(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】多階式駐車装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
E04H6/18 610
(21)【出願番号】P 2018141881
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000227043
【氏名又は名称】日精株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100208672
【氏名又は名称】中島 愼一
(72)【発明者】
【氏名】米村 聖次
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-008584(JP,A)
【文献】特開2004-076266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーに駐車車両が入出庫される出入口階と、前記出入口階に対して上下方向に
形成されて床を有する複数の格納階と、を
有する多階式駐車装置であって、
前記複数の格納階のうち、上下方向に形成される2つの前記格納階において、下方の前記床に形成され、前記トレーを昇降する簡易油圧昇降装置が設けられる収納部と、上方の前記床に形成され、前記収納部に対応する位置に設けられる開口部と、を備え、
前記簡易油圧昇降装置は、リンク装置と、前記リンク装置の上部に設けられる上端台に対して係合又は離脱可能な昇降台と、前記昇降台の枠体の4辺にそれぞれ、リンクに接続され、前記枠体に対して外方に水平旋回して進退する複数の可動係合部を有し、
前記開口部は、前記複数の可動係合部に対応する位置に複数の固定側預け部を有し、
前記簡易油圧昇降装置は、伸張動作において、複数の前記可動係合部が前記枠体の範囲に退いた定常位置に位置した状態で前記開口部を上方に通過して停止するとともに、複数の前記可動係合部が旋回して前記枠体の外方に進出した預け位置に位置した状態で前記開口部を下方に通過する収納動作を行い、
前記簡易油圧昇降装置の動作により、前記昇降台は、複数の前記可動係合部が複数の前記固定側預け部に係止されて前記トレーの移動を可能とする高さに保持される
、
多階式駐車装置。
【請求項2】
前記昇降台に設けられるそれぞれのリンクは、該リンクの長手方向に分離される2本のリンク部材を有し、前記分離される位置で前記リンク部材の一方の端部が駆動モータに接続され、前記リンクの前記駆動モータと反対側の他方の端部に垂直方向に軸を有して前記可動係合部が設けられる、請求項1に記載の多階式駐車装置。
【請求項3】
前記出入口階と前記複数の格納階とは、前記簡易油圧昇降装置が配置される位置と異なる位置でリフト装置により連絡される、請求項1に記載の多階式駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の格納階間でトレーを搬送移動する簡易油圧昇降装置を備えた多階式駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多階式駐車装置として、特開2017-8584号公報(特許文献1)に記載された構成が知られている。この特許文献1には、出入口階に対して上下方向に複数の格納階を有し、前記出入口階と前記各格納階間に跨って昇降して駐車車両を搬送移動するリフト装置を設け、前記両格納階は、それぞれの床に複数の格納スペースを有すると共に、前記格納階毎の前記各格納スペース間をトレー駆動装置によって前記駐車車両を搭載した状態のトレーを移動可能に構成した多階式駐車装置において、一つの前記格納スペースの垂直投影面内に、前記トレー上に搭載された状態の前記駐車車両を上下方向に存在する前記格納階の一階床分だけ昇降移動させる簡易昇降装置を設けたことを特徴とする多階式駐車装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の多階式駐車装置では、簡易油圧昇降装置における油漏れが生じた場合、昇降台のレベルが変化してしまい、昇降台を利用した格納階でのトレーの移動ができなくなってしまう。これに対して、通常の油圧装置のように油漏れ発生時にレベル補正機構を作動させてレベル補正することも考えられるが、簡易油圧昇降装置やその制御系が複雑な構成になってしまう。
【0005】
本発明の目的は、簡易油圧昇降装置における油漏れが生じたとしても昇降台のレベルをレベル補正機構によって補正させることなく所定位置に保持することができるようにした多階式駐車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る多階式駐車装置は、出入口階に対して上下方向に複数の格納階を有し、前記両格納階は、それぞれの床に複数の格納スペースを有すると共に、前記格納階毎の前記各格納スペース間をトレー駆動装置によってトレーを移動可能に構成し、下方に位置した前記格納階における前記格納スペースのうちの一つの垂直投影面内に収納部を形成し、前記収納部のほぼ真上に位置した上方に位置した前記格納階における床に開口部を形成し、前記収納部に配置されて伸張状態では前記開口部から迎え入れられて上方に位置した前記格納階における前記格納スペース間で前記トレーの移動を可能とする高さに保持される昇降台を有すると共に、同じ前記格納スペースの前記垂直投影面内で収納動作および伸張動作する簡易油圧昇降装置を設けた多階式駐車装置において、前記簡易油圧昇降装置に、上方に位置した前記格納階における前記床へ前記昇降台を預けて釈放可能に保持させるための預け装置と、前記昇降台を搭載した状態で伸張収縮移動可能で、かつ、前記昇降台を前記預け装置に預けた状態で下方の収納方向に一定距離だけ下降可能な上端台と、前記預け装置によって前記昇降台を預けた状態で前記上端台を下方の収納方向に一定距離だけ下降させる下降分離機能を設けたことを特徴とする。
【0007】
第1態様に係る多階式駐車装置によれば、預け装置によって昇降台を預けた状態では、上方に位置した格納階の各格納スペース間をトレー駆動装置によってトレーを確実に移動可能になるようなレベルに昇降台を確実に保持することができ、しかも、昇降台を所定位置に残したまま上端台を下方の収納方向に一定距離だけ下降させることができるので、簡易油圧昇降装置における油漏れが生じたときに昇降台のレベルを保持させるために特別なレベル補正機構を設ける必要がなくなり、構成を簡略化することができる。
【0008】
第2態様に係る多階式駐車装置は、第1態様に係る多階式駐車装置において、前記簡易油圧昇降装置は、前記昇降台を前記床側の所定位置よりも多少上方に保持する上端位置保持機能を有して構成したことを特徴とする。
【0009】
第2態様に係る多階式駐車装置によれば、上端位置保持機能によって昇降台を床側の所定位置よりも多少上方に保持している状態で、預け装置に追加された動作、つまり床へ昇降台を預けるための動作と、釈放するための動作を行うことができるので、預け装置の動作を円滑に、かつ、確実に行うことができる。
【0010】
第3態様に係る多階式駐車装置は、第1態様に係る多階式駐車装置において、前記預け装置は、預け位置へと駆動される複数の可動係合部と、預け位置の前記可動係合部を搭載して受ける複数の固定側預け部を有して構成し、前記簡易油圧昇降装置は、前記昇降台を前記床側の所定位置よりも多少上方に保持させる上端位置保持機能を有して構成し、前記各可動係合部を前記昇降台側に設け、前記各固定側預け部を前記開口部が形成されている前記床側に設け、また前記各預け装置は、前記上端位置保持機能によって前記昇降台を前記床側で所定位置よりも多少上方に保持させた状態で前記各可動係合部を定常位置から預け位置また預け位置から定常位置へと駆動するように構成したことを特徴とする。
【0011】
第3態様に係る多階式駐車装置によれば、上端位置保持機能による昇降台の動作と、預け装置の動作タイミングを昇降台側から取りやすくなり、上端位置保持機能によって昇降台を床側の所定位置よりも多少上方に保持している状態で、預け装置に追加された動作、つまり床へ昇降台を預けるための動作と、釈放するための動作を行うことができるので、預け装置の動作を円滑に、かつ、確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多階式駐車装置によれば、預け装置によって昇降台を預けた状態では、上方に位置した格納階の各格納スペース間をトレー駆動装置によってトレーを移動可能になるように昇降台を確実に保持することができ、しかも、昇降台を所定位置に残したまま上端台側を下方の収納方向に一定距離だけ下降させることができるので、特別なレベル補正機構を設けることなく、簡易油圧昇降装置における油漏れが生じたとしても昇降台を所定のレベルに保持させることができ、構成を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による多階式駐車装置の断面図である。
【
図2】
図1に示した多階式駐車装置の第一格納階の床を示す平面図である。
【
図3】
図2に示した第一格納階の床を示す要部拡大図である。
【
図4】
図2に示した第一格納階の床に形成された開口部の拡大図である。
【
図5】
図1に示した簡易油圧昇降装置の収納状態を示す側面図である。
【
図6】
図5に示した簡易油圧昇降装置における昇降台の定常状態を示す平面図である。
【
図7】
図6に示した昇降台の預け状態を示す平面図である。
【
図8】
図5に示した簡易油圧昇降装置の伸張状態を拡大して示す側面図である。
【
図9】
図8に示した簡易油圧昇降装置における預け装置の動作状態を示す平面図である。
【
図10】
図8に示した簡易油圧昇降装置の分離動作状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の一実施例による多階式駐車装置の断面図である。
【0016】
本多階式駐車装置は、出入口1を有する出入口階2と、地下一階の第一格納階3と、地下二階の第二格納階4と、地下三階の第三格納階5を有しており、各格納階3~5には、トレー6上に搭載された状態の駐車車両7が格納されている。出入口階2と各格納階3~5の間には、トレー6上に搭載された状態の駐車車両7を昇降移動するリフト装置8が構成されている。このリフト装置8は、複数本のガイドレール9A,9Bと、このガイドレール9A,9Bに沿って昇降移動可能な昇降台10と、この昇降台10を駆動する駆動装置11などを有している。
【0017】
第一格納階3における床12には、開口部13が形成され、この開口部13の真下に位置する第二格納階4の床14には収納部15が形成されている。収納部15には詳細を後述するが、トレー6上に搭載された状態の駐車車両7を上下方向に存在する一階床分だけ移動する簡易油圧昇降装置16が配置され、図示では伸張状態となっている。第二格納階4における床14には、収納部15と異なる位置に開口部17が形成され、この開口部17の真下に位置する第三格納階5の床18には収納部19が形成されている。収納部19には、トレー6上に搭載された状態の駐車車両7を上下方向に存在する一階床分だけ移動する簡易油圧昇降装置16と同一構成の簡易油圧昇降装置20が配置され、図示では収納状態となっている。
【0018】
第二格納階4における収納部15と、床12における開口部13と、簡易油圧昇降装置16とからなる構成と、第三格納階5における収納部19と、床14における開口部17と、簡易油圧昇降装置20とからなる構成とは、簡易油圧昇降装置16が伸張状態として、また簡易油圧昇降装置20が収納状態として示しているが、同一構成である。
【0019】
出入口1から進入してきた駐車車両7は、リフト装置8における昇降台10に搭載された状態のトレー6上に乗り入れられる。その後、運転手が降りて出入口1から出たことが確認されると、トレー6上に搭載された状態の駐車車両7の向きが変更され、リフト装置8における駆動装置11を駆動して、トレー6上に搭載された状態の駐車車両7と共に昇降台10を任意の格納階3~5へと移動される。その後、駐車車両7が搭載された状態のトレー6は任意の格納階3~5における所定位置へと移動されて格納状態となる。
【0020】
第一格納階3において、駐車車両7を搭載した状態のトレー6またはトレー6単体は、詳細を後述するように第一格納階3の床12に形成された複数の格納スペース間でトレー駆動装置によって移動可能に構成されている。また第二格納階4において、駐車車両7を搭載した状態のトレー6またはトレー6単体は、同様に第二格納階4の床14に形成された複数の格納スペース間で同一構成のトレー駆動装置によって移動可能に構成されている。さらに、第三格納階5において、駐車車両7を搭載した状態のトレー6またはトレー6単体は、同様に第三格納階5の床18に形成された複数の格納スペース間で同一構成のトレー駆動装置によって移動可能に構成されている。
【0021】
これに対して、第一格納階3と第二格納階4間における駐車車両7を搭載した状態のトレー6またはトレー6単体の移動は、リフト装置8の他に、簡易油圧昇降装置16によっても行われるように構成されている。また第二格納階4と第三格納階5間における駐車車両7を搭載した状態のトレー6またはトレー6単体の移動は、リフト装置8の他に、簡易油圧昇降装置20によっても行われるように構成されている。
【0022】
図2および
図3は、
図1に示した多階式駐車装置における第一格納階3の床12を示す平面図および要部拡大図である。
【0023】
第一格納階3の床12には、例えば、図における縦方向に3列、横方向に5列の格納スペース21A~21Oが形成されている。格納スペース21Hを除く各格納スペース21A~21G,21I~21Oには、トレーがそれぞれ配置された状態が示されている。通常、各格納スペース21A~21Oのうちの少なくとも一つは、トレー6が配置されていない空きスペースとされ、ここでは格納スペース21Hを空きスペースとされている。
【0024】
各格納スペース21A~21G,21I~21Oには、複数の縦方向走行レール22が所定の間隔で配置され、また縦方向走行レール22と直行するように複数の横方向走行レール23が所定間隔で配置されることによって、マトリックス状に敷設した走行レールが構成されている。
【0025】
また空きスペースであるために格納スペース21Hには、開口部13と、開口部13の外周部に形成されている床12の一部と、簡易油圧昇降装置16の最上部に搭載されて開口部13内に位置した昇降台25の上面が露出されている。開口部13によって上述した縦方向走行レール22および横方向走行レール23が分断されているが、簡易油圧昇降装置16の最上部に配置された昇降台25の上面には、縦方向走行レール22および横方向走行レール23の分断部における連続性を保つように分断部縦方向走行レール22Hおよび分断部横方向走行レール23Hが配置され、その中央部には上述したトレー駆動装置の床側の構成である床側トレー駆動装置24が構成されている。
【0026】
また各格納スペース21A~21Oには、縦方向走行レール22,22Hと横方向走行レール23,23Hとによって囲まれた部分にそれぞれ床側トレー駆動装置24と同一構成の床側トレー駆動装置が配置され、この床側トレー駆動装置に対向した各トレー6の下面側には、それぞれ同一構成のトレー側従動装置が配置され、各床側トレー駆動装置および各トレー側従動装置から成るトレー駆動装置を図示しない制御装置によって制御することによって、所定のトレーを任意の位置の格納スペースへと移動することができる構成となっている。
【0027】
このとき、格納スペース21Hから最初に直接移動できる他の格納スペース、または他の格納スペースから最後に格納スペース21Hへと直接移動できるのは、
図3に示すように格納スペース21Hに対して四方向に隣接して位置した格納スペース21Cと、格納スペース21Gと、格納スペース21Iと、格納スペース21Mとである。
【0028】
第二格納階4および第三格納階5の図示は省略しているが、それらに言及する場合、第一格納階3と同一構成の格納スペース21A~21Oを形成しているものとして図を兼用して説明する。従って、第二格納階4の場合、
図1に示した収納部15は、
図2および
図3の格納スペース21Hに相当する位置に形成されていることになる。また
図1に示した第三格納階5の開口部17は、
図2および
図3の格納スペース21Mに相当する位置に形成されていることになる。
【0029】
こうして、第一格納階3、第二格納階4および第三格納階5の各格納スペース21A~21Oでは、複数のトレー6が空のスペース側へと移動することができ、この移動を繰り返すことによって所定位置のトレー6を目的位置まで順次移動することができる。各トレー6の移動は、既に知られているように、各格納スペースの床側に構成された床側トレー駆動装置24と、対応関係に位置されたトレー6のトレー側従動装置の協働作用によって行われる。床側トレー駆動装置24については、後述する
図6を用いて説明する。
【0030】
特に、所定のトレー6を
図2および
図3に示した格納スペース21Hへと短時間に簡単に移動することができる。何故なら、
図2において、格納スペース21Hは第一格納階3の中央部またはその近傍に形成されており、他の格納スペース21A~21G,21I~21Oに位置したトレーを格納スペース21Hへと移動させる場合、最終段階では格納スペース21C,21G,21I,21Mの四方向から格納スペース21Hへと移動させることができるからである。これは、格納スペース21Aのように第一格納階3の角部に簡易油圧昇降装置16を構成し、この簡易油圧昇降装置16へとトレーを移動させる場合と比較すると明らかである。この場合、最終段階では格納スペース21Bと格納スペース21Fの二方向からだけしか格納スペース21Aへとトレーを移動させることができないので、移動に時間を要し効率が低下してしまう。
【0031】
次に、上下関係にある第一格納階3と第二格納階4間で駐車車両の移動を行う簡易油圧昇降装置16について説明する。
【0032】
図4は、
図2および
図3に示した第一格納階3の床12に形成された開口部13を拡大して示す平面図である。
【0033】
床12には、開口部13を形成している内壁面に沿うようにほぼ四角形の枠体が固定されている。この枠体は、開口部13の外周四隅付近となる床12に固定された受台26~29と、開口部13を形成している内壁面に沿うように配置されて受台26~29に固定された固定枠30~33を有している。また各固定枠30~33には、それぞれ二個ずつ、合計八個の固定側預け部が形成されている。つまり固定枠30には、固定側預け部30A,30Bが形成され、固定枠31には、固定側預け部31A,31Bが形成されている。同様に、固定枠32には、固定側預け部32A,32Bが形成され、固定枠33には、固定側預け部33A,33Bが形成されている。
【0034】
図5は、上述した格納スペース21Hに構成した簡易油圧昇降装置16の収納状態を示す側面図である。
【0035】
簡易油圧昇降装置16は、収納状態では下方に位置する第二格納階4の床14側に昇降台25が位置されており、同床14側の各格納スペース間でトレー6を循環移動するために昇降台25を利用できるようにしている。これに対して、伸張状態で簡易油圧昇降装置16は上方に位置する第一格納階3の床12側に昇降台25が位置されており、同床12側の各格納スペース間でトレー6を循環移動するために昇降台25を利用できるようにしている。
【0036】
また簡易油圧昇降装置16は、第一格納階3の床12からトレー6または駐車車両7を搭載した状態のトレー6を第二格納階4の床14へと移動する場合、または第二格納階4の床14から駐車車両7を搭載した状態のトレー6を第一格納階3の床12へと移動させる場合、伸張状態から収納状態または収納状態から伸張状態へと変化できるように構成されている。
【0037】
第一格納階3の床12に形成された開口部13は、第二格納階4の床14に形成された収納部15と上下方向に対応しており、収納部15内に構成された簡易油圧昇降装置16は
図1の場合とは異なり収納状態となっている。簡易油圧昇降装置16は、その詳細についてはさらに
図6~
図10を用いて説明するが、収納部15の底面に固定されたベース34と、このベース34にその下部端を連結されたリンク装置35と、リンク装置35に伸張力を与える油圧駆動装置36と、リンク装置35の上部端に連結された上端台37と、上端台37に対して水平方向の移動を
規制しながら上下方向に所定距離だけ移動を許して連結状態を保持するピン連結部38によって上端台37に連結した昇降台25などを有している。昇降台25には、上述したように分断部縦方向走行レール22Hと、図示されていない分断部横方向走行レール23Hと、
図2および
図3に示した床側トレー駆動装置24が構成されている。
【0038】
収納部15は格納スペース21Hの垂直投影面内に存在する大きさであり、昇降台25を除く簡易油圧昇降装置16は収納部15の垂直投影面内に存在する大きさであり、昇降台25は格納スペース21Hの垂直投影面内に存在し、かつ収納部15の垂直投影面よりも大きい。従って、収納状態の簡易油圧昇降装置16における昇降台25は、床14の上面側に配置されたストッパー39上に搭載されている。このストッパー39は、床14の上面側に固定されていても良いし、昇降台25の下面側に固定されていても良い。またストッパー39は、例えば、昇降台25の四隅下部を受け止める位置にそれぞれ配置されている。各ストッパー39で昇降台25を受けたとき、分断部縦方向走行レール22Hと、図示されていない分断部横方向走行レール23Hは、他の格納スペースにおける縦方向走行レール22および横方向走行レール23と同じレベルとなる。
【0039】
昇降台25を除く簡易油圧昇降装置16は、収納部15の垂直投影面内で図示の収納状態と後述する伸張状態を保持することが可能な構成となっている。しかし、格納スペース21Hの垂直投影面内には、第二格納階4の床14と第一格納階3の床12との間に固定されて昇降台25の動きを案内するガイドレールのような固定構造物は存在しない。また昇降台25の収納状態では、第二格納階4に存在する複数のトレー6の動きを制限するような突出した固定構造物も存在しない。
【0040】
図6および
図7は、簡易油圧昇降装置16における昇降台25の定常状態および預け状態を示す平面図である。
【0041】
昇降台25の上面には、分断部縦方向走行レール22Hおよび分断
部横方向走行レール23Hと、上述したトレー駆動装置の床側の構成である床側トレー駆動装置24と、昇降台25を
図4に示した床12に構成されたほぼ四角形の枠体に預けるために預け動作を行う預け装置40~43などを有して構成されている。
【0042】
床側トレー駆動装置24は、モータ駆動の切替部44と、切替部44によって送りローラ45Aの回転方向の向きを切り替える方向切替部46Aと、切替部44によって送りローラ45Bの回転方向の向きを切り替える方向切替部46Bと、送りローラ45A,45Bをそれぞれ回転駆動するモータ47A,47Bなどを有して構成されている。床側トレー駆動装置24の上部にトレー6が配置されている場合、トレー6は送りローラ45A,45Bの回転力を受けて送りローラ45A,45Bの向きと同じ方向に移動される。例えば、送りローラ45A,45Bの向きが図示の状態であった場合、トレー6は昇降台25の幅方向へと駆動される。
【0043】
預け装置40は、駆動モータ48と、定常状態で
図4に示した開口部13の垂直投影面内に位置する可動係合部49A,49Bと、可動係合部49A,49Bにそれぞれ設けた回転軸50A,50Bと、駆動モータ48の回転によって可動係合部49A,49Bに対して回転軸50A,50Bを中心として回転させるリンク装置等の操作力伝達装置51などを有して構成されている。
【0044】
上述したように
図6に示した定常状態で可動係合部49A,49Bは、
図4に示した開口部13の垂直投影面内に位置している。しかし、駆動モータ48が回転駆動されると、
図7に示すように操作力伝達装置51を介して可動係合部49A,49Bの回転軸50A,50Bが回転される。すると、可動係合部49A,49Bの先端部は、
図4に示した開口部13の垂直投影面内から当該垂直投影面外へと移動する。このため、可動係合部49A,49Bの先端部は、
図4に示した固定側預け部30A,30Bに係止され、昇降台25を床12側に預けた状態となる。
【0045】
預け装置42は、預け装置40と対称形ではあるが、預け動作を行う可動係合部49A,49Bを有した同一構成であるので詳細な説明を省略する。
【0046】
預け装置41は、預け装置40と基本的には同一構成であり、駆動モータ52と、定常状態で
図4に示した開口部13の垂直投影面内に位置する可動係合部53A,53Bと、可動係合部53A,53Bにそれぞれ設けた回転軸54A,54Bと、駆動モータ52の回転によって可動係合部53A,53Bに対して回転軸54A,54Bを中心として回転させるリンク装置55などを有して構成されている。
【0047】
上述したように
図6に示した定常状態で可動係合部53A,53Bは、
図4に示した開口部13の垂直投影面内に位置している。しかし、駆動モータ52が回転駆動されると、
図7に示すように操作力伝達装置55を介して可動係合部53A,53Bの回転軸54A,54Bが回転される。すると、可動係合部53A,53Bの先端部は、
図4に示した開口部13の垂直投影面内から当該垂直投影面外へと移動する。このため、可動係合部53A,53Bの先端部は、
図4に示した固定側預け部31A,31Bに係止され、昇降台25を床12側に預けた状態となる。
【0048】
預け装置43は、預け装置41と対称形ではあるが、預け動作を行う可動係合部53A,53Bを有した同一構成であるので詳細な説明を省略する。
【0049】
上述した各預け装置40~43の動作指令は、駆動モータ48および駆動モータ52に同時に与えられ、各預け装置40~43の可動係合部49A,49Bおよび可動係合部53A,53Bが同時に動作して、合計八個の可動係合部が固定側預け部30A~33Bに係止され、昇降台25を床12側に預けた状態となる。
【0050】
各預け装置40~43の預け状態で、仮に簡易油圧昇降装置16の油圧駆動装置36に油漏れが発生して上端台37が降下したとしても、昇降台25は機械的に床12側に保持されており、昇降台25のレベルは変化しない。このため、昇降台25上に構成された分断部縦方向走行レール22Hおよび分断部横方向走行レール23Hは、同じ床12に構成されている他の格納スペースにおける床側トレー駆動装置24の縦方向走行レール22Hおよび横方向走行レール23と同じレベルに保たれ、同じ床12上でトレー6を自由に循環移動することが可能となる。
【0051】
図8は、上述した簡易油圧昇降装置16の伸張状態を拡大して示す側面図である。
【0052】
簡易油圧昇降装置16のリンク装置35は、下部Xリンク装置56と上部Xリンク装置57とを上下に二段に連結して構成されている。下部Xリンク装置56と上部Xリンク装置57とは、紙面の手前側と裏面側に所定距離を隔てて対向配置した対を成す同一構成を有しているので、ここでは紙面の手前側の構成について説明する。下部Xリンク装置56は、下端部をベース34に回動可能に連結された第一リンク58と、第一リンク58の中間部にその中間部を回動可能に連結された第二リンク59と、第二リンク59の下端に結合した軸60を水平方向で移動可能に保持するガイド61とを有している。ガイド61はベース34に固定されている。
【0053】
上部Xリンク装置57も下部Xリンク装置56と同様に、第一リンク58の上端に回動可能に連結された第一リンク62と、第一リンク62の中間部にその中間部を回動可能に連結され、かつ第二リンク59の上端に可回転的に連結した第二リンク63とを有し、第一リンク62および第二リンク63の上端を上端台37へ水平方向で移動可能に連結されている。
【0054】
油圧駆動装置36は、その固定要素のシリンダ側をベース34へ可回転的に連結され、その可動要素であるピストン側は下部Xリンク装置56の第一リンク58に対して伸張力を与えたり、伸張力を解放したりすることができるように下部Xリンク装置56に連結されている。具体的には、ベース34へ一端を可回転的に連結したL字リンク64の他端部に油圧駆動装置36の可動要素であるピストン側が連結されている。またL字リンク64の中間部には、第一リンク58に対してベース34との連結部を中心にして伸張力となる時計方向の回転力を与えるローラ65が設けられている。
【0055】
また油圧駆動装置36は、下部Xリンク装置56やガイド61と干渉することがない位置、例えば、紙面の手前側と裏面側に所定距離を隔てて対向配置した一対の下部Xリンク装置56間に配置したり、一対の下部Xリンク装置56の外側に配置したりすることができる。また油圧駆動装置36は、一つの場合を示しているが、同様に作動する複数個であっても良い。
【0056】
リンク装置35は、上述したように下部Xリンク装置56と上部Xリンク装置57とを、
図8における紙面の手前側と裏面側に所定距離を隔てて対向配置した対を成す同一構成を有している。そして図示を省略しているが、下部Xリンク装置56と上部Xリンク装置57における各連結部は、紙面の手前側と裏面側の構成における同部をロッドなどで連結して補強されている。
【0057】
図5に示した収納状態で、昇降台25は床14のストッパー39上に搭載されて高さ位置が決められている。このストッパー39があるため、昇降台25の収納状態での厳密な位置決めを油圧駆動装置36によって行う必要がなくなる。このため油圧駆動装置36は、伸張力を解放してリンク装置35側の収納を行うとき、ピン連結部38によってリンク装置35と昇降台25とを上下方向に所定距離分離できるので、リンク装置35と昇降台25とのストローク差を容易に吸収することができる。
【0058】
簡易油圧昇降装置16の最上部に構成した昇降台25に駐車車両が搭載された状態のトレー6またはトレー単体が搭載され、同搭載状態が検出されると、
図5に示した油圧駆動装置36に伸張駆動指令が与えられる。すると、
図8に示すようにL字リンク64をベース34へ連結した一端を中心にして時計方向の回転力が付与される。L字リンク64におけるローラ65から両端部までのレバー比によってストロークが倍増され、この回転力はローラ65を介して第一リンク58に伝達される。第一リンク58に対しては、ベース34へ連結した一端を中心にして時計方向の回転力として伝達される。このとき、第二リンク59の下端部の軸60は、ガイド61に沿って水平方向に案内されながら、第一リンク58との連結部を中心にして反時計方向に回転される。従って、第一リンク58と第二リンク59の上端は、互いに近接しながら上方へと移動することになる。
【0059】
第一リンク58の上端に連結された第一リンク62と、第一リンク62の中間部にその中間部を回動可能に連結され、かつ第二リンク59の上端に連結された第二リンク63とは、第一リンク58と第二リンク59の動きに追従する。このとき、第一リンク62の上端が上端台37によって水平方向に案内されながら上方へと移動する。
【0060】
こうしてリンク装置35の上部に連結された昇降台25は上方と移動させられ、
図8に示すように簡易油圧昇降装置16のリンク装置35は、油圧駆動装置36によって伸張完了状態が保持される。
【0061】
詳細な図示は省略しているが、簡易油圧昇降装置16は、油圧駆動装置36における油圧を制御する油圧制御弁装置やその油圧制御装置を有しており、これら装置によって、昇降台25の上面に構成された分断部縦方向走行レール22Hを、他の格納スペースにおける縦方向走行レール22よりも多少上方に、例えば50mm程度上方に保持する上端位置に保持する動作や、上端台37を各預け装置40~43に預けた状態で上端台37やリンク装置35を所定距離、例えば200mm程度だけ収納方向に下降させて上端台37を昇降台25から分離する下降分離動作などが行われる。
【0062】
上端位置
に保持
する動作によって上述した伸張完了状態に保持されたとき、リンク装置35の上部端に連結された昇降台25は、
図5に示した位置から
図8に示した位置まで上昇させられ、第一格納階3の床12に形成された開口部13内から迎え入れられている。また、昇降台25の上面に構成された分断部縦方向走行レール22Hは、他の格納スペースにおける縦方向走行レール22よりも多少上方に保持されている。
【0063】
図9は、伸張状態での簡易油圧昇降装置16における預け装置40~43の動作後の状態を示す平面図である。
【0064】
昇降台25が床12に形成された開口部13内から迎え入れられるとき、
図6に示したように可動係合部50A,50B,53A,53Bを備えた預け装置40~43は、
図4に示した開口部13の垂直投影面内に位置している。このため、昇降台25は開口部13の内壁面に干渉することなく
図8に示したように上昇移動することができる。
【0065】
その後、
図8に示した状態で預け装置40~43に動作指令が与えられると、預け装置40~43は、詳細を
図6および
図7で説明したように預け動作を行い、可動係合部50A,50B,53A,53Bが開口部13の垂直投影面外に突出される。
図9は、同状態を示しており、可動係合部50A,50Bおよび可動係合部53A,53Bは、その下方に固定されている各固定側預け部30A~33Bの上方で、かつ多少のギャップを有して上下方向で対向するように突出されている。
可動係合部50A,50B,53A,53Bは、その預け動作時、各固定側預け部30A~33Bとの間にギャップを有しているので、干渉を受けることなく円滑に、かつ確実に動作させることができる。
【0066】
尚、詳細な図示を省略しているが、各預け装置40~43における駆動モータ48および駆動モータ52への給電線および動作信号線は、簡易油圧昇降装置16側から配線されている。
【0067】
図10は、伸張完了後における簡易油圧昇降装置16の分離動作状態を示す側面図である。上述したように簡易油圧昇降装置16は、油圧駆動装置36における油圧を制御する油圧制御弁やその油圧制御装置によって、上端台37を各預け装置40~43に預けた状態で上端台37やリンク装置35を所定距離だけ収納方向に下降させる下降分離
動作が行われる。
【0068】
各預け装置40~43における預け動作後、上述した下降分離
動作によって、簡易油圧昇降装置16の油圧駆動装置36によって上端台37およびリンク装置35を伸張完了状態から若干収納方向に下降させる。すると、その動作初期において昇降台25は、上端台37と共に下降するが、やがて、
図10に示すように可動係合部50A,50B,53A,53Bが各固定側預け部30A~33Bに搭載された状態となって、昇降台25の下降動作が規制される。従って、簡易油圧昇降装置16の分離動作状態で、上端台37は
図10に示したように昇降台25との間に上下方向のギャップを有して対向することになる。
【0069】
各預け装置40~43によって昇降台25の下降動作が阻止されたとき、昇降台25の上面に構成された分断部縦方向走行レール22Hおよび分断部横方向走行レール23Hは、同じ第一格納階3における他の格納スペースの縦方向走行レール22および横方向走行レール23と同じレベルに保持される。このため、同じ第一格納階3における各格納スペース間では、各床側トレー駆動装置24を利用してトレー6または駐車車両を搭載した状態のトレー6を自由に移動させることができる。
【0070】
また簡易油圧昇降装置16は、油圧駆動装置36を使用しているため、時間の経過によって油漏れが発生する可能性がある。このため、油圧駆動装置36によって分断部縦方向走行レール22Hおよび分断部横方向走行レール23Hを所定のレベルに保持する構成の場合、油漏れを考慮したレベル補正機構が必要となる。しかしながら、上述したように分断部縦方向走行レール22Hおよび分断部横方向走行レール23Hを所定のレベルに保持するために油圧駆動装置36を使用せず、各預け装置40~43によって所定のレベルを保持するようにしている。しかも、上端台37と昇降台25との間に上下方向のギャップを有して対向する構成としている。このため、油圧駆動装置36側での油漏れを考慮した自動位置補正が不要となり、構成を簡略化することができる。
【0071】
しかも、上述した簡易油圧昇降装置16の上端台37は、
図10に示したように昇降台25を床12側に預けた状態で下降分離
動作を
行って僅かに下がる程度で保持すれば良い。このため、
図6に示した床側トレー駆動装置24のための給電線および動作信号線と同じように、各預け装置40~43のための給電線および動作信号線も簡易油圧昇降装置16側から配線することができ、配線作業を容易にして構造を簡略化することができる。また、上端台37と昇降台25間のギャップを保持するために必要となる各預け装置40~43のための給電線および動作信号線の裕度も容易に確保することができる。さらに、上端位置保持
動作による昇降台25の動作と、預け装置40~43の動作タイミングを昇降台25側から取りやすくなり、上端位置保持
動作によって昇降台25を床12側の所定位置よりも多少上方に保持している状態で、預け装置40~43に追加された動作、つまり床12へ昇降台25を預けるための動作と、釈放するための動作を行うことができるので、預け装置40~43の動作を円滑に、かつ、確実に行うことができる。
【0072】
一方、伸張状態の簡易油圧昇降装置16を収納状態に戻す場合は、
図10に示した状態から一旦、上端位置
に保持
する動作によって油圧駆動装置36およびリンク装置35を伸張させて、
図8に示したように上端台37上に昇降台25を載せた状態とする。その後、各預け装置40~43を
図7に示した預かり状態から
図6に示した定常状態に戻す。このとき、昇降台25の上面に構成された分断部縦方向走行レール22Hは、他の格納スペースにおける縦方向走行レール22よりも多少上方に保持する上端位置
に保
持しているため、各預け装置40~43における可動係合部50A,50B,53A,53Bと各固定側預け部30A~33Bとの接触がなくなっている。従って、各預け装置40~43における可動係合部50A,50B,53A,53Bを、確実に定常状態へと作動させることができる。その後、油圧駆動装置36を制御して昇降台25を含めてリンク装置35を
図5に示した収納状態とする。
【0073】
以上の説明は簡易油圧昇降装置16について述べたが、簡易油圧昇降装置20も同様の構成である。簡易油圧昇降装置20は、収納状態では下方に位置する第三格納階5の床18側に昇降台25が位置されており、同床18側の各格納スペース間でトレー6を循環移動するために昇降台25が利用できるようにしている。これに対して、伸張状態で簡易油圧昇降装置20は上方に位置する第二格納階4の床14側に昇降台25が位置されており、同床14側の各格納スペース間でトレー6を循環移動するために昇降台25が利用できるようにしている。
【0074】
また簡易油圧昇降装置20は、第二格納階4の床14からトレー6または駐車車両7を搭載した状態のトレー6を第三格納階5の床18へと移動する場合、または第三格納階5の床18から駐車車両7を搭載した状態のトレー6を第二格納階4の床14へと移動させる場合、伸張状態から収納状態または収納状態から伸張状態へと変化できるように構成されている。
【0075】
本実施例では、出入口階2に対して上下方向に複数の格納階3,4を有し、出入口階2と各格納階3,4間に跨って昇降して駐車車両7を搬送移動するリフト装置8を設け、両格納階3,4は、それぞれの床12,14に複数の格納スペース21A~21Oを有すると共に、格納階3,4毎の各格納スペース21A~21O間をトレー駆動装置によって駐車車両7を搭載した状態のトレー6を移動可能に構成し、下方に位置した格納階4における格納スペース21A~21Oのうちの一つ21Hの垂直投影面内に収納部15を形成し、収納部15のほぼ真上に位置した上方に位置した格納階3における床12に開口部13を形成し、収納部15に配置されて伸張状態では床12に形成された開口部13から迎え入れられて上方に位置した格納階3における格納スペース21A~21O間でトレー6の移動を可能とする高さに保持される昇降台25を有すると共に、同じ格納スペース21Hの垂直投影面内に、トレー6上に搭載された状態の駐車車両7を上下方向に存在する格納階3,4の少なくとも一階床分だけ昇降移動させる簡易油圧昇降装置16を設けた多階式駐車装置において、簡易油圧昇降装置16に、上方に位置した格納階3における床12へ昇降台25を預けて釈放可能に保持させるための預け装置40~43と、昇降台25を搭載した状態で伸張収縮移動可能で、かつ、昇降台25を預け装置40~43に預けた状態で下方の収納方向に一定距離だけ下降可能な上端台37と、預け装置40~43によって昇降台25を預けた状態で上端台37を下方の収納方向に一定距離だけ下降させる下降分離機能を設けたことを特徴とする構成としている。
【0076】
このため、預け装置40~43によって昇降台25を預けた状態では、上方に位置した格納階3の各格納スペース21A~21O間をトレー駆動装置によって駐車車両7を搭載した状態のトレー6または単体のトレー6を移動可能になるように昇降台25を保持することができ、しかも、昇降台25を所定位置に残したまま上端台37側を下方の収納方向に一定距離だけ下降させることができるので、簡易油圧昇降装置16における油漏れが生じたとしても昇降台25のレベルを保持させるためのレベル補正機構を必要としなくなり、構成を簡略化することが可能となる。
【0077】
上述した実施例では、駆動モータ48,52やリンク装置51,55を使用して預け装置40~43を構成したが、その具体的な構成は図示のものに限定されない。しかしながら、昇降台25上に構成された床側トレー駆動装置24のように一般的に駆動モータを使用してトレー6の移動を行う方式では、同様の駆動モータ48,52を使用すると、預け装置40~43を簡単な構成とすることができる。
【0078】
また上述した実施例では、預け装置40~43を昇降台25側に構成したが、開口部13の近傍に位置した格納スペースの床側に、同様のタイミングで作動する預け装置40~43を設けても,同様の効果を得ることができる。
【0079】
尚、本発明を採用する多階式駐車装置は、地下側に各格納階3~5を形成した場合に限らず、地上の上方階に各格納階3~5を形成したり、地上側と地下側に分散して各格納階3~5を形成したりした場合でも同様に適用することができる。また、各格納階3~5の階床数も限定するものでなく、少なくとも第一格納階3と第二格納階4を有し、これらの各格納階3,4間に簡易油圧昇降装置16のみを有した構成など種々の多階式駐車装置に適用することができる。簡易油圧昇降装置16としては二階床間を移動する構成としたが、三階床間を移動する構成としても良い。
【0080】
また上述した実施例で簡易油圧昇降装置16,20は、パンタグラフ式の構成としたリンク装置35を使用しているが、パンタグラフ式の構成に限らず種々の構成のものを使用することができる。さらに簡易油圧昇降装置16,20は、リンク装置35と油圧駆動装置36との組み合わせ構成として示しているが、全体を油圧装置で構成したり、モータ駆動などの他の駆動装置を使用したりして種々の構成を採用することができる。さらに、トレー6の駆動装置としては、
図3および
図8などに示したものを例示したが、これに限定することなく使用することができる。
【0081】
以上説明したように本発明は、出入口階2に対して上下方向に複数の格納階3,4を有し、両格納階3,4は、それぞれの床12,14に複数の格納スペース21A~21Oを有すると共に、格納階3,4毎の各格納スペース21A~21O間をトレー駆動装置によってトレー6を移動可能に構成し、下方に位置した格納階4における格納スペース21A~21Oのうちの一つ21Hの垂直投影面内に収納部15を形成し、収納部15のほぼ真上に位置した上方に位置した前記格納階における床12に開口部13を形成し、収納部15に配置されて伸張状態では床12に形成された開口部13から迎え入れられて上方に位置した格納階3における格納スペース21A~21O間でトレー6の移動を可能とする高さに保持される昇降台25を有すると共に、同じ格納スペース21Hの垂直投影面内で収納動作および伸張動作する簡易油圧昇降装置16を設けた多階式駐車装置において、簡易油圧昇降装置16に、上方に位置した格納階3における床12へ昇降台25を預けて釈放可能に保持させるための預け装置40~43と、昇降台25を搭載した状態で伸張収縮移動可能で、かつ、昇降台25を預け装置40~43に預けた状態で下方の収納方向に一定距離だけ下降可能な上端台37と、預け装置40~43によって昇降台25を預けた状態で上端台37を下方の収納方向に一定距離だけ下降させる下降分離機能を設けたことを特徴とする。
【0082】
このような構成によれば、預け装置40~43によって昇降台25を預けた状態では、上方に位置した格納階3の各格納スペース21A~21O間をトレー駆動装置によって駐車車両7を搭載した状態のトレー6または単体のトレー6を移動可能になるように昇降台25を保持することができる。しかも、昇降台25を所定位置に残したまま上端台37側を下方の収納方向に一定距離だけ下降させることができるので、簡易油圧昇降装置16における油漏れが生じたとき昇降台25のレベルを保持させるためのレベル補正機構を設ける必要がなくなり、構成を簡略化することができる。
【0083】
また本発明は、上述の構成に加えて、簡易油圧昇降装置16は、昇降台25を床12側の所定位置よりも多少上方に保持する上端位置保持機能を有して構成したことを特徴とする。
【0084】
このような構成によれば、上端位置保持機能によって昇降台25を床12側の所定位置よりも多少上方に保持している状態で、預け装置40~43に追加された動作、つまり床12へ昇降台25を預けるための動作と、釈放するための動作を行うことができるので、預け装置40~43の動作を円滑に、かつ、確実に行うことができる。
【0085】
また本発明は、上述の構成に加えて、預け装置40~43は、預け位置へと駆動される複数の可動係合部50A,50B,53A,53Bと、預け位置の可動係合部50A,50B,53A,53Bを搭載して受ける複数の固定側預け部30A~33Bを有して構成し、簡易油圧昇降装置16は、昇降台25を床12側の所定位置よりも多少上方に保持させる上端位置保持機能を有して構成し、各可動係合部50A,50B,53A,53Bを昇降台25側に設け、各固定側預け部30A~33Bを開口部13が形成されている床12側に設け、また各預け装置40~43は、上端位置保持機能によって昇降台25を床12側で所定位置よりも多少上方に保持させた状態で各可動係合部50A,50B,53A,53Bを定常位置から預け位置また預け位置から定常位置へと駆動するように構成したことを特徴とする。
【0086】
このような構成によれば、上端位置保持機能による昇降台25の動作と、預け装置40~43の動作タイミングを昇降台25側から取りやすくなり、上端位置保持機能によって昇降台25を床12側の所定位置よりも多少上方に保持している状態で、預け装置40~43に追加された動作、つまり床12へ昇降台25を預けるための動作と、釈放するための動作を行うことができるので、預け装置40~43の動作を円滑に、かつ、確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0087】
2 出入口階
3 第一格納階
4 第二格納階
6 トレー
7 駐車車両
8 リフト装置
12,14 床
13 開口部
15 収納部
16,20 簡易油圧昇降装置
21A~21O 格納スペース
25 昇降台
30A~33B 固定側預け部
37 上端台
40~43 預け装置
50A,50B,53A,53B 可動係合部