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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】茶園用被覆資材巻取り機
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/02 20060101AFI20220208BHJP
   A01G 13/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
A01G13/02 L
A01G13/00 302B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018097549
(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2019201565
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】592264237
【氏名又は名称】松元機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100133271
【弁理士】
【氏名又は名称】東 和博
(72)【発明者】
【氏名】松元 雄二
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-32458(JP,A)
【文献】特開2004-166649(JP,A)
【文献】実開昭48-95076(JP,U)
【文献】特開2001-2293(JP,A)
【文献】実開平7-14842(JP,U)
【文献】特開昭62-259515(JP,A)
【文献】特開2014-223021(JP,A)
【文献】特開2004-81145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶園の畝に植えられた茶樹を覆うように展開された被覆資材を巻き取るための茶園用被覆資材巻取り機であって、
機体と、展開状態からの被覆資材を巻き取る巻取り軸と、当該巻取り軸を支持する左右のガイド板と、巻取り軸を巻取り方向およびその逆方向に回転駆動可能な駆動手段を備え、
前記巻取り軸は、一方の支持端が対応するガイド板に着脱可能に支持されており、前記巻取り軸の周囲に、巻取り方向の逆方向への回転駆動により巻取り状態の被覆資材を抜き出し方向に案内するスパイラル突起部が設けられていることを特徴とする茶園用被覆資材巻取り機。
【請求項2】
前記巻取り軸の駆動側の支持端が一方のガイド板に水平方向に回動可能または上下方向に傾斜可能に支持され、前記巻取り軸の従動側の支持端が他方のガイド板に着脱可能に支持されていることを特徴とする請求項1記載の茶園用被覆資材巻取り機。
【請求項3】
前記巻取り軸を回転駆動する前記駆動手段と前記機体を移動させるための駆動手段がそれぞれ油圧モータからなり、これら油圧モータを駆動するエンジンおよび油圧ポンプと、それぞれの油圧モータの回転方向を操作により切り替える方向切替弁を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の茶園用被覆資材巻取り機。
【請求項4】
巻取り軸用の油圧モータに作動油を供給する配管の途中に圧力調整弁が設けられ、前記機体を移動させながらの被覆資材の巻取り時に、被覆資材にかかる張力の上昇により巻取り軸用の油圧モータに供給される作動油が設定圧を超えると、前記圧力調整弁が開いて当該作動油が設定圧以下に調整されることにより、巻取り時に被覆資材にかかる張力が緩和されることを特徴とする請求項3に記載の茶園用被覆資材巻取り機。
【請求項5】
前記機体の前部に前記巻取り軸と前記左右のガイド板と前記駆動手段を含む巻取部を備え、前記機体の後部に巻取り状態の被覆資材から被覆資材を巻き出して茶樹の上部に展開する展開部を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の茶園用被覆資材巻取り機。
【請求項6】
前記機体の上部に巻取り状態の被覆資材を載置する載置部を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の茶園用被覆資材巻取り機。
【請求項7】
前記機体の進行方向前方に、展開状態からの被覆資材を巻取る際に当該被覆資材を予め中央寄りに案内する円弧状のガイド軸が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の茶園用被覆資材巻取り機。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶園の茶樹上に被覆した寒冷紗等の被覆資材を巻き取る巻取り機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
茶園においては、茶樹の新芽を摘み取りする直前に、遮光を目的として寒冷紗等の被覆資材を茶樹の上に直接被せることがある。遮光することによって茶葉の色、味、香りが向上する。茶園用の寒冷紗は、茶畝に合せて約2メートルの幅、約50メートルの長さを持ち、約2メートルの幅で巻き取った状態で保管する。被覆時には、茶畝の一端で茶樹と寒冷紗を固定し、茶畝間に作業者が二人立ち、巻き取った状態の寒冷紗を二人の作業者が手作業で広げながら、一定間隔で茶樹に留め具で留めながら、茶畝の他端へと移動し、茶樹の上に被覆していた。
【0003】
そして、茶葉を摘採する直前に、茶樹の上に張ってある寒冷紗を、留め具を外しながら、両側の作業者が手作業で巻き取っていた。寒冷紗は巻き取る程に重くなり、また、降雨後等に水分を含むとさらに重くなるため、狭い畝間を通りながらの作業は重労働であった。さらに、近年の労働力不足や農家の高齢化に伴い、被覆資材の巻取り作業は農家の大きな負担となっていた。
【0004】
上記の背景から、最近では乗用型や自走型の巻取り装置が徐々に浸透している。乗用型(例えば特許文献1)は、茶樹の両側で留め具を外す作業者二人と機体を操縦して巻取を行う運転作業者一人の三人で作業を行う。自走型(例えば特許文献2)は、茶樹の両側で留め具を外す作業者二人のみで、巻取りは畝間を自走する装置が行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-223021号公報
【文献】特開2003-319723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1および特許文献2の巻取り装置は、回転する巻取り軸で被覆資材を巻き取っているため、巻き取られた被覆資材が巻取り径の変化とともに巻取り軸の周囲に固く締め付けられ、保管時等に巻取り軸から被覆資材が外れにくく、作業者の負担が軽減できないという課題があった。この場合、巻取り軸の回転速度や機体の走行速度を徐々に減速するように調整することで改善可能と考えられるが、巻取り径の変化に同調させなければならず、調整が大変難しかった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、巻取り後の被覆資材を巻取り軸から容易に外すことが可能で、作業者の負担軽減を図ることが可能な茶園用被覆資材巻取り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る茶園用被覆資材巻取り機は、
茶園の畝に植えられた茶樹を覆うように展開された被覆資材を巻き取るための茶園用被覆資材巻取り機であって、
機体と、展開状態からの被覆資材を巻き取る巻取り軸と、当該巻取り軸を支持する左右のガイド板と、巻取り軸を巻取り方向およびその逆方向に回転駆動可能な駆動手段を備え、
前記巻取り軸は、一方の支持端が対応するガイド板に着脱可能に支持されており、前記巻取り軸の周囲に、巻取り方向の逆方向への回転駆動により巻取り状態の被覆資材を抜き出し方向に案内するスパイラル突起部が設けられていることを主要な特徴とする。
【0009】
本発明に係る茶園用被覆資材巻取り機は、
前記巻取り軸の駆動側の支持端が一方のガイド板に上下方向に傾斜可能または水平方向に回動可能に支持され、前記巻取り軸の従動側の支持端が他方のガイド板に着脱可能に支持されていることを第2の特徴とする。
【0010】
本発明に係る茶園用被覆資材巻取り機は、
前記巻取り軸を回転駆動する前記駆動手段と前記機体を移動させるための駆動手段がそれぞれ油圧モータからなり、これら油圧モータを駆動するエンジンおよび油圧ポンプと、それぞれの油圧モータの回転方向を操作により切り替える方向切替弁を備えていることを第3の特徴とする。
【0011】
本発明に係る茶園用被覆資材巻取り機は、
巻取り軸用の油圧モータに作動油を供給する配管の途中に圧力調整弁が設けられ、前記機体を移動させながらの被覆資材の巻取り時に、被覆資材にかかる張力の上昇により巻取り軸用の油圧モータに供給される作動油が設定圧を超えると、前記圧力調整弁が開いて当該作動油が設定圧以下に調整されることにより、巻取り時に被覆資材にかかる張力が緩和されることを第4の特徴とする。
【0012】
本発明に係る茶園用被覆資材巻取り機は、
前記機体の前部に前記巻取り軸と前記左右のガイド板と前記駆動手段を含む巻取部を備え、前記機体の後部に巻取り状態の被覆資材から被覆資材を巻き出して茶樹の上部に展開する展開部を備えていることを第5の特徴とする。
【0013】
本発明に係る茶園用被覆資材巻取り機は、
前記機体の上部に巻取り状態の被覆資材を載置する載置部を備えていることを第6の特徴とする。
【0014】
本発明に係る茶園用被覆資材巻取り機は、
前記機体の進行方向前方に、展開状態からの被覆資材を巻取る際に当該被覆資材を予め中央寄りに案内する円弧状のガイド軸が設けられていることを第7の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る茶園用被覆資材巻取り機によると、巻取り軸に巻取りされた後の被覆資材を、巻取り軸を巻取り方向と逆方向へ回転させることにより、強く巻取りされた被覆資材であっても、巻取り軸から容易に外すことができ、作業者の負担軽減を大きく図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態における茶園用被覆資材巻取り機の斜視図、
図2図1に示す茶園用被覆資材巻取り機の正面図、
図3図1に示す茶園用被覆資材巻取り機の側面図、
図4】巻取り軸をヒンジ回りに水平方向に回動させた状態を示す斜視図、
図5】巻取り軸の要部拡大図、
図6】走行用の駆動モータと巻取り用の巻取りモータを駆動するための油圧回路を示す説明図、
図7】巻取り作業と展開作業を示す説明図、
図8】巻取り軸の自由端側を持ち上げて巻取後の被覆資材を取り外す様子を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1ないし図8は本発明に係る茶園用被覆資材巻取り機の一実施形態を示すもので、これらの図において符号100は茶園用被覆資材巻取り機(以下、巻取り機という)符号Tは茶畝を示している。
【0018】
巻取り機100は、茶園の畝に植えられた茶樹(茶畝)を覆うように展開された被覆資材(寒冷紗や遮光シート等)を巻き取るための機械で、図1ないし図3に示すように、茶畝Tを跨るように配置される門型の機体110と、機体110の下部に設けられた左右の走行装置120を備えている。走行装置120は、前方の車輪122と後方の駆動輪124を備えており、茶畝Tに沿って機体110を前後方向に移動させることができるようになっている。
【0019】
門型の機体110は、被覆資材の巻取部130が進行方向前方に、被覆資材の展開部140が進行方向後方にそれぞれ設けられ、また、巻取り状態の被覆資材を載置する載置部150が上部に設けられている。
【0020】
巻取部130は、巻取りモータ131の駆動により、茶樹(茶畝T)を覆う展開状態の被覆資材S(図7参照)を巻取り軸132に巻き取る部分で、機体110の左右の支持アーム133を介して支持された左右のガイド板134L、134R間に巻取り軸132が横架されている。より具体的には、支持アーム133にヒンジ133aを介してヒンジ結合されたガイド板134Lに巻取り軸132の支持端132aが回転可能に片持ち支持され、ガイド板134Rの上部に設けられた切欠部134aに巻取り軸132の支持端132bが係止されるようになっている。
【0021】
ガイド板134Lは、支持アーム133に対し上下方向に傾斜可能かつ水平方向に回動可能とされ、これにより、巻取り軸132の支持端132bをガイド板134Rの切欠部134aから外して、巻取り軸132を上下方向に傾斜させ(図8参照)、また図4に示すように水平方向に回動できるようになっている。
【0022】
巻取り軸132は、図5に示すように、軸本体の周囲に、巻取り方向(図5の矢印A)と逆方向(図5の矢印B)に進むに従って駆動側の支持端132a側へスパイラル状に移動する形状のスパイラル突起部135が設けられている。スパイラル突起部135は、被覆資材Sの巻取り時に全周に設けられた突起部分が被覆資材Sの内面に係合して被覆資材Sをスリップさせることなく確実に巻取り、また、被覆資材Sの巻取り後に、巻取り軸132を巻取り方向と逆方向(図5の矢印B)に回転させることで、巻き取った被覆資材Sを巻取り軸132から外れる方向(図5の矢印C)に移動させる役目をする。
【0023】
また、巻取り軸132の幅方向中央部および両端部には、表面から巻取り方向かつ幅方向(支持端132b方向)に短く屈曲して、巻取り始めに被覆資材Sの始端を係止させる短い係止突起135aが設けられている(図5では幅方向中央部のみ図示)。係止突起135aは巻取り方向への回転時には被覆資材Sに引っ掛かり、巻取り方向と逆方向への回転時には被覆資材Sの抜き出し方向への移動の抵抗とならず、また、巻取り時に被覆資材Sが支持端132b側へ片寄るのを防ぐ役目もする。
【0024】
巻取り軸132の前方には、支持アーム136を介して横方向に延びる中間ガイド軸137が設けられている。中間ガイド軸137の前方には、上下に傾斜できる支持部材136aを介して横方向に延びる円弧状の中央寄せガイド軸138が設けられている。中央寄せガイド軸138は中央が上向きに凸となるように湾曲しており、巻取り時に被覆資材を中央に寄せて片寄りを防ぐ役目をする。
【0025】
展開部140は、機体110の上部の載置部150に載置された巻取り状態の被覆資材から、被覆資材の始端を後方に巻き出して茶畝Tの上部に展開する部分で、図に示すように、載置部150の後方寄りに支持部材141を介して横方向に延びる中間ガイド軸142が設けられている。中間ガイド軸142の後方には、上下に傾斜できる支持アーム143を介して横方向に延びる押さえ軸144が設けられている。押さえ軸144は展開時に被覆資材を茶畝Tの上部に押さえるもので、茶畝Tの高さに応じて押さえ高さを調整することができる。
【0026】
載置部150は、巻取り状態の被覆資材を載置する部分で、巻取作業時に巻取済の被覆資材を載置し、また、被覆資材の展開作業時に巻取状態の被覆資材を載置する。載置部150には複数本の被覆資材を載置することができる。
【0027】
図6は、巻取り機100の走行装置120と巻取部130を駆動するための油圧回路を示している。図6に示すように、エンジン160により駆動される油圧ポンプ161と左右の駆動輪124用の駆動モータ(油圧モータ)162をつなぐ配管163には途中に方向制御弁164と分配器165が設けられている。方向制御弁164は制御レバー166の操作により機体110の進行方向(前進方向、後退方向)を切り替えることができる。駆動モータ162と巻取りモータ(油圧モータ)131をつなぐ配管163には途中に方向制御弁167が設けられている。方向制御弁167は制御レバー168の操作により巻取りモータ131の回転方向(巻取り方向、逆方向)を切り替えることができる。
【0028】
巻取りモータ131の手前の配管163には圧力調整弁169が設けられている。圧力調整弁169は、機体110を低速走行しながらの巻取り時に、巻取り径の増加により被覆資材にかかる張力が上昇して、巻取りモータ131に設定圧を超える圧力(作動油圧)がかかると弁が開き、分岐管163Aを経由して配管163内の作動油を逃がし、巻取りモータ131に向かう作動油を設定圧以下に調整し、被覆資材にかかる張力を緩和するようになっている。なお、169’は圧力制御弁、170は油タンクを示している。
【0029】
次に、上記構成の巻取り機100を用いた被覆資材の巻取り作業について説明する。
【0030】
最初に被覆資材の展開作業について説明すると、巻取り機100を茶畝Tの始端に位置決めし、図7の右半分に示すように、載置部150に載置した巻取状態の被覆資材Sを巻き出して、上下の中間ガイド軸142、押さえ軸144を経由し、茶畝Tの端に留め具で留める。エンジン160を始動し、制御レバー166を前進側に切り替え、機体110を低速(時速2~4km)で前進させると、被覆資材Sが少しずつ巻き出されるので、両脇の作業通路にいる作業者が、巻き出された被覆資材Sを茶畝Tの上部に展開しながら、機体110の移動にあわせて留め具を用いて被覆資材Sの両脇を茶畝Tの両側部に一定間隔で留めていく。
【0031】
被覆資材の展開作業は、上記の作業を茶畝Tの終端まで行い、被覆資材Sを茶畝Tの終端に留めて、次の列の茶畝Tに移る。複数列の茶畝Tに被覆部材を被せ終わったら、展開作業を終了する。
【0032】
展開作業の終了後、養生期間(数日から一週間程度)が経過したら、茶畝Tを覆う被覆資材の巻取作業と回収を行う。
【0033】
最初に巻取り機100を茶畝Tの始端に位置決めし、茶畝Tを覆う被覆資材Sの始端を、図7の左半分に示すように、上下の中央寄せガイド軸138、中間ガイド軸137を経由し、巻取り軸132に巻き付けて係止する(始端を係止突起135aに係止する)。エンジン160を始動し、制御レバー166を前進側に切り替え、かつ、制御レバー168を巻取り側に切り替えると、左右の駆動輪124用の駆動モータ162が駆動すると同時に、巻取り軸132用の巻取りモータ131が駆動し、機体110が低速(時速2~4km)で前進し、巻取り軸132が同期して回転する。
【0034】
これにより、機体110の前進に合わせて、両脇の作業通路にいる作業者により被覆資材Sの留め具が外されながら、図7の左半分のようにして、茶畝T上の被覆資材Sが、上下の中央寄せガイド軸138、中間ガイド軸137を経由し、一定の張力を維持しながら、回転する巻取り軸132に順次巻き取られていく。
【0035】
機体110が前進するにつれて巻取り軸132の巻取り径が次第に大きくなると、巻取り径が大きくなるにつれて被覆資材の張力が上昇し、巻取りモータ131への負荷が大きくなるが、負荷の上昇に応じて巻取りモータ131に供給される作動油が設定圧を超えると、圧力調整弁169が開いて圧力が逃がされて、巻取りモータ131の駆動力がなくなり、被覆資材の張力が低下して巻取りモータ131への負荷が小さくなる。その後、巻取りモータ131に供給される配管163内の作動油が設定圧に達すると、巻取りモータ131の駆動力が回復し、被覆資材を引き続き所定の張力で巻き取る。
【0036】
このように機体110が一定の低速で前進しながら、巻取り軸132にかかる負荷を調整しながら、展開状態の被覆資材を略一定の張力で巻き取ることができる。したがって、巻取り径の増加により被覆資材の張力が増加して、展開状態の被覆資材を無理やり引っ張って巻き取ったり、引っ張られる被覆資材により茶樹の新芽を傷付けるような事態は生じない。これにより、展開状態の被覆資材を安心して確実に巻取り作業することができる。
【0037】
被覆資材を巻取り軸132に巻き取り終えたら、巻取り軸132から被覆資材を取り外す。被覆資材は巻取り軸132に強く巻き付けられているので、そのまま取り外すのは容易ではない。
【0038】
そこで、まず、図8に示すように、巻取り軸132の従動側の支持軸132bを持ち上げて、サイド板134Rの切欠部134aから外し、被覆資材を保持したまま、制御レバー168を巻取り方向の逆方向に切り替え、巻取り軸132を巻取り方向とは逆方向に回転させる。巻取り軸132の全周に設けられたスパイラル突起135の作用により、周囲に巻き付けられた被覆資材Sは図8の矢印Cのように、支持軸132b側へ移動し、作業者は被覆資材Sを容易に取り外すことができる。
【0039】
巻取り軸132の幅方向中央部および両端部に設けられた係止突起135aは、表面から巻取り方向かつ支持端132b方向に短く屈曲しているから、巻取り方向と逆方向への回転時には被覆資材Sの抜き出し方向への移動の抵抗とならず、よって作業者は被覆資材Sを容易に取り外すことができる。
【0040】
取り外した被覆資材は、載置部150に載せて、次の茶畝Tに展開された被覆資材の巻取り作業にうつる。
【0041】
本実施形態の巻取り機100によると、次のような作用効果を奏する。
【0042】
(1)巻取り軸132にスパイラル突起135を設け、巻取り軸132を巻取り方向と逆方向に回転させることで、巻取り軸132に巻き取った被覆資材を容易に取り外すことができ、これにより、作業者の作業労力が大きく軽減される。
【0043】
(2)巻取りモータ131に向かう配管163の途中に圧力調整弁169を設けたので、機体110を低速で走行させながら、被覆資材にかかる張力を略一定に維持して、被覆資材を巻取り軸132に確実に巻き取ることができ、これによって、巻取り作業を効率よく行うことができる。
【0044】
(3)巻取り軸132の前方に被覆資材を中央寄りに案内する中央寄せガイド軸138を設けたので、被覆資材を片寄りすることなく、巻取り軸132に一定幅で品質良く巻き取ることができる。これにより、巻取り軸132からの被覆資材の取り外し、および取り外した被覆資材の保管を効率よく行うことができる。
【0045】
以上の実施形態においては、被覆資材の例として寒冷紗や遮光シートの例を説明したが、防霜用シートなど他の用途の被覆資材にも適用できるのは勿論である。
【0046】
かくして、本発明を用いることにより、茶園における被覆資材の巻取り作業とその回収作業を容易にかつ効率よく行うことができ、農業従事者の作業負担の軽減を大きく図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、茶園に設けられた畝に沿って走行しながら被覆資材の巻取り作業を行う巻取り機として利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
100 巻取り機
110 機体
120 走行装置
122 車輪
124 駆動輪
130 巻取部
131 巻取りモータ(駆動手段)
132 巻取り軸
132a、132b 支持端
133、136、143 支持アーム
134L、134R ガイド板
134a 切欠部
135 スパイラル突起部
136a、141 支持部材
137、142 中間ガイド軸
138 中央寄せガイド軸
140 展開部
144 押さえ軸
150 載置部
160 エンジン
161 油圧ポンプ
162 駆動モータ(油圧モータ)
163 配管
163A 分岐管
164、167 方向制御弁
165 分配器
166、168 制御レバー
169 圧力制御弁
S 被覆資材
T 茶畝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8