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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】プレニル化アッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/48 20060101AFI20220208BHJP
   G01N 33/573 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C12Q1/48 Z ZNA
G01N33/573 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018566650
(86)(22)【出願日】2017-03-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 GB2017050659
(87)【国際公開番号】W WO2017153774
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2020-03-10
(31)【優先権主張番号】1604146.9
(32)【優先日】2016-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518320225
【氏名又は名称】ナイトスタアールエックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクラーレン,ロバート イー.
(72)【発明者】
【氏名】モレイラ パトリシオ,マリア イネス
【審査官】西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/082690(WO,A1)
【文献】特表2014-512171(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076740(WO,A1)
【文献】Monika Kohnke,Rab GTPase prenylation hierarchy and its potential role in choroideremia disease,PLoS One,2013年,8(12),1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
G01N 33/573
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイデレミアの治療に使用するための、Rabエスコートタンパク質1(REP1)をコードする遺伝子療法ベクターの活性を測定するための方法であって、
(a) REP1を含む試料を、Rab6a、Rabゲラニルゲニルトランスフェラーゼ(Rab GGTase)および脂質供与体基質と接触させるステップ、ここで該REP1を含む試料は、該REP1をコードする遺伝子療法ベクターを用いてREP1を発現するように遺伝子操作された細胞に由来する;および
(b) 脂質付加されたRab6a生成物を検出するステップ
を含む前記方法。
【請求項2】
コロイデレミアの治療に使用するための、Rabエスコートタンパク質1(REP1)をコードする遺伝子療法ベクターの品質管理分析をする方法であって、
(a) REP1を含む試料を、Rab6a、Rabゲラニルゲニルトランスフェラーゼ(Rab GGTase)および脂質供与体基質と接触させるステップ、ここで該REP1を含む試料は、該REP1をコードする遺伝子療法ベクターを用いてREP1を発現するように遺伝子操作された細胞に由来する;および
(b) 脂質付加されたRab6a生成物を検出するステップ
を含む前記方法。
【請求項3】
REP1を含む試料が、REP1をコードする遺伝子療法ベクターを用いてREP1を発現するように遺伝子操作された細胞の溶解物に由来する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
REP1をコードする遺伝子療法ベクターが、REP1をコードするヌクレオチド配列を含有するウイルスベクターであり、好ましくは該ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり、好ましくは該ウイルスベクターがAAV血清型2(AAV2)のウイルスベクターである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
REP1をコードする遺伝子療法ベクターのREP1をコードするヌクレオチド配列が、配列番号5と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含み、アミノ酸配列は配列番号5のタンパク質の天然の機能を実質的に保持する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
Rab6aおよび/またはRab GGTaseが実質的に純粋である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
Rab6a:Rab GGTaseモル比が、1:2.3、または1:2.5である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
脂質供与体基質が、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)またはその類似体、好ましくはビオチン-ゲラニルピロリン酸(BGPP)である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
脂質付加されたRab6a生成物が、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロット分析またはオートラジオグラフィーを用いて検出される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
脂質付加されたRab6a生成物の検出が、脂質付加されたRab6a生成物の量を定量すること、好ましくは対照もしくは参照レベルに対する相対量を定量することを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
コロイデレミアの治療に使用するためのRabエスコートタンパク質1(REP1)をコードする遺伝子療法ベクターの活性をin vitroで測定するための、Rab6aの使用であって、該Rab6aと、該REP1をコードする遺伝子療法ベクターを用いてREP1を発現するように遺伝子操作された細胞からのREP1とを接触させる、前記使用
【請求項12】
コロイデレミアの治療に使用するための、Rabエスコートタンパク質1(REP1)をコードする遺伝子療法ベクターのin vitro品質管理分析のための、Rab6aの使用であって、該Rab6aと、該REP1をコードする遺伝子療法ベクターを用いてREP1を発現するように遺伝子操作された細胞からのREP1とを接触させる、前記使用
【請求項13】
REP1が、REP1をコードする遺伝子療法ベクターを用いてREP1を発現するように遺伝子操作された細胞の溶解物に由来する、請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
REP1をコードする遺伝子療法ベクターが、REP1をコードするヌクレオチド配列を含有するウイルスベクターであり、好ましくは該ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項11~13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
Rab6aが実質的に純粋である、請求項11~14のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Rabエスコートタンパク質1(REP1)の活性測定に有用なアッセイに関する。具体的には、本発明は、アッセイにおいてプレニル化の基質としてRab6aを使用することに関するが、より詳細には、このREP1は遺伝子治療ベクターを用いて細胞に送達されたものである。
【背景技術】
【0002】
コロイデレミアは、脈絡膜、網膜色素上皮および視細胞の変性をもたらす希少疾患である。罹患した男性は、典型的には、10代で夜盲症、20代から30代の間に進行性の周辺視力低下、さらに40代で完全な失明を示す。女性キャリアは、軽度の症状、中でも特に夜盲症を示すが、時にはより重度の表現型を有することもある。
【0003】
コロイデレミアは、Rabエスコートタンパク質1(REP1)をコードするCHM遺伝子の変異によって引き起こされる。REP1と75%相同であるRabエスコートタンパク質2(REP2)は、体のほとんどの細胞においてREP1欠損を補う。しかしながら、REP2は、眼におけるREP1欠損を補うことができない。これが、標的Rab GTPaseの正常なプレニル化を維持するには不十分なRabエスコートタンパク質活性をもたらし、細胞の機能障害、そして最終的には細胞死を引き起こす。
【0004】
コロイデレミア(先天性脈絡膜欠如)は、冒された眼の細胞にREP1導入遺伝子の機能的コピーを提供することによって首尾よく治療することができる(MacLaren, RE et al. (2014) Lancet 383:1 129-37)。具体的には、疾患を治療するために機能性REP1をコードするヌクレオチド配列を眼に送達するために、アデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子治療ベクターを使用することができることが示されている。
【0005】
コロイデレミアの遺伝子治療が臨床上の現実となりつつあるので、特に、新たな遺伝子治療ベクターをテストするために、ならびに臨床的ベクターストックの品質管理検査として、外部から導入されたREP1の活性を測定するための、信頼性の高い高感度なアッセイが必要である。
【0006】
REP1をアッセイするための既存の方法は、プレニル化基質としてRab27aを使用する(Tolmachova, T. et al. (2012) J. Gene Med. 14: 158-168; Tolmachova, T. et al. (2013) J. Mol. Med. 91: 825-837; Vasireddy, V. et al. (2013) PLoS ONE 8: e61396; および Black, A. et al. (2014) J. Gene Med. 16: 122-130)。これはおそらく、コロイデレミアの発症機序におけるRab27aの多大な関与の当然の結果としてそうなったのであろう。たとえば、他のRabが適切にプレニル化されている一方で、Rab27aはコロデレミア細胞において非プレニル化された状態で存在することが示されている(Seabra, M.C. et al. (1995) J. Biol. Chem. 270: 24420-24427)。さらに、Rab27aは、コロイデレミアにおいて最も初期に変性する2つの部位、網膜色素上皮および脈絡膜毛細血管において高レベルで発現されている。
【0007】
しかしながら、Rab27aのプレニル化に依存するアッセイは、非常に弱いシグナルを生じる。その結果、こうしたアッセイは感度が低く、臨床遺伝子治療ベクターの確実なスクリーニングには適さない可能性がある。したがって、REP1活性を測定し、遺伝子治療ベクターをテストするために使用することができる、より信頼性の高い高感度のアッセイが強く必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】MacLaren, RE et al. (2014) Lancet 383:1 129-37
【文献】Tolmachova, T. et al. (2012) J. Gene Med. 14: 158-168;
【文献】Tolmachova, T. et al. (2013) J. Mol. Med. 91: 825-837;
【文献】Vasireddy, V. et al. (2013) PLoS ONE 8: e61396;
【文献】Black, A. et al. (2014) J. Gene Med. 16: 122-130
【文献】Seabra, M.C. et al. (1995) J. Biol. Chem. 270: 24420-24427
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、驚くべきことに、Rab27aが最適なプレニル化アッセイ基質を提供するという通説的理解にもかかわらず、プレニル化反応の基質としてRab6aを使用することが、Rabエスコートタンパク質1(REP1)の活性を測定するための、より感度の高い方法を提供することを見出した。Rab6aは、プレニル化を検出するアッセイにおいて高感度をもたらすだけでなく、有益なシグナル対ノイズ比、シグナルのより望ましいダイナミックレンジ、および、より優れた一貫性も提供する。
【0010】
さらに、本発明者らは、Rab6aに基づくアッセイの高感度化を利用して、REP1をコードするベクター、具体的には、クリニックでの使用に適したAAV遺伝子治療ベクターなどの、AAV遺伝子治療ベクターの活性を正確かつ確実に測定することができることを実証した。
【0011】
したがって、ある態様において、本発明は、Rabエスコートタンパク質1(REP1)の活性を測定するための方法を提供するが、その方法は次のステップを含む:
(a)REP1を含有する試料を用意するステップ;
(b)ステップ(a)の試料をRab6a、Rabゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(Rab GGTase)および脂質供与体基質と接触させるステップ;ならびに
(c)脂質付加されたRab6a生成物を検出するステップ。
【0012】
たとえば、本発明の方法は、標的細胞へのREP1の送達に適した、またはベクターストック(たとえば医薬品ストック)の品質管理分析に適した、遺伝子治療ベクターを検査するためのものとすることができる。
【0013】
遺伝子治療ベクターの検証は、クリニックでの遺伝子治療の安全で有効な実施のために必須である。分析および品質管理ステップのために、対照実験または参照レベルとの比較は、既知の、または認定された標準と比較した遺伝子治療ベクターもしくはREP1の活性の指標を提供することができる(たとえば、既知の、または認定された標準よりも優れているかまたは悪い)。これを用いて、遺伝子治療ベクターストックが特定の標的および規制に合致するかどうかを検証することができる。
【0014】
ある実施形態において、一次参照標準(主要参照標準)として定義されるREP1、またはREP1をコードするAAVベクターの試料と比較を行う。本発明の方法は、たとえば、試験試料および一次参照標準に関して並行して実施することができる。試験試料の効力および/または挙動は、たとえば、一次参照標準と比較して定義することができる。
【0015】
言い換えれば、本発明の方法は、たとえば、遺伝子治療ベクター、好ましくはREP1をコードするヌクレオチド配列を含有するAAVベクター粒子を、品質管理分析し、(たとえばコロデレミアの治療に)有効であると検証するために使用することができ、好ましくは、本発明の方法によって測定されるベクターのアウトプット活性または有効性が、(たとえば対照実験または参照レベルと比較して)閾値活性を超えるか、または指定の目標範囲内であれば、それはそのベクターが遺伝子治療目的に適していることを示す。
【0016】
したがって、別の態様において、本発明の方法は、Rabエスコートタンパク質1(REP1)をコードする遺伝子治療ベクター(好ましくはAAVベクター)の品質管理分析のためのものである。
【0017】
もう一つの態様において、本発明は、Rabエスコートタンパク質1(REPI)をコードする遺伝子治療ベクター(好ましくはAAVベクター)の品質管理分析の方法を提供するが、その方法は次のステップを含む:
(a) ベクターにより細胞に形質導入し、その細胞をREP1の発現に適した条件下で培養し、細胞を溶解してREP1を含有する試料を用意するステップ;
(b) ステップ(a)の試料をRab6a、Rabゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(Rab GGTase)および脂質供与体基質と接触させるステップ;ならびに
(c) 脂質付加されたRab6a生成物を検出するステップ。
【0018】
したがって、本方法は、ステップ(a)~(c)を含む多数の実験の実行を含む可能性があり、そうした実験におけるREP1含有試料に関連するパラメータはさまざまに変化するが、他のパラメータ(たとえば、Rab6a、Rab GGTaseおよび脂質供与体基質に関連するパラメータ)は一定に保たれる。そのようなパラメーターとしては、たとえば、関連タンパク質(たとえばREP1)のアミノ酸配列、細胞内でREP1を発現するために使用される、ベクター中に含まれるREP1コードヌクレオチド配列、REP1をコードするヌクレオチド配列を細胞に送達するために使用されるベクターの種類(たとえば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター型などのウイルスベクター型)、REP1の濃度、および/またはREP1コードヌクレオチド配列を細胞に送達するために使用されるベクターの感染多重度(MOI)などが挙げられる。好ましい実施形態において、本方法は、(たとえば用量反応曲線を作成するために)REP1をコードするヌクレオチド配列を細胞に送達するために使用されるベクターについて、さまざまなMOIで、ステップ(a)~(c)を含む多くの実験を行うことを含んでいる。
【0019】
ある実施形態において、脂質付加されたRab6a生成物の検出は、脂質付加Rab6a生成物の量を定量することを含む。好ましい実施形態において、脂質付加Rab6a生成物の検出は、対照または参照レベルと比較して脂質付加Rab6a生成物の量を定量することを含む。定量は、たとえば、一次参照標準として定義されているREP1、またはREP1をコードするAAVベクターのサンプルと比較して行うことができる。本発明の方法は、たとえば、試験試料および一次参照標準について並行して実施することができる。試験試料の効力および/または挙動は、たとえば、一次参照標準と比較して定義することができる。
【0020】
ある実施形態において、本方法は、脂質付加されたRab6a生成物(たとえば、ゲラニルゲラニル化またはビオチン-ゲラニル化などの、プレニル化されたRab6a)の量を、対照実験、たとえばREP1の既知のまたは標準試料を用いた実験から測定された量と比較する追加ステップを含む。
【0021】
別の実施形態において、本方法は、脂質付加されたRab6a生成物(たとえば、ゲラニルゲラニル化またはビオチン-ゲラニル化などの、プレニル化されたRab6a)の量を、参照レベル(基準レベル)と比較する追加のステップを含む。
【0022】
ある実施形態において、REP1を含有する試料は、REP1を発現するように遺伝子操作された細胞に由来する。好ましくは、REP1を含有する試料は、REP1を発現するように遺伝子操作された細胞の溶解物である。好ましくは、REP1を発現するように遺伝子操作された細胞を提供するために、REP1をコードするヌクレオチド配列を含有するベクターにより細胞をトランスフェクトするか、または形質導入する。好ましくは、ベクターはウイルスベクターである。
【0023】
ある実施形態において、REP1は、REP1をコードするヌクレオチド配列を含有するウイルスベクターを用いて発現される。
【0024】
ある実施形態において、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。好ましくは、ウイルスベクターは、ウイルスベクター粒子の形をとる。
【0025】
AAVベクターは、いかなる血清型であってもよい(たとえば、任意のAAV血清型ゲノムおよび/またはカプシドタンパク質を含む)。好ましくは、ベクターは、眼の細胞に感染するか、または形質導入する、能力を有する。
【0026】
ある実施形態において、AAVベクターは、AAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11ゲノムを含む。別の実施形態において、AAVベクターは、AAV血清型2、4、5または8ゲノムを含む。好ましくは、AAVベクターはAAV血清型2ゲノムを含む。
【0027】
ある実施形態において、AAVベクター粒子は、AAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11のカプシドタンパク質を含む。別の実施形態において、AAVベクター粒子は、AAV血清型2、4、5または8のカプシドタンパク質を含む。AAV血清型8カプシドタンパク質は、たとえば、AAV8 / Y733F変異型カプシドタンパク質であってもよい。好ましくは、AAVベクター粒子は、AAV血清型2カプシドタンパク質を含む。
【0028】
ある実施形態において、AAVベクター粒子は、AAV2ゲノムおよびAAV2カプシドタンパク質(AAV2/2);AAV2ゲノムおよびAAV5カプシドタンパク質(AAV2/5);またはAAV2ゲノムおよびAAV8カプシドタンパク質(AAV2/8)を含有する。好ましくは、AAVベクター粒子は、AAV2ゲノムおよびAAV2カプシドタンパク質(AAV2/2)を含有する。
【0029】
AAVベクター粒子は、1つもしくは複数の天然に存在するAAVの、キメラ、シャッフル型またはカプシド修飾型であってもよい。詳細には、AAVベクター粒子は、同一ベクター内に異なる血清型、クレード、クローンまたは単離株のAAVに由来するカプシドタンパク質配列を含有することができる(すなわち、シュードタイプベクター)。したがって、ある実施形態において、AAVベクターは、シュードタイプAAVベクター粒子の形をとる。
【0030】
ある実施形態において、REP1はヒトREP1である。
【0031】
ある実施形態において、REP1は、配列番号5に対して、少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、このアミノ酸配列は配列番号5によって表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持していることが好ましい。
【0032】
ある実施形態において、REP1をコードするヌクレオチド配列は、配列番号6または7に対して、少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含有し、このヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質は、配列番号5によって表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持していることが好ましい。
【0033】
ある実施形態において、REP1をコードするヌクレオチド配列は、配列番号5に対して、少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95% 、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含有し、このアミノ酸配列は配列番号5によって表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持していることが好ましい。
【0034】
ある実施形態において、Rab6aおよび/またはRab GGTaseは実質的に純粋である。
【0035】
ある実施形態において、Rab6aは、配列番号1に対して、少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含有するが、このアミノ酸配列は、配列番号1によって表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持していることが好ましい。
【0036】
ある実施形態において、Rab GGTaseは、配列番号3もしくは8、好ましくは配列番号8に対して、少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含有するが、このアミノ酸配列は、配列番号8によって表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持していることが好ましい;ならびに/または、Rab GGTaseは、配列番号4もしくは9、好ましくは配列番号9に対して、少なくとも70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含有するが、このアミノ酸配列は、配列番号9によって表されるタンパク質の天然の機能を実質的に保持していることが好ましい。
【0037】
別の実施形態において、Rab6a:Rab GGTaseのモル比は、約1:0.25~3、1:0.3~2.9、1:0.35~2.8、1:0.4~2.7、1:0.45~2.6、または1:0.5~2.5、好ましくは約1:0.5~2.5である。
【0038】
ある実施形態において、Rab6a:Rab GGTaseのモル比は、約1:2~3、1:2.1~2.9、1:2.2~2.8、1:2.3~2.7、または1:2.4~2.6、好ましくは約1:2.4~2.6である。ある実施形態において、Rab6a:Rab GGTaseのモル比は、約1:2、1:2.1、1:2.2、1:2.3、1:2.4、1:2.5、1:2.6、1:2.7、1:2.8、1:2.9、または1:3、好ましくは約1:2.5である。
【0039】
別の実施形態において、Rab6a:Rab GGTaseのモル比は、約1:0.25~0.75、1:0.3~0.7、1:0.35~0.65、1:0.4~0.6または1:0.45~0.55、好ましくは約1:0.4~0.6である。ある実施形態において、Rab6a:RabGGTaseのモル比は、約1:0.25、1:0.3、1:0.35、1:0.4、1:0.45、1:0.5、1:0.55、1:0.6、1:0.65、1:0.7または1:0.75、好ましくは約1:0.5である。
【0040】
ある実施形態において、脂質供与体基質は、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)またはその類似体である。好ましくは、脂質供与体基質は、検出可能なマーカーで標識される。たとえば、脂質供与体基質は、同位体標識されていてもよく(たとえば、脂質供与体基質は3Hを含有することができる)、または蛍光基、エピトープまたはビオチン部分を含有することができる。
【0041】
好ましい実施形態において、脂質供与体基質は、ビオチン-ゲラニルピロリン酸(BGPP)である。
【0042】
ある実施形態において、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロット分析またはオートラジオグラフィーを使用して脂質付加Rab6a生成物を検出する。好ましい実施形態において、脂質付加されたRab6a生成物はELISAを用いて検出される。ELISAは、たとえば、サンドイッチELISAとすることができる。
【0043】
好ましい実施形態において、ビオチン標識脂質付加Rab6a生成物は、ビオチンに特異的な検出試薬、たとえばストレプトアビジンを用いて検出される。好ましくは、ビオチン標識脂質付加Rab6a生成物は、ビオチンに特異的な検出試薬、たとえばストレプトアビジン(たとえば、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート)を用いてウエスタンブロット分析により検出される。より好ましくは、ビオチン標識された脂質付加Rab6a生成物は、ビオチンに特異的な検出試薬、たとえばストレプトアビジンを用いてELISAにより検出される。
【0044】
ある実施形態において、本方法は、コロイデレミアの治療に使用するためのREP1をコードする遺伝子治療ベクターの活性を測定(決定)するためのものである。
【0045】
別の態様において、本発明は、Rabエスコートタンパク質1(REP1)の活性を測定するためのRab6aの使用を提供する。
【0046】
REP1の活性、Rab6a、Rab GGTase、脂質供与体基質およびREP1を測定する方法は、本明細書に記載の通りとすることができる。
【0047】
別の態様において、本発明は、Rabエスコートタンパク質1(REP1)をコードするヌクレオチド配列を含有するベクターの効力(有効性)を判定するための方法を提供するが、その方法は以下のステップを含む:
(a)REP1を含有する試料を用意するステップであって、そのREP1が、REP1をコードするヌクレオチド配列を含有するベクターを用いて発現される前記ステップ;
(b)ステップ(a)の試料を、Rab6a、Rabゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(Rab GGTase)および脂質供与体基質と接触させるステップ;ならびに
(c)脂質付加されたRab6a生成物を検出するステップ。
【0048】
別の態様において、本発明は、Rabエスコートタンパク質1(REP1)をコードするヌクレオチド配列を含有するベクターの効力を判定するためのRab6aの使用を提供する。
【0049】
好ましくは、この方法および使用は、コロイデレミアの治療に使用するためのベクターの効力を判定するためのものである。
【0050】
ベクター、REP1、Rab6a、Rab GGTase、脂質供与体基質、脂質付加Rab6a生成物、検出方法、ならびに方法および使用の他の特徴は、本明細書に記載の通りとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】非形質導入細胞、およびAAV-GFPまたはAAV-REP1のいずれかにより形質導入された細胞(MOI = 10000gp /細胞)を使用し、基質としてRab27aを用いたin vitroプレニル化反応後の、取り込まれたビオチン化脂質供与体のウエスタンブロット(WB)分析。 実験には、独立して調製された3セットの溶解物を要した。10μgの溶解物を用いて総容量12.5μlでプレニル化反応をセットアップした。陽性対照に2μMの魚類REP1を添加した。検出時間は2分とした。 (A)細胞溶解物中のヒトREP1レベルのWB分析(1:1000)。非形質導入細胞(#4、#9および#12)は、REP1の内因性レベルを示す。AAV-GFPで形質導入された細胞(#5、#10および#3)は、形質導入されていない細胞と同様のREP1の内因性レベルを示す。AAV-REP1で形質導入された細胞(#6、#11および#14)は、形質導入されていない細胞およびAAV-GFP形質導入細胞と比較してREP1レベルの増加を示す。陽性対照(+ ve)は、内因性REP1レベルを示す。 (B)ローディングコントロールとしてのβアクチンのWB分析(1:15000)。βアクチンのレベルは、分析したすべてのサンプルにおいて同様である。 (C)Rab27a中に取り込まれたビオチン化脂質供与体のWB分析(1:10000)。非形質導入細胞およびAAV-GFP形質導入細胞は、Rab27aにおいてビオチンの検出可能な取り込みを示さない。AAV-REP1で形質導入された細胞は、ある程度のビオチンがRab27aに取り込まれていることを示している(#6、#11および#14)。陽性対照は、魚類REP1活性の結果として、すべての中で最も強いバンドを示す。(D)Image Studio Liteソフトウェアを用いた(C)のWB分析の半定量化。
図2】非形質導入細胞、およびAAV-GFPまたはAAV-REP1のいずれかにより形質導入された細胞(MOI = 10000gp /細胞)を使用し、基質としてRab27aを用いたin vitroプレニル化反応後の、取り込まれたビオチン化脂質供与体のウエスタンブロット(WB)分析。 実験は、独立して調製された2セットの溶解物を要した。プレニル化反応は、30μgの溶解物を用いて、総量22μlでセットアップした。陽性対照に1μMの魚類REP1を添加した。検出時間は2分とした。 (A)細胞溶解物中のヒトREP1レベルのWB分析(1:1000)。未形質導入細胞(#9および#12)は、REP1の内因性レベルを示す。AAV-GFPで形質導入された細胞(#10および#13)は、形質導入されていない細胞と同様のREP1の内因性レベルを示す。AAV-REP1で形質導入された細胞(#11および#14)は、形質導入されていない細胞およびAAV-GFP形質導入細胞と比較してREP1レベルの増加を示す。陽性対照(+ ve)は、内因性REP1レベルを示す。 (B)ローディングコントロールとしてのβアクチンのWB分析(1:15000)。βアクチンのレベルは、分析したすべてのサンプルにおいて同様である。 (C)Rab27a中に取り込まれたビオチン化脂質供与体のWB分析(1:10000)。非形質導入細胞およびAAV-GFP形質導入細胞は、Rab27aにおいてビオチンの検出可能な取り込みを示さない。AAV-REP1で形質導入された細胞は、ある程度のビオチンがRab27aに取り込まれていることを示している(#11および#14)。陽性対照は、魚類REP1活性の結果として、すべての中で最も強いバンドを示す。 (D)Image Studio Liteソフトウェアを用いた(C)のWB分析の半定量化。
図3】非形質導入細胞、およびAAV-GFPまたはAAV-REP1のいずれかにより形質導入された細胞(MOI = 10000gp /細胞)を使用し、基質としてRab6aを用いたin vitroプレニル化反応後の、取り込まれたビオチン化脂質供与体のウェスタンブロット(WB)分析。 この実験は、独立して調製された2セットの溶解物を要した。プレニル化反応は、20μlの総量で20μgの溶解物を用いてセットアップした。陽性対照に1μMの魚類REP1を添加した。検出時間は2分とした。 (A)細胞溶解物中のヒトREP1レベルのWB分析(1:1000)。未形質導入細胞(#9および#12)は、REP1の内因性レベルを示す。AAV-GFPで形質導入された細胞(#10および#13)は、形質導入されていない細胞と同様のREP1の内因性レベルを示す。AAV-REP1で形質導入された細胞(#11および#14)は、形質導入されていない細胞およびAAV-GFP形質導入細胞と比較してREP1レベルの増加を示す。陽性対照(+ ve)は、内因性REP1レベルを示す。 (B)ローディングコントロールとしてのβアクチンのWB分析(1:15000)。βアクチンのレベルは、分析したすべてのサンプルにおいて同様である。 (C)Rab6a中に取り込まれたビオチン化脂質供与体のWB分析(1:10000)。非形質導入細胞およびAAV-GFP形質導入細胞は、Rab6aにおいてビオチンの取り込みが非常に低い。AAV-REP1で形質導入された細胞は、ビオチンがRab6aに取り込まれていることを示す(#11および#14)。陽性対照は、魚類REP1活性の結果として、すべての中で最も強いバンドを示す。 (D)Image Studio Liteソフトウェアを用いた(C)のWB分析の半定量化。
図4】非形質導入細胞、およびAAV-REP1により形質導入された細胞(MOI = 250、1000、5000、10000および20000gp /細胞)を使用し、基質としてRab6aを用いたin vitroプレニル化反応後の、取り込まれたビオチン化脂質供与体のウェスタンブロット(WB)分析。 プレニル化反応は、20μgの溶解物を用いて総量15μlでセットアップした。陽性対照に0.5μMの魚類REP1を添加した。検出時間は2分とした。 (A)細胞溶解物中のヒトREP1レベルのWB分析(1:2500)。非形質導入細胞は、REP1の内因性レベルを示す。AAV-REP1で形質導入された細胞は、使用されるMOIと直接相関するREP1レベルの増加を示す。陽性対照(+ ve)は、内因性REP1レベルを示す。 (B)ローディングコントロールとしてのβアクチンのWB分析(1:50000)。βアクチンのレベルは、分析したすべてのサンプルにおいて同様である。 (C)Rab6a中に取り込まれたビオチン化脂質供与体のWB分析(1:10000)。非形質導入細胞は、Rab6aにおける非常に低いビオチン取り込みを示す。AAV-REP1で形質導入された細胞は、さらに多くのビオチンがRab6aに取り込まれていることを示す。陽性対照は、魚類REP1活性の結果として、すべての中で最も強いバンドを示す。 (D)Image Studio Liteソフトウェアを用いた(C)のWB分析の半定量化。
図5】非形質導入細胞、およびAAV-REP1により形質導入された細胞(MOI = 10000gp /細胞)を使用し、基質としてRab6aを用いたin vitroプレニル化反応後の、取り込まれたビオチン化脂質供与体のウェスタンブロット(WB)分析。 プレニル化反応は、20μgの溶解物を用いて総量15μlでセットアップした。陽性対照に0.5μMの魚類REP1を添加した。検出時間はREP1 /アクチンで2分、ビオチンで30秒とした。 (A)細胞溶解物中のヒトREP1レベルのWB分析(1:2500)。非形質導入細胞は、REP1の内因性レベルを示す。AAV-REP1で形質導入された細胞は、REP1レベルの増加を示す。陽性対照(+ ve)は、内因性REP1レベルを示す。 (B)ローディングコントロールとしてのβアクチンのWB分析(1:50000)。βアクチンのレベルは、分析したすべてのサンプルにおいて同様である。 (C)Rab6a中に取り込まれたビオチン化脂質供与体のWB分析(1:10000)。非形質導入細胞は、Rab6aにおける非常に低いビオチン取り込みを示す。AAV-REP1で形質導入された細胞は、Rab6aへのビオチン取り込みの増加を示す。陽性対照は、魚類REP1活性の結果として、すべての中で最も強いバンドを示す。 (D)Image Studio Liteソフトウェアを用いた(C)のWB分析の半定量化。
図6】非形質導入ARPE-19細胞、およびAAV-REP1で形質導入されたARPE-19細胞におけるin vitroプレニル化反応後の、取り込まれたビオチン化脂質供与体のウエスタンブロット(WB)分析。 プレニル化反応は、15μlの溶解物を用いて総量45μlでセットアップした。陽性対照に0.1μMの魚類REP1を添加した。REP1 /アクチンの検出時間:2分;ビオチン:30秒。 実験は以下の細胞を用いて並行して行った:(a)非形質導入細胞(#86および#87);ならびに(b)細胞+ AAV-REP1 MOI 10,000(#90および#91) - R&Dグレードベクター。 (A)細胞溶解物中のヒトREP1レベルのWB分析(1:2,500)。非形質導入細胞は、REP1の内因性レベルを示す。AAV-REP1で形質導入された細胞は、REP1レベルの増加を示す。陽性対照(+ ve)は、内因性REP1レベルを示す。 (B)ローディングコントロールとしてのβアクチンのWB分析(1:50,000)。βアクチンのレベルは、分析したすべてのサンプルにおいて同様である。 (C)Rab6a中に取り込まれたビオチン化脂質供与体のWB分析(1:10,000)。非形質導入細胞は、Rab6aにおけるビオチンの取り込みが非常に低い。AAV-REP1で形質導入された細胞は、Rab6aへのビオチン取り込みの増加を示す。ポジティブコントロールは、魚類REP1活性の結果として、すべての中で最も強いバンドを示す。 (D)Image Studio Liteソフトウェアを用いた(C)のWB分析の半定量化。
図7】非形質導入HT1080細胞、およびAAV-REP1で形質導入されたHT1080細胞における、in vitroプレニル化反応後の、取り込まれたビオチン化脂質供与体のウェスタンブロット(WB)分析。 20μlの溶解物を用いて総容量20μlとしてプレニル化反応をセットアップした。陽性対照に0.1μMの魚類REP1を添加した。REP1 /アクチンの検出時間:2分;ビオチン:30秒。 実験は以下の細胞を用いて並行して行った:(a)非形質導入細胞(#56および#57);(b)細胞+ AAV-REP1 MOI 10,000(#60および#61) - R&Dグレードベクター;ならびに(c)細胞+ AAV-REP1 MOI 10,000(#64および#65) - 臨床グレードのベクター。 (A)細胞溶解物中のヒトREP1レベルのWB分析(1:2,500)。非形質導入細胞は、REP1の内因性レベルを示す。AAV-REP1で形質導入された細胞は、REP1レベルの増加を示す。陽性対照(+ ve)は、内因性REP1レベルを示す。(B)ローディングコントロールとしてのβアクチンのWB分析(1:50,000)。βアクチンのレベルは、分析したすべてのサンプルにおいて同様である。(C)Rab6a中に取り込まれたビオチン化脂質供与体のWB分析(1:10,000)。非形質導入細胞は、Rab6aにおけるビオチン取り込みのベースラインレベルを示す;AAV-REP1で形質導入された細胞は、Rab6aへのビオチン取り込みの増加を示す。(D)Image Studio Liteソフトウェアを用いた(C)のWB分析の半定量化。
図8-1】非形質導入細胞、ならびにAAV-REP1(MOI = 250、1000、5000、10000および20000gp /細胞)で形質導入された細胞において、Rab6aおよびRab27a基質を比較するin vitroプレニル化反応後の、取り込まれたビオチン化脂質供与体のウェスタンブロット(WB)。 プレニル化反応は、15μlの総容量で20μgの溶解物、ならびに2つの異なる基質:Rab27a(左側のレーンおよびプロット;赤色)およびRab6a(右側のレーンおよびプロット;青色)を用いてセットアップした。陽性対照(各基質に1つずつ)に0.1μMの魚類REP1を添加した。検出時間:2分。(A)細胞溶解物中のヒトREP1レベルのWB分析(1:2,500)。非形質導入細胞は、REP1の内因性レベルを示す。AAV-REP1で形質導入された細胞は、使用されるMOIと直接相関するREP1レベルの増加を示す。陽性対照(+ ve)は、内因性REP1レベルを示す。(B)ローディングコントロールとしてのβアクチンのWB分析(1:50,000)。βアクチンのレベルは、分析したすべてのサンプルにおいて同様である。(C)Rab27aおよびRab6aに取り込まれたビオチン化脂質供与体のWB分析。非形質導入細胞はビオチンのRabタンパク質への取り込みが非常に低いことを示すが、これはMOIが増加するにつれて増加する。陽性対照は、魚類REP1活性の結果として、強いビオチン取り込みを示す。(D)Image Studio Liteソフトウェアを用いた(C)のWB分析の半定量化。(E)の4つのプロットに示すように、データはPrismソフトウェアを用いてプロットした。
図8-2】(E)使用されたMOIの全域にわたるビオチン化基質のバンド密度値(上の2つのプロット)ならびに使用されたMOIの全域にわたるビオチン化基質とREP1との割合(下の2つのプロット)。
図9-1】非形質導入細胞において種々のプレニル化反応条件を比較するin vitroプレニル化反応後の、取り込まれたビオチン化脂質供与体のウェスタンブロット(WB)分析。 プレニル化反応は、総量15μLとして20μgの溶解物、ならびに2つの異なる基質:Rab27a(赤色)およびRab6a(青色)を用いてセットアップした。陽性対照(各基質に1つずつ)に、組換えヒトREP1を添加した。検出時間:2分。 (A)Rab27aおよびRab6aに取り込まれたビオチン化脂質供与体のWB分析。ビオチン取り込みのレベルは、反応における全タンパク質の量に正比例する。陽性対照は、魚類REP1活性の結果として、強いビオチン取り込みを示す。 (B)ローディングコントロールとしてのβアクチンのWB分析(1:50,000)。βアクチンのレベルは、反応に使用される全細胞溶解物の量と符合し、サンプル間で類似している。 (C)細胞溶解物中のヒトREP1レベルのWB分析(1:2,500)。非形質導入細胞は、REP1の内因性レベルを示す。陽性対照(+ ve)は、より高密度のREP1を示す。
図9-2】(D)Image Studio Liteソフトウェアを用いた(A)のWB分析の半定量。Prismソフトウェアを用いてデータをプロットした。強調された値は、基質間でより高い差異が検出された条件についてのものである。
図10】AAV-REP1形質導入細胞におけるプレニル化の基質としてのRab27aとRab6aとの比較。
【発明を実施するための形態】
【0052】
発明の詳細な説明
本発明のさまざまな好ましい特徴および実施形態を、これより非限定的な実施例によって説明する。
【0053】
本発明の実施は、特に明記しない限り、化学、生化学、分子生物学、微生物学および免疫学の従来技術を使用するが、それらは当業者の能力の範囲内である。このような技術は文献に説明されている。たとえば、Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F.M. et al. (1995 and periodic supplements) Current Protocols in Molecular Biology, Ch. 9, 13 and 16, John Wiley & Sons; Roe, B., Crabtree, J. and Kahn, A. (1996) DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons; Polak, J.M. and McGee, J.O'D. (1990) In Situ Hybridization: Principles and Practice, Oxford University Press; Gait, M.J. (1984) Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; and Lilley, D.M. and Dahlberg, J.E. (1992) Methods in Enzymology: DNA Structures Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA, Academic Pressを参照されたい。これらの一般的なテキストは、それぞれ参考として本明細書に組み入れられる。
【0054】
プレニル化
イソプレノイド部分の付加によるタンパク質の脂質付加(脂質化)は、哺乳動物プロテオームの最大2%に影響を及ぼす翻訳後修飾である。そのような脂質付加は、標的タンパク質と細胞膜との可逆的結合を可能にし、タンパク質-タンパク質相互作用を調節することもできる。
【0055】
好ましくは、本明細書で言及される脂質付加はプレニル化であり、したがって、脂質供与体基質および脂質付加Rab6a生成物はそれぞれプレニル供与体基質およびプレニル化Rab6a生成物である。
【0056】
プレニル化は特定の形の翻訳後修飾であって、そのゲラニルゲラニルまたはファルネシル部分は(またはいずれの類似体も)、チオエーテル結合を介してタンパク質の1つまたは2つのC末端システイン残基に結合する。
【0057】
好ましくは、プレニル化は、ゲラニルゲラニル部分またはその類似体(たとえば、ビオチン-ゲラニル部分)を標的タンパク質(たとえば、Rab6a)に付加することである。
【0058】
タンパク質に結合したゲラニルゲラニル部分(タンパク質は網掛けの円で模式的に示される)は、以下のとおりである。
【0059】
【化1】
タンパク質に結合したファルネシル部分(タンパク質は網掛けの円で模式的に示される)は、以下のとおりである。
【0060】
【化2】
【0061】
「類似体(アナログ)」という用語は、脂質(たとえば、ゲラニルゲラニルまたはファルネシル)部分または脂質供与体基質に関係して本明細書で使用され、検出などの特定の目的に適した官能基を含むように修飾された化合物を指す。類似体は、修飾によって(本発明の活性アッセイの目的にむけて)実質的に妨げられない形で、プレニル化機構(すなわち、REP1およびRab GGTase)によって、基質のタンパク質に付加することができる。
【0062】
したがって、上記部分の類似体には、特定の目的のために人工的に作製された部分(たとえば、アッセイでの検出に適した標識部分)が含まれる。具体的には、Nguyenら(Nguyen, U.T. et al. (2009) Nat. Chem. Biol. 5: 227-235)は、in vitroタンパク質プレニル化反応において検出可能な、以下のビオチン-ゲラニル部分を開発した(ビオチン-ゲラニル部分がタンパク質に結合していることが示されており、タンパク質は網掛けの円で模式的に示される)。
【0063】
【化3】
【0064】
Rab6a
Rab6a(Ras関連タンパク質Rab-6A)は、哺乳類のRab GTPaseファミリーのメンバーであり、それ自体GTPaseのRas様スーパーファミリーの中で最大のものである。
【0065】
Rab GTPase(Rabタンパク質としても知られている)は、末梢膜タンパク質であり、小胞形成、アクチンおよびチューブリンネットワークに沿った小胞の移動、ならびに膜融合を含む、膜輸送の調節に関与する。Rab6aの主な機能は、ゴルジ複合体から小胞体へのタンパク質輸送の調節であると理解される。
【0066】
Rab GTPaseは、典型的には、2つのC末端システイン残基に共有結合したプレニル基(特に、ゲラニルゲラニル基)を介して細胞膜に固定される。
【0067】
Rab GTPaseは、2つのコンフォメーション、すなわち不活性のGDP結合型;および活性のあるGTP結合型を示す。GDP-からGTP-結合型への変換は、GDP / GTP交換因子(GEF)によって触媒され、したがってこの因子はRab GTPaseを活性化する。逆に、Rab GTPaseによるGTP加水分解は、GTPase活性化タンパク質(GAP)によって強めることが可能であり、したがってGAPはRab不活性化をもたらす。
【0068】
ある実施形態において、Rab6aはヒトRab6aである。
【0069】
Rab6aのアミノ酸配列の一例は、NCBIアクセッション番号NP_942599.1の下に寄託された配列である。
【0070】
Rab6aのアミノ酸配列の一例は以下のとおりである。
(配列番号1)
【0071】
Rab6aをコードするヌクレオチド配列の一例は、NCBIアクセッション番号NM_198896.1の下に寄託された配列である。
【0072】
Rab6aをコードするヌクレオチド配列の一例は以下のとおりである。
【0073】
(配列番号2)
【0074】
Rabゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(Rab GGTase)
Rabゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(Rab GGTase;ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼIIとしても知られる)は、もっぱらRabファミリーのGTPaseをプレニル化するタンパク質プレニルトランスフェラーゼである。
【0075】
Rab GGTaseは、通常、天然では、Rab GTPaseのC末端システイン残基への2つのゲラニルゲラニル基の転移を触媒する。それぞれのゲラニルゲラニル基は、システイン残基とのチオエーテル結合を介してRab GTPアーゼに結合する。
【0076】
Rab GGTaseは、さまざまな誘導体化ホスホイソプレノイドを結合させる能力を有することが示されており、Rab GTPase基質(例えば、Rab6a)へのそれらの付加を触媒することができる。たとえば、Nguyen ら(Nguyen, U.T. et al. (2009) Nat. Chem. Biol. 5: 227-235)は、ビオチン-ゲラニル部分のRab GTPaseへの付加の成功を実証した。
【0077】
Rab GGTaseは、αサブユニットおよびβサブユニットからなるヘテロ二量体酵素である。
【0078】
ある実施形態において、Rab GGTaseはヒトRab GGTaseである。好ましい実施形態において、Rab GGTaseはラットRab GGTaseである。
【0079】
Rab GGTaseαサブユニットのアミノ酸配列の例は、NCBIアクセッション番号NP_004572.3およびNP_113842.1の下に寄託された配列である。
【0080】
Rab GGTアーゼαサブユニットのアミノ酸配列の例は下記のとおりである。
(配列番号3)
ならびに
(配列番号8)
【0081】
Rab GGTaseβサブユニットのアミノ酸配列の例は、NCBIアクセッション番号NP_004573.2およびNP_619715.1の下に寄託された配列である。
【0082】
Rab GGTaseβサブユニットのアミノ酸配列の例は以下のとおりである。
(配列番号4)
ならびに
(配列番号9)
【0083】
脂質供与体基質
Rab GTPaseに脂質部分を付加するために、Rab GGTaseは、基質として、脂質(たとえば、ゲラニゲラニルまたはビオチン-ゲラニル)供与体基質の形の脂質部分を使用することができる。これらは、典型的には脂質部分のピロリン酸誘導体である。
【0084】
たとえば、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)またはビオチン-ゲラニルピロリン酸(BGPP)は、ゲラニゲラニルまたはビオチン-ゲラニル部分を基質であるRab GTPアーゼにそれぞれ転移させるRab GGTaseによる、脂質供与体基質として使用することができる。
【0085】
ゲラニルゲラニルピロリン酸は、次の構造を有する:
【化4】
ビオチン-ゲラニルピロリン酸は、次の構造を有する:
【化5】
【0086】
Rabエスコートタンパク質1(REP1)
Rabエスコートタンパク質(REP)は、プレニル化されていないRab GTPaseをRab GGTaseに提示し、プレニル化Rab GTPaseを標的の膜に運ぶ機能を果たす。
【0087】
Rab GTPaseは、Rab GGTasesによって認識されるべきプレニル化部位にコンセンサス配列を含まない。しかしながら、基質の認識はREP1を介して行われ、REP1は、保存領域を介してRab GTPアーゼに結合した後、プレニル化のための基質をRab GGTaseに提示する。
【0088】
プレニル化されると、脂質アンカーはRab GTPアーゼを不溶性にする。したがって、REPがゲラニゲラニル基に結合して可溶化し、標的細胞膜へのRab GTPアーゼの送達を助けることが必要である。
【0089】
REP1は、Rabタンパク質ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ成分Aとしても知られている。さらに、REP1をコードする遺伝子は、CHM遺伝子としても知られている。
【0090】
ある実施形態において、REP1はヒトREP1である。
【0091】
REP1のアミノ酸配列の一例は以下のとおりである:
(配列番号5)
【0092】
REP1をコードするヌクレオチド配列の一例は以下のとおりである:
(配列番号6)
【0093】
REP1をコードするヌクレオチド配列の他の例は以下のとおりである:
(配列番号7)
【0094】
REP1の変異体の例はさらに、国際公開第2012/114090号に記載されている(参考として本明細書に組み入れられる)。
【0095】
活性測定
ある態様において、本発明は、Rabエスコートタンパク質1(REP1)の活性を測定するための方法を提供するが、その方法は以下のステップを含む:
(a)REP1を含有する試料を用意するステップ;
(b)ステップ(a)の試料をRab6a、Rabゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(RabGGTase)および脂質供与体基質と接触させるステップ;ならびに
(c)脂質付加されたRab6a生成物を検出するステップ。
【0096】
別の態様において、本発明は、Rabエスコートタンパク質1(REP1)の活性を測定するためのRab6aの使用を提供する。
【0097】
少量の試薬が存在する場合(たとえば、遺伝子治療試薬の場合のように)特に重要である、低レベルの標的の検出を可能にするため、アッセイ感度は考慮すべき重要な要素である。しかしながら、アッセイシグナルのダイナミックレンジを最大にすることも重要であって、これは、たとえば、低感度または高感度をもたらす試薬と相関しない可能性がある。
【0098】
本発明の方法および使用は、Rab GTPaseのプレニル化に関与する他の試薬、たとえばRab GGTaseまたは脂質供与体基質の活性、またはプレニル化基質としてのRab GTPaseの活性をテストするのではなく、REP1の活性をテストするためのものである。たとえば、本発明の方法は、標的細胞へのREP1の送達、またはベクターストック(例えば、医薬品ストック)の品質管理分析に適した遺伝子治療ベクターをテストするためのものであってもよい。
【0099】
ある実施形態において、REP1を含有する試料は、REP1を発現するように遺伝子操作された細胞由来である。好ましくは、REP1を発現するように遺伝子操作された細胞を提供するために、REP1をコードするヌクレオチド配列を含有するベクターで細胞をトランスフェクションするか、または細胞に形質導入する。好ましくは、ベクターはウイルスベクターである。
【0100】
ある実施形態において、REP1は、REP1をコードするヌクレオチド配列を含有するウイルスベクターを用いて発現される。
【0101】
REP1を発現するように遺伝子操作された細胞(そのような細胞の集団であってもよい)は、REP1の遺伝子操作および発現に適した任意の細胞、たとえば、細胞株由来の細胞(たとえば、HEK293)とすることができる。細胞は、たとえば、ヒト細胞またはマウス細胞とすることができる。好ましくは、細胞はヒト細胞である。細胞は、たとえば、網膜色素上皮または視細胞のような網膜細胞であってもよい。ある実施形態において、細胞はHEK293細胞である。別の実施形態において、細胞はARPE-19細胞である。もう1つの実施形態では、細胞はHT1080細胞である。
【0102】
Rab6aおよび/またはRab GGTaseは、好ましくは、繰り返し行われる実験においてそれらのもたらす変化が最小限となるか、またはなくなるように、標準的な供給源から得られる。好ましくは、Rab6aおよび/またはRabGGTaseは、実質的に純粋である(すなわち、本発明の方法または使用を妨害するタンパク質夾雑物を実質的に含まない)。
【0103】
したがって、本方法または使用は、REP1を含有する試料に関するパラメータが変化する複数の実験(たとえば、ステップ(a)~(c)を含む)の実行を含むことができるが、他のパラメータ(たとえば、Rab6a、Rab GGTaseおよび脂質ドナー基質)は一定に保たれる。そのようなパラメーターには、たとえば、関連タンパク質(たとえば、REP1)のアミノ酸配列、細胞内でREP1を発現するために使用されるベクターに含まれるREP1コードヌクレオチド配列、REP1をコードするヌクレオチド配列を細胞に送達するために使用されるベクター型(たとえば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター型などのウイルスベクター型)、REP1の濃度、および/またはREP1をコードするヌクレオチド配列を細胞に送達するために使用されるベクターの感染多重度(MOI)などを含めることができる。
【0104】
「活性」という用語は、本明細書において、Rab GTPase(たとえば、Rab6a)の脂質付加を促進するREP1の能力を表すために使用される。REP1は脂質付加自体を触媒しないが、Rab GGTaseがその基質であるRab GTPaseの脂質付加を触媒するために必要である。したがって、REP1の活性は、一定の条件下で脂質付加されたRab GTPase(すなわち、Rab6a)の量を測定することによって測定することができる。
【0105】
「効力(有効性)」という用語は、本明細書において、REP1をコードするヌクレオチド配列を含有するベクターの効力に関して使用され、ベクターによってトランスフェクションまたは形質導入される細胞にREP1活性を提供するベクターの能力を指す。
【0106】
本明細書で使用する「脂質付加Rab6a生成物」という用語は、脂質部分が付加されたRab6aを指す。好ましくは、脂質付加Rab6a生成物は、ゲラニルゲラニル化Rab6aまたはビオチン-ゲラニル化Rab6aなどのプレニル化Rab6aである。
【0107】
好ましくは、脂質付加Rab6a生成物を検出するステップは、脂質付加Rab6a生成物の量の数量化をもたらす。
【0108】
脂質付加Rab6aの検出は、任意の適当な方法、たとえば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウエスタンブロット、オートラジオグラフィー(たとえば、トリチウム化脂質供与体基質の同位体標識を利用する)、クロマトグラフィー(たとえば、HPLCまたはFPLC)および/または質量分析法に基づく方法(たとえば、LC / MS)によって測定することができる。
【0109】
ある実施形態において、脂質付加Rab6a生成物は、ウェスタンブロットを用いて検出される。好ましい実施形態では、脂質付加されたRab6a生成物はELISAを用いて検出される。
【0110】
例として、プレニル化反応は、ビオチン-ゲラニルピロリン酸脂質供与体基質を用いて、本発明の方法に従って実施することができる。反応生成物は、たとえばストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートと直接インキュベートすることによって脂質付加Rab6a生成物(すなわち、ビオチン-ゲラニル化Rab6a)を検出することができる、ウエスタンブロット分析に供することができる。脂質付加されたRab6a(すなわち、ビオチン-ゲラニル化Rab6a)の定量は、得られたウエスタンブロットの濃度測定分析によって達成することが可能であり、これは適当な手段によって(たとえば、Image Studio Liteソフトウェア(LI-COR)を使用して)実施することができる。
【0111】
さらに他の例として、プレニル化反応は、ビオチン-ゲラニルピロリン酸脂質供与体基質を用いて、本発明の方法に従って実施することができる。この反応の生成物をELISA分析に供することができるが、このELISA分析ではRab6aを直接プレート上に固定化するか、またはプレートに付着した抗体を使用して(すなわち、サンドイッチELISA)固定化することができる;そして次に、脂質付加されたRab6a生成物(すなわち、ビオチン-ゲラニル化Rab6a)を、たとえば、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートとインキュベートすることによって検出することができる。脂質付加されたRab6a(すなわち、ビオチン-ゲラニル化Rab6a)の定量は、任意の適当な手段(たとえば、分光光度計、蛍光光度計または照度計を用いた検出)によって達成することができる。
【0112】
必要に応じて(たとえば対照のために)、反応に存在するREP1の量の検出、またはβアクチンの量の検出(たとえば、ローディング対照として)のような、追加の検出ステップを本発明の方法に組み入れることができる。
【0113】
ある実施形態において、本方法は、脂質付加されたRab6a生成物(たとえば、ゲラニルゲラニル化またはビオチン-ゲラニル化などのプレニル化Rab6a)の量を、既知の、または標準のREP1サンプルを用いた実験といった、対照実験から測定される量と比較する追加ステップを含む。
【0114】
別の実施形態において、本方法は、脂質付加Rab6a生成物(たとえば、ゲラニルゲラニル化またはビオチン-ゲラニル化などのプレニル化Rab6a)の量を参照レベルと比較する追加ステップを含む。
【0115】
このような対照実験または参照レベルとの比較は、既知の標準、または標準であると認められているものに対するREP1活性の評価基準を与えることができる(たとえば、既知標準、または標準であると認められているものよりも優れているかまたは悪い)。
【0116】
本発明の方法は、たとえば、コロイデレミアの治療のための遺伝子治療ベクター、好ましくはREP1コードヌクレオチド配列を含有するAAVベクター粒子、の品質管理分析に使用することができ、本発明の方法によって測定されたこのベクターのアウトプット活性または効力が閾値活性を上回るかまたは一定の標的範囲内にあること(たとえば、対照実験または参照レベルとの比較による)は、ベクターが遺伝子治療の目的に適していることを示す。
【0117】
プレニル化反応の条件(たとえば、本発明の方法のステップ(b)で生じる条件)は、それらがRab6aのプレニル化を実質的に妨害しない限り、特に限定されない。
【0118】
REP1を含有する試料は、任意の適当な形で調製することができるが、たとえば、試料は、約50mM HEPES、50mM NaCl、2mM MgCl2、1mM DTTおよびプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)を含有する約pH 7.5のプレニル化バッファー中で調製することができる。
【0119】
REP1を含有する試料は、たとえば、総タンパク質として約1~100、1~75、1~50、1~40、1~30、1~20または1~10μgを含有することができる。REP1を含有する試料は、たとえば、総タンパク質として約10~100、10~75、10~50、10~40、10~30または10~20μgを含有することができる。好ましくは、REP1を含有する試料は、総タンパク質として約10~30g、たとえば約10、15、20、25または30μgの総タンパク質を含有する。
【0120】
Rab6aは、たとえば、約1~25、1~20、1~15、1~10または1~5μM、好ましくは約1~5μMの濃度とすることができる。Rab6aは、たとえば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25μM、好ましくは約4μMの濃度とすることができる。
【0121】
Rab GGTaseは、たとえば、約1~25、1~20、1~15、1~10、1~5または1~2.5μM、好ましくは、約1~2.5μMの濃度とすることができる。Rab GGTaseは、たとえば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25μM、好ましくは約2μMの濃度とすることができる。
【0122】
脂質供与体基質(たとえば、ビオチン-ゲラニルピロリン酸(BGPP))は、たとえば、約1~25、1~20、1~15、1~10または1~5μM、好ましくは約1~5μMの濃度とすることができる。脂質供与体基質(たとえば、ビオチン-ゲラニルピロリン酸(BGPP))は、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25μM、好ましくは約4μMの濃度とすることができる。
【0123】
プレニル化反応は、任意の適当なバッファー中で行うことができるが、たとえば、反応は、約50mM HEPES、50mM NaCl、2mM MgCl2、1mM DTTおよびプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)を含有する約pH7.5のプレニル化バッファー中で行うことができる。
【0124】
プレニル化反応は、任意の適当な温度(たとえば、約37℃)で任意の適当な時間にわたって実施することができる。たとえば、プレニル化反応は、約1~10、1~7.5、1~5、1~2.5または1~2時間、好ましくは約1~2時間行うことができる。プレニル化反応は、たとえば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9または10時間、好ましくは約2時間行うことができる。
【0125】
コロイデレミア
コロイデレミアは、眼の脈絡膜、網膜色素上皮および視細胞の、まれなX連鎖性進行性変性である。罹患した男性の典型的な自然経過は、10代で夜盲症を発症し、続いて20代および30代で末梢視力を進行性に喪失し、40代で全盲に至る。女性キャリアは、軽度の症状、中でも特に夜盲症を有するが、時に、より重度の表現型を有することがある。
【0126】
コロイデレミアは、X染色体21q領域に位置するCHM遺伝子の変異によって引き起こされる。REP1と75%相同であるRabエスコートタンパク質2(REP2)は、体のほとんどの細胞においてREP1欠損を補う。しかしながら、いまだ明確でない理由により、REP2は、眼のREP1欠損を補うことができない。これは、標的Rab GTPaseの正常なプレニル化を維持するには不十分なRabエスコートタンパク質活性をもたらし、細胞機能不全および最終的には細胞死を引き起こし、主に外網膜および脈絡膜に影響を及ぼす。
【0127】
コロイデレミアは、眼の冒された細胞にREP1導入遺伝子の機能的なコピーを提供することによって、治療を成功させることができる(MacLaren、REら(2014)Lancet 383:1 129-37)。
【0128】
ベクター
ベクターとは、ある環境から別の環境へと、ある実体の移動を可能にするかまたは容易にするツールである。本発明によると、そして一例として、組換え核酸技術において使用されるいくつかのベクターは、核酸のセグメント(たとえば、異種cDNAセグメントなどの異種DNAセグメント)などの実体を、標的細胞に移すことを可能にする。このベクターは、細胞内の異種核酸(たとえば、DNAまたはRNA)を維持する目的、核酸セグメントを含有するベクターの複製を容易にする目的、または核酸セグメントによってコードされるタンパク質の発現を促進する目的を果たすことができる。
【0129】
ベクターは非ウイルス性またはウイルス性とすることができる。組換え核酸技術において使用されるベクターの例としては、プラスミド、染色体、人工染色体およびウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは、たとえば、ネイキッド核酸(たとえば、DNAまたはRNA)であってもよい。最も単純な形態では、ベクター自体が目的のヌクレオチドであってもよい。
【0130】
本発明で使用されるベクターは、たとえばプラスミドまたはウイルスベクターとすることができ、ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター、および、場合によってはプロモーターの調節因子を含んでいてもよい。
【0131】
ウイルスベクター
好ましい実施形態において、本発明のベクターはウイルスベクターである。好ましくは、ウイルスベクターは、ウイルスベクター粒子の形をとる。
【0132】
ウイルスベクターは、たとえばアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはアデノウイルスベクターとすることができる。好ましくは、ウイルスベクターはAAVベクターである。
【0133】
「遺伝子治療ベクター」という用語は、本明細書では、遺伝子治療における使用に適したベクターを指し、例えば、ウイルス(例えば、AAV)ベクターおよびベクター粒子を含む。
【0134】
バリアント、誘導体、類似体、相同体および断片
本明細書で言及される特定のタンパク質およびヌクレオチドに加えて、本発明はまた、そのバリアント、誘導体、類似体、相同体および断片の使用も包含する。
【0135】
本発明の文脈において、任意の所与の配列のバリアントは、(アミノ酸残基であれ核酸残基であれ)残基の特定の配列が、当該ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの機能を実質的に保持するように改変された配列である。バリアント配列は、天然に存在するタンパク質中に存在する少なくとも1つの残基の付加、欠失、置換(substitution)、修飾、置き換え(replacement)および/またはバリエーションによって得ることができる。
【0136】
本発明のタンパク質またはポリペプチドに関連して本明細書で使用される「誘導体」という用語は、得られたタンパク質またはポリペプチドがその内在性機能の少なくとも1つを実質的に保持することを条件として、配列からの、もしくは配列への、1つ(または複数)のアミノ酸残基の、任意の置換(substitution)、バリエーション、修飾、置き換え(replacement)、欠失、および/または付加を含む。
【0137】
本明細書で使用される「類似体(アナログ)」という用語は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関連して、任意のミメティック、すなわち、それが模倣するポリペプチドまたはポリヌクレオチドの内在性機能の少なくとも1つを有する化合物を含む。
【0138】
典型的には、アミノ酸置換は、改変された配列が必要な活性または能力を実質的に保持する限り、たとえば1、2もしくは3個から10もしくは20個の置換まで行うことができる。アミノ酸置換には、天然に存在しないアナログの使用を含めることができる。
【0139】
本発明で使用されるタンパク質はまた、サイレントな変化を生じて、結果として機能的に同等なタンパク質をもたらす、アミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有することができる。内在性機能が保持されている限り、アミノ酸残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性の類似性に基づいて、意図的なアミノ酸置換を行うことができる。たとえば、負の電荷を持つアミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸がある;正の電荷を持つアミノ酸にはリジンおよびアルギニンがある;ならびに、同様の親水性値を有する無荷電極性頭部基を有するアミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニンおよびチロシンが挙げられる。
【0140】
保存的置換は、たとえば、下記の表に従って行うことができる。第2列の同一ブロック内のアミノ酸、好ましくは第3列の同一行のアミノ酸を、相互に置換することができる:
【0141】
【表1】
【0142】
本明細書で使用される「相同体(ホモログ)」という用語は、野生型アミノ酸配列および野生型ヌクレオチド配列と一定の相同性を有するもの(エンティティ)を意味する。「相同性」という用語は、「同一性」と同じとみなすことができる。
【0143】
相同性配列は、対象の配列に対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%または90%同一、好ましくは少なくとも95%または97%または99%同一であるとされるアミノ酸配列を含むことができる。典型的には、相同体は、対象のアミノ酸配列と同一の活性部位等を含む。相同性は類似性(すなわち、類似した化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)の観点から考えることもできるが、本発明の文脈においては、相同性を配列同一性の観点から表現することが好ましい。
【0144】
相同性配列は、対象の配列に対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%または90%同一、好ましくは少なくとも95%または97%または99%同一であるとされるヌクレオチド配列を含むことができる。相同性は類似性の観点から考えることもできるが、本発明の文脈においては、相同性を配列同一性の観点から表現することが好ましい。
【0145】
好ましくは、本明細書において詳細に記載されている配列番号のいずれかに対して、あるパーセント同一性を有する配列への言及は、言及された配列番号の全長にわたって、記載されたパーセント同一性を有する配列を指す。
【0146】
相同性比較は、目で見て行うことができるが、より一般的には、容易に入手できる配列比較プログラムを用いて行うことができる。
【0147】
パーセント相同性は、一続きの連続した配列にわたって計算することができるが、すなわち、一方の配列を他の配列とアラインし、一方の配列中の各アミノ酸配列を一度に一残基ずつ、他の配列中の対応するアミノ酸と直接比較する。これは「ギャップなし」(”ungapped”)アライメントと呼ばれる。典型的には、このようなギャップなしのアラインメントは、比較的少数の残基にわたってのみ実行される。
【0148】
これは非常に単純で一貫性のある方法であるが、これは、たとえば、それ以外は同一である配列ペアにおいて、ヌクレオチド配列における1つの挿入もしくは欠失が、それ以降のコドンをアラインメントから外れさせ、結果的に、グローバルアラインメントを行ったとき、パーセント相同性の大幅な低下をもたらす可能性があるということを、考慮に入れることができない。こうした理由により、ほとんどの配列比較方法は、考えられる挿入および欠失を、全体としての相同性スコアに過度にペナルティを与えずに考慮に入れる最適なアラインメントを生成するようにデザインされている。これは、ローカルな相同性を最大化するように、配列アラインメントに「ギャップ」を挿入することによって達成される。
【0149】
しかしながら、こうしたより複雑な方法は、同数の同一アミノ酸について、できる限り少数のギャップを有する配列アラインメントが、2つの比較配列間でのより高い関係性を反映して、多数のギャップを有する配列より高いスコアを得るように、アラインメント時に生じる各ギャップに「ギャップペナルティ」を割り当てる。典型的には「アフィンギャップコスト」が使用されるが、これは、ギャップの存在に対して比較的高いコストを課し、ギャップにおいてそれぞれ後に続く残基にはより少ないペナルティを課すものである。これはもっとも一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティは、当然のことながら、よりギャップの少ない最適化されたアライメントを生成することになる。ほとんどのアラインメントプログラムは、ギャップペナルティの修正を可能にする。しかしならが、このような配列比較用ソフトウェアを使用する場合、デフォルト値を使用することが好ましい。たとえば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列のデフォルトギャップペナルティは、ギャップについて-12であり、各伸長については-4である。
【0150】
したがって、最大パーセント相同性の計算は、最初に、ギャップペナルティを考慮して最適なアライメントを生成する必要がある。このようなアライメントを実行するために適当なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(university of wisconsin, U.S.A.; Devereux et al.(1984) Nucleic Acids Res. 12; 387)である。配列比較を行うことができる他のソフトウェアの例には、BLASTパッケージ(Ausubel et al. (1999) ibid - Ch. 18を参照されたい)、FASTA(Atschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 403-410)および比較ツールのGENEWORKSパッケージが含まれるが、これらに限定されない。BLASTおよびFASTAはいずれもオフライン検索およびオンライン検索で利用することができる(Ausubel et al. (1999) ibid, pages 7-58 to 7-60を参照されたい)。しかしながら、用途によっては、GCG Bestfitプログラムの使用が好ましい。BLAST 2 Sequencesと呼ばれるもう1つのツールも、タンパク質およびヌクレオチド配列を比較するために利用することができる(FEMS Microbiol. Lett. (1999) 174: 247-50; およびFEMS Microbiol. Lett. (1999) 177: 187-8)。
【0151】
同一性に関して、最終的なパーセント相同性を決定することができるが、アラインメントプロセスはそれ自体、典型的には、オール・オア・ナッシングのペア比較に基づくものではない。そうではなくて、化学的類似性または進化的距離に基づいて、それぞれのペア比較にスコアを割り当てる、調整された類似性スコア行列が一般に使用される。通常使用されるこのような行列の例は、BLASTパッケージプログラム用のデフォルト行列であるBLOSUM62行列である。GCG Wisconsinプログラムは、一般に、パブリックデフォルト値、または指定があればカスタム記号比較表のいずれかを使用する(より詳細にはユーザマニュアルを参照されたい)。用途によっては、GCGパッケージのパブリックデフォルト値を使用することが好ましいが、他のソフトウェアの場合には、BLOSUM62のようなデフォルト行列を使用することが好ましい。
【0152】
ソフトウェアが最適なアラインメントを作成したら、パーセント相同性、好ましくはパーセント配列同一性を算出することが可能となる。ソフトウェアは、典型的には、配列比較の一環としてこれを行い、数値結果をもたらす。
【0153】
本発明の全長ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの、「断片」は、バリアントでもあって、この用語は典型的には、機能として、またはたとえばアッセイにおいて、目的とする、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの選択された領域を指す。したがって、「断片」は、全長ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一部であるアミノ酸または核酸配列をいう。
【0154】
このようなバリアントは、部位特異的変異誘発などの標準的な組換えDNA技術を用いて調製することができる。挿入が行われることになる場合、挿入部位の両側に天然に存在する配列に相当する5'および3'隣接領域とともに挿入部をコードする合成DNAを作製することができる。隣接領域は、配列を1つもしくは複数の適切な酵素で切断して、合成DNAを切断部にライゲートすることができるように、天然に存在する配列中の部位に対応する利用しやすい制限酵素部位を含有する。次いで、本発明に従ってDNAを発現させて、コードされたタンパク質を作製する。これらの方法は、DNA配列の操作のための、当技術分野で公知の多数の標準的な技術を例示するに過ぎず、他の公知の技術も使用することができる。
【0155】
コドン最適化
本発明で使用されるポリヌクレオチドは、コドン最適化することができる。コドン最適化は、すでにWO1999/41397およびWO2001/79518に記載されている。異なる細胞では、特定のコドンの使い方に相違がある。このコドンの偏りは、細胞型における特定のtRNAの相対存在量の偏りに対応している。配列中のコドンを変化させて、対応するtRNAの相対存在量と一致するようコドンを調整することによって、発現を増加させることができる。同様に、対応するtRNAが特定の細胞型において稀であることが知られているコドンを意図的に選択することによって、発現を減少させることが可能である。このようにして、追加的な翻訳制御を利用することができる。
【0156】
(実施例)
材料および方法(実施例1-2)
細胞形質導入およびハーベスト
培養したHEK293細胞を、一定範囲の感染多重度(MOI、ゲノム粒子/細胞)でrAAV2/2-REP1により処理した。rAAV2/2-GFPを対照ベクターとして並行して使用し、導入遺伝子発現が生じるかどうか蛍光をモニターした。
【0157】
形質導入されていない細胞、ならびに+AAV-GFP形質導入細胞および+AAV-REP1形質導入細胞の実験を並行して行った。
【0158】
以下のプロトコルを用いて形質導入後5日目に細胞溶解物を調製した:細胞をPBSで洗浄し、プレニル化バッファー、pH 7.5(50 mM HEPES、50 mM NaCl、2 mM MgCl2、1 mM DTTおよびプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche))とともに5分間、氷上でインキュベートした;次に細胞を、細胞スクレーパで掻き取って1.5 mlチューブに入れ、氷上で15分間インキュベートした;続いて、細胞を、1 mLシリンジに取り付けた26-Gシリンジ針の中に20回通して、細胞を破壊した。
【0159】
溶解した細胞を、4℃にて1500xgで5分間遠心分離した。次に、上清をセルロースプロピオネートチューブに移し、4℃にて100000xgで1時間遠心分離した。第2の遠心分離ステップから得られた上清を、in vitroプレニル化反応(下記)に使用した。
【0160】
総タンパク質定量
メーカーの説明書にしたがって、Bradford法を用いて全細胞タンパク質濃度を定量した(Quick Stat(商標名)Bradford 1x Dye Reagent, BioRad, #500-0205)。サンプルの値は標準曲線から外挿された。
【0161】
in vitroプレニル化反応
プレニル化バッファー中で、凍結細胞溶解物(10-30μg)、2μM Rab GGTase、4μM Rabタンパク質(Rab27aまたはRab6a)、ならびに、脂質供与体として5μMビオチン-ゲラニルピロリン酸(BGPP)を用いてプレニル化反応をセットアップした。すべての反応には、新鮮なGDP(グアノシン二リン酸、20μM)およびDTT(1 mM)を添加した。
【0162】
陽性対照試料のために、魚類REP1(量については個々の実験を参照されたい)を、未形質導入細胞から得られた溶解物を含有するプレニル化反応物に添加した。
【0163】
反応物を37℃にて2時間インキュベートし、次いで試料バッファー(Laemmliバッファー、2x濃縮物、Sigma #S3401)の添加により停止させた。このバッファーは、4% SDS、20%グリセロール、10% 2-メルカプトエタノール、0.004%ブロモフェノールブルーおよび0.125 M Tris-HCl、約pH 6.8、を含有する。
【0164】
ウェスタンブロット(WB)を行って、ヒトREP1、βアクチン(ローディング対照として)およびビオチン化Rabタンパク質(Rab27aまたはRab6a)を検出した。
【0165】
ヒトREP1を検出するために、Millipore製のマウスモノクローナル抗体を使用した(クローン2F1、#MABN52)。βアクチンの検出のために、Thermo Fisher Scientific製のマウスモノクローナル抗体を使用した(クローンAC-15、#AM4302)。両方とも検出の後に、二次抗体標識化ステップ(ロバ抗マウスHRP、Abcam、#ab98799)を行った。
【0166】
適切なRab基質へのビオチン化脂質供与体の取り込みは、ストレプトアビジン-HRP(Thermo Fisher Scientific、#43-4323)とともに直接インキュベートすることによって検出された。
【0167】
すべての膜は、ECL基質およびOdyssey FC検出システム(Ll-COR)を用いて検出された。バンドの強度は、Image Studio Liteソフトウェア(LI-COR)を用いて定量的に分析された。
【0168】
実施例1-プレニル化基質としてのRab27a
基質としてRab27aを使用するプレニル化アッセイの感度をテストするために、次の細胞を用いて並行して実験を行った:
(a) 形質導入されていない細胞;
(b) AAV-GFPによりMOI 10000で形質導入された細胞;および
(c) AAV-REP1によりMOI 10000で形質導入された細胞。
【0169】
プレニル化反応は、総容量12.5μL中に10μgの溶解物を用いてセットアップされた。陽性対照は、2μMの魚類REP1を添加した。
【0170】
この結果は、Rab27aが、AAV-REP1による細胞の形質導入後にREP1機能を評価するためのプレニル化アッセイのための基質となることを示す(図1)。しかしながら、WB半定量から得られるシグナルはあまり強くない。
【0171】
WBバンドの強度を増加させるために、全細胞タンパク質の量を増やして、この実験を繰り返した。
【0172】
プレニル化反応は、総容量22μL中に溶解物30μgを用いてセットアップされた。陽性対照は、1μMの魚類REP1を添加した。
【0173】
この結果は、Rab27aが、AAV-REP1による細胞の形質導入後にREP1機能を評価するためのプレニル化アッセイのための基質として機能することを確認する(図2)。さらに、WBシグナルの強度は、10μgの溶解物を用いて得られたデータと比較して増加した。しかしながら、シグナルは依然としてあまり強くない。理想的には、細胞がAAV-REP1で形質導入されたときに、プレニル化Rabタンパク質のより大きな増加が観察されるはずである。
【0174】
実施例2-プレニル化基質としてのRab6a
【0175】
基質としてRab6aを使用するプレニル化アッセイの感度をテストするために、次の細胞を用いて並行して実験を行った(実施例1で使用したのと同じ細胞溶解物):
(a) 形質導入されていない細胞;
(b) AAV-GFPによりMOI 10000で形質導入された細胞;および
(c) AAV-REP1によりMOI 10000で形質導入された細胞。
【0176】
プレニル化反応は、総容量20μL中に20μgの溶解物を用いてセットアップされた。陽性対照は、1μMの魚類REP1を添加した。
【0177】
この結果は、Rab6aが、AAV-REP1による細胞の形質導入後にREP1機能を評価するためのプレニル化アッセイのための有効な基質であることを示す(図3)。
【0178】
WBシグナル強度は、図2に示すデータと比較して、より少ない総タンパク質を使用したにもかかわらず、AAV-REP1形質導入細胞について約10倍増加した。さらに、陽性対照のバンド強度は、図2に示すデータと比較して約100倍強く、Rab6a系アッセイの感度の増加が確認される。
【0179】
データはまた、感度の増加が、内在性レベルの差異の検出も可能にすることを示しており、それはアッセイをさらに正確なものにする。
【0180】
プレニル化基質としてRab6aを使用することでもたらされるアッセイ感度の増加を実証することに成功した後、本発明者らは、Rab6aプレニル化がAAV-REP1の量と相関しているかどうかというAAV-REP1の検討について、さまざまなMOIを用いて、アッセイを繰り返した。
【0181】
以下の細胞を用いて並行して実験を行った:
(a) 形質導入されていない細胞;
(b) MOI 250でAAV-REP1により形質導入された細胞;
(c) MOI 1000でAAV-REP1により形質導入された細胞;
(d) MOI 5000でAAV-REP1により形質導入された細胞;
(e) MOI 10000でAAV-REP1により形質導入された細胞;および
(f) MOI 20000でAAV-REP1により形質導入された細胞。
【0182】
プレニル化反応は、総容量15μL中に20μgの溶解物を用いてセットアップされた。陽性対照は、0.5μMの魚類REP1を添加した。
【0183】
この結果は、Rab6aが、AAV-REP1による細胞の形質導入後にREP1機能を評価するためのプレニル化アッセイのための有効な基質であることを確認し(図4)、さらに、Rab6a内のビオチン化脂質供与体の取り込みが、細胞形質導入に使用されるAAV-REP1の量と相関することを実証する。
【0184】
有効なアッセイ基質としてのRab6aの検証に続いて、本発明者らは、本発明者らの第I相臨床試験において現在使用されているAAV-REP1ベクターをテストした(MacLaren, R.E. et al. (2014) Lancet 383: 1129-37)。
【0185】
以下の細胞を用いて並行して実験を行った
(a) 形質導入されていない細胞(#29、#30および#31);
(b) MOI 10000でAAV-REP1により形質導入された細胞(#32、#33および#34);および
(c) MOI 10000でGMPグレードAAV-REP1により形質導入された細胞(#35、#36および#37)。
【0186】
プレニル化反応は、総容量15μL中に20μgの溶解物を用いてセットアップされた。陽性対照は、0.5μMの魚類REP1を添加した。
【0187】
この結果は、以前の実験と一致し、Rab6a内のビオチン化脂質供与体の取り込みが、細胞形質導入に使用されるAAV-REP1の量と相関することを確認するものである(図5)。
【0188】
実施例3-ARPE-19細胞を用いたプレニル化反応における基質としてのRab6a
細胞形質導入およびハーベスト
培養したARPE-19細胞を、10,000ゲノム粒子/細胞のMOIでrAAV2/2-REP1により処理した。形質導入後13日目に細胞溶解物を調製した:細胞をPBSで洗浄し、プレニル化バッファー、pH7.5(50 mM HEPES、50 mM NaCl、2 mM MgCl2、1 mM DTTおよびプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche))とともに氷上でインキュベートした。細胞を、細胞スクレーパを用いて掻き取って1.5mLチューブに入れ、氷上で15分間インキュベートした。その後、1mLのシリンジに取り付けた26-Gシリンジ針に細胞を20回通して破壊した。細胞を、1,500 gで、4℃にて5分間回転させた。次に、上清をセルロースプロピオネートチューブに移して、100,000 gで4℃にて1時間遠心分離した。この上清をin vitroプレニル化反応に使用した。
【0189】
総タンパク質定量
メーカーの説明書にしたがってBradford法を用いて全細胞タンパク質を定量した(Quick Stat(商標名)Bradford 1x Dye Reagent, BioRad、#500-0205)。サンプルの値は標準曲線から外挿された。
【0190】
in vitroプレニル化反応
プレニル化反応は、プレニル化バッファー中で、凍結細胞溶解物(15μg)、2μM Rab GGTase、4μM Rabタンパク質(Rab6a)、および、脂質供与体として、5μMビオチン-ゲラニルピロリン酸を用いてセットアップされた。すべての反応は、新鮮なGDP(20μM)およびDTT(1 mM)を添加した。陽性対照試料において、形質導入されていない細胞の溶解物を含有するプレニル化反応物に、魚類REP1を添加した(量については実験を参照されたい)。
【0191】
反応物を37℃にて2時間インキュベートし、次いでSDS-PAGE試料バッファーの添加により停止させた。
【0192】
ヒトREP-1、βアクチン(ローディング対照)およびビオチン化Rabタンパク質(Rab27aまたはRab6a)を検出するために、ウェスタンブロッティング(WB)を行った。ヒトREP1を検出するために、millipore製のマウスモノクローナル抗体を使用した(クローン2F1、#MABN52)。βアクチンを検出するために、Thermo Fisher Scientific製のマウスモノクローナル抗体を使用した(クローンAC-15、#AM4302)。両者の検出に続いて、二次抗体標識化ステップ(ロバ抗マウスHRP、Abcam、#ab98799)を行った。適切なRab基質へのビオチン化脂質供与体の取り込みは、ストレプトアビジン-HRP(Thermo Fisher Scientific、#43-4323)とともに直接インキュベートすることによって、検出された。すべてのメンブレンは、ECL基質およびOdyssey FC検出システム(LI-COR)を用いて検出された。バンドの強度は、Image Studi Liteソフトウェア(LI-COR)を用いて定量的に分析された。
【0193】
結果および考察
ARPE-19細胞(ヒト網膜色素上皮細胞)において基質としてRab6aを用いたプレニル化アッセイをテストするために、以下の細胞を用いて並行して実験を行った:
(a) 未形質導入細胞(#86および#87);および
(b) 細胞 + AAV-REP1 MOI 10,000(#90および#91)- R&Dグレードベクター。
【0194】
プレニル化反応は、総容量45μL中15μgの溶解物を使用して、セットアップされた。陽性対照は0.1μMの魚類REP1を添加した。
【0195】
この結果は、Rab6aが、AAV-REP1によるARPE-19細胞の形質導入後にREP1機能を評価するための、プレニル化アッセイのための基質として機能することを示す。
【0196】
実施例4-HT1080細胞を用いたプレニル化反応における基質としてのRab6a
細胞形質導入およびハーベスト
培養したHT1080細胞を、10、000ゲノム粒子/細胞のMOIでrAAV2/2-REP1により処理した。形質転換後5日目に細胞溶解物を調製した:細胞をPBSで洗浄し、プレニル化バッファー、pH7.5(50 mM HEPES、50 mM NaCl、2 mM MgCl2、1 mM DTTおよびプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche))とともに氷上でインキュベートした。細胞を、細胞スクレーパを用いて掻き取って1.5mLチューブに入れ、氷上で15分間インキュベートした。その後、1 mLのシリンジに取り付けた26-Gシリンジ針に細胞を20回通して破壊した。細胞を、4℃にて1,500gで5分間回転させた。次に、上清をセルロースプロピオネートチューブに移して、4℃にて1時間100,000 gで遠心分離した。この上清をin vitroプレニル化反応に使用した。
【0197】
総タンパク質定量
メーカーの説明書にしたがってBradford法を用いて全細胞タンパク質を定量した(Quick Stat(商標名)Bradford 1x Dye Reagent, BioRad、#500-0205)。サンプルの値は標準曲線から外挿された。
【0198】
in vitroプレニル化反応
プレニル化反応は、プレニル化バッファー中で、凍結細胞溶解物(20μg)、2μM Rab GGTase、4μM Rabタンパク質(Rab6a)、および、脂質供与体として、5μMビオチン-ゲラニルピロリン酸を用いてセットアップされた。すべての反応は、新鮮なGDP(20μM)およびDTT(1 mM)を添加した。陽性対照試料において、形質導入されていない細胞の溶解物を含有するプレニル化反応に、魚類REP1を添加した(量については実験を参照されたい)。
【0199】
反応物を37℃にて2時間インキュベートし、次いでSDS-PAGE試料バッファーの添加により停止させた。
【0200】
ヒトREP-1、βアクチン(ローディング対照)およびビオチン化Rabタンパク質(Rab27aまたはRab6a)を検出するために、ウェスタンブロッティング(WB)を行った。ヒトREP1を検出するために、millipore製のマウスモノクローナル抗体を使用した(クローン2F1、#MABN52)。βアクチンを検出するために、Thermo Fisher Scientific製のマウスモノクローナル抗体を使用した(クローンAC-15、#AM4302)。両者の検出に続いて、二次抗体標識化ステップ(ロバ抗マウスHRP、Abcam、#ab98799)を行った。適当なRab基質へのビオチン化脂質供与体の取り込みは、ストレプトアビジン-HRP(Thermo Fisher Scientific、#43-4323)とともに直接インキュベートすることによって、検出された。すべてのメンブレンは、ECL基質およびOdyssey FC検出システム(LI-COR)を用いて検出された。バンドの強度は、Image Studi Liteソフトウェア(LI-COR)を用いて定量的に分析された。
【0201】
結果および考察
HT1080細胞において基質としてrab6aを用いてプレニル化アッセイをテストするために、以下の細胞を用いて並行して実験を行った:
(A) 未形質導入細胞(#56および#57);
(B) 細胞 + AAV-REP1 MOI 10,000(#60および#61)- R&Dグレードベクター;および
(C) 細胞 + AAV-REP1 MOI 10,000(#60および#61)- 臨床グレードベクター。
【0202】
プレニル化反応は、総容量20μL中20μgの溶解物を使用して、セットアップされた。陽性対照は0.1μMの魚類REP1を添加した。
【0203】
この結果は、Rab6aが、AAV-REP1によるHT1080細胞の形質導入後にREP1機能を評価するための、プレニル化アッセイのための基質として機能することを示す。
【0204】
実施例5-プレニル化反応における基質としてのRab27aとRab6aとの比較
図4に示す実験で使用されたのと同じ細胞溶解物を使用した:
(a) 形質導入されていない細胞
(b) 細胞 + AAV-REP1 MOI 250;
(c) 細胞 + AAV-REP1 MOI 1,000;
(d) 細胞 + AAV-REP1 MOI 5,000;
(e) 細胞 + AAV-REP1 MOI 10,000;および
(f) 細胞 + AAV-REP1 MOI 20,000。
【0205】
プレニル化反応は、総容量15μL中20μgの溶解物を使用し、さらに2つの異なる基質:Rab27aおよびRab6aを用いてセットアップされた。基質ごとに1つの陽性対照に、0.1μMの魚類REP1を添加した。試料は、SDS-PAGE上に並行して泳動し、同時に検出した。
【0206】
結果および考察
Rab27aおよびRab6aはいずれも、AAV-REP1による細胞の形質導入後にREP1機能を評価するための、プレニル化アッセイのための基質として機能する。
【0207】
ビオチン化脂質供与体の取り込みは、使用された基質のそれぞれについて、細胞形質導入に使用されたAAV-REP1の量と相関している(図8)。
【0208】
ビオチン化Rab6aから得られるバンド密度は、Rab27aについてのものよりも高く、これは、Rab6aのほうが、相対力価を測定(決定)するための平行線検定に適した基質であることを示す。
【0209】
実施例6-異なる条件を用いたプレニル化反応における基質としてのRab27aおよびRab6aの能力の比較
形質導入されていない293細胞溶解物を、Rab27aおよびRab6aを用いた本実験で使用するために調製した。テストした条件は、図9の表に示されている。試料は、SDS-page上で並行して泳動され、同時に検出された。
【0210】
結果および考察
Rab27aおよびRab6aはいずれも、内在性REP1機能を評価するためのプレニル化アッセイのための基質として機能する。
【0211】
ビオチン化脂質供与体の取り込みは、使用される基質の各々について、反応における総タンパク質量と相関する。
【0212】
条件を比較すると、反応中のRab基質の濃度が、シグナルにもっとも影響を及ぼすようである。
【0213】
Rab27aと比較して、Rab6aが使用される場合には、ビオチン化基質が2.5倍増加する。
【0214】
実施例7-AAV2-REP1により形質導入された溶解物におけるプレニル化反応の基質としてのRab27aとRab6aの比較
AAV2-REP1(R&Dグレートの材料)のMOIを増加させることによって、新たな溶解物(3連)を調製した:
(a) 形質導入されていない細胞;
(b) 細胞 + AAV-REP1 MOI 100;
(c) 細胞 + AAV-REP1 MOI 500;
(d) 細胞 + AAV-REP1 MOI 1,000;
(e) 細胞 + AAV-REP1 MOI 5,000;
(f) 細胞 + AAV-REP1 MOI 10,000;
(g) 細胞 + AAV-REP1 MOI 20,000;および
(h) 細胞 + AAV-REP1 MOI 50,000。
【0215】
総容量10μLにおいて、総タンパク質20μg、Rab基質(Rab27aまたはRab6a)2μM、およびRab GGTase 2μMを用いて、プレニル化反応物を調製した。各基質に1つの陽性対照に、0.1μMの魚類REP1を添加した。
【0216】
繰り返し行われたそれぞれの実験から得られた試料をSDS-PAGE上で並行して泳動し、ビオチン化基質(1:10,000)、ローディング対照としてのβアクチン(1:50,000)、ならびにヒトREP1(1:2,500)について、Image Studio Liteソフトウェアを用いて検出した。ビオチン化基質に対するバンド密度の半定量から得られたデータを、Prismソフトウェアを用いてプロットした(図10)。
【0217】
結果
βアクチンのレベルは、分析された全ての試料において同様であった。形質導入されていない細胞(陽性対照試料)は、REP1の内在性レベルを示した。AAV-REP1により形質導入された細胞は、用いられたMOIと直接相関する、REP1レベルの増加を示した。陽性対照は、魚類REP1活性の結果として、さらに強いビオチン取り込みを示す。
【0218】
すべての3回繰り返した実験に関する、要因として基質およびMOIを用いた2元配置分散分析から、これら2つの要因が極めて有意(0.0001)であることが明らかになった。一定のMOIにおける基質の効果に関するボンフェローニ(Bonferroni)の多重比較検定は、MOI 5,000において(p=0.0023)、ならびにそれを上回るすべてにおいて(p<0.0001)、対比較の有意差を示した。
【0219】
考察
Rab27aおよびRab6aはいずれも、AAV-REP1による細胞の形質導入後にREP1機能を評価するための、プレニル化アッセイのための基質として機能する。
【0220】
ビオチン化された基質のバンド密度の半定量は、Rab27aについて得られた値よりもRab6aの値の方が有意に高いことを示すのみである。
【0221】
上記の明細書に記載された全ての刊行物は、参考として本明細書に組み入れられる。本発明の記載された方法および使用のさまざまな修正および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して記載されているが、当然のことながら、クレームされた本発明は、そのような特定の実施形態に必要以上に限定されるべきではない。実際に、本発明を実施するための、記載された様式のさまざまな変更は、生化学およびバイオテクノロジーまたは関連分野の当業者には明白であって、以下の実施形態の範囲内にあることを意図するものである。
本発明は以下の実施形態を包含する。
[1] Rabエスコートタンパク質1(REP1)の活性を測定するための方法であって、
(a) REP1を含む試料を用意するステップ;
(b) ステップ(a)の試料を、Rab6a、Rabゲラニルゲニルトランスフェラーゼ(Rab GGTase)および脂質供与体基質と接触させるステップ;および
(c) 脂質付加されたRab6a生成物を検出するステップ
を含む前記方法。
[2] REP1を含む試料が、REP1を発現するように遺伝子操作された細胞、好ましくはその溶解物に由来する、実施形態1に記載の方法。
[3] REP1が、REP1をコードするヌクレオチド配列を含有するウイルスベクターを使用して発現される、実施形態1または2に記載の方法。
[4] ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態3に記載の方法。
[5] Rab6aおよび/またはRab GGTaseが実質的に純粋である、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
[6] Rab6a:Rab GGTaseモル比が、約1:2-3、好ましくは約1:2.5である、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
[7] 脂質供与体基質が、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)またはその類似体、好ましくはビオチン-ゲラニルピロリン酸(BGPP)である、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
[8] 脂質付加されたRab6a生成物が、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロット分析またはオートラジオグラフィーを用いて検出される、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
[9] 前記方法が、コロイデレミアの治療に使用される、REP1をコードする遺伝子治療ベクターの活性を測定するための方法である、実施形態1~8のいずれかに記載の方法。
[10] 前記方法が、コロイデレミアの治療に使用される、REP1をコードする遺伝子治療ベクターの品質管理分析のための方法である、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
[11] 脂質付加されたRab6a生成物の検出が、脂質付加されたRab6a生成物の量を定量すること、好ましくは対照もしくは参照レベルに対する相対量を定量することを含む、実施形態1~10のいずれかに記載の方法。
[12] Rabエスコートタンパク質1(REP1)の活性を測定するための、Rab6aの使用。
[13] REP1が、REP1を発現するように遺伝子操作された細胞、好ましくはその溶解物に由来する、実施形態12に記載の使用。
[14] REP1が、REP1をコードするヌクレオチド配列を含有するウイルスベクターを用いて発現される、実施形態12または13に記載の使用。
[15] ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態14に記載の使用。
[16] 前記使用が、コロイデレミアの治療に使用するための、REP1をコードする遺伝子治療ベクターの活性を測定するためのものである、実施形態12~15のいずれかに記載の使用。
[17] 前記使用が、コロイデレミアの治療に使用するための、REP1をコードする遺伝子治療ベクターの品質管理分析のためのものである、実施形態12~16のいずれかに記載の使用。
[18] Rab6aが実質的に純粋である、実施形態12~17のいずれかに記載の使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10
【配列表】
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