(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】燃料電池用のセパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20220208BHJP
B21D 53/00 20060101ALI20220208BHJP
B21D 22/02 20060101ALI20220208BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20220208BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220208BHJP
【FI】
H01M8/0258
B21D53/00 E
B21D22/02 B
H01M8/0206
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2018174260
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】岡部 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】河邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】青野 晴之
(72)【発明者】
【氏名】平田 和之
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-282728(JP,A)
【文献】特開2005-276519(JP,A)
【文献】特開2006-120497(JP,A)
【文献】特開2007-220570(JP,A)
【文献】特開2002-117866(JP,A)
【文献】特開2009-066642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0258
B21D 53/00
B21D 22/02
H01M 8/0206
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用のセパレータの製造方法において、
第1及び第2型の間に、前記セパレータの基材を配置する工程と、
前記第1及び第2型の開閉により、前記基材に排水溝を有した流路溝を形成する工程と、を備え、
前記第1型は、第1溝を有し、
前記第2型は、前記第1型との開閉方向で互いに対向し前記第1溝と相補形状であって前記第1溝と共に前記基材に前記流路溝を形成する第2溝を有し、
前記第1溝は、前記開閉方向に互いに離れ前記開閉方向に垂直な垂直方向に互いに離れた凹面及び凸面と、前記凹面及び凸面に対して傾斜して連続した側面と、を含み、
前記側面は、前記凹面及び凸面に連続した基面と、前記基面から突出して当該第1溝に沿って延び前記基材に前記排水溝を形成する突出面と、を含み、
前記開閉方向及び垂直方向を含む前記第1溝の断面視で、前記突出面を通過する前記開閉方向に平行な複数の仮想線は、それぞれ、前記突出面に一点で交差する、燃料電池用のセパレータの製造方法。
【請求項2】
前記断面視で、前記凹面と前記開閉方向に平行な仮想線との間の前記側面側の角度をXとし、前記凹面と前記突出面の任意の位置での前記突出面との間の角度をαSとすると、X<αS<(X+180°)である、請求項1の燃料電池用のセパレータの製造方法。
【請求項3】
前記断面視で、前記突出面は、前記凹面側で前記基面に連続した第1領域と、前記凸面側で前記基面に前記第1領域とは異なる角度で連続した第2領域と、を含み、
前記断面視で、前記凹面と前記基面との間の角度をα1とし、前記凹面と前記第1領域との間の角度をα2とし、前記凹面と前記第2領域との間の角度α3とすると、X<α1<(X+90°)であり、かつ、X<α2<α3<(X+180°)である、請求項2の燃料電池用のセパレータの製造方法。
【請求項4】
前記断面視で、前記突出面は三角形状である、請求項1乃至3の何れかの燃料電池用のセパレータの製造方法。
【請求項5】
前記断面視で、前記突出面は曲面状である、請求項1乃至3の何れかの燃料電池用のセパレータの製造方法。
【請求項6】
前記断面視で、前記突出面は台形状である、請求項1乃至3の何れかの燃料電池用のセパレータの製造方法。
【請求項7】
前記断面視で、前記突出面は、三角形、半円形、及び台形の少なくとも2つが前記側面に沿って並んだ形状である、請求項1乃至3の何れかの燃料電池用のセパレータの製造方法。
【請求項8】
前記基材は、金属板を含む、請求項1乃至7の何れかの燃料電池用のセパレータの製造方法。
【請求項9】
前記断面視で前記突出面が溝の内面であると仮定した場合に、前記溝の水力直径は、2μm以上であって200μm以下である、請求項1乃至8の何れかの燃料電池用のセパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用のセパレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池のセパレータでは、排水性を確保するために、反応ガスが流れる流路溝の内面にこの流路溝に沿って延びた排水溝が設けられる場合がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている排水溝は、いわゆるアンダーカット形状であるため、プレス加工等による製造が困難である。また、流路溝が形成されたセパレータに切削加工を施して排水溝を形成する場合には、工数が増大して製造コストが増大する可能性がある。また、セパレータとなる基材に排水溝を予め形成し、その後にプレス加工をしてセパレータを製造する場合にも、工数が増大して製造コストが増大する。
【0005】
そこで本発明は、排水溝を有したセパレータを低コストで製造できる燃料電池用のセパレータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、燃料電池用のセパレータの製造方法において、第1及び第2型の間に、前記セパレータの基材を配置する工程と、前記第1及び第2型の開閉により、前記基材に排水溝を有した流路溝を形成する工程と、を備え、前記第1型は、第1溝を有し、前記第2型は、前記第1型との開閉方向で互いに対向し前記第1溝と相補形状であって前記第1溝と共に前記基材に前記流路溝を形成する第2溝を有し、前記第1溝は、前記開閉方向に互いに離れ前記開閉方向に垂直な垂直方向に互いに離れた凹面及び凸面と、前記凹面及び凸面に対して傾斜して連続した側面と、を含み、前記側面は、前記凹面及び凸面に連続した基面と、前記基面から突出して当該第1溝に沿って延び前記基材に前記排水溝を形成する突出面と、を含み、前記開閉方向及び垂直方向を含む前記第1溝の断面視で、前記突出面を通過する前記開閉方向に平行な複数の仮想線は、それぞれ、前記突出面に一点で交差する、燃料電池用のセパレータの製造方法によって達成できる。
【0007】
相補形状である第1及び第2溝により基材に流路溝を形成しつつ、第1溝の突出面により基材に排水溝を形成することができ、基材に対して流路溝と排水溝とを一度に形成することができる。また、上述した複数の仮想線がそれぞれ突出面に一点で交差することは、突出面が開閉方向で基面に対向しないことを意味する。このため、基材に形成される排水溝がアンダーカット形状となることが回避される。従って、排水溝を有したセパレータを低コストで製造できる。
【0008】
前記断面視で、前記凹面と前記開閉方向に平行な仮想線との間の前記側面側の角度をXとし、前記凹面と前記突出面の任意の位置での前記突出面との間の角度をαSとすると、X<αS<(X+180°)であってもよい。
【0009】
前記断面視で、前記突出面は、前記凹面側で前記基面に連続した第1領域と、前記凸面側で前記基面に前記第1領域とは異なる角度で連続した第2領域と、を含み、前記断面視で、前記凹面と前記基面との間の角度をα1とし、前記凹面と前記第1領域との間の角度をα2とし、前記凹面と前記第2領域との間の角度α3とすると、X<α1<(X+90°)であり、かつ、X<α2<α3<(X+180°)であってもよい。
【0010】
前記断面視で、前記突出面は、前記凹面側で前記基面に連続した第1領域と、前記凸面側で前記基面に前記第1領域とは異なる角度で連続した第2領域と、を含み、前記断面視で、前記凹面と前記基面との間の角度をα1とし、前記凹面と前記第1領域との間の角度をα2とし、前記凹面と前記第2領域との間の角度α3とすると、X<α1<(X+90°)であり、かつ、X<α2<α3<(X+180°)であってもよい。
【0011】
前記断面視で、前記突出面は三角形状であってもよい。
【0012】
前記断面視で、前記突出面は曲面状であってもよい。
【0013】
前記断面視で、前記突出面は台形状であってもよい。
【0014】
前記断面視で、前記突出面は、三角形、円形、及び台形の少なくとも2つが前記側面に沿って並んだ形状であってもよい。
【0015】
前記基材は、金属板を含んでもよい。
【0016】
前記断面視で前記突出面が溝の内面であると仮定した場合に、前記溝の水力直径は、2μm以上であって200μm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
排水溝を有したセパレータを低コストで製造できる燃料電池用のセパレータの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、燃料電池の単セルの分解斜視図である。
【
図2】
図2Aは、単セルが複数積層された燃料電池の部分断面図であり、
図2Bは、セパレータの部分拡大断面図である。
【
図3】
図3は、セパレータの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4A~4Cは、セパレータの製造の際に用いられる型の説明図である。
【
図7】
図7Aは、型の突出面周辺の部分拡大断面図であり、
図7Bは、型の窪み面周辺の部分拡大断面図である。
【
図13】
図13は、排水溝の水力直径と毛管力との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、燃料電池1の単セル2の分解斜視図である。燃料電池1は、単セル2が複数積層されることで構成される。
図1では、一つの単セル2のみを示し、その他の単セルについては省略してある。
図1には、互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向を示している。単セル2は、
図1に示したZ方向で他の単セルと共に積層される。即ち、Z方向は、複数の単セル2が積層される積層方向である。単セル2は略矩形状であり、単セル2の長手方向及び短手方向はそれぞれ
図1に示したY方向及びX方向に相当する。
【0020】
燃料電池1は、反応ガスとしてアノードガス(例えば水素)とカソードガス(例えば酸素)の供給を受けて発電する固体高分子型燃料電池である。単セル2は、膜電極ガス拡散層接合体10(以下、MEGA(Membrane Electrode Gas diffusion layer Assembly)と称する)と、MEGA10を支持する支持フレーム18と、MEGA10を挟持するアノードセパレータ20及びカソードセパレータ40(以下、セパレータと称する)とを含む。MEGA10は、カソードガス拡散層16c及びアノードガス拡散層16a(以下、拡散層と称する)を有している。支持フレーム18は、略枠状であって内周側がMEGA10の周縁領域に接合されている。セパレータ20及び40と、支持フレーム18が接合されたMEGA10とは、Z方向に積層されている。
【0021】
セパレータ20の2つの短辺の一方側には孔a1~a3が形成され、他方側には孔a4~a6が形成されている。同様に、支持フレーム18の2つの短辺の一方側には孔s1~s3が形成され、他方側には孔s4~s6が形成されている。同様に、セパレータ40の2つの短辺の一方側には孔c1~c3が形成され、他方側には孔c4~c6が形成されている。孔a1、s1、及びc1は連通してアノード出口マニホールドを画定する。同様に、孔a2、s2、及びc2は、冷媒入口マニホールドを、孔a3、s3、及びc3はカソード入口マニホールドを、孔a4、s4、及びc4はカソード出口マニホールドを、孔a5、s5、及びc5は冷媒出口マニホールドを、孔a6、s6、及びc6はアノード入口マニホールドを画定する。尚、本実施例の燃料電池1では、冷媒としては液体である冷却水が用いられる。
【0022】
セパレータ20は、MEGA10に対向する面20aと、面20aの反対側の面20bとを有している。セパレータ40は、MEGA10に対向する面40aと、面40aの反対側の面40bとを有している。セパレータ20の面20aには、アノード入口マニホールドとアノード出口マニホールドとを連通してアノードガスが流れる流路溝20Aが形成されている。セパレータ40の面40aには、カソード入口マニホールドとカソード出口マニホールドとを連通してカソードガスが流れる流路溝40Aが形成されている。セパレータ20の面20b、及びセパレータ40の面40bには、冷媒入口マニホールドと冷媒出口マニホールドとを連通し冷媒が流れる流路溝20B及び40Bがそれぞれ形成されている。流路溝20A及び20Bはセパレータ20の長手方向(Y方向)に延びている。流路溝40A及び40Bも同様に、セパレータ40の長手方向(Y方向)に延びている。
【0023】
セパレータ20及び40の材料は、ガス遮断性及び導電性を有した材料であり、具体的には、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、アルミニウムといった金属板をプレス加工により成形したものである。
【0024】
図2Aは、単セル2が複数積層された燃料電池1の模式的な部分断面図である。
図2Aでは、1つの単セル2のみを図示し、その他の単セルについては省略してある。
図2Aが示す断面は、流路溝20Aや流路溝40A、及び流路溝20B及び40Bが延びたY方向に垂直である。
【0025】
MEGA10は、拡散層16a及び16cと、膜電極接合体(以下、MEA(Membrane Electrode Assembly)と称する)11とを有している。MEA11は、電解質膜12と、電解質膜12の一方の面及び他方の面のそれぞれに形成されたアノード触媒層14a及びカソード触媒層14c(以下、触媒層と称する)とを含む。拡散層16a及び16cは、ガス透過性及び導電性を有する材料、例えば炭素繊維や黒鉛繊維などの多孔質の繊維基材で形成されている。拡散層16a及び16cは、それぞれ触媒層14a及び14cに接合されている。尚、拡散層16a及び16cの少なくとも一方が、金属発泡焼結体や網状のエキスパンドメタル等の多孔体であってもよい。また、触媒層14aに撥水層が接合され、この撥水層に拡散層16aが接合されていてもよい。同様に、触媒層14cに撥水層が接合され、この撥水層に拡散層16cが接合されていてもよい。
【0026】
流路溝20A及び20Bは、Y方向から見てその断面形状は波形状である。流路溝20A及び20Bは、X方向、即ち流路溝20A及び20Bが並んだ方向に繰り返し連続した、リブ部21、側部23、底部25、及び側部27により画定されている。リブ部21は、拡散層16aに当接している。底部25は、リブ部21と略平行であり拡散層16aから退避している。側部23は、リブ部21とこのリブ部21よりも+X方向側にある底部25との間で、このリブ部21及び底部25に対して傾斜して連続している。側部27は、底部25とこの底部25よりも+X方向側にあるリブ部21との間で、この底部25及びリブ部21に対して傾斜して連続している。側部23及び27は、この側部23及び27の間のリブ部21の、X方向の中心を通過するYZ平面に対して略対称である。
【0027】
拡散層16a側で、側部23、底部25、及び側部27により囲まれた空間が、セパレータ20の流路溝20Aとして画定される。また、底部25は
図2Aに示した単セル2の上方側に隣接する不図示の他の単セルのカソードセパレータに当接する。この不図示のカソードセパレータ側で、リブ部21と、側部23及び27とにより囲まれた空間がセパレータ20の流路溝20Bとして画定される。このように流路溝20A及び20Bは、セパレータ20に表裏一体に形成されている。
【0028】
同様に、流路溝40A及び40Bは、Y方向から見てその断面形状は波形状である。流路溝40A及び40Bは、X方向に繰り返し連続した、リブ部41、側部43、底部45、側部47により画定されている。リブ部41は、拡散層16cに当接している。底部45は、リブ部41と略平行であり拡散層16cから退避している。側部43は、リブ部41とこのリブ部41よりも+X方向側にある底部45との間で、このリブ部41及び底部45に対して傾斜して連続している。側部47は、底部45とこの底部45よりも+X方向側にあるリブ部41との間で、この底部45及びリブ部41に対して傾斜して連続している。側部43及び47は、この側部43及び47の間のリブ部41の、X方向の中心を通過するYZ平面に対して略対称である。
【0029】
拡散層16c側で、側部43、底部45、及び側部47により囲まれた空間が、セパレータ40の流路溝40Aとして画定される。また、底部45は
図2Aに示した単セル2の下方側に隣接する不図示の他の単セルのアノードセパレータに当接する。この不図示のアノードセパレータ側で、リブ部41と、側部43及び47とにより囲まれた空間がセパレータ40の流路溝40Bとして画定される。このように流路溝40A及び40Bは、セパレータ40に表裏一体に形成されている。
【0030】
図2Bは、セパレータ40の部分拡大断面図である。側部43及び47には、それぞれ排水溝44及び48が、流路溝40Aに沿って延びて形成されている。詳細には、排水溝44及び48は流路溝40Aと平行である。
図2Bから明らかであるが、排水溝44及び48の各幅や各深さは、流路溝40A及び40Bの各幅や各深さよりも小さい。排水溝44及び48は、それぞれ、Y方向に垂直な断面視で、側部43及び47の略中央部に形成されている。排水溝44及び48は、セパレータ40の面40aに窪んで形成されている。このため、発電反応により生じた生成水等が排水溝44及び48に捕捉される。排水溝44及び48で捕捉された液水は、カソードガスの圧力を受けて排水溝44及び48に沿ってカソードガスの下流側へと流れ、カソードガス排出マニホールドを介して燃料電池1の外部へ排出される。
【0031】
また、面40bの排水溝44に対向する部位は、流路溝40B側に突出している。このため、この部位の表面積が確保されている。ここで、セパレータ40を介して流路溝40A側では、発電反応により生じた熱や、不図示のコンプレッサにより圧縮されて高温となったカソードガスが流れることにより、比較的高温となっている。これに対して、セパレータ40を介して流路溝40Bでは冷媒が流れる低温となっている。従って、面40bの排水溝44に対向する部位の表面積が確保されていることにより、面40a側で排水溝44の内面にカソードガスと共に接する水蒸気と、面40bの排水溝44に対向する部位に接する冷媒との熱交換効率が向上している。即ち、排水溝44の内面が冷媒により冷却されやすい構成となっている。このため、排水溝44の内面上での水蒸気の凝縮が促進される。これにより、排水溝44内で発生した凝縮水を燃料電池1から排出できる。排水溝48についても同様である。尚、セパレータ20にも同様の排水溝が形成されている。
【0032】
次に、セパレータ40の製造方法について説明する。
図3は、セパレータ40の製造方法を示すフローチャートである。尚、セパレータ20の製造方法は、セパレータ40と同様であるため、説明を省略する。
図4A~4Cは、セパレータ40の製造の際に用いられる型70及び80の説明図である。
図4Aは、型70及び80の外観を示しており、
図4B及び
図4Cはそれぞれ型70及び80の部分拡大図である。
図5A~
図6Bは、セパレータ40の製造方法の説明図である。セパレータ40の流路溝40A及び40Bはプレス加工により形成される。尚、
図4B、
図4C、
図5A~
図6Bにおいては、型の一部分を拡大した断面で示している。まず、セパレータ40の基材である平板状の金属板40´´と、型70及び80とを準備する(ステップS10)。
【0033】
図4A及び
図4Bに示すように、型80に対向した型70の面には、Y方向に延びた溝70Aが複数形成されており、X方向に波形状となっている。同様に型70に対向した型80の面には、Y方向に延びた溝80Aが複数形成されており、X方向に波形状となっている。型70及び80は、それぞれ第1及び第2型の一例である。また、型70の型80側の面には、溝70AをY方向から挟むように、凹み部70c1~70c3と凹み部70c4~70c6とが形成されている。同様に、型80の型70側の面には、溝80AをY方向から挟むように、凹み部80c1~80c3と凹み部80c4~80c6とが形成されている。溝70A及び80Aは、セパレータ40の40A及び40Bを形成するための部分である。凹み部70c1~70c6と凹み部80c1~80c6は、互いに対向しており、孔c1~c6を形成するための部分である。
【0034】
溝70Aは、X方向に順に形成された凹面71、側面73、凸面75、側面77により画定される。凸面75は、凹面71よりも型80側に突出しており、凹面71は凸面75よりも型80側から退避している。凹面71と凸面75とは互いにX方向に略平行であって平坦である。側面73は、凹面71と凹面71よりも+X方向側にある凸面75との間に位置して傾斜しており、両面の間で連続している。側面77は、凸面75と凸面75よりも+X方向側にある凹面71との間に位置しており、両面の間で連続している。側面73及び77のそれぞれには、側面73及び77のそれぞれから型80側に部分的に突出した突出面74及び78がY方向、即ち溝70Aが延びた方向に連続して形成されている。突出面74及び78は、溝70Aが延びたY方向で、それぞれ側面73及び77の全面にわたって形成されている。突出面74及び78は、それぞれ側面73及び77のX方向での略中心に設けられている。側面73から突出面74の突出高さ及び突出幅は、Y方向で一定であり、側面77からの突出面78の突出高さ及び突出幅についても同様である。側面73及び77は、この側面73及び77の間の凸面75の、X方向の中心を通過するYZ平面に対して略対称であり、突出面74及び78も略対称である。
【0035】
図4A及び
図4Cに示すように、溝80Aは、X方向に順に形成された凸面81、側面83、凹面85、側面87により画定される。凹面85は、凸面81よりも型70側から退避しており、凸面81は凹面85よりも型70側に突出している。凸面81と凹面85とは互いにX方向に略平行であって平坦に形成されている。側面83は、凸面81と凸面81よりも+X方向側にある凹面85との間に位置して傾斜しており、両面の間で連続している。側面87は、凹面85と凹面85よりも+X方向側にある凸面81との間に位置して傾斜しており、両面の間で連続している。側面83及び87のそれぞれには、窪んだ窪み面84及び88がY方向、即ち溝80Aが延びた方向に連続して形成されている。窪み面84及び88は、溝80Aが延びたY方向で、それぞれ側面83及び87の全面にわたって形成されている。窪み面84及び88は、それぞれ側面83及び87のX方向での略中心に設けられている。側面83からの窪み面84の窪み深さ及び窪み幅は、Y方向で一定であり、側面87からの窪み面88の窪み深さ及び窪み幅についても同様である。側面83及び87は、この側面83及び87の間の凹面85の、X方向の中心を通過するYZ平面に対して略対称であり、窪み面84及び88も略対称である。
【0036】
型70の溝70A及び型80の溝80Aは相補形状である。具体的には、凹面71、側面73、凸面75、及び側面77は、それぞれ凸面81、側面83、凹面85、及び側面87と互いに相補形状である。また、突出面74及び78は、それぞれ窪み面84及び88と互いに相補形状である。
【0037】
次に、
図5Aに示すように、型70及び80の間に、金属板40´´を配置する(ステップS20)。ここで、型80が固定型であり、型70は型80に対して開閉方向Dに移動可能な可動型である。従って、型70を型80に接近させて型70及び80が閉じる。ここで、型80に対して型70が開く方向と、型80に対して型70が閉じる方向とは互いに反対方向である。尚、型70が固定型であり型80が可動型であってもよい。本実施例では、開閉方向DはZ方向に平行であるがこれに限定されない。
【0038】
尚、凹面71、側面73、凸面75、及び側面77、がそれぞれ、凸面81、側面83、凹面85、及び側面87に開閉方向Dで対向するように、型70及び80は配置されている。また、凹面71及び凸面75は、開閉方向Dに互いに離れ開閉方向Dに垂直な方向に互いに離れている。同様に、凸面81及び凹面85は、開閉方向D及び開閉方向Dに垂直な方向に互いに離れている。溝70Aは、第1溝の一例である。溝80Aは、型70との開閉方向Dで互いに対向し溝70Aと相補形状であって溝70Aと共に金属板40´´に流路溝40A及び40Bを形成する第2溝の一例である。
【0039】
次に
図5Bに示すように、型70及び80を閉じる(ステップS30)。即ち、金属板40´´をプレス加工する。プレス加工が開始されると、凸面75は金属板40´´を型80側に押圧し、凸面81は金属板40´´を型70側に押圧し、金属板40´´は型70及び80の形状に沿うように変形する。また、金属板40´´は、突出面74と窪み面84との間、及び突出面78と窪み面88との間で変形する。このようにして、流路溝40A及び40Bや排水溝44及び48を有した成形品40´が形成される。また、上述したように、溝70A及び80Aは相補形状であるため、金属板40´´を溝70A及び80Aの双方に密着させることができ、成形品40´に形成された流路溝40A及び40Bや排水溝44及び48の寸法のばらつきの増大が抑制されている。
【0040】
次に、
図6Aに示すように、型70を型80から退避させて型70及び80を開き(ステップS40)、成型品40´を型80から離脱させる(ステップS50)。次に、成型品40´に凹み部70c1~70c6及び80c1~80c6に対向する部位に穴開け加工を実施して
図1に示したように孔c1~c6を形成する(ステップS60)。このようにしてセパレータ40が製造される。尚、セパレータ20も同様の方法により製造される。
【0041】
以上のように、一度のプレス加工により、流路溝40A及び40Bと排水溝44及び48とを有した成形品40´を形成できる。このため、製造方法が簡素化されている。また、本実施例での型70及び80によれば、アンダーカット形状ではない排水溝44及び48が形成される。以下に、排水溝44を形成する型70の突出面74について説明する。
【0042】
図7Aは、型70の突出面74周辺の部分拡大断面図である。
図7Aの断面は、溝70Aが延びた方向に垂直であり、換言すれば、開閉方向Dを含み凹面71及び凸面75が互いに離れたX方向をも含む断面である。即ち、
図7Aの断面は、XZ平面である。側面73は、上述した突出面74と、基面731とを有している。基面731は、凹面71から凸面75にかけて、凹面71及び凸面75に対して略一定の傾斜角度で延びている。突出面74は、断面視で基面731の略中央から外側に略三角形状に突出し、互いに異なる角度で連続し略直線状に延びた領域741及び742を有している。領域741は、領域742よりも凹面71側で基面731に連続している。領域742は、領域741よりも凸面75側で基面731に連続している。領域741は、領域742よりも長い。
【0043】
図7Aには、開閉方向Dに平行な複数の仮想線L1~L3を示している。仮想線L1~L3は、+X方向で順に記載している。仮想線L1は、領域741を通過し、仮想線L2は、領域741及び領域742間の境界を通過し、仮想線L3は領域742を通過する。このように突出面74を通過する仮想線L1~L3の何れも、突出面74に一点で交差しており、基面731や凹面71及び凸面75からは交差せずに離れている。換言すれば、突出面74の何れの領域も、開閉方向Dで互いに対向することはなく、基面731に対向することもない。
【0044】
ここで、上述したように突出面74を含む側面73と窪み面84を含む側面83とは相補形状であるため、突出面74が上記の要件を満たす限り、開閉方向Dで突出面74及び窪み面84の少なくとも一部が開閉を妨げるように干渉することがない。従って、型70及び80により一度のプレス加工で流路溝40A及び40Bと共に排水溝44を形成できる。突出面78及び窪み面88も同様である。尚、型80の窪み面84の形状についても、以下で簡単に説明する。
【0045】
図7Bは、型80の窪み面84周辺の部分拡大断面図である。
図7Bの断面は、溝80Aが延びた方向に垂直であり、換言すれば、開閉方向Dを含み凹面85及び凸面81が互いに離れたX方向をも含む断面である。即ち、
図7Bの断面は、XZ平面である。側面83は、上述した窪み面84と、基面831とを有している。基面831は、凸面81から凹面85にかけて、凸面81及び凹面85に対して略一定の傾斜角度で延びている。窪み面84は、断面視で基面831の略中央に略三角形状に窪んでおり、互いに異なる角度で連続し略直線状に延びた領域841及び842を有している。領域841は、領域842よりも凸面81側で基面831に連続している。領域842は、領域841よりも凹面85側で基面831に連続している。領域841は、領域842よりも長い。上述したように溝70A及び80Aは互いに相補形状であり、突出面74及び窪み面84は互いに相補形状である。このため、基面731及び831は互いに平行であり、突出面74及び窪み面84は形状が同じである。具体的には、領域741及び841は互いに並行であり、領域742及び842は互いに平行であり、領域841及び842はそれぞれ領域741及び742よりも若干長く形成されている。
図7Bにおいても、窪み面84を通過する仮想線L1~L3を示しており、この仮想線L1~L3の何れも窪み面84に一点で交差して、基面831や凹面85及び凸面81からは交差せずに離れている。
【0046】
次に、排水溝がアンダーカット形状となる場合について、比較例を参照して説明する。
図8A及び
図8Bは、それぞれ第1比較例の型70x及び80xの部分拡大断面図である。尚、これら複数の比較例では、本実施例の構成と同一の構成については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
図8Aに示すように、型70xの溝70Axの側面73xの突出面74xでは、領域741x及び742xはそれぞれ本実施例の領域741及び742とは角度が異なっており、領域742xが領域741xよりも長い。同様に、
図8Bに示すように、型80xの溝80Axの側面83xの窪み面84xでは、領域841x及び842xはそれぞれ本実施例の領域841及び842とは角度が異なっており、領域842xが領域841xよりも長い。
図8Aに示すように、仮想線L2及びL3はそれぞれ領域742xに1点で交差するが、仮想線L1は突出面74xに領域741x及び742xに2点で交差し更に基面731にも交差している。同様に、
図8Bに示すように、仮想線L2及びL3はそれぞれ領域842xに一点で交差するが、仮想線L1は領域841x及び842xに2点で交差し更に基面831に交差している。
【0047】
このような形状の突出面74x及び窪み面84xでは、開閉方向Dに型70x及び80xを閉じようとしても、突出面74xが側面83xの基面831に干渉して閉じることはできない。また、仮に型70x及び80xが閉じることができた場合であっても、突出面74xの領域741xと窪み面84xの領域841xが干渉して、型70x及び80xを開閉方向Dに開くことができない。更に、仮に型70x及び80xが閉じることができた場合であっても、成形品は、突出面74x、窪み面84x、凹面71、及び凸面81等に沿って変形しているため、成形品を型70x及び80xから取り外すことはできない。従って、第1比較例の型70x及び80xは開閉できずに、結果的に排水溝を製造できない。
【0048】
図9A及び
図9Bは、それぞれ第2比較例の型70y及び80yの部分拡大断面図である。
図9Aに示すように、第2比較例の型70yの溝70Ayの側面73yの突出面74yでは、領域741y及び742yはそれぞれ本実施例の領域741及び742とは角度が異なっている。同様に、
図9Bに示すように、型80yの溝80Ayの側面83yの窪み面84yでは、領域841y及び842yはそれぞれ本実施例の領域841及び842とは角度が異なっている。
図9Aに示すように、仮想線L1及びL2はそれぞれ領域741yに1点で交差するが、仮想線L3は領域741y及び742yの2点で交差し更に基面731に交差している。同様に、
図9Bに示すように、仮想線L1及びL2はそれぞれ領域841yに一点で交差するが、仮想線L3は領域841y及び842yの2点で交差し更に基面831に交差している。第2変形例においても、突出面74yの領域742yと窪み面84yの領域842yとが干渉して、型70y及び80yを開閉方向Dに開閉できずに、結果的に排水溝を製造できない。
【0049】
また、第1及び第2比較例の型において、型の一部を開閉方向Dとは異なる方向にスライド可能なスライドコアで構成することにより、型を開閉可能とすることはできる。しかしながら、型の構造が複雑化し、製造コストが増大する可能性がある。本実施例では、簡易な構造の型により低コストでセパレータ40を製造できる。
【0050】
次に、本実施例の型70及び80の所定の面の角度について、再度
図7A及び
図7Bを参照して説明する。
図7Aに示すように、開閉方向Dに平行であって凹面71に交差する仮想線L0と凹面71との間の側面73側の角度をXとする。凹面71と側面73の基面731と間の角度をα1とする。凹面71と突出面74の領域741と間の角度をα2とする。凹面71と突出面74の領域742との間の角度をα3とする。これらの角度は以下の関係を満たす。
X<α1<(X+90°)・・・(1)
X<α2<α3<(X+180°)・・・(2)
【0051】
式(1)は、側面73により規定されるセパレータ40の側部43自体がアンダーカット形状とならないようにする要件である。式(2)のα2<α3は、突出面が断面視で略三角形状であれば必然的に満たされる。また、式(2)は、突出面74により規定されるセパレータ40の排水溝44がアンダーカット形状とならないようにする要件である。尚、突出面74は基面731から外側に突出している限り、α1<α2は必然的に満たす。
【0052】
ここで、凹面71と突出面74の任意の位置との間の角度をαSとすると、式(2)は以下のように一般化できる。
X<αS<(X+180°)・・・(3)
【0053】
以上の関係式を満たす限り、突出面74の一部が基面731に開閉方向Dで対向することがなく、アンダーカット形状とはならない排水溝44を形成できる。尚、本実施例ではX=90°であるが、これに限定されない。Xは、理論的には0°<X<180°であればよいが、現実的には、70°<X<110°内に含まれていればよい。上記要件を満たす限り、型70の側面73と相補形状である型80の側面の形状も必然的に定まり、本実施例の型70及び80によりアンダーカット形状とはならない排水溝44を有したセパレータ40を製造できる。
【0054】
尚、型80の窪み面84が満たす要件についても説明する。
図7Bに示すように、Xは、開閉方向Dに平行であって凸面81に交差する仮想線L0と凸面81との間の図示した側面83とは反対側の角度に相当する。また、凸面81と側面83の基面831との間の角度をβ1とする。凸面81と窪み面84の領域841との間の角度をβ2とする。凸面81と窪み面84の領域842との間の角度をβ3とする。これらの角度は以下の関係を満たす。
X+90°<β1<(X+180°)・・・(4)
X<β3<β2<(X+180°)・・・(5)
【0055】
式(4)は、側面83により規定されるセパレータ40の側部43自体がアンダーカット形状とならないようにする要件である。式(5)のβ3<β2は、窪み領域が断面視で略三角形状であれば必然的に満たされる。また、式(5)は、窪み面84により規定されるセパレータ40の排水溝44がアンダーカット形状とならないようにする要件である。
【0056】
ここで、凸面81と窪み面84の任意の位置との間の角度をβSとすると、式(2)は以下のように一般化できる。
X<βS<(X+180°)・・・(6)
【0057】
次に、各面の角度の観点から第1及び第2比較例について、再度
図8A~9Bを参照して説明する。
図8Aに示すように、凹面71と領域741xとの間の角度であるα2xは、X<α2xを満たさず、具体的には、式(2)及び(3)を満たさない。また、
図8Bに示すように、凸面81と領域841xとの間の角度であるβ2xは、β2x<(X+180°)を満たさず、具体的には、式(5)及び(6)を満たさない。
図9Aに示すように、凹面71と領域742yとの間の角度であるα3yは、α3y<(X+180°)を満たさず、具体的には、式(2)及び(3)を満たさない。また、
図9Bに示すように、凸面81と領域842yとの間の角度であるβ3yは、X<β3yを満たさず、具体的には、式(5)及び(6)を満たさない。
【0058】
以上のように、凹面71と突出面74との間の角度、又は凸面81と窪み面84との間の角度によっても、アンダーカット形状とはならない排水溝を有したセパレータを製造できる型の形状を特定できる。尚、基面731と領域741との間や、領域741及び742との間、領域742と基面731との間、基面831と領域841との間や、領域841及び842との間、領域842と基面831との間に、アールを設けてもよい。
【0059】
次に、複数の変形例について説明する。尚、変形例についても、同一の構成には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図10A及び
図10Bは、それぞれ第1変形例の型70a及び80aの部分拡大断面図である。型70aの溝70Aaの側面73aの突出面74a、及び型80aの溝80Aaの側面83aの窪み面84aは、断面視で滑らかに湾曲した曲面状であって、換言すれば、半円状である。
【0060】
図10Aに示すように、突出面74aの領域741aは、断面視で突出面74aが開閉方向Dに略垂直となる位置を境界として凹面71側に位置している。突出面74aの領域742aは、上記の位置を境界として凸面75側に位置している。同様に、
図10Bに示すように、窪み面84aの領域841aは、断面視で窪み面84aが開閉方向Dに略垂直となる位置を境界として凸面81側に位置している。窪み面84aの領域842aは、上記の位置を境界として凸面75側に位置している。
【0061】
図10Aに示す仮想線L1、L2、及びL3は、それぞれ領域741a、領域741a及び742a間の境界、領域742aを通過するが、何れも突出面74aに一点で交差し、凹面71及び基面731から離れている。同様に、
図10Bに示す仮想線L1、L2、及びL3は、それぞれ領域841a、領域841a及び842a間の境界、領域842aを通過するが、何れも窪み面84aに一点で交差し、凸面81及び基面831から離れている。
【0062】
また、
図10Aに示すように、凹面71と領域741aの任意の位置との間の角度であるα2aと、凹面71と領域742aの任意の位置との間の角度であるα3aに関して、式(2)のα2及びα3をそれぞれα2a及びα3aと読み替えると、この式を満たす。即ち、第1変形例において、領域741aが第1領域に相当し、領域742aが第2領域に相当する。また、凹面71と突出面74aの任意の位置との間の角度をαSとすると、式(3)を満たす。同様に、
図10Bに示すように、凸面81と領域841aの任意の位置との間の角度であるβ2aと、凸面81と領域842aの任意の位置との間の角度であるβ3aに関しても、式(5)のβ2及びβ3をそれぞれβ2a及びβ3aと読み替えると、この式を満たす。また、凸面81と窪み面84aの任意の位置との間の角度をβSとすると、式(6)を満たす。以上のように、第1変形例の型70a及び80aによっても、アンダーカット形状ではない排水溝を備えたセパレータを低コストで製造できる。
【0063】
また、第1変形例では、断面視で突出面74a及び窪み面84aが湾曲しているため、プレス加工時に突出面74a及び窪み面84aにより基材に局所的に大きな負荷が作用することが抑制されている。また、製造されたセパレータの排水溝の形状も、突出面74a及び窪み面84aに沿うように湾曲するため、この排水溝の内側を流れるガスの圧損の増大を抑制でき、排水溝の反対側を流れる冷媒の圧損の増大も抑制される。尚、第1変形例においても、基面731と領域741aとの間や、領域742aと基面731との間、基面831と領域841aとの間や、領域842aと基面831との間に、アールを設けてもよい。
【0064】
図11A及び
図11Bは、それぞれ第2変形例の型70b及び80bの部分拡大断面図である。型70bの溝70Abの側面73bの突出面74b、及び型80bの溝80Abの側面83bの窪み面84bは、断面視で略台形状であって、それぞれ3つの直線状の領域を有している。突出面74bは、領域741b、742b、及び743bを含む。具体的には、凹面71側から凸面75側に、領域741b、743b、及び742bの順に連続している。具体的には、領域741bは凹面71側で基面731に連続している。領域742bは凸面75側で基面731に連続している。領域743bは領域741b及び742bの間でこれらに連続している。領域741bは、領域742b及び743bの何れよりも長く、領域742bは、領域741b及び743bの何れよりも短い。また、領域743bは、開閉方向Dに対して略垂直である。同様に、窪み面84bは、領域841b、842b、及び843bを含む。凸面81側から凹面85側に、領域841b、843b、及び842bの順に連続している。領域743b及び843bも互いに平行である。
【0065】
図11Aに示す仮想線L1、L2、L3は、それぞれ領域741b、743b、及び742bを通過するが、何れも突出面74bに一点で交差し凹面71及び基面731から離れている。同様に、
図11Bに示す仮想線L1、L2、及びL3は、それぞれ領域841b、843b、及び842bを通過するが、何れも窪み面84bに一点で交差し凸面81及び基面831から離れている。
【0066】
また、
図11Aに示すように、凹面71と領域741bとの間の角度であるα2bと、凹面71と領域742bとの間の角度であるα3bに関して、式(2)のα2及びα3をそれぞれα2b及びα3bと読み替えると、この式を満たす。即ち、第2変形例において、領域741bが第1領域に相当し、領域742bが第2領域に相当する。また、α3bと、凹面71と領域743bとの間の角度であるα4bに関し、式(2)のα2及びα3をそれぞれα4b及びα3bと読み替えると、この式を満たす。即ち、第2変形例においては、領域742bが第1領域に相当し、領域743bが第2領域に相当する。また、凹面71と突出面74bの任意の位置との間の角度をαSとすると、上述した式(3)を満たす。
【0067】
同様に、
図11Bに示すように、凸面81と領域841bとの間の角度であるβ2bと、凸面81と領域842bとの間の角度であるβ3bに関して、式(5)のβ2及びβ3をそれぞれβ2b及びβ3bと読み替えると、この式を満たす。また、β3bと、凸面81と領域843bとの間の角度であるβ4bに関し、式(5)のβ2及びβ3をそれぞれβ4b及びβ3bと読み替えると、この式を満たす。また、凹面71と窪み面84bの任意の位置との間の角度をβSとすると、式(6)を満たす。以上のように、第2変形例の型70b及び80bによっても、アンダーカット形状ではない排水溝を備えたセパレータを低コストで製造できる。
【0068】
第2変形例では、断面視で突出面74b及び窪み面84bが略台形状であり、領域743b及び843bの幅が確保されている。このため、突出面74b及び窪み面84bにより形成された排水溝は、溝底面の幅が確保されている。このため、排水溝の容積を確保することができ、排水溝から液水があふれることが抑制され、排水性が確保されている。尚、第2変形例においても、基面731と領域741bとの間や、領域741b及び743bの間等の角部に、アールを設けてもよい。
【0069】
図12A及び
図12Bは、それぞれ第3変形例の型70c及び80cの部分拡大断面図である。型70cの溝70Acの側面73cの突出面74cは、断面視で、2つの略三角形が側面73cに沿って並んだ形状である。具体的には、突出面74cは、凹面71側から凸面75側に順に連続した領域741c、742c、743c、及び744cを含む。領域741c及び742cは略三角形状に突出している。同様に、領域743c及び744c略三角形状に突出している。領域741c及び743cは互いに略平行である。領域742c及び744cは互いに略平行である。同様に、型80cの溝80Acの側面83cの窪み面84cは、断面視で、2つの略三角形状が側面83cに沿って並んだ形状である。窪み面84cは、凸面81側から凹面85側に順に連続した領域841c、842c、843c、及び844cを含む。領域841c及び842c略三角形状に突出している。同様に、領域843c及び844c略三角形状に突出している。領域841c及び843cは互いに略平行である。領域842c及び844cは互いに略平行である。
【0070】
図12Aに示すように、仮想線L1、L2、及びL3は、それぞれ、領域741c、742c、及び744cを通過し、何れも突出面74cに一点で交差する。また、
図12Aには示されていないが、開閉方向Dに平行であって領域743cを通過する仮想線も、突出面74cに一点で交差することは明らかである。同様に、
図12Bに示すように、仮想線L1、L2、及びL3は、それぞれ、領域841c、842c、及び844cを通過し、何れも窪み面84cに一点で交差する。また、
図12Bには示されていないが、開閉方向Dに平行であって領域843cを通過する仮想線も、窪み面84cに一点で交差することは明らかである。
【0071】
また、凹面71と領域741cとの間の角度であるα2cは、凹面71と領域743cとの間の角度は略同じである。凹面71と領域742cとの間の角度であるα3cと、凹面71と領域744cとの間の角度は略同じである。従って、式(2)のα2及びα3をそれぞれα2c及びα3cと読み替えると、この式を満たす。即ち、第3変形例において、領域741cが第1領域に相当し、領域742cが第2領域に相当する。また、凹面71と突出面74cの任意の位置との間の角度をαSとすると、式(3)を満たす。同様に、凸面81と領域841cとの間の角度であるβ2cは、凸面81と領域843cとの間の角度と略同じである。凸面81と領域842cとの間の角度であるβ3cは、凸面81と領域844cとの間の角度と略同じである。従って、式(5)のβ2及びβ3をそれぞれβ2c及びβ3cと読み替えると、この式を満たす。また、凹面71と窪み面84cの任意の位置との間の角度をβSとすると、式(6)を満たす。以上のように、第3変形例の型70c及び80cによっても、アンダーカット形状ではない排水溝を備えたセパレータを低コストで製造できる。
【0072】
第3変形例の型70c及び80cにより形成されたセパレータの排水溝は、単一の側部に2つ形成されるため、2つの排水溝により捕捉される液水の確保を確保することができる。尚、第3変形例においても、基面731と領域741cとの間等の角部に、アールを設けてもよい。
【0073】
第3変形例では、領域741c及び743cは互いに略平行であり、領域742c及び744cは互いに略平行であり、領域841c及び843cは互いに略平行であり、領域842c及び844cは互いに略平行であるが、これに限定されない。
【0074】
また、第3変形例での突出面74c及び窪み面84cは、2つの略三角形が並んだ形状であるが、これに限定されず、例えば、略半円形又は略台形が複数並んだ形状であってもよい。また、突出面及び窪み面の各形状は、略三角形、略半円形、略台形のうち少なくとも2つが並んだ形状であってもよい。
【0075】
また、第3変形例での突出面74cは、2つの略三角形状が連続した形状であるが、例えば単一の側面に所定の距離を空けて2つの領域に分離していてもよい。この場合、2つの領域間に基面を挟むが、この分離した2つの領域が単一の突出面と解釈される。従って、2つの領域の一方を通過する仮想線は、2つの領域の他方を通過せずに、一方のみと交差すればよい。また、2つの領域の何れも、上述した角度の関係を満たせばよい。窪み面84cについても同様である。
【0076】
次に、上述した実施例及び変形例に示した型によりセパレータに形成される排水溝の水力直径について説明する。排水溝の水力直径とは、排水溝の断面積と等価とみなせる断面積を有した円管の直径を意味する。
図13は、排水溝の水力直径と毛管力との関係を示したグラフである。
図13は、横軸は水力直径を示し、縦軸は毛管力を示している。
図13に示すように、排水溝の水力直径と毛管力とは、反比例の関係にある。ここで、形成される排水溝の水力直径は、2μm以上であって200μm以下であることが好ましい。排水溝の水力直径が2μm以上であることにより、排水溝で捕捉できる液水の量が確保できるからである。また、排水溝の水力直径が200μm以下であることにより、排水溝の毛管力によって液水を排水溝内に吸引することでき、液水の捕捉性を確保できるからである。また、排水溝の水力直径は、5μm以上であって150μm以下でもよい。また、排水溝の水力直径は、好ましくは7μm以上であって150μm以下であり、更に好ましくは、10μm以上であって100μm以下である。
【0077】
ここで、例えば上述した実施例では、型70の突出面74が溝の内面であると仮定した場合に、その溝の水力直径が上記の範囲内であることが好ましい。突出面74が排水溝44の内面を規定するため、上記のように仮定した場合に溝の水力直径が上記範囲を満たすことにより、突出面74により形成される排水溝44の水力直径も上記範囲内となる場合が多いからである。同様に、変形例においても突出面74a~74cのそれぞれを溝の内面であると仮定した場合に、その溝の水力直径が上記の範囲内であることが好ましい。
【0078】
上記の実施例及び変形例で、基面731及び831は、断面視で直線状であるがこれに限定されない。例えば、略一定の曲率で緩やかに湾曲していてもよい。この場合、基面731及び831は相補形状であるため、例えば基面731が外側に湾曲した形状であるとすると、基面831は内側に湾曲した形状である。
【0079】
上述した実施例及び変形例では、セパレータの基材として金属板を用いたがこれに限定されない。例えば、基材は複数の層を備えていてもよい。例えば、金属層と導電性樹脂層とを備えた基材であってもよい。金属層は、例えば金属板である。導電性樹脂層は、例えば絶縁性の樹脂バインダ中に、金属製である導電性の粒子が分散されたものである。
【0080】
実施例及び変形例では、金属板である基材をプレス加工したが、これに限定されない。例えば、主成分であるカーボン粉末に樹脂バインダが混合された粉体状の材料を基材として、本実施例及び変形例の型により加熱圧縮加工してもよい。また、樹脂バインダ中に導電性の粒子が分散された導電性樹脂を基材として、本実施例及び変形例の型を用いて射出成型してもよい。何れの場合にも、型を開閉でき、アンダーカット形状ではない排水溝を有したセパレータを低コストで製造できる。
【0081】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 燃料電池
2 単セル
20 アノードセパレータ
40 カソードセパレータ
21、41 リブ部
25、45 底部
23、27、43、47 側部
44、48 排水溝
20A、20B、40A、40B 流路溝
70、80 型
70A、80A 溝
71、85 凹面
73、77、83、87 側面
75、81 凸面
731,831 基面
74 突出面
84 窪み面
L1、L2、L3 仮想線