(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】フレキシブル多チャンネル無線オーディオ受信機システム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/08 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
H04B7/08 020
H04B7/08 372A
H04B7/08 480
(21)【出願番号】P 2018511635
(86)(22)【出願日】2016-09-02
(86)【国際出願番号】 US2016050069
(87)【国際公開番号】W WO2017040904
(87)【国際公開日】2017-03-09
【審査請求日】2019-07-25
(32)【優先日】2015-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504189151
【氏名又は名称】シュアー アクイジッション ホールディングス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SHURE ACQUISITION HOLDINGS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】クントマン トマス ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】グッドソン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】マモラ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ムニエ ジェフリー アーサー
(72)【発明者】
【氏名】ショプコ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】タン ヤン
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-015826(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105074(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/149997(WO,A1)
【文献】特開2008-252850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0117527(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線オーディオ受信機であって、
前記無線オーディオ受信機の複数のモードのうちの1つのモードのユーザ選択を可能にするモード選択インターフェイスと、
各々がそれぞれのアンテナから1又は2以上のオーディオ信号を含む複数のRF信号を受け取るように構成された複数の無線周波数(RF)ポートと、
前記複数のRFポートと通信するアンテナ分配モジュールと、
を備え、前記アンテナ分配モジュールは、
第1のモードにある時に、前記複数のRF信号を複数の下流処理要素のうちの1つ又は2つ以上に経路指定し、
第2のモードにある時に、前記複数のRF信号の
少なくとも一部を前記複数のRFポートの
少なくとも一部において出力されるように経路指定し、前記複数のRF信号の
前記少なくとも一部を前記複数の下流処理要素のうちの1つ又は2つ以上に経路指定する、
ように構成される、
ことを特徴とする無線オーディオ受信機。
【請求項2】
前記複数の下流処理要素は、各々が前記アンテナ分配モジュールと通信する複数のRFアナログ処理モジュールを含み、該複数のRFアナログ処理モジュールの各々は、前記経路指定されたRF信号のうちの特定の周波数における1つのRF信号を処理して、複数のアナログ変調信号のうちの中間周波数における1つのアナログ変調信号を生成するように構成され、
前記無線オーディオ受信機は、
各々が前記複数のRFアナログ処理モジュールと通信し、各々が前記複数のアナログ変調信号のうちの1つを複数のデジタル変調信号のうちの1つに変換するように構成された複数のアナログ-デジタルコンバータ(ADC)と、
前記複数のADCと通信し、前記複数のデジタル変調信号の各々を複数のデジタルオーディオ信号のうちの1つに
復調するように構成されたデジタル信号処理(DSP)モジュールと、
をさらに備える、
請求項1に記載の無線オーディオ受信機。
【請求項3】
前記DSPモジュールは、前記複数のデジタル変調信号の各々を前記複数のデジタルオーディオ信号のうちの1つに復調するように構成される、
請求項2に記載の無線オーディオ受信機。
【請求項4】
前記DSPモジュールは、前記複数のデジタル変調信号の各々
を合成デジタル復調信号
へと合成
、復調するようにさらに構成される、
請求項2に記載の無線オーディオ受信機。
【請求項5】
前記DSPモジュールは、
前記複数のデジタル変調信号の各々の信号対ノイズ比(SNR)に基づいて
、前記複数のデジタル変調信号の各々を前記合成デジタル復調信号
へと合成
、復調するように構成される、
請求項4に記載の無線オーディオ受信機。
【請求項6】
前記DSPモジュールは、
各々が前記複数のデジタル変調信号(y)のうちの1つを受け取るように構成されるとともに、各々が、
前記デジタル変調信号のチャンネル推定値(h)を導出し、
前記デジタル変調信号の正規化ノイズ電力(σ
2)を測定し、
前記チャンネル推定値に基づいて正規化受信信号を導出する、
ように構成された複数の検出器と、
前記正規化ノイズ電力及び前記正規化受信信号に基づいて、前記複数のデジタル変調信号を合成して合成変調信号を生成するように構成されたSNR最大化合成モジュールと、を含む、請求項5に記載の無線オーディオ受信機。
【請求項7】
前記複数の検出器の各々は、
前記デジタル変調信号における1又は2以上のパイロットシンボルを検出し、
前記検出されたパイロットシンボルに基づいて前記デジタル変調信号の前記チャンネル推定値を導出することによって前記チャンネル推定値を導出し、
前記検出されたパイロットシンボルに基づいて前記デジタル変調信号の前記正規化ノイズ電力を測定することによって前記正規化ノイズ電力を測定する、
ようにさらに構成される、請求項6に記載の無線オーディオ受信機。
【請求項8】
前記DSPモジュールは、
前記合成変調信号を合成復調信号に復調する復号器と、
前記合成復調信号を合成デジタルオーディオ信号に処理するオーディオ処理モジュールと、
をさらに含む、請求項6に記載の無線オーディオ受信機。
【請求項9】
前記DSPモジュールは、
各々が前記複数のデジタル変調信号のうちの1つを複数の復調信号のうちの1つに復調するように構成された複数の復号器と、
各々が前記複数の復調信号のうちの1つを前記複数のデジタルオーディオ信号のうちの1つに処理するよう構成された複数のオーディオ処理モジュールと、
をさらに含む、請求項2に記載の無線オーディオ受信機。
【請求項10】
無線オーディオ受信機であって、
(A)各々がそれぞれのアンテナから1又は2以上のオーディオ信号を含む第1の複数のRF信号を受け取るように構成された第1の複数の無線周波数(RF)ポートと、
(B)各々がそれぞれのアンテナから1又は2以上のオーディオ信号を含む第2の複数のRF信号を受け取るように構成されるとともに、前記無線オーディオ受信機のモードに基づいて前記第1の複数のRF信号のうちの1つを出力するようにさらに構成された第2の複数のRFポートと、
(C)各々が前記第1の複数のRFポートの各々に関連する第1の複数のアンテナ分配モジュールと、
(D)各々が前記第2の複数のRFポートの各々に関連する第2の複数のアンテナ分配モジュールと、
を備え、前記第1の複数のアンテナ分配モジュールの各々は、
前記第1の複数のRFポートの1つと通信して、前記第1の複数のRF信号のうちの1つを、複数の下流処理要素のうちの1つ又は2つ以上と、第1のスイッチと、第2のスイッチとに経路指定される第1の複数の分割RF信号に分割する第1の分割器と、
前記第1の分割器及び前記複数の下流処理要素のうちの1つ又は2つ以上と通信し、前記第1の複数の分割RF信号のうちの1つと第2の複数の分割RF信号のうちの1つとを切り換える前記第1のスイッチと、
を含み、前記第2の複数のアンテナ分配モジュールの各々は、
前記第2の複数のRFポートのうちの1つ及び前記第1の分割器と通信し、前記第1の複数の分割RF信号のうちの1つと前記第2の複数のRF信号のうちの1つとを切り換える前記第2のスイッチと、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチと通信し、前記第2の複数のRF信号のうちの1つを、前記第1のスイッチに経路指定される第2の複数の分割RF信号に分割する第2の分割器と、
を含む、
ことを特徴とする無線オーディオ受信機。
【請求項11】
前記複数の下流処理要素は、前記RF信号のうちの特定の周波数における1つのRF信号を処理して複数のアナログ変調信号のうちの中間周波数における1つのアナログ変調信号を生成するように構成された複数のRFアナログ処理モジュールを含む、
請求項10に記載の無線オーディオ受信機。
【請求項12】
各々が前記複数のRFアナログ処理モジュールと通信し、各々が前記複数のアナログ変調信号のうちの1つを複数のデジタル変調信号のうちの1つに変換するように構成された複数のアナログ-デジタルコンバータ(ADC)と、
前記複数のADCと通信し、前記複数のデジタル変調信号の各々を複数のデジタルオーディオ信号のうちの1つに
復調するように構成されたデジタル信号処理(DSP)モジュールと、
をさらに備える、請求項11に記載の無線オーディオ受信機。
【請求項13】
前記DSPモジュールは、
各々が前記複数のデジタル変調信号(y)のうちの1つを受け取るように構成されるとともに、各々が、
前記デジタル変調信号のチャンネル推定値(h)を導出し、
前記デジタル変調信号の正規化ノイズ電力(σ
2)を測定し、
前記チャンネル推定値に基づいて正規化受信信号を導出する、
ように構成された複数の検出器と、
前記正規化ノイズ電力及び前記正規化受信信号に基づいて、前記複数のデジタル変調信号のうちの2つ又は3つ以上を合成して合成変調信号を生成するように構成されたSNR最大化合成モジュールと、
を含む、請求項12に記載の無線オーディオ受信機。
【請求項14】
前記複数の検出器の各々は、
前記デジタル変調信号における1又は2以上のパイロットシンボルを検出し、
前記検出されたパイロットシンボルに基づいて前記デジタル変調信号の前記チャンネル推定値を導出することによって前記チャンネル推定値を導出し、
前記検出されたパイロットシンボルに基づいて前記デジタル変調信号の前記正規化ノイズ電力を測定することによって前記正規化ノイズ電力を測定する、
ようにさらに構成される、請求項13に記載の無線オーディオ受信機。
【請求項15】
前記DSPモジュールは、
前記合成変調信号を合成復調信号に復調する復号器と、
前記合成復調信号を合成デジタルオーディオ信号に処理するオーディオ処理モジュールと、
をさらに含む、請求項13に記載の無線オーディオ受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2015年9月4日に出願された米国特許出願第14/846,373号の利益を主張するものであり、この文献の内容は全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、一般にフレキシブル多チャンネル無線オーディオ受信機システムに関する。具体的には、本出願は、それぞれのアンテナで受け取ったオーディオ信号を含む複数の無線周波数(RF)信号の経路指定(ルーティング)、フィルタリング、処理及び合成を行う多チャンネルダイバーシティ無線オーディオシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
オーディオ制作では、テレビ番組、ニュース放送、映画、ライブイベント及びその他のタイプの製作物などの製作物の音を取り込み、録音して提供するために、マイク、無線オーディオ送信機、無線オーディオ受信機、録音機及び/又ミキサを含む多くの構成要素の使用が必要となり得る。通常は、製作物の音をマイクが取り込み、この音がマイク及び/又は無線オーディオ送信機から無線オーディオ受信機に無線で送信される。無線オーディオ受信機は、クルーメンバが録音及び/又はミキシングを行うための、プロダクションサウンドミキサなどの録音機及び/又はミキサに接続することができる。これらの録音機及び/又はミキサには、クルーメンバがオーディオレベル及びタイムコードをモニタできるように、コンピュータ及びスマートフォンなどの電子装置を接続することができる。
【0004】
無線オーディオ送信機、無線オーディオ受信機、無線マイク及びその他のポータブル無線通信装置は、変調オーディオ信号、データ信号及び/又は制御信号などのデジタル又はアナログ信号を含む無線周波数(RF)信号を送受信するためのアンテナを含む。ポータブル無線通信装置のユーザとしては、舞台出演者、歌手、俳優及びニュースレポータなどが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線オーディオ送信機は、オーディオ信号を含むRF信号を無線オーディオ受信機に送信することができる。無線オーディオ送信機は、例えばユーザの手に握られる、一体型送信機及びアンテナを含む無線ハンドヘルドマイクに含めることができる。RF信号は、無線オーディオ受信機において受け取られる際に、建設的干渉及び/又はその他のタイプの干渉によって生じるマルチパスフェージングに起因して劣化することがある。この劣化によってRF信号の信号対ノイズ比(SNR)が悪化することにより、結果として得られる出力オーディオのオーディオアーチファクト及びミューティングを引き起こすビットエラーが生じる可能性がある。しかしながら、専門家の舞台作品中及びコンサート中などの多くの状況及び環境において、出力オーディオのミューティングは望ましくない。このようなマルチパスフェージング及び干渉の影響は、例えば環境内のマイクの動き、他のRF信号、大会場での動作などの物理的及び電気的要因がRF信号の送受信に影響を与える過酷なRF環境において最もよく見られる。
【0006】
RF信号のマルチパスフェージングの問題を軽減するために、無線オーディオ要素は、周波数ダイバーシティ及び/又はアンテナダイバーシティ技術を利用することができる。具体的には、無線オーディオ送信機が、周波数ダイバーシティを利用して、いずれも同じオーディオ信号を含む2つの別個の周波数の2つのRF信号を1つのアンテナ上で合成RF信号の形で同時に送信することができる。この時、無線オーディオ受信機は、内在するRF信号の一方又は両方を使用することができる。また、無線オーディオ受信機は、アンテナダイバーシティを利用して、無線オーディオ送信機からのRF信号を複数のアンテナで同時に受け取ることもできる。受け取ったRF信号を合成して、信号オーディオ出力を生成することができる。
【0007】
場合によっては、十分な性能をもたらすのに2つのアンテナシステムでは不十分な場合もある。指向性利得が異なるアンテナのユーザから恩恵を受けて無線システムのカバレッジが拡張されるようにするには、2つよりも多くのアンテナが望ましいこともある。例えば、ある特定の会場の複数の「ゾーン」を単一の無線受信機によってカバーする必要があったり、及び/又は会場が非常に大きかったりすることもある。このような状況では、2つよりも多くのアンテナ位置を有することによってカバレッジが改善され、送信機からアンテナまでの距離が減少することがある。このように、従来の2アンテナダイバーシティでは十分な性能が得られないこともある。
【0008】
通常、既存の無線オーディオ受信機は、周波数ダイバーシティ及び/又はアンテナダイバーシティ技術を利用する場合、各RF信号に等しいノイズ電力が存在するという想定の下に、最大比合成(MRC)を用いて各RF信号を比例的にスケーリングすることによって、複数のアンテナで受け取られた複数のRF信号を合成する。しかしながら、例えば1つのアンテナが干渉源に近い時などのようにアンテナが非対称のノイズを受ける場合、合成信号の信号対ノイズ比はMRCによって最大にならない。この結果、受信機は、音の劣化又はミューティングなどの非最適なオーディオ出力を生じることがある。また、既存の無線オーディオ受信機は、状況及び環境によってはさらなる構成要素及び複雑な構成を必要とすることもある。例えば、2つよりも多くのアンテナを利用する場合には、外部アンテナ混合器及び外部スイッチが必要になることがある。
【0009】
従って、これらの課題に対処する多チャンネル無線オーディオ受信機システムに可能性がある。具体的には、異なる選択モードにおいて複数のRF信号の柔軟な経路指定を行うとともに、複数のRF信号を合成して信号対ノイズ比を最大化することによって過酷なRF環境において待ち時間が短く途切れのない信号の受信を実現する多チャンネルダイバーシティ無線オーディオ受信機システムに可能性がある。さらに、RF信号対ノイズ比要件の高い(16-QAM及び64-QAMなどの)高次変調スキームを利用する際に性能利点をもたらす多チャンネルダイバーシティ無線オーディオ受信機システムに可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、とりわけ(1)異なる選択モードにおいて複数のRF信号を異なるRFアナログ処理モジュールに柔軟に経路指定し、(2)複数のRF信号をそのそれぞれのSNRに比例してスケーリングすることによって合成することにより、合成信号のSNRを最大化し、(3)受信RF信号をカスケード処理して受信機のデイジーチェーン接続を可能にし、(4)必要不可欠な音源のためのさらなるアンテナ入力に対するさらなる冗長的なRF処理チャンネルの割り当てを可能にし、(5)所与のオーディオチャンネルに対するRFチャンネルの割り当てを減少させて復号できるオーディオチャンネルの数を最大化する、ように設計された多チャンネル無線オーディオ受信機システム及び方法を提供することによって上述の問題を解決することを目的とする。
【0011】
1つの実施形態では、無線オーディオ受信機が、無線オーディオ受信機の複数のモードのうちの1つのモードのユーザ選択を可能にするモード選択インターフェイスと、各々がそれぞれのアンテナから1又は2以上のオーディオ信号を含む複数のRF信号を受け取るように構成された複数の無線周波数(RF)ポートと、複数のRFポートと通信するアンテナ分配モジュールとを含む。アンテナ分配モジュールは、第1のモードにある時に、複数のRF信号を複数の下流処理要素(downstream processing components)のうちの1つ又は2つ以上に経路指定し、第2のモードにある時に、複数のRF信号の第1のサブセットを複数のRFポートの第1のサブセットにおいて出力されるように経路指定し、複数のRF信号の第2のサブセットを複数の下流処理要素のうちの1つ又は2つ以上に経路指定するように構成することができる。
【0012】
別の実施形態では、無線オーディオ受信機が、各々がそれぞれのアンテナから1又は2以上のオーディオ信号を含む第1の複数のRF信号を受け取るように構成された第1の複数の無線周波数(RF)ポートと、各々がそれぞれのアンテナから1又は2以上のオーディオ信号を含む第2の複数のRF信号を受け取るように構成されるとともに、無線オーディオ受信機のモードに基づいて第1の複数のRF信号のうちの1つを出力するようにさらに構成された第2の複数のRFポートと、各々が第1の複数のRFポートの各々に関連する第1の複数のアンテナ分配モジュールと、各々が第2の複数のRFポートの各々に関連する第2の複数のアンテナ分配モジュールとを含む。第1の複数のアンテナ分配モジュールの各々は、第1の複数のRFポートの1つと通信して、第1の複数のRF信号のうちの1つを、複数の下流処理要素のうちの1つ又は2つ以上と、第1のスイッチと、第2のスイッチとに経路指定される第1の複数の分割RF信号に分割する第1の分割器と、第1の分割器及び複数の下流処理要素のうちの1つ又は2つ以上と通信して、第1の複数の分割RF信号のうちの1つと第2の複数の分割RF信号のうちの1つとを切り換える第1のスイッチとを含むことができる。第2の複数のアンテナ分配モジュールの各々は、第2の複数のRFポートのうちの1つ及び第1の分割器と通信して、第1の複数の分割RF信号のうちの1つと第2の複数のRF信号のうちの1つとを切り換える第2のスイッチと、第1のスイッチ及び第2のスイッチと通信して、第2の複数のRF信号のうちの1つを、第1のスイッチに経路指定される第2の複数の分割RF信号に分割する第2の分割器とを含むことができる。
【0013】
さらなる実施形態では、複数のデジタル変調信号(y)を、複数のデジタル変調信号の各々の信号対ノイズ比(SNR)に基づいて合成する方法を説明する。複数のデジタル変調信号は、オーディオ信号を表すデジタルオーディオビットストリームを各々が含む複数の受信無線周波数(RF)信号からそれぞれ導出することができる。この方法は、複数のデジタル変調信号の各々のチャンネル推定値(h)を導出するステップと、複数のデジタル変調信号の各々の正規化ノイズ電力(σ2)を測定するステップと、チャンネル推定値に基づいて正規化受信信号を導出するステップと、正規化ノイズ電力及び正規化受信信号に基づいて、複数のデジタル変調信号を合成して合成変調信号を生成するステップとを含むことができる。
【0014】
本発明の原理を使用できる様々な方法を示す例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明及び添付図面からは、これらの及びその他の実施形態、並びに様々な置換及び態様が明らかになり、さらに十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】いくつかの実施形態による無線オーディオ受信機システムの概略図である。
【
図2】いくつかの実施形態による、
図1の無線オーディオ受信機システムにおいて使用されるアンテナ分配モジュールの概略図である。
【
図3】いくつかの実施形態による、
図1の無線オーディオ受信機システムにおいて使用されるRFアナログ処理モジュールの概略図である。
【
図4】いくつかの実施形態による、
図3のRFアナログ処理モジュールの各RFアナログ処理経路の構成要素の概略図である。
【
図5】いくつかの実施形態による、
図1の無線オーディオ受信機システムにおいて使用されるデジタル信号処理モジュールの概略図である。
【
図6】いくつかの実施形態による、
図1の無線オーディオ受信機システムを用いて複数のデジタル変調信号を単一の合成信号に合成する動作を示すフローチャートである。
【
図7】いくつかの実施形態による、
図1の無線オーディオ受信機システムにおいて使用されるデジタル信号処理モジュールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明は、本発明の原理に従う本発明の1又は2以上の特定の実施形態を説明し、図示し、例示するものである。この説明は、本明細書で説明する実施形態に本発明を限定するためではなく、むしろ当業者が本発明の原理を理解した上でこれらの原理を応用し、本明細書で説明する実施形態のみならず、これらの原理に基づいて想起される他の実施形態も実施できるように、本発明の原理の説明及び教示のために行うものである。本発明の範囲は、文言上、又は均等論の下で添付の特許請求の範囲に含まれる可能性のある全ての実施形態を対象とすることが意図されている。
【0017】
なお、説明及び図面では、類似する又は実質的に同様の要素には同じ参照数字を付すことができる。しかしながら、例えば異なる数字を付した方が説明が明確になるような場合には、これらの要素に異なる数字を付すこともある。また、本明細書に示す図面は必ずしも縮尺通りではなく、場合によっては特定の特徴をより明確に示すために比率を誇張していることもある。このような表示及び作図手法は、必ずしも根底にある本質的な目的に関与するものではない。上述したように、本明細書は、本明細書で教示され当業者に理解される本発明の原理に従って全体として受け取られ解釈されるように意図されている。
【0018】
本明細書で説明するフレキシブル多チャンネル無線オーディオ受信機システムは、様々な選択モードにおいて複数の受信RF信号を異なるRFアナログ処理モジュールに柔軟に経路指定し、複数の受信RF信号をSNRが最大化された合成信号に合成できると同時に、短い待ち時間で信号を処理して出力オーディオ信号を途切れなく生成することができる。さらに、受信機は、外部アンテナ混合器、及び複数のアンテナ間における手動切り換えの必要性を排除しながら、単一受信機のフォームファクタで収容することができる。とりわけ、受信機は、所望の用途及び受信機の使用環境に応じて異なる数のアンテナを使用できる様々な異なるモードを有することができる。
【0019】
例えば、1つのシナリオでは、カバレッジを改善するために、同じ空間(例えば、大型ステージ又は会場)をカバーする4つのアンテナに受信機を接続することができる。別のシナリオでは、舞台裏又は楽屋のような周辺空間もカバーされるように、それぞれが異なる空間(例えば、分割できる2つの会場部分)をカバーする2つのアンテナ対に受信機を接続することができる。さらなるシナリオでは、単一のアンテナ対を用いた最適なカバレッジが可能でない不規則形状のパフォーマンスエリア(例えば、突き出た/張り出した舞台、又は第2の舞台がある会場)のカバーを可能にするために、さらなるアンテナに受信機を接続することができる。別のシナリオでは、性能問題が確認された時に使用される「コールドバックアップ」として展開すべき複数のアンテナ対に受信機を接続することができる。通常、この場合には熟練したオペレータが手動で問題を検出し、「コールドバックアップ」に従事すべく介入しなければならない。しかしながら、本明細書で説明する受信機は、「コールドバックアップ」アンテナを動的かつ自動的に使用することができる。
【0020】
図1は、オーディオ信号を表すデジタルオーディオビットストリームを含む1又は2以上の無線周波数(RF)信号を受け取る無線オーディオ受信機100の概略図である。受信機100は、それぞれのアンテナに接続してRF信号を受け取ることができる複数のRFポート102a~dを含むことができる。RFポート102a~dは、受信機100を他の無線受信機にデイジーチェーン接続するカスケード処理の目的で使用されるように構成できるポートのサブセットを含むことができる。具体的に言えば、
図1に示すように、(それぞれAnt A及びAnt Bと表記する)RFポート102a、102bは、それぞれがRF信号を受け取る別個のアンテナ(図示せず)に接続されるように構成される。同様に、(それぞれAnt C/カスケードA及びAnt D/カスケードBと表記する)RFポート102c、102dは、それぞれがRF信号を受け取る別個のアンテナ(図示せず)に接続されるように構成することができ、或いはRFポート102a、102bにおいて受け取られたRF信号をそれぞれ出力するように構成することができる。このように、受信機100のRFポート102a~dは、ユーザの必要性に応じて2つ、3つ又は4つのアンテナに接続することができる。なお、
図1には最大4つのアンテナに接続する4つのポート102a~dを示しているが、受信機100は、4つよりも多くのポート及びアンテナに拡張することもできる。無線オーディオ受信機100に含まれる様々な構成要素は、プロセッサ及びメモリを含むコンピュータ装置などの1又は2以上のサーバ又はコンピュータによって、及び/又はハードウェア(例えば、離散的論理回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルゲートアレイ(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)など)によって実行可能なソフトウェアを用いて実装することができる。
【0021】
受信機100では、例えば製作物又はその他の音源の音を取り込んだ無線オーディオ送信機及び/又はマイクからRF信号を受け取ることができる。ユーザは、ポート102a~dに接続されているアンテナの数に応じて受信機100の様々なモードを選択し、受信中のRF信号の数を示すことができる。選択された受信機100のモードは、後述するようにアンテナ分配モジュール104が受信RF信号をどのように切り換えるかを決定することができる。受信機100のモードでは、利用するポート102a~dの数を選択できるとともに、受信RF信号が周波数ダイバーシティ又はアンテナダイバーシティを利用していたかどうかを選択することができる。
【0022】
カスケードモードとしても知られている受信機100の1つのモードでは、RFポートのうちのいくつか(例えば、RFポート102c、102d)を使用して受信RF信号を他の(単複の)受信機に出力するかどうかを選択することができる。このモードでは、送信された(オーディオ信号を含む)複数のRF信号を受信機100が受け取って処理し、デイジーチェーン接続目的で他の受信機に出力することもできる。例えば、2つのポート(例えば、RFポート102a、102b)を2つのアンテナにそれぞれ接続して、それぞれが単一音源からのオーディオ信号を含む4つの送信RF信号を受け取ることができる。これらの4つのRF信号は、周波数ダイバーシティを用いて4つの異なる周波数で送信されたものとすることができる。この例では、4つの受信RF信号を合成することによって1つのオーディオ出力信号を生成することができる。別の例として、2つのポート(例えば、RFポート102a、102b)を2つのアンテナにそれぞれ接続して、単一音源からのオーディオ信号を含む単一の送信RF信号を受け取ることもできる。この単一の送信RF信号は、アンテナダイバーシティを利用する受信機100の2つのアンテナによって受け取ることができる。この例では、2つのアンテナにおいて受け取られたRF信号を合成することによって1つのオーディオ出力信号を生成することができる。
【0023】
受信機100の別のモードでは、RFポートのうちのいくつか(例えば、RFポート102c、102d)を、上述したカスケードモードとして出力するのではなくさらに多くのアンテナ(例えば、アンテナAnt C/カスケードA及びAnt D/カスケードB)に接続するかどうかを選択することができる。このモードでは、受信機100が受け取ることができる送信されたオーディオチャンネルは少ないが、これらのオーディオチャンネルは冗長RFアナログ処理モジュール106a~dによって処理することができる。例えば、4つのポート(例えば、RFポート102a~d)を4つのアンテナにそれぞれ接続して、単一音源からのオーディオ信号を含む単一の送信RF信号を受け取ることができる。単一の送信RF信号は、アンテナダイバーシティを利用する受信機100の4つのアンテナによって受け取ることができる。この例では、4つのアンテナにおいて受け取られたRF信号を合成することによって1つのオーディオ出力信号を生成することができる。別の例として、4つのポート(例えば、RFポート102a~d)を4つのアンテナにそれぞれ接続して、それぞれが異なる周波数で送信された、唯一の音源からの唯一のオーディオ信号を含む2つの送信RF信号を受け取ることができる。この例では、4つのアンテナにおいて受け取られたRF信号をそれぞれ合成することによって2つのオーディオ出力信号を生成することができる。(さらに以下で説明する)RF信号処理経路のうちの4つを利用し、合成してオーディオ出力信号のうちの1つを形成し、他の4つのRF信号処理経路を利用し、組み合わせて他のオーディオ出力信号を形成することもできる。さらなる例として、4つのポート(例えば、RFポート102a~d)を4つのアンテナにそれぞれ接続して、それぞれが単一音源からのオーディオ信号を含む2つの送信RF信号を受け取ることができる。2つのRF信号は、周波数ダイバーシティを用いて2つの異なる周波数で送信されたものとすることができる。この例では、2つの受信RF信号を合成することによって1つのオーディオ出力信号を生成することができる。(さらに以下で説明する)RF信号処理経路302a、302b、304a、304b、306a、306b、308a、308bを全て利用し、合成して1つのオーディオ出力信号を形成することもできる。
【0024】
いくつかのモードでは、受信機100が、RFポート102a~dにおいて受け取ったRF信号を(
図1にRFチャンネル1~4として示す)RFアナログ処理モジュール106a~dに柔軟に経路指定できるアンテナ分配モジュール104を含む。また、受信機100が別の受信機にデイジーチェーン接続するカスケードモードで使用されている場合、アンテナ分配モジュール104は、RFポート102a、102b(Ant A及びAnt B)において受け取ったRF信号を選択してRFアナログ処理モジュール106a~d(RFチャンネル1~4)に経路指定するとともに、RFポート102c、102d(Ant C/カスケードA及びAnt D/カスケードB)において出力されるように経路指定することもできる。アンテナ分配モジュール104は、受信RF信号を、RFアナログ処理モジュール106a~d及び/又はRFポート102c、102dに経路指定する前に処理することもできる。アンテナ分配モジュール104のさらなる詳細については、以下で
図2に関して説明する。
【0025】
RFアナログ処理モジュール106a~dは、アンテナ分配モジュール104からの経路指定されたRF信号を受け取り、中間周波数(IF)に変位したアナログ変調信号を生成することができる。以下で
図3に関してさらに詳述するように、各RFアナログ処理モジュール106a~dは、経路指定されたRF信号を処理する2つの平行なRF信号処理経路を含むことができる。
【0026】
これらのアナログ変調信号は、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)108a~dによってデジタル変調信号に変換することができる。これらのデジタル変調信号をデジタル信号処理(DSP)モジュール110が受け取り、復調して最大4つのデジタルオーディオ信号を生成し、これらを受信機100から出力することができる。これらのデジタルオーディオ信号は、デジタル-アナログコンバータ(DAC)112a~dによってそれぞれのアナログオーディオ信号に変換して受信機100から出力することもできる。実施形態では、DSPモジュール110が、ADC108a~dからのデジタル変調信号を、その信号対ノイズ比(SNR)に基づいて合成変調信号に合成することができる。具体的には、これらのデジタル変調信号を、合成変調信号のSNRが最大化されるようにそのそれぞれのSNRに比例してスケーリングすることができる。さらに、DSPモジュール110は、合成変調信号を単一の合成デジタルオーディオ信号に復調することもできる。合成デジタルオーディオ信号は、デジタルオーディオ出力のいずれかにおいて出力することができる。DSPモジュール110がデジタル変調信号をどのように合成できるかについてのさらなる詳細は、以下で
図5及び
図6に関して説明する。DSPモジュール110は、デジタルオーディオ信号を受信機100から出力される前に処理するオーディオ信号処理モジュールをさらに含むことができる。
【0027】
受信機100によって出力される合成デジタルオーディオ信号を含むデジタルオーディオ信号は、例えばオーディオ技術学会AES3規格、ダンテ規格、及び/又はイーサネット(登録商標)を介してオーディオを送信するAVB/AVNU規格に準拠することができる。さらに、受信機100は、XLRコネクタ出力、イーサネットポート、又は他の好適なタイプの出力においてデジタルオーディオ信号を出力することができる。また、受信機100は、XLRコネクタ出力、1/4”オーディオ出力、及び/又は他の好適なタイプの出力においてアナログオーディオ信号を出力することができる。
【0028】
受信機100は、ラックマウント型とすることができ、様々な情報、フルオーディオメータ及びRF信号強度インジケータを表示するディスプレイを含むとともに、制御スイッチ、ボタン、並びにユーザ制御及び構成オプションの設定のための同様のものをさらに含むことができる。RFポート102a~dは、BNC、SMA(超小型バージョンA)同軸コネクタ、Nタイプ、或いは外部アンテナ及び/又はケーブルに接続するための他の好適なコネクタとすることができる。
【0029】
図2は、
図1の無線オーディオ受信機100のアンテナ分配モジュール104の概略図である。アンテナ分配モジュール104は、RFポート102a~dに接続されたアンテナからのRF信号を受け取り、受け取ったRF信号をRFアナログ処理モジュール106a~dに、具体的にはRFアナログ処理モジュール106a~d内のRF信号処理経路302a、302b、304a、304b、306a、306b、308a、308bに選択的に経路指定することができる。
図2~
図3には、RF信号処理経路302a、302b、304a、304b、306a、306b、308a、308bをRFチャンネル1a、1b、2a、2b、3a、3b、4a、4bとしてそれぞれ示しており、これらはアンテナ分配モジュール104の構成要素ではないので
図2には破線で示している。代わりに、
図2のRF信号処理経路では、アンテナ分配モジュール104が受信RF信号を受信機100のモードに応じてどこに経路指定できるかを示す。受信機100のカスケードモードでは、アンテナ分配モジュールが、RFポート102a、102bに接続されたアンテナからRF信号を受け取り、受け取ったRF信号をRFアナログ処理経路302a、302b、304a、304b、306a、306b、308a、308b(RFチャンネル1a、1b、2a、2b、3a、3b、4a、4b)に経路指定するとともに、RFポート102c、102d(Ant C/カスケードA及びAnt D/カスケードB)においてそれぞれ出力されるように経路指定することもできる。
【0030】
図2に示すように、アンテナ分配モジュール104は、各受信RF信号を処理して経路指定する構成要素を含む。受信機100のカスケードモードでは、RFポート102c、102d(Ant C/カスケードA及びAnt D/カスケードB)が、RFポート102a、102bからのRF信号の出力を支援するスイッチ221、231に接続される点を除き、アンテナ分配モジュール104の処理経路は各受信RF信号について同様である。受信機100の非カスケードモードでは、RFポート102a~dに最大4つのアンテナを接続して4つのRF信号を受け取ることができる。
【0031】
非カスケードモードの時には、RFポート102a~d(Ant A~D)において受け取ったRF信号を、受け取ったRF信号の適切な周波数帯が選択されるようにバンドパスフィルタ202、212、222、232によってそれぞれバンドパスフィルタリングしてフィルタ済みRF信号を生成することができる。例えば、バンドパスフィルタ202、212、222、232は、470~636MHz、606~801MHz、750~952MHzからの信号帯、及び/又はその他の信号帯範囲を通すことができる。RF信号がRFポート102c、102d(Ant C及びAnt D)において受け取られた場合、スイッチ221、231は、受信機100が非カスケードモードである時には受信RF信号がバンドパスフィルタ222、232にそれぞれ受け渡されるように構成することができる。これらのフィルタ済みRF信号は、フィルタ済みRF信号の利得を調整する減衰器204、214、224、234が受け取って、減衰されたフィルタ済みRF信号を生成することができる。減衰器204、214、224、234は可変とすることができ、RF電力検出器203、213、223、233から受け取った電力信号に基づいてそれぞれ制御することができる。RF電力検出器203、213、223、233は、各受信RF信号の電力を検出することができる。増幅器206、216、226、236は、減衰されたフィルタ済みRF信号を受け取り、低ノイズ利得を与えて増幅RF信号を生成することができる。
【0032】
図2に示すように、各増幅RF信号は、2方向分割器208、218、228、238によって分割することができる。Ant A及びAnt Bの処理経路では、2方向分割器208、218が、それぞれの増幅RF信号を4方向分割器210、220と減衰器209、219とにそれぞれ分割する。受信機100がカスケードモードにある時には、減衰器209、219に送信された信号を、スイッチ221、231の適切な切り換えを通じてポート102c、102dにおいて出力することができる。
【0033】
Ant A及びAnt Bの処理経路の4方向分割器210、220に送信された増幅信号は、受信機100のモードに応じてRF信号処理経路302a、302b、304a、304b、306a、306b、308a、308bに潜在的に経路指定できるようにさらに分割される。Ant C及びAnt Dの処理経路(非カスケードモード)では、2方向分割器228、238が、やはり受信機100のモードに応じてRF信号処理経路306a、306b、308a、308bに潜在的に経路指定できるようにそれぞれの増幅RF信号をスイッチ250、251、252、253に分割する。
【0034】
具体的に言えば、Ant Aの増幅器206からの増幅RF信号は、常にRF信号処理経路302a、304a(それぞれ、RFチャンネル1a、2a)に経路指定されるとともに、RF信号処理経路306a、308a(それぞれ、RFチャンネル3a、4a)に潜在的に経路指定できるようにスイッチ250、252に経路指定される。同様に、Ant Bの増幅器216からの増幅RF信号は、常にRF信号処理経路302b、304b(それぞれ、RFチャンネル1b、2b)に経路指定されるとともに、RF信号処理経路306b、308b(それぞれ、RFチャンネル3b、4b)に潜在的に経路指定できるようにスイッチ251、253に経路指定される。
【0035】
Ant Cの増幅器226からの増幅RF信号は、RF信号処理経路306a、308a(それぞれ、RFチャンネル3a、4a)に潜在的に経路指定できるようにスイッチ250、252に経路指定され、Ant Dの増幅器236からの増幅RF信号は、RF信号処理経路306b、308b(それぞれ、RFチャンネル3b、4b)に潜在的に経路指定できるようにスイッチ251、253に経路指定される。スイッチ250、251、252、253は、受信機のモードの応じて適切に切り換わる。具体的に言えば、受信機がカスケードモードにある時には、スイッチ250、251、252、253はそれぞれ4方向分割器210、220に接続することができる。カスケードモードでは、Ant C/カスケードA又はAnt D/カスケードBポートではRF信号が受け取られない。従って、RF信号処理経路306a、308a(それぞれ、RFチャンネル3a、4a)は、Ant Aポートにおいて受け取られたRF信号を受け取る。RF信号処理経路306b、308b(それぞれ、RFチャンネル3b、4b)は、Ant Bポートにおいて受け取られたRF信号を受け取る。
【0036】
図3は、
図1の無線受信機100のRFアナログ処理モジュール106a~dの概略図である。各RFアナログ処理モジュール106a~dは、アンテナ分配モジュール104からの経路指定されたRF信号を処理して中間周波数(IF)に変位したアナログ変調信号を生成する2つの平行なRF信号処理経路302a、302b、304a、304b、306a、306b、308a、308bを含むことができる。具体的に言えば、RFアナログ処理モジュール106a(RFチャンネル1)は、RFポート102a(4方向分割器210からの「1A」によって示すAnt A)及びRFポート102b(4方向分割器220からの「1B」によって示すAnt B)から経路指定されたRF信号を常に受け取るRF信号処理経路302a、302b(RFチャンネル1a、1b)を含むことができる。同様に、RFアナログ処理モジュール106b(RFチャンネル2)は、RFポート102a(4方向分割器210からの「2A」によって示すAnt A)及びRFポート102b(4方向分割器220からの「2B」によって示すAnt B)から経路指定されたRF信号を常に受け取るRF信号処理経路304a、304b(RFチャンネル2a、2b)を含むことができる。
【0037】
一方で、RFアナログ処理モジュール106c、106d(RFチャンネル3及び4)に経路指定されるRF信号は、受信機100のモードに応じて変化することができる。RFアナログ処理モジュール106c(RFチャンネル3)は、スイッチ250、251を介して経路指定されたRF信号をそれぞれ受け取ったRF信号処理経路306a、306b(RFチャンネル3a、3b)を含むことができる。スイッチ250は、RFポート102a(4方向分割器210からの「3A」によって示すAnt A)からのRF信号、又はRFポート102c(2方向分割器228からの「1C」によって示すAnt C)からのRF信号をRF信号処理経路306a(RFチャンネル3a)に経路指定することができる。スイッチ251は、RFポート102b(4方向分割器220からの「3B」によって示すAnt B)からのRF信号、又はRFポート102d(2方向分割器238からの「1D」によって示すAnt D)からのRF信号をRF信号処理経路306b(RFチャンネル3b)に経路指定することができる。同様に、スイッチ252は、RFポート102a(4方向分割器210からの「4A」によって示すAnt A)からのRF信号、又はRFポート102c(2方向分割器228からの「2C」によって示すAnt C)からのRF信号をRF信号処理経路308a(RFチャンネル4a)に経路指定することができる。スイッチ253は、RFポート102b(4方向分割器220からの「4B」によって示すAnt B)からのRF信号、又はRFポート102d(2方向分割器238からの「2D」によって示すAnt D)からのRF信号をRF信号処理経路308b(RFチャンネル4b)に経路指定することができる。
【0038】
RFアナログ処理モジュール106a~dの各々は、経路指定されたRF信号の周波数を所望のIFに変位させるためにミキサに適用すべき適切な周波数を生成する局部発振器(又はシンセサイザ)350a~dを含むことができる。局部発振器350a~dによって生成された信号は、ドライバ352a~dによってそれぞれ増幅して駆動した後に2方向分割器354a~dによってそれぞれ分割して、個々のRF信号処理経路302a、302b、304a、304b、306a、306b、308a、308bのミキサに適用することができる。RF信号処理経路302a、302b、304a、304b、306a、306b、308a、308bの各々によって生成されたIFにおけるアナログ変調信号は、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)108a~dによってデジタル変調信号に変換することができる。アナログ-デジタルコンバータ108a~dは、並列なデジタル変調信号を出力するデュアルADCとして示しているが、例えば別個のクアッドADC及び/又はオクタルADCを利用することもできる。RF信号処理経路302a、302b、304a、304b、306a、306b、308a、308bの構成要素については、
図4に関してさらに詳述する。なお、
図3には、RF信号処理経路302a、302b、304a、304b、306a、306b、308a、308bがそれぞれの局部発振器350a~dを共有することを示しているが、いくつかの実施形態ではRF信号処理経路を独立させることも検討され、実行可能である。
【0039】
図4は、RFアナログ処理モジュール106a~dのRFアナログ処理経路302a、302b、304a、304b、306a、306b、308a、308bを含むRFアナログ処理経路400の各々の構成要素の概略図である。アンテナ分配モジュール104によって経路指定されるRF信号は、RFアナログ処理経路400によって受け取られ処理されてIF信号が生成され、アナログ-デジタルコンバータ108a~dに送信される。具体的には、経路指定されたRF信号をトラックチューニングフィルタ402が受け取って、特定の周波数のみをミキサ404に通過させる。ミキサ404は、トラックチューニングフィルタ402によって生成されたフィルタ済み信号に周波数変換処理を施し、局部発振器信号に基づいてIF信号を生成することができる。ミキサ404は、局部発振器350a~dのうちの1つからの信号をフィルタ済み信号に適用することによって、フィルタ済み信号の周波数を所望のIFに変位させることができる。その後、このIF信号を低ノイズ増幅器406、IFフィルタ408、減衰器410、増幅器412、414、IFフィルタ416、及びローパスフィルタ418によって処理して、最終的にIFにおけるアナログ変調信号を生成することができる。いくつかの実施形態では、IFフィルタ408、416を弾性表面波(SAW)フィルタとすることができる。
【0040】
図5は、
図1の無線オーディオ受信機100において使用されるデジタル信号処理(DSP)モジュール500の概略図である。DSPモジュール500は、ADC108a~dからのデジタル変調信号を、デジタル変調信号の信号対ノイズ比(SNR)に基づいて合成変調信号に合成することができる。具体的には、デジタル変調信号を、合成変調信号のSNRが最大化されるようにそのそれぞれのSNRに比例してスケーリングすることができる。さらに、DSPモジュール500は、合成変調信号を単一の合成デジタルオーディオ信号に復調することもできる。
【0041】
図7は、
図1の無線オーディオ受信機100において使用されるデジタル信号処理(DSP)モジュール700の概略図である。DSPモジュール700は、ADC108a~dからのデジタル変調信号の対を、デジタル変調信号の信号対ノイズ比(SNR)に基づいて4つの合成変調信号に合成することができる。具体的には、デジタル変調信号を、4つの合成変調信号のSNRが最大化されるようにそのそれぞれのSNRに比例してスケーリングすることができる。さらに、DSPモジュール500は、4つの合成変調信号の各々を4つのデジタルオーディオ信号に復調することもできる。
【0042】
図6に、DSPモジュール500及び700を用いてデジタル変調信号の合成を行うことができるプロセス600を示す。ADC108a~dからのデジタル変調信号を、検出器502a~d又は702a~dによってそれぞれ受け取ることができる。いくつかの実施形態では、検出器502a~d及び702a~dが、デジタル変調信号に埋め込まれたパイロットシンボルがその既知の位置から摂動した度合いを検出することによって、各デジタル変調信号の正規化ノイズ電力(すなわち、RMS信号電力1に対するノイズ電力)を測定することができる。従って、検出器502a~d及び702a~dは、
図6に示すプロセス600のステップ602などにおいて、受け取ったデジタル変調信号(y)におけるパイロットシンボルを検出することができる。パイロットシンボルは、無線送信機によってデジタル変調信号に埋め込んでおくことができる。いくつかの実施形態では、パイロットシンボルを、約125マイクロ秒毎に現れる3つのシンボルブロックの形で配置されたQPSKシンボルとすることができる。パイロットシンボルのグループ分け及びレートは、様々な信号伝播特性に依存することができる。例えば、フェージングが非常に遅ければ、パイロットシンボルのレートは低くなり得る。
【0043】
ステップ604などにおいて、デジタル変調信号のチャンネル推定値(h)を導出することができる。いくつかの実施形態では、チャンネル推定値を、検出されたパイロットシンボルに基づいて導出することができる。次に、プロセス600のステップ606などにおいて、各デジタル変調信号の正規化ノイズ電力(σ
2)を測定することができる。いくつかの実施形態では、正規化ノイズ電力を、検出されたパイロットシンボルに基づいて測定することができる。ステップ608などにおいて、検出されたチャンネル推定値に基づいて正規化受信信号を導出することができる。
図5に示す実施形態では、ステップ610などにおいて、SNR最大化合成モジュール504によって、正規化ノイズ電力及び正規化受信信号に基づいて合成変調信号を生成することができる。
図7に示す実施形態では、ステップ610などにおいて、それぞれのSNR最大化合成モジュール704a~dによって、正規化ノイズ電力及び正規化受信信号に基づいて4つの合成変調信号を生成することができる。いくつかの実施形態では、合成変調信号(x^)を以下の式に基づいて生成することができ、
ここでのLはデジタル変調信号の数であり、
は入力iの正規化ノイズ分散/電力であり、h
iは入力iのチャンネル推定値であり、y
iは入力iの受信信号である。
【0044】
図5に示す実施形態では、復号モジュール506によって合成変調信号を復調して合成復調信号を生成することができる。この合成復調信号をオーディオ信号処理モジュール508によってさらに処理して合成デジタルオーディオ信号を生成することができる。
図7に示す実施形態では、別個の復号モジュール706a~dによって4つの合成変調信号をそれぞれ復調して4つの復調信号を生成することができる。これらの4つの復調信号の各々をオーディオ信号処理モジュール708a~dによって処理して4つのデジタルオーディオ信号を生成することができる。オーディオ信号処理モジュール508、708a~dは、例えば合成復調信号に対してフィルタリング、利得、計量及び/又は信号制限を実行することができる。受信機100は、合成デジタルオーディオ信号(又は別個のデジタルオーディオ信号)を出力することができ、及び/又はDAC112a~dが、合成デジタルオーディオ信号(又は別個のデジタルオーディオ信号)を合成アナログオーディオ信号(又は別個のアナログオーディオ信号)に変換することができる。
【0045】
なお、
図3~
図7は、考えられる下流処理モジュール及び受信RF信号の処理方法の例示であり、受信RF信号の処理スキーム及び方法は他にも可能である。例えば、RF信号がアナログ変調オーディオ信号を含むことにより、下流処理モジュールがアナログ復調モジュールなどを含むようにすることもできる。別の例として、下流処理モジュールによってRF信号を直接サンプリングすることもできる。
【0046】
図中のあらゆるプロセスの説明又はブロックは、プロセスにおける特定の論理関数又は論理ステップを実行するための1又は2以上の実行可能命令を含むモジュール、セグメント又はコード部分を表すものとして理解すべきであり、当業者であれば理解するように、関連する機能に応じて実質的に同時の又は逆順での実行を含む図示又は説明したものとは異なる順序で機能を実行できる別の実装も本発明の実施形態の範囲に含まれる。
【0047】
本開示は、様々な実施形態の構築方法及び使用方法を技術に従って説明するためのものであり、その真の意図する公正な範囲及び趣旨を限定するものではない。上述の説明は、包括的であることや、又は開示した正確な形に限定されることを意図するものではない。上記の教示に照らして修正例及び変形例が可能である。(単複の)実施形態は、説明する技術の原理及びその実施可能な応用を示すとともに、様々な実施形態の技術、及び想定される特定の用途に適した様々な修正例を当業者が利用できるように選択して説明したものである。このような全ての修正例及び変形例は、これらの権利を公正に、法的に、かつ公平に認める外延に従って解釈した場合、本出願の係属中に補正される可能性もある添付の特許請求の範囲によって定められる実施形態及びその全ての同等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
100 無線オーディオ受信機
102a Ant A
102b Ant B
102c Ant C/カスケードA
102d Ant D/カスケードB
104 アンテナ分配モジュール
106a RFチャンネル1
106b RFチャンネル2
106c RFチャンネル3
106d RFチャンネル4
108a~d ADC
110 デジタル信号処理モジュール
112a~d DAC