(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/26 20180101AFI20220208BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220208BHJP
C08J 9/06 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C09J7/26
C09J201/00
C08J9/06 CES
(21)【出願番号】P 2018069802
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 慶人
(72)【発明者】
【氏名】高須 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 健次
【審査官】宮地 慧
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-203256(JP,A)
【文献】特開2017-066404(JP,A)
【文献】特開2009-155557(JP,A)
【文献】特開2004-323842(JP,A)
【文献】特開2012-072393(JP,A)
【文献】特開2008-214434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立気泡発泡シートと、該発泡シート
の一方の面
のみに設けられる粘着剤層とを備える粘着テープであって、
前記発泡シートの
他方の面の算術平均粗さRaが1~12μmであり、
前記粘着剤層の剥離強度が1.1N/25mm以上であり、厚みが10μm以上である、粘着テープ。
【請求項2】
前記発泡シートの50%圧縮強度が40~300kPaである、請求項
1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記発泡シートの層間強度が0.8~3.0MPaである、請求項1
又は2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記発泡シートの厚みが0.1~1.5mm以下である、請求項1~
3のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記発泡シートの発泡倍率が1.2~20cm
3/gである、請求項1~
4のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記発泡シートの平均気泡径が20~150μmである、請求項1~
5のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記発泡シートの架橋度が25質量%以上である、請求項1~
6のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記発泡シートがポリオレフィン系樹脂を含有する、請求項1~
7のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記発泡シートがポリエチレン樹脂を50質量%以上含有する、請求項1~
8のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記粘着剤層の厚みが10μm以上55μm以下である、請求項1~
9のいずれかに記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立気泡発泡シートと粘着剤層とを備える粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡シートは、例えば、緩衝性、断熱性、防水性及び防湿性に優れるため、物品の梱包材、気体又は液体から保護が必要な部品等の周縁部分を密封するシール材、振動及び衝撃を緩衝する緩衝材、粘着シートの基材等の様々な用途に使用されている。具体的な発泡シートとして、特許文献1には、熱分解型発泡剤を含む発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを発泡且つ架橋させて得られる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、スマートフォンやウェアラブル端末等の小型通信機器においては、高い防水性能が要求されている。このため、表示パネルと筐体との間に生じる隙間や、SIMカードスロット等の開口部周辺には、防水性向上の観点からガスケット材が配置されている。ガスケット材は、被着体の表面の微小な段差に適合できる程度の柔軟性が必要であり、かつ、配置箇所に仮固定するための粘着性が必要とされている。このような物性を満たす材料として、発泡体と、該発泡体の少なくとも一方の面に設けられる粘着剤層とを備える粘着テープが知られている。しかし、近年はより高い防水性能が要求され、さらなる防水性の向上が求められている。
【0005】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、良好な防水性を示す粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが、鋭意検討した結果、独立気泡発泡シートと、該独気泡発泡シートの少なくとも一方の面に設けられる粘着剤層とを備える粘着テープであって、粘着剤層の剥離強度及び厚みを一定以上とし、かつ独立気泡発泡シートの算術平均粗さRaを一定範囲にすることにより、粘着テープの防水性が向上することを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0007】
[1]独立気泡発泡シートと、該発泡シートの少なくとも一方の面に設けられる粘着剤層とを備える粘着テープであって、前記発泡シートの少なくとも一方の面の算術平均粗さRaが1~12μmであり、前記粘着剤層の剥離強度が1.1N/25mm以上であり、厚みが10μm以上である、粘着テープ。
[2]前記発泡シートの一方の面のみに粘着剤層が設けられており、他方の面の算術平均粗さRaが1~12μmである、上記[1]に記載の粘着テープ。
[3]前記発泡シートの50%圧縮強度が40~300kPaである、上記[1]又は[2]に記載の粘着テープ。
[4]前記発泡シートの層間強度が0.8~3.0MPaである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の粘着テープ。
[5]前記発泡シートの厚みが0.1~1.5mm以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の粘着テープ。
[6]前記発泡シートの発泡倍率が1.2~20cm3/gである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の粘着テープ。
[7]前記発泡シートの平均気泡径が20~150μmである、上記[1]~[6]のいずれかに記載の粘着テープ。
[8]前記発泡シートの架橋度が25質量%以上である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の粘着テープ。
[9]前記発泡シートがポリオレフィン系樹脂を含有する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の粘着テープ。
[10]前記発泡シートがポリエチレン樹脂を50質量%以上含有する、上記[1]~[9]のいずれかに記載の粘着テープ。
[11]前記粘着剤層の厚みが10μm以上55μm以下である上記[1]~[10]のいずれかに記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好な防水性を示す粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例及び比較例における層間強度を評価するための試験装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、独立気泡発泡シートと、該発泡シートの少なくとも一方の面に設けられる粘着剤層とを備える粘着テープであって、前記発泡シートの少なくとも一方の面の算術平均粗さRaが1.0~12μmであり、前記粘着剤層の剥離強度が1.1N/25mm以上であり、厚みが10μm以上の粘着テープとなるものである。このような要件を満足することで、防水性の良好な粘着テープを得ることができる。
【0011】
(独立気泡発泡シート)
<算術平均粗さ>
本発明の粘着テープは少なくとも一方の面の算術平均粗さRaが1~12μmの独立気泡発泡シート(以下単に発泡シートともいう)を備える。発泡シートの少なくとも一方の面の算術平均粗さRaが12μmを超えると、粘着テープの防水性が低下する。また、発泡シートの面の算術平均粗さRaは通常は1μm以上となる。
粘着テープの防水性をより向上させる観点から、発泡シートの少なくとも一方の面の算術平均粗さRaは、好ましくは1.0~8μm、より好ましくは1.1~4μm、更に好ましく1.2~2μmである。
本発明においては、発泡シートの少なくとも一方の面の算術平均粗さRaが上記の範囲であればよいが、両方の面の算術平均粗さが上記の範囲であってもよい。中でも、発泡シートの一方の面のみに粘着剤層が設けられており、他方の面の算術平均粗さRaが1~12μmである粘着テープが好ましい。該粘着テープは、粘着剤層を一方の面のみに設けているため、製造が容易であるとともに、被着体に対して貼付する際の作業性に優れている。発泡シートの一方の面のみに粘着剤層が設けられた粘着テープを、部材間に挿入した場合は、算術平均粗さRaが1~12μmである発泡シートの面が、被着体である部材と直接接触する。この場合、発泡シートのRaが小さいため、発泡シートの面と部材との密着性が良好となり、防水性が向上する。さらに、粘着剤層を一方の面にのみに備える粘着テープであるため、部材間に挿入した後に、取り外しやすいという利点もある。
発泡シートの表面の算術平均粗さRaは、発泡シートの架橋度、平均気泡径、発泡倍率などを調整することにより調節することができる。
なお、算術平均粗さRaは実施例に記載の方法で測定することができる。
【0012】
<50%圧縮強度>
本発明に用いる発泡シートの50%圧縮強度は、特に限定されないが、40~300kPaであることが好ましい。このような50%圧縮強度を有する発泡シートを備える粘着シートは、柔軟性が高く、粘着シートを貼付する被着体の表面に微小な段差があっても、これに適合でき、防水性を高めることができる。また、このような50%圧縮強度を有する発泡シートを備える粘着シートは、厚み方向における反力が低くなり、狭いクリアランスに高圧縮状態で簡単に配置することが可能である。以上のような観点から、発泡シートの50%圧縮強度は、好ましくは70~250kPaであり、より好ましくは80~230kPaであり、更に好ましくは100~200kPaである。
なお、50%圧縮強度はJIS K6767に準拠して測定することができる。
【0013】
<層間強度>
本発明に用いる発泡シートの層間強度は、特に限定されないが、好ましくは0.8~3.0MPaである。本明細書において層間強度とは、厚み方向の引張強度を示す値である。
発泡シートの層間強度が3.0MPa以下であると、粘着テープの柔軟性が高く、防水性が良好になる。一方、発泡シートの層間強度が0.8MPa以上であると、粘着テープのリワーク性が良好になる。
粘着テープは、被着体に貼り付けた後、位置を微調整するために一旦剥離して、再貼付する場合があり、この際に、粘着テープの破れなどが発生する場合がある。リワーク性とはこのような剥離-再貼付時の作業性に関する指標を示し、リワーク性がよい粘着テープとは、剥離の際に破れる頻度が少ない粘着テープを意味する。
発泡シートの層間強度は、防水性及びリワーク性のバランスの優れた粘着テープを得る観点から、好ましくは0.9~2.5MPaであり、より好ましくは1.0~2.0MPaであり、更に好ましくは1.2~1.8MPaである。
層間強度は、発泡シートを構成する樹脂の種類、平均気泡径などにより調整することができる。なお、本明細書において層間強度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0014】
<平均気泡径>
本発明に用いる発泡シートの平均気泡径は特に限定されないが、20~150μmであることが好ましい。このような平均気泡径の範囲であると、発泡シート面の算術平均粗さRaを上記範囲に調整しやすくなり、粘着テープの防水性が向上する。
また、発泡シートの平均気泡径が150μm以下であると、リワーク時に粘着テープに対し大きな力が加わった場合に、気泡径が大きな気泡の周囲を起点として破断が生じることを防止できる。つまり、発泡シート中に大きな気泡径の気泡が少ないと、発泡シート中の密度が低い部分が少なくなるため、該部分より生じる破れが抑制される。また、製造コスト等の観点から、発泡シートの平均気泡径は20μm以上であることが好ましい。
発泡シートの平均気泡径は、粘着テープの防水性及びリワーク性を向上させる観点から、好ましくは140μm以下、より好ましくは120μm以下、更に好ましくは100μm以下である。平均気泡径の下限値は、小さい気泡径を多く含む発泡シートは製造コストが高くなるため、好ましくは30μm以上、より好ましくは40μm以上、更に好ましくは50μm以上である。
なお、本発明における平均気泡径は、後述の方法で測定したMD方向の平均気泡径、及びTD方向の平均気泡径を平均した気泡径である。
【0015】
平均気泡径は下記の要領で測定したものをいう。
発泡シートを50mm四方にカットしたものを測定用の発泡体サンプルとして用意した。これを液体窒素に1分間浸した後にカミソリ刃でMD方向、及びTD方向に沿ってそれぞれ厚み方向に切断した。この断面をデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VHX-900」)を用いて200倍の拡大写真を撮り、MD方向、及びTD方向のそれぞれにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡について気泡径を測定し、その操作を5回繰り返した。そして、全ての気泡の平均値をMD方向、及びTD方向の平均気泡径とした。
なお、MD方向は、Machine directionを意味し、押出方向等と一致する方向であるとともに、TD方向は、Transverse directionを意味し、MD方向に直交する方向であり、シート状の発泡体(発泡シート)においてはシート面に平行な方向である。
【0016】
<発泡倍率>
本発明に用いる発泡シートの発泡倍率は、特に限定されないが、1.2~20cm3/gであることが好ましい。発泡倍率を前記範囲内とすることで、平均気泡径及び50%圧縮強度を上記範囲内に調整しやすくすることができる。また、発泡倍率を1.2cm3/g以上とすることで柔軟性が良好となり、防水性が良好となりやすい。一方で、20cm3/g以下とすることで、機械強度が高くなり、リワーク性が良好となる。
そのような観点から、発泡倍率は、3~14cm3/gがより好ましく、5~13cm3/gが更に好ましく、7~12cm3/gがより更に好ましい。なお、本発明では、JIS K7222に従い発泡シートの密度を求め、その逆数を発泡倍率とする。
【0017】
<架橋度>
本発明において用いる発泡シートの架橋度は、特に限定されないが、25質量%以上が好ましい。架橋度が25質量%以上であると平均気泡径及び算術平均粗さRaを前記範囲内に調整しやすく、結果としてリワーク性が向上する。25質量%以上とすることで、発泡シートの気泡を微細化しやすくなり、また各気泡の大きさのばらつきも少なくなり、リワーク性及び機械強度を向上させることができる。また、発泡シートの架橋度の上限値は70質量%以下であることが好ましい。このような上限値であると発泡倍率を高めやすくなり、柔軟性を高めやすい。そのような観点から、発泡シートの架橋度は、30~65質量%がより好ましく、40~60質量%が更に好ましい。
架橋度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0018】
<独立気泡率>
本発明の発泡シートは、独立気泡を有する独立気泡発泡シートであり、全気泡に対する独立気泡の割合(「独立気泡率」という)が70%以上となる。このような発泡シートは防水性を担保しやすくなる。独立気泡率は、好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上である。
独立気泡率は、ASTM D2856(1998)に準拠して求めることができる。市販の測定器では、乾式自動密度計アキュピック1330等が挙げられる。
【0019】
独立気泡率は、より具体的には下記の要領で測定される。発泡シートから一辺が5cmの平面正方形状で、且つ一定厚みの試験片を切り出す。試験片の厚みを測定し、試験片の見掛け体積V1を算出するとともに試験片の重量W1を測定する。次に、気泡の占める見掛け体積V2を下記式に基づいて算出する。なお、試験片を構成している樹脂の密度は、1g/cm3とする。
気泡の占める見掛け体積V2=V1-W1
続いて、試験片を23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に15kPaの圧力を3分間に亘って加える。しかる後、試験片を水中から取り出して試験片の表面に付着した水分を除去し、試験片の重量W2を測定し、下記式に基づいて連続気泡率F1及び独立気泡率F2を算出する。
連続気泡率F1(%)={(W2-W1)/V2}×100
独立気泡率F2(%)=100-F1
【0020】
<寸法>
本発明で用いる発泡シートの厚みは0.1~1.5mmであることが好ましい。厚みを1.5mm以下とすると薄型化が可能になり、小型化した電子機器に好適に使用できる。そのような観点から、厚みは、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.9mm以下、更に好ましくは0.8mm以下である。また、厚みの下限値は、平均気泡径との関係から、0.1mm以上が好ましく、0.15mm以上がより好ましい。厚みが0.1mm以上であると、発泡シートの防水性及び柔軟性の確保が容易になる。
【0021】
発泡シートは、その幅が狭いものが好ましく、具体的には、細線状に加工したものが好ましい。例えば発泡シートの幅を5mm以下にして使用してもよく、好ましくは3mm以下、より好ましくは1mm以下で使用することができる。本発明に用いる発泡シートは防水性に優れるため、例えば1mm幅とした場合であっても優れた防水性を得ることができ、小型化された電子機器内部において好適に使用することが可能である。
発泡シートの幅の下限値は特に限定されないが、例えば0.1mm以上のものであってもよいし、0.2mm以上のものであってもよい。なお、発泡シートの平面形状は、特に限定されないが、細長矩形状、枠状、L字状、コの字状等とするとよい。ただし、これらの形状以外でも、通常の四角形、円形等の他のいかなる形状であってもよい。
【0022】
<ポリオレフィン系樹脂>
本発明で用いる発泡シートは、樹脂で構成されていることが好ましい。樹脂の種類は特に制限されないが、発泡シートの適度な柔軟性を確保しつつ、平均気泡径を前記範囲内に調整しやすくする観点から、ポリオレフィン系樹脂を含有することが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらの中ではポリエチレン樹脂が好ましい。
【0023】
〔ポリエチレン樹脂〕
ポリエチレン樹脂としては、チーグラー・ナッタ化合物、メタロセン化合物、酸化クロム化合物等の重合触媒で重合されたポリエチレン樹脂が挙げられ、好ましくは、メタロセン化合物の重合触媒で重合されたポリエチレン樹脂が用いられる。
【0024】
また、ポリエチレン樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンを用いることにより、発泡シートに柔軟性を付与するとともに、発泡シートの薄型化が可能になる。この直鎖状低密度ポリエチレンは、メタロセン化合物等の重合触媒を用いて得たものがより好ましい。また、直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレン(例えば、全モノマー量に対して75質量%以上、好ましくは90質量%以上)と必要に応じて少量のα-オレフィンとを共重合することにより得られる直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。
α-オレフィンとして、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、及び1-オクテン等が挙げられる。なかでも、炭素数4~10のα-オレフィンが好ましい。
ポリエチレン樹脂、例えば上記した直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.870~0.910g/cm3が好ましく、0.875~0.907g/cm3がより好ましく、0.880~0.905g/cm3が更に好ましい。
ポリエチレン樹脂としては、複数のポリエチレン樹脂を用いることもでき、また、上記した密度範囲及び融点範囲以外のポリエチレン樹脂を加えてもよい。
【0025】
(メタロセン化合物)
メタロセン化合物としては、遷移金属をπ電子系の不飽和化合物で挟んだ構造を有するビス(シクロペンタジエニル)金属錯体等の化合物を挙げることができる。より具体的には、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、及び白金等の四価の遷移金属に、1又は2以上のシクロペンタジエニル環又はその類縁体がリガンド(配位子)として存在する化合物を挙げることができる。
このようなメタロセン化合物は、活性点の性質が均一であり各活性点が同じ活性度を備えている。メタロセン化合物を用いて合成した重合体は、分子量、分子量分布、組成、組成分布等の均一性が高いため、メタロセン化合物を用いて合成した重合体を含むシートを架橋した場合には、架橋が均一に進行する。その結果、均一に延伸できるため、発泡シートを薄くしてもその厚みを均一にしやすくなる。
【0026】
リガンドとしては、例えば、シクロペンタジエニル環、インデニル環等を挙げることができる。これらの環式化合物は、炭化水素基、置換炭化水素基又は炭化水素-置換メタロイド基により置換されていてもよい。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種アミル基、各種ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種セチル基、フェニル基等が挙げられる。なお、「各種」とは、n-、sec-、tert-、iso-を含む各種異性体を意味する。
また、環式化合物をオリゴマーとして重合したものをリガンドとして用いてもよい。
更に、π電子系の不飽和化合物以外にも、塩素や臭素等の一価のアニオンリガンド又は二価のアニオンキレートリガンド、炭化水素、アルコキシド、アリールアミド、アリールオキシド、アミド、アリールアミド、ホスフィド、アリールホスフィド等を用いてもよい。
【0027】
四価の遷移金属やリガンドを含むメタロセン化合物としては、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル-t-ブチルアミドジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
メタロセン化合物は、特定の共触媒(助触媒)と組み合わせることにより、各種オレフィンの重合の際に触媒としての作用を発揮する。具体的な共触媒としては、メチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素系化合物等が挙げられる。なお、メタロセン化合物に対する共触媒の使用割合は、10~100万モル倍が好ましく、50~5,000モル倍がより好ましい。
【0028】
〔ポリプロピレン樹脂〕
また、ポリプロピレン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレンを50質量%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プロピレン-α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等が挙げることができ、これらの中では、炭素数6~12のα-オレフィンが好ましい。
【0029】
〔エチレン-酢酸ビニル共重合体〕
ポリオレフィン樹脂として使用するエチレン-酢酸ビニル共重合体は、例えば、酢酸ビニルを、好ましくは6~40質量%、より好ましくは12~35質量%、更に好ましくは20~33質量%含有するエチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
本発明においては、例えば、分子量、共重合体成分の酢酸ビニルの量、融点等が異なる2種類以上のものを組み合わせて使用することができる。
なお、本発明で用いるエチレン-酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルの他、酢酸ビニルの一部を加水分解して生成したビニルアルコールを含むものでもよい。
このようなエチレン-酢酸ビニル共重合体としては、例えば、東ソー株式会社製「ウルトラセン」、三井・デュポンポリケミカル株式会社製「エバフレックス」、宇部興産株式会社製「UBEポリエチレン」、旭化成ケミカルズ株式会社製「サンテック」等が挙げられる。
【0030】
〔各樹脂の含有量〕
ポリオレフィン樹脂としてポリエチレン樹脂を用いる場合、発泡シートを構成する樹脂全量に対するポリエチレン樹脂の量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、実質的にポリエチレン樹脂のみからなってもよい。ポリエチレン樹脂の含有量が50質量%以上であると、防水性及びリワーク性が向上する。
【0031】
発泡シートにおいて樹脂としてポリオレフィン樹脂を含む場合、発泡シートに含有される樹脂は、ポリオレフィン樹脂を単独で使用してもよいが、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂を含んでもよい。発泡シートにおいて、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂を含む場合、ポリオレフィン樹脂の樹脂全量に対する割合は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
また、発泡シートに使用するポリオレフィン樹脂以外の樹脂としては、スチレン系熱可塑性エラストマー、EPDM等のエチレンプロピレン系熱可塑性エラストマー等の各種のエラストマー、ゴム成分等が挙げられる。
【0032】
〔熱分解型発泡剤〕
本発明の発泡シートは、上記樹脂と熱分解型発泡剤とを含む発泡性組成物を発泡して製造することが好ましい。また、熱分解型発泡剤としては、粒径が18μm未満のものを使用することが好ましい。本発明においては、粒径が18μm未満のものを使用し、また、架橋度を特定の範囲に調整することによって、前記平均気泡径の範囲に調整することができ、その結果、粘着テープのリワーク性を向上させることができる。そのような観点から、熱分解型発泡剤の粒径は、2~17μmが好ましく、5~16μmがより好ましい。
なお、熱分解型発泡剤の粒径は、レーザー回折法により測定した値であって、累積頻度50%に相当する粒径(D50)を意味する。
【0033】
熱分解型発泡剤としては、有機発泡剤、無機発泡剤が使用可能である。有機発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
無機発泡剤としては、酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミドがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
発泡性組成物における熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、3~18質量部がより好ましく、5~15質量部が更に好ましい。
【0034】
また、発泡性組成物は、上記樹脂と熱分解型発泡剤に加えて、気泡核調整剤を含有することが好ましい。気泡核調整剤としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の亜鉛化合物、クエン酸、尿素の有機化合物等が挙げられるが、これらの中では、酸化亜鉛がより好ましい。上記した小粒径の発泡剤に加えて気泡核調整剤を使用することで、平均気泡径を小さくしやすくなり、気泡径のばらつきを抑えることができる。気泡核調整剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~8質量部、より好ましくは0.2~5質量部、更に好ましくは0.3~2.5質量部である。
発泡性組成物は、必要に応じて、上記以外にも、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等の発泡体に一般的に使用する添加剤を含有していてもよい。
【0035】
〔独立気泡発泡シートの製造方法〕
本発明の粘着テープに用いる独立気泡発泡シートの製造方法は、特に制限はないが、例えば、樹脂及び熱分解型発泡剤を含む発泡性組成物を架橋し、加熱して熱分解型発泡剤を発泡させ、TD方向及びMD方向の少なくとも一方に延伸することで製造することができる。その製造方法は、より具体的には、以下の工程(1)~(4)を含む。
工程(1):樹脂、熱分解型発泡剤、必要に応じて配合される気泡核調整剤、及びその他の添加剤を混合して、シート状の発泡性組成物(樹脂シート)に成形する工程
工程(2):シート状の発泡性組成物に電離性放射線を照射して発泡性組成物を架橋させる工程
工程(3):架橋させた発泡性組成物を加熱し、熱分解型発泡剤を発泡させて、発泡シートを得る工程
工程(4):MD方向又はTD方向のいずれか一方又は双方の方向に発泡シートを延伸する工程
【0036】
工程(1)において、樹脂シートを成形する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂、熱分解型発泡剤、必要に応じて配合される気泡核調整剤、及びその他の添加剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機から発泡性組成物をシート状に押出すことによって樹脂シートを成形すればよい。
工程(2)において発泡性組成物を架橋する方法としては、樹脂シートに電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を照射する方法を用いる。上記電離放射線の照射量は、得られる発泡シートの架橋度が上記した所望の範囲となるように調整すればよいが、5~15Mradであることが好ましく、6~13Mradであることがより好ましい。
工程(3)において、発泡性組成物を加熱し熱分解型発泡剤を発泡させるときの加熱温度は、熱分解型発泡剤の発泡温度以上であればよいが、好ましくは200~300℃、より好ましくは220~280℃である。
【0037】
工程(4)における発泡シートの延伸は、MD及びTD方向の両方に行ってもよいし、一方のみに行ってもよいが、両方に行うことが好ましい。また発泡シートの延伸は、樹脂シートを発泡させて発泡シートを得た後に行ってもよいし、樹脂シートを発泡させつつ行ってもよい。なお、樹脂シートを発泡させて発泡シートを得た後、発泡シートを延伸する場合には、発泡シートを冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて発泡シートを延伸してもよく、発泡シートを冷却した後、再度、発泡シートを加熱して溶融又は軟化状態とした上で発泡シートを延伸してもよい。発泡シートは延伸することで薄厚にしやすくなる。
工程(4)において、発泡シートのMD方向及びTD方向の一方又は両方への延伸倍率は、1.1~5.0倍であることが好ましく、1.2~4.0倍がより好ましく、1.5~3.3倍が更に好ましい。なかでも、両方への延伸倍率をこれら範囲内にすることが特に好ましい。かかる範囲とすることで、50%圧縮強度を所望の範囲としやすくなる。
また、延伸倍率を上記下限値以上とすると、発泡シートの柔軟性が良好になりやすくなる。一方、上限値以下とすると、発泡シートが延伸中に破断したり、発泡中の発泡シートから発泡ガスが抜けて発泡倍率が著しく低下したりすることが防止され、発泡シートの柔軟性が良好になり、品質も均一なものとしやすくなる。
また、延伸時に発泡シートは、例えば100~280℃、好ましくは150~260℃に加熱すればよい。
以上のようにして得られた発泡シートは、抜き加工等の周知の方法により切断して、所望の形状に加工してもよい。
【0038】
ただし、本製造方法は、上記に限定されずに、上記以外の方法により、発泡シートを得てもよい。例えば、電離性放射線を照射する代わりに、発泡性組成物に予め有機過酸化物を配合しておき、発泡性組成物を加熱して有機過酸化物を分解させる方法等により架橋を行ってもよい。
【0039】
(粘着剤層)
本発明の粘着テープは、発泡シートの少なくとも一方の面に粘着剤層が設けられる。該粘着剤層が後述する剥離強度及び厚みを有することにより、粘着テープの防水性が良好となる。
〔剥離強度〕
粘着剤層の剥離強度は1.1N/25mm以上である。剥離強度が1.1N/25mm未満であると粘着テープの被着体に対する密着性が低下し、防水性が悪くなる。粘着テープの防水性を良好にする観点から、粘着剤層の剥離強度は1.5N/25mm以上であることが好ましく、2N/25mm以上であることがより好ましく、3N/25mm以上であることが更に好ましい。粘着テープのリワーク性を向上させる観点から、粘着剤層の剥離強度は20N/25mm以下であることが好ましく、15N/25mm以下であることがより好ましく、10N/25mm以下であることが更に好ましい。粘着剤層の剥離強度は、粘着剤層を構成する粘着剤の種類などにより調整することができる。
なお、粘着剤層の剥離強度とは、JIS Z0237-2009に準拠して測定した25℃における90度ピール粘着力のことを意味する。
【0040】
本発明においては、発泡シートの一方の面のみに粘着剤層が設けられている場合は、該一方の面に設けられた粘着剤層が上記剥離強度を満足する。発泡シートの両面に粘着剤層が設けられる場合は、一方の粘着剤層のみが上記剥離強度を満足してもよいし、両面の粘着剤層が上記剥離強度を満たしていてもよい。
【0041】
〔厚み〕
本発明の粘着テープに用いられる粘着剤層の厚みは、10μm以上である。10μm未満であると、被着体との間の密着が不十分になり、防水性が悪くなる。粘着剤層の厚みは、防水性を良好とする観点から、15μm以上であることが好ましく、18μm以上であることがより好ましい。また、粘着剤層は、小型化した電子機器に対して使用する観点から、一定程度薄いほうが好ましく、具体的には、粘着剤層は、55μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。このような一定厚み以下の粘着剤層を用いると、粘着テープを圧縮して比較的狭い電子機器の部材の間に挿入した場合でも、反発力が低く、部材の歪などを防止することができる。
粘着テープが、発泡シートの両方の面に粘着剤層を備える場合は、一方の面の粘着剤層のみが上記厚みを満足していればよいが、粘着テープの総厚みを薄くする観点、反発力を低下させる観点から、両方の面の粘着剤層が上記値を満足することが好ましい。
【0042】
〔粘着剤〕
粘着剤層は、以下に説明する粘着剤により形成されることが好ましい。粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を用いることができ、リワーク性及び防水性の観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
本発明においては、粘着テープが、発泡シートの両方の面に粘着剤層を備える場合は、2つの粘着剤層に使用する粘着剤は同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
(アクリル系粘着剤)
以下、粘着剤層に使用されるアクリル系粘着剤の一実施形態についてより詳細に説明する。アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)を含む重合性モノマーを重合したアクリル系重合体を含有する粘着剤である。
なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは、アクリル酸アルキルエステル、及びメタクリル酸アルキルエステルの両方を含む概念を指すものであり、他の類似の用語も同様である。また、用語「重合性モノマー」は、繰り返し単位を有しない化合物のみならず、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)と共重合する化合物であれば、後述するその他のモノマー自身が繰り返し単位を有するものも含みうる概念を指す。
【0044】
・(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)は、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコールとのエステルであって、脂肪族アルコールのアルキル基の炭素数が、好ましくは2~14、より好ましくは4~10である脂肪族アルコールに由来するアルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数がこの範囲内であると、剥離強度を上記した範囲に調整しやすくなる。
【0045】
具体的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレートが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート又はこれらの組み合わせがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位は、粘着剤において主成分を構成するものであって、その含有量は、粘着剤全量基準で一般的に30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45重量%以上である。このように、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)の含有量を多くすると、粘着剤に所望の粘着力を付与することが可能になる。
なお、粘着剤における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位の含有量は、後述する粘着剤組成物における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)の含有量と実質的に同じであるので、置き換えて表すことができる。以下で説明する(A)成分以外の成分についても同様である。
【0047】
・極性基含有ビニルモノマー(B)
重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)に加えて、極性基含有ビニルモノマー(B)を含有することが好ましい。極性基含有ビニルモノマー(B)は、極性基とビニル基を有するものである。粘着剤層に極性基含有モノマー(B)を用いることで、粘着剤層のピール粘着力等を調整しやすくなる。
【0048】
極性基含有ビニルモノマー(B)としては、例えば(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸、及びその無水物、水酸基を有するビニルモノマー、窒素含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
水酸基を有するビニルモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、及びポリオキシプロピレン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
窒素含有ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルラウリロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
極性基含有ビニルモノマー(B)の中でも、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸、及びその無水物が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましく、アクリル酸が更に好ましい。これらの極性基含有ビニルモノマー(B)は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
極性基含有ビニルモノマー(B)を使用する場合、粘着剤において極性基含有ビニルモノマー(B)由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、好ましくは1~15質量部、より好ましくは2~12質量部、更に好ましくは3~10質量部である。極性基含有ビニルモノマー(B)の含有量をこのような範囲内とすることで粘着剤層のTg、凝集力、粘着力等を適切な範囲に調整しやすくなる。
【0050】
・その他のモノマー
重合性モノマーは、上記した(A)及び(B)以外のその他のモノマーを含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、スチレン系モノマー、多官能モノマー、酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル等が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、及びp-メチルスチレン等が挙げられる。
また、多官能モノマーとしては、ビニル基を2つ以上有するモノマーが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能モノマーを使用すると、アクリル系重合体に網目構造を形成することが可能になる。
具体的な多官能モノマーとしては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトシキ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトシキ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化グリセリルトリアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジアクリレート等が挙げられる。
その他のモノマーを使用する場合、粘着剤において、その他のモノマー由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、0.5~15質量部、より好ましくは1~7質量部、更に好ましくは1~5質量部である。
アクリル系重合体のGPC法により測定した重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば20万~100万、好ましくは40万~90万である。
【0051】
〔粘着付与樹脂〕
アクリル系粘着剤は、粘着力を向上させる観点から、粘着付与樹脂を含有してもよい。粘着付与樹脂としては、水添テルペン樹脂、水添ロジン、不均化ロジン樹脂、ロジンエステル系ポリマー、石油樹脂等の重合阻害性の低い粘着付与樹脂が好ましい。これらの中でも、粘着付与樹脂が二重結合を多く有していると重合反応を阻害することから、ロジン系のものが好ましく、中でもロジンエステル系ポリマーが好ましい。
【0052】
粘着付与樹脂の軟化点は、粘着剤の凝集力及び粘着力を向上させる観点から、95℃以上程度であればよいが、120℃以上のものを含むことが好ましく、例えば、95℃以上120℃未満のものと、120℃以上150℃以下のものとを併用してもよい。なお、軟化点は、JISK2207に規定される環球法により測定すればよい。
アクリル系粘着剤における粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系重合体100質量部に対して、好ましくは2~40質量部、より好ましくは4~35質量部、更に好ましくは5~25質量部である。
【0053】
〔架橋剤〕
アクリル系粘着剤を構成する樹脂が水酸基やカルボキシ基を有する場合、粘着性を向上させる観点から、架橋剤を用いることにより主鎖間に架橋構造を形成してもよい。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、及び金属キレート型架橋剤等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましい。
【0054】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体等も挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)トルエン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4-ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルm-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ジグリシジルn-ヘキサン等が挙げられる。
【0056】
本発明に用いる粘着剤層の剥離強度は、架橋剤の量により調整してもよい。
架橋剤の粘着剤への配合量は、上記剥離強度の範囲に調整しやすい観点から、アクリル系重合体100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0057】
〔その他の成分〕
本発明において用いるアクリル系粘着剤は、前述した成分以外にも、可塑剤、軟化剤、顔料、染料、光重合開始剤、難燃剤等の粘着剤に従来使用されている各種の添加剤を含有してもよい。
【0058】
(ゴム系粘着剤)
ゴム系粘着剤は、ゴム成分を含有するものであり、ゴム成分としては、スチレン-イソプレンブロック共重合体を使用することが好ましい。スチレン-イソプレンブロック共重合体は、ジブロック率が好ましくは25~70質量%、より好ましくは30~65質量%、更に好ましくは45~60重量%である。ここでジブロックとは、スチレンとイソプレンとからなるジブロックのことをいう。スチレン-イソプレンブロック共重合体は、ジブロック率が25%以上となることで十分な粘着力が発現し、また、70質量%以下とすることで剪断強度を高めやすくなる。なお、スチレン-イソプレンブロック共重合体は、ジブロック以外にも、スチレン、イソプレン、スチレンブロックからなるトリブロック等ブロックを3つ以上有するものも含有する。
【0059】
スチレン-イソプレンブロック共重合体におけるスチレン量は、特に限定されないが、14~24質量%であることが好ましく、より好ましくは15~18質量%である。スチレン量が14質量%以上であると、凝集性の高い粘着剤となり、剪断強度を高めやすくなる。また、24質量%以下とすると、凝集力が適度な大きさとなり粘着力を発現しやすくなる。
スチレン-イソプレンブロック共重合体の分子量は、特に限定されないが、質量平均分子量で100,000~400,000が好ましく、150,000~250,000がより好ましい。なお、ここでいう質量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法によりポリスチレン換算分子量として測定されるものをいう。
【0060】
ゴム系粘着剤は、上記したゴム成分に加え、さらに粘着付与樹脂を含有することが好ましい。ゴム系粘着剤に使用される粘着付与樹脂は、各種の粘着付与樹脂が使用可能であるが、好ましくは石油系樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂を使用する。粘着付与樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、石油系樹脂と、テルペン樹脂及びクマロン樹脂から選択される少なくとも1種とを併用することが好ましい。このような粘着付与樹脂の組み合わせにより剥離強度を上記範囲に調整しやすくなる。
石油系樹脂としては、脂肪族系石油樹脂(C5系石油樹脂)、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂等が挙げられ、スチレン-イソプレンブロック共重合体との相溶性の観点から脂肪族系石油樹脂が好ましい。また、石油系樹脂は、軟化点が90~120℃程度のものを使用することが好ましい。
また、テルペン樹脂としては、軟化点が80~120℃程度のものが使用可能であるが、粘着力確保の観点から100℃未満のものが好ましい。また、クマロン樹脂としては、凝集力確保のために、軟化点が好ましくは110~130℃、より好ましくは115~125℃のものを使用する。
【0061】
粘着付与樹脂はゴム成分100質量部に対して60~250質量部が好ましく、100~200質量部がより好ましく、110~180質量部が更に好ましい。粘着付与樹脂の配合量を上記範囲内とすることで、凝集力を良好にして適度なピール粘着力を付与できるようになる。
また、石油系樹脂と、テルペン樹脂及びクマロン樹脂から選択される少なくとも1種とを併用する場合、石油系樹脂は、ゴム成分100質量部に対して、50~200質量部が好ましく、60~150質量部が好ましく、60~110質量部がより好ましい。一方で、テルペン樹脂は、ゴム成分100質量部に対して、10~70質量部が好ましく、20~60質量部がより好ましく、30~50質量部が更に好ましい。更に、クマロン樹脂は、ゴム成分100質量部に対して、10~60質量部が好ましく、15~50質量部がより好ましく、20~40質量部が更に好ましい。
ゴム系粘着剤は、必要に応じて、軟化剤、酸化防止剤、充填剤等を含有してもよい。
【0062】
(ウレタン系粘着剤)
ウレタン系粘着剤は特に限定されず、例えば、少なくともポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタン樹脂等が挙げられる。上記ポリオールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。上記ポリイソシアネート化合物として、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらのウレタン系粘着剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ウレタン系粘着剤としては、ポリウレタンポリオールと多官能イソシアネート系硬化剤とを反応させて得られるウレタン樹脂を使用してもよい。ポリウレタンポリオールは、上記したポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応したもの、又はポリオールとポリイソシアネート化合物とジアミン等の鎖延長剤とを反応させたものが挙げられる。多官能イソシアネート系硬化剤としては、2以上のイソシアネート基を有する化合物であればよく、上記したイソシアネート化合物を使用可能である。
ウレタン系粘着剤は、ウレタン樹脂に加えて、上記した微粒子を含有してもよく、また、ウレタン系粘着剤は、必要に応じて、粘着付与樹脂、軟化剤、酸化防止剤、充填剤等を含有してもよい。
【0063】
〔粘着剤層の製造方法〕
粘着剤層を構成する粘着剤は、アクリル系粘着剤を使用する場合には、上記した重合性モノマー、及び重合開始剤を含む粘着剤組成物を加熱、還流し、その後、重合体を架橋することにより得ることができる。また、上記した重合性モノマーを含む粘着剤組成物に光を照射して、重合性モノマーを重合させることで得ることも可能である。
粘着剤組成物は、必要に応じて上記した粘着付与樹脂、微粒子、及びその他の成分の少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0064】
発泡シートの少なくとも一方の面に粘着剤層を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、コーター等の塗工機を用いて粘着剤を塗布する方法、スプレーを用いて粘着剤を噴霧、塗布する方法、刷毛を用いて粘着剤を塗布する方法、剥離シート上に形成した粘着剤層を発泡シートに転写する方法等が挙げられる。
【0065】
<粘着テープの用途>
粘着テープの用途は、特に限定されないが、防水性に優れているため、例えば電子機器内部のシール材として使用することが好ましい。また、発泡シートを配置するスペースが小さい各種の携帯電子機器内部で好適に使用できる。電子機器としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、携帯電話、カメラ、ゲーム機器、電子手帳、パーソナルコンピュータ等が挙げられる。
本発明では、粘着テープは、上記したように電子機器を構成する2つの部材の間に配置されることで、それら2つの部材の間の密着性が確保できる。
【実施例】
【0066】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0067】
[測定方法]
各物性の測定方法及び評価方法は、次の通りである。
【0068】
<算術平均粗さRa>
発泡シートの算術平均粗さは、JIS B 0601(2001)に準拠し、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、「VK-8500」)により測定した。
なお、算術平均粗さRaの測定は、粘着剤層を形成させる前の発泡シートの両面に対して行った。
<層間強度>
図1に層間強度を評価するための試験装置の模式図を示す。発泡シート11の25mm角範囲にプライマー(セメダイン株式会社製「PPXプライマー」)を塗布した後、塗布部分の中央に直径5mm分の接着剤12(セメダイン株式会社製「PPX」)を滴下した。その後直ちに、接着剤滴下部分に25mm角のアルミ製治具13を置き、発泡シートと治具13とを圧着した。その後、治具13の大きさに沿って発泡シートをカットした。カットした発泡シートの治具13を接着していない面にプライマーを塗布し、塗布部分の中央に直径5mm分の接着剤12を滴下した。その後直ちに、接着剤滴下部分に10mm角のアルミ製治具14を置き、発泡シートと治具14とを圧着した。治具14の周辺にはみ出した接着剤をふき取った後、治具14の大きさに沿って発泡シートに切り込み15を入れた。これを室温で30分間放置することで接着剤を養生し、層間強度測定用サンプルとした。
続いて、1kNのロードセルを設置した試験機(株式会社エー・アンド・デイ製「テンシロン万能材料試験機」)に、発泡シートのシート面が引張方向に対して垂直になるように層間強度測定用サンプルを取り付けた。治具の一方を速度100mm/分で垂直上向きに引っ張り、発泡シートの1cm角の範囲のみを層間剥離させた。このときの最大荷重を測定し、1回目の測定結果とした。同様の操作を3回繰り返し、その平均値を層間強度とした。
【0069】
<発泡倍率>
発泡シートについてJIS K7222に準拠して見かけ密度を測定し、その逆数を発泡倍率とした。
【0070】
<平均気泡径>
発泡シートの平均気泡径は、明細書記載の方法で測定した。
【0071】
<50%圧縮強度>
発泡シートについてJIS K6767に準拠して25%圧縮強度を測定した。
【0072】
<架橋度>
発泡シートから約100mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出した。
架橋度(質量%)=(B/A)×100
【0073】
<独立気泡率>
発泡シートの独立気泡率は、明細書記載の方法で測定した。
【0074】
<剥離強度>
粘着剤層の粘着力は、JIS Z 0237に準拠して、90°剥離試験を行ったときの粘着力である。具体的には、SUS板に粘着シートを圧着して、25℃で300mm/分の速さで引き剥がす際の90度ピール粘着力を測定した。
【0075】
<防水性>
防水性評価は、温度23℃、相対湿度50%の条件下、下記方法により作成した試験サンプルを水深10cmに沈め、浸水の有無を目視で確認することにより行った。
なお、本防水性評価は、試験サンプルを作成後、温度23℃、相対湿度50%の条件下で6時間養生してから行った。
評価基準は、水深10cmに沈めた後、枠形状の内側に1時間浸水がなかった場合を“S”、30分間浸水がなく1時間以内に浸水する場合を“A”、30分間以内に浸水する場合を“B”して評価した。
【0076】
(試験サンプルの作成)
粘着テープを、外周が縦60mm×横40mm、幅が1.0mmの枠形状に打ち抜いた。次いで、得られた枠状の粘着テープを算術平均粗さRaが1.0μm、最大高さ粗さRzが5.0μmのアクリル板2枚で挟んだ。そして、2枚のアクリル板間のクリアランスが半分になるまで、ボルトで締めこんだ。
次いで、この試験サンプルを前述の方法で水深10cmに沈め、枠状の内側に水が浸水するか否かを目視で確認した。
【0077】
<リワーク性評価試験>
粘着テープを長さ30cm、幅25mmにカットして、空気が入らないように、SUS板の上に、粘着テープの粘着剤層を接触させ、粘着テープ上に2kgのローラーを載せて2往復させることで、粘着剤層とSUS板とを圧着した。次いで、引張試験機(テンシロン)を用いて300mm/minで剥離試験を行い、粘着剤層とSUS板との界面で剥離し、剥離後にSUS板上に発泡体が残留してなければ「A:割れなし」として評価し、剥離後にSUS板上に発泡体が残留していれば「B:割れ」と評価した。
【0078】
[樹脂]
本実施例で使用した樹脂を以下に示す。
・樹脂A(LLDPE):直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)(エクソン・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」、密度:0.900)
【0079】
[粘着剤層の製造]
<粘着剤層Aの製造>
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器にブチルアクリレート70質量部と2-エチルヘキシルアクリレート25質量部とアクリル酸5質量部を投入し、更に酢酸エチル80質量部を加え、窒素置換した。その後、反応器を加熱して還流を開始した。続いて、上記反応器内に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を添加し、70℃で5時間還流させて、アクリル共重合体の溶液を得た。
得られたアクリル共重合体について、カラムとしてWater社製「2690 Separations Model」を用いてGPC法により重量平均分子量を測定したところ、50万であった。
得られたアクリル共重合体(100質量部)の溶液に、イソシアネート系架橋剤1質量部、ロジンエステル系のポリマー10質量部を配合して、攪拌することにより粘着剤を得た。該粘着剤を、後述するように、離型紙上に塗布し、乾燥させることで粘着剤層Aが得られる。
【0080】
<粘着剤層Bの製造>
ブチルアクリレートを55質量部、2-エチルへキシルアクリレートを40質量部にし、イソシアネート系架橋材を3質量部、ロジンエステル系のポリマーを5部に変更した以外は、上記粘着剤層Aと同様の方法で粘着剤を得た。該粘着剤を、後述するように、離型紙上に塗布し、乾燥させることで粘着剤層Bが得られる。
各粘着剤層の組成等を表1に示した。
【0081】
【0082】
[実施例1]
(発泡シートの製造)
樹脂Aを100質量部と、熱分解型発泡剤として粒径が15μmのアゾジカルボンアミド8質量部と、気泡核調整剤として酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製、商品名「OW-212F」)1質量部と、酸化防止剤0.5質量部とを押出機に供給して130℃で溶融混練した発泡性組成物を、長尺状の樹脂シートに押出した。
次に、上記長尺状の樹脂シートの両面に加速電圧500kVの電子線を9Mrad照射して樹脂シートを架橋した後、架橋した樹脂シートを熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させて、発泡シートを得た。
次いで、得られた発泡シートを発泡炉から連続的に送り出した。そして、発泡シートをその両面の温度が200~250℃となるように維持した状態で、発泡シートをそのTD方向に2.5倍の延伸倍率で延伸させると共に、発泡シートの発泡炉への送り込み速度(供給速度)よりも速い巻取速度でもって発泡シートを巻き取ることによって発泡シートをMD方向にも2.0倍に延伸させた。それにより、実施例1の発泡シート(厚み:500μm)を得た。なお、上記発泡シートの巻取速度は、樹脂シート自身の発泡によるMD方向への膨張分を考慮しつつ調整した。得られた発泡シートを上記評価方法に従って評価し、その結果を表1に示す。
【0083】
(粘着テープの製造)
厚み150μmの離型紙を用意し、この離型紙の離型処理面に粘着剤層を形成する粘着剤(A)を塗布し、100℃で5分間乾燥させることにより、厚み20μmの粘着剤層を形成し、発泡シートの一方の面と貼り合わせた。厚み150μmの離型紙で片面が覆われた粘着テープを得た。
【0084】
[実施例2~9及び比較例1~3]
発泡性組成物の組成、電子線照射条件、粘着剤層の種類、厚さ等を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして発泡シート及び粘着テープを得た。MD及びTDの延伸倍率は1.5~3.0の範囲内で調整した。得られた発泡シートを上記評価方法に従って評価し、その結果を表2に示す。
【0085】
【0086】
実施例より、本発明の粘着テープは防水性が良好であることが分かる。さらに、実施例の中でも、発泡シートの層間強度を一定範囲とした場合は、リワーク性が良好になることが分かる。これに対して、本発明の要件を満足しない比較例に示す粘着テープは、防水性が悪い結果となった。
【符号の説明】
【0087】
11 発泡シート
12 接着剤
13、14 治具
15 切り込み