IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニムの特許一覧

特許7021124エアロゾル発生システム用の気化器組立品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】エアロゾル発生システム用の気化器組立品
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/48 20200101AFI20220208BHJP
   A24F 47/00 20200101ALI20220208BHJP
【FI】
A24F40/48
A24F47/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018566942
(86)(22)【出願日】2017-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2017062297
(87)【国際公開番号】W WO2017220273
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】16175307.4
(32)【優先日】2016-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】デュク ファビアン
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-033097(JP,A)
【文献】特表2009-525113(JP,A)
【文献】特表平08-511966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
A24F 40/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生システム用の気化器組立品であって、
入口開口部を有する第一の端と、出口開口部を有する第二の端とを有する管と、
液体エアロゾル形成基体を気化するためのヒーター要素であって、前記ヒーター要素が前記管の前記第二の端に提供されているヒーター要素と、を備え、
前記管の前記第一の端が液体貯蔵部分と流体接続可能となるように構成されており、その結果、前記液体貯蔵部分が前記管の前記第一の端と接続されている時に、前記液体エアロゾル形成基体が前記液体貯蔵部分から前記入口開口部を通して前記管の中へと流れることができ、かつ
前記管の前記出口開口部が、1マイクロメートル~500マイクロメートルの幅の穿孔として提供されており
疎水層が前記管の前記第二の端に、好ましくは前記穿孔の内表面上に提供されている、気化器組立品。
【請求項2】
前記管がガラスまたはセラミックでできている、請求項1に記載の気化器組立品。
【請求項3】
前記ヒーター要素が前記管の前記第二の端の周囲に巻かれたコイルとして、または前記管の表面の上に前記管の前記第二の端に提供された金属の薄膜として構成されている、請求項1~2のいずれか一項に記載の気化器組立品。
【請求項4】
前記ヒーター要素が金属の薄膜または電線として提供されており、かつ前記ヒーター要素が前記ガラス管内に封入される、請求項2に記載の気化器組立品。
【請求項5】
前記気化器組立品が、前記液体貯蔵部分から前記管の中への前記液体エアロゾル形成基体の流れを制御するために、マイクロポンプシステムまたは機械的ポンプシリンジシステムをさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の気化器組立品。
【請求項6】
前記液体貯蔵部分から前記管の中への前記液体エアロゾル形成基体の前記流れが、好ましくは前記マイクロポンプシステムまたは前記機械的ポンプシリンジシステムによって制御され、その結果、前記管内の前記液体エアロゾル形成基体が加圧される、請求項5に記載の気化器組立品。
【請求項7】
前記穿孔の内側の前記液体エアロゾル形成基体の滴を捕捉できるようにするために、上方の半分の高さの前記内表面の前記穿孔に前記疎水層が提供されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の気化器組立品。
【請求項8】
前記管が、伝導性材料、好ましくはアルミニウムまたは銅でできており、また前記管の前記第二の端が、前記液体エアロゾル形成基体を気化するための前記ヒーター要素を形成する、請求項1、または請求項5~のいずれか一項に記載の気化器組立品。
【請求項9】
エアロゾル発生システムであって、
電源と、
前記電源を制御するための電気回路と、
請求項1~のいずれか一項に記載の気化器組立品と、
前記穿孔された管の前記第一の端と流体接続可能である、交換可能な液体貯蔵部分と、を備え、
前記液体貯蔵部分が前記穿孔された管と接続されている時に、前記穿孔された管の前記第一の端が前記液体貯蔵部分の中へと挿入され、その結果、前記穿孔された管が、前記液体貯蔵部分内に保存された前記液体エアロゾル形成基体と流体連通するようになる、エアロゾル発生システム。
【請求項10】
前記穿孔された管が前記液体貯蔵部分の中へと挿入された時に、前記穿孔された管の外側円周を密封するための密封膜が、前記交換可能な液体貯蔵部分に提供されている、請求項に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項11】
前記交換可能な液体貯蔵部分には前記密封膜の下に密封箔が提供されており、前記穿孔された管の前記第一の端が前記交換可能な液体貯蔵部分の中へと挿入される前に前記密封箔が取り外し可能であるように構成されている、請求項10に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項12】
前記液体貯蔵部分が前記液体エアロゾル形成基体を収容する折り畳み式袋をさらに備え、前記折り畳み式袋が前記液体貯蔵部分内の前記液体エアロゾル形成基体を加圧するように構成されており、これによって前記液体貯蔵部分が前記管と接続されている時に前記管の中への前記液体エアロゾル形成基体の流れを可能にする、請求項10または11に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項13】
エアロゾル発生システム用の気化器組立品を製造するためのプロセスであって、
i)入口開口部を有する第一の端と、出口開口部を有する第二の端とを有する管を提供する工程であって、前記管の前記第一の端が液体貯蔵部分と流体接続可能になるように構成されており、その結果、前記液体貯蔵部分が前記管の前記第一の端と接続されている時に、液体エアロゾル形成基体が前記液体貯蔵部分から前記入口開口部を通して前記管の中へと流れることができる、工程と、
ii)前記液体エアロゾル形成基体を気化するためのヒーター要素を提供する工程であって、前記ヒーター要素が前記管の前記第二の端に提供されている、工程と、
iii)前記管の前記出口開口部を、1マイクロメートル~500マイクロメートルの幅の穿孔として提供する工程と、を含み、
疎水層が前記管の前記第二の端に、好ましくは前記穿孔の内表面上に提供されている、プロセス。
【請求項14】
エアロゾル発生システム用の気化器組立品であって、
入口開口部を有する第一の端と、出口開口部を有する第二の端とを有する管と、
液体エアロゾル形成基体を気化するためのヒーター要素であって、前記ヒーター要素が前記管の前記第二の端に提供されているヒーター要素と、を備え、
前記管の前記第一の端が液体貯蔵部分と流体接続可能となるように構成されており、その結果、前記液体貯蔵部分が前記管の前記第一の端と接続されている時に、前記液体エアロゾル形成基体が前記液体貯蔵部分から前記入口開口部を通して前記管の中へと流れることができ、かつ
前記管の前記出口開口部が穿孔として提供されており、前記穿孔の寸法は、前記液体エアロゾル形成基体が前記穿孔を通して流れることができず、かつ前記ヒーター要素によって生成された気化された液体エアロゾル形成基体が前記穿孔を通して流れることができるような寸法であ
疎水層が前記管の前記第二の端に、好ましくは前記穿孔の内表面上に提供されている、気化器組立品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生システム用の気化器組立品、および気化器組立品を有するエアロゾル発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電池および制御電子回路を備える装置部分と、液体貯蔵部分内に保持された液体エアロゾル形成基体の供給、および電気的に作動する気化器またはヒーター要素を備える別個のカートリッジとから成る、手持ち式の電気的に作動するエアロゾル発生システムが周知である。液体貯蔵部分は、ヒーター要素と接触し、かつ液体が確実にヒーター要素に搬送されるようにする毛細管材料を備えてもよく、これによって蒸気(ベイパー)の生成を可能にする。その後、蒸気は冷やされてエアロゾルを形成する。毛細管材料は例えば、国際特許公開第2015/117702 A1号から周知である。毛細管材料およびヒーター要素は、液体貯蔵部分とともにカートリッジ内に提供されてもよい。カートリッジは単回使用カートリッジとして提供されてもよく、このカートリッジは液体貯蔵部分内に保持されている液体エアロゾル形成基体が一旦消耗されると廃棄される。従って、毛細管材料およびヒーター要素はカートリッジとともに廃棄され、かつ新しいカートリッジのそれぞれで新しい毛細管材料および新しいヒーター要素が必要である。その上、望ましくない残留物が、使用中に毛細管材料の表面に生じうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
消耗品のコストを低減する再使用可能な気化器組立品を提供することが望ましい。また、向上された耐熱性を有し、かつ高温での操作時に望ましくない生成物を放出するリスクを回避するまたは少なくとも低減する気化器組立品を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一の態様によると、入口開口部を備える第一の端と出口開口部を備える第二の端とを有する管を備えるエアロゾル発生システム用の気化器組立品が提供されている。気化器組立品は、液体エアロゾル形成基体を気化するためのヒーター要素をさらに備え、ヒーター要素は管の第二の端に提供されている。管の第一の端は、液体貯蔵部分が管の第一の端と接続されている時に、液体エアロゾル形成基体が液体貯蔵部分から入口開口部を通して管の中へと流れることができるように、液体貯蔵部分と流体接続可能となるように構成されている。管の出口開口部は、1マイクロメートル~500マイクロメートルの幅の穿孔として提供されている。
【0005】
穿孔された管は、液体貯蔵部分が管の第一の端と流体接続されている時に、液体エアロゾル形成基体が穿孔された管の出口開口部の外に漏れるのを防止するように提供されてもよい。液体貯蔵部分が穿孔された管の第一の端と流体接続されている時に、液体エアロゾル形成基体は液体貯蔵部分から入口開口部を通して穿孔された管の中へと流れてもよいが、穿孔された管の出口開口部の外に漏れない場合がある。穿孔された管の出口開口部として提供された穿孔は、蒸気が穿孔された管の外へ通過するのを可能にすることが好ましい。結果として、気化された液体エアロゾル形成基体は、穿孔された管の第二の端での穿孔を介して穿孔された管の出口開口部の外に流れてもよいが、液体状のエアロゾル形成基体はこれらの穿孔の外へと流れることができない。
【0006】
穿孔された管は本質的に管形状の本体を有してもよく、穿孔された管の第一の端は開放している。穿孔された管は、丸い、円形の、角のある、三角形の、長方形の、または楕円形のプロファイルなどの任意の適切なプロファイルを有してもよい。穿孔された管は、毛細管作用によって液体貯蔵部分から穿孔された管の中へと管の第二の端の方向で液体エアロゾル形成基体が引き出されるような直径を有してもよい。こうして、液体エアロゾル形成基体は、毛細管作用によって液体貯蔵部分から穿孔に搬送されてもよい。
【0007】
穿孔された管の第一の端での開放端は、入口開口部として構成されている。穿孔された管の第二の端は、試験管の閉鎖端部分のように形成されてもよい。しかしながら、穿孔された管の第二の端で出口開口部が形成されるように、穿孔された管の第二の端には穿孔が提供されている。穿孔された管の第二の端はまた、開放した端として構成されてもよい。この場合、穿孔は管の第二の端の近くの管の側表面上に提供されてもよい。この場合、液体エアロゾル形成基体が第二の端に管の外に漏れるのを防止するように、管の第二の端に多孔性毛細管材料などの保持材料が提供されてもよい。
【0008】
穿孔された管およびヒーター要素を備える気化器組立品は再使用可能であってもよい。交換可能な液体貯蔵部分は気化器組立品の穿孔された管の第一の端と接続されてもよく、液体貯蔵部分は液体エアロゾル形成基体を含む。使用中に、液体エアロゾル形成基体は、液体貯蔵部分から入口開口部を通して気化器組立品の穿孔された管の中へと流れてもよい。その後、液体エアロゾル形成基体は穿孔された管の第二の端でヒーター要素によって気化されてもよい。気化されたエアロゾル形成基体は、穿孔された管の第二の端で穿孔を通して流れて、その後ユーザーが吸い込むことができるエアロゾルを形成してもよい。
【0009】
気化器組立品が再使用可能であることによって、液体貯蔵部分内の液体エアロゾル形成基体が一旦消耗されると、液体貯蔵部分は気化器組立品から取り外されてもよい。その後、新しい液体貯蔵部分が気化器組立品に取り付けられてもよい。液体貯蔵部分は独立した毛細管材料またはヒーター要素を含む必要がないので、消耗品すなわち液体貯蔵部分のコストは低減する場合がある。従来のシステムにおいて、液体貯蔵部分は、液体エアロゾル形成基体をヒーター要素に搬送するために、ヒーター要素と多孔性材料(毛細管材料)などの移動要素とを備える。従って、これらの従来の液体貯蔵部分は、液体貯蔵部分内の液体エアロゾル形成基体が一旦消耗されると、液体貯蔵部分と一緒に廃棄される複数の要素を含む。
【0010】
穿孔のサイズ、すなわち穿孔の幅は、上述の通り、液体エアロゾル形成基体が穿孔を通して流れるのを防止される場合がある一方で、気化された液体エアロゾル形成基体が穿孔を通して流れてもよいように、1マイクロメートル~500マイクロメートルまたは、5~250マイクロメートル、または10マイクロメートル~150マイクロメートルであることが好ましい。穿孔の幅は、15マイクロメートル~80マイクロメートル、または20マイクロメートル~60マイクロメートル、またはおよそ40マイクロメートルであってもまたよい。
【0011】
穿孔の寸法は一般的に、液体エアロゾル形成基体が穿孔を通して流れることができず、かつヒーター要素によって生成された気化された液体エアロゾル形成基体が穿孔を通して流れることができるような寸法であってもよい。
【0012】
使用される液体エアロゾル形成基体に依存して、特に液体エアロゾル形成基体の粘度に依存して、および穿孔された管の中の液体エアロゾル形成基体と気化器組立品の外側の周囲圧力との間の圧力差に依存して、穿孔の幅は適切に選ばれる。異なる粘度を有する液体エアロゾル形成基体が同一の気化器組立品で使用される場合、穿孔の寸法は、使用される液体エアロゾル形成基体の推定された最大圧力差および推定された最低の推定された粘度が、穿孔された管の第二の端にいかなる液体エアロゾル形成基体も穿孔を通して漏れ出ないように選ばれる。
【0013】
一般的に、液体、例えば液体エアロゾル形成基体が穿孔された管の第二の端に上記に定義された幅を有する穿孔を通過する場合があるかどうかは、液体の圧力に依存する。穿孔された管の内側および穿孔された管の外側の液体の間に圧力差が存在する場合、穿孔された管の第二の端での穿孔を通して液体が流れる場合がある。言い換えれば、穿孔された管の内側の液体が加圧された場合、液体は圧力に依存して穿孔された管の外へと流れる場合がある。液体が穿孔を通して流れる前に液体に対して適用されなければならない圧力閾値は「静水圧ヘッド」と記述される場合がある。「静水圧ヘッド」または「水頭」は、この圧力閾値より高いと、液体が穿孔された管の穿孔を通して貫通することを示す。静水圧ヘッドの静水圧がより高いほど、穿孔を通して液体が漏れる前に液体に適用する必要のある圧力がより高い。静水圧ヘッドはまた、使用される液体エアロゾル形成基体の粘度に依存する。典型的に使用される液体エアロゾル形成基体の粘度は、約15~200ミリパスカル秒の範囲であり、約18~81ミリパスカル秒の範囲であることが好ましい。管の第二の端での穿孔からの望ましくない液体エアロゾル形成基体の漏れを回避するためには、液体エアロゾル形成基体の加圧は静水圧ヘッドの静水圧をはるかに下回るべきである。
【0014】
静水圧ヘッドの静水圧が低いことは、液体が穿孔された管の第二の端で穿孔を通して流れる前に、穿孔された管の内側の液体エアロゾル形成基体にかけられる圧力をより低くしなければならないことを意味する。穿孔された管の穿孔のある第二の端の静水圧ヘッドは、100ミリメートルより低い、または50ミリメートルより低い、または約10ミリメートルより低い場合がある。このような低静水圧ヘッドは、液体に低い圧力がかけられた時に、液体が穿孔された管の第二の端で穿孔された管を通して流れるのを防止する一方で、穿孔を通して流れることができる時間当たりの蒸気の量は高い。高静水圧ヘッドは、液体に高い圧力がかけられた場合でさえも、液体の漏れを防止する。ただし、時間当たり少量の蒸気のみが、穿孔された管の第二の端で穿孔を通過する場合がある。従って、穿孔された管の穿孔された第二の端の静水圧ヘッドは、典型的に使用される液体のタイプに依存して望ましい送達性能を得るように構成される場合がある。
【0015】
穿孔された管の第一の端が液体貯蔵部分と流体接続されている時に、穿孔された管の中へと液体が流れるように液体貯蔵部分の内側の流体は加圧されてもよい。圧力は0.5バールより低くてもよく、または0.3バールより低くてもよく、または0.1バールより低くてもよい。これらの値の圧力は、およそ1バールの周囲圧力に加えて液体エアロゾル形成基体にかけられる。こうして合計で、液体エアロゾル形成基体は1.5バールより低い、または1.3バールより低い、または1.1バールより低い合計圧力で加圧される。
【0016】
液体貯蔵部分内の液体エアロゾル形成基体にかけられる圧力は、穿孔された管の第一の端が液体貯蔵部分と流体接続されている時に、穿孔された管の方向にかけられてもよい。従って、液体エアロゾル形成基体は、穿孔された管の空間的な向きにかかわらず入口開口部を通して穿孔された管の中へと流れる。言い換えれば、気化器組立品の空間的な向きにかかわらず、液体貯蔵部分内に液体エアロゾル形成基体が存在する限り、穿孔された管は液体エアロゾル形成基体で充填される。
【0017】
液体エアロゾル形成基体に圧力をかけることによって、入口開口部を通した穿孔された管の中への液体エアロゾル形成基体の流れを容易にするために、気化器組立品はマイクロポンプシステムまたは機械的ポンプシリンジシステムを備えてもよい。一般的には、ポンプシステムが気化器組立品内、好ましくは穿孔された管内に適合するほど十分に小さければ、あらゆる従来のポンプシステムを利用してもよい。穿孔された管の第一の端が液体貯蔵部分に流体接続されている時に、ポンプシステムが入口開口部を通して液体貯蔵部分から穿孔された管の中へと液体エアロゾル形成基体を送ってもよいように、ポンプシステムを穿孔された管の入口開口部の近くにまたは中に提供してもよい。
【0018】
別の方法として、または追加的に、液体貯蔵部分に折り畳み式袋を提供することができる。折り畳み式袋は、液体エアロゾル形成基体が折り畳み式袋の中に提供されているように提供されており、折り畳み式袋は液体貯蔵部分の中に提供されている。穿孔された管の第一の端が液体貯蔵部分と流体接続されている時に、穿孔された管の第一の端は、入口開口部を通して折り畳み式袋の内側と流体接続されている。折り畳み式袋は折り畳み式袋の中の液体エアロゾル形成基体が消耗されるまで、液体エアロゾル形成基体に穿孔された管の方向に圧力をかける。
【0019】
穿孔された管には、液体エアロゾル形成基体が消耗されるまで、液体貯蔵部分から液体エアロゾル形成基体が提供されている。こうして、液体エアロゾル形成基体は、穿孔された管の第二の端で穿孔に直に隣接して提供されている。
【0020】
穿孔された管の第二の端での穿孔された管の外への液体エアロゾル形成基体の漏れを防止し、それと同時に時間当たり大量の蒸気が穿孔された管の外へと流れることを可能にするために、別の方法としてまたは追加的に、疎水層を穿孔された管の第二の端に提供してもよい。疎水層は、液体エアロゾル形成基体の液滴が穿孔の外へと流れないように、液体エアロゾル形成基体に面して穿孔の内表面上に提供されてもよい。この効果を達成するために、疎水層は穿孔の内表面上のみに提供されてもよい。また、疎水層は穿孔の内表面の上方の半分の高さに提供されてもよい。この半分の高さは、穿孔された管の外側から見える。穿孔の内表面の高さの半分を被覆することによって、液体エアロゾル形成基体の液滴は穿孔に入る場合があるが、穿孔全体を通して流れない。ひいては、液体エアロゾル形成基体とヒーター要素の間の距離が減少するので、ヒーター要素を通した液体の気化は強化される。
【0021】
液体エアロゾル形成基体を気化するためのヒーター要素が管の第二の端に提供されている。上述の通り、穿孔された管の第二の端での穿孔の幅は、ヒーター要素によって気化されたエアロゾル形成基体が、穿孔された管の第二の端での穿孔を通して穿孔された管の外へと流れてもよいように選ばれる。ヒーター要素は、ヒーター要素が穿孔された管の第二の端と直に接触するように、穿孔された管の第二の端に直接提供されてもよい。別の方法として、ヒーター要素は、穿孔された管の第二の端のすぐ近くに提供されてもよい。また、ヒーター要素は、穿孔された管の第二の端と隣接する穿孔された管の円周に提供されてもよい。いずれの場合でも、ヒーター要素は穿孔された管の第二の端を加熱するように提供されている。
【0022】
ヒーター要素は電気抵抗ヒーターであってもよい。ヒーター要素は、金属材料(例えば、銅またはアルミニウム)などの導電性材料を備えてもよい。導電性材料は、導電性材料を通して流れる電流によって加熱されてもよい。
【0023】
ヒーター要素は穿孔された管の第二の端の周囲に巻かれたコイルとして提供されてもよい。別の方法として、ヒーター要素は金属の被覆または薄膜として提供されてもよく、これは穿孔された管の第二の端で、穿孔された管の表面上に提供されてもよい。薄膜は、疎水層を参照して上述したように、穿孔の内表面の上方の半分の高さに薄膜が提供されているように、穿孔の中へと延びてもよい。ヒーター要素は液体エアロゾル形成基体を穿孔の中で直接気化してもよい。こうして、ヒーター要素を動作するために必要な電力が低減される場合がある。ヒーター要素は、電線などの導電体として提供されてもよい。ヒーター要素はまた、穿孔された管がヒーター要素を封入するように、穿孔された管の材料の中に提供されてもよい。後者の場合、ヒーター要素の接点部分だけは、穿孔された管によって封入されない。接点部分は、液体エアロゾル形成基体が接点部分と接触できないように、穿孔から距離を置いて提供されてもよい。
【0024】
さらなる実施形態において、穿孔された管自体が、液体エアロゾル形成基体を気化するためのヒーター要素を形成してもよい。この場合、穿孔された管は、少なくとも部分的にアルミニウムまたは銅などの導電性材料でできており、これによって、穿孔された管のこの部分が電気抵抗ヒーターとして作用する。伝導性材料は、穿孔された管の第二の端で液体エアロゾル形成基体を気化することができるように、穿孔された管の第二の端に提供されている。
【0025】
穿孔された管は任意の適切な材料でできていてもよい。穿孔された管はガラスまたはセラミックでできていてもよい。穿孔された管は複数の材料を含んでもよく、これらの材料のうちの一つはガラスまたはセラミックである。穿孔された管はガラスまたはセラミックのみでできていていてもよい。ガラスおよびセラミックは高い耐熱性を有する。結果として、穿孔された管は、ヒーター要素が穿孔された管の上もしくは中に直接提供されている、または穿孔された管のすぐ近くに提供されている場合であっても、加熱中のヒーター要素の高温による損傷や損害を受けない。
【0026】
ガラスおよびセラミックの耐熱性の増加は、ヒーター要素による液体エアロゾル形成基体の加熱中に望ましくない産物が放出されるリスクが低減されるという効果につながる。さらに、穿孔された管は簡単に掃除されうる。穿孔された管上の望ましくない残留物、ひいては望ましくない産物は加熱中に回避または減少され、一方で穿孔された管は簡単に掃除されうる。また、ガラスおよびセラミックは温度で分解しない、非常に安定した材料である。従って、気化器組立品は交換しなければならなくなる前に、複数回使用されてもよい。
【0027】
また、ヒーター要素はガラス材料も含んでもよい。この点で、ヒーター要素はガラス基材を含んでもよく、ガラス基材上に薄膜として導電性材料が塗布されてもよい。また、導電性材料はガラス基材内に封入されてもよい。穿孔された管がガラスを含む場合、ヒーター要素の導電性材料は、穿孔された管のガラス内に封入されて提供されていること、または別の方法として穿孔されたガラス管の表面上に薄膜として提供されていることが好ましい。
【0028】
本発明の第二の態様によると、エアロゾル発生システムが提供されている。エアロゾル発生システムは、電源および電源を制御するための電気回路を備える。エアロゾル発生システムは上述の通り、気化器組立品をさらに備える。交換可能な液体貯蔵部分は、穿孔された管の第一の端と流体接続されることができる。上述の通り、液体貯蔵部分内の液体エアロゾル形成基体は、気化器組立品の穿孔された管内を流れることができ、その後、穿孔された管の第二の端でヒーター要素によって気化されることができる。こうして、エアロゾルが発生して、その後ユーザーがこのエアロゾルを吸い込むことができる。ユーザーがエアロゾル発生システムを吸うことができるように、マウスピースが提供されてもよい。ユーザーがエアロゾル発生システムを吸った時を検出するために、流れセンサーが提供されてもよい。
【0029】
穿孔された管が液体貯蔵部分の中へと挿入された時に、穿孔された管の外側円周を密封するための密封膜が液体貯蔵部分に提供されてもよい。この点で、密封膜は、穿孔された管を液体貯蔵部分の中に挿入中に破られてもよく、密封膜の残りは、密封膜の可撓性の性質のため、穿孔された管の外側円周を囲む。従って、使用中に液体エアロゾル形成基体は液体貯蔵部分から穿孔された管の中へのみ流れる。
【0030】
穿孔された管の第一の端が液体貯蔵部分と流体接続される前に、液体エアロゾル形成基体が液体貯蔵部分の外に流れないように、液体貯蔵部分の上に密封箔が提供されてもよい。液体貯蔵部分が穿孔された管の第一の端と流体接続される前に、密封膜が損害を受けないように、密封膜の上に密封箔が提供されている。液体貯蔵部分が穿孔された管の第一の端と接続される前に、密封膜が穿孔された管の第一の端と面するように、密封箔は除去される。
【0031】
本発明の第三の態様によると、エアロゾル発生システム用の気化器組立品を製造するためのプロセスが提供されている。プロセスは、
i)入口開口部を有する第一の端と、出口開口部を有する第二の端とを有する管を提供する工程であって、管の第一の端が液体貯蔵部分と流体接続可能になるように構成されており、その結果、液体貯蔵部分が管の第一の端と接続されている時に、液体エアロゾル形成基体が液体貯蔵部分から入口開口部を通して管の中へと流れることができる、工程と、
ii)液体エアロゾル形成基体を気化するためのヒーター要素を提供する工程であって、ヒーター要素が管の第二の端に提供されている、工程と、
iii)管の出口開口部を、1マイクロメートル~500マイクロメートルの幅の穿孔として提供する工程と、を含むプロセスである。
【0032】
一態様に関して説明される特徴は、本発明の他の態様にも等しく適用されてもよい。
ここで本発明の実施形態を、以下の添付図面を参照しながら、例証としてのみであるが説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の第一の実施形態による気化器組立品の図である。
図2図2は、本発明の第一の実施形態による気化器組立品の穿孔された管の穿孔の断面図である。
図3図3は、本発明の第一の実施形態によるエアロゾル発生システムの断面図である。
図4図4は、本発明の第二の実施形態によるエアロゾル発生システムの穿孔された管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明による気化器組立品の穿孔された管1を示す。穿孔された管1はガラスでできている。
【0035】
穿孔された管は第一の端2および第二の端3を有する。穿孔された管1の第一の端2は、液体エアロゾル形成基体が穿孔された管1の中へと流れてもよいように開放した入口開口部2を備える。穿孔された管1の第二の端3は、出口開口部4を除き、閉じている。出口開口部4は穿孔4として形成されている。穿孔4の幅は、およそ40マイクロメートルである。従って、液体エアロゾル形成基体は、穿孔された管1の第二の端2で、穿孔された管1の外に漏れることができない。
【0036】
図2は、穿孔された管1の第二の端3の区域内の単一の穿孔4の断面図を示す。図2では液体エアロゾル形成基体の液滴5が描かれており、液滴5は穿孔4を通して流れることができない。図2では、液滴5が穿孔4を通して流れるのを防止するための疎水層6が示されている。別の方法として、液滴5が穿孔4を通って流れることができないように、穿孔4の幅は液滴5の直径より小さい。
【0037】
図3は、本発明の実施形態によるエアロゾル発生システムを示す。図3は、図1および図2を参照して上述されている通りの、穿孔された管1を示す。
【0038】
穿孔された管1はエアロゾル発生システムの主本体7の一部である。主本体7は制御回路および電源を備え(図示せず)、気化器組立品のヒーター要素8に電気エネルギーを供給する。ヒーター要素8は、穿孔された管1の第二の端3で表面上に提供されている。ヒーター要素8は、穿孔された管1の表面上に塗布される薄膜として形成されている。ヒーター要素8は、電源に電気的に接続可能な接点部分を備える。ヒーター要素8は、穿孔された管1の第二の端3で蒸気が穿孔4およびヒーター要素8を通過してもよいように形成されている。ヒーター要素8は、穿孔された管1の第二の端3の近くで液体エアロゾル形成基体を加熱および気化するように構成されている。
【0039】
図3は、マウスピース10および液体貯蔵部分11を備えるカートリッジ9をさらに示す。カートリッジ9は使い捨てカートリッジとして提供されており、液体貯蔵部分11の中の液体エアロゾル形成基体が一旦消耗されるとカートリッジ9は廃棄される。また、液体貯蔵部分11を使い捨ての消耗品とすることができ、カートリッジ11の中の液体エアロゾル形成基体が一旦消耗されると、液体貯蔵部分11は新しいものに換えられ、かつカートリッジの中へと挿入される。
【0040】
図3は、液体貯蔵部分11の端で、気化器組立品の穿孔された管1に面して提供されている密封膜12を示す。液体貯蔵部分11が気化器組立品の穿孔された管1と流体接続されている時に、密封膜12は破れられて、液体エアロゾル形成基体が液体貯蔵部分から穿孔された管1へと流れることを可能にする。液体貯蔵部分11が穿孔された管1と流体接続される前、密封膜12は液体エアロゾル形成基体が液体貯蔵部分11の外に流れるのを防止する。
【0041】
図3はまた、折り畳み式袋13を示し、折り畳み式袋13は液体貯蔵部分11の中に提供されている。折り畳み式袋13は、液体エアロゾル形成基体を収容する。入口開口部2を通して液体エアロゾル形成基体が穿孔された管1の中へと搬送され、および穿孔された管1の第二の端3に搬送されるように、折り畳み式袋13は図3に示す通り、折り畳み式袋13の中の液体エアロゾル形成基体を加圧する。こうして、液体エアロゾル形成基体が、穿孔された管1内に提供されている。後続の図3.2および図3.3に示す通り、液体エアロゾル形成基体が消費された時に、折り畳み式袋13は穿孔された管1の方向に縮む。こうして、折り畳み式袋13は、エアロゾル発生システムの空間的な向きにかかわらず、すべての液体エアロゾル形成基体が使用されることを可能にする。
【0042】
エアロゾル発生システムの使用中に、液体エアロゾル形成基体はヒーター要素8によって気化され、その後ユーザーによってマウスピース10を通して吸い込まれる。この点で、空気吸込み口14を通してヒーター要素8に向かって周囲空気が引き出される(矢印によって示されている)。気化されたエアロゾル形成基体は、ヒーター要素8の隣の周囲空気と混合されて、エアロゾルを形成する。エアロゾルはその後マウスピース10に向かって引き出される(矢印によって示されている)。望ましいサイズのエアロゾル液滴を有するエアロゾルが作り出されるように、エアロゾルはマウスピース10に向かって引き出される間に冷やされる。
【0043】
図4は、本発明のさらなる実施形態を示し、ここでは折り畳み式袋13がポンプシステム15によって機能的に置き換えられている。
【0044】
ポンプシステム15は、液体エアロゾル形成基体が液体貯蔵部分11の内側から穿孔された管1の中へと送り出されるように、穿孔された管1の第一の端2に提供されている。エアロゾル発生システムは、ポンプシステムを除き、上述の通りエアロゾル発生システムと構造的に同一である。図4では、折り畳み式袋13も示されている。従って、折り畳み式袋13は、ポンプシステム15とともに、液体エアロゾル形成基体を液体貯蔵部分11の内側から、穿孔された管1の中へと搬送するのを容易にすることができる。別の方法として、液体エアロゾル形成基体を液体貯蔵部分11の内側から穿孔された管1の中へと搬送するのを容易にするために、ポンプシステム15を単独で使用することができる。
【0045】
上述の例示的な実施形態は例証するが限定はしない。上記で考察した例示的な実施形態に照らすことによって、上記の例示的な実施形態と一貫したその他の実施形態も当業者には明らかとなろう。

参照符号:
1 穿孔された管
2 穿孔された管の第一の端
3 穿孔された管の第二の端
4 穿孔
5 液体エアロゾル形成基体の液滴
6 疎水層
7 エアロゾル発生システムの主本体
8 ヒーター要素
9 カートリッジ
10 マウスピース
11 液体貯蔵部分
12 密封膜
13 折り畳み式袋
14 空気吸込み口
15 ポンプシステム
図1
図2
図3.1】
図3.2】
図3.3】
図4