(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
B25J5/00 B
(21)【出願番号】P 2018059036
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2019-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】桑原 央明
(72)【発明者】
【氏名】平栗 一磨
(72)【発明者】
【氏名】松崎 晃大
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-121187(JP,A)
【文献】特開昭61-085258(JP,A)
【文献】特開2002-209363(JP,A)
【文献】特開昭61-201154(JP,A)
【文献】特開平04-066364(JP,A)
【文献】特開平06-293260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
H02K 15/00 - 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構造物と第2構造物との間において、前記第1構造物の第1面上を移動する本体部と、
前記
本体部に対して回動可能に設けられ、前記第1面と対向する前記第2構造物の第2面に接触するアームと、
前記本体部及び前記アームに連結され、前記アームの回動方向に駆動する力を加える駆動機構と、
前記本体部に対する前記アームの角度を検出する角度検出器と、
前記アームから前記第2面に向けて加えられる力が、予め設定された第1力となるように、前記駆動機構の出力を制御する制御部と、
前記本体部及び前記アームに連結された弾性部材と、
前記アームに取り付けられ、前記第2構造物を検査するための検査ユニットと、
を備え、
前記アームは、前記検査ユニットを介して前記第2面に接触し、
前記弾性部材は、前記アームに対して、前記角度が小さくなる方向に弾性力を加える、ロボット。
【請求項2】
前記アームから前記第2面に向けて加えられる前記力を検出する力検出器をさらに備え、
前記制御部は、検出された前記力が前記第1力となるように、前記駆動機構の前記出力を制御する請求項
1記載のロボット。
【請求項3】
前記駆動機構は、エアシリンダであり、
前記弾性部材は、ねじりコイルばねである請求項
1又は2に記載のロボット。
【請求項4】
前記制御部は、
前記本体部に対する前記アームの前記角度を表す項と、前記アームに対して働く前記弾性部材によるトルクを表す項と、前記アームの長さを表す項と、前記駆動機構の前記出力の指令値
を表す項と、前記アームが前記第2面を押し付ける押し付け力を表す項と、前記駆動機構と前記アームとを連結するシリンダアームの前記本体部に対する角度を表す項と、を含む第1式を参照し、
前記第1式を用いて、予め設定された押し付け力が出力されるように、検出された前記角度に基づいて前記出力を決定する、
請求項
1記載のロボット。
【請求項5】
前記制御部は、
前記本体部に対する前記アームの角度を表す項と、前記アームに対して働く前記弾性部材によるトルクを表す項と、前記アームの長さを表す項と、前記駆動機構の前記出力の指令値
を表す項と、前記アームが前記第2面を押し付ける押し付け力
を表す項と、前記本体部に働く重力加速度を表す項と、前記本体部の自重を表す項と、前記駆動機構に関する外乱を表す項と、前記アームに関する外乱を表す項と、前記本体部の前記第1面上における位置を表す項と、を含む第
2式を参照し、
前記第2式を用いて、予め設定された押し付け力が出力されるように、検出された前記角度に基づいて前記指令値を決定する、
請求項
1記載のロボット。
【請求項6】
複数の前記アームと、
前記複数のアーム及び前記本体部にそれぞれ連結された複数の前記駆動機構と、
前記本体部に対する前記複数のアームのそれぞれの角度を検出する複数の前記
角度検出器と、
を備えた請求項1
~5のいずれか1つに記載の
ロボット。
【請求項7】
第1構造物と第2構造物との間において、前記第1構造物の第1面上を移動する本体部と、
前記本体部に対して回動可能に設けられ、前記第1面と対向する前記第2構造物の第2面に接触する複数のアームと、
前記本体部及び前記複数のアームにそれぞれ連結され、前記アームの回動方向に駆動する力を加える複数の駆動機構と、
前記本体部に対する前記複数のアームの角度をそれぞれ検出する複数の角度検出器と、
前記本体部が前記第1面上を移動している間に、前記複数のアームの一部を前記第2面から離間させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数のアームから前記第2面に向けて加えられる力の合計が、予め設定された第1力となるように、前記複数の駆動機構の出力を制御する、ロボット。
【請求項8】
前記第1構造物は、柱状であり、
前記第2構造物は、筒状であり、前記第1構造物の周りに設けられる請求項1
~7のいずれか1つに記載の
ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
狭隘空間(ギャップ)を移動しながら検査を行う移動体と、その移動体を備えたロボットと、がある。移動体は、姿勢やギャップの間隔などに拘わらず、安定して移動できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2013/0047748号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、より安定して移動できるロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る移動体は、本体部、アーム、駆動機構、及び角度検出器を備える。前記本体部は、円柱状の第1構造物と、前記第1構造物の周りに設けられた第2構造物と、の間において、前記第1構造物の第1面上を移動する。前記アームは、前記移動体に対して回動可能に設けられ、前記第1面と対向する前記第2構造物の第2面に接触する。前記駆動機構は、前記本体部及び前記アームに連結され、前記アームの回動方向に駆動する力を加える。前記角度検出器は、前記本体部に対する前記アームの角度を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係るロボットを模式的に表す側面図である。
【
図2】第1実施形態に係るロボットを模式的に表す平面図である。
【
図3】第1実施形態に係るロボットの一部を模式的に表す斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係るロボットを表す模式図である。
【
図5】アームによる押し付け力とアームの角度との関係を例示するグラフである。
【
図6】第1実施形態に係るロボットの一部を模式的に表す側面図である。
【
図7】アクチュエータへの指令値とアームによる押し付け力との関係を例示するグラフである。
【
図8】第1実施形態の第1変形例に係るロボットを模式的に表す側面図である。
【
図9】第1実施形態の第2変形例に係るロボットの一部を表す模式図である。
【
図10】第2実施形態に係るロボットを模式的に表す側面図である。
【
図11】第2実施形態に係るロボットを模式的に表す平面図である。
【
図12】第2実施形態に係るロボットの動作を模式的に表す側面図である。
【
図13】第2実施形態に係るロボットの動作を模式的に表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るロボットを模式的に表す側面図である。
図2は、第1実施形態に係るロボットを模式的に表す平面図である。
【0009】
本発明の実施形態に係るロボットは、例えば、狭隘空間(ギャップ)内を移動しながら、その空間内の構造物などを検査するために用いられる。第1実施形態に係るロボット100は、
図1及び
図2に表したように、移動体1及び制御部5を備える。移動体1は、本体部10、アーム11、弾性部材21、アクチュエータ31、角度検出器41、及び検査ユニット60を備える。
【0010】
移動体1は、第1構造物91と第2構造物92との隙間Gを移動する。例えば、第1構造物91は、円柱状の構造物であり、第2構造物92は、第1構造物91の周りに設けられた円筒状の構造物である。一例として、第1構造物91は、発電機のロータであり、第2構造物92は、発電機のステータである。
【0011】
第1構造物91及び第2構造物92は、それぞれ、互いに対向する第1面91S及び第2面92Sを有する。本体部10は、第1面91Sの上または第2面92Sの上を移動する。ここでは、本体部10が第1面91S上を移動する場合について説明する。
【0012】
本体部10は、例えば、車体10a及びクローラ10bを有する。クローラ10bが第1面91Sに接した状態で、その車輪が駆動されることで、本体部10が前進又は後退する。また、クローラ10bは、左右の車輪の回転数をそれぞれ調整することで、進行方向を、左側方又は右側方に向けることもできる。本体部10の移動手段として、無限軌道であるクローラ10bに代えて、車輪だけの構成が適用されても良い。
【0013】
アーム11の一端は本体部10に軸支されており、これにより、アーム11は本体部10対して回動可能である。アーム11の他端には、検査ユニット60が設けられている。検査ユニット60はローラ63を有する。アーム11の他端は、ローラ63を介して第2面92Sに接触する。ローラ63を介して接触することで、移動体1は、アーム11の他端を第2面92Sに当接させながら、第1面91S上を滑らかに移動できる。
【0014】
弾性部材21は、本体部10及びアーム11に連結されている。弾性部材21は、本体部10とアーム11との間の角度θに応じた弾性力を、アーム11に発生させる。例えば、弾性部材21は、アーム11の回動方向に沿った弾性力を、アーム11に発生させる。弾性部材21は、例えば、ねじりコイルばねである。
【0015】
アクチュエータ31は、アーム11に連結されている。アクチュエータ31は、本体部10に対して固定された駆動機構である。アクチュエータ31が駆動することで、アーム11に力が加えられる。例えば、アクチュエータ31は、空気圧により伸縮されるシリンダであり、シリンダアーム31aを介してアーム11に接続されている。シリンダが伸縮することで、アーム11の角度が変化する。
【0016】
角度検出器41は、本体部10に対するアーム11の角度を検出し、制御部5に送信する。角度検出器41は、例えば、アクチュエータ31に設けられたロータリーエンコーダである。例えば、シリンダアーム31aの長さ、及びアーム11とシリンダアーム31aの連結部分の位置は、アーム11の角度とシリンダアーム31aの角度が等しくなるように、調整される。これにより、シリンダアーム31aの角度を検出することで、アーム11の角度を取得できる。
【0017】
又は、角度検出器41は、検出されたシリンダアーム31aの角度を基に、アーム11の角度を算出しても良い。又は、角度検出器41は、シリンダの移動量を検出しても良い。角度検出器41は、その移動量から、アーム11の角度を算出する。又は、角度検出器41は、アーム11の上端(検査ユニット60)と本体部10との間の距離を検出しても良い。角度検出器41は、その距離から、アーム11の角度を算出する。このように、角度検出器41は、アーム11の角度を間接的に検出しても良い。
【0018】
なお、アーム11の角度を取得するための上述した計算の少なくとも一部は、制御部5により実行されても良い。この場合、角度検出器41及び制御部5を、アーム11の角度を検出するための角度検出器とみなせる。
【0019】
検査ユニット60は、第1構造物91及び第2構造物92の少なくともいずれかを検査する。検査ユニット60は、例えば、第2構造物92の電気特性を検査するための検査器61、及び第2構造物92の構造検査を行うための検査器62を有する。構造検査としては、例えば、打音検査、打診検査などがある。
【0020】
これらの他に、ロボット100は、例えば、第1面91S又は第2面92Sを撮影するカメラ52、第1面91S又は第2面92Sまでの距離を計測する計測器53、第1面91Sにおける凹凸を検出するための位置検出部54、第1面91S又は第2面92Sを照らす照明器55、移動体1の進行方向を撮影するカメラ56などを含む。
【0021】
制御部5は、アクチュエータ31及び検査ユニット60の動作を制御する。制御部5は、この他に、カメラ52、計測器53、位置検出部54、照明器55、カメラ56などの動作を制御しても良い。
【0022】
制御部5は、例えば、隙間Gの外に配され、本体部10とケーブル5aを介して有線接続される。又は、本体部10は、制御部5と無線で接続されても良い。あるいは、本体部10に制御部5が搭載されていても良い。
【0023】
図3は、第1実施形態に係るロボットの一部を模式的に表す斜視図である。
図3において、実線は、アーム11が第2面92Sへ接触する位置(接触位置)にある状態を表す。破線は、アーム11が折り畳まれて収納された位置(収納位置)にある状態を表す。なお、
図3では、アクチュエータ31が省略されている。また、接触位置は、第1面91Sと第2面92Sとの間の距離に応じて変化しうる。
【0024】
アクチュエータ31からアーム11へ加える力を変化させることで、
図3に表したように、アーム11の位置を変化させることができる。また、アーム11が接触位置にある状態で、アクチュエータ31の出力を変化させることで、押し付け力を調整できる。
【0025】
図1~
図3に表した例では、一対のアーム11に、それぞれ一対のアクチュエータ31が連結されている。また、一対のアーム11に、それぞれ一対の弾性部材21が連結されている。
【0026】
なお、アーム11を回動させ、アーム11が接触位置にある状態と収納位置にある状態とを切り替えることができれば、アーム11、弾性部材21、及びアクチュエータ31の具体的な数及び構成は、適宜変更可能である。
【0027】
図4は、第1実施形態に係るロボットを表す模式図である。
図5は、アームによる押し付け力とアームの角度との関係を例示するグラフである。
図5において、縦軸はアーム11による押し付け力F
P[任意単位:a.u.]を表し、横軸はアーム11の角度θ[degree]を表す。また、
図5において、丸のプロットは、アクチュエータ31(エアシリンダ)への供給圧力が0.15MPaのときの角度θと押し付け力F
Pとの関係を表す。四角のプロットは、供給圧力が0.3MPaのときの角度θと押し付け力F
Pとの関係を表す。三角のプロットは、供給圧力が0.45MPaのときの角度θと押し付け力F
Pとの関係を表す。
【0028】
図4及び
図5を参照しつつ、実施形態の効果を説明する。
第1構造物91は、円柱状である。このため、移動体1は、
図4(a)及び
図4(b)に表したように、第1面91Sの鉛直部分を横向きに移動する場合がある。又は、移動体1は、
図4(c)に表したように、第1面91Sの水平部分を下向きに移動する場合がある。
【0029】
移動体1が横向き又は下向きの場合でも移動体1が第1面91Sから落下せずに移動するためには、アーム11により第2面92Sが十分な力で押し付けられることが望ましい。一方で、アーム11による押し付け力が大きすぎると、移動体1が第1面91Sに向けて強く押さえつけられ、移動体1が移動できなくなる。従って、アーム11による押し付け力は、適切な範囲に設定されることが望ましい。
【0030】
従来、アーム11による押し付け力は、アクチュエータ31の出力を調整することで制御されていた。例えば、ユーザは、移動体1の位置情報又はカメラ56の映像などを見ながら、アクチュエータ31の出力を調整していた。具体的な一例として、まず、ユーザは、アクチュエータ31の出力を高めに設定し、アーム11を第2面92Sに確実に押し付ける。次に、移動体1が移動できるように出力を低減させていく。これにより、移動体1の落下を防止しつつ、移動体1が移動できるように、アーム11による押し付け力が設定されていた。
【0031】
一方で、第1構造物91と第2構造物92の構造に応じて、第1面91Sと第2面92Sとの間の距離は変化する。また、第1構造物91又は第2構造物92に凹凸が存在すると、その凹凸に応じて第1面91Sと第2面92Sとの間の距離が変化する。距離が変化すると、アーム11を第2面92Sに接触させた際の角度θも変化する。
図5に表したように、アーム11による押し付け力F
Pは、角度θが大きくなるほど増大する。アクチュエータ31の出力を変化させることで角度θは変化するが、アクチュエータ31の出力のみでは、実際の角度θの予想が困難である。特に、角度θが大きい場合、僅かな角度θの変化で押し付け力が大きく変化する。このため、押し付け力の調整がより困難となる。
【0032】
実施形態に係る移動体1は、角度検出器41を備える。角度検出器41は、本体部10に対するアーム11の角度を検出する。例えば、角度検出器41により検出された角度がユーザに向けて出力されることで、ユーザは角度を確認しながらアクチュエータ31の出力を変更できる。角度θが確認できることで、実際にどの程度の力が出力されているか、ユーザが把握し易くなる。これにより、ユーザは、移動体1をより安定して移動させることができる。
【0033】
弾性部材21は、引っ張りバネであることが望ましい。すなわち、弾性部材21は、アーム11に対して、角度θが小さくなる方向に弾性力を加えることが望ましい。こうすることで、アクチュエータ31からアーム11に力が伝わらなくなったときに、弾性力により角度θが小さくなる。すなわち、アクチュエータ31が機能しなくなった場合でも、アーム11が自動的に収納位置に移動する。
【0034】
アーム11が収納位置に移動することで、検査ユニット60も本体部10上に収納される。例えば、アクチュエータ31が機能しなくなった場合、アーム11による押し付け力FPが低下する。押し付け力FPが低下すると、移動体1の状態によっては、移動体1が落下する。検査ユニット60が本体部10上に収納されることで、検査ユニット60が本体部10から離間している場合に比べて、検査ユニット60が損傷する可能性を低減できる。
【0035】
角度検出器41は、検出したアーム11の角度θを制御部5に送信しても良い。制御部5は、検出した角度θに応じて、アクチュエータ31を制御して押し付け力FPを調整する。以下では、アクチュエータ31が動力シリンダである場合の具体的方法の一例を説明する。
【0036】
図6は、第1実施形態に係るロボットの一部を模式的に表す側面図である。
図6において、θ
1は、本体部10に対するアーム11の角度を表す。Tは、アーム11に対して働く弾性部材21によるトルクを表す。Lは、アーム11の長さを表す。F
Cは、制御部5から指令された、アクチュエータ31の出力の指令値を表す。F
Pは、アーム11の端部(検査ユニット60のローラ63)から第2面92Sに伝わる鉛直方向の力を表す。θ
2は、本体部10に対するシリンダアーム31aの角度を表す。
【0037】
トルクTは、角度θ
1に依存する。弾性部材21が伸長状態にある場合、角度θ
1が大きくなるほど、トルクTは大きくなる。トルクTと角度θ
1との関係を表す式を、T(θ
1)とする。
シリンダアーム31aの長さと、本体部10からアーム11とシリンダアーム31aの連結部分までの長さと、は同じとする。シリンダアーム31aの長さに対する長さLの比を、Rとする。角度θ
1、角度θ
2、関数T(θ
1)、長さL、押し付け力F
P、及び指令値F
Cの関係は、以下の式1(第1式)で表される。
【数1】
【0038】
例えば、長さL、関数T(θ1)、及び押し付け力FPは、ユーザにより予め設定される。例えば、角度θ2は、角度θ1と等しくなるように構成される。制御部5は、これらの値と、検出された角度θ1と、を式1に代入することで、指令値FCが算出される。すなわち、制御部5は、予め設定されたFPを実現させるために必要な、アクチュエータ31による指令値FCを算出する。制御部5は、指令値FCが出力されるように、アクチュエータ31を制御する。
【0039】
制御部5が参照する式は、外乱(外的作用)を考慮して設定されていても良い。
図6において、Nは、移動体1が第2面92Sから受ける垂直抗力を表す。垂直抗力Nは、押し付け力F
Pと等しい。ここでは、弾性部材21がアーム11に連結されていない状態を考える。角度θ
1が角度θ
2と等しいとき、外乱の無い状態では、以下の式2が成立する。
【数2】
【0040】
実際には、外乱が存在する。ここで、アクチュエータ31に関する外乱をΔF
Cとする。アーム11に関する外乱をΔaとする。これらの外乱は、アーム11及びアクチュエータ31の製造に係る公差、アーム11及びアクチュエータ31を他の構成要素と連結させる際の公差などに起因する。垂直抗力Nは、外乱を考慮して、以下の式
3で表される。
【数3】
【0041】
ΔFC及びΔaは、例えば、以下の手順により算出される。まず、指令値FCを変化させたときの、角度θ1及び実際の垂直抗力Nの変化を測定する。角度θ1は、例えば角度θ2と等しい。垂直抗力Nは、押し付け力FPと等しい。押し付け力FPは、例えば、検査ユニット60に力検出器を設けることで検出できる。
【0042】
式2に、角度θ
1、角度θ
2、及び指令値F
Cを代入して、垂直抗力Nの予測値を算出する。式2から算出される垂直抗力の予測値をN
Pとする。予測される垂直抗力N
Pと実際の垂直抗力Nとの差を、以下の式4のように、a(θ
1)の関数とみなす。
【数4】
【0043】
対応する角度θ
1、角度θ
2、指令値F
C、垂直抗力N、及び垂直抗力
N
P
の組を複数用意する。それぞれの変数の組を式4に代入し、複数の式を最も良く表すことができるΔF
Cを決定する。次に、垂直抗力
N
P
と垂直抗力Nとの差から外乱ΔFca(θ
1)を引いた値を、以下の式5のように、(F
C+ΔF
C)の関数とみなす。
【数5】
【0044】
上述したそれぞれの変数の組を式4に代入し、複数の式を最も良く表すことができるΔa(θ1)及びCを決定する。決定されたΔFC、Δa(θ1)、及びCを式3に代入する。これにより、外乱が考慮された式が得られる。この式3を用いてアクチュエータ31の指令値FCを決定することで、実際に出力される押し付け力FPを、予め設定された値により近づけることができる。
【0045】
アーム11に弾性部材21が連結されているときは、式1のように、関数T(θ
1)及び長さLを含む項を式3に追加すれば良い。式3には、さらに、
図6に表した移動体1の自重m、及び重力加速度gが考慮されても良い。αは、
図4(a)に表したように、移動体1の第1面91S上における位置(角度)を表す。このとき、垂直抗力Nは、以下の式6(第
2式)で表わされる。
【数6】
【0046】
これにより、外乱が考慮された式が得られる。この式6を用いてアクチュエータ31の指令値FCを決定することで、実際に出力される押し付け力FPを、予め設定された値により近づけることができる。
【0047】
図7は、アクチュエータへの指令値とアームによる押し付け力との関係を例示するグラフである。
図7において、横軸は、アクチュエータ31への指令値F
Cを表す。縦軸は、実際に出力される押し付け力F
Pを表す。また、
図7において、丸のプロットは、式6を用いた場合の、指令値F
Cと押し付け力F
Pとの関係を表す。四角のプロットは、式1を用いた場合の、指令値F
Cと押し付け力F
Pとの関係を表す。点線は、指令値F
Cと押し付け力F
Pとが一致する場合を示している。
【0048】
図7から、式6を用いることで、押し付け力F
Pが指令値F
Cとほぼ等しくなっていることが分かる。すなわち、予め設定された押し付け力F
Pと同じ指令値F
Cをアクチュエータ31へ入力することで、実際に出力される押し付け力を、予め設定された押し付け力F
Pに近づけることができる。
【0049】
移動体1に、
図2に表したように、押し付け力F
Pを検出する力検出器65が設けられていても良い。制御部5は、力検出器65による検出結果に基づいて、アクチュエータ31を制御しても良い。制御部5は、力検出器65の検出結果が予め設定された押し付け力に近づくように、アクチュエータ31を制御する。
【0050】
力検出器65は、例えば、検査ユニット60に設けられ、押し付け力FPを直接的に検出する。力検出器65は、例えば、検査ユニット60に設けられ、ローラ63が第2面92Sから受ける垂直抗力を直接検出する。又は、力検出器65は、押し付け力FPを間接的に検出しても良い。例えば、力検出器65は、アクチュエータ31(エアシリンダ)の圧力等を検出し、その検出結果に基づいて、押し付け力FPを算出する。
【0051】
以上では、アクチュエータ31が動力シリンダである場合について説明した。上述した所定の押し付け力FPを得るための方法は、アクチュエータ31が動力シリンダ以外である場合にも適用可能である。例えば、アーム11の角度θを変化させ、押し付け力FPを調整できるアクチュエータ31として、モータがある。
【0052】
(第1変形例)
図8は、第1実施形態の第1変形例に係るロボットを模式的に表す側面図である。
図8において、Lは、移動体1aのアーム11の長さを表す。T
Sは、弾性部材21からアーム11に加えられるトルクを表す。長さLと、角度θとトルクT
Sとの関係を表す関数T
S=f(θ)が予め設定される。このとき、押し付け力F
Pは、以下の式7で表される。
【数7】
【0053】
アーム11のトルクをTとすると、F
T=T/Lである。また、アクチュエータ31によるトルクをT
Mとすると、T=(T
S-T
M)である。これらの関係から、式7は、以下の式8で表される。なお、ここでは、トルクT
Sについては、角度θを大きくする方向を正とし、トルクT
Mについては、角度θを小さくする方向を正としている。
【数8】
【0054】
式8を変形し、T
S=f(θ)で表すと、以下の式9が得られる。
【数9】
【0055】
アーム11の長さL及び関数f(θ)は、予め設定されているため、目標とする押し付け力FPがさらに設定されると、その押し付け力FPを得るために必要なアクチュエータ31のトルクTMが定まる。
【0056】
制御部5は、角度検出器41で検出された角度が入力されると、予め設定された関数f(θ)、式9を参照し、トルクTMを算出する。そして、制御部5は、算出されたトルクTMが出力されるよう、アクチュエータ31を制御する。これにより、移動体の走行中に第1面91Sと第2面92Sとの間の距離が変化しても、予め設定された押し付け力FPを出力させることができる。これにより、押し付け力FPが大きすぎて移動体が移動出来なかったり、押し付け力FPが小さすぎて落下したりする可能性を低減できる。
【0057】
また、アクチュエータ31がモータである場合において、制御部5は、動力シリンダと同様に、外乱が考慮された式を参照しても良い。
【0058】
(第2変形例)
図9は、第1実施形態の第2変形例に係るロボットの一部を表す模式図である。
図1~
図3に表した移動体1は、弾性部材21としてねじりコイルばねを有していた。これに対して、本変形例に係るロボットの移動体1bは、弾性部材21としてコイルばねが設けられている。
【0059】
弾性部材21の一端は、本体部10と連結され、弾性部材21の他端は、アーム11と連結されている。弾性部材21の長さは、角度θに応じて変化する。すなわち、弾性部材21は、角度θに応じたトルクをアーム11に与える。
【0060】
このように、弾性部材21及びアクチュエータ31は、アーム11に対してトルクを与えることができるものであれば、その具体的構成は適宜変更可能である。
【0061】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係るロボットを模式的に表す側面図である。
図11は、第2実施形態に係るロボットを模式的に表す平面図である。
第2実施形態に係るロボット200は、
図10及び
図11に表したように、複数のアームを備える。具体的には、第2実施形態に係るロボット200は、第1実施形態に係るロボット100に対して、アーム12及び13、弾性部材22及び23、アクチュエータ32及び33、角度検出器42及び43をさらに備える。
【0062】
アーム12及び13のそれぞれの一端は、本体部10に対して回動可能である。アーム12及び13の他端は、それぞれ、ローラ12b及び13bを介して第2面92Sに接触する。アーム12及び13は、検査ユニット60が設けられていない点で、アーム11と異なる。
【0063】
アーム12には、弾性部材22及びアクチュエータ32が連結され、アーム13には、弾性部材23及びアクチュエータ33が連結される。アクチュエータ32及び33は、例えば、モータである。アーム12及び13には、検査ユニット60が設けられていないため、アクチュエータ32及び33の出力は、アクチュエータ31の出力より小さくて良い。
【0064】
アーム12及び13は、それぞれ、アクチュエータ32及び33の回転軸32a及び33aを中心に回動する。角度検出器42及び43は、それぞれ、本体部10に対するアーム12及び13の角度を検出する。
【0065】
図12及び
図13は、第2実施形態に係るロボットの動作を模式的に表す側面図である。
例えば、第1面91S又は第2面92Sには、
図12及び
図13に表したように、突起95が存在する場合がある。例えば、第1構造物91と第2構造物92が発電機の一部である場合、第2面92Sには、バッフルと呼ばれる突起が存在する。突起95が存在する場合に、アーム11を第2面92Sに当接させながら移動していると、アーム11が突起95に引っ掛かり、移動できなくなる可能性がある。
【0066】
そこで、第2実施形態に係るロボット200では、移動体2に複数のアームが設けられている。例えば、
図12(a)~
図12(e)及び
図13(a)~
図13(d)に表したように、突起95の位置と、移動体2の進行方向A1又はA2と、に合わせて、アーム11~13の一部を折り畳むことで、アームが突起95と接触することを回避できる。また、アーム11~13の一部を折り畳んでいる間は、別のアームが第2面92Sを押し付けるため、移動体2の姿勢を維持し、移動体2の落下等を防止できる。
【0067】
角度検出器41~43は、それぞれ、アーム11~13の角度をユーザに向けて出力する。ユーザは、その出力結果を確認しながら、アクチュエータ31~33を制御し、アーム11~13の角度θを調整する。これにより、移動体2をより安定して移動させることができる。
【0068】
または、制御部5は、アーム11~13のそれぞれの角度に基づいて、アクチュエータ31~33を制御しても良い。例えば、制御部5は、各アームによる押し付け力の合計が、予め設定された値となるように、アクチュエータ31~33の動作を制御する。また、制御部5は、アーム11~13の一部が折り畳まれている間、アーム11~13の別の一部で所定の押し付け力FP1が実現されるよう、アクチュエータ31~33を制御する。
【0069】
便宜的な一例として、アーム11~13が全て第2面92Sに当接している場合、制御部5は、アーム11~13のそれぞれの押し付け力FPが、FP1/3となるように、アクチュエータ31~33を制御する。アーム11が折り畳まれ、アーム12及び13が第2面92Sに当接している間、制御部5は、アーム12及び13のそれぞれの押し付け力FPが、FP1/2となるように、アクチュエータ32及び33を制御する。
【0070】
この制御方法によれば、いずれかのアームを折り畳んでいる間も、移動体2が十分な力で第1面91Sに向けて押さえ付けられる。このため、移動体2の落下等をより確実に防止できる。
【0071】
なお、ここでは、移動体2が3つのアームを備える場合を説明したが、移動体2が備えるアームの数は任意である。また、上述した各実施形態では、アームが1つの回動軸のみを備えた1リンク構造である場合を説明した。しかし、各実施形態に係るロボットの構造は、この例に限定されない。アームは、2つ以上のリンクを含んでいても良い。これにより、例えば、アームを本体部10の上で折り畳んで収納した際に、アームが占める面積を小さくできる。
【0072】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0073】
1、1a、1b、2 移動体、 5 制御部、 5a ケーブル、 10 本体部、 10a 車体、 10b クローラ、 11~13 アーム、 12b、13b ローラ、 21~23 弾性部材、 31~33 アクチュエータ、 31a シリンダアーム、 32a、33a 回転軸、 41~43 角度検出器、 52 カメラ、 53 計測器、 54 位置検出部、 55 照明器、 56 カメラ、 60 検査ユニット、 61、62 検査器、 63、 ローラ、 65 力検出器、 91 第1構造物、 91S 第1面、 92 第2構造物、 92S 第2面、 95 突起、 100、200 ロボット