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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】スラグを処理する方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 5/00 20060101AFI20220208BHJP
   C04B 7/153 20060101ALI20220208BHJP
   C04B 28/08 20060101ALI20220208BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20220208BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C04B5/00 C
C04B7/153
C04B28/08
C04B18/14 A
C08F290/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018558708
(86)(22)【出願日】2017-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2017060164
(87)【国際公開番号】W WO2017194329
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-04-28
(31)【優先権主張番号】16168751.2
(32)【優先日】2016-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503343336
【氏名又は名称】コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Albert-Frank-Strasse 32, D-83308 Trostberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーター シュヴェーズィヒ
(72)【発明者】
【氏名】マダリナ シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】リュック ニコロ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー クラウス
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0134387(US,A1)
【文献】国際公開第2007/105029(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0193982(US,A1)
【文献】特表2013-545845(JP,A)
【文献】特表2013-503804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00- 32/02
C04B 40/00- 40/06
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラグを湿式粉砕する方法であって、
スラグ1トン当たり100kWh超の粉砕エネルギーを導入し、スラグ対水の重量比が0.05~4:1であり、湿式粉砕前または湿式粉砕中に、前記スラグを基準として0.005~2重量%の粉砕助剤を被粉砕物に添加し、該粉砕助剤は、ポリカルボキシレートエーテル、リン酸化重縮合生成物、リグニンスルホネート、メラミンホルムアルデヒドスルホネート、ナフタレンホルムアルデヒドスルホネート、モノグリコール、ジグリコール、トリグリコールおよびポリグリコール、ポリアルコール、アルカノールアミン、アミノ酸、糖、モラッセならびにケイ酸カルシウム水和物に基づく硬化促進剤の群からの少なくとも1種の化合物を含む、方法。
【請求項2】
前記スラグが、高炉スラグであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記湿式粉砕において粉砕媒体を使用し、スラグ対粉砕媒体の重量比が1~15:1であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記スラグが、以下の組成:
SiO 20~50重量%
Al 5~40重量%
Fe 0~3重量%
CaO 20~50重量%
MgO 0~20重量%
MnO 0~5重量%
SO 0~2重量%
ガラス含量 80重量%超
を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記粉砕助剤が、ポリカルボキシレートエーテルおよびリン酸化重縮合生成物の群からの少なくとも1種の化合物であり、ここで、前記粉砕助剤は、構造単位(I)
-U-(C(O))-X-(AlkO)-W (I)
[式中
は、酸基含有ポリマーへの結合点を示し、
Uは、化学結合または1~8個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
Xは、酸素、硫黄またはNR基を意味し、
kは、0または1であり、
nは、前記酸基含有ポリマーを基準として1~300の範囲の平均値を有する整数を表し、
Alkは、C~C-アルキレンを表し、ここで、Alkは、基(Alk-O)内で同一であっても異なっていてもよく、
Wは、水素基、C~C-アルキル基もしくはアリール基を意味するか、または基Y-Fを意味し、ここで
Yは、2~8個の炭素原子を有し、かつフェニル環を有していてもよい線状または分枝状のアルキレン基を表し、
Fは、窒素を介して結合された5員~10員の窒素複素環を表し、該窒素複素環は、環員として、窒素原子のほかに、かつ炭素原子のほかに、酸素、窒素および硫黄の中から選択される1、2または3個の更なるヘテロ原子を有していてもよく、ここで、窒素環員は、基Rを有していてもよく、1または2個の炭素環員は、カルボニル基として存在していてもよく、
は、水素、C~C-アルキルまたはベンジルを表し、
は、水素、C~C-アルキルまたはベンジルを表す]を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記リン酸化重縮合生成物が、
(II)芳香族またはヘテロ芳香族および構造単位(I)を有する少なくとも1つの構造単位ならびに
(III)芳香族またはヘテロ芳香族を有する少なくとも1つのリン酸化構造単位
を含むことを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記構造単位(II)および(III)が、以下の一般式
(II) A-U-(C(O))-X-(AlkO)-W
[式中、
Aは、同一または異なっており、かつ芳香族系に5~10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物で表され、ここで、更なる基は、構造単位(I)について示された意味を有する];
(III) A-U-(C(O))-X-(AlkO)-P(O)(OM
[式中、
Aは、同一または異なっており、かつ芳香族系に5~10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物で表され、ここで、更なる基は、構造単位(I)について示された意味を有し、かつ
Mは、水素、1価、2価もしくは3価の金属カチオン、アンモニウムイオンまたは有機アミン基を表し、
aは、1/3、1/2または1を表す]で表されることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記重縮合生成物が、以下の式:
【化1】
[式中、
Yは、互いに独立して、同一または異なっており、かつ前記重縮合生成物の(II)、(III)または更なる成分で表される]で表される更なる構造単位(IV)を含むことを特徴とする、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記ポリカルボキシレートエーテルが、
(V)カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、カルボン酸無水物およびカルボン酸イミドの群からの少なくとも1個の基を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと、
(VI)構造単位(I)を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと
を含むモノマーの混合物の重合によって得られる少なくとも1種のコポリマーであることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項10】
前記エチレン性不飽和モノマー(V)が、(Va)、(Vb)および(Vc)の群からの以下の一般式
【化2】
[式中
およびRは、互いに独立して、水素または1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基であり、
Bは、H、-COOM、-CO-O(C2qO)-R、-CO-NH-(C2qO)-Rを表し、
Mは、水素、1価、2価もしくは3価の金属カチオン、アンモニウムイオンまたは有機アミン基を表し、
aは、1/3、1/2または1を表し、
は、水素、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6~14個の炭素原子を有する置換されていてもよいアリール基を表し、
qは、互いに独立して、各(C2qO)単位について同一または異なっており、2、3または4であり、かつ
rは、0~200であり、
Zは、O、NR16であり、
16は、互いに独立して、同一または異なっており、かつ分枝状もしくは非分枝状のC~C10-アルキル基、C~C-シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基またはHで表される]、
【化3】
[式中、
10およびR11は、互いに独立して、水素または1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6~14個の炭素原子を有する置換されていてもよいアリール基を表し、
12は、同一または異なっており、かつ(C2n)-SO(n=0、1、2、3もしくは4)、(C2n)-OH(n=0、1、2、3もしくは4);(C2n)-PO(M(n=0、1、2、3もしくは4)、(C2n)-OPO(M(n=0、1、2、3もしくは4)、(C)-SO、(C)-PO(M、(C)-OPO(Mおよび(C2n)-NR14 (n=0、1、2、3もしくは4およびb=2もしくは3)で表され、かつMは、水素、1価、2価もしくは3価の金属カチオン、アンモニウムイオンまたは有機アミン基を表し、かつaは、1/3、1/2もしくは1であり、
13は、H、-COOM、-CO-O(C2qO)-R、-CO-NH-(C2qO)-Rを表し、ここで、M、R、qおよびrは、上記で示された意味を有し、
14は、水素、1~10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6~14個の炭素原子を有する置換されていてもよいアリール基を表し、
Qは、同一または異なっており、NH、NR15またはOで表され、ここで、R15は、1~10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基または6~14個の炭素原子を有する置換されていてもよいアリール基を表す]の少なくとも1つで表されることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記ケイ酸カルシウム水和物に基づく硬化促進剤の粒度d50が5μm未満であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記湿式粉砕を、撹拌ボールミル中で実施することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記粉砕助剤を含む、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法に従って製造された、粉砕スラグ。
【請求項14】
バインダーとしての、またはバインダー組成物中での請求項13記載のスラグの使用であって、前記バインダー成分は、本発明によるスラグ5~99重量%およびセメント1~95重量%を含む、使用。
【請求項15】
セメント状組成物中での、乾燥質量を基準として0.1~99重量%の量の請求項13記載のスラグの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラグを処理する方法、該方法から得られる生成物およびその使用に関する。
【0002】
水硬という用語は、空気中でも水中でも硬化し、かつ耐水性である材料のことを指す。特に、水硬性バインダーは、セメントおよびポゾラン、例えばフライアッシュおよび高炉スラグなどである。
【0003】
水硬性バインダーの中でも、セメントが経済的に最も重要である。セメントに水が混ぜられると、水和によって固化して硬化し、水中で硬化させた後も強固に寸法安定性を保つセメントペーストが生じる。セメントは、本質的にポルトランドセメントクリンカーからなり、さらに、例えば、スラグ砂、ポゾラン、フライアッシュ、石灰石、フィラーおよびセメント混和剤を含有することがある。セメント成分は、その組成に関して統計的に見て均質でなければならず、これは、特に、適切な粉砕および均質化プロセスによって達成されることができる。
【0004】
セメント製造のためのセメントおよび原料は、工業的に、主に管状ボールミル中で粉砕され、この場合、粉砕助剤の効果が特に重要である。
【0005】
クリンカー製造のために、セメント原料は、一般に乾式粉砕される。乾式処理では、原料成分は、計量装置を用いて特定の混合比でミルに供給され、微細に粉砕されて原料粉が得られる。引き続き、原料粉は、約1450℃で焼成され、それによってクリンカーが形成される。原料の良好な粉砕は、クリンカーの品質にとって極めて重要である。それから球状材料が冷却され、スラグ砂、フライアッシュ、石灰石および石膏と一緒に粉砕されることで最終生成物であるセメントが得られる。
【0006】
セメントの製造は、非常にエネルギー集約的であることから、高価なプロセスであり、この場合、大量の二酸化炭素が放出される。したがって、経済的および生態的な両方の観点から、セメントに代わる代替原料の使用は、大きな関心事である。
【0007】
スラグは、建築分野では二次原料として長らく使用されている。スラグは、特に製鉄高炉運転から得られる副生成物である。従来、高炉には、高度に制御された冶金プロセスの一環として、鉄鉱、石灰系骨材、燃料および他の酸化鉄源の層が装填されている。非常に高い温度を達成するために炉内に熱と酸素が導入され、炉の下部領域を開けて流し出すことにより溶鉄が採集される。溶鉄の真上に形成された溶融スラグも同様に流し出されて炉から取り出され、水で急冷されることで、湿った粒状化スラグ材料が生成される。
【0008】
粒状化高炉スラグは、主としてカルシウムおよび他の塩基のシリケートおよびアルミノシリケートからなる非金属生成物である。ASTM C-989は、コンクリートおよびモルタル組成物に使用することができる粒状化スラグの仕様を提供し、ASHTO-MR02は、粒状化スラグから形成されることができ、混合セメントにおける成分として使用される粉砕生成物の仕様を提供する(例えば、混合水硬セメントに関するASTM C-595標準仕様)。
【0009】
混合セメント組成物は、組成物の水硬性セメント成分の一部(約50重量%まで)を粉末状の粉砕スラグ生成物で置き換えることによって形成されることができる。スラグが組成物の一部として存在する場合、モルタル(水硬セメント、細骨材、例えば砂および水)とコンクリート(水硬セメント、細骨材、粗骨材、例えば砂および水)とのセメント組成物は、一般的に、後期強度の増大を示す。
【0010】
微粉状にされた生成物をもたらすために、粒状化スラグは、通常、ボールミルまたはローラープレスによって処理される。ボールミルプロセスでは、顆粒を破砕して所望の粉末を得るために、ミルのボール要素の連続的な統計的衝撃によって顆粒が処理される。ボールミルは、形成された粒子がボールミル中に分散した形態で留まるようにする作用剤(一般的に「粉砕助剤」と呼ばれる)がミル中に存在する場合、より高い効率で作動する。したがって、リグノスルホネート、トリエタノールアミンなどの化合物は、ボールミルプロセスで使用されている。
【0011】
ローラープレスは、ボールミルとは全く異なるメカニズムに従って作動する。スラグ顆粒は、一対のローラーの間隙に供給される。顆粒は、顆粒がローラーの間を通過するときに起こる単一の圧砕力を受ける。ローラーは、顆粒を圧砕し、これにより、顆粒は、非常に小さな粒子に細かく砕かれる上に、顆粒の細砕も引き起こされ、顆粒は、その後、解砕機中で処理されるときに完全に砕解する。
【0012】
ドイツ語に翻訳された欧州特許公報69610562号(DE69610562)からは、(a)ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩およびそれらの混合物から選択され、少なくとも25000の平均分子量(重量平均)を有する0.002~0.3重量%のポリマーと、(b)スラグ供給流の全重量を基準として0.1~4重量%の水とを添加することによる、ローラープレスを用いた粉砕スラグ粉末の製造方法が知られている。
【0013】
国際公開第2007/105029号(WO2007/105029)は、反応性の高い粉砕スラグ粉末を製造する方法を記載しており、この場合、粒状化スラグが、撹拌ボールミル中で湿式法において粉砕される。得られた生成物は、48時間以内に水和を開始し、28日以内に完全に水和される。しかしながら、このようにして得られた生成物の初期強度は、セメントの強度よりも低いという欠点がある。
【0014】
したがって、本発明の課題は、モルタルおよびコンクリート中のポルトランドセメントを完全に置き換えることができる高反応性の生成物をもたらす、スラグを粉砕する方法を提供することであった。さらに、この方法は、全てのエージング段階において少なくともポルトランドセメントの強度特性に匹敵する強度特性を有する生成物をもたらすべきである。
【0015】
この課題は、スラグ1トン当たり100kWh超、特に180kWh超、特に好ましくは200~2000kWh、特に300~1000kWhの粉砕エネルギーを導入し、スラグ対水の重量比が0.05~4:1であり、湿式粉砕前または湿式粉砕中に、該スラグを基準として0.005~2重量%、好ましくは0.01~0.5重量%、特に好ましくは0.05~0.5重量%の粉砕助剤を被粉砕物に添加し、該粉砕助剤は、ポリカルボキシレートエーテル、リン酸化重縮合生成物、リグニンスルホネート、メラミンホルムアルデヒドスルホネート、ナフタレンホルムアルデヒドスルホネート、モノグリコール、ジグリコール、トリグリコールおよびポリグリコール、ポリアルコール、アルカノールアミン、アミノ酸、糖、モラッセならびにケイ酸カルシウム水和物に基づく硬化促進剤の群からの少なくとも1種の化合物を含む、スラグを湿式粉砕する方法によって解決された。
【0016】
驚くべきことに、本発明による方法は、単独でまたは他の無機バインダー、特にポルトランドセメントとの混合物として、水を混ぜた後に、1日および2日後に非常に高い初期強度を達成し、28日後には際立った後期強度も達成するスラグをもたらすことが見出された。純粋なポルトランドセメントの初期強度特性は、本発明により製造された生成物が実質的に上回る。
【0017】
本発明により使用されるスラグは、高炉スラグであることが特に好ましい。
【0018】
好ましい実施形態では、本発明による方法で使用されるスラグは、以下の組成を有する:SiO 20~50重量%、Al 5~40重量%、Fe 0~3重量%、CaO 20~50重量%、MgO 0~20重量%、MnO 0~5重量%、SO 0~2重量%およびガラス含量 80重量%超。特に好ましくは、スラグは、以下の組成を有する:SiO 30~45重量%、Al 5~30重量%、Fe 0~2重量%、CaO 30~50重量%、MgO 0~15重量%、MnO 0~5重量%、SO 0~1重量%およびガラス含量 90重量%超。
【0019】
本発明による方法に関しては、スラグ対水の重量比が0.1~3:1、特に0.5~2:1、特に好ましくは0.4~0.6:1であることが特に好ましい。
【0020】
ここで、湿式粉砕において粉砕媒体を使用し、スラグ対粉砕媒体の重量比が1~20:1、特に好ましくは14~16:1であることが好ましい。
【0021】
粉砕媒体は、特にボールとして形成されており、0.5~3mmのボール直径が好ましいと見なされる。
【0022】
スラグが湿式粉砕される時間に関しては、10分~3時間、好ましくは1~2時間が有利であることが判明した。
【0023】
特に、湿式粉砕は、撹拌ボールミル中で実施されることができる。撹拌ボールミルは、粉砕媒体を含む粉砕室と、粉砕室内に配置されたステーターとローターとを含む。さらに好ましくは、撹拌ボールミルは、被粉砕物を粉砕室中に供給するための被粉砕物用入口開口部と被粉砕物を粉砕室から排出するための被粉砕物用出口開口部と、粉砕室の出口開口部の上流に配置され、被粉砕物が出口開口部を通って粉砕空間から排出される前に該被粉砕物中に同伴された粉砕媒体を該被粉砕物から分離するのに用いられる粉砕媒体用分離装置とを含む。
【0024】
粉砕室中で被粉砕物に導入される機械的粉砕力を高めるために、粉砕空間内に突出するピンが、好ましくはローター上および/またはステーター上に存在する。したがって、一方では、運転中、被粉砕物とピンとの間の衝突によって、粉砕力に対する寄与が直接的にもたらされる。他方では、粉砕力に対する更なる寄与は、ピンと被粉砕物中に同伴された粉砕媒体との間の衝突と、次いで再び被粉砕物と粉砕媒体との間で生じる衝突とによって間接的に生じる。最後に、被粉砕物に作用する剪断力および伸張力もまた、被粉砕物の懸濁粒子の微粉砕に寄与する。
【0025】
導入された粉砕エネルギーに依存して、本発明による粉砕から得られたスラグは、異なる粒度分布および全表面積を有し、これは粉末度とも呼ばれる。無機固体の粒度分布は、典型的には、ブレーン法に従ってcm/gで示される。粉末度および粒度分布の両方は、実際に非常に重要である。このような粒度分析は、通常、レーザー粒度分析法またはエアジェットシーブ法によって行われる。所望の粉末度を達成するための粉砕時間は、本発明による粉砕助剤の使用によって著しく低減することができる。
【0026】
好ましくは、本発明による粉砕から得られたスラグの粒度d50は、Malvern Instruments Ltd.のMasterSizer(登録商標)2000を用いたレーザー粒度分析法によって測定して、10μm未満、特に5μm未満、好ましくは3μm未満、特に好ましくは2μm未満である。
【0027】
特に、粉砕助剤は、ポリカルボキシレートエーテルおよびリン酸化重縮合生成物の群からの少なくとも1種の化合物であり、ここで、粉砕助剤は、構造単位(I):
-U-(C(O))-X-(AlkO)-W (I)
[式中
は、酸基含有ポリマーへの結合点を示し、
Uは、化学結合または1~8個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
Xは、酸素、硫黄またはNR基を意味し、
kは、0または1であり、
nは、前記酸基含有ポリマーを基準として1~300の範囲の平均値を有する整数を表し、
Alkは、C~C-アルキレンを表し、ここで、Alkは、基(Alk-O)内で同一であっても異なっていてもよく、
Wは、水素基、C~C-アルキル基もしくはアリール基を意味するか、または基Y-Fを意味し、ここで
Yは、2~8個の炭素原子を有し、かつフェニル環を有していてもよい線状または分枝状のアルキレン基を表し、
Fは、窒素を介して結合された5員~10員の窒素複素環を表し、該窒素複素環は、環員として、窒素原子のほかに、かつ炭素原子のほかに、酸素、窒素および硫黄の中から選択される1、2または3個の更なるヘテロ原子を有していてもよく、ここで、窒素環員は、基Rを有していてもよく、かつ1または2個の炭素環員は、カルボニル基として存在していてもよく、
は、水素、C~C-アルキルまたはベンジルを表し、
は、水素、C~C-アルキルまたはベンジルを表す]を含む。
【0028】
好ましい実施形態では、リン酸化重縮合生成物は、
(II)芳香族またはヘテロ芳香族およびポリエーテル基を有する構造単位ならびに
(III)芳香族またはヘテロ芳香族を有するリン酸化構造単位
を含む。
【0029】
構造単位(II)および(III)は、好ましくは、以下の一般式で表される:
(II) A-U-(C(O))-X-(AlkO)-W
[式中、
Aは、同一または異なっており、かつ芳香族系に5~10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物で表され、ここで、更なる基は、構造単位(I)について示された意味を有する];
(III) A-U-(C(O))-X-(AlkO)-P(O)(OM
[式中、
Aは、同一または異なっており、かつ芳香族系に5~10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物で表され、ここで、更なる基は、構造単位(I)について示された意味を有し、かつ
Mは、水素、1価、2価もしくは3価の金属カチオン、アンモニウムイオンまたは有機アミン基を表し、
aは、1/3、1/2または1を表す]。
【0030】
好ましくは、重縮合生成物は、以下の式:
【化1】
[式中、
Yは、互いに独立して、同一または異なっており、かつ重縮合生成物の(II)、(III)または更なる成分で表される]で表される更なる構造単位(IV)を含む。
【0031】
およびRは、好ましくは、同一または異なっており、H、メチル、エチル、プロピル、COOH、または5~10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換の芳香族化合物もしくはヘテロ芳香族化合物で表される。ここで、構造単位(IV)におけるRおよびRは、互いに独立して、好ましくは、H、COOHおよび/またはメチルで表される。
【0032】
特に好ましい実施形態では、RおよびRは、Hで表される。
【0033】
本発明によるリン酸化重縮合生成物の構造単位(II)、(III)および(IV)のモル比は、広い範囲で変化させることができる。構造単位[(II)+(III)]:(IV)のモル比が1:0.8~3、好ましくは1:0.9~2、特に好ましくは1:0.95~1.2であることが有利と判明した。
【0034】
構造単位(II):(III)のモル比は、通常、1:10~10:1、好ましくは1:7~5:1、特に好ましくは1:5~3:1である。
【0035】
重縮合生成物の構造単位(II)および(III)における基AおよびDは、通例、フェニル、2-ヒドロキシフェニル、3-ヒドロキシフェニル、4-ヒドロキシフェニル、2-メトキシフェニル、3-メトキシフェニル、4-メトキシフェニル、ナフチル、2-ヒドロキシナフチル、4-ヒドロキシナフチル、2-メトキシナフチル、4-メトキシナフチル、好ましくはフェニルで表され、ここで、AおよびDは、互いに独立して選択することができ、それぞれ上記化合物の混合物からなっていてもよい。基XおよびEは、互いに独立して、好ましくはOで表される。
【0036】
構造単位(I)におけるnは、5~280、特に10~160、特に好ましくは12~120の整数で表され、かつ構造単位(III)におけるbは、0~10、好ましくは1~7、特に好ましくは1~5の整数で表される。長さがnとbでそれぞれ定義される各基は、この場合、均一なユニットからなることができるが、異なるユニットの混合物であることも有利であり得る。さらに、構造単位(II)および(III)の基は、互いに独立して、それぞれが同じ鎖長を有し、この場合、nとbは、それぞれ数で表される。しかしながら、それぞれが異なる鎖長を有する混合物であり、そのため重縮合生成物中の構造単位の基が、nについてと、独立してbについて異なる数値を有することも一般に有利であり得る。
【0037】
特定の実施形態では、本発明はさらに、リン酸化重縮合生成物のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩および/またはカルシウム塩、好ましくはナトリウム塩および/またはカリウム塩を提供する。
【0038】
しばしば、本発明によるリン酸化重縮合生成物は、4,000g/モル~150,000g/モル、有利には10,000~100,000g/モル、特に好ましくは20,000~75,000g/モルの重量平均分子量を有する。
【0039】
本発明により好ましく使用されるリン酸化重縮合生成物およびその製造に関しては、特許出願である国際公開第2006/042709号(WO2006/042709)および国際公開第2010/040612号(WO2010/040612)も参照され、これらの内容は、参照により本出願に組み込まれる。
【0040】
更なる好ましい実施形態では、本発明によるポリカルボキシレートエーテルは、
(V)カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、カルボン酸無水物およびカルボン酸イミドの群からの少なくとも1個の基を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと、
(VI)構造単位(I)を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと
を含むモノマーの混合物の重合によって得られる少なくとも1種のコポリマーである。
【0041】
本発明に対応するコポリマーは、少なくとも2つのモノマー構成単位を含む。しかしながら、3つ以上のモノマー構成単位を有するコポリマーを使用することも有利であり得る。
【0042】
好ましい実施形態では、エチレン性不飽和モノマー(V)は、(Va)、(Vb)および(Vc)の群からの以下の一般式の少なくとも1つで表される:
【化2】
【0043】
モノカルボン酸誘導体またはジカルボン酸誘導体(Va)および環式で存在するモノマー(Vb)(式中、Z=O(酸無水物)またはNR16(酸イミド)である)において、RおよびRは、互いに独立して、水素または1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、有利にはメチル基である。Bは、H、-COOM、-CO-O(C2qO)-R、-CO-NH-(C2qO)-Rを意味する。
【0044】
Mは、水素、1価、2価もしくは3価の金属カチオン、有利にはナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンもしくはマグネシウムイオン、さらにアンモニウムまたは有機アミン基を意味し、かつMが1価、2価もしくは3価のカチオンであるかどうかに応じて、a=1/3、1/2または1である。有機アミン基として、有利には、第一級、第二級または第三級C1~20-アルキルアミン、C1~20-アルカノールアミン、C5~8-シクロアルキルアミンおよびC6~14-アリールアミンから誘導される置換されたアンモニウム基が使用される。対応するアミンの例は、プロトン化(アンモニウム)形態のメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミンである。
【0045】
は、水素、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6~14個の炭素原子を有する置換されていてもよいアリール基を表し、q=2、3または4であり、かつr=0~200、有利には1~150である。ここで、脂肪族炭化水素基は、線状または分枝状かつ飽和または不飽和であってよい。好ましいシクロアルキル基として見なされるのは、シクロペンチル基またはシクロヘキシル基であり、好ましいアリール基として見なされるのは、フェニル基またはナフチル基であり、これらの基は、特に、ヒドロキシル基、カルボキシル基またはスルホン酸基で置換されていてもよい。
【0046】
さらに、Zは、OまたはNR16であり、ここで、R16は、互いに独立して、同一または異なっており、かつ分枝状もしくは非分枝状のC~C10-アルキル基、C~C-シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基またはHで表される。
【0047】
以下の式は、モノマー(Vc)を表す:
【化3】
【0048】
ここで、R10およびR11は、互いに独立して、水素または1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6~14個の炭素原子を有する置換されていてもよいアリール基を表す。
【0049】
さらに、R12は、同一または異なっており、かつ(C2n)-SO(n=0、1、2、3もしくは4)、(C2n)-OH(n=0、1、2、3もしくは4);(C2n)-PO(M(n=0、1、2、3もしくは4)、(C2n)-OPO(M(n=0、1、2、3もしくは4)、(C)-SO、(C)-PO(M、(C)-OPO(Mおよび(C2n)-NR14 (n=0、1、2、3もしくは4およびb=2もしくは3)で表され、かつMは、水素、1価、2価もしくは3価の金属カチオン、アンモニウムイオンまたは有機アミン基を表し、かつaは、1/3、1/2もしくは1である。
【0050】
13は、H、-COOM、-CO-O(C2qO)-R、-CO-NH-(C2qO)-Rを表し、ここで、M、R、qおよびrは、上記で示された意味を有する。
【0051】
14は、水素、1~10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6~14個の炭素原子を有する置換されていてもよいアリール基を表す。
【0052】
さらに、Qは、同一または異なっており、NH、NR15またはOで表され、ここで、R15は、1~10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基または6~14個の炭素原子を有する置換されていてもよいアリール基を表す。
【0053】
特に好ましい実施形態では、エチレン性不飽和モノマー(VI)は、以下の一般式:
【化4】
[式中、全ての基は、上記で示された意味を有する]で表される。
【0054】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された本発明によるポリカルボキシレートエーテルの平均分子量Mは、有利には5,000~200,000g/モル、特に好ましくは10,000~80,000g/モル、非常に好ましくは20,000~70,000g/モルである。ポリマーは、サイズ排除クロマトグラフィーにより、それらの平均モル質量および転化率について測定した(カラム組合せ:Shodex(日本)のOH-Pak SB-G、OH-Pak SB804 HQおよびOH-Pak SB 802.5HQ;溶離液:HCONH水溶液(0.05モル/l)80体積%およびアセトニトリル20体積%;注入量100μl;流量0.5ml/分)。平均モル質量を測定するための較正を、線状ポリエチレングリコール標準品を用いて行った。
【0055】
有利には、本発明によるコポリマーは、工業規格EN 934-2(2002年2月)の要件を満たす。
【0056】
特に好ましい実施形態では、粉砕助剤は、ケイ酸カルシウム水和物に基づく硬化促進剤を含む。この場合、ケイ酸カルシウム水和物に基づく硬化促進剤の粒度d50が、好ましくはMalvern Instruments Ltd.のMasterSizer(登録商標)2000を用いた光散乱により測定して5μm未満であることが好ましい。
【0057】
ケイ酸カルシウム水和物に基づく硬化促進剤は、特に、水溶性カルシウム塩を水および高分子分散剤の存在下で水溶性シリケート化合物と反応させる方法によって得ることができる。
【0058】
本発明により好ましく使用されるケイ酸カルシウム水和物に基づく硬化促進剤およびその製造に関しては、特許出願である国際公開第2010/026155号(WO2010/026155)、国際公開第2011/026720号(WO2011/026720)および国際公開第2011/026723号(WO2011/026723)も参照され、これらの内容は、参照により本出願に組み込まれる。
【0059】
本発明の更なる対象は、本発明による方法に従って得られる粉砕スラグであり、ここで、粉砕スラグは、粉砕助剤を含む。したがって、本発明によるスラグを製造する方法は、使用される粉砕助剤を完全に除去するための工程を含まない。
【0060】
さらに、本発明は、本発明による方法に従って得られたスラグの、バインダーとしての、またはバインダー組成物中での使用を提供し、ここで、バインダー成分は、好ましくは5~100重量%が本発明によるスラグからなる。特に有利には、バインダー成分は、セメント、特にポルトランドセメントをさらに含み、ここで、バインダー成分は、好ましくは、スラグ5~99重量%およびセメント1~95重量%を含む。特に、これまではセメント、特にポルトランドセメントおよび/またはマイクロシリカおよび/またはメタカオリンが使用されてきたバインダー組成物中で、これらのバインダーを、本発明によるスラグで完全にまたは少なくとも部分的に置き換えることができる。
【0061】
更なる実施形態では、本発明は、セメント状組成物中での、乾燥質量を基準として0.1~99重量%、特に1~50重量%の量の本発明によるスラグの使用を提供する。セメント状組成物は、特に、コンクリートまたはセメントであり得る。
【0062】
さらに好ましい実施形態では、本発明は、バインダー組成物中での、本発明による方法によって得られたスラグの使用を提供し、ここで、バインダー成分は、少なくとも1種のアルカリ活性化アルミノシリケートバインダーをさらに含む。好ましくは、バインダー成分は、スラグ5~99重量%およびアルカリ活性化アルミノシリケートバインダー1~95重量%を含む。アルカリ活性化アルミノシリケートバインダーとは、少なくとも2つの成分の反応によって形成されるセメント様物質を意味する。第1の成分は、SiOおよびAlを含有する反応性固体成分、例えば、フライアッシュまたはメタカオリンである。第2の成分は、アルカリ活性化剤、例えば、ナトリウム水ガラスまたは水酸化ナトリウムである。水の存在下で、両成分の接触によって、耐水性であるアルミノシリケート含有の非晶質~部分結晶性ネットワークが形成されることで硬化が生じる。アルカリ活性化可能なアルミノシリケートバインダーとして本発明のために考慮される物質の概要が、参考文献である「アルカリ活性化セメントおよびコンクリート(Alkali-Activated Cements and Concretes)」,Caijun Shi,Pavel V.Krivenko,Della Roy,(2006)の第30頁~第63頁および第277頁~第297頁に記載されている。
【0063】
バインダー組成物は、好ましくは乾燥モルタルである。広範囲にいたる合理化と製品品質の向上を継続的に追求することにより、建築分野での非常に多岐に亘った用途のためのモルタルが、今日では実際に、建築現場自体で出発材料からもはや調合されていない。この作業は、現在、主として建築産業の工場によって引き継がれており、すぐに使用できる混合物は、いわゆるドライブレンドモルタルとして利用可能である。同時に、建築現場で水の添加および混合のみによって加工可能にされる完成した混合物は、DIN 18557に従って、プレミックスモルタル、特にドライブレンドモルタルと呼ばれる。このようなモルタルシステムは、非常に多岐に亘った建築物理的作業を満たすことができる。意図された作業に応じて、本発明によるスラグのほかにセメントおよび/または石灰および/または硫酸カルシウムを含有することができるバインダーに、更なる添加剤または混和剤が、ドライブレンドモルタルを特定の用途に合わせるために添加される。このような添加剤は、例えば、収縮低減剤、膨張剤、促進剤、遅延剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、AE剤、腐食防止剤であり得る。
【0064】
本発明によるドライブレンドモルタルは、特に、石造モルタル、下塗り用モルタル、断熱複合システム用モルタル、改装プラスター、目地モルタル、タイル接着剤、薄層モルタル、スクリードモルタル、グラウトモルタル、圧入モルタル、下塗り用サーフェーサー、修復モルタルまたはライニングモルタル(例えば飲料水用管)であってよい。さらに、本発明によるスラグは、コンクリート中で使用することもできる。更なる用途として、本発明によるスラグをコンクリート敷石用の外装コンクリート(Vorsatzbeton)に使用することが挙げられる。
【0065】
特に、本発明によるスラグは、バインダー組成物中で使用された場合、製造された構成材の硬化後の耐エージング性の改善を生み、この場合、特に、耐硫酸塩性、凍結/融解抵抗性、耐塩化物性および構成材表面上のエフロレッセンスの減少が挙げられる。
【0066】
以下の実施例は、本発明の利点を明確に示す。
【0067】
実施例
一般的な実験手順
粒状化スラグ砂(Huettensand Salzgitter GmbH & Co.KG)12kgを、ドラムボールミル中で110分間、3500cm/gの比表面積(ブレーン法に従う)に粉砕する。
【0068】
比表面積3500cm/gおよび脱イオン水1421gを有する粉砕スラグ砂700g(これには、粉砕スラグ砂を基準として本発明による粉砕助剤0.1重量%が場合により添加される)から懸濁液を製造する。この懸濁液を、多孔板(Drais Pearl Mill)を有する撹拌ボールミルの撹拌容器に移し、ミルを循環させながら2580rpmで運転する。粉砕室の容積は0.94リットルである。直径0.8mmの酸化ジルコニウム製のボールを粉砕媒体として使用する。粉砕室の粉砕媒体による充填率は75%であり、ここで、スラグ対粉砕媒体の重量比は0.066:1であり、粉砕時間は、約2時間である。湿式粉砕によって、スラグ1トン当たり換算すると750kWhの粉砕エネルギーが導入される。
【0069】
引き続き、粉砕媒体を、篩分によって懸濁液から分離する。スラグ砂を懸濁液から分離するために、懸濁液を吸引ボトルによりガラス繊維フィルター(Whatmanガラス繊維フィルターGF/F)に通して濾過し、フィルターケーキをイソプロパノールで層状に覆う。
【0070】
引き続き、材料を40℃の窒素流中で乾燥させる。
【0071】
得られた乾燥生成物を250μmの篩に通し、市販のCEM I 42.5N(Schwenk Zement KG、メルゲルシュテッテン生産工場)と50:50の重量比で混ぜる。
【0072】
使用例
強度試験用のモルタルの製造は、モルタルのスランプフローを約20cmにするために可塑剤を追加導入してEN 196-1に従って行う。純粋なCEM I 42.5R(Schwenk Zement KG、メルゲルシュテッテン生産工場)からなるかまたはこのセメントとスラグ砂との混合物からなるバインダー450gに、水225gをミキサー中でEN 196-1に従って混合し(w/c=0.5)、EN 196-1に規定された時間の後に、1350gのCEN標準砂、EN 196-1を添加し(c/s=0.33)、EN196-1に規定された混合方式に従って混ぜる。引き続き、ポリカルボキシレートエーテル可塑剤(Master ACE 430、BASF Construction Solutions GmbHの商品名)を添加することにより、EN 196-1に従ったスランプフローを約20cmに設定する。
【0073】
圧縮強度試験は、EN 196-1に準拠して行った。
【0074】
【表1】
スラグ砂のd50値の測定は、レーザー回折(Malvern Mastersizer 2000)により行った。水性懸濁液中
【0075】
V1(比較):バインダーとしてCEM I 42.5N(Schwenk Zement KG、メルゲルシュテッテン生産工場)のみを使用する。
【0076】
V2(比較):比表面積が3500cm/gのスラグ砂(Huettensand Salzgitter GmbH & Co.KG)をバインダーとして使用する。
【0077】
V3(比較):粉砕助剤を使用せずに、一般的な実験手順に従って製造したバインダーを使用する。
【0078】
V4(本発明による):粉砕助剤として、粉砕スラグ砂を基準として0.1重量%のケイ酸カルシウム水和物に基づく硬化促進剤(Master XSEED100、BASF Construction Solutions GmbHの商品名)を使用して、一般的な実験手順に従って製造したバインダーを使用する。
【0079】
V5(本発明による):粉砕助剤として、粉砕スラグ砂を基準として0.1重量%のリン酸化重縮合生成物(MasterEase 3000、BASF Construction Solutions GmbHの商品名)を使用して、一般的な実験手順に従って製造したバインダーを使用する。
【0080】
V6(比較):脱イオン水の代わりに溶媒としてイソプロパノール1421gを使用し、かつ粉砕助剤を使用しないで、一般的な実験手順に従って製造したバインダーを使用する。
【0081】
V7(比較):脱イオン水の代わりに溶媒としてヘキサノール1421gを使用し、かつ粉砕助剤を使用しないで、一般的な実験手順に従って製造したバインダーを使用する。