(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】ニコチンをベースとする乾燥粉末製剤のきつさを制御するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/465 20060101AFI20220208BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20220208BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20220208BHJP
A61K 36/534 20060101ALI20220208BHJP
A61P 25/34 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
A61K31/465
A61K9/72
A61K31/045
A61K36/534
A61P25/34
(21)【出願番号】P 2018514439
(86)(22)【出願日】2016-09-15
(86)【国際出願番号】 US2016051959
(87)【国際公開番号】W WO2017048970
(87)【国際公開日】2017-03-23
【審査請求日】2019-08-20
(32)【優先日】2015-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】シュテンツラー アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ザメル ノエ
(72)【発明者】
【氏名】スルツキー アーサー
(72)【発明者】
【氏名】エリス スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ハン スティーヴ
【審査官】古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-506017(JP,A)
【文献】特開2013-082660(JP,A)
【文献】特表2011-506589(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0261474(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 36/00-36/9068
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入されるニコチンのきつさを制御するためのキットであって、ニコチン粒子を含む、少なくともある量のニコチン製剤、および
一回の吸入当たりの所望のレベルのきつさを達成するための、ニコチン濃度を特定し、
前記特定されたニコチンの濃度を有するある量の前記ニコチン製剤を含む第1の用量を選択し、さらに
ある量の前記ニコチン製剤を含む少なくとも1つのさらなる用量を選択する
ための指示を含む指示資料を含み、
前記少なくとも1つのさらなる用量中の前記製剤の量が、前記第1の用量中の前記製剤の量よりも少なく、
前記キットが
禁煙のために使用される、キット。
【請求項2】
乾燥粉末吸入器をさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
ニコチン粒子の少なくとも約90%が、約10μm未満のサイズである、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
ニコチン粒子の少なくとも約90%が、約5μm未満のサイズである、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
請求項1に記載のキットであって、前記ニコチン製剤がさらに、実質的に5~10μmの間のサイズの粒子を有する鎮咳薬成分を含むキット。
【請求項6】
鎮咳薬成分が、メントールまたはミントを含む、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
実質的に約10~200μmの間のサイズの粒子を有する鎮咳薬成分をさらに含む、請求項5に記載のキット。
【請求項8】
実質的に約10~200μmの間のサイズの粒子を有する鎮咳薬成分が、メントールまたはミントを含む、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記ニコチン製剤が実質的に約10~1000μmの間のサイズの粒子を有する風味成分をさらに含む、請求項5に記載のキット。
【請求項10】
風味成分が、メントールまたはミントを含む、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
前記ニコチン粒子が、少なくとも1種のニコチン塩を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項12】
前記ニコチン粒子が、少なくとも1種の糖を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項13】
前記ニコチン粒子を含む事前に充填された粉末カプセルをさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項14】
前記カプセルが様々なニコチン濃度の様々な粉末で充填されている、請求項13に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、2015年9月16日出願の米国特許出願第14/856,116号からの優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ニコチンが、ヒトの気道に吸入される最も一般的な刺激物のうちの1つであることに主に起因して、吸入された紙巻きタバコ煙は気道刺激および咳を生じさせることが周知である。この刺激は、ニコチンが対象によって吸入された場合、きつさの感覚をもたらす。吸入の間に吸入されるニコチンの量および経時のニコチン吸入の頻度に応じて、対象には、経験するきつさに対してある程度の耐性が生じ得る。したがって、ニコチン吸入の間に耐えられる、または好まれるきつさのレベルは、対象毎に大きく異なり得る。
ほとんどの日常的喫煙者が、タバコ煙中のニコチンの薬理効果に中毒になるか、または依存するようになる。一般にニコチン中毒、特にニコチン欲求を克服する一般的戦略は、紙巻きタバコの喫煙効果を模倣し、続いて段階的に減少させ、最終的に完全に除去することである。
喫煙には、可能性のある治療製剤または治療法が模倣しようとしている、いくつかの効果がある。喫煙の最も重要な効果として、対象の気道受容体への紙巻きタバコ煙の化学的および力学的影響、ならびに対象の血液中へのニコチンの吸収がある。対象の気道への紙巻きタバコ煙の化学的および力学的影響により、結果として対象は、ある特定のレベルの満足を経験し、これは、対象の気道上で知覚される煙吸入のきつさとも関連する。対象の血液中へのニコチンの吸収により、結果として、ニコチンが対象の中枢神経系の様々な受容体に達し、次いでこれは、対象が経験するニコチン欲求の知覚に影響を及ぼす。両方の効果は、禁煙療法を求める対象へのニコチン製剤用量の投与によって、模倣され得る可能性がある。完全な除去まで、用量を段階的に減少させることによって、ニコチン中毒は処置され得る。
当技術分野において、効果的な血中ニコチン濃度を達成することができ、同時に、満足および対象の気道への製剤の化学力学的影響によるきつさを制御することを可能にする、ニコチンをベースとする乾燥粉末製剤を送達する方法への必要性が存在する。理想的には、送達およびきつさ制御のこのような方法は、ニコチンの必要量の送達に柔軟性をもたらすと思われ、同時に、対象が経験するきつさの程度の調節を可能にする。本発明は、この必要性を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
吸入されるニコチンのきつさを制御する方法が、記載される。方法は、一回の吸入当たりの所望のレベルのきつさを達成するための、対象が吸入するニコチンの濃度を特定するステップ、対象によって吸入されることになるニコチンの総用量を特定するステップ、および製剤中のニコチン粒子の総量がニコチンの総用量と等しくなるように、ニコチンの特定された濃度を有するニコチン粒子を含む、ある量の製剤を、対象に提供するステップを含む。一実施形態では、使用されるニコチン粒子は、少なくとも1種のニコチン塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種のニコチン塩は、ニコチン酒石酸塩である。一実施形態では、ニコチン粒子は、少なくとも1種の糖をさらに含む。一実施形態では、少なくとも1種の糖は、乳糖である。一実施形態では、ニコチン粒子は、実質的に2~5μmの間のサイズである。一実施形態では、ニコチンの濃度は、約1.5%~約20%である。別の実施形態では、ニコチンの濃度は、約0.7%~約5%である。一実施形態では、製剤は、安定化剤をさらに含む。一実施形態では、製剤は、吸入器を使用して吸入される。
各用量について、一回の吸入当たり、実質的に一定レベルのきつさを維持しながら、複数の用量にわたって、様々な投与量のニコチンを、対象に送達する方法もまた、記載される。方法は、一回の吸入当たりの所望のレベルのきつさを達成するための、対象が吸入するニコチン製剤中のニコチンの濃度を特定するステップ、ニコチンの特定された濃度を有するニコチン粒子を含む、ある量の製剤を含む第1の用量を用意するステップ、およびニコチンの特定された濃度を有するニコチン粒子を含む、ある量の製剤を含む少なくとも1つのさらなる用量を用意するステップであって、少なくとも1つのさらなる用量中の製剤の量が、第1の用量中の製剤の量よりも少ない、ステップを含む。一実施形態では、投与される用量のきつさは実質的に一定のままでありながら、ニコチンの総用量が用量毎に減少される。
【0004】
各用量について、一回の吸入当たりのきつさのレベルを増加させながら、複数の用量にわたって、減少させた投与量のニコチンを、対象に送達する方法もまた、記載される。方法は、一回の吸入当たりの所望のレベルのきつさを達成するための、対象が吸入するニコチン製剤中のニコチンの濃度を特定するステップ、ニコチンの特定された濃度を有するニコチン粒子を含む、ある量の製剤を含む第1の用量を用意するステップ、ニコチンの特定された濃度を有するニコチン粒子を含む、ある量の製剤を含む少なくとも1つのさらなる用量を用意するステップであって、少なくとも1つのさらなる用量中の製剤の量が、第1の用量中の製剤の量よりも少ない、ステップ、およびニコチンの特定された濃度を有するニコチン粒子を含む、ある量の製剤を含む少なくとも1つのさらなる用量を用意するステップであって、少なくとも1つのさらなる用量中の製剤の量が、第1の用量中の製剤の量よりも少ない、ステップを含む。
吸入されるニコチンのきつさを制御するためのキットであって、ニコチン粒子を含む、少なくともある量のニコチン製剤およびそれとともに使用するための指示資料を含むキットもまた、記載される。一実施形態では、キットは、乾燥粉末吸入器を含む。
【0005】
ニコチン粒子を含む、吸入に好適な乾燥粉末ニコチン製剤であって、ニコチン粒子が、実質的に約1~10μmの間のサイズである、製剤もまた、記載される。一実施形態では、ニコチン粒子は、実質的に約2~5μmの間のサイズである。別の実施形態では、ニコチン粒子の約10%未満が、約1μm未満のサイズである。別の実施形態では、ニコチン粒子の約10%未満が、約2μm未満のサイズである。別の実施形態では、ニコチン粒子の少なくとも約90%が、約10μm未満のサイズである。別の実施形態では、ニコチン粒子の少なくとも約90%が、約5μm未満のサイズである。別の実施形態では、ニコチン粒子の約10%未満が約1μm未満のサイズであり、ニコチン粒子の少なくとも約90%が約10μm未満のサイズである。別の実施形態では、ニコチン粒子の約10%未満が約2μm未満のサイズであり、ニコチン粒子の少なくとも約90%が約5μm未満のサイズである。
【0006】
吸入に好適な乾燥粉末ニコチン製剤もまた、記載される。製剤は、実質的に約1~10μmの間のサイズの粒子を有する、ニコチンをベースとする成分、および実質的に約5~10μmの間のサイズの粒子を有する鎮咳薬成分を含む。一実施形態では、鎮咳薬成分は、メントールまたはミントを含む。別の実施形態では、ニコチンをベースとする成分の粒子は、実質的に約2~5μmの間のサイズであり、鎮咳薬成分の粒子は、実質的に約5~8μmの間のサイズである。別の実施形態では、製剤は、実質的に約10~200μmの間のサイズの粒子を有する鎮咳薬成分をさらに含む。別の実施形態では、実質的に約10~200μmの間のサイズの粒子を有する鎮咳薬成分は、メントールまたはミントを含む。別の実施形態では、製剤は、実質的に約10~1000μmの間のサイズの粒子を有する風味成分を含む。別の実施形態では、風味成分は、メントールまたはミントを含む。
本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面とともに読む場合、より良好に理解される。本発明を例示する目的で、目下好ましい実施形態を、図面に示す。しかしながら、本発明は、図面に示す実施形態の厳密な構成および機器類に限定されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】粉末製剤の総量および粉末製剤中のニコチンの濃度のうちの1つまたは両方を調節することによって、その量の粉末製剤中の送達されるニコチンの総用量を一定に維持しながら、様々なレベルのきつさを達成するための例示的な調製を図示する表である。
【
図2】ニコチンの様々な用量にわたってきつさを実質的に一定レベルに維持するため、ニコチン粒子を含有する粉末製剤の総量を調節することによって、粉末製剤の量中の送達されるニコチンの総用量の減少を達成するための例示的な調製を図示する表である。
【
図3】ニコチンの様々な用量にわたってきつさのレベルを増加させるため、ニコチン粒子を含有する粉末製剤の総量を調節することによって、粉末製剤の量中の送達されるニコチンの総用量の減少を達成するための例示的な調製を図示する表である。
【
図4】対象によって吸入されるニコチンのきつさを制御する例示的な方法のフローチャートである。
【
図5】各用量について、一回の吸入当たり実質的に一定レベルのきつさを維持しながら、複数の用量にわたって、減少された投与量のニコチンを、対象に送達するための例示的な方法のフローチャートである。
【
図6】各用量について、一回の吸入当たりのきつさのレベルを増加させながら、複数の用量にわたって、減少された投与量のニコチンを、対象に送達するための例示的な方法のフローチャートである。
【
図7】乾式混合ステップを含む、本発明の製剤を製造する例示的な方法を図示するフローチャートである。
【
図8】湿式混合ステップを含む、本発明の製剤を製造する例示的な方法を図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載のものと類似のまたは均等な任意の方法および材料を使用することができるが、好ましい方法および材料が記載される。
本明細書で使用される場合、以下の用語のそれぞれは、この項におけるその用語と関連する意味を有する。
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書において、その冠詞の文法上の目的語のうちの1つまたは1つ超(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「1つの要素(an element)」とは、1つの要素または1つ超の要素を意味する。
【0009】
本明細書において使用される場合、「約」は、測定可能な値、例えば、量、時間的な期間等を指す場合、指定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、なおより好ましくは±0.1%の変動を包含することが意図され、このような変動は本開示の実施に適切である。
本明細書で使用される場合、用語「ニコチン用量」および「総ニコチン用量」とは、目標ニコチン血中濃度を達成するために、対象に送達されるニコチンの総量を指す。
本明細書で使用される場合、用語「製剤量」とは、乾燥粉末吸入器とともに使用される使い捨て容器、例えばカプセルもしくはブリスターパックに詰められた乾燥粉末製剤の総量、または乾燥粉末吸入器の送達チャンバーもしくはコンパートメントに装填され得る、包装されていない乾燥粉末製剤の総量を指す。用語は、特定の血中ニコチン濃度を達成するために、対象に送達されるニコチン用量を含有する乾燥粉末製剤の総量も指す。したがって、製剤量には、ニコチンの総用量が含まれ、任意のさらなる薬学的に許容される材料、組成物または担体がさらに含まれ得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、用語「きつさ」とは、ニコチン粒子を吸入した後の対象の気道における刺激の感覚または知覚を指す。
本明細書で使用される場合、「吸入」とは、典型的には乾燥粉末吸入器からある量のニコチン乾燥粉末製剤を吸入する、1回の動作を指す。吸入の継続期間は、対象による吸入器の制御、例えば、ある時間持続して吸入し次いで停止する身体動作によって、または吸入器の物理的特質によって制限され得る。
他に記述されない限り、粒子の記載されたサイズまたはサイズ範囲は、粒子または粒子のセットの空気力学的質量中央径(MMAD)とみなされるべきである。このような値は、特徴づけられる粒子と同じ空気力学的挙動を有する、1gm/cm3の密度を有する球体の直径として定義される、空気力学的粒子径の分布に基づく。本明細書に記載の粒子は、密度および形状が様々であり得るので、粒子のサイズはMMADとして表され、これは粒子の実際の直径ではない。
用語「薬学的に許容される」とは、薬理学的/毒性学的な観点から患者に許容され、組成、製剤、安定性、患者受容および生物学的利用能に関する物理学的/化学的な観点から、製造する薬剤師に許容されるような特性および/または物質を指す。「薬学的に許容される」とは、担体を指して、有効成分の生物学的活性の有効性に干渉せず、それが投与される宿主に毒性でない媒体を意味する場合もある。本発明の実施に使用される医薬組成物中に含まれ得る、他のさらなる成分は、当技術分野で公知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington's Pharmaceutical Sciences (Genaro, Ed., Mack Publishing Co., 1985, Easton, PA)に記載されている。
【0011】
本明細書で使用される場合、用語「組成物」とは、本発明において有用な少なくとも1種の化合物または分子と、1種または複数の異なる化合物、分子または材料との混合物を指す。
本明細書で使用される場合、「指示資料」には、その指定された使用のための、本発明の組成物および方法の有用性を伝えるために使用され得る、物理または電子出版物、記録、図表または任意の他の表現媒体が含まれる。本発明のキットの指示資料は、例えば、組成物を含有する容器に貼り付けられてもよく、組成物を含有する容器と一緒に輸送されてもよい。あるいは、指示資料は、指示資料および組成物が受容者によって協同的に使用されることを意図して、容器とは別個に送達されてもよい。
範囲:本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性および簡潔さのためであって、本発明の範囲に対する確固たる限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、具体的に開示されたすべての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を有するとみなされるべきである。例えば、ある範囲の記載、例えば1~6は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の具体的に開示された部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3および6を有するとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0012】
説明
既存のニコチン送達システムおよび処置プロトコルにおいて、ニコチン血中レベルは、指定された製剤中の、対象の気道に送達される吸入されたニコチンの総用量によって最終的に制御され、製剤のきつさはニコチンの特徴によってのみ決定される。この設計の結果として、どのような単一回の吸入の間にも対象が経験するきつさは固定であり、これは、きつさのレベルが、用量を中止するか、または不適切に投与することなしには増加または減少させることができないことを意味する。これにより、吸入されるニコチン製品に関連する使用者の経験が、多いに制限される。
しかし、本明細書で実証するように、指定されたニコチン血中レベルを達成するために必要なニコチンの総用量は、代わりに、様々な総製剤量中の様々な濃度を有する粉末用量に製剤化することができる。例えば、低ニコチン濃度の製剤粉末は、吸入の間に低レベルのきつさをもたらし、所望の血中ニコチンレベルを達成するために、比較的多い総量の粉末中で送達され得る。同様に、高ニコチン濃度の製剤粉末は、吸入の間に高レベルのきつさをもたらすが、所望の血中ニコチンレベルを達成するために、比較的少ない量の粉末中で送達することができる。
【0013】
したがって、ニコチンをベースとする乾燥粉末製剤を吸入する場合、対象が経験するきつさは、1)総粉末製剤量、および2)総粉末製剤量中のニコチンの濃度のうち1つまたは両方を変化させることによって変更することができる。これを実施するために、特に複数の吸入にわたって粉末製剤用量を送達するために設計された乾燥粉末吸入器が、使用され得る。このような乾燥粉末吸入器の例は、その開示全体が、それぞれそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、共同所有する米国特許出願第62/147,798号、同第62/147,803号、同第62/147,806号、同第62/147,808号および同第62/148,030号に見出すことができる。本明細書で企図されるように、乾燥粉末製剤は、密封された保存チャンバー、例えばカプセルまたはブリスターパック中に配置され、これは前述の共同所有する特許出願に記載のデバイスのうち任意のものに装填され得る。
【0014】
例えば、
図1に示すように、3つの異なる製剤が略述され、ここで、各製剤は同じ総用量のニコチン(1mg)を送達するように設計されている。基本レベルのきつさを達成するために(製剤1)、ニコチンの総用量は、粉末の総製剤量10mgの一部分を形成し、結果として、製剤量中ニコチン濃度は10%になる。一回の吸入当たり、およそ1mgの粉末が吸入され得ると仮定すると、これは、一回の吸入当たり、約0.10mgのニコチンが吸入され、10mgの製剤粉末を取り込むために約10回の吸入の完了後に、ニコチンの総用量が投与されることを意味する。1mgのニコチンを送達する場合に、減少したレベルのきつさを達成するために(製剤2)、ニコチンの総用量は、粉末の総製剤量20mgの一部分を形成し、結果として、製剤量中ニコチン濃度は5%になる。やはり、一回の吸入当たり、およそ1mgの粉末が吸入され得ると仮定すると、これは、一回の吸入当たり、約0.05mgのニコチンが吸入され、20mgの製剤粉末を取り込むために約20回の吸入の完了後に、ニコチンの総用量が投与されることを意味する。一回の吸入当たり減少した量のニコチンを取り込むことによって、使用者は、減少したレベルのきつさを経験する。1mgのニコチンを送達する場合に、増加したレベルのきつさを達成するために(製剤3)、ニコチンの総用量は、粉末の総製剤量5mgの一部分を形成し、結果として、製剤量中ニコチン濃度は20%になる。やはり、一回の吸入当たり、およそ1mgの粉末が吸入され得ると仮定すると、これは、一回の吸入当たり、約0.20mgのニコチンが吸入され、5mgの製剤粉末を取り込むために約5回の吸入の完了後に、ニコチンの総用量が投与されることを意味する。一回の吸入当たり増加した量のニコチンを取り込むことによって、使用者は、増加したレベルのきつさを経験する。
【0015】
容易に明らかなように、基本レベルのきつさ、減少したレベルのきつさ、および/または増加したレベルのきつさは、ニコチンの様々な他の濃度および/または量によって達成できる。一部の実施形態では、ニコチンを0.7%~5%の間で含有する製剤によって、基本レベルのきつさが達成され得る。他の実施形態では、ニコチンを0.7%~5%の間で含有する製剤によって、減少したレベルのきつさが達成され得る。なお他の実施形態では、ニコチンを0.7%~5%の間で含有する製剤によって、増加したレベルのきつさが達成され得る。
【0016】
吸入されるニコチン製剤のきつさのレベルを制御することによって、ニコチン製剤は、対象が有し得るきつさまたは刺激物への耐性に関わらず、任意の対象が使用するのに好適な特定のレベルのきつさを達成するように、独自に設計され得る。換言すると、ニコチン粉末製剤は、喫煙したときに対象が経験するきつさをより正確に模倣するように、具体的に合わせられ、投与され得る。例えば、対象が禁煙療法で処置されている場合、プロセス全体を通して経験されるきつさを維持しながら、ニコチンの総用量を段階的に減少させることができる。
図2に示すように、3つの異なる製剤が略述され、ここで、各製剤は異なる(より少ない)総用量のニコチンを送達するように設計されている。製剤4で開始して、きつさの標的レベルが、一回の吸入当たり0.1mgのニコチンの吸入によって達成されると仮定する。したがって、ニコチンの総用量1mgは、粉末の総製剤量10mgの一部分を形成する必要があり、結果として、製剤量中ニコチン濃度は10%になる。一回の吸入当たり、およそ1mgの粉末が吸入され得ると仮定すると、これは、一回の吸入当たり、約0.10mgのニコチンが吸入され、所望のレベルのきつさで、約10回の吸入の完了後に、ニコチンの総用量が投与されることを意味する。製剤5は、ニコチンの総用量0.8mgを送達するように設計されている。したがって、ニコチンの総用量0.8mgは、粉末の総製剤量8mgの一部分を形成する必要があり、やはり、結果として、製剤量中ニコチン濃度は10%になる。一回の吸入当たり、およそ1mgの粉末が吸入され得ると仮定すると、これは、一回の吸入当たり、約0.10mgのニコチンが吸入され、製剤4を投与したときに経験されたのと同じレベルのきつさで、約8回の吸入の完了後に、ニコチンの総用量が投与されることを意味する。同様に、製剤6は、ニコチンの総用量0.6mgを送達するように設計されている。したがって、ニコチンの総用量0.6mgは、粉末の総製剤量6mgの一部分を形成する必要があり、やはり、結果として、製剤量中ニコチン濃度は10%になる。一回の吸入当たり、およそ1mgの粉末が吸入され得ると仮定すると、これは、一回の吸入当たり、約0.10mgのニコチンが吸入され、製剤4および5を投与したときに経験されたのと同じレベルのきつさで、約6回の吸入の完了後に、ニコチンの総用量が投与されることを意味する。したがって、対象は、送達されるニコチンの減少全体を通して対象が経験する同じレベルのきつさを、より正確に模倣しながら、製剤4~6を続いて投与することによって、投与されるニコチンの総用量を段階的に減らすことができる。
【0017】
容易に明らかなように、特定のレベルのきつさは、ニコチンの様々な他の濃度および/または量によって達成できる。一部の実施形態では、特定のレベルのきつさは、ニコチンを0.7%~5%の間で含有する製剤によって達成され得る。
【0018】
なお別の実施形態では、ニコチンの総用量は、経験されるきつさも変更しながら、段階的に減少され得る。例えば、
図3に示すように、3つの異なる製剤が略述され、ここで、各製剤は、わずかに増加したレベルのきつさを経験しながら、異なる(より少ない)総用量のニコチンを送達するように設計されている。製剤7で開始して、きつさの初期レベルが、一回の吸入当たり0.1mgのニコチンの吸入によって達成されると仮定する。したがって、ニコチンの総用量1mgは、粉末の総製剤量10mgの一部分を形成する必要があり、結果として、製剤量中ニコチン濃度は10%になる。一回の吸入当たり、およそ1mgの粉末が吸入され得ると仮定すると、これは、一回の吸入当たり、約0.10mgのニコチンが吸入され、初期レベルのきつさで、約10回の吸入の完了後に、ニコチンの総用量が投与されることを意味する。製剤8は、わずかに増加したきつさで、ニコチンの総用量0.8mgを送達するように設計されている。したがって、ニコチンの総用量0.8mgは、粉末の総製剤量7mgの一部分を形成する必要があり、結果として、製剤量中ニコチン濃度は約11.4%になる。一回の吸入当たり、およそ1mgの粉末が吸入され得ると仮定すると、これは、一回の吸入当たり、約0.114mgのニコチンが吸入され、製剤7を投与したときに経験されたよりもわずかに増加したレベルのきつさで、約7回の吸入の完了後に、ニコチンの総用量が投与されることを意味する。製剤9は、やはりわずかに増加したきつさで、ニコチンの総用量0.6mgを送達するように設計されている。したがって、ニコチンの総用量0.6mgは、粉末の総製剤量5mgの一部分を形成する必要があり、結果として、製剤量中ニコチン濃度は約12%になる。一回の吸入当たり、およそ1mgの粉末が吸入され得ると仮定すると、これは、一回の吸入当たり、約0.12mgのニコチンが吸入され、製剤8を投与したときに経験されたよりもわずかに増加したレベルのきつさで、約5回の吸入の完了後に、ニコチンの総用量が投与されることを意味する。したがって、対象は、送達されるニコチンの減少全体を通して、増加したレベルのきつさを経験しながら、製剤7~9を続いて投与することによって、投与されるニコチンの総用量を段階的に減らすことができる。
【0019】
したがって、本発明は、対象によって吸入されるニコチンのきつさを制御するための方法であって、対象によって吸入されるニコチン粉末製剤のきつさを増加させる、減少させるまたは維持するステップを含む方法を含み得る。例えば、
図4に示すように、方法400は、一回の吸入当たりの所望のレベルのきつさを達成するための、対象が吸入するニコチンの濃度を特定するステップ410、対象によって吸入されることになるニコチンの総用量を特定するステップ420、および製剤中のニコチン粒子の総量がニコチンの総用量と等しくなるように、ニコチンの特定された濃度を有するニコチン粒子を含む、ある量の製剤を、対象に提供するステップ430を含む。
別の例では、
図5に示すように、方法500は、各用量について、一回の吸入当たり実質的に一定レベルのきつさを維持しながら、複数の用量にわたって、減少させた投与量のニコチンを、対象に送達するために使用され得る。方法500は、一回の吸入当たりの所望のレベルのきつさを達成するための、対象が吸入するニコチン製剤中のニコチンの濃度を特定するステップ510、ニコチンの特定された濃度を有するニコチン粒子を含む、ある量の製剤を含む第1の用量を用意するステップ520、およびニコチンの特定された濃度を有するニコチン粒子を含む、ある量の製剤を含む少なくとも1つのさらなる用量を用意するステップであって、少なくとも1つのさらなる用量中の製剤の量が、第1の用量中の製剤の量よりも少ない、ステップ530を含み得る。
【0020】
別の例では、
図6に示すように、方法600は、各用量について、一回の吸入当たりのきつさのレベルを増加させながら、複数の用量にわたって、減少させた投与量のニコチンを、対象に送達するために使用され得る。方法600は、一回の吸入当たり第1のレベルのきつさを達成するための、対象が吸入するニコチン製剤中のニコチンの第1の濃度を特定するステップ610、一回の吸入当たり、ニコチンの第1の濃度により達成されるきつさのレベルよりも高いあるレベルのきつさを達成するための、対象が吸入するニコチン製剤中のニコチンの、少なくとも1つのさらなる濃度を特定するステップ620、ニコチンの特定された第1の濃度を有するニコチン粒子を含む、ある量の製剤を含む第1の用量を用意するステップ630、およびニコチンの特定されたさらなる濃度を有するニコチン粒子を含む、ある量の製剤を含む、少なくとも1つのさらなる用量を用意するステップであって、少なくとも1つのさらなる用量中の製剤の量が、第1の用量中の製剤の量よりも少ない、ステップ640を含み得る。
【0021】
再度述べると、ニコチン製剤中のニコチンの総用量を増加させる、減少させるまたは維持する任意の方式を、ニコチン製剤を吸入する対象が経験するきつさのレベルを増加させる、減少させるまたは維持する任意の方式と組み合わせ得ることが認識されるべきである。
本明細書で企図されるように、粉末の特定の製剤量または総製剤量中のニコチンの濃度には制限がなく、むしろ、本発明は、乾燥粉末吸入器によりニコチンの総用量を対象に送達する場合に、これらのパラメータの1つまたは両方を変更できることに関する。さらに、一回の吸入当たりの吸入される粉末の実際の量に制限はない。このような量は、使用される乾燥粉末吸入器の機能性に依存し得るか、またはこのような量は、使用者の行為に依存し得、ここで使用者は、使用する乾燥粉末吸入器を通してより浅く吸入するかまたはより深く吸入するかを選択する。さらに、複数回の吸入によって、ニコチンの総用量を投与することによって、対象はより一貫してニコチンの総用量の取込みを確かにすることができ、1回の吸入の間に生じるあらゆる使用者の誤差は、1回または複数回の後続の吸入によって最終的に修正される。
【0022】
一実施形態では、ニコチン療法コースは、数日続き得る。一実施形態では、ニコチン療法のコースは、約7日~約30日の間続く。別の実施形態では、ニコチン療法のコースは、約10日~約45日の間続く。別の実施形態では、ニコチン療法のコースは、約15日~約60日の間続く。別の実施形態では、ニコチン療法のコースは、約30日~約90日の間続く。好ましい実施形態では、ニコチン療法のコースは、約30日続く。別の好ましい実施形態では、ニコチン療法のコースは、約45日続く。別の好ましい実施形態では、ニコチン療法のコースは、約60日続く。別の好ましい実施形態では、ニコチン療法のコースは、約90日続く。
別の実施形態では、本発明は、吸入の際に所望のレベルのきつさを達成するために、特定のニコチンをベースとする粉末製剤を使用するかまたは選択するための指示のセットをさらに含み得る。例えば、指示のセットは、対象に、「指示資料」の形態、例えば、パンフレット、マニュアル、または任意の電子ファイル形式、例えば、eメール、ウェブページ、SMS等で伝えられ得、これはさらに、パートオブキットであるか、またはこれに関連し得る。
【0023】
したがって、本発明は、禁煙キットを含むがこれに限定されないニコチン療法キットをさらに含み得る。一実施形態では、キットは、密封された保存チャンバー、例えばカプセルまたはブリスターパック中に含有される、複数のニコチンをベースとする粉末製剤用量を含み得る。本明細書で企図されるように、少なくとも2つの製剤用量は、総ニコチンの量が等しいが、ニコチン濃度が異なる。他の実施形態では、キットは、ニコチンの濃度が異なる、包装されていないニコチンをベースとする粉末の少なくとも2つのセット、および乾燥粉末吸入器の保存チャンバー内に装填することができる、粉末のセット量を測定するための手段、例えば、計量スプーンまたは目盛り付き測定容器を含む。他の実施形態では、キットは、1種または複数の包装されていないニコチンをベースとする粉末製剤を保持するのに好適な、1つまたは複数のリザーバまたは他のコンパートメントを有する乾燥粉末吸入器を含み、吸入のために指定された量の製剤を分注するかまたは装填するための計量機構をさらに含んでもよい。
別の実施形態では、キットは、ニコチン療法または処置のセットコース、例えば30日コースの処置等のための、事前に充填された粉末カプセルを含む。カプセルは、治療レジメン毎に同じ総ニコチン用量を送達しながら、様々なレベルのきつさを達成するために、様々なニコチン濃度の、様々な量の粉末を充填され得る。他の実施形態では、キットは、禁煙療法を含むがこれに限定されないニコチン療法のための方法のためのステップを記載する指示資料を含む。方法のステップは、乾燥粉末製剤用量を乾燥粉末吸入器に装填することによって投与されることになる、開始用量、その後の標準用量、例えば、複数の1日用量、および最終用量を含み得る。指示資料は、任意の特定の投与される投与量について吸入のきつさを調節または選択するためのステップも含み、治療の対象が、所望のきつさのレベルに対応する密封された製剤用量を投与することによって、経験するきつさのレベルを選択し得るようにし得る。
【0024】
別の実施形態では、指示資料は、投与される用量のきつさをほぼ同じに維持しながら、ニコチン1日用量を調節し得る、ニコチン療法の日数セットコースについて、使用者に指示し得る。一実施形態では、ニコチン療法のコースは、約7日~約30日の間続く。別の実施形態では、ニコチン療法のコースは、約10日~約45日の間続く。別の実施形態では、ニコチン療法のコースは、約15日~約60日の間続く。別の実施形態では、ニコチン療法のコースは、約30日~約90日の間続く。好ましい実施形態では、ニコチン療法のコースは、約30日続く。別の好ましい実施形態では、ニコチン療法のコースは、約45日続く。別の好ましい実施形態では、ニコチン療法のコースは、約60日続く。別の好ましい実施形態では、ニコチン療法のコースは、約90日続く。一実施形態では、投与される用量のきつさはほぼ同じままでありながら、ニコチン1日用量が毎日増加される。別の実施形態では、投与される用量のきつさはほぼ同じままでありながら、ニコチン1日用量がある期間毎日増加され、次いで、ある期間毎日減少される。好ましい実施形態では、投与される用量のきつさは、ほぼ同じままでありながら、ニコチン1日用量が、毎日減少される。
【0025】
一態様では、本発明は、吸入に好適な乾燥粉末ニコチン製剤に関する組成物および方法を提供する。一実施形態では、製剤は、ニコチン粒子および少なくとも1種の糖で構成される。一実施形態では、ニコチン粒子は、ニコチン塩で構成される。本発明は、本発明の製剤を生成するための方法も提供する。
【0026】
本発明は、ニコチン成分および任意選択のさらなる成分が、制御された粒子サイズ範囲内に収まる、ニコチンの乾燥粉末製剤、および他の選択された材料に関する。例えば、一実施形態では、製剤は、粒子のMMADに基づいて、実質的に約1~10μmの間にサイズ調整されたニコチン粒子(本明細書において、ニコチンをベースとする成分とも称する)を含む。なお別の実施形態では、製剤は、実質的に約1~7μmの間にサイズ調整されたニコチン粒子を含む。別の実施形態では、製剤は、実質的に約2~5μmの間にサイズ調整されたニコチン粒子を含む。なお別の実施形態では、製剤は、実質的に約2~3μmの間にサイズ調整されたニコチン粒子を含む。約1μm未満のサイズまたは約2μm未満のサイズのニコチン粒子を選択的に制限するかまたは除外することによって、本発明の製剤は、対象がニコチンを環境中に吐き戻す能力を除去するかまたは少なくとも低減し、これによって副流煙中に含有されるニコチンの生成を効果的に低減するかまたは除去する。さらに、呼吸可能ではないニコチン粒子を選択的に制限するかまたは除外することによって、本発明の製剤は、より大きい気道、中咽頭、声門声帯、および口腔により近位のまたはより接近した他の解剖学的領域に取込まれたニコチン粒子によって生じる、望ましくない刺激を低減する。したがって、一部の実施形態では、ニコチン粒子サイズ範囲内で最小の粒子は、少なくとも約1μm、少なくとも約1.1μm、少なくとも約1.2μm、少なくとも約1.3μm、少なくとも約1.4μm、少なくとも約1.5μm、少なくとも約1.6μm、少なくとも約1.7μm、少なくとも約1.8μm、少なくとも約1.9μm、または少なくとも約2μmである。一部の実施形態では、ニコチン粒子サイズ範囲内で最大の粒子は、約10μm以下、約7μm以下、約6μm以下、約5μm以下、約4.5μm以下、約4μm以下、約3.5μm以下、または約3μm以下である。ある特定の実施形態では、ニコチン粒子の約10%以下が、約1μm未満である。ある特定の実施形態では、ニコチン粒子の約10%以下が、約2μm未満である。他の実施形態では、ニコチン粒子の少なくとも90%が、約10μm未満である。他の実施形態では、ニコチン粒子の少なくとも90%が、約7μm未満である。他の実施形態では、ニコチン粒子の少なくとも90%が、約5μm未満である。一実施形態では、ニコチン粒子の約10%以下が約1μm未満であり、ニコチン粒子の少なくとも90%が約10μm未満である。一実施形態では、ニコチン粒子の約10%以下が約1μm未満であり、ニコチン粒子の少なくとも90%が約7μm未満である。一実施形態では、ニコチン粒子の約10%以下が約2μm未満であり、ニコチン粒子の少なくとも90%が約5μm未満である。一実施形態では、ニコチン粒子の約10%以下が約2μm未満であり、ニコチン粒子の少なくとも90%が約3μm未満である。
【0027】
当業者によって理解されるであろうように、本明細書に記載の粒子サイズ範囲は、絶対的な範囲ではない。例えば、約2~5μmのサイズ範囲の、本発明のニコチン粒子混合物は、約2~5μmの範囲よりも小さいかまたは大きい一部の粒子を含有し得る。一実施形態では、本発明の製剤の任意の特定の成分について提示される粒子サイズの値は、D90値を表し、ここで、混合物の粒子サイズのうち90%は、D90値未満である。別の実施形態では、粒子サイズ範囲は、粒子サイズ分布(PSD)を表し、ここで、混合物の粒子の百分率は列挙された範囲に収まる。例えば、約2~5μmのニコチン粒子サイズ範囲は、粒子のうち少なくとも50%が約2~5μmの範囲であるニコチン粒子の混合物を表し得るが、より高い百分率、例えばこれらに限定されないが、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%またはさらには99%がより好ましい。
【0028】
別の例では、本発明の製剤は、実質的に5~10μmの間にサイズ調整された粒子を有する鎮咳薬成分を含んでもよい。一実施形態では、鎮咳薬成分は、メントールまたはミントである。一実施形態では、製剤中のミントの濃度は、約0.5%~約20%の間である。別の実施形態では、製剤中のミントの濃度は、約0.5%である。別の実施形態では、鎮咳薬成分は、ベンゾカインを含み得る。鎮咳薬成分は、咳を鎮めるための認可された任意の化合物を含み得ることが認識されるべきである。5~10μmの間のメントールまたはミント粒子を選択的に含むことによって、これらの呼吸に適さないメントールまたはミント粒子は、対象の上気道中の刺激をやわらげることによって咳を低減することができる。したがって、一部の実施形態では、鎮咳薬成分の粒子サイズ範囲内で最小の粒子は、少なくとも約5μm、少なくとも約6μm、少なくとも約7μm、または少なくとも約8μmである。一部の実施形態では、鎮咳薬成分の粒子サイズ範囲内で最大の粒子は、約10μm以下、約9μm以下、約8μm以下、または約7μm以下である。ある特定の実施形態では、鎮咳薬粒子の約10%以下が、約5μm未満である。他の実施形態では、鎮咳薬粒子の少なくとも90%が、約10μm未満である。他の実施形態では、鎮咳薬粒子の少なくとも90%が、約8μm未満である。一実施形態では、鎮咳薬粒子の約10%以下が4μm未満であり、鎮咳薬粒子の少なくとも90%が約10μm未満である。一実施形態では、鎮咳薬粒子の約10%以下が約5μm未満であり、鎮咳薬粒子の少なくとも約90%が約8μm未満である。好ましい実施形態では、鎮咳薬成分は、実質的に5~10μmの範囲の粒子で構成されるが、鎮咳薬成分はより幅広い範囲の粒子を含んでもよい。一実施形態では、鎮咳薬成分は5~25μmの範囲の粒子を含み得る。別の実施形態では、鎮咳薬成分は、実質的に5~50μmの範囲の粒子を含む。なお別の実施形態では、鎮咳薬成分は、実質的に5~100μmの範囲の粒子を含む。
【0029】
別の例では、本発明の製剤は、実質的に10~200μmの間にサイズ調整された粒子を有する鎮咳薬成分を含んでもよい。この鎮咳薬成分は、既に議論した5~10の範囲の鎮咳薬成分の代わりに、またはこれに加えて、製剤に添加され得る。したがって、本発明の製剤は、2種の鎮咳薬成分を含み得、ここで、各鎮咳薬成分は、実質的に異なる粒子サイズ分布を有する。10~200μmの鎮咳薬成分は、中咽頭、声門声帯、および咳を引き起こし得るかまたは他の望ましくない感覚を引き起こし得る受容体を含有する、口腔により近位のまたはより接近した他の解剖学的領域の刺激によって生じる咳を低減し得る。本明細書で企図されるように、これらのより大きい粒子は、実質的に声門下気道に進入することができない。したがって、一部の実施形態では、鎮咳薬成分の粒子サイズ範囲内で最小の粒子は、少なくとも約10μm、少なくとも約12μm、少なくとも約20μm、少なくとも約30μm、または少なくとも約50μmである。一部の実施形態では、鎮咳薬成分の粒子サイズ範囲内で最大の粒子は、約200μm以下、約150μm以下、約120μm以下、約100μm以下、約90μm以下、または約80μm以下である。ある特定の実施形態では、鎮咳薬成分の粒子の約10%以下が、約10μm未満である。ある特定の実施形態では、鎮咳薬成分の粒子の約10%以下が、約20μm未満である。他の実施形態では、鎮咳薬成分の粒子の少なくとも90%が、約200μm未満である。他の実施形態では、鎮咳薬成分の粒子の少なくとも90%が、約150μm未満である。他の実施形態では、鎮咳薬成分の粒子の少なくとも90%が、約100μm未満である。一実施形態では、鎮咳薬成分の粒子の約10%以下が10μm未満であり、鎮咳薬成分の粒子の少なくとも90%が約200μm未満である。一実施形態では、鎮咳薬成分の粒子の約10%以下が約12μm未満であり、鎮咳薬成分の粒子の少なくとも90%が約100μm未満である。一実施形態では、鎮咳薬成分は、約10~200μmの間のサイズのメントールまたはミント粒子を含み、これは、粒子がぶつかる領域にやわらげる効果をもたらし得る。別の実施形態では、約10~200μmの間のサイズの粒子を有する鎮咳薬成分は、ベンゾカインを含み得る。約10~200μmの間のサイズの粒子を有する鎮咳薬成分は、咳を鎮めるための認可された任意の化合物を含み得ることが認識されるべきである。別の例では、ニコチン成分以外の、本発明の製剤中の少なくとも1種の成分の添加は、ニコチン含有粒子を希釈するように作用し、中咽頭、声帯、および気管に近位の他の解剖学的領域をニコチンが刺激することによって生じる咳を低減し得る。
【0030】
別の例では、本発明の製剤は、実質的に約10~1000μmの間にサイズ調整された粒子を有する風味成分を含んでもよい。一実施形態では、風味成分は、実質的に約10~200μmの範囲の粒子で構成される。好ましい実施形態では、風味成分は、実質的に約10~100μmの範囲の粒子で構成される。この風味成分は、対象の口腔中にぶつかって、所望の風味をもたらし得るような、包埋された、より大きい粒子を利用する。さらに、このような風味成分の粒子を約10μmよりも大きいサイズに制限することによって、これらの粒子が対象の肺に進入するそれらの能力を制限する。したがって、一部の実施形態では、風味付け成分の粒子サイズ範囲内で最小の粒子は、少なくとも約10μm、少なくとも約12μm、少なくとも約20μm、少なくとも約30μm、または少なくとも約50μmである。一部の実施形態では、風味付け成分の粒子サイズ範囲内で最大の粒子は、約1000μm以下、約500μm以下、約200μm以下、約150μm以下、約120μm以下、約100μm以下、約90μm以下、または約80μm以下である。ある特定の実施形態では、風味成分の粒子の約10%以下が、約10μm未満である。ある特定の実施形態では、風味成分の粒子の約10%以下が、約20μm未満である。他の実施形態では、風味成分の粒子の少なくとも90%が、約1000μm未満である。他の実施形態では、風味成分の粒子の少なくとも90%が、約500μm未満である。他の実施形態では、風味成分の粒子の少なくとも90%が、約200μm未満である。他の実施形態では、風味成分の粒子の少なくとも90%が、約150μm未満である。他の実施形態では、風味成分の粒子の少なくとも90%が、約100μm未満である。一実施形態では、風味成分の粒子の約10%以下が10μm未満であり、風味成分の粒子の少なくとも90%が約1000μm未満である。一実施形態では、風味成分の粒子の約10%以下が10μm未満であり、風味成分の粒子の少なくとも90%が約200μm未満である。一実施形態では、風味成分の粒子の約10%以下が約10μm未満であり、風味成分の粒子の少なくとも約90%が約100μm未満である。一実施形態では、風味成分は、メントールである。他の実施形態では、風味成分は、タバコ、ミント、果実香料、または砂糖菓子もしくはパン焼きに使用される食品グレードの着香料を含み得る。風味成分は、当技術分野で公知の任意の香味剤、好ましくは当局に認可された香味剤であり得ることが認識されるべきである。
【0031】
図2に示すように、本発明は、乾式プロセスまたは本明細書に記載の製剤のうちいずれか1種を生成する方法を含む。例えば、ステップ110において、ニコチン酒石酸塩は乾式粉砕される。ステップ120において、ニコチンは、乳糖と混合される。一部の実施形態では、ニコチンまたはニコチン塩は、製剤のいずれの他の成分にも結合していない。つまり、製剤は、ニコチンまたはニコチン塩の個別の粒子、および製剤の他の成分、例えば糖の個別の粒子を含有する。一実施形態では、ニコチンは乳糖粒子に結合していない。あるいは、ニコチン酒石酸塩および乳糖は、例えばステップ115においてまず乾式混合され、ステップ125において共粉砕され得る。ステップ130で、得られた製剤の粒子は、例えばふるいによってろ過されて、サイズ閾値より大きいあらゆる粒子が除去される。ステップ140で、得られた製剤の粒子は再度ろ過されて、サイズ閾値より小さいあらゆる粒子が除去されて、最終乾燥粉末製剤が得られる。一部の実施形態では、1つのろ過ステップのみが必要である。他の実施形態では、2つ以上のろ過ステップが必要である。ステップ160で、鎮咳薬成分が、最終製剤150に添加されてもよい。ステップ160は、添加される鎮咳薬成分について所望の粒子サイズ(例えば、1~10μm)を得るために必要な、任意の数の加工ステップを含有し得る。ステップ170で、鎮咳薬成分が、最終製剤150に添加されてもよい。ステップ170は、添加される鎮咳薬成分について所望の粒子サイズ(例えば、10~200μm)を得るために必要な、任意の数の加工ステップを含有し得る。ステップ180で、風味成分が、最終製剤150に添加されてもよい。ステップ180は、添加される風味成分について所望の粒子サイズ(例えば、10~1000μm)を得るために必要な、任意の数の加工ステップを含有し得る。
【0032】
図3に示すように、本発明は、湿式プロセスまたは本明細書に記載の製剤のうちいずれか1種を生成する方法も含む。例えば、ステップ210において、ニコチン酒石酸塩は、担体、例えば乳糖と混合されて、流動性混合物が形成される。ステップ220で、混合物は微粒化される。ステップ230で、混合物は、例えば噴霧乾燥機により乾燥される。あるいは、このプロセスは、流動層乾燥により実施されてもよく、ここで、ニコチン酒石酸塩が代わりに乳糖上に噴霧乾燥され得る。ステップ240で、得られたニコチン粒子は、例えばふるいによってろ過されて、サイズ閾値よりも大きいあらゆる粒子が除去される。ステップ250で、得られたニコチン粒子は再度ろ過されて、サイズ閾値よりも小さいあらゆる粒子が除去されて、最終乾燥粉末製剤が得られる。一部の実施形態では、1つのろ過ステップのみが必要である。他の実施形態では、2つ以上のろ過ステップが必要である。ステップ270で、鎮咳薬成分が、最終製剤260に添加されてもよい。ステップ270は、添加される鎮咳薬成分について所望の粒子サイズ(例えば、1~10μm)を得るために必要な、任意の数の加工ステップを含有し得る。ステップ280で、鎮咳薬成分が、最終製剤260に添加されてもよい。ステップ280は、添加される鎮咳薬成分について所望の粒子サイズ(例えば、10~200μm)を得るために必要な、任意の数の加工ステップを含有し得る。ステップ290で、風味成分が、最終製剤260に添加されてもよい。ステップ290は、添加される風味成分について所望の粒子サイズ(例えば、10~1000μm)を得るために必要な、任意の数の加工ステップを含有し得る。
【0033】
一実施形態では、ニコチンをベースとする成分は、ニコチンおよび個々に分離した固体流動性粒子として調製された医薬品グレードの糖を含み得、これは対象によって吸入される空気にのって、肺胞および肺のより小さい気道に移動し得る。さらに、乾燥されたニコチン-糖粒子は、例えば1つまたは複数のふるい分けステップにより、ろ過されて、除去されるこれら粒子から、所望の粒子サイズが単離および分割され得る。
一実施形態では、ニコチンをベースとする成分の初期粒子は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20120042886号に記載の方法により生成され得る。例えば、第1のステップにおいて、ニコチンおよび医薬品グレードの糖、例えば乳糖は、液体担体と混合されて、流動性混合物が形成され得る。
【0034】
本明細書で企図されるように、ニコチンの任意の形態が、ニコチンをベースとする成分として使用され得る。好ましくは、使用されるニコチンの形態は、患者の肺への急速な取込みを達成するものである。粉砕、または糖もしくは他の成分と共粉砕され得るニコチンの形態が好ましい。別の実施形態では、ニコチンは、糖または他の成分とブレンドされる。一実施形態では、ニコチンは塩であり、これは室温で固体である。ニコチンは、さらに、薬理学的に活性な、ニコチンの類似体もしくは誘導体であってもよく、単独もしくは他の活性物質との組合せでのいずれかでニコチン効果を模倣する物質であってもよい。ニコチンが塩基である場合、これは液体担体、例えば水に添加され、混合されて概して均質な液体混合物が生成され得、これは次いで、様々な方法によって乾燥されて、乾燥微粒子製剤が形成され得る。他の実施形態では、液体担体に可溶性または混和性である、ニコチンの形態も使用され得る。例えば、ニコチンはニコチン塩基であってよく、これは室温で、水に混和性である液体である。あるいは、ニコチン塩基はオイル製剤であってもよい。
【0035】
したがって、一実施形態では、ニコチンは、遊離塩基として製剤中に存在する。別の実施形態では、製剤は、ニコチン塩を含み得る。このような一実施形態では、ニコチン塩は、ニコチン酒石酸塩である。別の実施形態では、ニコチン塩は、ニコチン酒石酸水素である。他の実施形態では、ニコチン塩は、無機酸、有機酸、溶媒和物、水和物またはこれらのクラスレートを含む、任意の好適な非毒性酸から調製され得る。このような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、ヘキサフルオロリン酸、クエン酸、グルコン酸、安息香酸、プロピオン酸、ブタン酸、サリチル酸硫酸、マレイン酸、ラウリン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アルソン酸、パモ酸、p-トルエンスルホン酸およびメシル酸である。適切な有機酸は、例えば、有機酸の脂肪族、芳香族、カルボンおよびスルホンクラスから選択され得、その例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、カンファースルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、ムチン酸、酒石酸、パラ-トルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシレート)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸等である。
【0036】
本明細書で企図されるように、糖は吸入可能な糖であり、一般に室温で固体である。糖は、微粒子製剤に、単独で粉砕されるかまたはニコチン成分と共粉砕され得る。糖は、液体担体、例えば水に可溶でもあり得る。限定なしに、好適な糖の例は、乳糖、ショ糖、ラフィノース、トレハロース、フルクトース、ブドウ糖、グルコース、マルトース、マンニトールまたはこれらの組合せである。一実施形態では、糖は、乳糖である。別の実施形態では、乳糖は、粗乳糖である。別の実施形態では、糖は、アルファ一水和物乳糖である。一実施形態では、製剤中の乳糖の百分率は、50%~99%の間である。一実施形態では、製剤中の乳糖の百分率は、50%~80%の間である。一部の実施形態では、製剤中の乳糖の百分率は、75%~90%の間である。他の実施形態では、製剤中の乳糖の百分率は、75%~85%の間である。なお他の実施形態では、製剤中の乳糖の百分率は、80%~90%の間である。なお他の実施形態では、製剤中の乳糖の百分率は、80%~99%の間である。一実施形態では、製剤中の乳糖の百分率は、約50%である。一実施形態では、製剤中の乳糖の百分率は、約60%である。一実施形態では、製剤中の乳糖の百分率は、約70%である。一実施形態では、製剤中の乳糖の百分率は、約80%である。一実施形態では、製剤中の乳糖の百分率は、約85%である。別の実施形態では、製剤中の乳糖の百分率は、約90%である。別の実施形態では、製剤中の乳糖の百分率は、約95%である。別の実施形態では、製剤中の乳糖の百分率は、約99%である。
【0037】
糖は天然糖であっても合成糖であってもよく、糖の任意の類似体または誘導体を含んでもよい。賦形剤として承認された、任意の形態の糖が、ニコチンをベースとする成分の生成における担体として使用され得ることが認識されるべきである。必要ではないが、糖は、好ましくは、当業者であれば理解するように、医薬品グレードのものである。好ましくは、使用されて、単独で粉砕されるか、ニコチン成分と共粉砕されるか、または流動性混合物が作り出される医薬品グレードの糖は、球状化されていない糖である。医薬品グレードの糖は、ニコチンとの乾式または湿式混合の前に、球状化されていない形態で調製され得る。例えば、医薬品グレードの糖は、凍結乾燥、粉砕、微粒子化等によって、球状化されていない形態で、まず調製され得る。ある特定の実施形態では、医薬品グレードの糖は、粉砕、バッシング、摩砕、圧搾、切断、ふるい分け、または最終的に糖の粒子サイズを減少させ、球状化されていない糖をもたらす、当業者によって理解されるような他の物理的分解プロセスに供され得る。
【0038】
一態様では、本発明は、アミノ酸をさらに含む、吸入に好適な乾燥粉末ニコチン製剤に関する。一実施形態では、アミノ酸は、ヒスチジン、アラニン、イソロイシン、アルギニン、ロイシン、アスパラギン、リシン、アスパラギン酸、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン、グルタミン、トリプトファン、グリシン、バリン、ピロリジン、プロリン、セレノシステイン、セリンおよびチロシンからなる群から選択される。一実施形態では、アミノ酸は、ロイシンである。一実施形態では、ロイシンは、本発明の組成物の劣化を任意の程度低減することによって、安定剤として作用する。別の実施形態では、ロイシンは、その緩衝能によって緩衝剤として作用することによって、本発明の組成物の劣化を防ぐ。別の実施形態では、ロイシンは、粉体流促進剤として作用する。別の実施形態では、本発明の組成物中のロイシンは、粉末の流れを改善する。別の実施形態では、本発明の組成物中のロイシンは、対象によって吸入される空気に、粉末製剤の粒子がより容易にのりかつのったままにさせ、これによって組成物粒子が肺胞および気道に移動し、そこで保持される能力を改善する。一実施形態では、製剤中のロイシンの百分率は、0.5%~10%の間である。一部の実施形態では、製剤中のロイシンの百分率は、1.5%~2.5%の間である。他の実施形態では、製剤中のロイシンの百分率は、0.5%~2.5%の間である。なお他の実施形態では、製剤中のロイシンの百分率は、1.5%~5%の間である。一実施形態では、製剤中のロイシンの百分率は、約2.5%である。別の実施形態では、製剤中のロイシンの百分率は、約5%である。別の実施形態では、製剤中のロイシンの百分率は、約7.5%である。別の実施形態では、製剤中のロイシンの百分率は、約10%である。
【0039】
様々な実施形態では、製剤は、本発明において有用な化合物がその意図された機能を実行し得るように、対象内または対象に、本発明において有用な化合物を運搬または輸送するのに関与する、任意の薬学的に許容される材料、組成物または担体、例えば、液体もしくは固体充填剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、希釈剤、賦形剤、増粘剤、溶媒、または封入材料をさらに含み得る。一実施形態では、製剤は、安定化剤でさらに構成される。各材料は、ニコチンを含む、製剤の他の成分と適合性であり、対象に有害でないという意味で「許容される」ものでなくてはならない。本発明の製剤に有用であり得る一部の材料としては、薬学的に許容される担体、例えば、糖、例えば、乳糖、グルコースおよびショ糖;デンプン、例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよびアセチルセルロース;粉末化トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、ココアバター、レシチンおよび坐剤ワックス;オイル、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;界面活性剤;アルギン酸;パイロジェンを含まない水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;ならびに医薬品製剤において用いられる他の非毒性適合性物質が挙げられる。製剤に有用であり得る、他の薬学的に許容される材料としては、ニコチンまたは本発明において有用な任意の他の化合物の活性と適合性であり、対象に生理的に許容される、ありとあらゆるコーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに吸収遅延剤等が挙げられる。それらの化合物の薬学的に許容される塩を含む、補助的に活性な化合物も、組成物に組み込まれ得る。本発明の実施において使用される組成物に含まれ得る、他のさらなる成分は、当技術分野で公知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington's Pharmaceutical Sciences (Genaro, Ed., Mack Publishing Co., 1985, Easton, PA)に記載されている。
本発明の方法において、および本発明の製剤について、粒子をブレンドする任意の方法が、ここで企図される。ブレンドするステップは、連続式、バッチ式またはセミバッチ式プロセスの、1つまたは複数のステップで実行され得る。例えば、2種以上の賦形剤が使用される場合、これらは医薬品微小粒子とブレンドされる前またはこれと同時に、一緒にブレンドされ得る。
【0040】
ブレンドするステップは、本質的に、微小粒子を、ブレンドの均一性を達成するのに効果的な1種または複数の他の材料(例えば、賦形剤)と合わせるのに好適な任意の技術またはデバイスを使用して実施され得る。ブレンドするプロセスは様々なブレンダーを使用して実施され得る。好適なブレンダーの代表例としては、V-ブレンダー、傾斜コーンブレンダー、キューブブレンダー、ビンブレンダー、静的連続式ブレンダー、動的連続式ブレンダー、環状スクリューブレンダー、プラネタリブレンダー、Forbergブレンダー、水平ダブルアームブレンダー、水平高強度ミキサー、垂直高強度ミキサー、撹拌羽根ミキサー、双コーンミキサー、ドラムミキサーおよびタンブルブレンダーが挙げられる。ブレンダーは、好ましくは、医薬製品に要求される、衛生面で厳しく設計されたものである。
タンブルブレンダーは、バッチ運転について好まれることが多い。一実施形態では、ブレンドするステップは、好適な容器内で、2種以上の成分(乾燥成分および少量の液体成分の両方を含み得る)を無菌で合わせることによって実現される。タンブルブレンダーの一例は、Glen Mills Inc.、Clifton,N.J.、米国によって流通し、Willy A.Bachofen AG,Maschinenfabrik、Basel、Switzerlandによって作製されているTURBULA(商標)である。
【0041】
連続式または半連続式運転について、ブレンダーはロータリフィーダー、スクリューコンベヤ、または乾燥粉末成分の1種もしくは複数のブレンダーへの導入を制御するための他の供給機構を備えていてもよい。
粉砕するステップは、ブレンドされた粒子を砕くおよび/または脱凝集させるために使用されて、所望の粒子サイズおよびサイズ分布を達成し、さらにブレンド内での粒子の分布を向上させる。当業者によって理解されるように、本発明の粒子を形成するために、任意の粉砕法が使用できる。当技術分野で公知の様々な粉砕プロセスおよび装置を使用してよい。例としては、ハンマーミル、ボールミル、ローラーミル、ディスクグラインダー、ジェット粉砕等が挙げられる。好ましくは、乾式粉砕プロセスが使用される。
【0042】
本明細書で企図されるように、任意の液体担体が、湿式プロセスにおいて使用され得る。好ましくは、液体担体は、医薬品グレードの糖およびニコチン酒石酸塩またはニコチン塩基の両方が可溶であるものである。例えば、一実施形態では、液体担体は、水である。水が好ましい液体担体であるが、水と組み合わせて、または水の代わりに、他の液体を使用してもよい。例えば、液体担体は、共沸液体担体を形成するために、アルコールと水の混合物を含み得る。アルコールが使用される場合、アルコールは、好ましくは第一級アルコールである。一実施形態では、アルコールは、好ましくは、低級アルキルアルコール(すなわち、C1-C5)、例えばエタノールである。このような実施形態では、水対アルコールの任意の比が使用されてよく、これは、混合物成分の溶解性と最終混合物の所望の乾燥率とのバランスを調整するときに決定され得る。一部の実施形態では、液体担体中のアルコール対水の比は、質量部で、約1:1~1:10、好ましくは、約1:2~1:8、より好ましくは約1:5~1:7であり得る。したがって、液体担体は、これによりニコチンが糖と混合されて、好ましくは概して均一な組成物である流動性混合物が形成され得る、1種または複数の任意の液体であり得る。
ニコチン対糖または使用される他の成分の比率には制限がなく、使用される実際の比率は、ニコチンをベースとする成分の粒子において所望されるニコチンの濃度に基づくことが認識されるべきである。一実施形態では、製剤中のニコチンの百分率は、1.5%~20%の間である。一実施形態では、製剤中のニコチンの百分率は、0.5%~5%の間である。一部の実施形態では、製剤中のニコチンの百分率は、1.5%~2.5%の間である。他の実施形態では、製剤中のニコチンの百分率は、0.5%~2.5%の間である。なお他の実施形態では、製剤中のニコチンの百分率は、1.5%~5%の間である。一実施形態では、製剤中のニコチンの百分率は、約2.5%である。別の実施形態では、製剤中のニコチンの百分率は、約5%である。他の実施形態では、ニコチンの濃度は、約5~10%の間である。別の実施形態では、製剤中のニコチンの百分率は、約10%である。一実施形態では、乾燥混合物または湿流動性混合物中の糖対ニコチンの比は、質量部で、約1:100~約100:1、または約3:7~約3:2、あるいは約4:6から、変化し得る。さらに、乾燥混合物または湿流動性混合物中の糖の濃度は、約1~約10w/v(g/100ml)、約2~約5w/v(g/100ml)、または約3%w/v(g/100ml)から、変化し得る。
【0043】
既に言及したように、湿式プロセスでは、例えば噴霧乾燥機により、ニコチン-糖流動性混合物が乾燥されて、対象の肺胞および下部気道への送達に好適なニコチン-糖の複合粒子が生成される。流動性混合物を乾燥する方法には制限がないことが認識されるべきである。好ましい方法では噴霧乾燥機が利用されるが、適切にサイズ調整された粒子を生成することができる、他の乾燥技術、例えば流動層乾燥を使用してもよい。一実施形態では、混合物は、噴霧乾燥機への進入の際にオリフィスを通る通路を介して細分される。別の実施形態では、流動性混合物は、アトマイザー、例えばロータリーアトマイザーを通して、流動性液体を噴霧乾燥機に供給し得る。なおさらには、任意の速度の乾燥(例えば、低速または高速での乾燥)が使用されてよく、ただし、このような速度の乾燥により、所望のサイズ範囲の乾燥粒子が結果として形成されることが条件である。ニコチンをベースとする成分の所望の粒子サイズの分割の前に、噴霧乾燥機により形成された、得られた粒子は約0.1~約5μmの粒子サイズを有し得る。
【0044】
選択された粒子サイズのさらなる分割/ろ過が、乾式および湿式プロセスの両方において実施され得る。湿式プロセスでは、噴霧乾燥機の運転条件は、肺胞および肺のより小さい気道に移動することができるようにサイズ調整された粒子を生成するように調整され得る。例えば、ロータリーアトマイザーは、約2~約20ml/分、または2~約10ml/分、または約2~約5ml/分の液体供給速度で運転され得る。さらに、ロータリーアトマイザーは、約10,000~約30,000rpm、約15,000~約25,000rpm、または約20,000~約25,000rpmで運転され得る。噴霧乾燥によって様々なサイズの粒子を得ることができ、所望の粒子サイズを有する粒子は、本明細書の他所に記載のように、例えば1つまたは複数のふるい分けステップによりろ過されるとき、より具体的に選択され得ることが認識されるべきである。噴霧乾燥機は、混合物中の糖およびニコチンの温度を、これらの化合物が分解し始める点まで上昇させることなく、液体担体を迅速に展開させるのに十分高い温度で運転され得る。したがって、噴霧乾燥機は約120℃~約170℃の内部温度、および約70℃~約100℃の外部温度で運転され得る。
【0045】
ニコチンをベースとする成分の粒子は、球状または所望の任意の他の形状であってよいことが認識されるべきである。湿式プロセスの一実施形態では、噴霧乾燥プロセスの間に、液体担体を十分迅速に展開することによって、でこぼこした、または「くぼみのある」表面を有する粒子が生成され得る。このような実施形態では、でこぼこした表面により、粒子が空気中を移動する際に相対乱流が生じ、したがって、粒子に揚力がもたらされ得る。このような実施形態では、このような形状を有する粒子は、対象によって吸入される空気に、より容易にのり、かつのったままになり、これによってニコチンをベースとする成分の粒子が肺胞およびより小さい気道に移動する能力が改善され得る。
既に言及したように、本発明は、特定の粒子サイズ範囲によって特徴づけられる成分を有する製剤を含む。例えば、本発明の製剤は、実質的に約1~10μmの間、好ましくは約2~5μmの間にサイズ調整された、ニコチンをベースとする粒子を含み得る。他の実施形態では、製剤は、約1~100μmのサイズ範囲の粒子を有する鎮咳薬成分(例えば、メントールまたはミント)を含んでもよい。他の実施形態では、製剤は、約10~200μmのサイズ範囲の粒子を有する、第2の鎮咳薬成分を含んでもよい。さらなる実施形態では、製剤は、約10~1000μmのサイズ範囲の粒子を有する風味成分(例えば、メントールまたはミント)を含み得る。
【0046】
本明細書で企図されるように、本発明の粒子は、少なくとも1つのふるい分けステップの使用により、比較的狭いサイズ範囲で生成され得る。このような実施形態では、ふるい分けステップは、所望の範囲よりも小さいかまたは大きい粒子を、混合物から取り除くために、所望の粒子サイズ範囲の最小値または最大値に対応するふるいを使用するステップを含む。例えば、約1~5μmの範囲のニコチン粒子を得るために、本明細書に記載の粉砕プロセスを使用して生成されたニコチン粒子の混合物が、提供され得る。ニコチン粒子の混合物は、使用される粉砕条件および/またはミルへの投入混合物の特徴に依存するサイズ分布を有することになる。ニコチン粒子の混合物は、まず5μmのふるいを通され得、ここで、5μmよりも小さい粒子のうち実質的にすべてが、ふるいを通り、収集される。ふるいを通る粒子は、次いで1μmのふるいに移され得、ここで、1μmよりも大きい粒子のうち実質的にすべてが、ふるいを通らない。1μmよりも大きい粒子は、ふるいから収集され得、ここで、収集された粒子は1~5μmの範囲に実質的にサイズ調整されている。したがって、このようなプロセスが、任意の粒子の混合物の範囲を、本明細書を通して記載の所望の粒子サイズ範囲のうちの任意のものに狭めるために使用され得る。
【0047】
別の実施形態では、所望の粒子サイズ範囲の最小または最大基準のいずれかを実質的に満たす、粒子の混合物が、提供され得る。例えば、約2~5μmのニコチン粒子サイズ範囲が所望である場合、粒子のうち実質的にすべてが5μm未満であるような、ニコチン粒子の混合物が提供され得る。このような混合物は、粉砕条件を変更することによって、または粒子が噴霧乾燥される場合は、噴霧乾燥された材料を粉砕することによって生成されて、概して5μm未満である粒子の混合物をもたらすことができる。混合物は、次いで、2μmのふるいに移され、ここで、ふるいを通らない粒子が収集され、収集された粒子は実質的に所望の2~3μmの範囲内である。
本発明の製剤の任意の成分のうちの任意のものについて、所望の粒子サイズ範囲内に収まる粒子の百分率は、その成分を生成するのに使用された技術に依存し得ることが企図される。例えば、ニコチン成分の目標サイズが2~5μmの範囲内である場合、比較的小規模で噴霧乾燥製造技術を使用するとき、その成分の90%超が所望の範囲内に収まることが理解される。しかし、比較的大規模の粉砕製造技術を使用すると、70%超のこのような目標範囲内のニコチン成分のみが得られ得る。
【0048】
既に言及したように、製剤は鎮咳薬成分を含んでもよく、ここで、鎮咳薬成分の粒子は約5~10μmの間にサイズ調整される。約5~10μmの間にサイズ調整されたメントールまたはミント粒子を選択的に含むことによって、これらの呼吸可能ではないメントールまたはミント粒子は、対象のより大きい気道中ならびに中咽頭の刺激をやわらげることによって咳を低減することができる。別の例では、本発明の製剤は、実質的に約10~200μmの間にサイズ調整された粒子を有する鎮咳薬成分を含んでもよい。この鎮咳薬成分は、中咽頭、声門声帯、および咳を引き起こし得るかまたは他の望ましくない感覚を引き起こし得る受容体を含有する、口腔により近位のまたはより接近した他の解剖学的領域の刺激によって生じる咳を低減し得る。本明細書で企図されるように、これらのより大きい粒子は、それらの推進力のために、声門下気道に進入しない。
一実施形態では、5~10または10~200μmのいずれかの範囲の鎮咳薬成分は、メントールまたはミントを含む。さらに、任意の他の鎮咳薬化合物が、制限なしに、メントールまたはミントの代わりに、またはこれらに加えて使用されてよいことが認識されるべきである。
【0049】
本明細書で企図されるように、メントールまたはミントの任意の形態、例えばメントールまたはミントの固体形態が、本発明において有用なメントールまたはミント粒子に加工するために使用され得る。メントールまたはミントの固体形態の非限定例としては、粉末、結晶、固化蒸留物、フレークおよび圧縮物が挙げられる。一実施形態では、メントールまたはミントは、結晶の形態である。メントールまたはミントは、当技術分野で公知の任意の方法を使用して、約5μm~約10μmの範囲のサイズの粒子に加工され得る。一部の実施形態では、メントールまたはミントは、加工のために、さらなる液体または固体添加物と混合される。微粒子添加物も、さらに使用され得る。一実施形態では、メントールまたはミントは、二酸化ケイ素と混合される。別の実施形態では、メントールまたはミントは、糖、例えば乳糖と混合される。湿式プロセスの一部の実施形態では、メントールまたはミントは液体担体中で加工される。
【0050】
本明細書で企図されるように、任意の液体担体が、メントールまたはミント粒子を生成する方法において使用され得る。一実施形態では、液体担体は、水である。好ましくは、液体担体は、メントールまたはミントが可溶であるものである。したがって、液体担体は、これによりメントールまたはミントが、単独でまたはさらなる成分と組み合わされて、好ましくは概して均一な組成物である流動性混合物が形成される、1種または複数の任意の液体であり得る。
メントールまたはミントの流動性混合物は、例えば、噴霧乾燥機により乾燥されて、単独でまたはさらなる成分と組み合わせた、個人の肺胞および下部気道への送達に好適である、メントールまたはミントの複合粒子を生成し得る。流動性混合物を乾燥する方法には制限がないことが認識されるべきである。流動性混合物を乾燥するための方法の例としては、これらに限定されないが、噴霧乾燥、真空乾燥および凍結乾燥が挙げられる。なおさらには、任意の速度の乾燥(例えば、低速または高速での乾燥)が使用されてよく、ただし、このような速度の乾燥により、所望のサイズ範囲の乾燥粒子が結果として形成されることが条件である。
【0051】
既に言及したように、製剤は風味成分を含んでもよく、ここで、風味成分の粒子は約10~約1000μmの間にサイズ調整される。一実施形態では、風味成分は、メントールまたはミントを含み、本明細書で既に記載のように生成され得る。他の風味成分が使用される場合、このような化合物に好適な任意の公知の加工ステップが使用されて、約10~1000μmの所望の粒子サイズ範囲内の風味付け成分が生成され得る。
様々な実施形態では、本発明の製剤中の各成分の相対質量百分率は、異なる特徴を達成するために様々であり得る。したがって、当業者であれば理解するように、成分の相対質量百分率は、様々な理由、例えば、これらに限定されないが、対象の気道におけるきつさのレベルを調節しながら、ある特定のレベルの血中ニコチン濃度を達成すること、治療の対象によって知覚される満足のレベルを調節しながら、ある特定のレベルのきつさを達成すること、患者の肺におけるニコチンのより良好な取込みを達成すること、より速い血中ニコチン動態を達成すること、製剤の鎮咳性能を最適化すること、製剤の味を変化させるかまたは改善すること、およびニコチンの相対用量を調節することのために、変更され得る。ある特定の実施形態では、製剤は、風味成分約1~20質量%であり得、風味成分1~5%の質量が好ましい。ある特定の実施形態では、製剤は、鎮咳薬約1~10質量%であり得、鎮咳薬1~2.5%の質量が好ましい。様々な実施形態では、任意の風味成分、鎮咳薬成分、担体または他の成分を除く、製剤の残りの部分は、ニコチン成分である。
本明細書で参照される、あらゆる特許、特許出願および出版物の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、具体的な実施形態を参照して開示されているが、本発明の他の実施形態および変化形態が、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのこのような実施形態および均等な変化形態を含むと解釈されることが意図される。