(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】ペン芯、ペン先の保持構造、ペンホルダ及び筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 5/18 20060101AFI20220208BHJP
B43K 1/02 20060101ALI20220208BHJP
B43K 5/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B43K5/18
B43K1/02
B43K5/00 110
(21)【出願番号】P 2018104144
(22)【出願日】2018-05-30
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】518191108
【氏名又は名称】伊東 幸司
(74)【代理人】
【識別番号】100154782
【氏名又は名称】太田 知二
(72)【発明者】
【氏名】伊東 幸司
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-218228(JP,A)
【文献】実公昭46-003769(JP,Y1)
【文献】特開2008-194991(JP,A)
【文献】実開平05-088984(JP,U)
【文献】実開平02-064082(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00- 1/12
B43K 5/00- 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン先の表面に脱着自在に面接触する接触面を有する支持軸体と、
前記支持軸体の一端に位置して前記支持軸体とインクが収容される収容空間を有するインク収容体とを脱着自在に結合させる結合端とを備え、
前記接触面は、前記ペン先に面接触した状態で少なくとも前記ペン先の前記表面内に形成されたスリットの根元に達しており、
前記支持軸体は、
前記結合端が前記インク収容体と結合した状態で前記収容空間と外部とを連通させる複数の連通路
であって、それらの少なくともいずれか1つは前記接触面上に形成され
、それらの他のいずれか1つは、前記支持軸体内に、その延出方向に沿って形成された空洞と、前記結合端の端面に形成されたスリット又は開口と、前記支持軸体の他端に形成された開口とを有する複数の連通路と、
側面に形成された、前記複数の連通路の前記他のいずれか1つと連通している溝部とを有し、
前記支持軸体は、
前記支持軸体の前記接触面が前記ペン先に面接触した状態では、前記溝部の幅が固定前より狭くなるよう変形する、
ペン芯。
【請求項2】
前記支持軸体の先端は、その中心軸から離れる向きに湾曲又は屈曲している、
請求項1に記載のペン芯。
【請求項3】
前記支持軸体は、その中心軸に直交する向きに可撓性を有する、
請求項1又は2に記載のペン芯。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載のペン芯と、
前記ペン芯、前記ペン先及び前記インク収容体を結合する結合部とを備えた、
ペン先の保持構造。
【請求項5】
ペン先の表面に脱着自在に面接触する接触面を有する支持軸体と、前記支持軸体の一端に位置して前記支持軸体とインクが収容される収容空間を有するインク収容体とを脱着自在に結合させる結合端とを備え、前記支持軸体は、前記結合端が前記インク収容体と結合した状態で前記収容空間と外部とを連通させる複数の連通路を有し、前記接触面は、前記ペン先に面接触した状態で少なくとも前記ペン先の前記表面内に形成されたスリットの根元に達しており、前記複数の連通路の少なくともいずれか1つは前記接触面上に形成されている、ペン芯と、
前記ペン芯、前記ペン先及び前記インク収容体を結合する結合部とを備え、
前記結合部は、
前記支持軸体の延出方向に沿って、前記ペン先と前記ペン芯との距離を調節可能且つ前記ペン先と前記インク収容体との距離を一定の状態として、前記ペン芯、前記ペン先及び前記インク収容体を結合する、
ペン先の保持構造。
【請求項6】
前記結合部は、
前記支持軸体の延出方向に沿って、前記ペン先と前記ペン芯との距離を調節可能且つ前記ペン先と前記インク収容体との距離を一定の状態として、前記ペン芯、前記ペン先及び前記インク収容体を結合する、
請求項
4又は5に記載のペン先の保持構造。
【請求項8】
前記結合部は、
前記支持軸体の延出方向に沿って、前記ペン先と前記ペン芯との距離を調節可能に結合するとともに、前記ペン先と前記ペン芯とが距離固定に結合された状態で前記ペン先と前記インク収容体との距離を調節可能に、前記ペン芯、前記ペン先及び前記インク収容体を結合する、
請求項
4又は5に記載のペン先の保持構造。
【請求項9】
前記結合部は、前記インク収容体と一体的に構成されている、
請求項
4から
8のいずれかに記載のペン
先の保持構造。
【請求項10】
請求項1から
3のいずれかに記載のペン芯又は請求項
4から
9のいずれかに記載のペン先の
保持構造と、
インクが収容される収容空間を有するインク収容体を内部に収容可能な胴軸とを備えた、
ペンホルダ。
【請求項11】
請求項1から
3のいずれかに記載のペン芯又は請求項
4から
9のいずれかに記載のペン先の
保持構造と、
ペン先と、
インクが収容される収容空間を有するインク収容体を内部に収容可能な胴軸とを備えた、
筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単品で流通するつけペンであるペン先に装着することにより万年筆のように使用できる筆記具を構成することが可能なペン芯及びペン先の保持構造、並びにそれらを用いたペンホルダ及び筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在汎用される筆記具は、万年筆、ボールペンに例示されるように、ペン先と一体化又は別体としてインクを供給するインク貯蔵部を胴軸内に備えることにより長時間の使用を可能としている。特に万年筆は、インク貯蔵部をコンバータ又はカートリッジとして交換可能な部品とすることにより、ペン先や胴軸を継続して使用することができる(例えば特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の筆記具は、主に書字用途とされることから均一幅の描線を形成することが求められる一方、絵画その他の美術の分野においては、表現上の理由から多くは描画に個性を与えるため描線の幅に変化を持たせることが求められる。そこで描画に用いられる筆やペンは、そのような要求に応じて形状、仕組みが異なる種々のバリエーションが存在している。
【0005】
しかしながら、これらの美術用途の筆記具は、筆記具とは独立した外部の硯やインク壺から墨やインクを逐次供給する必要があり、長時間の連続した筆記を行うことは困難であった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、例えば美術用途に用いられるつけペンのペン先を長時間連続した筆記に好適化することが可能なペン芯、ペン先の保持構造、並びにそれらを用いたペンホルダ及び筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面は、ペン先の表面に脱着自在に面接触する接触面を有する支持軸体と、前記支持軸体の一端に位置して前記支持軸体とインクが収容される収容空間を有するインク収容体とを脱着自在に結合させる結合端とを備え、
前記接触面は、前記ペン先に面接触した状態で少なくとも前記ペン先の前記表面内に形成されたスリットの根元に達しており、前記支持軸体は、前記結合端が前記インク収容体と結合した状態で前記収容空間と外部とを連通させる複数の連通路であって、それらの少なくともいずれか1つは前記接触面上に形成され、それらの他のいずれか1つは、前記支持軸体内に、その延出方向に沿って形成された空洞と、前記結合端の端面に形成されたスリット又は開口と、前記支持軸体の他端に形成された開口とを有する複数の連通路と、側面に形成された、前記複数の連通路の前記他のいずれか1つと連通している溝部とを有し、前記支持軸体は、前記支持軸体の前記接触面が前記ペン先に面接触した状態では、前記溝部の幅が固定前より狭くなるよう変形する、ペン芯である。
【0008】
これにより、例えば美術用途に用いられるつけペンのペン先をインク収容体からインクの供給を受ける筆記具として構成して、長時間連続した筆記に好適化することが可能となる。
更に、ペン芯とインク収容体との気液交換作用を促進してペン先からのインクの吐出量を安定化することが可能となり、ひいてはペン先の筆記具としての書き心地、描線の品質を向上させることが可能となる。
更に、ペン芯の横断面形状をペン先の横断面形状に追従させて装着性を高めることが可能となり、形状に異なりやばらつきのある種々のペン先へ適用できる、汎用性の高い筆記具を得ることが可能となる。
【0009】
本発明の第2の側面は、前記支持軸体の先端は、その中心軸から離れる向きに湾曲又は屈曲している、本発明の第1の側面のペン芯である。
【0010】
これにより、ペン先との接触面の密着性を高めてペン先からのインク漏れを抑制して、信頼性の高い筆記具を得ることが可能となる。
【0011】
本発明の第3の側面は、前記支持軸体は、その中心軸に直交する向きに可撓性を有する、本発明の第1又は第2の側面のペン芯である。
【0012】
これにより、ペン先の表面とペン芯の接触面との接触状態を良好に保たせてペン先からのインクの吐出量を安定化することが可能となり、ひいてはペン先の筆記具としての書き心地、描線の品質を向上させることが可能となる。
【0017】
本発明の第4の側面は、本発明の第1から第3のいずれかの側面のペン芯と、前記ペン芯、前記ペン先及び前記インク収容体を結合する結合部とを備えた、ペン先の保持構造である。
【0018】
これにより、例えば美術用途に用いられるつけペンのペン先を、インク収容体からインクの供給を受ける筆記具とすることが可能となる。
本発明の第5の側面は、ペン先の表面に脱着自在に面接触する接触面を有する支持軸体と、前記支持軸体の一端に位置して前記支持軸体とインクが収容される収容空間を有するインク収容体とを脱着自在に結合させる結合端とを備え、前記支持軸体は、前記結合端が前記インク収容体と結合した状態で前記収容空間と外部とを連通させる複数の連通路を有し、前記接触面は、前記ペン先に面接触した状態で少なくとも前記ペン先の前記表面内に形成されたスリットの根元に達しており、前記複数の連通路の少なくともいずれか1つは前記接触面上に形成されている、ペン芯と、前記ペン芯、前記ペン先及び前記インク収容体を結合する結合部とを備え、前記結合部は、前記支持軸体の延出方向に沿って、前記ペン先と前記ペン芯との距離を調節可能且つ前記ペン先と前記インク収容体との距離を一定の状態として、前記ペン芯、前記ペン先及び前記インク収容体を結合する、ペン先の保持構造である。
これにより、例えば美術用途に用いられるつけペンのペン先をインク収容体からインクの供給を受ける筆記具として構成して、長時間連続した筆記に好適化することが可能となる。
更に、例えば美術用途に用いられるつけペンのペン先を、インク収容体からインクの供給を受ける筆記具とすることが可能となる。
更に、ペン先とペン芯とを所望の距離にて固定して、ペン先の表面とペン芯の接触面との接触状態を最適化してインクの吐出量を安定化するとともに、ペン先を安定して固定して、書き心地及び描線の品質を向上させた筆記具を得ることが可能となる。
【0019】
本発明の第6の側面は、前記結合部は、前記支持軸体の延出方向に沿って、前記ペン先と前記ペン芯との距離を調節可能且つ前記ペン先と前記インク収容体との距離を一定の状態として、前記ペン芯、前記ペン先及び前記インク収容体を結合する、本発明の第4又は第5の側面のペン先の保持構造である。
【0020】
これにより、ペン先とペン芯とを所望の距離にて固定して、ペン先の表面とペン芯の接触面との接触状態を最適化してインクの吐出量を安定化するとともに、ペン先を安定して固定して、書き心地及び描線の品質を向上させた筆記具を得ることが可能となる。
【0021】
本発明の第7の側面は、前記結合部は、前記ペン先の周囲及び前記インク収容体の前記内部空間と連通する開口に嵌合するとともに前記ペン先の後端に接触する、本発明の第6の側面のペン先の保持構造である。
【0022】
これにより、形状や描線の特性に異なりのある種々のペン先へ適用できる、汎用性の高い筆記具を、簡易な構成及び組立にて実現して、メンテナンスが容易で安価な筆記具を提供することが可能となる。
【0023】
本発明の第8の側面は、前記結合部は、前記支持軸体の延出方向に沿って、前記ペン先と前記ペン芯との距離を調節可能に結合するとともに、前記ペン先と前記ペン芯とが距離固定に結合された状態で前記ペン先と前記インク収容体との距離を調節可能に、前記ペン芯、前記ペン先及び前記インク収容体を結合する、本発明の第4又は第5の側面のペン先の保持構造である。
【0024】
これにより、使用者の個性に応じた書き心地を与える、特に美術用途に好適な筆記具を得ることが可能となる。
【0025】
本発明の第9の側面は、前記結合部は、前記インク収容体と一体的に構成されている、本発明の第4から第8のいずれかの側面のペン先の保持構造である。
【0026】
これにより、形状や描線の特性に異なりのある種々のペン先へ適用できる、汎用性の高い筆記具を、より簡易な構成にて実現するとともに、インク漏れの恐れを軽減して信頼性を向上させることが可能となる。
【0027】
本発明の第10の側面は、本発明の第1から第3のいずれかの側面のペン芯又は本発明の第4から第9のいずれかの側面のペン先の保持構造と、インクが収容される収容空間を有するインク収容体を内部に収容可能な胴軸とを備えた、ペンホルダである。
【0028】
これにより、形状や描線の特性に異なりのある種々のペン先、更には色や種類の異なるインクを収容するインク収容体を選択的に装着して使用できる、汎用性の高い筆記具を得ることが可能となる。
【0029】
本発明の第11の側面は、本発明の第1から第3のいずれかの側面のペン芯又は本発明の第4から第9のいずれかの側面のペン先の保持構造と、ペン先と、インクが収容される収容空間を有するインク収容体を内部に収容可能な胴軸とを備えた、筆記具である。
【0030】
これにより、例えば美術用途に用いられるつけペンのペン先を長時間連続した筆記に好適化することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
以上のような本発明は、つけペンのペン先を長時間連続した筆記用に好適化することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】(a)本発明の実施の形態1に係るペン芯の構成を示す斜視図(b)本発明の実施の形態1に係るペン芯の構成を示す斜視図
【
図2】(a)本発明の実施の形態1に係るペン芯の構成を示す平面図(b)
図2(a)のA矢視図(c)
図2(a)のC-C断面図(d)
図2(a)のB矢視図
【
図3】本発明の実施の形態1に係るペン先の保持構造の構成を示す断面図
【
図4】(a)本発明の実施の形態2に係るペン芯の構成を示す斜視図(b)本発明の実施の形態1に係るペン芯の構成を示す斜視図
【
図5】(a)本発明の実施の形態2に係るペン芯の構成を示す平面図(b)
図5(a)のA矢視図(c)
図5(a)のC-C断面図(d)
図5(a)のB矢視図
【
図6】本発明の実施の形態2に係るペン先の保持構造の構成を示す断面図
【
図7】(a)本発明の実施の形態2に係るペン芯の作用効果を説明するための図(b)本発明の実施の形態2に係るペン芯の作用効果を説明する断面図(c)本発明の実施の形態2に係るペン芯の作用効果を説明するための図
【
図8】(a)本発明の実施の形態3に係るペン先の保持構造の構成を示す断面図(b)本発明の実施の形態3に係るペン先の保持構造の構成を示す断面図(c)本発明の実施の形態3に係るペン先の保持構造の構成を示す断面図
【
図9】(a)本発明の他の実施の形態に係るペン芯の構成を示す断面図(b)本発明の他の実施の形態に係るペン芯の構成を示す断面図(c)本発明の他の実施の形態に係るペン芯の構成を示す裏面図
【
図10】(a)本発明の他の実施の形態に係るペン先の保持構造の構成を示す断面図(b)本発明の他の実施の形態に係るペン先の保持構造の構成を示す断面図
【
図11】(a)本発明の実施の形態に係るペンホルダの構成を示す図(b)本発明の実施の形態に筆記具の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係るペン芯は、つけペンとしてペンホルダに装着して用いられる丸ペンに例示されるペン先に組み合わせることで、当該ペン先を万年筆用のコンバータ又はインクカートリッジに例示されるインク収容体と組み合わせた筆記具を実現するものである。
【0035】
図1(a)は、本発明の実施の形態1に係るペン芯の構成を示す後方から見た斜視図、
図1(b)は前方から見た斜視図である。なお、ここで前方とは、
図1(a)に示すペン先2の先端2T側として、後方とはペン先2の後端2E側として、それぞれ定義される。
【0036】
図1(a)(b)にそれぞれ示すように、ペン芯1において、本体部10は、ポリプロピレン、シリコンゴム、ポリスチレン、等の合成樹脂に例示される、耐油性、耐水性及び一定の弾性を有する素材により作成された、内部が空洞である外形略円筒形状の部材である。本体部10の先端は円筒形状の側面を中心軸CAに斜行する平面又は曲面により切断してなる端面形状を有するとともに内部の空洞と連通する開口10aが形成され、後端10Eには円筒形状の側面を中心軸CAに直交する平面により切断してなる端面形状を有するとともに内部の空洞と連通する開口12aが形成される。
【0037】
更に、本体部10の側面には、後端10Eから先端10Tにまで達する直線状の凹溝10bが形成されるとともに、凹溝10bから中心軸CAを間に挟んで相対する位置には、凹溝10bと並行をなす側面スリット10cが形成される。側面スリット10cは開口10a、12a及び本体部10の内部の空洞に連通する。なお、上述した本体部10内の空洞は後述する
図2、3において内部空間10xとして示される。
【0038】
次に、
図1(a)を参照して、ペン芯1に装着されるペン先2について説明する。ペン先2は所謂丸ペンに例示される、先端2Tを含んでなる横断面形状が弧状のペン本体21と後端2Eを含んでなる横断面形状が環状の嵌合部22とが一体化した構成を有し、ペン本体21の表面上には、先端2Tからペン本体21の表面中央に向かって延出してペン本体21を等分割する切り割り21yが形成され、切り割り21yの先端は孔部21xとして平面的に広がった空隙を形成している。
【0039】
ペン芯1の本体部10は、ペン先2の嵌合部22の内径と略同一、あるいはそれ以上の外径を有する。これにより、ペン先2は、図中矢印Dに示すように、嵌合部22をペン先2の本体部10に嵌合させてペン先2に脱着自在に固定される。
【0040】
ペン芯1がペン先2に固定された状態で、本体部10の後端10Eを含んだ部分は、
図2(a)に示すようにペン先2の嵌合部22から結合端11として突出する。なお、嵌合の方向は
図1(a)とは逆に、ペン本体21側から結合端11側へ向かって挿入させるものとしてもよい。また、
図1(a)(b)においては、本体部10における結合端11と他の部分との境界を破線にて仮想的に示した。
【0041】
次に、
図2(a)~(d)を参照して、ペン先2と組み合わせた状態として、ペン芯1の構成を更に説明する。なお、
図2(a)においては図示容易のためペン芯1は点線によりペン先2を透過した状態として示した。
【0042】
図2(a)の平面図に示すように、ペン芯1とペン先2とは、ペン芯1の本体部10上の凹溝10bとペン先2の切り割り21yとが同一線上に重なるように位置決めされた状態で組み合わされ、これによりペン芯1の本体部10の先端10Tは切り割り21y上に配置される。なお、先端10Tの配置は少なくとも孔部21xの縁にまで達していればよく、切り割り21y及び孔部21xの任意の位置に位置決めすることができる。
【0043】
次に、
図2(a)のA矢視図である
図2(b)に示すように、ペン芯1の内部空間10xを通過する中心軸CA周りに同心円状にペン芯1の本体部10の壁体並びにペン先2のペン本体21及び嵌合部22が配置され、ペン芯1の本体部10の側面であって、凹溝10bを含む面は接触面CSとしてペン先2のペン本体21の凹面側に面接触する。
【0044】
更に、
図2(b)、
図2(a)のC-C断面図である
図2(c)及び
図2(a)のB矢視図である
図2(d)に示すように、ペン芯1の本体部10は、ペン先2の嵌合部22へ嵌合してペン本体21との間に接触面CSを形成する際に、嵌合部22からの押圧を受けて側面スリット10cの幅が狭くなるよう変形する。
【0045】
以上の構成において、ペン芯1は本発明のペン芯に相当し、ペン先2は本発明のペン先に相当する。また、ペン芯1において本体部10は本発明の支持軸体、結合端11は本発明の結合端にそれぞれ相当する。ペン先2において切り割り21y及び孔部21xの組合せは本発明のスリットに相当する。
【0046】
また、接触面CSは本発明の接触面に相当し、凹溝10b、並びに開口10a、12a及び内部空間10xが形成する経路は、それぞれ本発明の複数の連通路の各々に相当する。更に、側面スリット10cは本発明の溝部に相当する。
【0047】
本実施の形態1のペン芯1は、以上の構成を備えたことにより、装着させたペン先2を、外部のコンバータやカートリッジのようなインク収容体と組み合わせることにより、インク収容体からペン先2にインクの供給を受ける筆記具として構成して、長期間の筆記を実現させる。
【0048】
以下、
図3を参照して、更に説明を行う。
図3は、本発明のペン先の保持構造の一実施の形態である、
図2(a)に示すペン先2に組み合わされたペン芯1をインク収容体3に更に組み合わせた構成を示す図である。なお、
図3はペン芯1の中心軸CA及び凹溝10bを通る平面による断面図である。
【0049】
図3に示すように、インク収容体3は、インクを収容する収容空間31xを内部に有する略円筒形状の収容本体31を備える。インクの供給口となる開口31yの内側近傍には合成ゴム、合成樹脂等により作成されたパッキン32が固定され、収容空間31xの内周面31zの内径を部分的に小さくして内周面31zに段差を与える。収容本体31の内径とペン先2の嵌合部22の外径は略等しく、且つパッキン32の内径はペン芯1の結合端11の外径以下に定められる。
【0050】
これにより、インク収容体3とペン芯1は、パッキン32に結合端11が嵌合するとともに収容本体31の開口31yにペン先2の嵌合部22が嵌合した状態でペン先2を含めて一体的に結合されて、ペン先の保持構造100を構成している。なお、インク収容体3において、収容本体31の開口31y及びパッキン32近傍の構成は、本発明のペン先の保持構造の結合部に相当する。
【0051】
ペン先の保持構造100においては、インク収容体3の収容本体31の収容空間31xは、ペン芯1の結合端11の後端10Eから本体部10の先端10Tまで達する凹溝10bと、結合端11の後端10E上の開口12aから内部空間10xを介して開口10aにまで達する経路の2つの独立した経路により外部と連通する。
【0052】
これにより、インク収容体3に収容されたインクは、収容本体31がペン芯1の開口10aと連通することで収容空間31xの気圧が外気圧と同一に保たれた状態を保ちつつ、毛細管現象によりペン芯1の凹溝10bからペン先2のペン本体21の孔部21xを切り割り21yの順に流れて先端2Tに供給される。これにより、ペン先の保持構造100は万年筆と同様の気液交換によりインクの吐出を行う筆記具として機能する。
【0053】
以上の構成において、ペン芯1に装着されるペン先2は、本来つけペンとしてペンホルダに装着して用いられる丸ペンに例示されるペン先を用いる。ペン先は、絵画、イラストレーション等の美術の分野において汎用される一方で、万年筆のようにコンバータやインクカートリッジと組み合わせることができないため、筆記具とは独立したインク壺からインクを逐次供給する必要があり、長時間の連続した筆記を行うことは困難であった。
【0054】
本実施の形態1のペン芯1は、上記のようなペン先であるペン先2に対してインク収容体3からペン先2にインクの供給を行わせ、万年筆と同様に長時間の連続した筆記を行わせることが可能となる。
【0055】
更に、ペン芯1に対してペン先2は脱着自在に嵌合する構成を備えたことにより、単一のペン芯に対してペン先2を交換して用いることができる。これにより、経年使用により摩耗、錆び等により劣化したペン先2を容易に交換することができる。ひいては、ペン芯とペン先が一体化した構成であってペン先の交換をメーカー側の修理に依存する市販の万年筆に比して、使用者側にて書き心地や描線の品質を容易且つ安価に維持することが可能となる。
【0056】
更に、本実施の形態1のペン芯1は、本体部10において、結合端11の後端10E上の開口12aから内部空間10xを介して開口10aにまで達する経路を、外部と連通する連通路として設けた構成としたことにより、ペン先2とインク収容体3との気液交換作用を促進してペン先2からのインクの吐出量を安定化することが可能となり、ひいてはペン先2の筆記具としての書き心地、描線の品質を向上させることが可能となる。
【0057】
更に、本実施の形態1のペン芯1は、本体部10に内部空間10xと連通するとともに、ペン芯1との組み合わせ時には単体時よりも幅が狭くなる側面スリット10cを形成したことにより以下の効果を奏する。すなわち、ペン先2は、線幅や線の態様その他描線の特性が同一とされるものであっても、ロット又はメーカーによって嵌合部22の内径に公差又は誤差その他の原因によるばらつきがあり、ペン芯1との装着状態が一定の品質に保たれなくなる恐れがある。
【0058】
これに対し、本実施の形態1のペン芯1は上記の構成を備えたことにより、ペン先2の嵌合部22の内部形状に追従して、本体部10が側面スリット10cの幅の変形分に応じて外径が小さくなる、あるいは断面積が小さくなるよう変形する。これにより、ペン芯1の嵌合部22の横断面形状をペン先2の本体部10の横断面形状に追従させて装着性を高めることが可能となり、ペン先2の嵌合部22の内径のばらつきに対応して安定した書き心地を維持することが可能となる。更には、描線の特性や横断面形状に異なりのある種々のペン先を付け替えて使用できる、汎用性の高い筆記具を得ることが可能となる。
【0059】
更に、本実施の形態1のペン芯1は、インク収容体3と結合するペン先の保持構造100として、結合部としてのパッキン32に結合端11が嵌合するとともに収容本体31の開口31yにペン先2の嵌合部22が嵌合し、更に嵌合部22の後端がパッキン32に接触した状態でペン先2を含めて一体的に結合された構成を有することにより、以下の効果を奏する。
【0060】
すなわち、上記の構成においては、ペン先2とペン芯1とは、中心軸CAと平行をなす本体部10の延出方向に沿って、ペン芯1の先端10Tをペン先2の切り割り21y及び孔部21xがなす直線の所望の位置に調節して位置決めした状態にて嵌合した状態で、インク収容体3に更に嵌合して固定される。これにより、本体部10の凹溝10bからペン本体21へのインクの供給量を最適化し、更には筆記中における接触面CSの状態、すなわちペン先2の表面とペン芯1との距離の変化や接触面積を最適化してインクの吐出量を安定化する。
【0061】
更に、筆圧に起因するペン先2の軸方向に沿った移動をパッキン32との干渉により規制して安定して固定させる。これらにより、書き心地及び描線の品質を向上させた筆記具を得ることが可能となる。
【0062】
更に、上記の構成においては、ペン芯1とペン先2の着脱は本体部10の中心軸CAに沿った挿抜に基づく嵌合という簡易な組立操作で行うことができ、使用者側でペン先2の交換やペン芯1の洗浄等のメンテナンスが容易な筆記具を得ることが可能となる。
【0063】
更に、ペン芯1の洗浄等のメンテナンスが容易なことから、インク収容体3に収容して用いるインクとしては油性インクを用いることもでき、主に水性インクを用いる万年筆に比して適用できるインクの色、種類が広汎な、特に絵画等の美術用途に好適な筆記具を得ることが可能となる。
【0064】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るペン芯は、つけペンとしてペンホルダに装着して用いられるペン先として、Gペンに例示されるペン先に組み合わせることで、当該ペン先を万年筆用のコンバータ又はインクカートリッジと組み合わせた筆記具を実現するものである。
【0065】
図4(a)は、本発明の実施の形態2に係るペン芯及びペン先の構成を示す後方から見た斜視図、
図4(b)は前方から見た斜視図である。
【0066】
図4(a)に示すように、本実施の形態2のペン芯4は、所謂Gペンに例示されるペン先5に対応する。ペン先5は、先端5T及び後端5Eを含んでなる全体の横断面形状が弧状のペン本体51を含んでなり、ペン本体51の表面上には、ペン先2同様、先端5Tからペン本体51の表面中央に向かって延出してペン本体51を等分割する切り割り51yが形成され、切り割り51yの先端は孔部51xとして平面的に広がった空隙を形成している。
【0067】
本実施の形態2のペン芯4の各部は、上記のような形状を有するペン先5の形状及び寸法に適合した形状及び寸法を有すること以外は、実施の形態1のペン芯1と同様の構成・機能を有し、対応する箇所は同一名称を付し、詳細な説明は省略する。
【0068】
ペン芯4の本体部40は、ペン先5のペン本体51の横断面形状に略同一に対応した、あるいは凹面の湾曲の程度が異なる側面を形成する。これにより、ペン先5は、図中矢印Dに示すように、ペン本体51をペン芯4の本体部40の円筒形状の側面である表面に面接触させる。更に、本体部40の後端には円筒形状の底面に相当して内部の空洞を閉塞する端面42が設けられ、端面42には本体部40の、後述する内部空間40xである内部の空洞と連通する、所定幅を有する端面スリット42aが形成されることで、内部空間40xは本体部40の外形に沿った輪郭を構成する。
【0069】
以上の構成において、凹溝40b、並びに開口40a、端面スリット42a及び内部空間40xが形成する経路は、それぞれ本発明の複数の連通路の各々に相当する。更に、側面スリット40c及び端面スリット42aの組み合わせは本発明の溝部に相当する。
【0070】
このような構成を有する本実施の形態2のペン芯4は、凹溝40bを含む側面をペン先5の凹面に面接触させた状態で、実施の形態1と同様、本体部40の端面42を含んだ部分は、
図5(a)に示すようにペン先5のペン本体51の後端5Eから結合端41として突出する。なお、
図4(a)(b)においては、本体部40における結合端41と他の部分との境界を破線にて仮想的に示した。
【0071】
次に、
図5(a)~(d)を参照して、ペン先5と組み合わせた状態として、ペン芯4の構成を更に説明する。ただし、
図5(a)においては図示容易のためペン芯4は点線によりペン先5を透過した状態として示した。
【0072】
図5(a)の平面図に示すように、実施の形態1と同様、ペン芯4とペン先5とは、ペン芯4の本体部40上の凹溝40bとペン先5の切り割り51yとが同一線上に重なるように位置決めされ、これによりペン芯4の本体部40の先端40Tは切り割り51y上に配置される。なお、先端40Tの配置は少なくとも孔部51xの縁にまで達していれば、切り割り51y及び孔部51xの任意の位置に位置決めすることができる。
【0073】
次に、
図5(a)のA矢視図である
図5(b)、
図5(a)のC-C断面図である
図5(c)、及び
図5(a)のB矢視図である
図5(d)に示すように、ペン芯4の内部空間40xを通過する中心軸CA周りに同心円状にペン芯4の本体部40の壁体並びにペン先5のペン本体51が配置され、ペン芯4の本体部40の側面であって、凹溝40bを含む面は接触面CSとしてペン先5のペン本体51の凹面側に面接触する。
【0074】
次に、
図6は、本発明のペン先の保持構造の一実施の形態である、
図5(a)に示すペン先5に組み合わされたペン芯4をインク収容体3に更に組み合わせた構成を示す図であって、ペン芯4の中心軸CAを通る平面による断面図である。ただし、
図3に示す構成と同一又は相当する構成については、同一符号を付し詳細な説明は省略する。なお、収容本体31の開口31yの外形とペン先5のペン本体51の外形の曲率は略等しく、且つパッキン32の内径はペン芯4の結合端41の外径以下に定められる。
【0075】
これにより、インク収容体3とペン芯4は、パッキン32に結合端41が嵌合するとともに、ペン先5のペン本体51の後端5Eが収容本体31の開口31yに嵌合するとともにパッキン32に接触した状態でペン先5を含めて一体的に結合されて、ペン先の保持構造200を構成している。
【0076】
ペン先の保持構造200においては、インク収容体3の収容本体31の収容空間31xは、ペン芯4の結合端41から本体部40の先端40Tまで達する凹溝40bと、結合端41の端面42上の端面スリット42aから内部空間40xを介して開口40aにまで達する経路との2つの独立した経路により外部と連通する。
【0077】
本実施の形態2のペン芯4は、以上の構成を備えたことにより、実施の形態1と同様、装着させたペン先5を、外部のコンバータやカートリッジのようなインク収容体と組み合わせることにより、インク収容体からペン先5にインクの供給を受ける筆記具として構成して、長期間の筆記を実現させる。更に、実施の形態1のペン芯1、ペン先の保持構造100と同様の各種の効果を奏する。
【0078】
更に、本実施の形態2のペン芯4は、本体部40において、インク収容体3の収容本体31の収容空間31xと外部とを連通させる連通路を、側面スリット40cにより中心軸CAに沿って形成されるとともに端面42により部分的に閉塞されることで本体部40の外形に沿った輪郭を有する内部空間40xにより構成したことにより、更に以下の効果を奏する。
【0079】
すなわち、本体部40は、上記の構成を備えたことにより壁体が肉薄になるとともに開断面を形成することで、
図5(b)~(d)に示した中心軸CAに直交する平面上において可撓性を備え、横断面形状が一定の復元力を有する程度に変形し易くなっている。これにより、
図7(a)の平面図及び
図7(a)のA-A断面図である
図7(b)に示すように、図中破線で示す本体部40は、横断面形状においてはペン芯4への装着前において、ペン芯4の横幅以上の幅広となる楕円状、長円状、その他任意の形状とするとともに、
図7(b)に示すように、先端10Tが中心軸CAから離れる向きに屈曲又は湾曲して反り返った形状とすることができる。
【0080】
そして、本体部40はペン先5のペン本体51の凹面との接触面CSを形成する際に、凹面の形状に追従するよう、幅狭且つ先端10Tの反りが復元して中心軸CAに向かって変形することで、本体部10は一定の弾性をもってペン本体51に圧接することとなる。これにより、ペン芯4とペン先5の接触面CSにおける密着性が向上して、ペン先からのインクの吐出量を安定化することが可能となり、ひいては筆記時におけるペン先との接触面CSの安定性を高めて、ペン先5の筆記具としての書き心地、描線の品質を向上させることが可能となる。
【0081】
更に、本体部40において結合端41の近傍は、内部空間40xが端面42により部分的に閉塞されることにより、中心軸CAに直交する平面上における可撓性が
図7(b)(c)に示した他の部分より小さくなり、変形しにくくなっている。これにより、インク収容体3への嵌合状態を良好に保ち、ペン芯4とペン先5の接触面CSにおける密着性を向上させつつ、インク漏れを抑制して、信頼性の高い筆記具を得ることが可能となる。
【0082】
更に、インク収容体3の収容本体31の開口31yに隣接する開口としてスリット状の端面スリット42aを設けたことにより、内部空間40xへのインクの漏出を抑制して、筆記時のインク漏れの恐れを軽減した、信頼性の高い筆記具を得ることが可能となる。
【0083】
なお、
図7(a)及び(b)に示す本体部40の形状は、ペン芯4の製造時において予め得られるものであってもよいし、製造時において
図7(c)に示す接触面CSを形成可能な形状であったものを、使用者側の操作による変形にて得られるものとしてもよい。特に後者とした場合、ペン先5の状態に応じて筆記時のインクの吐出量を使用者側にて調節して描線の特性を調整することが可能となり、特に美術用途に好適な筆記具を得ることが可能となる。
【0084】
また、
図7(a)~(c)に示す構成は実施の形態1のペン芯1に対して適用してもよく、同様の効果を奏する。更に、ペン先の保持構造200は、ペン先5のペン本体51の後端5Eがパッキン32に接触した状態でペン先5を含めて一体的に結合されるものとしたが、後端5Eはパッキン32から離隔した状態でペン先5を含めて一体的に結合されるものとしてもよい。
【0085】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3は、上記各実施の形態のペン芯1又は4を、ペン先とともに万年筆用のコンバータ又はインクカートリッジとしてのインク収容体と結合するためのペン先の保持構造である。
【0086】
以下、
図8(a)(b)を参照して説明を行う。
図8の各図は
図3、
図5に対応して、ペン芯1の中心軸CA及び凹溝10bを通る平面による、本実施の形態3のペン先の保持構造の要部を示す断面図である。ただし、ペン芯1及びペン先2は断面ではなく表面を示した。
【0087】
図8(a)に示すように、本実施の形態3のペン先の保持構造300は、実施の形態1のペン芯1とコンバータに例示されるインク収容体6と結合する中間コネクタ7とを備える。
【0088】
インク収容体6は、インクを収容する略円筒形状の収容空間60xを内部に有する略円筒形状の収容本体60を備えるとともに、インクの供給口となる開口60yは収容本体60と同軸であって外径がより小さい開口端61を形成することで外形に段差を有し、そのままではペン先2の嵌合部22には嵌合しない。
【0089】
中間コネクタ7は、ペン芯1の本体部10と同様外形略円筒形状の樹脂製又は金属製の材料により作成される本体部70を主要な構成として備え、本体部70内には、延出方向に沿って形成されたペン芯1の結合端11の外径以下の外径を有する内周面71が形成される。内周面71の両端の開口において、インク収容体6に接続される一端はインク収容体6の開口端61の形状に対応した外径を有するとともに開口端61を嵌合させてこれと接触する内筒端72が形成される。また、ペン先2に接続される他端はペン先2の嵌合部22を嵌合させるとともに後端2Eを接触させる内筒端73が形成される。
【0090】
これにより、インク収容体6とペン芯1及びペン先2とは、間に中間コネクタ7を介して、本体部70の内周面71にペン芯の結合端11が嵌合し、収容本体60の開口端61が内筒端72に嵌合するとともに、ペン先2の嵌合部22が内筒端73に接触した状態で、ペン先2を含めて一体的に結合されて、ペン先の保持構造300を構成している。
【0091】
ペン先の保持構造300においても、実施の形態1のペン先の保持構造100と同様、ペン先2とペン芯1とは、図示しない本体部10の延出方向に沿って所望の位置に位置決めした状態にて嵌合した状態で、中間コネクタ7に更に嵌合する。
【0092】
これにより、インク収容体6からペン先2へのインクの供給量を適正化し、筆記中におけるペン芯1とペン先2との接触面の状態を最適化してインクの吐出量を安定化するとともに、筆圧に起因するペン先2の軸方向に沿った移動を内筒端73との干渉により規制させて、筆記状態を安定させ、書き心地及び描線の品質を向上させた筆記具を、簡易な構成及び組立にて実現することが可能となる。また、実施の形態1のペン先の保持構造100と同様、ペン芯1とペン先2の着脱は本体部10の中心軸CAに沿った挿抜に基づく嵌合という簡易な組立操作で行うことができ、使用者側でペン先2の交換やペン芯1の洗浄等のメンテナンスが容易であって、適用できるインクの色、種類が広汎な、特に絵画等の美術用途に好適な筆記具を得ることが可能となる。
【0093】
次に、
図8(b)に示すように、本実施の形態3の他の例であるペン先の保持構造400は、実施の形態1のペン芯1とコンバータに例示されるインク収容体8とを結合する中間コネクタ9とを備える。
【0094】
インク収容体8は、インクを収容する略円筒形状の収容空間80xを内部に有する略円筒形状の収容本体80を備えるとともに、インクの供給口となる開口80yは収容空間80xと同軸であって外径がペン先2及びペン芯1のそれぞれの外径より大きい開口端81を形成することで内周側の輪郭に段差を有しており、そのままではペン先2の嵌合部22には嵌合しない。
【0095】
中間コネクタ9は、ペン芯1の本体部10と同様、外形略円筒形状の樹脂製又は金属製の材料により作成される本体部90を主要な構成として備え、本体部90内には、延出方向に沿って形成されたペン芯1の結合端11の外径以下の内径を有する内周面91が形成される。本体部90の、インク収容体8に接続される一端はインク収容体6の開口端81の形状に対応した外径を有するとともに開口端81に嵌合してこれと接触する端面92を有する。また、ペン先2に接続される他端は、ペン先2の嵌合部22を嵌合させるとともに後端2Eを接触させる内筒端93が形成される。
【0096】
これにより、インク収容体8とペン芯1及びペン先2とは、間に中間コネクタ9を介して、本体部90の内周面91にペン芯の結合端11が嵌合し、収容本体80の開口端81が端面92に嵌合するとともに、ペン先2の嵌合部22が内筒端93に接触した状態で、ペン先2を含めて一体的に結合されて、ペン先の保持構造400を構成している。
【0097】
このような構成においても、ペン先2とペン芯1とは、図示しない本体部10の延出方向に沿って所望の位置に位置決めした状態にて嵌合した状態で、中間コネクタ9に更に嵌合して、
図8(a)に示すペン先の保持構造300と各々同様の効果を奏する。
【0098】
次に、
図8(c)に示すように、本実施の形態3の他の例であるペン先の保持構造300Aは、実施の形態1のペン芯1とコンバータに例示されるインク収容体6Aとを結合する中間コネクタ7Aとを備える。
【0099】
インク収容体6Aは、インクを収容する略円筒形状の収容空間60Axを内部に有する略円筒形状の収容本体60Aを備えるとともに、インクの供給口となる開口60Ayはペン先2及びペン芯1のそれぞれの外径より小さい開口端61Aに連通しており、そのままではペン先2の嵌合部22には嵌合しない。
【0100】
中間コネクタ7Aは、ペン芯1の本体部10と同様、外形略円筒形状の樹脂製又は金属製の材料により作成される本体部70Aを主要な構成として備え、本体部70A内には、延出方向に沿って形成されたペン芯1の結合端11の外径以下の外径を有する内周面71Aが形成される。本体部70Aの、インク収容体6Aに接続される一端はインク収容体6Aの開口60Ayの内径に対応した外径を有するとともに開口60Ayに嵌合する嵌合端72Aを形成する。また、ペン先2に接続される他端は、ペン先2の嵌合部22を嵌合させるとともに後端2Eを接触させる内筒端73Aが形成される。なお、嵌合端72Aの内周面74Aと本体部70Aの内周面71Aとは同軸に配列され段差が形成される。
【0101】
これにより、インク収容体6Aとペン芯1及びペン先2とは、間に中間コネクタ7Aを介して、本体部70Aの内周面71Aにペン芯の結合端11が嵌合し、インク収容体6Aの開口端61Aに本体部70Aが接触した状態で収容本体60Aの開口60Ayに中間コネクタ7Aの嵌合端72Aが嵌合し、更にペン先2の嵌合部22が内筒端73Aに接触した状態で、ペン先2を含めて一体的に結合されて、ペン先の保持構造300Aを構成している。
【0102】
このような構成においても、ペン先2とペン芯1とは、図示しない本体部10の延出方向に沿って所望の位置に位置決めした状態にて嵌合した状態で、中間コネクタ7Aに更に嵌合して、
図8(a)に示すペン先の保持構造300と各々同様の効果を奏する。
【0103】
更に、中間コネクタ7、7A及び9はインク収容体6、6A及び8とそれぞれ別部材としたことにより、インク収容体6、6A、8と結合する端部の形状及び寸法を、インク収容体6、6A、8の開口60y、60Ay、80yの近傍の形状及び寸法に適合するように定めることができる。これにより、端面形状や内径が互いに大小の異なりがあってそのままではペン芯1が嵌合できない市販のコンバータ又はインクカートリッジに対してペン芯1を嵌合可能な形状、寸法とすることができ、本発明のペン芯を適用した筆記具を容易に得ることが可能となる。更に、本実施の形態3のペン先の保持機構300、400、500によれば、ペン芯、ペン先及び中間コネクタを一体化した状態で別部品であるインク収容体に脱着自在に結合させることができる。これにより、インク収容体を交換する際にペン芯及びペン先の位置合わせにずれを生ずることがなく、書き心地や描線の特性が損なわれることのない、信頼性の高い筆記具を得ることが出来る。なお、中間コネクタ7、7A及び9は本発明の結合部に相当する。
【0104】
一方、実施の形態1又は2のインク収容体3のように、本発明の結合部をインク収容体と一体的に構成した場合は、部品点数及び結合部分の点数が省略され、筆記具を簡易な構成にて実現するとともに、インク漏れの恐れを軽減して信頼性を向上させることが可能となる。
【0105】
なお、上記の説明においては、実施の形態1のペン芯1に基づく構成として説明を行ったが、本実施の形態3は、実施の形態2のペン芯4において適用してもよく、同様の効果を奏する。
【0106】
以上のように、本発明は、各実施の形態を参照して説明したように、つけペンとしてペンホルダに装着して用いられる丸ペンやGペンに例示されるペン先に組み合わせることで、当該ペン先を万年筆用のコンバータ又はインクカートリッジに例示されるインク収容体と組み合わせた筆記具を実現する。これにより、例えば美術用途に用いられるつけペンのペン先を長時間連続した筆記に好適化することが可能となる効果を奏する。
【0107】
(その他の実施の形態)
しかしながら、本発明は上記の各実施の形態により限定されるものではない。
【0108】
上記の説明においては、本発明の支持軸体に相当する、ペン芯1の本体部10は、外形略円筒形状の部材であるとしたが、
図9(a)に示すように、接触面CSに対応する凹溝10bが含まれた側面において、先端10Tが中心軸CAから離れる向きに湾曲又は屈曲した構成であるとしてもよい。これにより、実施の形態2のペン芯4と同様、ペン芯1の先端10Tを含めた接触面CS及びその近傍は、弾性的にペン先に圧接する。したがって、ペン先との接触面CSの密着性を高めてペン先からのインク漏れを抑制して、信頼性の高い筆記具を得ることが可能となる。
【0109】
更に、上記の説明においては、本発明の支持軸体の空洞は、ペン芯1又は4の本体部10又は40の内部空間10x又は40xとして本体部10の外形に沿った空洞として構成され、開口12aと連通する又は端面スリット42aが形成された端面42に閉塞されるものであるとしたが、
図9(b)に示すように、結合端11上の開口12b及び先端10T側の開口10aと連通する管状の連通路10yとして構成してもよい。特に、連通路10yは開口10aから開口12bに向かって内径が漸減する構成としたことにより、本体部10において先端10T近傍の壁体が他の部分に比して肉薄となり、ペン先と面接触した状態を保ちつつ、筆圧に追従して湾曲し易くなる。
【0110】
これにより、筆記時におけるペン先との接触面CSの安定性を高めて、書き心地及び描線の品質を向上させた筆記具を得ることが可能となる。なお、連通路10yは内径が一様な構成であるとしてもよい。
【0111】
更に、上記の説明においては、本体部40の内部空間40xと連通する側面スリット40cは、等幅であるとしたが、
図9(c)に示すように、開口40aに向かって幅広に変化する構成としてもよい。これにより、本体部10とペン本体51との接触部分、特に孔部51x及び切り割り51yの近傍との接触部分がより変形しやすくなり、筆記時におけるペン先との接触面CSの密着度を高めて、書き心地及び描線の品質を向上させた筆記具を得ることが可能となる。
【0112】
なお、
図9(a)~(c)の構成は、それぞれ単独又は任意の組合せで、実施の形態1のペン芯1及び実施の形態2のペン芯4のいずれに適用してもよい。
【0113】
更に、上記の説明においては、本発明の複数の連通路は、支持軸体上の溝部としての凹溝10b(40b)及び本体部10(40)内に形成された内部空間10x(40x)、開口10a(40a)、開口12a(端面スリット42a)からなる経路であるとしたが、結合端がインク収容体と結合した状態で収容空間と外部とを連通させることができれば、その本数及び具体的な態様に限定されない。例えば、外気の大気圧とインク収容体の収容空間内の圧力を同一圧に保つための連通路も本体部10(40)の側面に形成した溝としてもよいし、インクをペン先2(4)に導くための溝の本数も複数であってよい。更に、上記の説明においては、凹溝10b(40b)は、本体部10(40)の先端10T(40T)まで達するものとしたが、ペン先2(5)との結合時にペン先のスリットの縁としての孔部21x(51x)又は切り割り21y(51y)に重なっていれば、本体部10(40)の先端10T(40T)まで達しない長さを有するものであってもよい。
【0114】
更に、上記の説明においては、端面42は端面スリット42aにより内部空間10xと外部とを連通させる構成であるであるとしたが、任意形状の開口を設けるようにしてもよい。
【0115】
更に、上記の説明においては、本発明のペン先は、丸ペン又はGペンであるとしたが、本発明のペン先としては、カブラペン、スクールペンその他、ペン芯の支持軸体の接触面に脱着自在に面接触することができれば、任意の種類のペン先であってよい。
【0116】
更に、上記の説明においては、本発明のペン先の保持構造は、ペン先の保持構造100、200、300、300A、400、として構成され、ペン先とペン芯とは、支持軸体としての本体部10、40の延出方向に沿って、所望の位置に調節して位置決めすることが可能な状態、且つペン先の後端が結合部としてのパッキン32又は中間コネクタ7の内筒端73と接触する構成であるとしたが、
図10(a)に示すペン先の保持構造500のように、インク収容体8Aが段差を有さない一様な内周面81Aにより形成された収容空間80Axを有する収容本体80Aにより構成される場合においては、ペン先2の嵌合部22を直接開口80Ayに嵌合させる構成としてもよい。
【0117】
更に、
図10(b)に示すペン先の保持構造600のように、インク収容体8Bが内周面81B内にパッキン81Cを設けることによって段差が形成された収容空間80Bxを有する収容本体80Bにより構成される場合においては、ペン先2の嵌合部22を直接パッキン81Cに嵌合させる構成としてもよい。
【0118】
これらの構成の場合、ペン芯1の結合端11はインク収容体8に間接的に結合される態様となり、より簡易にペン先を筆記具とすることができる。更に、本構成によれば、ペン芯1とペン先2とを一体化して結合した状態を保ちつつ、嵌合後もペン先2を収容空間80x内で移動させることができる。これによりペン先2の先端2Tの位置を調節することができ、使用者の個性に応じた書き心地を与える、特に美術用途に好適な筆記具を得ることが可能となる。
【0119】
更に、ペン先の保持構造500及び600の結合部の構成は、インク収容体の開口近傍の構成のみならず、実施の形態3の中間コネクタ7及び9に例示される、インク収容体とは別部品である結合部に対して適用するものとしてよい。
【0120】
更に、
図10(b)のインク収容体8Bは別部品としてのパッキン81C、更には実施の形態1及び2のインク収容体3は収容本体31内に別部品としてのパッキン32を備える構成としたが、ペン芯の後端が接触するための開口近傍の段差、あるいはペン先が嵌合するための同軸にて内径が異なる内周面の形状は、インク収容体の内壁の形状としてインク収容体と一体化した構成として実現してもよい。
【0121】
更に、パッキン32、81C等のパッキンは収容空間の延出方向に沿って離隔して複数設ける構成としてもよい。これにより、複数のパッキンの間にインクを溜め込ませてインク漏れを抑制することが可能となる。また、パッキンと同様の形状を有する凸部をインク収容体の内周面から離隔して複数設けるようにしてもよく、同様の効果が得られる。
【0122】
要するに、本発明のペン芯の保持構造は、ペン芯とペン先とインク収容体とを結合できればよく、その他の具体的な構成によって限定されるものではない。
【0123】
更に、上記の説明においては、本発明のペン芯又はペン先の
保持構造の例示として説明を行ったが、本発明は、本発明のペン芯又はペン先の
保持構造を備えたペンホルダとして実現してもよい。例として、
図11(a)には、ペン先2に組み合わされたインク収容体3を内部に着脱自在に収容可能な胴軸111を備えたペンホルダ110を示した。なお、インク収容体3は予め同軸111内に含まれない態様であるとしてもよい。また、同軸111が収容空間を有するインク収容体と兼用された構成であるとしてもよい。
【0124】
これにより、形状や描線の特性に異なりのある種々のペン先、更には色や種類の異なるインクを収容するインク収容体を選択的に装着して使用できる、汎用性の高い筆記具を得ることが可能となる。
【0125】
更に、本発明は、本発明のペン芯又はペン先の
保持構造を備えた筆記具として実現してもよい。例として、
図11(b)には、ペン先2及びペン芯1に組み合わされたインク収容体3を内部に収容可能な胴軸121及び、図中矢印D方向に沿ってペン先2側から同軸121に装着される、ペン先2の保護及び乾燥防止のためのキャップ122を備えた万年筆類似の筆記具120を示した。
【0126】
これにより、例えば美術用途に用いられるつけペンのペン先を長時間連続した筆記に好適化することが可能となる。更に、形状や描線の特性に異なりのある種々のペン先、更には色や種類の異なるインクを収容するインク収容体を選択的に装着して使用できる、汎用性の高い筆記具を得ることが可能となる。
【0127】
要するに、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内であれば、以上説明したもの及びその任意の組み合わせを含め、上記実施の形態に種々の変更を加えたものとして実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0128】
以上のような本発明は、例えば美術用途に用いられるつけペンのペン先を長時間連続した筆記に好適化することが可能になるというという効果を奏し、例えばペン芯、ペン先の保持構造、並びにそれらを用いたペンホルダ及び筆記具において有用である。
【符号の説明】
【0129】
1、4 ペン芯
2、5 ペン先
3、6、8 インク収容体
7、8 中間コネクタ
10、40、70、90 本体部
2E、5E、10E 後端
2T、5T、10T、40T 先端
10a、12a、12b、31y、40a、60y、80y 開口
10b、40b 凹溝
10c、40c 側面スリット
10x、40x 内部空間
10y 連通路
11、41 結合端
42、92 端面
42a 端面スリット
21、51 ペン本体
21x、51x 孔部
21y、51y 切り割り
22 嵌合部
31、60、80 収容本体
31x、60x、80x 収容空間
32 パッキン
61、81 開口端
31z、71、81、91 内周面
72、73、93 内筒端
100、200、300、400、500 ペン先の保持構造
110 ペンホルダ
111、121 胴軸
120 筆記具