータマグネット11とを強固に接着することができる。また、流出防止壁147より径方向内側の全域を、ワッシャ41を配置する領域として利用できるので、大径のワッシャ41を用いることができる。また、十分な量の接着剤18を設ける場合には、ロータマグネット11の内周面から流出防止壁147までの距離を長くすればよい等、適正な量の接着剤18を設ける場合でも、第1ブシュ14に対する加工が容易である。
【0039】
また、第1ブシュ14は、金属板であり、第1端面141では、リブ状の凸部によって壁形成部145が形成されている一方、第2端面142には壁形成部145と重なる位置に凹部146が形成されている。すなわち、第1ブシュ14(金属板)に対するプレス加工によって壁形成部145を形成することができる。従って、第1ブシュ14を効率よく製造することができる。この場合でも、第1ブシュ14(金属板)に対するプレス加工を外周縁141aから径方向内側に離間した位置に行えばよいので、第1ブシュ14(金属板)に対するプレス加工を外周縁141aに対して行う場合より、壁形成部145や第1第1ブシュ14の外周縁141aを適正な形状に仕上げやすい。
【0040】
また、第2ブシュ15の第1端面151でも、第1ブシュ14と同様、外周縁151aから径方向内側に離間する位置に形成された壁形成部155の径方向外側に向く周面155aによって流出防止壁157が形成されている。このため、流出防止壁157とロータマグネット11の内周面110との間に接着剤19を配置した際、接着剤19が径方向内側に流出しようとした場合でも、接着剤19は、流出防止壁147に堰き止められるので、径方向内側に流出しにくい等、第2ブシュ15の側と同様な効果を奏する。ここで、第2ブシュ15では、壁形成部155が凹部によって構成されており、凹部の径方向内側の周面155aが流出防止壁157である。従って、壁形成部155を凹部によって構成した場合、凹部の内側まで接着剤19が入り込むことを許容することができるので、壁形成部155を凸部によって構成した場合より接着剤19の量が多い場合でも、径方向内側へ
の接着剤19の流出を抑制することができる。
【0041】
また、第1ブシュ14と第2ブシュ15とは同一構成の金属板からなるため、2つのブシュ(第1ブシュ14および第2ブシュ15)を設ける場合でも、共通の金属板を用いることができる。従って、部品の低コスト化を図ることができる。
【0042】
また、第1ブシュ14および第2ブシュ15には貫通穴143、153が形成されている。このため、第1ブシュ14および第2ブシュ15によって回転軸12に対してロータマグネット11を固定した状態でロータマグネット11、第1ブシュ14および第2ブシュ15によって囲まれた空間は、第1ブシュ14および第2ブシュ15の貫通穴143、153を介して外側と連通している。従って、環境温度等が変化して、ロータマグネット11、第1ブシュ14および第2ブシュ15によって囲まれた空間内の空気が膨張あるいは収縮しても、第1ブシュ14および第2ブシュ15が軸線L方向に移動しにくい。それ故、接着剤18、19の剥離が発生しにくい。また、貫通穴143、153は、壁形成部145、155と繋がっているため、貫通穴143、153によって接着剤18、19を溜めることができる。従って、接着剤18、19が径方向内側に流出することを抑制することができる。
【0043】
(他の実施の形態)
上記実施の形態において、流出防止壁147、157にフッ素系の撥水剤等を用いた撥水処理を行って、流出防止壁147、157に撥水性を付与してもよい。かかる構成によれば、接着剤18、19が流出防止壁147、157に到達した場合でも、接着剤18、19が流出防止壁147、157に流出することを抑制することができる。
【0044】
上記実施形態において、第1ブシュ14では、第1端面141に形成された凸部によって壁形成部145が構成され、第2ブシュ15では、第1端面151に形成された凹部によって壁形成部155が構成されていたが、第1ブシュ14では、第1端面141に形成された凹部によって壁形成部145が構成され、第2ブシュ15では、第1端面151に形成された凸部によって壁形成部155が構成されていてもよい。また、第1ブシュ14および第2ブシュ15のいずれにおいても、凸部によって壁形成部145、155が構成されている態様や、第1ブシュ14および第2ブシュ15のいずれにおいても、凹部によって壁形成部145、155が構成されている態様であってもよい。
【0045】
上記実施の形態において、第1ブシュ14では、貫通穴143が壁形成部145と繋がっていたが、壁形成部145より径方向内側に貫通穴143が形成されている態様であってもよい。また、第2ブシュ15では、貫通穴153が壁形成部155と繋がっていたが、壁形成部155より径方向内側に貫通穴153が形成されている態様であってもよい。
【0046】
上記実施の形態では、第1ブシュ14および第2ブシュ15の双方に本発明を適用したが、一方のブシュのみに本発明を適用してもよい。
【0047】
上記実施の形態では、2つのブシュ(第1ブシュ14および第2ブシュ15)を用いてロータマグネット11を回転軸12と連結したが、1つのカップ状のブシュの底板部が回転軸12に固定され、筒部の外周側にロータマグネット11が接着剤で固定される場合に本発明を適用してもよい。
【0048】
上記実施の形態では、接着剤18、19として紫外線硬化型接着剤を用いたが、熱硬化型接着剤を用いてもよい。また、接着剤18、19として、紫外線硬化性を付与した熱硬化型接着剤を用いてもよく、この場合、紫外線照射にて仮硬化を行った後、加熱による本硬化を行うことができるので、本硬化の加熱の際、接着剤が径方向内側に流出することを
抑制することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…モータ、1a…ステッピングモータ、10…ロータ、11…ロータマグネット、12…回転軸、14…第1ブシュ、15…第2ブシュ、19…接着剤、20…ステータ、141、151…第1端面、141a、151a…外周縁、142、152…第2端面、140、150…中心穴、143、153…貫通穴、144、154……隙間、145、155…壁形成部、145a、155a…周面、146…凹部、156…凸部、147、157…流出防止壁、L…軸線、L1…出力側、L2…反出力側