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特許7021081動力発生サイクルから燃焼生成物を除去するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】動力発生サイクルから燃焼生成物を除去するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20220208BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20220208BHJP
   B01D 53/76 20060101ALI20220208BHJP
   B01D 53/75 20060101ALI20220208BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20220208BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20220208BHJP
   B01J 27/24 20060101ALI20220208BHJP
   F01K 25/10 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B01D53/50 ZAB
B01D53/56 200
B01D53/76
B01D53/75
B01D53/78
B01D53/14 200
B01J27/24 M
F01K25/10 E
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018519698
(86)(22)【出願日】2016-10-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-08
(86)【国際出願番号】 US2016058104
(87)【国際公開番号】W WO2017070466
(87)【国際公開日】2017-04-27
【審査請求日】2019-10-04
(31)【優先権主張番号】62/244,411
(32)【優先日】2015-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】312000387
【氏名又は名称】8 リバーズ キャピタル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アラム,ロドニー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ル,シージア
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,スコット トーマス
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-520597(JP,A)
【文献】特開2007-145709(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/9105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-53/96
B01D 53/14-53/18
B01J 27/24
F01K 23/00-27/02
F02C 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力サイクル生成物流から酸性ガスを除去するための方法であって、
動力生産サイクルを実行することと、
前記動力生産サイクルから第1の直接接触冷却塔中にCO、SO、およびNOを含有する生成物流を導くことと、
前記第1の直接接触冷却塔中のCO、SO、およびNOを含有する前記生成物流を第1の向流循環水性液体流と接触させることと、
前記水性液体流の存在下で前記生成物流中のSOとNOとの間の反応を介して前記第1の直接接触冷却塔中の前記生成物流中に存在するSOの少なくとも一部を除去することと、
COおよびNOを含有するリサイクル流を前記第1の直接接触冷却塔から取り出すことと、
COおよびNOを含有する前記リサイクル流の少なくとも一部を前記動力生産サイクル中に戻すことと
を含み、
CO、SO、およびNOを含有する前記生成物流中のNO濃度が前記第1の直接接触冷却塔から上流の前記生成物流にNOを添加することによって調整される、
方法。
【請求項2】
前記第1の向流循環水性液体流がHSOを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
CO、SO、およびNOを含有する前記生成物流がCO、SO、およびNOを含有する前記生成物流の全質量に基づいて少なくとも10ppmのNOを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
CO、SO、およびNOを含有する前記生成物流中の前記NO濃度が、CO、SO、およびNOを含有する前記生成物流中のNOの50質量%未満が前記第1の直接接触冷却塔中でHNOに変換されるような範囲内に制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の直接接触冷却塔から取り出されるCOおよびNOを含有する前記リサイクル流が、前記第1の直接接触冷却塔中に導入されるCO、SO、およびNOを含有する前記生成物流中に存在するNOの少なくとも90質量%を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の直接接触冷却塔から取り出されるCOおよびNOを含有する前記リサイクル流がSOを含まないか、またはCOおよびNOを含有する前記リサイクル流の全質量に基づいて50ppm未満の量でSOを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
NOが前記第1の直接接触冷却塔から上流の燃焼器中の燃料および酸化剤と窒素源を組み合わせることによって前記第1の直接接触冷却塔から上流に添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
NOが前記第1の直接接触冷却塔から上流のCO、SO、およびNOを含有する前記生成物流に直接添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の直接接触冷却塔から上流のCO、SO、およびNOを含有する前記生成物流に直接添加されるNOがアンモニアから生成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
CO、SO、およびNOを含有する前記生成物流中の前記NO濃度が、前記第1の直接接触冷却塔から液体生成物流を受け取りかつ前記第1の直接接触冷却塔中に前記液体生成物流を再循環させるように構成された第1の再循環ポンプからの排出フローを増加するまたは減少することによって調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
COおよびNOを含有する前記リサイクル流中のNOの少なくとも一部が前記動力生産サイクル中に戻される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
COおよびNOを含有する前記リサイクル流が前記動力生産サイクル中に戻される再循環作動流体流と純CO生成物流とに分割される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
COおよびNOを含有する前記リサイクル流の少なくとも一部を第2の直接接触冷却塔中に導くことと、
前記第2の直接接触冷却塔中のCOおよびNOを含有する前記リサイクル流を第2の向流循環水性液体流と接触させることと、
NOと水との間の反応を介して前記第2の直接接触冷却塔中のCOおよびNOを含有する前記リサイクル流からNOの少なくとも一部を除去することと、
COを含有する流れを前記第2の直接接触冷却塔から取り出すことと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の向流循環水性液体流がHNOを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の直接接触冷却塔中にCOおよびNOを含有する前記リサイクル流を導く前にCOおよびNOを含有する前記リサイクル流にOを添加することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の直接接触冷却塔中にCOおよびNOを含有する前記リサイクル流の少なくとも一部を導く前に、COおよびNOを含有する前記リサイクル流が前記動力生産サイクル中で圧縮機を利用して圧縮される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
COおよびNOを含有する前記リサイクル流が前記動力生産サイクル中に戻される再循環部分と前記第2の直接接触冷却塔に導かれる純生成部分とに分割される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
動力サイクル生成物流から酸性ガスを除去するためのシステムであって、
動力サイクルの構成要素からCO、SO、およびNOを含有する動力サイクル生成物流を送達するように構成された伝達要素と、
SOの少なくとも一部がそこから除去されかつCOおよびNOを含有するリサイクル流が第1の直接接触冷却塔から出力されるような反応条件下で前記動力サイクルの前記構成要素からCO、SO、およびNOを含有する前記動力サイクル生成物流を受け取るように構成された第1の直接接触冷却塔と、
前記第1の直接接触冷却塔から上流のCO、SO、およびNOを含有する前記動力サイクル生成物流にNOを添加するように構成されたNO源と、
前記第1の直接接触冷却塔から液体流を受け取りかつ前記第1の直接接触冷却塔に前記液体流の少なくとも一部を再循環させるように構成された、前記第1の直接接触冷却塔と流体連通する第1の再循環ポンプと、
前記動力サイクルの構成要素にCOおよびNOを含有する前記リサイクル流の少なくとも一部を送達するように構成された伝達要素と
を含む、システム。
【請求項19】
COおよびNOを含有する前記リサイクル流中のNOの少なくとも一部がそこから除去されかつCOを含有する流れが第2の直接接触冷却塔から出力されるような反応条件下で前記第1の直接接触冷却塔からCOおよびNOを含有する前記リサイクル流の少なくとも一部を受け取るように構成された第2の直接接触冷却塔と、
前記第2の直接接触冷却塔から液体流を受け取りかつ前記第2の直接接触冷却塔に前記液体流の少なくとも一部を再循環させるように構成された、前記第2の直接接触冷却塔と流体連通する第2の再循環ポンプと
をさらに含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第2の直接接触冷却塔から上流にかつ前記第1の直接接触冷却塔から下流に位置するO入力をさらに含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記第2の直接接触冷却塔から上流にかつ前記第1の直接接触冷却塔から下流に位置する圧縮機をさらに含む、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力発生サイクルから生成物を除去するためのシステムおよび方法を対象とする。具体的には、高圧再循環作動流体を利用する動力発生サイクルから酸性ガス汚染物質を除去するシステムおよび方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素を作動流体として用いる化石燃料(複数可)の燃焼を利用する発電のためのシステムおよび方法は米国特許第8,596,075号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。見積もりによれば、化石燃料(複数可)は、非炭素電源が開発および配備されながらも、今後100年間は世界の電力需要の大部分を引き続き提供することが示されている。化石燃料(複数可)および/または適切なバイオマスなどの炭化水素燃料の燃焼による発電の既知の方法は、しかしながら、エネルギーコストの上昇ならびに二酸化炭素(CO)の生成および排出を減少させたいという要望によって制限される。地球温暖化は、先進国および発展途上国によるCO排出量増加の潜在的な致命的結果とますます見なされている。太陽光および風力発電は、近い将来では、化石燃料(複数可)および/または他の炭化水素燃料の燃焼から発電された電力に取って代わることが恐らくできない。さらに、原子力発電には、核物質の拡散および核廃棄物の処分を含む危険が伴う。
【0003】
上記のように燃焼から生産される電力は、現在、隔離場所への送達、石油回収作業の強化、および/または再利用のための一般的なパイプライン注入のための高圧COの捕捉に対する要望をますます課せられている。COの捕捉に対するこの要望は、高効率コンバインドサイクルプラントなどの現在の発電システムおよび方法では達成することが困難であり;COを捕捉するために発生する寄生負荷は、非常に低い熱効率をもたらし得る。さらに、所望のレベルのCO捕捉を達成するための資本コストは高い。これらを含む複雑さは、大気にCOを排出するシステムと比較して、著しく高い電気コスト(例えば、50~70%の増加)をもたらす。ますます温暖化する地球および/または炭素排出の負担は、環境および発電の経済に致命的な影響を与える可能性がある。したがって、COを捕捉することによるCO排出量の低減を伴う高効率発電を提供するシステムおよび方法のニーズが当該技術分野において存在し、それはより低い電気コスト、ならびに捕捉されたCOの隔離および貯蔵の容易さの改善を提供し得る。
【0004】
CO再捕捉の熱力学的負荷を克服する1つの手法は、パイプライン注入に適した圧力を有する実質的に純粋なCO作動流体を用いる高効率動力発生サイクルである。この手法は、再循環遷移臨界、超臨界、および/または超々臨界作動流体を用いる設計により、次第に支持を得ている。これらの作動流体は、主に酸素燃焼形成COを含み、動力発生サイクル内の地点で、パイプライン注入に適した圧力および温度と一致する動作ウィンドウ中に維持される。これらの一致する地点では、COは、パイプラインおよび/またはそのような高圧でありかつ精製されたCOを必要とする下流の再利用プロセスへと動力発生サイクルから安全に排気されてよく、一方で動力発生サイクル内で高い効率を依然として維持する。
【0005】
そのような動力発生サイクルの1つは、炭化水素燃料の酸素燃焼を利用してブレイトン式動力発生サイクル中で完全復熱式の遷移臨界二酸化炭素作動流体に動力を供給してよく、これは前述の米国特許第8,596,075号に開示されている。様々な態様では、動力発生サイクルは、本質的に、所望の隔離またはパイプライン圧力を有する炭化水素燃料の燃焼から形成されるCOの実質的に100%を捕捉する。さらに、捕捉されたCOは実質的に高純度である。可燃性燃料として天然ガスが使用される態様では、そのような動力発生サイクルは、一般的なコンバインドサイクルシステムで得られる効率と実質的に同等の熱効率を、300バール以下および300バール超の圧力でCOを捕捉する効率を低下させることなく達成できる。特に、利用される可燃性燃料が、天然ガスなどの、低濃度の硫黄および窒素を含有する場合、サイクルから生成されるCOは、追加の後処理ステップをほとんどまたは全く伴わずに、要求されるモル純度でCOパイプラインに排気されてよい。
【0006】
様々な等級の石炭、石油コークス、瀝青またはバイオマスなどの固体燃焼燃料は、高濃度の硫黄、窒素、および他の燃料由来の不純物を含有し得る。そのような燃料が利用される場合、それらを高圧ガス化装置中で実質的に純粋な酸素でまずガス化して燃料ガスを生成しなければならない。次いで、燃料ガスは、あらゆる残りの粒子を取り除かれ、冷却され、所要の燃焼圧力に圧縮され、その後、酸素-燃料燃焼のための動力発生サイクルの燃焼器に導入される。さらに、高濃度の硫黄含有化合物を含有する酸性天然ガスを利用できる。硫黄および窒素含有化合物などの燃料由来の不純物は、酸化の前に燃料ガスから除去されない。したがって、燃料ガスは、一次燃料源に応じて、HS、COS、CS、NH、HCN、Hg、および他の微量成分を含み得る相当な濃度の不純物を保持する。
【0007】
燃料ガスの酸素燃料型燃焼は、比較的純粋なCO流、ある量の水(HO)、および分子状酸素(O)を含み得るなんらかの残留燃焼後化合物を生成する。空気分離ユニットを動力発生サイクルで利用する場合、比較的低濃度の分子状窒素(N)およびアルゴン(Ar)が存在してよく、任意に設計された空気侵入に由来する窒素もまた存在してよい。さらに、残存する酸化剤により硫黄および窒素含有化合物の他の酸化反応が起こってもよく、それは意図的に過剰に維持されてよい。この酸化はいくつかの不純物の形成をもたらし得、それらは一次燃料または部分酸化プロセスのいずれかに由来し、酸素-燃料燃焼器および/または動力発生サイクルの他の高温領域で生成される。不純物は、二酸化硫黄(SO)および三酸化硫黄(SO)などの硫黄酸化物(SO)を含み得、それらは燃料由来の硫黄が高温で酸化されるときに形成される。他の不純物は、一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO)などの窒素化合物(NO)を含み得、それらは燃料中に含有される窒素化合物および/またはシステムシールを通って入る空気由来の窒素が高温で酸化されるときに主として形成される。さらに、酸化の間にHgなどの他の微量不純物が形成され得る。これらの硫黄および窒素の酸化化合物は、それらが酸性雨を生成する主要な触媒であるため環境規制を受ける「酸性ガス」であることが知られており、それらの水相で存在するときに設備を腐食し得、したがって、動力発生サイクルの少なくともいくつかの部分において、特定の閾値限界未満に酸化化合物を除去するおよび/または維持する必要がある。これらの酸化成分は、これらの有毒な不純物の大気への放出を防止し、かつ内部プロセス設備を保護するために、動力発生サイクルから除去されるべきである。したがって、高濃度の硫黄および窒素を生成する燃焼由来ガスは、再循環および/または排気の前に後処理プロセスを必要とする。
【0008】
燃焼の前に燃料から硫黄および/もしくは窒素を除去する(すなわち、燃焼前除去プロセス)ための、または動力発生サイクルの最後で放出されるプロセスガスから微量酸性ガスを除去する(すなわち、燃焼後除去プロセス)ためのいくつかのプロセスが存在するが、遷移臨界、超臨界、および/または超々臨界作動流体を用いる動力発生サイクルの再循環設計を有利に利用する除去プロセスが必要とされている。そのような除去システムは、燃料中の炭素に対するリサイクルされたCO濃度の所望の比率で動力発生サイクル中へCOのリサイクルを有利に提供し得る。そのような動力発生サイクルは、リサイクルCO作動流体流および/または生成物CO流中の制御された低濃度の不純物を理想的にもたらす。不純物は、効率的な持続可能な処分および内部設備の保護を可能にする形態で除去され得る。そのような除去プロセスは、冷却、凝縮、およびリサイクルされた作動流体からの汚染物質除去などの、半閉ループプロセス内のいくつかのプロセスニーズを理想的に満たし、構築および維持が比較的安価であり、寄生ペナルティが低く、かつ単純な制御および運用戦略を用いる。
【0009】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれるAllamらの米国特許第8,580,206号は、分子状酸素および水の存在下で高圧でのガス状COからのSOおよび/またはNOの除去の方法を開示する。具体的には、反応物の分圧が高い状態で一酸化窒素(NO)が酸化されて二酸化窒素(NO)を形成する一連の気相および/または液相の反応ステップを利用するプロセスが提供される。この酸化プロセスは、反応シーケンスの全体の速度を制御し得る。NOは次いで二酸化硫黄(SO)を酸化して三酸化硫黄(SO)を形成し、NOは還元されてNOに戻る。SOは次いで液体水中に溶解して硫酸(HSO)を形成する。最終的な結果は、NOを触媒として使用するSOのHSOへの変換である。一連の反応は、下記の式によって記述される。
【表1】
実験データは理論的な反応計算を確認し、それはNO濃度が100ppm超であり、圧力が約10bar超であり、かつ酸素分圧が約0.1バール以上である場合、SO濃度を、10秒未満で非常に低いレベル(例えば、50ppm(モル)未満)に低減できることを示した。例えば、Murciano, L., White, V., Petrocelli, F., Chadwick, D., “Sour compression process for removal of Sox and NOx from oxyfuel-derived CO2,” Energy Procedia 4 (2011) pp. 908-916、およびWhite, V., Wright, A., Tappe, S., and Yan, J., “The Air Products Vattenfall Oxyfuel CO2 Compression and Purification Pilot Plant at Schwarze Pumpe,” Energy Procedia 37 (2013) 1490-1499を参照されたい。これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0010】
さらに、米国特許第8,580,206号は、蒸気を生産する酸素-燃料動力ボイラによってもたらされるCOを主に含む流れ中の、SOおよび/またはNOを含み得る1つまたは複数の混入物を除去するための、この既知の一連の反応の使用を開示する。具体的には、システムは、微粉炭焚き蒸気ボイラおよび、純生成物COリッチ流を除いて、実質的に全ての煙道ガスをリサイクルする酸素-燃料燃焼システムを含む。煙道ガスは純粋なO酸化剤流と混合され石炭焚き燃焼器に供給され、その結果、燃焼器断熱火炎温度に少なくとも部分的に基づいて、NOの濃度が平衡レベルに強制的に達する。燃焼器断熱火炎温度は、煙道ガスNO濃度について平衡状態付近にほぼ達するのに十分に高くてよい。動力生産における出力流から汚染物質、特に酸性ガスを除去するためのシステムおよび方法に対するさらなるニーズが当該技術分野において依然として存在する。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、様々な態様において、動力発生サイクルから汚染物質を除去するための方法およびシステムに関する。具体的には、本開示の様々な態様は、動力発生サイクルから酸性ガス汚染物質を除去するためのシステムを提供してよく、それは、直列の高効率燃焼器およびタービン、ならびに高圧再循環作動流体(例えば、再循環するCO作動流体)の流れを含む。システムは、高圧再循環作動流体を冷却するように構成された第1の直接接触冷却塔(例えば、直接接触反応器物質移動カラム)を含む。第1の直接接触冷却塔は、冷却された高圧再循環作動流体からSOを除去する流体流を凝縮するようにさらに構成される。別の態様では、第1の直接接触冷却塔は、冷却された高圧再循環作動流体からSOおよび必要に応じてのNOの一部を除去する流体流を凝縮するように構成されてよい。システムはまた、第1の直接接触冷却塔と流体連通する第1の再循環ポンプも含む。さらに、第1の直接接触冷却塔への出口は、冷却されたCO生成物流を分配するように構成される。システムはまた、第1の直接接触冷却塔の出口から冷却されたCO生成物流の少なくとも一部を受け取るように構成された第2の直接接触冷却塔(例えば、直接接触反応器物質移動カラム)も含む。いくつかの態様によれば、第2の直接接触冷却塔は、冷却されたCO生成物流が動力発生システムの圧縮機および/またはポンプを通って循環した後に、冷却されたCO生成物流の少なくとも一部を受け取るように構成されてよい。第2の直接接触冷却塔は、CO生成物流を冷却し、冷却されたCO生成物流からNOおよび/またはあらゆる残留SOを除去する流体流を凝縮する。第2の再循環ポンプは、第2の直接接触冷却塔と流体連通する。
【0012】
別の態様では、動力発生サイクルから汚染物質を除去するための方法、具体的には、直列の高効率燃焼器およびタービンならびに高圧再循環作動流体(例えば、再循環CO作動流体)の流れを利用する動力発生サイクルから酸性ガス汚染物質を除去するための方法が提供される。方法は、第1の直接接触冷却塔に導入される高圧再循環作動流体中のNOの濃度を制御することを含む。さらに、方法は、第1の直接接触冷却塔内で高圧再循環作動流体を冷却することを含む。方法は、第1の直接接触冷却塔内で冷却された高圧再循環作動流体からSOを除去するように構成された流体流を凝縮することを含んでもよい。方法はまた、冷却された高圧再循環作動流体を第1の直接接触冷却塔からCO生成物流として抽出すること、およびCO生成物流をリサイクル再循環作動流体流と純CO生成物流とに分割することを含んでもよい。方法は、純CO生成物流を第2の直接接触冷却塔に供給することを含む。さらに、方法は、純水流を第2の直接接触冷却塔に供給することを含んでもよい。様々な態様において、方法は、第2の直接接触冷却塔内で純CO生成物流を冷却すること、ならびに第2の直接接触冷却塔内の冷却された純CO生成物流からNOおよび/またはあらゆる残留SOを除去する流体流を凝縮することを含む。方法はまた、第2の直接接触冷却塔から精製されたCO生成物流を抽出することも含む。
【0013】
一態様では、高圧再循環流体は、再循環CO作動流体および複数の燃焼生成物を含む高圧高温の流体流が生成されるように、燃焼用の燃料および酸化剤と共に燃焼器に導入されてよい。燃焼生成物と再循環CO作動流体とのこの混合物は、NOおよびSOなどの酸性ガス、ならびに水銀(Hg)などの他の微量不純物を含んでもよい。得られる流体流は、タービンなどの動力発生装置中に導入されてよく、タービン排出ガスを冷却しながら流入する高圧再循環CO作動流体を加熱する復熱式熱交換器を介する、流入する流れへの高温熱回収がこれに続く。
【0014】
一態様では、動力発生サイクルでの排気前に、再利用および/または三次採油のための井戸へのCOの注入のために許容可能な隔離および/またはパイプライン生成物の仕様を満たすために、燃焼由来の水および/または酸性ガス汚染物質、例えばSOおよびNOなどが除去されてよい。リサイクルされるCO再循環作動流体流からのSOおよび/またはNOの除去は、硫酸(HSO)および/または硝酸(HNO)などの腐食性水性酸の形成によって引き起こされる腐食からシステム構成要素をさらに保護し得る。
【0015】
いくつかの態様によると、復熱式熱交換器から出るCO作動流体を、凝縮水を除去するのに十分に低い温度に冷却すること、およびリサイクルCO作動流体を所望の高い再循環圧力に効率的に圧縮およびポンピングすることが望ましい場合がある。さらに、燃焼サイクルから形成されたCOを、本明細書に記載されるような所望の純度仕様を有するCO生成物流として除去することが望ましい場合がある。
【0016】
いくつかの態様では、システムは、2つの気/液多段接触装置(例えば、直接接触反応器物質移動カラム)を含んでよい。第1の直接接触反応器物質移動カラムは、直接接触COガス冷却器および酸性ガス除去装置として機能してよい。第1のカラムは一次再循環プロセス内に埋め込まれてよく、ここでより低圧のCO流中の残存水蒸気の大部分が、COガスが大気温度付近に冷却されるときに凝縮される。本明細書に記載の触媒ガスと液相との反応は、この第1のカラム内で起こり得る。具体的には、触媒反応は、少なくとも0.1バールの分圧を有する過剰の酸素が存在し、かつ相当な濃度のNO(すなわち、少なくとも100ppm)が存在する場合に起こり得る。さらに、触媒反応は、ガスと液体水と間の接触のレベルが十分であり、SOのHSOへの変換を含む反応が進行して完了するのに適した滞留時間が提供される場合に、第1のカラムで起こり得る。
【0017】
いくつかの態様によると、第2の直接接触反応器物質移動カラムは、再循環プロセスから連続的に排気される純CO生成物流の処理を提供してよい。純CO生成物流は、約50ppm未満のSO濃度を有してよい。さらに、純CO生成物流は、高いNO濃度を有してよい。いくつかの態様では、純CO生成物流が最終ガス生成物として集められる前に、NO濃度を約20ppm未満に、好ましくは約10ppm未満に低下させることが望ましい場合がある。
【0018】
本開示の様々な態様における重要な要素は、タービン中でおよび復熱式熱交換器排出流中で高濃度のNOを維持することであり、これは、NOの大部分が再循環流体中に保持されなければならないことを意味する。タービンおよび復熱式熱交換排出流中で所望の高濃度のNOを維持することにより、最小滞留時間で第1の直接接触反応器物質移動カラムにおける一連の触媒ガス反応が完了し得る。いくつかの態様では、適切に低いSO濃度を有する出口流と、流れからの任意のNOの除去を抑制するために任意のNOがOおよび水と反応する限られた量の時間とを提供するように第1のカラムの反応条件が調整されるので、NOの濃度は流れ中で高い所望のレベルに維持される。このように、第1のカラムでHNOに変換されるNOの量は最小限に抑えられる。いくつかの態様では、第1のカラムを出る高圧リサイクルCO生成物流中の約10%未満のNOがHNOに変換される。別の態様によれば、第1のカラムを出る高圧リサイクルCO生成物流中の約5%未満のNOがHNOに変換される。第1のカラムでのNOのHNOへの制限された変換は、HSOを実質的に含む第1のカラムからの第1の出口流、および高濃度のNOを有する高圧リサイクルCO流を実質的に含む第1のカラムからの第2の出口流をもたらし得る。
【0019】
いくつかの態様では、動力発生サイクルは、純粋な酸素供給がCOで希釈されて典型的には約15%~35%(モル)のO組成物および約1800℃~約2500℃の範囲で断熱燃焼温度をもたらす燃料燃焼区域での追加のNOの生産を提供してよい。リサイクルCO作動流体流は次いで燃焼器中の燃焼生成物と混合されて約1150℃の典型的な混合温度を提供してよく、それは混合タービン入口流中でNOの著しい形成または破壊をもたらさない。混合タービン入口流中でのNOの著しい形成および/または破壊のこの欠如は本開示の様々な態様の1つの特徴であり、それは作動流体としてCOを利用する動力発生サイクルを特に対象とする。そのような動力発生サイクルは多量の予熱された高圧COをリサイクルし、それは燃焼後および混合流がパワータービンに入る前に燃焼生成物と混合する。
【0020】
本明細書に記載された様々な態様は、リサイクルCO流中のNOの濃度の独立した制御を提供する。NO濃度のこの独立した制御は、第1の直接接触反応器物質移動カラムにおける接触滞留時間およびサイズの最小化を可能にし、それにより、低圧CO流中のNOの濃度を実質的に一定に維持し、石炭焚き動力発生サイクルについて約3%~20%などのわずかな量のみが、第1の直接接触反応器物質移動カラム中で純CO生成物流から除去される硝酸として失われる。少量のNOの損失は、動力サイクル燃焼器中で形成される少量のNOによって、および/またはいくつかの態様では、触媒上のアンモニア酸化を利用し得るNO発生器によって補われてよい。タービンを通過することにより、NOの濃度の変化なしに、約750℃への温度低下ももたらし得る。第2の接触器において硝酸を形成する既知の一連の反応は以下の通りである。
【表2】
【0021】
第2の直接接触反応器物質移動カラムを出る生成ガスは、したがって実質的にSOおよびNOを含まない。いくつかの態様において、HSOは、連続撹拌槽反応器中でHSOを石灰石と反応させることにより、硫酸カルシウム二水和物(CaSO・2HO)で構成される軟質硫酸塩鉱物である石膏に容易に変換でき、これは脱水後の商業利用または廃棄のための非浸出性の固体石膏生成物の形成をもたらす。比較的高濃度の硝酸を有する第2のカラムは、水銀を硝酸で硝酸水銀に直接変換することによって水銀を除去し得る。
【0022】
本開示の様々な態様は、リサイクルされたCOを作動流体として利用する動力発生サイクルのパワータービンから出る全燃焼生成物からある量のSOを分離するための、一連の既知の反応の利用を提供する。一態様は、実質的にSO混入のない動力発生サイクルの復熱器熱交換器に入る高圧リサイクルCO流を提供してよい。別の態様は、SOおよびNOの両方の混入が実質的にない動力発生サイクルからの生成物CO流を提供してよい。さらに、動力発生サイクルからの生成物CO流は、一次燃料に由来する水銀を実質的に含まなくてよい。
【0023】
本開示の態様は、再循環する、復熱式の、酸素燃焼、遷移臨界CO動力発生サイクルが、増加した硫黄、窒素および/または他の燃料由来の不純物を含有する燃料を利用すること、およびこれらの不純物を実質的に完全に除去した状態で動作することを可能にする、汚染物質を除去するためのシステムを提供する。これらの汚染物質の実質的に完全な除去は、他のプロセス/サイクルの目的を果たすための効率的な機能性を提供しながら、内部プロセス設備を保護し、かつSO、NO、Hgおよび/または他の不純物を実質的に含まない生成物CO流を最終的に提供する。
【0024】
さらに別の態様によれば、SOならびに窒素酸化物NOおよびNOを動力発生システムから除去するための方法が提供される。動力発生システムは、燃焼器を有する復熱ブレイトンサイクルでの作動流体としてCOを使用してよく、燃焼器内では少なくともHS、NH、HCNHおよび/またはCOCHを含有するガス状燃料を純粋なOと共に燃焼させ、続いて燃焼ガスを混合し、それはここでは酸化された成分のSOおよび/またはNOを含有し、より低温のCOリサイクル流を伴い、これはブレイトン動力サイクルの復熱式熱交換器で加熱される。混合流は次いで、復熱式熱交換器を通して排出する動力生産タービンを通過し、したがってCOリサイクル流を加熱する。SOの除去は、NOとOとの反応によりNOを形成し、その後NOとSOとの反応によりSOを形成しかつNOを再生し、その後SOとHOとの反応によりHSOを形成することにより達成され得る。SOの除去に続くNOおよびNOの除去は、NOをOで酸化してNOを形成し、NOと水を反応させてHNOおよび/またはHNOを形成し、その後HNOをHNOおよびNOと水へ変換することにより達成され得る。方法は、第1の気/液多段接触ユニット中でSO除去反応を実施することによって特徴付けられてよく、そこでSOレベルが約50ppm未満に低減され、かつ供給物流中のNOの約10%未満が硝酸に変換される。別の態様では、方法は、第1の気/液多段接触ユニット中でSO除去反応を実施することによって特徴付けられてよく、そこでSOレベルが約50ppm未満に低減され、かつ供給物流中のNOの約5%未満が硝酸に変換される。さらに、方法は、第1の液/気多段接触ユニット中でのSOの除去および硝酸の損失が要求される値に維持されることを可能にするレベルで、第1の液/気多段接触ユニットへのCO供給物中の制御された窒素酸化物濃度を維持することをさらに含んでよい。方法は、燃焼器のNO形成から新鮮なNOを添加することによって第1の液/気多段接触ユニットへの入口における窒素酸化物濃度を制御すること、および外部供給源から追加の窒素酸化物を添加することならびに蓄積効果を介して窒素酸化物濃度を所望の値に上昇させることをさらに含んでよい。方法はまた、タービン排気中の窒素酸化物濃度を維持することおよび制御することを含んでもよく、これは、燃焼器を出入りするNO量の変化が5%未満となるように、冷却後に、約500℃~約800℃の温度で高圧COリサイクル流を燃焼生成物と混合して約900℃~約1200℃のタービン入口での混合温度をもたらすことによって、第1の液/気多段接触ユニットへの入口流を形成する。方法は、第1の液/気多段接触ユニットを出るガス流から純CO生成物流を取り出すこと、および純CO生成ガスからの窒素酸化物の約25ppm未満への除去を可能にするのに十分に長い滞留時間を有する第2の向流気/液接触器に純CO生成物流を通過させることをさらに含んでもよい。方法は、各接触ユニット/接触器にポンプおよび冷却器を含む液体ポンプを提供することをさらに含んでもよく、それは各接触ユニット/接触器に還流液体流を提供する。方法はまた、所望の低レベルのHNO形成によりSOの所望の除去を達成するように、第1の液/気多段接触ユニットにおける反応を制御するために、第1の液/気多段接触ユニットに対し変化する液体還流速度と変化する窒素酸化物入口濃度との組み合わせを使用することを含んでもよい。方法はまた、純CO生成物流中の所望の低濃度の窒素酸化物を達成するように、第2の向流気/液接触器における還流速度を制御することを含んでもよい。
【0025】
1つまたは複数の実施形態では、本開示による方法は、特に、動力サイクル生成物流から酸性ガスを除去することを対象とし得る。動力生産サイクル流は、リサイクルCO作動流体を利用する動力生産サイクルからの流れであり得、流れは、特に、動力生産のために任意に膨張された、および/または任意に復熱器熱交換器を通過させてその温度を低下させた、燃焼生成物流であり得る。適切な動力生産サイクル(システムおよびその使用方法の両方を含む)は、Palmerらの米国特許第9,068,743号、Allamらの米国特許第9,062,608号、Palmerらの米国特許第8,986,002号、Allamらの米国特許第8,959,887号、Palmerらの米国特許第8,869,889号、Allamらの米国特許第8,776,532号、およびAllamらの米国特許第8,596,075号に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示による方法は、以下の、
動力生産サイクルを実行するステップと、
動力生産サイクルからCO、SO、およびNOを含有する生成物流を第1の直接接触冷却塔に導くステップと、
第1の直接接触冷却塔中のCO、SO、およびNOを含有する生成物流を第1の向流循環水性液体流と接触させるステップと、
水性液体流の存在下で生成物流中のSOとNOとの間の反応を介して第1の直接接触冷却塔中の生成物流中に存在するSOの少なくとも一部を除去するステップと、
第1の直接接触冷却塔からCOおよびNOを含有するリサイクル流を取り出すステップと、
COおよびNOを含有するリサイクル流の少なくとも一部を動力生産サイクルに戻すステップと
を含み得る。
【0027】
1つまたは複数の実施形態では、上記の方法は、以下の記述の1つまたは複数を包含し得、記述は任意の数および順序で組み合わされ得る。
【0028】
第1の向流循環水性液体流はHSOを含み得る。例えば、第1の向流循環水性液体流は、その中にHSO含有量を含む水の流れであり得る。
【0029】
CO、SO、およびNOを含有する生成物流は、CO、SO、およびNOを含有する生成物流の全質量に基づいて、少なくとも10ppmのNOを含有し得る。本明細書でさらに記載するように、生成物流は、第1の直接接触冷却塔でのSOの除去を促進するために、少なくともNOのこの含有量を好ましくは含む。
【0030】
CO、SO、およびNOを含有する生成物流は、CO、SO、およびNOを含有する生成物流の全質量に基づいて、少なくとも15ppm、少なくとも20ppm、または少なくとも25ppmのNOを含有し得る。そのような範囲は、さらなる反応条件に基づいて計算されてよい上限を含むと理解される。例えば、上限は、CO、SO、およびNOを含有する生成物流の全質量に基づいて、200ppm、500ppm、1000ppm、または5000ppmであり得る。
【0031】
CO、SO、およびNOを含有する生成物流は、CO、SO、およびNOを含有する生成物流の全質量に基づいて、約10ppm~約1000ppm、約12ppm~約750ppm、または約15ppm~約500ppmのNOを含有し得る。必要に応じて、CO、SO、およびNOを含有する生成物流の全質量に基づいて、約10ppm~約150ppmまたは約10ppm~約100ppmのNOの範囲などの、より狭い範囲が利用されてもよい。
【0032】
CO、SO、およびNOxを含有する生成物流中のNO濃度は、CO、SO、およびNOを含有する生成物流中のNOの50質量%未満が第1の直接接触冷却塔においてHNOに変換されるような範囲内で制御され得る。上記NO濃度範囲は、第1の直接接触冷却塔でのNOのHNOへの過剰な変換を防止するために特に有用であり得る。好ましくは、CO、SO、およびNOを含有する生成物流中のNOの25質量%未満、20質量%未満、15質量%未満、10質量%未満、5質量%未満、または1質量%未満が、第1の直接接触冷却塔でHNOに変換される。いくつかの実施形態では、CO、SO、およびNOを含有する生成物流中のNOは、第1の直接接触冷却塔でHNOに実質的に変換されない。そのような実施形態では、「実質的にない」は、CO、SO、およびNOを含有する生成物流中のNOの0~0.5質量%を含むことが理解される。
【0033】
第1の直接接触冷却塔から取り出されるCOおよびNOを含有するリサイクル流は、第1の直接接触冷却塔に導入されるCO、SO、およびNOを含有する生成物流中に存在するNOの少なくとも90質量%を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の直接接触冷却塔から取り出されるCOおよびNOを含有するリサイクル流は、第1の直接接触冷却塔に導入されるCO、SO、およびNOを含有する生成物流中に存在するNOの少なくとも50質量%、少なくとも75質量%、少なくとも90質量%、少なくとも95質量%、少なくとも98質量%、または少なくとも99質量%を含み得る。
【0034】
第1の直接接触冷却塔から取り出されるCOおよびNOを含有するリサイクル流は実質的にSOを含まないことがあり得、ここでSOを「実質的に含まない」は、COおよびNOを含有するリサイクル流の全質量に基づいて5ppm未満などの、微量を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の直接接触冷却塔から取り出されるCOおよびNOを含有するリサイクル流は、SOを、COおよびNOを含有するリサイクル流の全質量に基づいて100ppm未満、50ppm未満、25ppm未満、または15ppm未満の量で含有し得る。
【0035】
CO、SO、およびNOを含有する生成物流中のNO濃度は、第1の直接接触冷却塔から上流にNOを添加することによって調整され得る。例えば、NOは、第1の直接接触冷却塔から上流の燃焼器中で燃料および酸化剤と窒素源を組み合わせることによって、第1の直接接触冷却塔から上流に添加され得る。さらなる例として、NOは、第1の直接接触冷却塔から上流のCO、SO、およびNOを含有する生成物流に直接添加され得る。より具体的には、第1の直接接触冷却塔から上流のCO、SO、およびNOを含有する生成物流に直接添加されるNOは、触媒反応器中などで、アンモニアから生成され得る。しかしながら、十分な量の窒素を含有する燃料の利用により、CO、SO、NOを含有する生成物流中でNOの適切な量が達成されることが理解される。
【0036】
CO、SO、およびNOを含有する生成物流中のNO濃度は、第1の直接接触冷却塔から液体生成物流を受け取りかつ第1の直接接触冷却塔に液体生成物流を再循環させるように構成された第1の再循環ポンプからの排出フローを増加するまたは減少することによって調整され得る。
【0037】
方法は、COおよびNOを含有するリサイクル流中のNOの少なくとも一部が動力生産サイクル中に戻されるように構成され得る。
【0038】
COおよびNOを含有するリサイクル流は、動力生産サイクル中に戻される再循環作動流体流と純CO生成物流とに分割され得る。
【0039】
方法は、以下の
COおよびNOを含有するリサイクル流の少なくとも一部を第2の直接接触冷却塔中に導くステップと、
第2の直接接触冷却塔中のCOおよびNOを含有するリサイクル流を第2の向流循環水性液体流と接触させ、NOと水との間の反応を介して第2の直接接触冷却塔中のCOおよびNOを含有するリサイクル流からNOの少なくとも一部を除去するステップと、
第2の直接接触冷却塔からCOを含有する流れを取り出すステップと
をさらに含み得る。
【0040】
第2の向流循環水性液体流はHNOを含み得る。
【0041】
方法は、COおよびNOを含有するリサイクル流を第2の直接接触冷却塔中に導く前に、COおよびNOを含有するリサイクル流にOを添加することをさらに含み得る。
【0042】
方法は、COおよびNOを含有するリサイクル流を第2の直接接触冷却塔中に導く前に、COおよびNOを含有するリサイクル流を圧縮することをさらに含み得る。
【0043】
COおよびNOを含有するリサイクル流の少なくとも一部を第2の直接接触冷却塔中に導く前に、COおよびNOを含有するリサイクル流は、動力生産サイクルにおいて圧縮機を利用して圧縮され得る。
【0044】
COおよびNOを含有するリサイクル流は、動力生産サイクル中に戻される再循環部分と第2の直接接触冷却塔に導かれる純生成部分とに分割され得る。
【0045】
上記から明らかなように、本開示は、動力サイクル生成物流から酸性ガスを除去するように構成されたシステムにさらに関する。
そのようなシステムは、本明細書に記載の方法による使用に適していると記載される任意の要素を含み得る。
1つまたは複数の実施形態では、本開示によるシステムは、以下の、
動力サイクルの構成要素からCO、SO、およびNOを含有する動力サイクル生成物流を送達するように構成された伝達要素と、
SOの少なくとも一部がそこから除去されかつCOおよびNOを含有するリサイクル流が第1の直接接触冷却塔から出力されるような反応条件下で動力サイクルの構成要素からCO、SO、およびNOを含有する動力サイクル生成物流を受け取るように構成された第1の直接接触冷却塔と、
第1の直接接触冷却塔から液体流を受け取りかつ第1の直接接触冷却塔に液体流の少なくとも一部を再循環させるように構成された、第1の直接接触冷却塔と流体連通する第1の再循環ポンプと、
COおよびNOを含有するリサイクル流の少なくとも一部を動力サイクルの構成要素に送達するように構成された伝達要素と
を含み得る。
【0046】
1つまたは複数の実施形態では、上記のシステムは、以下の記述の1つまたは複数を包含し得、記述は任意の数および順序で組み合わされ得る。
【0047】
システムは、COおよびNOを含有するリサイクル流中のNOの少なくとも一部がそこから除去されかつCOを含有する流れが第2の直接接触冷却塔から出力されるような反応条件下で第1の直接接触冷却塔からCOおよびNOを含有するリサイクル流の少なくとも一部を受け取るように構成された第2の直接接触冷却塔をさらに含み得る。
【0048】
システムは、第2の直接接触冷却塔から液体流を受け取りかつ第2の直接接触冷却塔に液体流の少なくとも一部を再循環させるように構成された、第2の直接接触冷却塔と流体連通する第2の再循環ポンプをさらに含み得る。
【0049】
システムは、第2の直接接触冷却塔から上流に位置しかつ第1の直接接触冷却塔から下流に位置するO入力をさらに含み得る。
【0050】
システムは、第2の直接接触冷却塔から上流に位置しかつ第1の直接接触冷却塔から下流に位置する圧縮機をさらに含み得る。
【0051】
本発明は以下の実施形態を含むが、これらに限定されない。
【0052】
実施形態1:動力サイクル生成物流から酸性ガスを除去するための方法であって、動力生産サイクルを実行することと;動力生産サイクルからCO、SO、およびNOを含有する生成物流を第1の直接接触冷却塔中に導くことと;第1の直接接触冷却塔中のCO、SO、およびNOを含有する生成物流を第1の向流循環水性液体流と接触させることと;水性液体流の存在下で生成物流中のSOとNOとの間の反応を介して第1の直接接触冷却塔中の生成物流中に存在するSOの少なくとも一部を除去することと;第1の直接接触冷却塔からCOおよびNOを含有するリサイクル流を取り出すことと;COおよびNOを含有するリサイクル流の少なくとも一部を動力生産サイクル中に戻すこととを含む、方法。
【0053】
実施態様2:第1の向流循環水性液体流がHSOを含む、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0054】
実施形態3:CO、SO、およびNOを含有する生成物流が、CO、SO、およびNOを含有する生成物流の全質量に基づいて少なくとも10ppmのNOを含有する、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0055】
実施形態4:CO、SO、およびNOを含有する生成物流中のNO濃度が、CO、SO、およびNOを含有する生成物流中のNOの50質量%未満が第1の直接接触冷却塔においてHNOに変換されるような範囲内に制御される、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0056】
実施形態5:第1の直接接触冷却塔から取り出されるCOおよびNOを含有するリサイクル流が、第1の直接接触冷却塔中に導入されるCO、SO、およびNOを含有する生成物流中に存在するNOの少なくとも90質量%を含む、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0057】
実施形態6:第1の直接接触冷却塔から取り出されるCOおよびNOを含有するリサイクル流が、実質的にSOを含まないか、またはCOおよびNOを含有するリサイクル流の全質量に基づいて50ppm未満の量でSOを含有する、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0058】
実施形態7:CO、SO、およびNOを含有する生成物流中のNO濃度が、第1の直接接触冷却塔から上流にNOを添加することによって調整される、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0059】
実施形態8:NOが、第1の直接接触冷却塔から上流の燃焼器中の燃料および酸化剤と窒素源を組み合わせることによって第1の直接接触冷却塔から上流に添加される、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0060】
実施形態9:NOが、第1の直接接触冷却塔から上流のCO、SO、およびNOを含有する生成物流に直接添加される、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0061】
実施形態10:第1の直接接触冷却塔から上流のCO、SO、およびNOを含有する生成物流に直接添加されるNOが、アンモニアから生成される、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0062】
実施形態11:CO、SO、およびNOを含有する生成物流中のNO濃度が、第1の直接接触冷却塔から液体生成物流を受け取りかつ第1の直接接触冷却塔中に液体生成物流を再循環させるように構成された第1の再循環ポンプからの排出フローを増加するまたは減少することによって調整される、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0063】
実施形態12:COおよびNOを含有するリサイクル流中のNOの少なくとも一部が、動力生産サイクル中に戻される、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0064】
実施形態13:COおよびNOを含有するリサイクル流が、動力生産サイクル中に戻される再循環作動流体流と純CO生成物流とに分割される、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0065】
実施形態14:COおよびNOを含有するリサイクル流の少なくとも一部を第2の直接接触冷却塔中に導くことと;第2の直接接触冷却塔中のCOおよびNOを含有するリサイクル流を第2の向流循環水性液体流と接触させることと;NOと水との間の反応を介して第2の直接接触冷却塔中のCOおよびNOを含有するリサイクル流からNOの少なくとも一部を除去することと;第2の直接接触冷却塔からCOを含有する流れを取り出すこととをさらに含む、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0066】
実施態様15:第2の向流循環水性液体流がHNOを含む、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0067】
実施形態16:COおよびNOを含有するリサイクル流を第2の直接接触冷却塔中に導く前に、COおよびNOを含有するリサイクル流にOを添加することをさらに含む、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0068】
実施形態17:COおよびNOを含有するリサイクル流の少なくとも一部を第2の直接接触冷却塔中に導く前に、COおよびNOを含有するリサイクル流が、動力生産サイクルにおいて圧縮機を利用して圧縮される、いずれかの先行または後続の実施形態の方法。
【0069】
実施形態18:COおよびNOを含有するリサイクル流が、動力生産サイクル中に戻される再循環部分と第2の直接接触冷却塔に導かれる純生成部分とに分割される、いずれかの先行実施形態の方法。
【0070】
実施形態19:動力サイクル生成物流から酸性ガスを除去するためのシステムであって、動力サイクルの構成要素からCO、SO、およびNOを含有する動力サイクル生成物流を送達するように構成された伝達要素と;SOの少なくとも一部がそこから除去されかつCOおよびNOを含有するリサイクル流が第1の直接接触冷却塔から出力されるような反応条件下で動力サイクルの構成要素からCO、SO、およびNOを含有する動力サイクル生成物流を受け取るように構成された第1の直接接触冷却塔と;第1の直接接触冷却塔から液体流を受け取りかつ第1の直接接触冷却塔に液体流の少なくとも一部を再循環させるように構成された、第1の直接接触冷却塔と流体連通する第1の再循環ポンプと;COおよびNOを含有するリサイクル流の少なくとも一部を動力サイクルの構成要素に送達するように構成された伝達要素とを含む、システム。
【0071】
実施形態20:COおよびNOを含有するリサイクル流中のNOの少なくとも一部がそこから除去されかつCOを含有する流れが第2の直接接触冷却塔から出力されるような反応条件下で第1の直接接触冷却塔からCOおよびNOを含有するリサイクル流の少なくとも一部を受け取るように構成された第2の直接接触冷却塔と;第2の直接接触冷却塔から液体流を受け取りかつ第2の直接接触冷却塔に液体流の少なくとも一部を再循環させるように構成された、第2の直接接触冷却塔と流体連通する第2の再循環ポンプとをさらに含む、いずれかの先行または後続の実施形態のシステム。
【0072】
実施形態21:第2の直接接触冷却塔から上流にかつ第1の直接接触冷却塔から下流に位置するO入力をさらに含む、いずれかの先行または後続の実施形態のシステム。
【0073】
実施形態22:第2の直接接触冷却塔から上流にかつ第1の直接接触冷却塔から下流に位置する圧縮機をさらに含む、いずれかの先行または後続の実施形態のシステム。
【0074】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下で簡単に説明される添付の図面とともに以下の詳細な説明を読むことにより明らかとなるであろう。本発明は、そのような特徴または要素が本明細書の特定の実施形態の説明において明確に組み合わせられるかどうかにかかわらず、上記の実施形態の2、3、4またはそれ以上の任意の組み合わせ、ならびに本開示に記載された任意の2、3、4またはそれ以上の特徴または要素の組み合わせを含む。本開示は、その様々な態様および実施形態のいずれかにおいて、開示された発明の任意の分離可能な特徴または要素が、文脈上他に明確に指示されない限り、組み合わせ可能であることが意図されるとみなされるべきであるように全体的に読み取られることが意図される。
【0075】
上述の一般的な用語で本開示を説明したように、ここでは添付の図面を参照する。図面は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1A】本開示の一態様による、システムから酸性ガス汚染物質を除去するように構成された、高圧再循環流体と組み合わせた直列の高効率燃焼器およびタービンを含む、動力発生システムの概略フロー図を示す。
図1B】本開示の一態様による、システムから酸性ガス汚染物質を除去するように構成された、高圧再循環流体と組み合わせた直列の高効率燃焼器およびタービンを含む、動力発生システムの概略フロー図を示す。
図2】本開示の一態様による、第1の直接接触反応器物質移動カラムへの入口でのNOの濃度レベルの増加に対する、第1および第2の直接接触反応器物質移動カラムそれぞれにおけるSOおよびNOの除去時間のグラフ表示を示す。
図3】本開示の一態様による、第2の直接接触反応器物質移動カラムにおける所望のNO出口濃度に対する、完全なSO除去後のNO除去の滞留時間のグラフ表示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本開示は、その例示的な態様を参照して、以下により詳細に記載される。これらの例示的な態様は、本開示が徹底的かつ完全であり、本開示の範囲を当業者に完全に伝えるように記載される。実際、本開示は、多くの異なる形態で表現されてもよく、本明細書に記載の態様に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ、これらの態様は、この開示が適用される法的要件を満たすように提供される。本明細書および添付の請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0078】
本開示は、動力発生システムから汚染物質を除去するように構成された動力発生システムを対象とする。図1Aおよび図1Bに示すように、動力発生システム18、19から特定の酸性ガスを除去するためのシステム50は、動力発生システム18、19から特定の酸性ガス汚染物質(例えば、SO、NOなど)を除去するように構成されてよい。図1Aおよび1Bでは、ブロック19は動力発生システムの一般的な構成要素を示し、それは一態様において、燃焼器、タービン、および熱交換器を含んでよい。同様に、ブロック18は、例えば圧縮機および/またはポンプなどの、動力発生システムの追加の一般的な構成要素を示す。動力発生システム18、19は、例えば炭化水素燃料ガスなどの、燃料ガスを利用し得る。いくつかの態様では、利用される燃料は、硫黄、窒素および/または他の燃料由来の不純物に加えてメタンおよびより長鎖の炭化水素分子を含有する未処理または最小限に処理された酸性または無糖ガスと見なされてよく、それらは硫化水素(HS)、硫化カルボニル(COS)、ニ硫化炭素(CS)、アンモニア(NH)、シアン化水素(HCN)、および/または水銀(Hg)を含んでよく、これらのすべては還元形態である。いくつかの態様では、動力発生システム18、19は、不純物とともに一酸化炭素および水素を主に含む燃料ガスを利用してよく、それらは硫化水素(HS)、硫化カルボニル(COS)、ニ硫化炭素(CS)、アンモニア(NH)、シアン化水素(HCN)、および/または水銀(Hg)を含んでよく、これらのすべては還元形態である。
【0079】
燃料ガスは、任意の公知の方法によって生産されてよい。例示のみを目的とした一例として、燃料ガスは、GE-Texaco水クエンチガス化炉などの酸素ベースの石炭ガス化炉で生産されてよく、完全な灰分除去が行われた後、動力サイクルへの熱伝達による燃料ガス冷却、凝縮水除去および燃料ガスの、例えば約320バールの圧力への圧縮が行われる。
【0080】
燃料ガスは(上記で説明されたように形成されているか、または上記の未処理もしくは最小限に処理された酸性のもしくは無糖のガスであるかどうかに関わらず)、動力発生システムの燃焼器で酸化剤を含む流れ中で燃焼され、流れは好ましくはOとCOとの組み合わせ(いくつかの実施形態では、約25%のOと約75%のCO(モル)との混合物)である。これにより、CO、HO、およびOを含む燃焼生成物が得られる。好ましくは、燃焼生成物流は2%(モル)過剰のOを含む。比較的大量のリサイクルされたCO(例えば、約300バールの圧力でおよび約720℃の温度で)は焼生成物と混合されて(例えば燃焼器中で)、混合燃焼生成物流を生産する(例えば、約1150℃の温度および約300バールの圧力で)。この燃焼生成物流は、動力発生システムタービンを通過する際に減圧される(例えば、約750℃の放出温度で約30バールに)。その後、流れは、復熱式熱交換器で加熱リサイクルCO流に対して冷却される。上記はプロセス条件の例示的なセットを提供し、必要に応じて温度、圧力などを調整してよいことが理解される。
【0081】
流れ4は、実質的に低下した温度(例えば、約65℃)および圧力(例えば、約29バール)でブロック19中の復熱式熱交換器の低温端を出る。この時点で流れの組成は主に、ある量の水(HO)を有する二酸化炭素であり、それは実質的に液相(例えば、約85重量%)であり、いくらかの量は気相のままである。さらに、流れ4は、燃料ガス中の不純物の酸化に由来する水銀(Hg)などの他の微量成分とともに、硫黄および窒素の酸化化合物(SOおよびNO)を含む。
【0082】
ブロック19を出る燃焼生成物流は、ある含有量のNOを含み得、またはNOを実質的に含まなくてもよい。本明細書でさらに説明するように、NO含有量がSOと反応するのに十分に高くなるように、流れ4中のNO含有量を制御することが望ましい。様々な実施形態では、第1の直接接触反応器物質移動カラム30(後述する)に入る燃焼生成物流(例えば、流れ4)は、CO、SO、およびNOを特に含み得る。SOという用語は、他に特別に示されない限り(例えば、SOを特に含むSO含有流への言及のように)、あらゆる硫黄酸化物の存在を示し、特定の硫黄酸化物に限定されないことが理解される。SOを含有する流れは、単一の硫黄酸化物種または硫黄酸化物種の混合物を含んでよい。同様に、NOという用語は、他に特別に示されない限り(例えば、NOを特に含むNO含有流への言及のように)、あらゆる窒素酸化物の存在を示し、特定の窒素酸化物に限定されないことが理解される。NOを含有する流れは、単一の窒素酸化物種または窒素酸化物種の混合物を含んでよい。酸性ガス除去への言及は、SOおよびNOの一方または両方の除去を特に示し得る。
【0083】
図1Aおよび図1Bに示すように、酸性ガス汚染物質除去システム50を有する動力発生システム18、19は、2つの直接接触反応器物質移動カラムを含んでよい。第1の物質移動カラム30は、純CO生成物流からHSOの形態でSOを除去するように構成されてよく、一方、第2の物質移動カラム40は、一次再循環フローから外の純CO生成物流からHNOの形態でNOおよび/またはNOを除去するように構成されてよい。いくつかの態様では、図1Aに示すように、第2の物質移動カラム40は、高圧再循環流体が動力発生システムの圧縮機要素18に導入される前に、純CO生成物流からHNOの形態でNOおよび/またはNOを除去するように構成されてよい。別の態様では、図1Bに示すように、第2の物質移動カラム40は、高圧再循環流体が動力発生システムの圧縮機要素18に導入された後に、純CO生成物流からHNOの形態でNOおよび/またはNOを除去するように構成されてよい。この物質移動に必要な成分は、NO気相触媒を含み、SOがHSOとして除去される第1の物質移動カラム30に入るプロセス流体流4中に存在する。いくつかの態様によれば、これらの成分は、SO、NO、NO、O、およびHOを含む。
【0084】
一態様によれば、流れ4は第1の物質移動カラム30の底部に入り、このカラムは多段直接接触向流液/気接触カラムであってよく、かつトレイ、構造充填材、ランダムダンプ充填材などのような内部接触手段を含んでよい。第1の物質移動カラム30は、純液体生成物流7または、入口ライン8を介し第1の循環ポンプ31のいずれかに供給する底部出口管6を有する。第1の循環ポンプ排出ライン9は第1の水冷熱交換器22に入り、これは冷却された液体流10を第1の物質移動カラム30の頂部に排出する。
【0085】
いくつかの態様では、第1の物質移動カラム30は、入口COリッチ流4を、内部接触媒体を通って向流落下する再循環流体フロー流10に対して、約65℃の例示的な温度からおよそ周囲温度付近に冷却する。具体的には、COは、冷却水の温度に近づく最低温度に冷却される。例示的な一態様によれば、COは約16℃に冷却され、一方冷却水は約13℃の温度に近づく。入口CO流が接触媒体を通って上方に流れるにつれて、流れは周囲温度付近に冷え、水はさらに凝縮し、かつ汚染物質除去反応が起こる。これらの汚染物質除去反応は、入口COリッチ流4中に残った過剰のOを使用するNOのNOへの酸化を通して最初は気相で進行する。続いて、SOはNOにより酸化されてSOおよびNOを形成する。第3に、SOは水(HO)と反応して液相でHSOを形成し、それによりSOを除去する。このプロセスにおいてNOは気相触媒として作用する。関係する汚染物質除去反応は以下の式で詳述される。
【表3】

これらの反応は、硫酸生産のための鉛室法の機構としてよく理解されている。さらに、反応は以下のように記述され得る:式Gは気相であり、速度論的に支配される;式Hは気相であり、平衡は高速速度論によって支配される;式Iは液相であり、速度論的に支配される;式Jは液相であり、平衡は高速速度論によって支配される;式Kは気相であり、平衡は高速速度論によって支配される;式Lは水相での溶解であり、これは十分に速いプロセスであるように接触器内で設計され得る。
【0086】
約29バールの高圧にて過剰の液体水および約0.58バールのOの分圧の存在下で、ならびに約100~約2000ppmのSOおよび約20~約2000ppmのNOが流れ4中に存在する状態で、これらの反応は自発的にかつ急速に進行する。さらに、システムは、第1の物質移動カラム30の頂部を出る流れ11中のSOの濃度が約50ppm未満であり、一方、純生成物液体流7中のHNOおよびHNOの濃度が約1%以下であることを保証するように制御される。
【0087】
一態様では、これらの濃度は、流れ4中のNOの入口濃度を制御することによって、および/または第1の循環ポンプ31からの排出フロー9を制御することによって得られ、それは液体対蒸気比を与え、したがって第1の物質移動カラム30における分離効率が調整される。別の態様では、入口COリッチ流4中のNOの濃度は、第1の循環ポンプ31からの排出フロー9が一定でありながら、第1の物質移動カラム30の頂部を出る流れ11中のSOの濃度ならびに/または純生成物液体流7中のHNOおよびHNOの濃度が適切な濃度であることを保証するように、調整され得る。
【0088】
いくつかの態様によれば、図1Aに示すように、第1の物質移動カラム30の頂部を出る排出CO生成物流11は、分割されてよい。例えば、図1Aに示すように、CO生成物流11の大部分は、リサイクルされた再循環流体流1Aとして迂回させられ、これは動力発生システム19の圧縮およびポンピング要素18に入り、一方、純生成流2Aは第2の物質移動カラム40に入る。別の態様によれば、図1Bに示すように、第1の物質移動カラム30の頂部を出る排出CO生成物流11の全体は、リサイクルされた再循環流体流1Bとして動力発生システムの圧縮およびポンピング要素18に供給されてもよい。リサイクルされた再循環流体流が動力発生システムの少なくとも1つの圧縮および/またはポンピング要素18を通過した後、高圧の再循環作動流体3は、純生成物流2Bが動力発生システムの少なくとも1つの圧縮要素18を通過した後に第2の物質移動カラム40に入るように、分割されてよい。第2の物質移動カラム40の設計は、硝酸の形成をもたらす一連の反応のための十分な接触時間および分離効率を提供する。第2の物質移動カラム40は底部出口液体流12を含んでよく、これは硝酸生成物流13と硝酸リサイクル流14とに分割されてよい。前述の硝酸流は、さまざまな硝酸含有量を有する水性流であると理解される。一態様では、硝酸リサイクル流14は、第2の循環ポンプ41を通過する。第2の循環ポンプ41からの排出フロー15は、水および/または周囲空気冷却熱交換器23中に供給され、これは第2の物質移動カラム40への冷却された入口希硝酸流16を生成する。
【0089】
いくつかの態様では、第2の物質移動カラム40は、冷却された希硝酸流16の入口点の上方に第2の接触区域を含む。冷却された希硝酸流16の入口点の上方に配置された第2の接触区域は、純水入口流24で水を注がれてよい。一態様では、純水入口流24の流速は、硝酸生成物流13において所望のHNO濃度を得るために調節されてよい。流速はまた、最終CO純生成物流17中の酸キャリーオーバーを効果的に除去するように機能してよい。最終CO純生成物流17は、酸性微粒子を実質的に含まず、低い特定濃度のSOおよびNOを有するであろう。
【0090】
一態様では、物質移動反応のセットは、気相で形成されたSOが液相でHSOに迅速かつ効率的に変換されるように十分な気液接触を生じる第1の直接接触反応器物質移動カラム30によって達成されてよい。第1の物質移動カラム30は、ガスおよび液体の向流配置を有する構造化されおよび/またはランダムな充填材および/または蒸留トレイを含むカラムであってよい。さらに、第1の物質移動カラム30は、入口COリッチ流4を受け取るための底部入口および冷却されたリサイクル希酸流10を受け取るための頂部入口を含んでよい。第1の物質移動カラム30のためのそのような配置は、間接熱交換器22を通って再循環する閉ループ冷却流体を提供してよい。いくつかの態様では、第1の物質移動カラム30で除去された熱は、冷却水循環システムなどの、冷却塔および/または強制対流ファン-空気冷却器を含んでよい、周囲温度冷却手段に伝達され得る。
【0091】
さらに、第1の物質移動カラム30は、接触区域の上方に配置された効率的なデミスタを含んでよい。デミスタは、下流の圧縮設備を腐食から保護するために、排出CO生成物流11から同伴希HSOを除去するように構成されてよい。HSOを含有する溶液は、厄介なミストを形成する傾向がある。あるいは、接触媒体の追加の区域が設置され純水流が注がれて、酸性微粒子を希釈し、および/または酸性微粒子のキャリーオーバーを除去してもよい。接触媒体の追加の区域は気液接触の最適化を提供してよく、それは硫酸を生成する物質移動反応を加速してよく、追加の冷却媒体の必要性を制限してよく、かつ動力発生システム中の復熱式熱交換器を介した排気流からの高度熱回収後に再循環流からの残存する燃焼由来のHOを凝縮してよい。追加の冷却媒体の必要性を制限し、および/または残存する燃焼由来のHOを凝縮する気液接触の最適化は、合理的なカラムサイズおよび滞留時間内で望ましく生じる。
【0092】
いくつかの態様によれば、動力発生システム19の燃焼器内の条件は、窒素、燃料中の窒素含有成分、および/またはシステムシールを通る空気侵入に由来する窒素を、過剰の酸素と約1500℃~約2500℃の典型的な燃焼温度、約100バール~約500バールの典型的な燃焼圧力で組み合わせることによってNOの少量の生成および過剰のOをもたらし、過剰のOは燃焼およびリサイクル高圧COとの混合後に約0モル%~約5モル%Oの範囲の組成を有する。一態様では、熱的NO形成機構がNOの生成を支配し得るので、より高い火炎温度が一般的に所望され得る。このNO量の保存は、上昇したNO濃度が、第1の物質移動カラム30中のSOのHSOへの除去反応が十分な速度で進行するのを支援および加速するので、望ましい。燃焼器から生成されたNOの保存は、次のような設計考慮によって、例えば、半閉ループシステム内でのNOの蓄積によって、および/またはガス状NO(NOとOとの反応によって形成された)の水性HNOへの変換を最小限にすることによって、達成される。半閉ループシステム中でのNOの蓄積は、動力発生システム18、19の固有の設計によって提供されてよく、ガス状NOの水性HNOへの変換の最小化は、本明細書に記載されるように、SOを選択的に除去するように第1の物質移動カラム30のカラム滞留時間を合わせることにより達成されてよい。
【0093】
一態様では、NO濃度は、NOのHNOおよび/またはHNOへの変換を最小限にする滞留時間を有するように、第1の物質移動カラム30内の直接接触手段の慎重な設計により高く保持されてよい。具体的には、冷却されたタービン排気中にSOが存在する一方で、OでのNOの酸化により形成されるNOは、SOと反応することにより直ちに変換されてNOに戻ることが観察されている。NOのNOへの即時の変換は、したがって、高濃度の気相触媒を保つ。これに関して、実質的に多量のSOが液相でのSOのHSOへの変換により気相から恒久的に除去されると、NOが水中に溶解してHNOおよびHNOを形成する一連の反応が生じる。さらに、1つの望ましい態様は、第1の物質移動カラム30における第2の反応シーケンスによってより少量のNOをHNOおよび/またはHNOに変換する、第1の物質移動カラム30での条件を提供する。例えば、第1の物質移動カラム30での条件は、30質量%未満のNOがHNOおよび/またはHNOに変換される第1の物質移動カラムを出るCOリッチ排出流11を提供してよい。いくつかの態様では、高圧再循環作動流体が第1の物質移動カラムを出る前に、約5%未満のNOがHNOおよび/またはHNOに変換される。より多くの量のNOをHNOおよび/またはHNOに変換することは、動力発生システム19のタービンを出て第1の物質移動カラム30に入る入口COリッチ流4中のNOの濃度を低下させ得、それによりSOのHSOへの変換率を低下させる。さらに、変換されたあらゆるHNOおよび/またはHNOは、硫酸液体流7中で第1の物質移動カラム30を出て、その後、中和され得る。実際のNO変換量は、正確なプロセスニーズに基づいて調節可能である。
【0094】
第1の物質移動カラム30におけるSOの単離された除去は、第1の物質移動カラム30の再循環流体中に硫酸(および/または微量HNO)をさらに蓄積してよい。一態様では、硫酸液体流中に少量のHNO濃度が存在する場合があるが、濃度の量は最小限に制御され得る。HNOと石炭由来の水銀との反応は、主として第2の物質移動カラム40で起こり、硝酸水銀を形成する。混合HSO+HNO+HNOはまた、他の低濃度不純物を可溶性塩に変換してよく、これらは酸液相中で除去されてよい。追加的または代替的に、第1の物質移動カラム30内で生じた残りの硫酸を、HSOを硫酸カルシウムに変換するように、粉砕された石灰石および/または任意の他の適切なアルカリ化合物のスラリーと水中で反応させることができる。変換された硫酸カルシウムは固体として除去されてよく、商業的に使用され、および/または廃棄されてよい。さらに、このステップ中にCOが放出されてよく、純動力サイクルCO流1と組み合わせられる純生成物を生成し、および/または輸送のためのパイプライン21への共通または別個のシステム排出流17に迂回させられる。
【0095】
いくつかの態様では、プロセス内で本質的に生成されるNOは、プロセスガスからのSOの十分な除去を触媒するには不十分であり得る。一態様によれば、実質的にNOを含むNO添加流5は、動力発生システム5に導入され得る。いくつかの態様では、NOは、例えば、NO生成ユニット20中の触媒上で酸素および/または二酸化炭素を含む混合物でアンモニア(NH)を酸化することにより生成され得る。動力発生システム18、19への純粋なNの添加は、その添加がシステムの動力学に大きな影響を及ぼし得るので望ましくない場合がある。例えば、純粋なNの添加は、流体の圧縮性などの重要な作動流体特性を変化させ得る。NO添加流5を介するNOの添加によって第1の物質移動カラム30へのNOの入口濃度を制御することにより、プロセスガスからのSOの所要の除去時間を、所望のカラム滞留時間内に収めるように制御できる。この制御機構の中心は、実質的に全てのSOが除去されるまでNOが消費されないことである。このように、第1の反応器物質移動カラム30は、NOの著しい除去なしにSOのほぼ全て(例えば、99.99%)を除去するように入口NO濃度の注意深い制御により調整および/または設計され得る。特定のNO濃度は、入口SO濃度ならびにSO除去のための設計された滞留時間によって決定され得る。例えば、一態様によれば、第1の物質移動カラム30への入口におけるNO濃度は約152ppmであり得、第1の物質移動カラム30への入口におけるSO濃度は約1318ppmであり得る。いくつかの態様では、第1の物質移動カラム30および/または第2の物質移動カラム40の両方における還流比は、第1および/または第2の循環ポンプ31、41での流量を制御することによって制御され得る。いくつかの態様では、動力発生システムの1つの設計考慮はカラム滞留時間を含み得、これは、SO除去が完了し気相が液相から分離されるときに、NOのHNOおよび/またはHNOへの変換が生じないように最適化され得る。
【0096】
再循環プロセス流体を含む1つの例示的な動力発生システム18、19では、カラム滞留時間および第1の物質移動カラム30の入口での種の濃度を調整および/または構成することによって、NOの量をプロセス流内で保存でき、第1の物質移動カラム30の出口の排出CO生成物流11中にNOが残ることを可能にしつつSOの所望の除去効率が第1の物質移動カラム30内で達成されるようにする。例示的な一態様によれば、第1のカラムの滞留時間は約30秒であり、第1のカラムの出口でのNO濃度は約155ppmである。これに関して、リサイクル流体流1内のNO濃度を上昇させる蓄積効果が生じ、それにより第1の直接接触反応器物質移動カラム30において同じSO除去速度を維持するためにNO生成ユニット20から必要とされるNO添加量が減少し得る。この蓄積効果は、燃焼がSO濃度の上昇をもたらすシステムに特に影響を与え、それにより、システム内のNO濃度を上昇させることによって除去時間を実質的に短縮することを可能にする。
【0097】
いくつかの態様では、動力発生システム5の第1の直接接触反応器物質移動カラム30での冷却およびSO除去に続いて、排出CO生成物流11は2つの流れに分けられ、約100バール~約500バールの範囲の圧力に圧縮され得る。副流は酸素流を希釈し、燃焼器で使用される酸化剤混合物を形成し、一方、主流は動力発生システム19の復熱式熱交換器で約500℃~約800℃の範囲の温度に加熱され、燃焼器生成ガスと混合しタービン入口流を形成する。これらの条件下では、NOのNおよびOへの変換ならびに/またはNとOとの反応によるNOの形成のために、事実上NOの破壊は起こらない。少量のHNOが第1の物質移動カラム30で形成され、かつ純CO生成物流2中に存在するNOが第2の物質移動カラム40に入るので、第1の物質移動カラム30に入る復熱され冷却された入口COリッチ流4中のNOの量および濃度は、第1の物質移動カラム30を出てリサイクル流体流1に入る量および濃度より高くてよい。
【0098】
さらに、第1および第2の物質移動カラム30、40の設計は、理想的には、ガス滞留時間が、動力発生システム18、19が最大出力から最小ターンダウンの全ての動作範囲にわたって動作するための合理的な反応条件をもたらすようなものである。例えば、最大ターンダウン(例えば、50%のタービン流量)では、カラム滞留時間が2倍になり、これは実質的により多くのNO損失を引き起こし得る。しかしながら、反応の時間が長くなると、入口ガス中のNO濃度が低くなり得、これは所望のSO除去を依然として可能にし得る。このNO濃度は、本明細書で議論される方法での添加および蓄積によって補充され得る。
【0099】
例示的な一態様によれば、第2の物質移動カラム40は、第1の物質移動カラム30よりも小さく、かつ動力発生システム18、19の純CO生成物流中に挿入されてよい。さらに、より小さい第2の物質移動カラム40は、より小さい第2の物質移動カラム40もまたSOを除去するよう構成されるように、第1の物質移動カラム30と同様の反応および/または設計考慮を用いてよい。より小さい第2の直接接触反応器物質移動カラム40はその後、NO濃度を所望の下流NO濃度に変更し得、かつプロセス中にHNOおよびHNOを追加的または代替的に生成し得る。カラムは、圧縮ステップまたは一連の圧縮ステップに続いて、第1の直接接触反応器と同様の圧力で、または実質的に高い圧力で動作してよい。別の態様によれば、第2の物質移動カラム40は、第1の物質移動カラム30の温度と同様の温度で、または第1の物質移動カラムと比較して実質的に高い温度で動作してよく、かつ最終CO純生成物流17の要求に依存してよい。
【0100】
第1および第2の物質移動カラム30、40の設計は、SOおよびNOの除去速度特性に影響され得る。例えば、SO除去は、第1の物質移動カラム30における増加する滞留時間、圧力、およびNO濃度伴い、およそ100%の除去率に加速する。したがって、高い入口NO濃度がSO除去速度を高めるために望ましい場合がある。例えば、図2は、一定の滞留時間が与えられると、NO濃度が増加するにつれて、第1の物質移動カラム30中のSOを除去するための除去時間が減少することを示すグラフである。図3は、SOが実質的に除去されると、所望の出口濃度限界に対するNO除去時間が一定の所要除去時間に漸近的に近づくことを示す。これは、高レベルのNOの蓄積であっても、第2の物質移動カラム40での所望の限界へのNO除去に必要な追加の時間は、最終的に漸近時間に近づき、一方、第1の物質移動カラム30におけるSOの除去時間は、過剰のNOの添加で常に減少することを示す。これは、第1の物質移動カラム30におけるSOの除去速度を増加させるためのNOの添加は、第2の物質移動カラム40において維持でき、それは漸近除去時間に関連する安全係数を加えたものに調整および/または設計できることを意味する。いくつかの態様では、第2の接触器でのNOの除去は、カラムへの追加の酸素の添加によってさらに加速され得る。
【0101】
他の態様では、第2のカラム40でのNOの除去は、第2のカラムに入る前に第1のカラム30の圧力よりも高い圧力に流れ2Aおよび/または2Bを圧縮することによって加速されてよい。これは、式(G)に示すNOのNOへの変換を加速し、除去反応をより速く完了させるようにする。この圧縮機の正確な吐出圧力は、第2のカラム40において所要の除去を行うように調整されてよい。そのような実施形態を図1Aに示し、ここで、圧縮機62は、ブロック18と第2のカラム40との間のライン2Aに存在する。圧縮機は任意選択であり得る。あるいは、図1Bに関して、COおよびNOを含有するリサイクル流の全量は、ブロック18中の動力生産システムに入力され、そこで圧縮を受けることができる。したがって、流れ2Bは、第2のカラム40へ送達される任意の圧力でブロック18から直接取り出されてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、第2のカラム40に入る前に、流れに追加の酸素を添加することが望ましい場合がある。図1Bに示すように、酸素源60は、第2のカラム40に入る前に酸素をライン61aを介して流れ2Bに供給するように配置される。酸素を添加するためのそのような要素は同様に、図1A中のライン2Aへの酸素の添加に適用可能であり得ることが理解される。酸素源は任意選択であり得る。他の態様では、NOの除去をさらに加速するために、酸素の添加および再圧縮の使用を行うことができる。
【0103】
本開示は、以下の実施例(複数可)によってさらに説明され、これらは本開示の特定の態様を説明するために記載され、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0104】
実施例1
炭素質燃料の酸素燃焼を利用して完全復熱式の、遷移臨界二酸化炭素ブレイトン動力サイクルに動力を供給する動力発生システムに関して評価を行った。この構成は、様々な態様において、隔離および/またはパイプライン準備圧力でCOを本質的に捕捉する。燃焼燃料中の硫黄および窒素の濃度が低い態様では、最小限の後処理ステップを用いてCOを捕捉できる。したがって、サイクルから放出されたCOを、追加の後処理をほとんどまたは全く伴わずに、所望のモル純度でCOパイプラインに排気できる。しかしながら、燃料が高い濃度の硫黄および窒素を含有する場合、ならびに/またはシステムへの空気の侵入が比較的高い場合、燃焼温度およびプラントの高温端での高温は、燃料および任意の他の酸化可能な化合物を酸化し、かつプロセス設備を保護するために、および指定されたCOパイプラインの純度レベルを満たすために除去されなければならないNOおよび/またはSOなどの酸性ガスを生成し得る。
【0105】
一例では、システム50は、本明細書に記載の方法で、第1および第2の物質移動カラムで構成される。第1の物質移動カラムはリサイクル流体流中に組み込まれ、リサイクル流体からのSOを処理し選択的に除去する。第1の物質移動カラムの入口では、NOは、一定の流速で任意の適切なプロセスを介してリサイクル流体流中に注入され、かつ提供された滞留時間を考慮して第1の物質移動カラム内のSOの完全な除去を制御するように調整される。例示的な一実施形態では、NO注入速度は約46.67ポンド/時であり、触媒上のアンモニア酸化を利用する。第1の物質移動カラム内で、約30バールの圧力でおよび約60°F~約200°Fの温度で、SOが除去され、大部分のNOが作動流体と共に排出されしたがってプロセス内を再循環し、それによりシステム全体にわたるNO濃度の上昇をもたらす。この上昇したNO濃度は、第1の物質移動カラム内の加速するSO除去の意味を有する。
【0106】
第2の物質移動カラムは、約30バールの圧力でおよびおよそ周囲温度で、動力発生システムの出口で動作する。具体的には、第2の物質移動カラムは、作動流体中の残留NOを約20ppmなどの所望の濃度へと除去する。例示的システムのコンピュータシミュレーションを完了し、結果ならびに滞留時間ならびにNOおよびSOの入口および出口濃度などの関連する入力データを以下の表1に示す。以下の表1に示される結果および関連する入力データは、例示目的であり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書中に開示された結果は、具体的な期待される値として解釈されることを意図するものではなく、単に近似された結果の表示である(すなわち、第2の物質移動カラムを出るSOの量(モル分率)、1.39E-20は、第2の物質移動カラムを出るSOの量は実質的にゼロであることを示す)。
【表4】
【0107】
再循環プロセスガス流中へのNOの注入速度の増加は、全SO除去のための第1の直接接触反応器物質移動カラムにおける所要滞留時間を減少させるが、ポンピング負荷、NO添加、中和の変動費とカラムサイズの資本コストとの間のバランスが存在し、これが最適なSO除去速度およびコストに必要な滞留時間を最終的に決定する。
【0108】
本発明の多くの変更形態および他の実施形態が、前述の説明および関連する図面に提示された教示の利益を有する、本発明に関連する当業者には思い浮かぶであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変更形態および他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。本明細書では特定の用語を用いているが、それらは一般的および説明的な意味でのみ使用され、限定の目的では使用されない。
図1A
図1B
図2
図3