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特許7021075パワーレンチと外部操作部とを備えた工具システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】パワーレンチと外部操作部とを備えた工具システム
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20220208BHJP
   B25B 23/14 20060101ALI20220208BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B25B21/00 B
B25B23/14 620J
B25B23/14 630N
B25F5/00 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018513437
(86)(22)【出願日】2016-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 DE2016100424
(87)【国際公開番号】W WO2017045668
(87)【国際公開日】2017-03-23
【審査請求日】2019-05-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】102015115469.2
(32)【優先日】2015-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507335012
【氏名又は名称】ヨルク ホーマン
【氏名又は名称原語表記】Joerg Hohmann
【住所又は居所原語表記】Uhlandstrasse 6a, D-59872 Meschede, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】507335023
【氏名又は名称】フランク ホーマン
【氏名又は名称原語表記】Frank Hohmann
【住所又は居所原語表記】Josef-Menke-Strasse 25, D-59581 Warstein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】フランク ホーマン
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】貞光 大樹
【審判官】刈間 宏信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/187411(WO,A1)
【文献】特開2011-97508(JP,A)
【文献】特開2006-993(JP,A)
【文献】特開2014-188662(JP,A)
【文献】特開2004-287821(JP,A)
【文献】特開2012-157924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B21/00-23/18
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度ねじ結合の電子制御された締め付け過程を行うためのまたは一連の締め付け過程を行うための工具システムであって、
-駆動ユニット(12)と、予め定められたねじ締め操作を特徴付ける構成データに従って締め付け過程を制御するための電子的パワーレンチ制御装置(10)と、を有するハンドガイド式外力作動型パワーレンチ(1)と、
-少なくとも前記構成データを入力するための入力ユニット(5)と、前記構成データまたはねじ締め操作もしくは締め付け過程に関するその他の情報および/または測定値をユーザーに対して視覚的に表示するためのディスプレイ(4)と、を有する、前記パワーレンチ(1)から独立した手持ち式外部操作部(2)と、
を含み、
前記パワーレンチおよび前記外部操作部は、データ接続を介して相互に通信可能であり、
前記外部操作部(2)に設けられた前記ディスプレイ(4)に対して付加的に前記パワーレンチ(1)に、ねじ締め操作または具体的な締め付け過程に関する情報を、前記外部操作部(2)の前記ディスプレイ(4)から独立してユーザーに表示可能である補助ディスプレイ(6)が設けられている、工具システムにおいて、
前記工具システムは、すべての構成データが専ら前記外部操作部(2)において行えるように構成されており、
前記パワーレンチ(1)には、前記構成データを入力するための入力手段は設けられておらず、前記パワーレンチ(1)と前記外部操作部(2)とがバッテリ駆動され、前記工具システムは、前記パワーレンチ(1)のバッテリの他に前記外部操作部(2)も充電可能である、バッテリ充電器(3)を含んでおり、
前記工具システムは、締め付け方向とは逆の方向へのパワーレンチの1つ以上の順次連続する短い操作かまたは回転方向の逆転の迅速な連続動作を含む自由回転過程を実施するための自由回転制御部を含んでおり、
パワーレンチ(1)にデジタルメモリユニット(9)が設けられており、前記デジタルメモリユニット(9)には、ねじ締め操作に関するロギングデータが格納され、前記工具システムは、前記ロギングデータを、ねじ締め操作の終了後に初めて前記外部操作部(2)を用いて読み出すように構成されている、
工具システム。
【請求項2】
専ら前記パワーレンチに設けられた前記パワーレンチ制御装置(10)を介して締め付け過程の制御と監視とが行われる、
請求項1記載の工具システム。
【請求項3】
前記補助ディスプレイ(6)に表示可能な前記情報は、前記外部操作部(2)において事前に入力され、ワイヤレス方式で前記パワーレンチ(1)に伝送された構成データであるかまたは前記構成データから導出された情報である、
請求項1または2記載の工具システム。
【請求項4】
前記パワーレンチ(1)にデジタルメモリユニット(9)が設けられており、前記デジタルメモリユニット(9)には、前記パワーレンチ(1)の制御のために用いられる構成データが格納されており、その内容は、前記外部操作部(2)を用いて読み出され、前記外部操作部(2)において変更され、前記パワーレンチ(1)におけるデジタルメモリユニット(9)に書き戻され得る、
請求項1から3までのいずれか1項記載の工具システム。
【請求項5】
前記外部操作部(2)に、前記外部操作部(2)をコンピュータに接続するためのインタフェースが設けられている、
請求項1からまでのいずれか1項記載の工具システム。
【請求項6】
前記パワーレンチ(1)に、前記補助ディスプレイ(6)の他に1つ以上の光学的表示部(11)が設けられている、
請求項1からまでのいずれか1項記載の工具システム。
【請求項7】
前記パワーレンチ(1)および前記外部操作部(2)は、送受信ユニット(8,8’)を有し、前記データ接続は、ワイヤレス方式のデータ接続である、
請求項1からまでのいずれか1項記載の工具システム。
【請求項8】
前記パワーレンチ(1)および前記外部操作部(2)は、ケーブル接続されたデータ接続の形成のためのインタフェースを有している、
請求項1からまでのいずれか1項記載の工具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度ねじ結合の電子制御された締め付け過程を行うためのまたはこの種の一連の締め付け過程を行うための工具システムに関するものであり、工具システムは、
-外力作動型駆動ユニットと、予め定められたねじ締め操作を特徴付ける構成データに従って締め付け過程を制御するための電子的パワーレンチ制御装置と、を有するハンドガイド式外力作動型パワーレンチと、
-少なくとも構成データを入力するための入力ユニット、ならびに構成データおよび/またはその他のねじ締め操作もしくは締め付け過程に関する情報および/または測定値をユーザーに対して視覚的に表示するためのディスプレイを有する、パワーレンチから独立した手持ち式外部操作部と、
を含み、ここでのパワーレンチおよび操作部は、データ接続を介して相互に通信可能である、工具システムに関している。
【背景技術】
【0002】
(締め付けトルクが約150Nm~約15000Nmの範囲にある)パワーレンチと外部操作部とを有し、この外部操作部がパワーレンチとワイヤレス方式かまたはケーブル接続されたデータ接続を介して通信する高強度ねじ結合の締め付けのための工具システムは、本件出願人に由来する欧州特許出願公開第0946336号明細書(EP0946336A1)から公知である。
【0003】
自身に外部操作部が対応付けられていないパワーレンチは、外部操作部を有するシステムに比べ、ねじ締め操作に関し、制御に含まれる各ねじ締め操作のすべての構成データをパワーレンチに入力しなければならないという欠点がある。この目的のためには、パワーレンチ自体に、操作キーとディスプレイとを有する電子的な入力ユニットを設ける必要があるが、しかしながらこれは実際には不利であることが判明している。特に、困難な作業位置または不利な外部条件での場合には、ユーザーにとって確実でかつ信頼性の高い入力にはしばしば大きな努力が必要とされる。これについてさらに、パワーレンチに配置される入力ユニットが充分な使い勝手のよさを保証できるサイズの入力キーもディスプレイも構造的に許容できないということが加わる。その他にも、そのような入力ユニットの一部に敏感な電子部品および機構は、日々の使用においてパワーレンチの高い負荷に十分なレベルでついてゆくことができない。
【0004】
それゆえパワーレンチ自体に設けられた入力ユニットを、パワーレンチから独立した入力キーとディスプレイとを有する外部操作部に移すことも可能である。この外部操作部は手持ち式の操作部として、概して重量のあるかさばるパワーレンチよりも容易に保持することができ、操作も簡単にできる。これにより、パワーレンチは一部敏感で繊細に操作すべき入力電子機器から解放される。場合によって起こり得る、パワーレンチのプログラミングまたは構成の入力は、外部操作部の入力ユニットを介して行われ、この外部操作部は、入力キーおよびディスプレイの使い勝手のよい寸法設定に大きな自由度を提供する。データは、ワイヤレス方式かまたはケーブル接続を介してパワーレンチに伝送される。
【0005】
しかしながらこの種の解決手段における欠点として、ユーザーは、ディスプレイが外部操作部に移設されたことにより、自身が外部操作部を自分の視野内に位置付けすることができない多くのケースにおいて、ディスプレイに表示される現下で実施すべきねじ締め操作に関する情報による視覚的応答メッセージを失うことが判明している。特にユーザーにとって、パワーレンチの操作と保持のために両手がふさがっている具体的な締め付け過程の間に、場合によって起こり得る、締め付け過程のプロセスデータの視覚的確認あるいはパワーレンチの一連の締め付け過程の所定の設定維持の監視のために、外部操作部に設けられたディスプレイを見るための手段が欠けている。その上さらに、ユーザー自身が、ディスプレイを有する外部操作部を視野内に位置付けすることに成功した場合であっても、ユーザーは概して視線を少なくとも一時的にはパワーレンチから外さなければならないことが併発する。さらに、特に、持続的なワイヤレス方式のデータ伝送は、エラーの影響を受けやすく、中断もざらにあることを考慮しなければならず、このことは、ねじ締め操作に関するドキュメンテーション過程がエラーにつながるかまたは全くドキュメンテーションされない可能性があり、締め付け過程の監視は不完全にのみ可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような背景を前提とした本発明の課題は、パワーレンチとこれに対応付けられた外部操作部とからなる工具システムにおいて、外部操作部に設けられた入力ユニットを介して所定のねじ締め操作のためにパワーレンチを構成できる手段があるにもかかわらず、
ねじ締め過程の間または一連の締め付け過程の実施中に、締め付け過程に関する情報、パワーレンチ構成または所定の設定の維持を、外部操作部におけるディスプレイから独立して視覚的に確認および監視できる手段をユーザーが確保できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は本発明により、外部操作部に設けられたディスプレイに対して付加的にパワーレンチに、ねじ締め操作または具体的な締め付け過程に関する情報を、外部操作部のディスプレイから独立してユーザーに表示可能である補助ディスプレイが設けられることによって解決される。
【0008】
これによりユーザーは、外部操作部におけるメインディスプレイを介するよりも制限された規模でありながらも、外部操作部に頼ることなく、パワーレンチの構成または現下のねじ締め操作に関する過程に対する応答メッセージを受け取ることが可能である。それにもかかわらず、ユーザーは、外部操作部のために、パワーレンチを快適な方法で構成できる手段を確保する。
【0009】
この場合工具システムは、好ましくはすべての構成データが専ら外部操作部において行われるように構成されており、さらに好ましくはパワーレンチに、構成データを入力するための入力手段は設けられないように構成される。締め付け過程の制御のための制御装置、ひいては締め付け過程のために必要なシステムの「インテリジェンス性」は、専らパワーレンチ内に存在する。この種の、2つの相互に独立した機器、すなわちパワーレンチと操作部への操作と機能の分割は、一方では、外部操作部を介した構成データの快適でかつ確実な入力と、繊細な入力電子機器および機構からのパワーレンチの解放とを保証し、他方では、ユーザーによるねじ締め操作の実行中に、自律的でかつデータ接続の発生に依存しないパワーレンチの使用を保証する。
【0010】
補助ディスプレイに表示可能な情報は、特に、外部操作部に入力され、データ接続を用いてパワーレンチに伝送された構成データ、例えば、一連の締め付け過程を含むねじ締め操作における目標トルク、目標角度または締め付け順序に対する構成データであってもよい。また補助ディスプレイに表示可能な情報は、この種の構成データから直接導出された情報であってもよい。
【0011】
それにより、ユーザーが繰り返し外部操作部に頼る必要なく、パワーレンチ構成をユーザーが視覚的に確認できる手段、または補助ディスプレイ上の表示を用いて、かつパワーレンチ制御により支援されて、より複雑なねじ締め操作のすべてにわたってユーザーをガイドできる手段が存在する。しかしながらこの種の構成データの他に補助ディスプレイには、場合によって起こり得るエラーメッセージまたは次のような情報が表示可能である。すなわちそれに基づきユーザーが個々の締め付け過程内で進行状況を読み取ることができる情報、例えば進行状況バー、あるいは一連の順次連続する締め付け過程内で進行状況を読み取ることができる情報、例えば現下で締め付けるべきねじ結合の番号および/または次に締め付けるべきねじ結合の番号を読み取ることができる情報である。ユーザーがこのような方法でシステムによって支援されれば、エラーのリスクは最小になる。
【0012】
好ましくは、パワーレンチにデジタルメモリユニットが設けられており、該デジタルメモリユニットには、パワーレンチの制御のために用いられる構成データが格納されており、それらの内容は外部操作部を用いて読み出され、外部操作部において変更され、パワーレンチにおける当該デジタルメモリユニットに書き戻される。
【0013】
ワイヤレス方式かまたはケーブル接続されたデータ接続がパワーレンチと外部操作部との間でアクティブである場合には、締め付け過程の間に同時データ(現下の測定値、ロギングデータ、エラーメッセージ、現下の機器状態に対するデータ)を、パワーレンチから外部操作部に伝送し、特に現下の測定値、状態データおよびエラーメッセージをそこにおいてメインディスプレイを介しても表示できるようにすることが想定されてもよい。しかしながらパワーレンチを、ロギングも注視して外部操作部からのデータ接続の存在に依存することなく自律的に使用できるようにするために、好ましくは、特に、ねじ締め操作の適正なロギングのために必要なロギングデータを、まず、パワーレンチに設けられたメモリユニットに格納し、ねじ締め操作の終了した後で初めて、データ接続をパワーレンチと外部操作部との間で形成し、当該データ接続を介してこれらのデータを、外部操作部を用いて読み出すことが想定される。
【0014】
外部操作部は、好ましくは、例えば、コンピュータを用いて特に比較的複雑なねじ締め操作の構成データを供給することができるようにするために、ワイヤレス方式のデータ接続を介して、または有線方式の適切なインタフェースを介してコンピュータに接続できるように構成されている。また、操作部に格納されているロギングデータをそのようなデータ接続を用いて読み出すことも可能であるし、操作部に格納されているロギングアーキテクチャをコンピュータにおいて適合化させることも可能である。それにより、好ましくは小型で手頃に保持できる外部操作部のサイズと制限された操作性のために実行が困難でしかない、比較的複雑な入力とプログラミングとが、コンピュータにおいて快適に実行できることが保証される。
【0015】
ユーザーのさらなる支援のために、パワーレンチには、補助ディスプレイの他に、例えばそれに基づきユーザーに例えば現下の通信状態、プログラミング状態またはプロセス状態に関する情報が提供される1つ以上の光学的表示部が設けられていてもよい。この種の光学的表示部は、例えば、それらの持続的または断続的な点灯および/またはそれらの色によって、ユーザーが工具システムの現下の状態に対する推論を引き出すことができる、LEDランプによって形成されていてもよい。
【0016】
パワーレンチおよび外部操作部は、好ましくは両方ともバッテリ駆動される。バッテリの充電のために、工具システムは、パワーレンチのバッテリの他に、外部操作部も充電できるバッテリ充電器を含んでいる。
【0017】
好ましい一実施形態では、外部操作部は、スマートフォンまたはタブレットコンピュータであり、このスマートフォンもしくはタブレットコンピュータは、ワイヤレス方式でまたはケーブルを用いてパワーレンチに接続可能であり、そこにはアプリケーションがプログラミングされており、それによってスマートフォンまたはタブレットコンピュータを介して前述したようにデータ供給過程および読み出し過程が実施され得る。この関係においては、外部操作部の入力ユニットに設けられる入力キーはもちろん、タッチスクリーンの一部であってもよいことに留意されたい。
【0018】
パワーレンチと外部操作部との間のデータ接続は、好ましくはワイヤレス方式のデータ接続として構成される。この目的のために、パワーレンチおよび外部操作部は、そのようなワイヤレス方式のデータ接続を可能にする送受信ユニットを有する。それにもかかわらず、パワーレンチと外部操作部との間のデータ接続をケーブル接続で実施することももちろん可能である。このケースでは、パワーレンチおよび外部操作部に、当該パワーレンチと外部操作部との間のケーブル接続されたデータ接続を形成するためのインタフェースが設けられる。
【0019】
以下では、前述した本発明との組み合わせにおいて、つまり特に、外部操作部とパワーレンチとを含んだ工具システムとの関係において、あるいは外部操作部とパワーレンチとが別個に離された工具システムでも、特に外部操作部なしの工具システムでも、使用することができる外力作動型で手持ち式のパワーレンチのさらに別の態様を説明する。
【0020】
高強度ねじ結合の電子制御された締め付け過程を行うためのまたはこの種の一連の締め付け過程を行うための外力作動型パワーレンチは、前述したパワーレンチのように、外力作動型駆動ユニットの他に、予め定められたねじ締め操作を特徴付ける構成データに従って締め付け過程を制御するための電子的パワーレンチ制御装置も有している。
【0021】
締め付け過程が完了した後に、パワーレンチは、高い適用トルク(バッテリ駆動のパワーレンチの場合約150Nm~15000Nm)のために、ねじ締め過程の後で高い捻れ応力に起因してねじ結合部を有するアセンブリにおいて傾くことが起こる可能性がある。したがってユーザーはパワーレンチを、場合によっては、アセンブリから再び取り外すことができないか、または大きな労力をかけてしかパワーレンチを取り外すことができず、そのためユーザーは、概して、アセンブリにおいて発生したパワーレンチの傾きを再び解消するために、パワーレンチに想定される回転方向の逆転を設定し、引き続きパワーレンチをねじ結合部の解除方向に短時間回転させるように作動させる。この自由回転の過程には、特に、多数のねじ締め過程を順次連続して実施しなければならない場合には、時間と労力とがかかる可能性があり、ユーザーは各自由回転の前にまず、自身がパワーレンチをアセンブリから取り外すことができないことによって、パワーレンチがそもそも傾いていることを完全に検出した後で、回転方向の逆転を設定して自由回転過程を実施し、それに続いて、先の回転方向の逆転を再び取り消すために、後続するねじ締め過程のための回転方向の逆転を再び設定する。
【0022】
それゆえ好ましくは、パワーレンチの電子的パワーレンチ制御装置は、自由回転制御部を含んでいる。この自由回転制御部は、ねじ締め過程(締め付け方向におけるボルトまたはナットの回転)の処理に続いて、自動化された自由回転過程を開始する。この自由回転過程は、特に、解放方向(締め付け方向とは逆の方向)へのパワーレンチの1つ以上の順次連続する短い操作かまたは回転方向の逆転の迅速な連続動作を含み得る。その結果、パワーレンチは矢継ぎ早に非常に小さな角度で解放方向に移動し、再び戻り方向に移動する。この自由回転過程は、好ましくは、電子的パワーレンチ制御装置および/またはパワーレンチ制御装置とは別個にまたはパワーレンチ制御装置の構成部品として設けられ得る自由回転識別部を用いて、パワーレンチが傾いていないことまたはもはや傾いていないことが識別された場合には、ボルトもしくはナットを解放方向に逆回転させるのではなく、既に終了することができる。
【0023】
この種の自由回転制御部もしくはこの種の自由回転識別部を有するパワーレンチは、外部操作部の配設とは別個に請求できる独立した発明とみなされる。それにもかかわらず、この種の自由回転制御部もしくは自由回転識別部も、前述した工具システムの構成部品であってもよい。後者のケースでは、電子制御されたねじ締め過程への要求は、本来のねじ締め過程の終了後に自由回転過程が開始されるべきことであり、それにはねじ締め操作を特徴付ける構成データが対応しており、これらの構成データは、外部操作部を用いてデータ接続を介してパワーレンチに伝送可能である。しかしながら、パワーレンチ制御の締め付け過程に続いて自動化された自由回転過程を行うか否かの決定をユーザーだけにゆだねることも想定され得る。この目的のために、パワーレンチに選択スイッチが設けられていてもよい。このスイッチの操作は、ねじ締め過程に続いて自動化された自由回転過程が実施されることにつながる。後者はもちろん、パワーレンチが外部操作部を含む工具システムの構成部品であるかどうかに依存することなく可能である。
【0024】
以下の図面の説明は、本発明の好ましい実施形態の説明に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】バッテリ駆動のパワーレンチと、パワーレンチから独立した外部操作部と、バッテリ充電器と、を有する工具システムを示した図
図2】外部操作部とパワーレンチとの間、ならびに外部操作部とコンピュータとの間で行われるワイヤレス方式のデータ通信の概略図
図3図1に示されたパワーレンチの第1の代替的実施形態を示した図
図4図1に示されたパワーレンチの第2の代替的実施形態を示した図
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、バッテリ駆動のパワーレンチ1と、パワーレンチ1から独立した外部操作部2と、バッテリ充電器3と、を有する高強度ねじ結合を形成するための工具システムを示す。このバッテリ充電器3は、パワーレンチ1の動作のために定められたバッテリ用の収容部3’と、外部操作部2を当該外部操作部2のバッテリの充電過程のためのバッテリ充電器3に接続するための結合装置3’’と、を備えている。
【0027】
この外部操作部2には、メインディスプレイ4ならびに入力キー5が設けられており、それらは特に、操作部2へのねじ締め操作に関する構成データの入力のために、または例えば、パワーレンチ1ならびにメニュー制御部への構成データの伝送開始のような場合によって生じる命令の実行のために定められている。
【0028】
パワーレンチ1には補助ディスプレイ6が設けられており、この補助ディスプレイ6を用いて、特に、実施すべき締め付け過程または実施すべき一連の締め付け過程の前に、外部操作部2に入力され、ワイヤレス方式のデータ接続を介して(図示のものとは異なるケーブル接続されたデータ接続も使用可能である)パワーレンチのメモリユニットに書き込まれた構成データ、またはこの種の情報から導出される情報が表示可能である。
【0029】
図2は、パワーレンチ1と外部操作部2との間のデータの交換に関与するコンポーネントの描写を用いて、データ交換の際に行われる過程を概略的に示している。
【0030】
外部操作部2における入力キー5を介してユーザーから処理すべきねじ締め操作のための構成データが入力され、この構成データは操作部2に設けられた操作部メモリユニット7に書き込まれる。操作部2に設けられた送受信ユニット8を用いて、これらの構成データは、ワイヤレス方式のデータ接続を介してパワーレンチ1に設けられた送受信ユニット8’に伝送され、そこでパワーレンチメモリユニット9に格納される。電子制御装置10は、これらの構成データを呼び出し、これらからさらに格納されているデータと共に、構成されたねじ締め操作のために必要な制御データおよび制御ルールを計算し得る。
【0031】
特に、パワーレンチに配置された補助ディスプレイ6への構成データの表示は、ユーザーに、パワーレンチのデータ供給に関する視覚的応答メッセージを与えることを、かつ/または1つの締め付け過程または一連の締め付け過程の適正な実施を行わせることを、ユーザーが外部操作部のディスプレイに頼ることなしに可能にすることができる。
【0032】
外部操作部2のメインディスプレイ4には、目標トルク、目標角度、ボルトサイズ、および材料品質などの構成データの他に、プロセス状態または発生したエラーメッセージに関する情報も表示することができる。この種の情報の他に、操作部自体の機器設定、ならびに対応付けられるパワーレンチの機器設定ももちろん表示可能であり、場合によっては入力を介して変更可能である。同様に操作部にはドキュメンテーションシステムも格納されており、そこにはパワーレンチからパワーレンチのメモリに書き込まれ、操作部を介して読み出されたねじ締め操作のデータを格納することができる。
【0033】
また、パワーレンチ内で検出された瞬時測定値、例えば現下のトルク、ねじ締め角度、モータ電流、回転数、温度、バッテリ電圧もしくはバッテリ容量、または締め付け過程実行中のGセンサ値などが、パワーレンチと外部操作部との間でデータ接続が構築される限り、パワーレンチから連続的に伝送され、操作部によって受信され、表示され得ることが想定されてもよい。
【0034】
パワーレンチに設けられた複数のLEDの形態のさらに別の光学的表示装置を介して、ユーザーにはさらに別の応答メッセージが、例えば現下でデータ伝送が行われているか、またはシステムが使用可能であり、エラーメッセージが存在していないかなどが与えられ得る。
【0035】
図2には、操作部2とパワーレンチ1とのワイヤレス方式の接続手段の他に、操作部2とコンピュータとをデータ接続を介して(これはケーブル接続またはワイヤレス方式であってもよい)接続できる手段が示されており、当該手段は、コンピュータに設けられたさらに別の送受信ユニット8’’を介しており、操作部2の構成またはそこに格納された例えばドキュメンテーションシステムのようなアプリケーションの構成を外部のコンピュータを介して実施できるようにする。外部操作部2は、コンピュータを介して読み出すことができ、それによって得られたデータは、比較的複雑な後続処理部もしくは評価部にも供給することができる。これは小型で手頃に保持できる操作部では不可能であったであろう。
【0036】
図3および図4は、補助ディスプレイ6が、図1および図2に示されるようにパワーレンチのハンドグリップの側面および上方に配置される必要が必ずしもないことを示しており、むしろ補助ディスプレイ6の構造的な位置決めを十分な自由度で行うことができる。図3の補助ディスプレイ6は、ハンドグリップ下方のバッテリを収容するハンドグリップ拡張部の上向きの面に設けられているのに対して、図4に示す実施形態での補助ディスプレイ6は、ハンドグリップ上方の上向き面に配置されている。
【0037】
図中では、外力作動型パワーレンチは、バッテリを介して電気的に駆動されるパワーレンチとして開示されている。もちろん高強度ねじ結合を形成するために必要な力は、それが予め定められたねじ締め操作を特徴付ける構成データに従って締め付け過程を制御するための電子的パワーレンチ制御装置を用いて制御できる限り、その他のタイプの「外力」(ユーザーによって手動でもたらすことのできない力)によってもたらすことも可能である。ここでは特に電子制御された油圧システムが挙げられる。
【符号の説明】
【0038】
1 パワーレンチ
2 外部操作部
3 バッテリ充電器
3’ パワーレンチバッテリ用収容部
3’’ 外部操作部用収容部
4 メインディスプレイ
5 入力キー
6 補助ディスプレイ
7 操作部メモリユニット
8 操作部における送受信ユニット
8’ パワーレンチにおける送受信ユニット
8’’ コンピュータにおける送受信ユニット
9 パワーレンチメモリユニット
10 電子制御装置
11 LED
12 駆動ユニット
図1
図2
図3
図4