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特許7021015地熱バイナリ発電システムとその運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】地熱バイナリ発電システムとその運転方法
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/10 20060101AFI20220208BHJP
   F01K 3/02 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
F01K25/10 W
F01K3/02 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018126139
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020002941
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 千人
(72)【発明者】
【氏名】沖田 信雄
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-145811(JP,A)
【文献】特開平06-147653(JP,A)
【文献】特開昭62-096704(JP,A)
【文献】特開2014-047422(JP,A)
【文献】特開昭50-133358(JP,A)
【文献】特開2014-092040(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0068325(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 23/00-27/02
F01K 1/00; 3/00
F03G 4/00
F24T 10/00
F24T 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地熱生産井から取り出される蒸気および熱水の二相流を取り出す地熱水供給配管と、
前記地熱水供給配管から供給される蒸気および熱水の二相流を受け入れて二相状態で貯留する混合器と、
前記混合器から熱水を取り出す熱水配管と、
前記熱水配管を通じて前記混合器から取り出される熱水を熱源として水よりも低沸点の媒体を加熱して前記媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器で放熱した前記熱水の一部を前記混合器に戻す熱水戻し配管と、
前記蒸発器で放熱した前記熱水の一部を前記混合器に戻さずに還元井に還元する還元配管と、
前記蒸発器で加熱されて蒸発した媒体によって駆動されるタービンと、
前記タービンによって駆動される発電機と、
前記タービンで仕事をした後の媒体を前記蒸発器に戻す媒体戻し配管と、
前記混合器内の水位を計測する水位計と、
前記還元配管に設けられた還元水量調節弁と、
前記水位計で計測された前記混合器内の水位が所定の水位範囲に入るように前記還元水量調節弁の開度を調節する還元水量調節弁制御部と、
を有すること、を特徴とする地熱バイナリ発電システム。
【請求項2】
前記混合器内の圧力を計測する圧力計と、
前記地熱水供給配管に設けられた地熱水供給調節弁と、
前記圧力計で計測された前記混合器内の圧力が所定の圧力範囲に入るように前記地熱水供給調節弁の開度を調節する地熱水供給調節弁制御部と、
を有すること、を特徴とする請求項1に記載の地熱バイナリ発電システム。
【請求項3】
地熱生産井から取り出される蒸気および熱水の二相流を取り出す地熱水供給配管と、
前記地熱水供給配管から供給される蒸気および熱水の二相流を受け入れて二相状態で貯留する混合器と、
前記混合器から熱水を取り出す熱水配管と、
前記熱水配管を通じて前記混合器から取り出される熱水を熱源として水よりも低沸点の媒体を加熱して前記媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器で放熱した前記熱水の一部を前記混合器に戻す熱水戻し配管と、
前記蒸発器で放熱した前記熱水の一部を前記混合器に戻さずに還元井に還元する還元配管と、
前記蒸発器で加熱されて蒸発した媒体によって駆動されるタービンと、
前記タービンによって駆動される発電機と、
前記タービンで仕事をした後の媒体を前記蒸発器に戻す媒体戻し配管と、
前記混合器内の圧力を計測する圧力計と、
前記地熱水供給配管に設けられた地熱水供給調節弁と、
前記圧力計で計測された前記混合器内の圧力が所定の圧力範囲に入るように前記地熱水供給調節弁の開度を調節する地熱水供給調節弁制御部と、
を有すること、を特徴とする地熱バイナリ発電システム。
【請求項4】
前記地熱水供給調節弁よりも上流側で前記地熱水供給配管から分岐して前記還元配管に接続された還元配管加熱水配管と、
前記還元配管加熱水配管に設けられた還元配管加熱水弁と、
前記還元配管内の温度を計測する温度計と、
前記温度計で計測された前記還元配管内の温度が所定の温度よりも低下した時に前記還元配管加熱水弁を開くように制御する還元配管加熱水弁制御部と、
をさらに有すること、を特徴とする請求項2または3に記載の地熱バイナリ発電システム。
【請求項5】
前記還元配管加熱水弁制御部は、前記温度計で計測された前記還元配管内の温度が所定の温度範囲に入るように前記還元配管加熱水弁を制御するものであること、を特徴とする請求項4に記載の地熱バイナリ発電システム。
【請求項6】
前記蒸発器で放熱した後の前記熱水の余熱を利用して前記蒸発器に送られる前の前記媒体を予熱する予熱器をさらに有すること、を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の地熱バイナリ発電システム。
【請求項7】
前記熱水配管に設けられた熱水ポンプをさらに有すること、を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の地熱バイナリ発電システム。
【請求項8】
前記タービンで仕事をした後の前記媒体を凝縮させる凝縮器と、
前記媒体戻し配管に設けられて、前記凝縮器で凝縮した前記媒体を昇圧して前記蒸発器に送る媒体ポンプと、
をさらに有すること、を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の地熱バイナリ発電システム。
【請求項9】
地熱生産井から取り出される蒸気および熱水の二相流を取り出す地熱水供給配管と、
前記地熱水供給配管から供給される蒸気および熱水の二相流を受け入れて二相状態で貯留する混合器と、
前記混合器から熱水を取り出す熱水配管と、
前記熱水配管を通じて前記混合器から取り出される熱水を熱源として水よりも低沸点の媒体を加熱して前記媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器で放熱した前記熱水の一部を前記混合器に戻す熱水戻し配管と、
前記蒸発器で放熱した前記熱水の一部を前記混合器に戻さずに還元井に還元する還元配管と、
前記蒸発器で加熱されて蒸発した媒体によって駆動されるタービンと、
前記タービンによって駆動される発電機と、
前記タービンで仕事をした後の媒体を前記蒸発器に戻す媒体戻し配管と、
前記還元配管に設けられた還元水量調節弁と、
を有する地熱バイナリ発電システムの運転方法であって、
前記混合器内の水位を計測する水位計測ステップと、
前記水位計測ステップで計測される前記混合器内の水位が所定の水位範囲に入るように前記還元水量調節弁の開度を調節する還元水量調節弁開度調節ステップと、
を有すること、を特徴とする地熱バイナリ発電システム運転方法。
【請求項10】
地熱生産井から取り出される蒸気および熱水の二相流を取り出す地熱水供給配管と、
前記地熱水供給配管から供給される蒸気および熱水の二相流を受け入れて二相状態で貯留する混合器と、
前記混合器から熱水を取り出す熱水配管と、
前記熱水配管を通じて前記混合器から取り出される熱水を熱源として水よりも低沸点の媒体を加熱して前記媒体を蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器で放熱した前記熱水の一部を前記混合器に戻す熱水戻し配管と、
前記蒸発器で放熱した前記熱水の一部を前記混合器に戻さずに還元井に還元する還元配管と、
前記蒸発器で加熱されて蒸発した媒体によって駆動されるタービンと、
前記タービンによって駆動される発電機と、
前記タービンで仕事をした後の媒体を前記蒸発器に戻す媒体戻し配管と、
前記還元配管に設けられた還元水量調節弁と、
前記地熱水供給配管に設けられた地熱水供給調節弁と
を有する地熱バイナリ発電システムの運転方法であって、
前記混合器内の圧力を計測する圧力計測ステップと、
前記圧力計測ステップで計測された前記混合器内の圧力が所定の圧力範囲に入るように前記地熱水供給調節弁の開度を調節する地熱水供給調節弁開度調節ステップと、
を有する熱バイナリ発電システム運転方法。
【請求項11】
請求項10に記載の地熱バイナリ発電システム運転方法であって、
前記地熱バイナリ発電システムは、
前記地熱水供給調節弁よりも上流側で前記地熱水供給配管から分岐して前記還元配管に接続された還元配管加熱水配管と、
前記還元配管加熱水配管に設けられた還元配管加熱水弁と、
をさらに有し、
当該地熱バイナリ発電システム運転方法は、
前記還元配管内の温度を計測する温度する還元配管内温度計測ステップと、
前記還元配管内温度計測ステップで計測された前記還元配管内の温度が所定の温度よりも低下した時に前記還元配管加熱水弁を開く還元配管加熱水弁開ステップと、
をさらに有すること、を特徴とする地熱バイナリ発電システム運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、地熱を熱源とするバイナリ発電サイクルのシステムとその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地熱発電は熱源となる地熱貯留層から蒸気や熱水を取り出し、取り出した熱を利用してタービンを稼動させ電力を得る発電方法である。地熱発電は、熱源の温度により、高温域の熱源の場合に採用される蒸気直接発電方式と、低温域の熱源の場合に採用されるバイナリサイクル方式に大別される。
【0003】
バイナリサイクル方式はさらに、熱源の性状(熱水単相流か、また、熱水と蒸気の二相流の場合の蒸気乾き度等)により発電サイクルが選定される。
【0004】
ここで熱源の性状が熱水と蒸気が混じりあう二相流である場合、発生した二相流は汽水分離器により蒸気と熱水に分離され、分離された蒸気を蒸発器で、熱水を予熱器で、それぞれ発電タービンの動力となる低沸点媒体と熱交換を行なわせ、熱交換により蒸発した低沸点媒体をもって発電を行なう方法などが知られている。なお、従来技術において、低沸点媒体との熱交換を終えた低温の熱水は直接還元井へ送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5763495号公報
【文献】特許第5563854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二相流を熱源とする公知の技術においては、生産井から発生する二相流の流量および圧力の自然変動に対応できる汽水分離器を設計製作する必要がある。さらに、汽水分離器から発生する蒸発量および圧力は二相流の状態変化によって大きく変動する。すなわち蒸発器に流入する蒸気の流量と圧力が大きく変動することにより、発電出力が安定しない問題がある。また、その変動を許容する機器や配管、計器等の設計製作が求められることから、プラント建設時の機器設備費増加が問題となっている。
【0007】
また、従来のバイナリ発電サイクルの場合には、熱交換を行った後に地下に還元する熱水の温度が低いために、地熱水中に含まれるシリカの溶解度が下がり、還元井にシリカスケールが発生しやすい。還元井が閉塞するとプラントの停止に直結することから、シリカスケールの問題はバイナリサイクル方式の最も大きなリスクの一つと考えられる。この課題の解決のため、従来技術では、シリカスケールの防止に薬注システムによる熱水のPHコントロール等の対応が行なわれており、ゆえにプラントの機器設備費や運転費の増加へとつながっている。
【0008】
本発明の実施形態は、地熱を利用するバイナリ発電サイクルにおいて、出力変動が少なく、コンパクトな設備を提供可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る地熱バイナリ発電システムは、地熱生産井から取り出される蒸気および熱水の二相流を取り出す地熱水供給配管と、前記地熱水供給配管から供給される蒸気および熱水の二相流を受け入れて二相状態で貯留する混合器と、前記混合器から熱水を取り出す熱水配管と、前記熱水配管を通じて前記混合器から取り出される熱水を熱源として水よりも低沸点の媒体を加熱して前記媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で放熱した前記熱水の一部を前記混合器に戻す熱水戻し配管と、前記蒸発器で放熱した前記熱水の一部を前記混合器に戻さずに還元井に還元する還元配管と、前記蒸発器で加熱されて蒸発した媒体によって駆動されるタービンと、前記タービンによって駆動される発電機と、前記タービンで仕事をした後の媒体を前記蒸発器に戻す媒体戻し配管と、前記混合器内の水位を計測する水位計と、前記還元配管に設けられた還元水量調節弁と、前記水位計で計測された前記混合器内の水位が所定の水位範囲に入るように前記還元水量調節弁の開度を調節する還元水量調節弁制御部と、を有すること、を特徴とする。
【0010】
本発明の実施形態に係る地熱バイナリ発電システム運転方法は、地熱生産井から取り出される蒸気および熱水の二相流を取り出す地熱水供給配管と、前記地熱水供給配管から供給される蒸気および熱水の二相流を受け入れて二相状態で貯留する混合器と、前記混合器から熱水を取り出す熱水配管と、前記熱水配管を通じて前記混合器から取り出される熱水を熱源として水よりも低沸点の媒体を加熱して前記媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で放熱した前記熱水の一部を前記混合器に戻す熱水戻し配管と、前記蒸発器で放熱した前記熱水の一部を前記混合器に戻さずに還元井に還元する還元配管と、前記蒸発器で加熱されて蒸発した媒体によって駆動されるタービンと、前記タービンによって駆動される発電機と、前記タービンで仕事をした後の媒体を前記蒸発器に戻す媒体戻し配管と、前記還元配管に設けられた還元水量調節弁と、を有する地熱バイナリ発電システムの運転方法であって、前記混合器内の水位を計測する水位計測ステップと、前記水位計測ステップで計測される前記混合器内の水位が所定の水位範囲に入るように前記還元水量調節弁の開度を調節する還元水量調節弁開度調節ステップと、を有すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、地熱を利用するバイナリ発電サイクルにおいて、出力変動が少なく、コンパクトな設備を提供可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る地熱バイナリ発電システムの構成を示す系統図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る地熱バイナリ発電システムの構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る地熱バイナリ発電システムおよびその方法の実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る地熱バイナリ発電システムの構成を示す系統図である。
【0015】
この地熱バイナリ発電システム11は、生産井(地熱生産井)12から、蒸気および熱水からなる二相流を取り出してその熱を低沸点媒体に伝え、その低沸点媒体によってタービン13を回転させ、それによって発電機14を回転させるシステムである。なお、図1で、蒸気および熱水の系統の配管を実線で示し、低沸点媒体の系統の配管を破線で示している。また、信号線は二点鎖線で示している。
【0016】
生産井12から取り出された蒸気および熱水は、地熱水供給配管15を通じて混合器16に供給され、貯留される。地熱水供給配管15には地熱水供給調節弁40が配置されている。
【0017】
混合器16内に貯留された熱水は、熱水配管17を通じて蒸発器18に送られる。熱水配管17には熱水ポンプ19が設けられ、熱水配管17内の熱水が昇圧される。混合器16内は蒸気および熱水が混合状態にあり、熱水配管17を通じて混合器16から取り出される熱水はほぼ飽和水の状態である。
【0018】
蒸発器18は、熱水配管17を通じて供給される熱水を熱源として低沸点媒体を蒸発させる非混合型の熱交換器である。低沸点媒体は、水よりも沸点が低い媒体であって、たとえば、フロンやエチレンである。
【0019】
蒸発器18で蒸発した低沸点媒体によってタービン13が駆動され、タービン13によって発電機14が駆動される。
【0020】
タービン13で仕事をした後の低沸点媒体は、凝縮器21で凝縮して液化する。凝縮器21では、大気や冷却水などによって放熱する。凝縮器21で凝縮して液化した低沸点媒体は、媒体ポンプ22で昇圧され予熱器23へ送られる。予熱器23は、非混合型の熱交換器であって、蒸発器18で放熱した後の熱水の熱を低沸点媒体に伝えるものである。予熱器23で予熱された低沸点媒体は、媒体戻し配管20を経て蒸発器18へ送られる。
【0021】
混合器16から熱水配管17を通じて取り出された熱水は、熱水ポンプ19で昇圧された後に、蒸発器18および予熱器23で放熱して比較的低温になる。予熱器23を出た比較的低温の熱水は、予熱器23の下流側で分岐して、一部が熱水戻し配管24を通して混合器16に戻される。予熱器23の下流側で分岐した残りの熱水は、還元配管30を通して還元井31に戻される。還元配管30には、還元水量調節弁32が配置されている。
【0022】
混合器16の頂部にはガス放出管50が接続され、ガス放出管50にはガス放出弁51が設置されている。ガス放出管50の先端は大気に開放されている。ガス放出弁51は、通常時は閉じているが、混合器16内上部に腐食性不凝縮ガスなどの不凝縮ガスが溜まった時に開放して、混合器16内に不凝縮ガスが溜まらないようにする。
【0023】
混合器16内の水位を測定するために水位計45が設置され、混合器16内の圧力を測定するために圧力計46が設置されている。
【0024】
還元水量調節弁32の開度は、水位計45によって測定された混合器16内の水位がほぼ一定となるように、具体的にはその水位が所定の水位範囲内に入るように、還元水量調節弁制御部47によって制御される。たとえば、混合器16内の水位が所定の水位範囲よりも低い時は、還元水量調節弁32の開度を下げて、還元配管30を流れる熱水の流量を下げ、より多くの熱水を、熱水戻し配管24を通じて混合器16内に戻すことにより、混合器16内の水位が上昇するように制御する。このようにして、生産井12から供給される二相流の圧力や乾き度(蒸気の質量割合)の変動にかかわらず、混合器16内の水位をほぼ一定に保つことができる。
【0025】
地熱水供給調節弁40の開度は、圧力計46によって測定された混合器16内の圧力がほぼ一定となるように、具体的にはその圧力が所定の圧力範囲内に入るように、地熱水供給調節弁制御部48によって制御される。たとえば、混合器16内の圧力が所定の圧力範囲よりも低い時は、地熱水供給調節弁40の開度を上げて、地熱水供給配管15を通じて混合器16に供給される蒸気および熱水の流量を増やすことにより、混合器16内の圧力が上昇するように制御する。
【0026】
地熱水供給配管15の地熱水供給調節弁40よりも上流側からバイパス配管52が分岐し、バイパス配管52の先端は還元井31に導かれている。バイパス配管52の途中にはバイパス弁53が設けられている。バイパス弁53は通常時は閉じているが、生産井12から地熱水供給配管15を通じて供給される蒸気および熱水が異常に増加した場合などに、生産井12から供給される蒸気および熱水の一部または全部を、混合器16などを通さずに還元井31に戻すことができる。
【0027】
この実施形態によれば、地熱水供給調節弁40の開度を調整することにより、混合器16内の圧力がほぼ一定に保たれる。その結果、混合器16内の飽和温度はほぼ一定であり、蒸発器18に供給される熱水の温度がほぼ一定となる。それにより、生産井12から供給される二相流の圧力や乾き度の変動にかかわらず、発電機14の出力をほぼ一定に保つことができる。なお、発電需要の増大に応じて発電機14の出力を高めるためには、混合器16内の圧力の設定値を高めて飽和水温度を高めにすることもできる。
【0028】
この実施形態によれば、生産井12から供給される二相流の圧力や乾き度の変動にかかわらず、蒸発器18に供給される熱水の温度や流量を所望の値で安定させることができる。そのため、設計条件の範囲を比較的狭い範囲に限定した機器や配管、計器などの設計、製作、選定を行うことが可能となる。これにより、プラント建設時の機器設備費を低減することができる。また、発電出力が安定することから、電力系統の品質向上に寄与し、電力系統を安定化させるための設備コスト削減にも寄与する。
【0029】
また、ガス放出管50を通じて不凝縮ガスを排出することができるので、生産井12から供給される蒸気に含まれる硫化水素や二酸化炭素などの腐食性不凝縮ガスを取り除くことができる。そして、熱水が、循環するライン、すなわち、混合器16から、熱水配管17、熱水ポンプ19、蒸発器18、予熱器23、熱水戻し配管24を通って混合器16に戻る経路の各機器や配管で、硫化水素や二酸化炭素などの腐食性不凝縮ガスへの対応が不要であり、そのため、建設コストを削減することができる。
【0030】
なお、図1に示す例では、蒸発器18と予熱器23とを別個に設けるものとしたが、変形例として、蒸発器18と予熱器23とを一体化した構成とすることもできる。その場合は、たとえば、蒸発器18と予熱器23とを一体化したものを蒸発器と呼ぶこともできる。
【0031】
また、上記説明では、還元水量調節弁制御部47が、水位計45の出力に応じて還元水量調節弁32の開度を自動的に調整するものとしたが、変形例として、作業員が、水位計45の出力の表示を見ながら還元水量調節弁32の開度を手動で調整することもできる。
【0032】
同様に、上記説明では、地熱水供給調節弁制御部48が、圧力計46の出力に応じて地熱水供給調節弁40の開度を自動的に調整するものとしたが、変形例として、作業員が、圧力計46の出力の表示を見ながら地熱水供給調節弁40の開度を手動で調整することもできる。
【0033】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態に係る地熱バイナリ発電システムの構成を示す系統図である。
【0034】
この第2の実施形態は第1の実施形態の変形であって、還元配管30を通って還元井31に戻される還元水の温度が低い場合に還元井にシリカスケールが発生するのを防ぐために、還元配管加熱水配管60が設けられている。還元配管加熱水配管60は、地熱水供給配管15の途中の地熱水供給調節弁40よりも上流側から分岐して還元配管30に接続される。還元配管加熱水配管60には、還元配管加熱水弁61が設けられている。また、還元配管30内の還元水の温度を測定する温度計62が設置されている。さらに、温度計62の出力に応じて還元配管加熱水弁61を制御する還元配管加熱水弁制御部63が設けられている。
【0035】
その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0036】
温度計62で検出された還元配管30内の還元水の温度が所定の範囲よりも低下したとき、還元配管加熱水弁制御部63が還元配管加熱水弁61を開く。これにより、地熱水供給配管15を流れる蒸気および熱水の一部が加熱水配管60を通じて還元配管30内に流れ込む。これにより、還元配管30内の還元水の温度が上昇する。それにより、還元井31にシリカスケールが発生するのを防ぐことができる。
【0037】
この第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができるだけでなく、シリカスケールを防ぐための薬剤注入や定期的な洗浄などの対策が不要であり、シリカスケールに起因するプラント停止を避けることができる。
【0038】
ここで、地熱水供給配管15内を流れる蒸気および熱水の一部を、加熱水配管60を通じて還元配管30内に流すことは、地熱エネルギーの損失になる。そのため、加熱水配管60を流れる蒸気および熱水の流量は、還元井31でのシリカスケールを防ぐための最小限にすることが望ましい。そのためには、温度計62で検出される温度が適当な温度範囲に入るように還元配管加熱水弁61を制御するのが好ましい。
【0039】
なお、還元配管加熱水弁61は、流量調整弁でもよいし、流量調整を行わない開閉弁でもよい。
【0040】
また、還元配管加熱水弁61を還元配管加熱水弁制御部63によって自動で行う方法に代えて、操作員が温度計62の出力の表示を見て還元配管加熱水弁61を手動で操作してもよい。
【0041】
[他の実施形態]
上記第1および第2の実施形態の説明では、還元水量調節弁制御部47、地熱水供給調節弁制御部48および還元配管加熱水弁制御部63は別個に設けるものとしたが、ハードウェアとしては、これらの制御部をまとめて、1個の制御装置の各機能として組み込んでもよい。
【0042】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
11…地熱バイナリ発電システム、 12…生産井(地熱生産井)、 13…タービン、 14…発電機、 15…地熱水供給配管、 16…混合器、 17…熱水配管、 18…蒸発器、 19…熱水ポンプ、 20…媒体戻し配管、 21…凝縮器、 22…媒体ポンプ、 23…予熱器、 24…熱水戻し配管、 30…還元配管、 31…還元井、 32…還元水量調節弁、 40…地熱水供給調節弁、 45…水位計、 46…圧力計、 47…還元水量調節弁制御部、 48…地熱水供給調節弁制御部、 50…ガス放出管、 51…ガス放出弁、 52…バイパス配管、 53…バイパス弁、 60…還元配管加熱水配管、 61…還元配管加熱水弁、 62…温度計、 63…還元配管加熱水弁制御部
図1
図2