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特許7020993通信装置、分散アンテナシステム及び切り替え方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】通信装置、分散アンテナシステム及び切り替え方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20220208BHJP
   H04J 3/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
H04L27/26 420
H04J3/00 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018093321
(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公開番号】P2019201252
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 康隆
(72)【発明者】
【氏名】草間 克実
(72)【発明者】
【氏名】丹後 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】本田 直大
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-525755(JP,A)
【文献】特開2003-304219(JP,A)
【文献】特表2018-512012(JP,A)
【文献】特開2009-177586(JP,A)
【文献】特表2011-525754(JP,A)
【文献】特開2001-313586(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0207871(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時分割複信方式で送信する上位装置との間での信号の伝送動作を上り信号の伝送動作と下り信号の伝送動作との間で切り替える切り替え部と、
前記下り信号として前記上位装置からOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を受信する受信部と、
前記受信部が受信する前記OFDM信号の立ち上がりを検出する立ち上がり検出部と、
前記OFDM信号からOFDMのガード時間を示すCP(Cyclic Prefix)信号のシンボルを検出するシンボル検出部と、
前記立ち上がり検出部及び前記シンボル検出部の検出結果に基づいて前記切り替え部による前記伝送動作の切り替えタイミングを検出する切り替えタイミング検出部と、
を備え
前記シンボル検出部は、
前記OFDM信号を規格化する規格化部と、
前記規格化部によって規格化された前記OFDM信号同士の相関値を計算する相関計算部と、
を備え、
前記切り替えタイミング検出部は、前記相関計算部が計算した前記相関値に基づいて前記切り替えタイミングを検出する、
通信装置。
【請求項2】
前記立ち上がり検出部は、前記OFDM信号の受信電力を計測する機能を有し、前記受信電力の立ち上がりを検出する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記規格化部は、前記OFDM信号の信号値を、前記OFDM信号の振幅で除することにより前記OFDM信号を規格化する、
請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記規格化部は、OFDM信号の同相成分及び直交位相成分の各値と、前記OFDM信号の同相成分及び直交位相成分が規格化された各値との対応関係を示す対応情報に基づいて前記OFDM信号の規格化後の値を取得する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記規格化部は、OFDM信号の位相と、前記OFDM信号の同相成分及び直交位相成分が規格化された各値との対応関係を示す対応情報に基づいて前記OFDM信号の規格化後の値を取得する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記切り替えタイミング検出部は、前記立ち上がり検出部が前記OFDM信号の立ち上がりを検出したタイミングに応じて決定される所定の検出期間において前記相関値又は前記相関値の統計処理によって得られる値が最大値をとるタイミングを前記切り替えタイミングとして検出する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記切り替えタイミング検出部は、前回の検出期間で検出された切り替えタイミングから、略1フレームの信号を受信するのに要する1フレーム時間が経過したタイミングに応じて決定される検出期間において前記最大値を検出する、
請求項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記切り替えタイミング検出部は、前回の検出期間で検出された切り替えタイミングから、略1サブフレームの信号を受信するのに要する1サブフレーム時間が経過したタイミングに応じて決定される検出期間において前記最大値を検出する、
請求項に記載の通信装置。
【請求項9】
複数のアンテナをさらに備え、
前記切り替えタイミング検出部は、前記複数のアンテナのいずれかに関して検出された切り替えタイミングを、前記複数のアンテナごとに設けられた全ての切り替え部に通知し、
前記全ての切り替え部は、前記切り替えタイミング検出部が通知する同じ切り替えタイミングでそれぞれの前記伝送動作を切り替える、
請求項1からのいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項10】
複数のアンテナをさらに備え、
前記切り替えタイミング検出部は、前記複数のアンテナの各アンテナに関して前記切り替えタイミングを検出し、
前記各アンテナに関して検出された切り替えタイミングのずれを計算するタイミングずれ計算部をさらに備え、
前記タイミングずれ計算部は、計算された前記切り替えタイミングのずれの大きさが所定の閾値を超過した場合に通知する、
請求項1からのいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項11】
複数のアンテナをさらに備え、
前記切り替えタイミング検出部は、前記複数のアンテナの各アンテナに関して前記切り替えタイミングを検出し、
前記各アンテナに関して検出された切り替えタイミングのずれを計算するタイミングずれ計算部をさらに備え、
前記タイミングずれ計算部は、計算された前記切り替えタイミングのずれの大きさが所定の閾値を超過した場合に、自装置における信号の送信を停止させる、
請求項1からのいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項12】
複数のアンテナをさらに備え、
前記切り替えタイミング検出部は、前記複数のアンテナの各アンテナに関して前記切り替えタイミングを検出し、
前記各アンテナに関して検出された切り替えタイミングのずれを計算するタイミングずれ計算部をさらに備え、
前記タイミングずれ計算部は、計算された前記切り替えタイミングのずれの大きさが所定の閾値を超過した場合に、前記ずれの大きさが前記閾値以下となるように前記切り替えタイミングを補正する、
請求項1からのいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項13】
親局装置と、
前記親局装置と有線接続された1つ以上の子局装置と、
を備え、
前記親局装置は、請求項1からのいずれか一項に記載の通信装置であって、基地局装置と通信し、
前記1つ以上の子局装置のそれぞれは、端末局装置と通信するためのアンテナを備える、
分散アンテナシステム。
【請求項14】
親局装置と、
前記親局装置と有線接続された1つ以上の子局装置と、
を備え、
前記親局装置は、基地局装置と通信し、
前記1つ以上の子局装置のそれぞれは、請求項1からのいずれか一項に記載の通信装置であって、端末局装置と通信するアンテナを備える、
分散アンテナシステム。
【請求項15】
親局装置と、
前記親局装置と有線接続された1つ以上のハブ局装置と、
前記ハブ局装置と有線接続され、前記ハブ局装置を介して前記親局装置と通信する1つ以上の子局装置と、
を備え、
前記親局装置は、基地局装置と通信し、
前記1つ以上のハブ局装置のそれぞれは、請求項1からのいずれか一項に記載の通信装置であり、
前記1つ以上の子局装置のそれぞれは、端末局装置と通信するアンテナを備える、
分散アンテナシステム。
【請求項16】
時分割複信方式で送信する上位装置との間での信号の伝送動作を上り信号の伝送動作と下り信号の伝送動作との間で切り替える切り替えステップと、
前記下り信号として前記上位装置からOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信される前記OFDM信号の立ち上がりを検出する立ち上がり検出ステップと、
前記OFDM信号からOFDMのガード時間を示すCP(Cyclic Prefix)信号のシンボルを検出するシンボル検出ステップと、
前記立ち上がり検出ステップ及び前記シンボル検出ステップにおける検出結果に基づいて前記切り替えステップにおける前記伝送動作の切り替えタイミングを検出する切り替えタイミング検出ステップと、
を有し、
前記シンボル検出ステップは、
前記OFDM信号を規格化する規格化ステップと、
前記規格化ステップにおいて規格化された前記OFDM信号同士の相関値を計算する相関計算ステップと、
をさらに有し、
前記切り替えタイミング検出ステップでは、前記相関計算ステップにおいて計算した前記相関値に基づいて前記切り替えタイミングを検出する、
切り替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、通信装置、分散アンテナシステム及び切り替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット等の移動通信端末の普及による通信量の増加により、伝送速度を拡張する新たな伝送方式が求められている。その1つの方式として、従来のFDD(Frequency Division Duplex:周波数分割複信)方式のLTE(Long Term Evolution)に加えて、TDD(Time Division Duplex:時分割複信)方式のLTEが採用されている。FDD方式は、アップリンク(以下「UL」という。)とダウンリンク(以下「DL」という。)で用いる周波数帯を別々に設ける複信方式である。FDD方式は、ULとDLとの伝送を独立して行うことで伝送速度の増加を図った方式である。しかしながら、周波数資源は有限であるため、新たにFDD方式用の広帯域を割り当てることは困難である。このため、同じ周波数帯を用いてULとDLとを時間で分割するTDD方式のLTEが採用されはじめている。TDD方式はFDD方式と比較して半分の帯域で済むため、周波数資源の有効活用が図れる。
【0003】
一方、携帯電話基地局などの無線装置から送信された電波を電波の届かない複数の不感知帯に伝送する方法の一つとして、各不感知帯に基地局の子局を有線で引き込む分散アンテナシステム(DAS:Distributed Antenna Systems)がある。DASは、不感知帯を解消できるだけでなく、基地局の設置スペースを削減できるなどの効果を奏する。そのため、ビル内や地下街、トンネルなどの電波の届かない地帯で積極的に用いられている。
【0004】
ここで、TDD方式のLTEをDASに適用した場合、ULとDLとで送受信を切り替える必要がある。DASの送受信の切り替えタイミングと、TDD方式のLTEの切り替えタイミングとの間でずれが生じると、ULとDLとが相互に干渉することになり通信品質が劣化する。この相互干渉により、基地局とユーザ端末との間の制御信号の送受信が阻害され、その結果ユーザ端末は通信不能となる。そのため、TDD方式のLTEでは、ULとDLとが相互干渉することを防止するため、ULとDLとの間にガード時間が設けられている。このガード時間中にDASの送受信の切り替えを実施すれば、ULとDLとの相互干渉を防止することが可能である。
【0005】
ガード時間中にDASの送受信の切り替えを実施するためには、UL信号又はDL信号の先頭を検出する必要がある。信号の先頭を正確に検出することができれば、ガード時間が短い信号であっても通信品質に影響を与えることなく伝送することが可能となる。従来、TDD方式のLTEにおけるConfiguration情報を基に推定されたULとDLとの切り替えタイミングに基づいてUL信号又はDL信号の先頭を検出することが行われている。しかしながら、TDD方式のLTEにおいてConfiguration情報を取得するためには受信された無線信号を復号する必要があるため、DASを構成する装置が複雑化してしまう。
【0006】
また、別の検出方法として、干渉源となり得るマクロ基地局に接続したユーザ端末の無線信号を検波器の出力を基に推定することでUL信号の先頭を検出することが行われている。しかしながら、検波器の出力は一般に数マイクロ秒程度のばらつきを持つため、信号の先頭を高い精度で検出することが難しい。このように、従来は、UL信号又はDL信号の先頭を、簡単な構成でかつ高精度に検出することが難しい場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-231144号公報
【文献】特開2016-127384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、時分割複信方式で伝送されるUL信号(上り信号)とDL信号(下り信号)との切り替わりをより簡易な構成でかつ精度よく検出することができる通信装置、分散アンテナシステム及び切り替え方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の通信装置は、切り替え部と、受信部と、立ち上がり検出部と、シンボル検出部と、切り替えタイミング検出部と、を持つ。切り替え部は、時分割複信方式で送信する上位装置との間での信号の伝送動作を上り信号の伝送動作と下り信号の伝送動作との間で切り替える。受信部は、前記下り信号として前記上位装置からOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を受信する。立ち上がり検出部は、前記受信部が受信する前記OFDM信号の立ち上がりを検出する。シンボル検出部は、前記OFDM信号からOFDMのガード時間を示すCP(Cyclic Prefix)信号のシンボルを検出する。切り替えタイミング検出部は、前記立ち上がり検出部及び前記シンボル検出部の検出結果に基づいて前記切り替え部による前記伝送動作の切り替えタイミングを検出する。前記シンボル検出部は、前記OFDM信号を規格化する規格化部と、前記規格化部によって規格化された前記OFDM信号同士の相関値を計算する相関計算部と、を持つ。前記切り替えタイミング検出部は、前記相関計算部が計算した前記相関値に基づいて前記切り替えタイミングを検出する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態における分散アンテナシステムのシステム構成の具体例を示す図。
図2】第1の実施形態における分散アンテナシステムのシステム構成の具体例を示す図。
図3】第1の実施形態における分散アンテナシステムのシステム構成の具体例を示す図。
図4】第1の実施形態の子局装置3の機能構成の具体例を示す図。
図5】第1の実施形態におけるシンボル検出部344の機能構成の具体例を示す図。
図6】第1の実施形態における相関計算部43によって計算される相関値の具体例を示す図。
図7】第1の実施形態における切り替えタイミング検出部345の機能構成の具体例を示す図。
図8】第1の実施形態において決定される検出期間の具体例を示す図。
図9】第1の実施形態における規格化部41がDL信号を規格化する処理の流れを示すフローチャート。
図10】第1の実施形態における切り替えタイミング検出部345がUL信号の伝送をDL信号の伝送に切り替えるタイミングを検出した結果の一例を示す図。
図11】第2の実施形態におけるシンボル検出部344aの機能構成の具体例を示す図。
図12】第2の実施形態における対応情報の第1の具体例を示す図。
図13】第2の実施形態における対応情報の第2の具体例を示す図。
図14】第3の実施形態における切り替えタイミング検出部345bの機能構成の具体例を示す図。
図15】第3の実施形態における検出期間決定部51bが前回の切り替えタイミングに基づいて検出期間を決定する方法の具体例を示す図。
図16】第4の実施形態における子局装置3cの機能構成の具体例を示す図。
図17】第5の実施形態における子局装置3eの機能構成の具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の通信装置、分散アンテナシステム及び切り替え方法を、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1図3は、第1の実施形態における分散アンテナシステムのシステム構成の具体例を示す図である。第1の実施形態における分散アンテナシステムは、基地局装置1に接続された1つの親局装置2と、親局装置2に直接的又は間接的に接続された複数の子局装置3とを備える。図1は、複数の子局装置3が直接的に親局装置2に接続された例を示す。図2は、複数の子局装置3の一部が直接的に親局装置2に接続され、他の子局装置3が、直接的に接続された子局装置3を介して間接的に親局装置2に接続された例を示す。図3は、複数の子局装置3が1つ以上のハブ局装置4を介して親局装置2に接続された例を示す。複数の子局装置3のそれぞれは図示しないユーザ端末と無線通信するためのアンテナ5を備える。
【0013】
図1図3に示す分散アンテナシステム100は、いずれも基地局装置1と親局装置2とを接続する伝送路61と、複数の子局装置3を親局装置2に接続する2つの伝送路62及び63とを有する。以下では伝送路61を第1伝送路と称し、伝送路62を第2伝送路と称し、伝送路63を第3伝送路と称する場合がある。なお、子局装置3が直接的又は間接的に親局装置2に接続されていれば、子局装置3やハブ局装置4の数や、親局装置2と子局装置3とハブ局装置4との接続関係は図1~3と異なってもよい。以下では、図3に示す構成の分散アンテナシステム100の構成について説明する。
【0014】
図4は、第1の実施形態の子局装置3の機能構成の具体例を示すブロック図である。子局装置3は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、プログラムを実行する。子局装置3は、プログラムの実行によって伝送路インタフェース31、デマッパー32、マッパー33及び1以上の伝送部34を備える装置として機能する。なお、子局装置3の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0015】
伝送路インタフェース31は、基地局装置1から送信される信号を受信するとともに、基地局装置1宛ての信号を送信する。子局装置3と基地局装置1との間で送受信される信号はフレーム形式で伝送される。すなわち、伝送路インタフェース31と基地局装置1との間で送受信される信号はデジタル信号である。以下、基地局装置1からユーザ端末に向かう通信の方向を「ダウンリンク(DL)」といい、ユーザ端末から基地局装置1に向かう通信の方向を「アップリンク(UL)」という。また、ダウンリンク方向に伝送される信号を「DL信号」といい、アップリンク方向に伝送される信号を「UL信号」という。基地局装置1から送信されたDL信号は、第1伝送路61、親局装置2、第2伝送路62、ハブ局装置4、第3伝送路63、子局装置3を順に経由してユーザ端末に伝送される。また、ユーザ端末から送信されたUL信号は、子局装置3、第3伝送路63、ハブ局装置4、第2伝送路62、親局装置2、第1伝送路61を順に経由して基地局装置1に伝送される。
【0016】
伝送路インタフェース31は、基地局装置1の通信インタフェースと有線で接続される。伝送路インタフェース31は、受信したDL信号をデマッパー32に出力するとともに、マッパー33から出力されたUL信号を基地局装置1に送信する。
【0017】
デマッパー32は、DL信号を伝送するフレーム(以下「DLフレーム」という。)のデマッピング処理を行う。このデマッピング処理により、デマッパー32はDLフレームに格納されているDL信号を取得し、取得したDL信号を受信された順に連続するデジタル信号として各伝送部34に出力する。
【0018】
マッパー33は、各伝送部34から出力されるUL信号のマッピング処理を行う。各伝送部34から出力されるUL信号は連続するデジタル信号である。このマッピング処理により、マッパー33はUL信号を伝送するフレーム(以下「ULフレーム」という。)を生成する。具体的には、各伝送部34から出力されるUL信号は、シンボル間のガード時間としてCP(Cyclic Prefix)が付加されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号である。例えば、OFDM信号はLTEや無線LAN(Local Area Network)等で伝送される信号である。マッパー33は、各伝送部34から出力されるUL信号が多重化されたULフレームを生成する。マッパー33は、生成したULフレームを伝送路インタフェース31に出力する。
【0019】
各伝送部34は、それぞれユーザ端末と通信するアンテナ5を備え、デマッパー32とアンテナ5との間でDL信号をダウンリンク方向に伝送するとともに、マッパー33とアンテナ5との間でUL信号をアップリンク方向に伝送する。各伝送部34は、UL信号の伝送とDL信号の伝送とを交互に切り替えながら信号の伝送を行う。ここで、各伝送部34は、以下のような構成を備えることにより、UL信号の伝送とDL信号の伝送とを切り替えるタイミングを基地局装置1から送信されるDL信号の受信状況に基づいて検出する。
【0020】
各伝送部34は、分配部341、DAコンバータ342、立ち上がり検出部343、シンボル検出部344、切り替えタイミング検出部345、切り替え部346、アンテナインタフェース347及びADコンバータ348を備える。
【0021】
分配部341は、入力信号をDA(Digital to Analog)コンバータ342及び立ち上がり検出部343に分配する機能を有する。この機能により、デマッパー32が出力するDL信号がDAコンバータ342及びシンボル検出部344に分配される。ここで、デマッパー32が出力するDL信号はデジタル信号である。
【0022】
DAコンバータ342は、分配部341が出力したDL信号をデジタル信号からアナログ信号に変換する。具体的には、DAコンバータ342は、DL信号を無線通信帯域のアナログ信号(以下「無線信号」という。)に変換する。DAコンバータ342は、無線信号に変換したDL信号を切り替え部346に出力する。
【0023】
立ち上がり検出部343は、分配部341の出力信号を入力する。立ち上がり検出部343は、入力信号の立ち上がりを検出することにより、DL信号の出力開始を検出する。具体的には、立ち上がり検出部343は、入力信号の受信電力を計測する機能を有し、受信電力の立ち上がりを検出する。例えば、立ち上がり検出部343はデジタル検波器である。立ち上がり検出部343は、DL信号の出力開始を検出すると、その旨を通知する信号(以下「立ち上がり検出信号」という。)を切り替えタイミング検出部345に出力する。
【0024】
シンボル検出部344は、分配部341によって分配されたDL信号のシンボルを検出する。シンボル検出部344は、異なるタイミングで検出されたシンボル信号同士の相関値を計算する。シンボル検出部344は、計算した相関値を示す信号(以下「相関値信号」という。)を切り替えタイミング検出部345に出力する。
【0025】
切り替えタイミング検出部345は、立ち上がり検出部343が出力する立ち上がり検出信号と、シンボル検出部344が出力する相関値信号とに基づいて、UL信号の伝送をDL信号の伝送に切り替えるタイミングを検出する。切り替えタイミング検出部345は、検出した切り替えタイミングを通知する信号(以下「タイミング信号」という。)を切り替え部346に出力する。
【0026】
切り替え部346は、UL信号及びDL信号の入出力機能を有する。切り替え部346は、UL信号の入出力とDL信号の入出力とを交互に切り替えながら実行する。具体的には、切り替え部346は、DL信号の入出力を完了すると、自身の入出力動作をUL信号の入出力に切り替える。また、切り替え部346は、切り替えタイミング検出部345が出力するタイミング信号に基づいて、自身の入出力動作をUL信号の入出力からDL信号の入出力に切り替える。切り替え部346は、UL信号の入出力動作を行っているときにはアンテナインタフェース347から出力されるUL信号をAD(Analog to Digital)コンバータ348に出力し、DL信号の入出力動作を行っているときにはDAコンバータ342から出力されるDL信号をアンテナインタフェース347に出力する。
【0027】
アンテナインタフェース347は、アンテナ5に接続され、アンテナ5を介して受信される無線信号をUL信号として切り替え部346に出力し、切り替え部346から出力されるDL信号を、アンテナ5を介して無線送信する。ここで、アンテナインタフェース347から切り替え部346に出力されるUL信号はアナログ信号である。
【0028】
ADコンバータ348は、切り替え部346から出力されるUL信号をデジタル信号に変換する。ADコンバータ348は、デジタル信号に変換したUL信号をマッパー33に出力する。
【0029】
図5は、第1の実施形態におけるシンボル検出部344の機能構成の具体例を示すブロック図である。シンボル検出部344は、規格化部41、記録部42及び相関計算部43を備える。
【0030】
規格化部41は、分配部341が出力したデジタル信号を規格化する。ここでいう規格化とは、OFDM信号であるDL信号の各成分をその振幅で除することにより、DL信号を振幅が1のOFDM信号に変換することを意味する。規格化部41は規格化したDL信号(以下「規格化信号」という。)を記録部42に出力する。
【0031】
記録部42は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を備え、規格化部41が出力する規格化信号を記憶装置に記録する。記録された規格化信号を、以下「サンプリング信号」という
【0032】
相関計算部43は、記録部42から複数のサンプリング信号を読み出し、読み出した各サンプリング信号の相関値を計算する。例えば相関値は、各信号値の積和演算や畳み込み積分計算などによって取得される。例えば、積和演算による相関値rは次の式(1)によって定義される。
【0033】
【数1】
【0034】
式(1)におけるCPは、一塊のCP信号を受信するのに要する時間を「1CP時間」と定義した場合に、1CP時間のうちに相関計算部43に入力されるサンプリング信号の数を表す。また、xとyとは、1シンボルのDL信号を受信するのに要する時間を「1シンボル時間」と定義した場合に、互いに1シンボル時間だけ隔てて相関計算部43に入力されるサンプリング信号を表す。なお、1CP時間や1シンボル時間は対象とする通信プロトコルに応じて予め決定されている。例えば3GPP TS36.211では、1CP時間は数マイクロ秒~十数マイクロ秒に、1シンボル時間は数十マイクロ秒にそれぞれ定められている。相関計算部43は、このように計算した相関値を示す相関値信号を切り替えタイミング検出部345に出力する。
【0035】
図6は、第1の実施形態における相関計算部43によって計算される相関値の具体例を示す図である。図6の横軸は、相関計算部43がサンプリング信号を時系列に入力する時刻を表し、横軸上から上向きに伸びる各矢印は、各時刻におけるサンプリング信号の入力を表す。x及びyはそれぞれ1CP時間のサンプリング信号を表す。すなわち、図6は、xが相関計算部43に入力された1シンボル時間後にyが入力されることを表している。式(1)は、このように1シンボル時間を隔てて入力されるサンプリング信号xとyとの相関を計算する式である。上述したとおり、CP信号はシンボルの先頭にガード時間として付加される信号であり、一般にはシンボルの最後尾に位置する所定サイズの信号と同じ信号である。そのため、あるCP信号の入力が開始された時点から1シンボル時間後に上記の相関値が最大値をとることになる。すなわち、このような相関値の最大値(以下「最大相関値」という。)を検出することにより、あるCP信号が入力されてからおよそ1シンボル時間後に、そのCP信号に後続するシンボルの入力を検出することができる。
【0036】
図7は、第1の実施形態における切り替えタイミング検出部345の機能構成の具体例を示す図である。切り替えタイミング検出部345は、検出期間決定部51、最大相関値検出部52及びタイミング信号出力部53を備える。
【0037】
検出期間決定部51は、立ち上がり検出部343から出力される立ち上がり検出信号と、順次入力する相関値信号とに基づいて最大相関値を検出する処理(以下「最大値検出処理」という。)の実行タイミングを決定する。具体的には、検出期間決定部51は、実行タイミングを定める基準となる時刻と、その時刻に対する時間幅とを決定する。以下では、この実行タイミングを示す期間を「検出期間」という。なお、検出期間決定部51は、処理対象とする相関値信号の信頼性を高めるために、相関値信号に対して移動平均処理や、異常値を除外する処理などを実行する統計処理機能を有してもよい。
【0038】
最大相関値検出部52は、検出期間決定部51によって決定された検出期間において最大値検出処理を実行する。最大値検出処理の実行により、最大相関値検出部52は、検出期間内に順次入力する相関値信号のうち最大相関値を示す相関値信号を検出する。最大相関値検出部52は、最大相関値を示す相関値信号を検出したタイミングで、その旨をタイミング信号出力部53に出力する。
【0039】
基本的には、検出期間内に順次入力する相関値信号が示す相関値は、単調増加するか、又は単調増加した後に単調減少すると考えられる。この場合、最大相関値検出部52は、相関値が最大値をとったタイミングでタイミング信号出力部53に通知すればよい。しかしながら、検出期間内に相関値が増減を繰り返すような場合には、最大相関値検出部52は、相関値が所定の閾値を超えた最初のタイミングでタイミング信号出力部53に通知するように構成されてもよい。
【0040】
タイミング信号出力部53は、最大相関値検出部52の通知に応じて、タイミング信号を切り替え部346に出力する。例えば、タイミング信号出力部53は、切り替えタイミングを示すパルス信号を出力する。また、例えば、タイミング信号出力部53は、受信信号の立ち上がりが検出されたタイミングからの経過時間に相当するクロック数で切り替えタイミングを示すタイミング信号を出力してもよい。
【0041】
図8は、第1の実施形態において決定される検出期間の具体例を示す図である。図8(A)は、立ち上がり検出部343が出力する立ち上がり検出信号の具体例を示す。図8(B)及び図8(C)は決定される検出期間の具体例を示す。図8(A)は、時刻tにおいてDL信号の入力が検出されたことを表している。
【0042】
図8(B)は、検出期間が時刻tから1シンボル時間経過した時刻tの前後の2CP時間で表される期間として決定された例を示す。すなわち、1CP時間をTCPとすると、図8(B)の例では時刻t-TCPからt+TCPまでの期間が検出期間として決定される。上述のとおり、理論的にはCP信号の入力が開始された時点から1シンボル時間後に最大相関値が検出されるが、実際の入力信号の立ち上がりにはばらつきがあるため、最大相関値の検出タイミングにも誤差が生じうる。そのため、検出期間に図8(B)に示すような幅を持たせることで、より確実にシンボルの入力を検出することができる。
【0043】
なお、時刻tを基準とする検出期間の時間幅は必ずしも2CP時間である必要はない。例えば、検出期間の時間幅は、時刻tの前後の1CP時間として決定されてもよい。また、時刻tは必ずしも検出期間の中央である必要はない。また、検出期間の時間幅は、時刻t以前の1CP時間として決定されてもよいし、時刻t以後の1CP時間として決定されてもよい。
【0044】
図8(C)は、検出期間がDL信号の入力が開始された時刻t以後の1シンボル時間として決定された例を示す。この例では、切り替えタイミング検出部345は、あるCP信号が入力されてから次のCP信号が入力されるまでの1シンボル時間の間、最大値検出処理を実行し続けることになる。そのため、この場合、計算コストは高くなる一方で、より確実に切り替えタイミングを検出することができる。なお、この場合、検出期間の時間幅を1シンボル時間よりも多少長く設定することで、さらに確実に切り替えタイミングを検出することも可能である。
【0045】
図9は、第1の実施形態における規格化部41がDL信号を規格化する処理の流れを示すフローチャートである。まず、規格化部41は、入力したDL信号(デジタル信号)の振幅値を取得する(ステップS101)。例えば、振幅値は、DL信号(OFDM信号)の同相成分値(以下「I値」という。)と直交位相成分値(以下「Q値」という。)との2乗和の平方根を計算することによって取得される。規格化部41は、DL信号のI値を振幅値で除算する(ステップS102)とともに、DL信号のQ値を振幅値で除算する(ステップS103)。規格化部41は、各除算値を示す信号を規格化信号として出力する。
【0046】
図10は、第1の実施形態における切り替えタイミング検出部345がUL信号の伝送をDL信号の伝送に切り替えるタイミングを検出した結果の一例を示す図である。横軸は、DL信号の伝送とUL信号の伝送とが3GPP TS36.211で規定されている間隔(1ミリ秒間隔)で切り替えられる場合に、切り替えタイミング検出部345が検出した切り替えタイミングと実際の切り替えタイミングとの誤差の大きさを表す。縦軸は、横軸が表す各誤差に対応する検出結果の度数を表す。なお、図10において、負値の誤差は実際の切り替えタイミングよりも早いタイミングで切り替えタイミングが検出されたことを示している。これは、上述のとおり、CP信号の最大相関値が検出されるタイミングが、CP信号の入力が開始された時点から1シンボル時間後となることによるものであり、信号の雑音等の影響によっては最大相関値が1シンボル時間が経過するより前に検出される可能性があるためである。この結果、第1の実施形態における切り替えタイミング検出部345は、1ミリ秒間隔の切り替えに対して、標準偏差で約21ナノ秒の誤差で切り替えタイミングを検出することができた。この検出結果によれば、第1の実施形態における子局装置3は、ガード時間が短い信号でも通信品質に影響を与えることなく伝送することができる。
【0047】
従来、LTEのシンボルを復調してラジオフレームを検出することで、切り替えタイミングを高い精度で検出することが可能であったが、子局装置3の構成が複雑化してしまい、高い製造コストがかかっていた。また、従来、シンボル信号に畳み込み積分を行うことにより、シンボルの復調を行わずに切り替えタイミングを検出することが可能であったが、携帯電話のように振幅の変動が大きい信号を伝送する場合には切り替えタイミングを誤検出してしまう場合があった。
【0048】
これに対して、第1の実施形態の分散アンテナシステム100では、子局装置3が1シンボル時間を隔てて入力されるDL信号の相関性に基づいてUL信号の伝送をDL信号の伝送に切り替えるタイミングを検出する。このような切り替えタイミングの検出方法は、信号の規格化及び積和演算という簡易な処理で実現することができる。このような構成を備える第1の実施形態の分散アンテナシステム100によれば、子局装置3の構成を複雑化することなくかつ高精度に、UL信号の伝送をDL信号の伝送に切り替えることが可能になる。
【0049】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態におけるシンボル検出部344aの機能構成の具体例を示すブロック図である。第2の実施形態の分散アンテナシステム100は、子局装置3がシンボル検出部344に代えてシンボル検出部344aを備える点で第1の実施形態の分散アンテナシステム100と異なる。また、シンボル検出部344aは、規格化部41に代えて規格化部41aを備える点で第1の実施形態におけるシンボル検出部344と異なる。その他の構成は第1の実施形態の分散アンテナシステム100と同様である。
【0050】
規格化部41aは、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を備え、サンプリング信号の値と、そのサンプリング信号を規格化して得られる規格化信号の値との対応関係を示す情報(以下「対応情報」という。)を予め記憶装置に記憶している。規格化部41aは、入力したサンプリング信号に対応する規格化信号を対応情報に基づいて生成し、生成した規格化信号を記憶装置に記録する。
【0051】
図12は、第2の実施形態における対応情報の第1の具体例を示す図である。例えば、対応情報は、図12に示す対応情報テーブルT1として記憶装置に記憶される。対応情報テーブルT1はサンプリング信号のI値及びQ値の組み合わせごとに第1の対応情報レコードを有する。第1の対応情報レコードは、サンプリング信号のI値及びQ値と、それに対応する規格化信号のI値及びQ値とを持つ。規格化信号のI値及びQ値は、サンプリング信号がとりうるI値及びQ値の組み合わせごとに、第1の実施形態における規格化部41と同様の方法で計算され、予め対応情報テーブルT1に登録される。この場合、例えば、I値が“1”でありQ値が“2”であるサンプリング信号が入力された場合、規格化部41aはI値が“0.447”でありQ値が“0.894”である規格化信号を生成し、記憶装置に記録する。
【0052】
なお、対応情報テーブルT1には、サンプリング信号がとりうるI値及びQ値の組み合わせの全てに対応する対応情報レコードが登録されなくてもよい。この場合、規格化部41aは、入力したサンプリング信号に対応するレコードが存在しない場合には、それに最も近いサンプリング信号の値を持つレコードに基づいて規格化信号を生成してもよい。
【0053】
図13は、第2の実施形態における対応情報の第2の具体例を示す図である。例えば、対応情報は、図13に示す対応情報テーブルT2として記憶装置に記憶される。対応情報テーブルT2はサンプリング信号の位相情報ごとに第2の対応情報レコードを有する。第2の対応情報レコードは、サンプリング信号の位相情報と、それに対応する規格化信号のI値及びQ値とを持つ。サンプリング信号の位相情報は、複素平面上におけるI値及びQ値のなす位相(0以上π以下)を表す。例えば、位相情報はQ値をI値で除することによって求められる。また、例えば、位相情報はCORDIC(Coordinate Rotation Digital Computer)アルゴリズムのような再起処理によって求められてもよい。
【0054】
位相情報は、サンプリング信号がとりうるI値及びQ値の組み合わせごとに計算され、予め対応情報テーブルT2に登録される。また、規格化信号のI値及びQ値は、サンプリング信号がとりうるI値及びQ値の組み合わせごとに、第1の実施形態における規格化部41と同様の方法で計算され、予め対応情報テーブルT2に登録される。この場合、規格化部41aは、入力されるサンプリング信号のI値及びQ値に基づいて位相を計算し、計算した位相に対応する規格化信号のI値及びQ値を対応情報テーブルT2から取得する。例えば、位相情報の値が“2.000”であるサンプリング信号が入力された場合、規格化部41aはI値が“0.894”でありQ値が“0.447”である規格化信号を生成し、記憶装置に記録する。
【0055】
なお、対応情報テーブルT2には、サンプリング信号がとりうる位相の全てに対応する対応情報レコードが登録されなくてもよい。この場合、規格化部41aは、入力したサンプリング信号の位相に対応するレコードが存在しない場合には、それに最も近い位相の値を持つレコードに基づいて規格化信号を生成してもよい。
【0056】
このように、第1の対応情報レコードがサンプリング信号のI値及びQ値と、規格化信号のI値及びQ値との4つの値を保持するのに対して、第2の対応情報レコードはサンプリング信号の位相情報と、規格化信号のI値及びQ値との3つの値を保持する。そのため、対応情報を対応情報テーブルT2の態様で保持すれば、サンプリング信号の位相を計算するコストは増加するものの、対応情報の記憶領域を削減することができる。
【0057】
このように構成された第2の実施形態の分散アンテナシステム100では、子局装置3が予め記憶されている対応情報に基づいて規格化信号を生成する。これにより、子局装置3は、サンプリング信号から規格化信号を計算する負荷を低減することができる。
【0058】
具体的には、子局装置3が第1の具体例に示す対応情報を予め記憶していることにより、規格化部41aは、入力したサンプリング信号の値を基に対応情報テーブルT1を検索するだけで規格化信号を生成することができる。また、子局装置3が第2の具体例に示す対応情報を予め記憶していることにより、規格化部41aは、入力したサンプリング信号の位相を計算し、計算した位相を基に対応情報テーブルT2を検索するだけで規格化信号を生成することができる。
【0059】
(第3の実施形態)
図14は、第3の実施形態における切り替えタイミング検出部345bの機能構成の具体例を示すブロック図である。第3の実施形態の分散アンテナシステム100は、子局装置3が切り替えタイミング検出部345に代えて切り替えタイミング検出部345bを備える点で第1の実施形態の分散アンテナシステム100と異なる。また、切り替えタイミング検出部345bは、検出期間決定部51に代えて検出期間決定部51bを備える点、切り替えタイミング記録部54をさらに備える点で第1の実施形態における切り替えタイミング検出部345と異なる。その他の構成は第1の実施形態の分散アンテナシステム100と同様である。
【0060】
切り替えタイミング記録部54は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を備え、タイミング信号出力部53がタイミング信号を出力したタイミングを示す情報(以下「タイミング情報」という。)を記録する。例えば、タイミング信号がパルス信号として出力される場合、出力されたパルス信号と時間軸とを対応づけた情報がタイミング情報として記録される。
【0061】
検出期間決定部51bは、立ち上がり検出部343から出力される立ち上がり検出信号と、シンボル検出部344から順次入力する相関値信号と、切り替えタイミング記録部54に記録されているタイミング情報と、に基づいて検出期間を決定する。検出期間決定部51bは、切り替えタイミング記録部54に前回の切り替えタイミングを示すタイミング情報が記録されていない場合には、第1の実施形態における検出期間決定部51と同様の方法で検出期間を決定する。
【0062】
一方、切り替えタイミング記録部54に前回の切り替えタイミングを示すタイミング情報が記録されている場合には、検出期間決定部51bは、タイミング情報が示す前回の切り替えタイミングに基づいて検出期間を決定する。
【0063】
図15は、第3の実施形態における検出期間決定部51bが前回の切り替えタイミングに基づいて検出期間を決定する方法の具体例を示す図である。図15(A)は、タイミング情報が示す前回の切り替えタイミングを示す。図15(B)は決定される検出期間の具体例を示す。図15(A)は、前回の切り替えタイミングが時刻tであったことを表している。図15(B)は、検出期間が時刻tから1フレーム時間と1シンボル時間との合計時間が経過した時刻tの前後の2CP時間で表される期間として決定された例を示す。ここで、1フレーム時間は1フレームの信号を受信するのに要する時間であり、3GPP TS36.211では10ミリ秒と定義されている。図15では、簡単のため1フレーム時間を短く記載している。
【0064】
また、3GPP TS36.211では、DL信号の伝送とUL信号の伝送とが1スロット時間ごとに切り替えられる。1スロット時間は1スロット(1フレームの20分の1)の信号を受信するのに要する時間である。そのため、DL信号の伝送が開始されたタイミングから1フレーム時間の経過後にはUL信号の伝送がDL信号の伝送に切り替えられ、DL信号の入力が開始されると考えられる。そこで、前回の切り替えタイミングが記録されている場合には、前回の切り替えタイミングを基に、立ち上がり検出信号を用いずに検出期間を決定することができる。
【0065】
このように構成された第3の実施形態の分散アンテナシステム100では、子局装置3が前回の切り替えタイミングに基づいて検出期間を決定することにより、入力信号の立ち上がりのばらつきによる切り替えタイミングの検出誤差を低減することができる。
【0066】
なお、検出期間決定部51bは、前回の切り替えタイミングから1サブフレーム時間と1シンボル時間との合計時間が経過した時刻を基準として検出期間を決定してもよい。ここで、1サブフレーム時間は1サブフレームの信号を受信するのに要する時間であり、3GPP TS36.211では1フレーム時間の10分の1の時間と定義されている。そのため、DL信号の伝送が開始されたタイミングから1サブフレーム時間の経過後にもUL信号の伝送がDL信号の伝送に切り替えられ、DL信号の入力が開始されると考えられる。
【0067】
(第4の実施形態)
図16は、第4の実施形態における子局装置3cの機能構成の具体例を示す図である。子局装置3cは、1以上の伝送部34のうちの1つが立ち上がり検出部343、シンボル検出部344、切り替えタイミング検出部345cを備える点で第1の実施形態における子局装置3と異なる。ここでは、立ち上がり検出部343、シンボル検出部344、切り替えタイミング検出部345cを備える伝送部34を第1伝送部34cと記載し、それ以外の伝送部34を第2伝送部34dと記載して区別する。
【0068】
第1伝送部34cは、切り替えタイミング検出部345に代えて切り替えタイミング検出部345cを備える点で第1の実施形態における伝送部34と異なる。また、第2伝送部34dは、分配部341、立ち上がり検出部343、シンボル検出部344及び切り替えタイミング検出部345を備えない点で第1の実施形態における伝送部34と異なる。
【0069】
切り替えタイミング検出部345cは、第1の実施形態と同様の方法で切り替えタイミングを検出し、第1伝送部34c及び第2伝送部34dの全ての切り替え部346にタイミング信号を出力する。第1伝送部34c及び第2伝送部34dの全ての切り替え部346は、切り替えタイミング検出部345から出力されるタイミング信号に基づいて自身の伝送動作をUL信号の伝送からDL信号の伝送に切り替える。
【0070】
このように構成された第4の実施形態の分散アンテナシステム100では、子局装置3cは、1つ以上有する伝送部のうちの1つに切り替えタイミング検出部345cを備え、その切り替えタイミング検出部345cが子局装置3の有する全ての伝送部に切り替えタイミングを通知する。そのため、第4の実施形態における子局装置3cによれば、第1の実施形態における子局装置3よりも回路規模を削減することが可能になる。このような構成は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)方式で信号を伝送する子局装置に対して特に効果的である。
【0071】
(第5の実施形態)
図17は、第5の実施形態における子局装置3eの機能構成の具体例を示す図である。子局装置3eは、切り替えタイミング検出部345に代えて切り替えタイミング検出部345eを備える点、タイミングずれ検出部35をさらに備える点で第1の実施形態における子局装置3と異なる。
【0072】
切り替えタイミング検出部345eは、第1の実施形態における切り替えタイミング検出部345が同じ伝送部34の切り替え部346にタイミング信号を出力したのに対して、タイミングずれ検出部35にタイミング信号を出力する点で第1の実施形態における切り替えタイミング検出部345と異なる。
【0073】
タイミングずれ検出部35は、各伝送部34の切り替えタイミング検出部345eから出力されるタイミング信号に基づいて、各タイミング信号のずれを検出する。例えば、タイミングずれ検出部35は、各タイミング信号が示す切り替えタイミングのうち、最も早い切り替えタイミングと最も遅い切り替えタイミングとの差を検出する。タイミングずれ検出部35は、検出した切り替えタイミングのずれの大きさが閾値以下である場合には、各タイミング信号をそれぞれに対応する切り替え部346に出力する。一方、タイミングずれ検出部35は、検出した切り替えタイミングのずれの大きさが閾値を超過している場合には、何らかの異常が発生していると判定し、予め定められた所定の動作を行う。
【0074】
例えば、タイミングずれ検出部35は、異常が発生していると判定した場合、その旨を示す通知を行う。この通知は、音声の出力であってもよいし、表示装置に対する情報の表示であってもよいし、システム管理者宛てのメール送信であってもよい。また、例えば、タイミングずれ検出部35は、異常が発生していると判定した場合、アンテナ5による無線信号の送受信を停止させてもよい。また、例えば、タイミングずれ検出部35は、タイミング信号のずれの大きさが閾値以下となるように一部又は全てのタイミング信号を補正して出力するように構成されてもよい。
【0075】
このように構成された第4の実施形態の分散アンテナシステム100では、子局装置3eが、各伝送部で検出された切り替えタイミングのずれを計算し、そのずれの大きさに応じて所定の動作を行うタイミングずれ検出部35を備える。このように構成された第4の実施形態の分散アンテナシステム100よれば、より安定して動作する分散アンテナシステムを実現することができる。このような構成は、複数の通信キャリアを収容する分散アンテナシステムに対して特に効果的である。
【0076】
以下、上記の各実施形態の分散アンテナシステム100の変形例について説明する。
【0077】
上記の各実施形態では、子局装置3がDL信号とUL信号との切り替わりを検出する場合における分散アンテナシステム100の例を示したが、DL信号とUL信号との切り替わりを検出する機能は必ずしも子局装置3に備えられる必要はない。一般に、親局装置1は、第3伝送路63の伝送路インタフェース21に代えて第1伝送路61の伝送路インタフェースを備え、アンテナインタフェース347に代えて第2伝送路62の伝送路インタフェースを備える点で子局装置3と異なる。また、ハブ局装置4は、第3伝送路の伝送路インタフェース21に代えて第2伝送路61の伝送路インタフェースを備え、アンテナインタフェース347に代えて第3伝送路の伝送路インタフェースを備える点で子局装置3と異なる。親局装置1及びハブ局装置4のそれ以外の構成は子局装置3と同様であるため、例えば、DL信号とUL信号との切り替わりを検出する機能は親局装置1又はハブ局装置4に備えられてもよい。
【0078】
また、子局装置3が伝送路インタフェース31からアナログ信号を入力する場合、立ち上がり検出部343はアナログ検波器を用いて構成されてもよい。
【0079】
また、上記の各実施形態では、DL信号の入力開始を検出する方法の一例として、OFDMにおけるCP信号を、連続して入力する信号の相関値に基づいて検出する方法を説明したが、フレームの前後に同一の信号を配置する通信方式であれば他の通信方式でも同様の方法でDL信号の入力開始を検出することができる。
【0080】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、受信信号の立ち上がりを検出する立ち上がり検出部343と、受信信号から時分割複信方式におけるガード時間を示す信号のシンボルを検出するシンボル検出部344と、立ち上がり検出部343及びシンボル検出部344の検出結果に基づいて伝送動作の切り替えタイミングを検出する切り替えタイミング検出部345と、を持つことにより、時分割複信方式で伝送されるUL信号とDL信号との切り替わりをより簡易な構成でかつ精度よく検出することができる。
【0081】
なお、上記の実施形態における記録部42はサンプリング部の一例である。また、伝送路インタフェース31及びデマッパー32は受信部の一例である。また、ユーザ端末は端末局装置の一例である。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
100…分散アンテナシステム、1…基地局装置、2…親局装置、3,3c,3e…子局装置、31…伝送路インタフェース、32…デマッパー、33…マッパー、34,34c,34d…伝送部、341…分配部、342…DA(Digital to Analog)コンバータ、343…立ち上がり検出部、344,344a…シンボル検出部、41,41a…規格化部、42…記録部、43…相関計算部、345,345b,345c,345e…切り替えタイミング検出部、51,51b…検出期間決定部、52…最大相関値検出部、53…タイミング信号出力部、54…切り替えタイミング記録部、346…切り替え部、347…アンテナインタフェース、348…AD(Analog to Digital)コンバータ、35…タイミングずれ検出部、4…ハブ局装置、5…アンテナ、61…第1伝送路、62…第2伝送路、63…第3伝送路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17