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特許7021126マルチ色素キノンメチド及びチラミドコンジュゲートによる発色性IHC及びISH染色のための新規の色
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】マルチ色素キノンメチド及びチラミドコンジュゲートによる発色性IHC及びISH染色のための新規の色
(51)【国際特許分類】
   C09B 11/28 20060101AFI20220208BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220208BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220208BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALN20220208BHJP
   C07K 16/42 20060101ALN20220208BHJP
   C07K 16/40 20060101ALN20220208BHJP
【FI】
C09B11/28 B CSP
G01N33/543 545D
G01N33/53 Y
G01N33/543 545S
G01N33/543 545T
G01N33/53 P
C09B11/28 F
C12Q1/6806 Z
C07K16/42
C07K16/40
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018567642
(86)(22)【出願日】2017-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2017065795
(87)【国際公開番号】W WO2018002015
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-12
(31)【優先権主張番号】62/355,398
(32)【優先日】2016-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511286517
【氏名又は名称】ヴェンタナ メディカル システムズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アシュワース-シャープ, ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ケリー, ブライアン ディー
(72)【発明者】
【氏名】ラフィーバー, マーク
(72)【発明者】
【氏名】ポーラスキー, ネーサン ダブリュ
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-502728(JP,A)
【文献】国際公開第2010/111674(WO,A1)
【文献】特表2005-517174(JP,A)
【文献】特表2002-524739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00-69/10
G01N 33/00-33/98
C12Q 1/00-1/70
C07K 16/42
C07K 16/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織反応部分と少なくとも二つの発色団とを含むマルチ色素コンジュゲートであって、組織反応部分が、酵素と反応可能な部分であり、且つキノンメチド前駆体又はチラミドからなる群より選択され、並びに少なくとも二つの発色団が、異なるものであり、且つ多機能リンカーを介して組織反応性部分に結合する、マルチ色素コンジュゲート。
【請求項2】
少なくとも二つの発色団が、TAMRA、Dabsyl、Cy5、Dabcyl、Cy3、Cy7、Cy3.5、Cy3B、Cy5.5、ローダミン800、及びフルオレセインからなる群より選択される、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
少なくとも二つの発色団のいずれの色とも異なる色を呈示する、請求項1又は2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
多機能性リンカーが、ヘテロ二機能性リンカー若しくはデンドリマーである、又は多機能性リンカーが、ノルスペルミジン及びスペルミンからなる群より選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
ヘテロ二機能性リンカーがリジン又はその誘導体である、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
デンドリマーが、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、Janusデンドリマー、及びビス-MPAデンドリマーからなる群より選択される、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
多機能性リンカーが、50g/molから300g/molの範囲の分子量を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
少なくとも二つの発色団のうちの第1の発色団が、組織反応部分に直接的又は間接的にコンジュゲートされ、少なくとも二つの発色団のうちの第2の発色団が、第1の発色団に直接的又は間接的にコンジュゲートされる、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
生物学的試料中の第1の標的を検出する方法であって、
(i)生物学的試料を、第1の標的に特異的な第1の検出プローブと接触させて、第1の検出プローブ-標的複合体を形成すること;
(ii)生物学的試料を、第1の酵素を含む、第1の検出プローブに特異的な第1の標識コンジュゲートと接触させること;及び
(iii)生物学的試料を、第1のマルチ色素コンジュゲートと接触させることを含み、
第1のマルチ色素コンジュゲートが、請求項1から8のいずれか一項に記載のマルチ色素コンジュゲートであり、第1の酵素が第1のマルチ色素コンジュゲートを、第1の標的の近位で生物学的試料に又は直接第1の標的に共有結合する第1の反応中間体に変換する、方法。
【請求項10】
第1の検出プローブが、第1の一次抗体であり、且つ第1の標識コンジュゲートが、第1の酵素にコンジュゲートされた抗種抗体を含む、又は
第1の検出プローブが、標識にコンジュゲートされた第1の核酸プローブを含み、且つ第1の標識コンジュゲートが、第1の抗体にコンジュゲートされた抗標識抗体を含む
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1の酵素が、ホスファターゼ、ホスホジエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、アミダーゼ、プロテアーゼ、ニトロレダクターゼ、ウレアーゼ、スルファターゼ、チトクロームP450、アルファ-グルコシダーゼ、ベータグルコシダーゼ、ベータ-ラクタマーゼ、アルファ-グルコロニダーゼ(glucoronidase)、ベータ-グルコロニダーゼ(glucoronidase)、アルファ-5ガラクトシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、アルファ-ラクターゼ及びベータ-ラクターゼからなる群より選択される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
第1のマルチ色素コンジュゲートがキノンメチド前駆体部分を含み、第1の酵素がアルカリホスファターゼである、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
(i)生物学的試料を、第2の標的に特異的な第2の検出プローブに接触させて、第2の検出プローブ-標的複合体を形成すること;
(ii)生物学的試料を、第2の酵素を含む、第2の検出プローブに特異的な第2の標識コンジュゲートと接触させること;及び
(iii)生物学的試料を、第2のマルチ色素コンジュゲートと接触させること
をさらに含み、
第2のマルチ色素コンジュゲートが、請求項1から8のいずれか一項に記載のマルチ色素コンジュゲートであり、第2の酵素が、第2のマルチ色素コンジュゲートを、第2の標的の近位で生物学的試料に又は直接第2の標的に共有結合する第2の反応中間体に変換し、第1のマルチ色素コンジュゲートによって呈示されるシグナルが、第2のマルチ色素コンジュゲートによって呈示される色とは異なる、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第2のマルチ色素コンジュゲートがチラミド部分を含み、第1の酵素がホースラディッシュペルオキシダーゼである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程のうちの一又は複数が、自動システムにより実施される、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
(i)請求項1から8のいずれか一項に記載のマルチ色素コンジュゲート;
(ii)標的に特異的な検出プローブ;及び
(iii)検出プローブに特異的な標識コンジュゲート
を備えるキット。
【請求項17】
検出プローブが一次抗体であり、標識コンジュゲートが抗抗体抗体であり、且つ抗抗体抗体が酵素にコンジュゲートされている、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
検出プローブが、標識にコンジュゲートされた核酸プローブであり、標識コンジュゲートが抗標識抗体であり、且つ抗標識抗体が酵素にコンジュゲートされている、請求項16に記載のキット。
【請求項19】
標的がCD8、Ki-67、又は染色体-17である、請求項16から18のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
産業上の利用可能性
本開示は、化学及び診断の分野における産業上の利用可能性を有する。
【背景技術】
【0002】
免疫組織化学(IHC)は、特定の抗原に特異的な抗体を使用して、生物学的試料中の、タンパク質のような抗原を、検出し、位置を特定し、及び/又は定量化する方法を指す。IHCは、組織試料内のどこに特定のタンパク質が位置するかを正確に特定する実質的な利点を提供する。それはまた、組織自体を検査するための効果的な方法である。in situハイブリダイゼーション(ISH)は、核酸を、検出し、位置を特定し、定量化する方法を指す。IHCとISHはどちらも、様々な生物学的試料、例えば組織(例えば、新鮮凍結、ホルマリン固定、パラフィン包埋)及び細胞学的試料に対して実施することができる。標的の認識は、標的が核酸であるか又は抗原であるかにかかわらず、様々な標識(例えば、発色性、蛍光性、発光性、放射性)を使用して検出することができる。臨床環境で標的を頑強に検出し、位置を特定し、定量化するためには、低量の細胞マーカーを確実に検出する能力が診断のためにますます重要になるため、認識事象の増幅が望ましい。例えば、単一の抗原検出事象に応答してマーカーの部位に数百又は数千の標識分子を沈着させることにより、その認識事象を検出する能力が増幅によって増強される。
【0003】
増幅には時に、バックグランドシグナルの増加として現れる非特異的シグナルといった有害事象が伴う。バックグランドシグナルの増加は、低度であるが臨床的に有意な発現に関連している可能性のあるわずかなシグナルを分かりにくくすることにより、臨床分析を妨害する。したがって、認識事象の増幅は望ましいことであるが、バックグランドシグナルを増加させない増幅方法が極めて望ましい。そのような一の方法はチラミドシグナル増幅(TSA)であり、これは触媒レポーター沈着法(CARD)とも呼ばれている。米国特許第5583001号には、検出可能な標識シグナルを増幅する触媒レポーター沈着に依存する被分析物依存性酵素活性化システムを用いて被分析物を検出及び/又は定量化するための方法が開示されている。CARD又はTSA法における酵素の触媒作用は、標識されたフェノール分子を酵素と反応させることにより増強される。TSAを利用する近代的方法は、IHC及びISHアッセイから得られたシグナルを効果的に増加させるが、大きなバックグランドシグナルの増幅を生じさせない(例えば、チラミド増幅試薬に関連する開示のために、参照によりその全体を本明細書に包含する米国特許出願公開2012/0171668を参照)。これら増幅方式のための試薬は、以前は達成できなかった強固な診断能を提供するために、臨床的に重要な標的に適用されている(OPTIVIEW(登録商標)Amplification Kit,Ventana Medical Systems,Tucson AZ,Catalog No.760-099)。
【0004】
TSAは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とチラミドとの間の反応を利用する。Hの存在下において、チラミドは、タンパク質上で電子豊富なアミノ酸残基と優先的に反応する高度に反応性で寿命の短いラジカル中間体に変換される。ここで、共有結合した検出可能な標識は、種々の発色視覚化技術により及び/又は蛍光顕微鏡検査により検出することができる。空間的及び形態的詳細が高く評価されるIHC及びISHなどの固相イムノアッセイでは、ラジカル中間体の寿命が短いことにより、生成の部位近傍の組織上でタンパク質に対するチラミドの共有結合が起こり、不連続の特異的シグナルを生じさせる。
【0005】
2015年2月20日に出願された「Quinone Methide Analog Signal Amplification」という名称の同時継続出願PCT/EP2015/0533556には、TSA同様、バックグランドシグナルを増加させずにシグナル増幅を増加させるために使用されうる代替的技術(「QMSA」)が記載されている。実際、PCT/EP2015/0533556には、新規のキノンメチドアナログ前駆体と、生物学的試料中における一又は複数の標的の検出にこのキノンメチドアナログ前駆体を使用する方法とが記載されている。そこでは、検出方法は、試料を検出プローブと接触させる工程と、次いで試料を、酵素を含む標識化コンジュゲートと接触させる工程とを含むものとして記載されている。酵素は検出可能な標識を含むキノンメチドアナログ前駆体と相互作用し、反応性のキノンメチドアナログを形成し、これは標的の近位で生物学的試料に又は直接標的に結合する。ここで検出可能な標識が検出される。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様で開示されるのは、組織反応部分及び少なくとも二つの発色団を含むマルチ色素コンジュゲートであり、この組織反応部分は、キノンメチド前駆体又はチラミド若しくはその誘導体からなる群より選択され、少なくとも二つの発色団は、マルチ色素コンジュゲートが、少なくとも二つの色素原それぞれとは異なる色又はシグナルを呈示又は生成することを可能にする。
【0007】
いくつかの実施態様では、少なくとも二つの発色団は、限定されないが、ローダミン800、TAMRA、Dabsyl、Cy5、Dabcyl、Cy3、Cy7、Cy3.5、CyB、Cy5.5、及びフルオレセインからなる群より選択される。いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、少なくとも二つの発色団の色(又はシグナル)のいずれとも異なる色(又はシグナル)を呈示する。
【0008】
いくつかの実施態様では、少なくとも二つの発色団は、多機能性リンカーを介して組織反応部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施態様では、多機能性リンカーはヘテロ二機能性リンカーである。いくつかの実施態様では、ヘテロ二機能性リンカーはリジン又はその誘導体である。いくつかの実施態様では、多機能性リンカーはデンドリマーである。いくつかの実施態様では、デンドリマーは、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、Janusデンドリマー、及びビス-MPAデンドリマーからなる群より選択される。
【0009】
いくつかの実施態様では、多機能性リンカーは、ノルスペルミジン及びスペルミンからなる群より選択される。いくつかの実施態様では、多機能性リンカーは、約50g/molから約300g/molの分子量を含む。いくつかの実施態様では、少なくとも二つの発色団のうちの第1の発色団は、組織反応部分に直接的又は間接的にコンジュゲートされ、少なくとも二つの発色団のうちの第2の発色団は、第1の発色団の発色団に直接的又は間接的にコンジュゲートされる。
【0010】
本発明の別の態様で開示されるのは、式(I)
[式中、
「TRM」は、組織反応部分(例えば、本明細書においてさらに開示される、キノンメチド前駆体、チラミド、又はチラミド誘導体)であり;Qは、2から40の炭素原子を有し、且つO、N、又はSより選択される一又は複数のヘテロ原子を任意選択的に有する、分枝状又は非分枝状、線形又は環状、置換又は無置換の基であり;Zは、結合、又は2から20の炭素原子を有し、且つO、N、又はSより選択される一又は複数のヘテロ原子を任意選択的に有する、分枝状又は非分枝状、線形又は環状、置換又は無置換、飽和又は不飽和の基であり;Xは、H、-[(Q)-[A];-N-([Z]-[X]);又は-C(H)([Z]-[X])であり;Aは、検出可能部分(例えば色素原)であり;dは、0又は1であり;eは、1から4の範囲の整数であり;sは、0又は1から4の範囲の整数であり;tは、0又は1から10の範囲の整数であり;但し、マルチ色素コンジュゲートは、少なくとも二つのA基(例えば二つの色素原)を含む]
を有するマルチ色素コンジュゲートである。
【0011】
いくつかの実施態様では、TRMは、式(II):
[式中、
は、ホスフェート、アミド、ニトロ、尿素、サルフェート、メチル、エステル、ベータ-ラクタム、及び糖であり;Rは、ハロゲン化合物であり;R、R、R、及びRは、独立して、水素又は1から4の炭素原子を有する脂肪族基より選択され;Rは、-(CHNH-、-O(CHNH-、-N(H)C(O)(CHNH-、-C(O)N(H)(CHNH-、-(CHO-、-O(CHO-、-O(CHCHO)-、-N(H)C(O)(CHO-、-C(O)N(H)(CHO-、-C(o)N(H)(CHCHO)-、-(CHS-、-O(CHS-、-N(H)C(O)(CHS-、-C(O)N(H)(CHS-、-(CHNH-、-C(O)N(H)(CHCHO)CHCHNH、-C(O)(CHCHO)CHCHNH-、-C(O)N(H)(CH)NHC(O)CH(CH)(CHNH-、又は-N(H)(CHNH-(wは1から12の範囲の整数である)である]
の構造を有する。
【0012】
いくつかの実施態様では、TRMは、式(IIc):
[式中、wは、1から12の範囲である]
の構造を有する。いくつかの実施態様では、wは2から6の範囲である。
【0013】
いくつかの実施態様では、TRMは、チラミド又はチラミド誘導体である。
【0014】
いくつかの実施態様では、Qは、式(IVa)
[式中、
fは、0、1、又は2であり;Rは、結合、O、S、又はN(R)(R)であり;R及びRは、独立して、H、C-Cアルキル基、F、Cl、又は-N(R)(R)であり;R及びRは、独立して、CH又はHより選択され;R及びR10は、独立して、結合、又はカルボニル、アミド、イミド、エステル、エーテル、アミン、チオン、チオールより選択される基であり;jは、1から8の範囲の整数である]
の構造を有する。
【0015】
いくつかの実施態様では、Qは、式(IVb):
[式中、
fは、0、1、又は2であり;Rは、結合、O、S、又はN(R)(R)であり;R及びRは、独立して、CH又はHであり;R及びR10は、独立して、結合、又はカルボニル、アミド、イミド、エステル、エーテル、アミン、若しくはチオールより選択される基であり;jは、1から8の範囲の整数である]
の構造を有する。
【0016】
いくつかの実施態様では、Zは、式(Va):
[式中、
17及びR18は、独立して、結合、又はカルボニル、アミド、イミド、エステル、エーテル、-NH、-N-、チオン、若しくはチオールより選択される基であり;R14は、結合、カルボニル、イミン、又はチオンであり;Vは、結合、-C(R15)(R16)-、-O-、-S-、-N(R16)-、-N(X)-;-C(R15)(X);-C(X)-、又は-C(R15)(N(R16)(X))であり;Xは、本明細書において規定される通りであり;R及びRは、独立して、H、C-Cアルキル基、F、Cl、又はN(R15)(R16)であり;R15及びR16は、独立して、結合、又は-CH若しくはHであり;gは、0又は1から4の範囲の整数であり;hは、0又は1から8の範囲の整数であり;iは、1又は2である]
の構造を有する。
【0017】
いくつかの実施態様では、gは0であり、R14はカルボニルであり、Vは-C(R15)(N(R16)(X))であり、R15はHであり、R16はHであり、hは2から6の範囲である。いくつかの実施態様では、gは0であり、R14はカルボニルであり、Vは-C(R15)(N(R16)(X))であり、R15はHであり、R16はHであり、hは2から4の範囲である。いくつかの実施態様では、gは0であり、R14はカルボニルであり、Vは-C(R15)(N(R16)(X))であり、R15はHであり、R16はHであり、hは4である。いくつかの実施態様では、gは0であり、R14はカルボニルであり、Vは-C(R15)(N(R16)(X))であり、R15はHであり、R16はHであり、R及びRはHであり、hは2から4の範囲である。いくつかの実施態様では、gは0であり、R14はカルボニルであり、Vは-C(R15)(N(R16)(X))であり、R15はHであり、R16はHであり、R及びRはHであり、Rは結合であり、R10はアミンであり;hは2から4の範囲である。いくつかの実施態様では、gは0であり、R14はカルボニルであり、Vは-C(R15)(N(R16)(X))であり、R15はHであり、R16はHであり、R及びRはHであり、Rは結合であり、R10はアミンであり;Xは-[(Q)-[A]であり、d、n、及びeは、それぞれ1であり、hは2から4の範囲である。
【0018】
いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、構造:
[式中、Aは検出可能部分である]
を有する。いくつかの実施態様では、各A基は異なる検出可能部分を含む。
【0019】
いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、構造:
[式中、Aは検出可能部分である]
を有する。いくつかの実施態様では、各A基は異なる検出可能部分を含む。
【0020】
いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、構造:
[式中、Aは検出可能部分である]
を有する。いくつかの実施態様では、各A基は異なる検出可能部分を含む。
【0021】
いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、構造:
[式中、Aは検出可能部分である]
を有する。いくつかの実施態様では、各A基は異なる検出可能部分を含む。
【0022】
いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、構造:
[式中、Aは検出可能部分である]
を有する。いくつかの実施態様では、各A基は異なる検出可能部分を含む。
【0023】
いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、構造:
を有する。
【0024】
いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、構造:
を有する。
【0025】
いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、構造:
を有する。
【0026】
いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、構造:
を有する。
【0027】
いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、構造:
を有する。
【0028】
いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、構造:
を有する。
【0029】
本発明の別の態様で開示されるのは、生物学的試料中の第1の標的を検出する方法であり、この方法は、生物学的試料を第1の標的に特異的な第1の検出プローブと接触させて、第1の検出プローブ-標的複合体を形成すること;生物学的試料を、第1の酵素を含む、第1の検出プローブに特異的な第1の標識コンジュゲートと接触させること;及び生物学的試料を、少なくとも二つの色素原にコンジュゲートされた組織反応部分を含む第1のマルチ色素コンジュゲートと接触させることを含み、第1の酵素は、第1のマルチ色素コンジュゲートを、第1の標的の近位で生物学的試料に又は直接第1の標的に共有結合する第1の反応中間体に変換する。
【0030】
いくつかの実施態様では、第1の検出プローブは第1の一次抗体であり、第1の標識コンジュゲートは第1の酵素にコンジュゲートされた抗種抗体を含む。いくつかの実施態様では、第1の検出プローブは、検出可能な標識にコンジュゲートされた第1の核酸プローブを含み、第1の標識コンジュゲートは、第1の抗体にコンジュゲートされた抗標識抗体を含む。いくつかの実施態様では、第1の酵素は、ホスファターゼ、ホスホジエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、アミダーゼ、プロテアーゼ、ニトロレダクターゼ、ウレアーゼ、スルファターゼ、チトクロームP450、アルファ-グルコシダーゼ、ベータ-グルコシダーゼ、ベータ-ラクタマーゼ、アルファ-グルコロニダーゼ(glucoronidase)、ベータ-グルコロニダーゼ(glucoronidase)、アルファ-5ガラクトシダーゼ、ベータガラクトシダーゼ、ベータ-ラクタマーゼ、ノイラミニダーゼ、アルファ-ラクターゼ及びベータ-ラクターゼからなる群より選択される。いくつかの実施態様では、第1のマルチ色素コンジュゲートはキノンメチド前駆体部分を含み、第1の酵素はアルカリホスファターゼである。いくつかの実施態様では、第1のマルチ色素コンジュゲートはチラミド又はチラミド誘導体部分を含み、第1の酵素はホースラディッシュペルオキシダーゼである。いくつかの実施態様では、第1のマルチ色素コンジュゲートの少なくとも二つの発色団は、TAMRA、Dabsyl、Cy5、Dabcyl、Cy3、ローダミン800、及びフルオレセインからなる群より選択される。いくつかの実施態様では、少なくとも二つの発色団は、多機能性リンカーを介して組織反応部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施態様では、多機能性リンカーはリジンである。いくつかの実施態様では、多機能性リンカーはデンドリマーである。いくつかの実施態様では、第1のマルチ色素コンジュゲートの少なくとも二つの発色団のうちの第1の発色団は、組織反応部分に直接的又は間接的にコンジュゲートされ、少なくとも二つの発色団のうちの第2の発色団は、第1の発色団の発色団に直接的又は間接的にコンジュゲートされる。
【0031】
いくつかの実施態様では、方法は、生物学的試料を、第2の標的に特異的な第2の検出プローブに接触させて、第2の検出プローブ-標的複合体を形成すること;生物学的試料を、第2の酵素を含む、第2の検出プローブに特異的な第2の標識コンジュゲートと接触させること;及び生物学的試料を、少なくとも二つの色素原にコンジュゲートされた組織反応部分を含む第2のマルチ色素コンジュゲートと接触させることをさらに含み、第2の酵素は、第2のマルチ色素コンジュゲートを、第2の標的の近位で生物学的試料に又は直接第2の標的に共有結合する第2の反応中間体に変換し、第1のマルチ色素コンジュゲートによって呈示される色は、第2のマルチ色素コンジュゲートによって呈示される色とは異なる。
【0032】
いくつかの実施態様では、第2のマルチ色素コンジュゲートはチラミド部分を含み、第1の酵素はホースラディッシュペルオキシダーゼである。いくつかの実施態様では、第2のマルチ色素コンジュゲートはキノンメチド前駆体部分を含み、第2の酵素はアルカリホスファターゼである。いくつかの実施態様では、第2のマルチ色素コンジュゲートの少なくとも二つの発色団は、TAMRA、Dabsyl、Cy5、Dabcyl、Cy3、ローダミン800、及びフルオレセインからなる群より選択される。いくつかの実施態様では、第2のマルチ色素コンジュゲートの少なくとも二つの発色団は、多機能性リンカーを介して組織反応部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施態様では、多機能性リンカーはリジンである。いくつかの実施態様では、多機能性リンカーはデンドリマーである。いくつかの実施態様では、第2のマルチ色素コンジュゲートの少なくとも二つの発色団のうちの第1の発色団は、組織反応部分に直接的又は間接的にコンジュゲートされ、少なくとも二つの発色団のうちの第2の発色団は、第1の発色団の発色団に直接的又は間接的にコンジュゲートされる。
【0033】
いくつかの実施態様では、方法は、生物学的試料を、第2の標的に特異的な第2の検出プローブに接触させて、第2の検出プローブ-標的複合体を形成すること;生物学的試料を、第2の酵素を含む、第2の検出プローブに特異的な第2の標識コンジュゲートと接触させること;及び生物学的試料を、TSA単一色素原コンジュゲート又はQMSA単一色素原コンジュゲートと接触させること(例えば、ここで言及することによりその開示内容全体を本明細書に包含するPCT/EP2015/0533556を参照)をさらに含み、第2の酵素は、TSA又はQMSA単一色素原コンジュゲートを、第2の標的の近位で生物学的試料に又は直接第2の標的に共有結合する第2の反応中間体に変換し、第1のマルチ色素コンジュゲートによって呈示される色は、TSA又はQMSA単一色素原コンジュゲートによって呈示される色とは異なる。
【0034】
本発明の別の態様で開示されるのは、生物学的試料内部の標的を検出する方法において,(i)生物学的試料を、第1の標的に特異的な第1の検出プローブと接触させて、第1の検出プローブ-標的複合体を形成すること;(ii)生物学的試料を、第1の酵素を含む、第1の検出プローブに特異的な第1の標識コンジュゲートと接触させること;(iii)生物学的試料を、(a)キノンメチド前駆体又はチラミド若しくはその誘導体より選択される組織反応部分と少なくとも二つの発色団とを含む第1のマルチ色素コンジュゲート(b)第1のTSA-単一色素原コンジュゲート、及び(c)第1のQMSA-単一色素原コンジュゲートからなる群より選択される第1のコンジュゲートと接触させることであって、第1の酵素が、第1のコンジュゲートコンジュゲートを、第1の標的の近位で生物学的試料に又は直接第1の標的に共有結合する第1の反応中間体に変換する、生物学的試料を第1のコンジュゲートと接触させること;(iv)生物学的試料を、第2の標的に特異的な第2の検出プローブに接触させて、第2の検出プローブ-標的複合体を形成すること;(v)生物学的試料を、第2の酵素を含む、第2の検出プローブに特異的な第2の標識コンジュゲートと接触させること;及び(vi)生物学的試料を、(a)キノンメチド前駆体又はチラミド若しくはその誘導体からなる群より選択される組織反応部分と少なくとも二つの発色団とを含む第2のマルチ色素コンジュゲート;(b)第2のTSA-単一色素原コンジュゲート、及び(c)第2のQMSA-単一色素原コンジュゲートからなる群より選択される第2のコンジュゲートと接触させることであって、第2の酵素が、第2のコンジュゲートを、第2の標的の近位で生物学的試料に又は直接第2の標的に共有結合する第2の反応中間体に変換する、生物学的試料を第2のコンジュゲートと接触させることを含み、第1のコンジュゲートと第2のコンジュゲートは異なる色を呈示する、方法である。
【0035】
本発明の別の態様で開示されるのは、生物学的試料中の第1の標的を検出する方法において、生物学的試料を、第1の標的に特異的な第1の検出プローブと接触させて、第1の検出プローブ-標的複合体を形成すること;生物学的試料を、第1の酵素を含む、第1の検出プローブに特異的な第1の標識コンジュゲートと接触させること;及び生物学的試料を式(I)
[式中、「TRM」は、組織反応部分であり;Qは、2から40の炭素原子を有し、且つO、N、又はSより選択される一又は複数のヘテロ原子を任意選択的に有する、分枝状又は非分枝状、線形又は環状、置換又は無置換の基であり;Zは、結合、又は2から20の炭素原子を有し、且つO、N、又はSより選択される一又は複数のヘテロ原子を任意選択的に有する、分枝状又は非分枝状、線形又は環状、置換又は無置換、飽和又は不飽和の基であり;Xは、H、-[(Q)-[A];-N-([Z]-[X]);又は-C(H)([Z]-[X])であり;Aは、検出可能部分であり;dは、0又は1であり;eは、1から4の範囲の整数であり;sは、0又は1から4の範囲の整数であり;tは、0又は1から10の範囲の整数であり;但し、マルチ色素コンジュゲートは少なくとも二つのA基(例えば少なくとも二つの色素原)を含む]の第1のマルチ色素コンジュゲートと接触させることを含み、第1の酵素は、第1のマルチ色素コンジュゲートを、第1の標的の近位で生物学的試料に又は直接第1の標的に共有結合する第1の反応中間体に変換する、方法である。
【0036】
いくつかの実施態様では、方法は、(i)生物学的試料を、第2の標的に特異的な第2の検出プローブに接触させて、第2の検出プローブ-標的複合体を形成すること;(ii)生物学的試料を、第2の酵素を含む、第2の検出プローブに特異的な第2の標識コンジュゲートと接触させること;及び(iii)生物学的試料を、式(I)の第2のマルチ色素コンジュゲートに接触させることをさらに含み、第1のマルチ色素コンジュゲートによって呈示される色は、第2のマルチ色素コンジュゲートによって呈示される色とは異なる。
【0037】
いくつかの実施態様では、Qは、式(IVa):
[式中、
fは、0、1、又は2であり;Rは、結合、O、S、又はN(R)(R)であり;R及びRは、独立して、H、C-Cアルキル基、F、Cl、又は-N(R)(R)であり;R及びRは、独立して、CH又はHより選択され;R及びR10は、独立して、結合、又はカルボニル、アミド、イミド、エステル、エーテル、アミン、チオン、チオールより選択される基であり;jは、1から8の範囲の整数である]
の構造を有する。
【0038】
いくつかの実施態様では、(Q)は、式(IVb):
[式中、
fは、0、1、又は2であり;Rは、結合、O、S、又はN(R)(R)であり;R及びRは、独立して、CH又はHであり;R及びR10は、独立して、結合、又はカルボニル、アミド、イミド、エステル、エーテル、アミン、若しくはチオールより選択される基であり;jは、1から8の範囲の整数である]
の構造を有する。
【0039】
いくつかの実施態様では、Zは、式(Va):
[式中、
17及びR18は、独立して、結合、又はカルボニル、アミド、イミド、エステル、エーテル、-NH、-N-、チオン、若しくはチオールより選択される基であり;R14は、結合、カルボニル、イミン、又はチオンであり;
Vは、結合、-C(R15)(R16)-、-O-、-S-、-N(R16)-、-N(X)-;-C(R15)(X);-C(X)-、又は-C(R15)(N(R16)(X))であり;Xは、本明細書に規定される通りであり;R及びRは、独立して、H、C-Cアルキル基、F、Cl、又はN(R15)(R16)であり;R15及びR16は、独立して、結合、又は-CH若しくはHであり;gは、0又は1から4の範囲の整数であり;hは、0又は1から8の範囲の整数であり;iは、1又は2である]の構造を有する。
【0040】
本発明の別の態様で開示されるのは:
(i)式(I):
[式中、
「TRM」は、組織反応部分であり;Qは、2から40の炭素原子を有し、且つO、N、又はSより選択される一又は複数のヘテロ原子を任意選択的に有する、分枝状又は非分枝状、線形又は環状、置換又は無置換の基であり;Zは、結合、又は2から20の炭素原子を有し、且つO、N、又はSより選択される一又は複数のヘテロ原子を任意選択的に有する、分枝状又は非分枝状、線形又は環状、置換又は無置換、飽和又は不飽和の基であり;Xは、H、-[(Q)-[A];-N-([Z]-[X]);又は-C(H)([Z]-[X])であり;Aは、検出可能部分であり;dは、0又は1であり;eは、1から4の範囲の整数であり;sは、0又は1から4の範囲の整数であり;tは、0又は1から10の範囲の整数であり;マルチ色素コンジュゲートが少なくとも二つのA基を含む]を有するマルチ色素コンジュゲート;
(ii)標的に特異的な検出プローブ;及び
(iii)第1の検出プローブに特異的な標識コンジュゲート
を備えるキットである。
【0041】
いくつかの実施態様では、検出プローブは一次抗体である。いくつかの実施態様では、検出プローブは標識にコンジュゲートされた核酸プローブである。いくつかの実施態様では、標識コンジュゲートは抗抗体抗体であり、抗抗体抗体は酵素にコンジュゲートされる。いくつかの実施態様では、標識コンジュゲートは抗標識抗体であり、抗標識抗体は酵素にコンジュゲートされる。
【0042】
TSA及びQMSAの一の限界は、コンジュゲートされる色素が、チラミド又はキノンメチドが結合できる(反応性のTSA又はQMSA単一色素原コンジュゲートを形成するために)化学的に反応性の官能基を含むという要件である。特定の色を有するTSA又はQMSA単一色素原コンジュゲートの生成を可能にするそのような化学的に反応性の基を有する多くの化合物が存在する一方で、必要な反応性官能基を有する色素を欠くために利用できない他の望ましい色空間(例えば緑、赤、及び紫)が存在する。
【0043】
本発明者らは、TSA及びQMSA技術の両方による発色性IHC及びISH染色のために利用可能な色のパレットを拡張できる、新規の発色系を発見した。実際、新規の発色系は、単一色素コンジュゲート(例えばTSA又はQMSA単一色素原コンジュゲート)を使用することでは現在は達成できない色を呈する別個の化学化合物である。
【0044】
さらに、新規発色系の使用は、コンジュゲート混合により新規の色を生成する現在の手法より優れている。第1に、本発明者らは、異なる色素-チラミド(TSA単一色素原コンジュゲート)及び色素-キノンメチドコンジュゲート(QMSA単一色素原コンジュゲート)がそれらの同族酵素及び/又は組織と様々な速度で反応し、これにより染色時に色の勾配が生じうることを発見した。例えば、マゼンダのコンジュゲートより速く反応する黄色のコンジュゲートの場合、マゼンダのコンジュゲートと黄色のコンジュゲートとを混合すると(赤にするため)、より高い発現組織においてオレンジ色の色相が強くなり、より低い発現領域ではパープルが強くなる。本発明者らは、本明細書に記載されるようなマルチ色素コンジュゲートの使用は、それが別個の分子であるために、この問題を有さないことを発見した。
【0045】
加えて、本発明者らは、本発明の新規のマルチ色素コンジュゲートが、単一色素コンジュゲート(例えばTSA又はQMSA単一色素原コンジュゲート)の混合物を使用する場合と比較して、全体のシグナルを高めることを発見した。いずれかの特定の理論に拘束されることを望むものではないが、限定された数の共有結合部位が組織上に存在することから、これは事実と考えられ、二つ以上の色素原コンジュゲートを混合することは、別個の化合物を利用することと比較して、全体の染色濃度を効果的に低下させる。例えば、全体のシグナルが2mMで飽和する場合、色素原コンジュゲートを1:1の比で混合することにより新規の色を生成するために、1mMの各色素が使用されるであろう。しかしながら、両方の色素を単一の分子上に含む1mMのマルチ色素コンジュゲートを使用することにより、二倍の色素を沈着させることができ、その結果全体のシグナルが有意に高まる。
【0046】
最後に、本発明者らは、製造の観点から、複数のコンジュゲートを特定の比率で混合するという要件により、様々なロットの材料が変色する可能性が生じることを発見した。単一分子上に両方の色素を含むマルチ色素コンジュゲートの使用は、このような問題の可能性を排除する。これら利点及び他の利点についてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本特許又は出願ファイルは、カラー図面を少なくとも一点含む。カラー図面を伴う本特許又は特許出願文献のコピーは、請求及び必要な料金の支払いに応じて特許庁提供へされる。
【0048】
図1】一又は複数の特異的結合部分及び/又はマルチ色素コンジュゲートを利用して一又は複数の標的を検出する工程を示すフロー図である。
図2】キノンメチド前駆体部分を含むマルチ色素コンジュゲートと標的上に沈着した酵素との反応を示す。
図3】チラミド部分を含むマルチ色素コンジュゲートと標的上に沈着した酵素との反応を示す。
図4】CD8標的が赤く染色された(白黒の図面では黒及び濃いグレーの領域として見える)、キノンメチド-TAMRA-Dabsylマルチ色素コンジュゲートで染色した組織試料を示している。
図5】CD8標的が紫で染色された(白黒の図面では濃いグレーの点として見える)、チラミド-TAMRA-Cy5マルチ色素コンジュゲートで染色された組織試料を示している。
図6】CD8標的が赤く染色された(白黒の図面ではグレー及び濃いグレーの点として見える)、チラミド-TAMRA-FITCマルチ色素コンジュゲートで染色した組織試料を示している。
図7】Ki-67標的が赤く染色された(白黒の図面では濃いグレーの点として見える)、キノンメチド-Dabcyl-Cy3マルチ色素コンジュゲートで染色した組織試料を示している。
図8】Ki-67標的が赤く染色された(白黒の図面では濃いグレー及び黒の点として見える)、キノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートで染色した組織試料を示している。
図9】染色体17標的が赤く染色された(白黒の図面では黒い点として見える)、キノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートで染色した組織試料を示している。
図10】二つの異なる色素原の組み合わせと、それら二つの異なる色素原が結合した後に生じる色を示している。
図11】二つの異なる色素原の組み合わせと、それら二つの異なる色素原が結合した後に生じる色を示している。
図12】異なる「Cy」色素原の変異体を規定している。
図13A-B】特定の二重色素コンジュゲートのスペクトルを示している。
図13C-D】特定の二重色素コンジュゲートのスペクトルを示している。
図14】Ki-67標的が緑に染色された(白黒の図面では薄いグレーの点として見える)、キノンメチドCy5-ローダミン800二重色素で染色した組織試料を示している。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本明細書に開示されるのは新規のコンジュゲートであり、このコンジュゲートは少なくとも二つの検出可能部分を含む。(本明細書では、「マルチ色素コンジュゲートと呼ばれる。)マルチ色素コンジュゲートは、QMSA及びTSAプロトコールにおける使用に適している。さらに開示されるのは、生物学的試料中の一又は複数の標的の検出を可能にするためにマルチ色素コンジュゲートを使用する方法である。
【0050】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈から判断して明らかにそうでないと分かる以外は、複数の指示物を含む。同様に、「又は」という語は、文脈から判断して明らかにそうでないと分かる以外は、「及び」を含むことが意図されている。用語「含む(includes)」は、「A又はBを含む」が、A、B、又はA及びBを含むことを意味するように、包括的に定義される。
【0051】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」などは、互換可能に使用され、同一の意味を有する。同様に、「含む(comprise)」、「含む(include)」、「有する(has)」などは互換可能に使用され、同じ意味を有する。具体的には、これら用語の各々は、一般的な米国特許法の「含む(comprising)」の定義と一致するように定義され、したがって「少なくとも以下を」を意味する開いた意味の用語であり、さらには追加の特徴、制限、態様などを排除しない。したがって、例えば、構成要素a、b、及びcを有するデバイス」は、このデバイスが少なくとも構成要素a、b及びcを含むことを意味する。同様に表現:「工程a、b、及びcを含む方法」は、この方法が少なくとも工程a、b、及びcを含むことを意味する。さらに、工程及びプロセスは、本明細書において特定の順序で概説されるが、当業者であれば、工程及びプロセスの順序付けは変更可能であることが分かるであろう。
【0052】
本明細書で使用される場合、アルカリホスファターゼ(AP)は、リン酸-酸素結合を破壊し、一時的に中間酵素-基質結合を結合することによって、リン酸基有機エステルを(加水分解により)除去し、移動させる酵素である。例えは、APは、ナフトールリン酸エステル(基質)を、フェノール化合物とリン酸塩に加水分解する。フェノールは、無色のジアゾニウム塩(色素原)に結合し、不溶性で有色のアゾ染色を生成する。
【0053】
本明細書で使用される、「Ab」と略すこともある用語「抗体」は、非限定的な例として、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、それらの組み合わせを含む免疫グロブリン又は免疫グロブリン様分子と、任意の脊椎動物(例えばヒト、ヤギ、ウサギ、及びマウスのような哺乳動物)における免疫応答中に生成される類似の分子と、対象の分子(又は対象の分子に極めて類似の群)に特異的に結合し、他の分子への結合を実質的に除外する抗体断片とを指す。抗体は、抗原のエピトープを特異的に認識してそれに結合する、少なくとも一の軽鎖又は重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドリガンドをさらに指す。抗体は重及び軽鎖から構成され、その各々は、可変重(VH)領域及び可変軽(VH)領域と呼ばれる可変領域を有しうる。VH領域及びVL領域は組み合わさって、抗体により認識される抗原の結合を担う。抗体という用語は、インタクトな免疫グロブリン、及び当技術分野で周知の変異体及びその部分も含む。
【0054】
本明細書で使用される語句「抗体コンジュゲート」は、一又は複数の標識に(直接的又は間接的に)コンジュゲートされる抗体を指し、この抗体コンジュゲートは特定の標的に特異的であり、標識は、例えば二次抗体(抗標識抗体)を用いて、(直接的又は間接的に)検出することができる。例えば、抗体コンジュゲートは、例えばポリマーリンカー及び/又はスペーサーを介してハプテンと結合してもよく、抗体コンジュゲートは、ハプテンを用いて、間接的に検出されうる。別の例として、抗体コンジュゲートは、例えばポリマーリンカー及び/又はスペーサーを介してフルオロフォアと結合してもよく、抗体コンジュゲートは、直接的に検出されうる。抗体コンジュゲートは、米国特許出願公開第2014/0147906号及び米国特許第8658389号;同第8686122号;同第8618265号;同第8846320号;及び同第8445191号にさらに記載されている。さらなる例として、用語「抗体コンジュゲート」は、酵素、例えばHRP又はAPにコンジュゲートされる抗体を含む。
【0055】
本明細書において使用される用語「抗原」は、抗体分子又はT細胞受容体などの特異的体液性又は細胞性免疫の産物によって特異的に結合され得る化合物、組成物又は物質を指す。抗原は、例えばハプテン、単純中間代謝産物、糖(例えばオリゴ糖)、脂質、及びホルモン、並びに複雑な炭水化物(例えば多糖類)、リン脂質、核酸及びタンパク質などの巨大分子を含む任意の種類の分子でありうる。
【0056】
本明細書において使用される用語「生物学的試料」は、特にバクテリア、酵母、原生動物、及びアメーバのような単細胞生物、及び多細胞生物(例えば、健康な若しくは健康に見えるヒト対象、又はがんなどの、診断若しくは調査される症状若しくは疾患を患うヒト患者由来の試料を含む、植物又は動物)を含むがこれらに限定されない任意の生体から得られる、排出される又は分泌される任意の固体又は流体の試料でありうる。例として、生物学的試料は、生体液、例えば血液、血漿、血清、尿、胆汁、腹水、唾液、脳脊髄液、水性若しくは硝子様液、又はあらゆる体分泌、漏出液、滲出液(例えば、膿瘍又は感染若しくは炎症の他のいずれかの部位より得られる液体)、又は関節(例えば、通常の関節若しくは疾患の影響を受ける関節)より得られる液体でありうる。生物学的試料はまた、あらゆる器官又は組織より得られる試料(生検又は剖検試料、例えば腫瘍生検を含む)でもよく、あるいは細胞(一次細胞又は培養細胞)又はあらゆる細胞、組織若しくは器官により左右される媒体を含むこともできる。いくつかの例では、生物学的試料は核抽出物である。特定の例では、試料は、品質管理試料、例えば開示される細胞ペレット切片試料の一つである。他の例では、試料は試験試料である。試料は、当業者により、当技術分野で知られるいずれかの方法を使用して調製することができる。試料は、常套的なスクリーニングのために対象から、又は遺伝的異常、感染若しくは新生物などの障害を有すると疑われる対象から得ることができる。本発明の方法の記載されている実施態様は、「正常」試料と呼ばれる、遺伝的異常、疾患、障害などを有しない試料にも適用することができる。試料は、一又は複数の検出プローブにより特異的に結合されうる複数の標的を含みうる。
【0057】
本明細書において使用される用語「発色団」は、その色を担う分子又は分子の一部を指す。色は、分子が可視光の特定の波長を吸収し、他の光を透過するか又は反射するときに、生じる。可視スペクトルの範囲内にある二つの異なる分子軌道間にエネルギー差を有する分子は、可視光を吸収し、したがって、発色団として適切に特徴づけられる。発色団への可視光入射は吸収され、したがって、電子を基底状態の分子軌道から励起状態の分子軌道へ励起する。
【0058】
本明細書において使用される用語「コンジュゲート」は、より大きなコンストラクトに共有結合した二以上の分子又は部分(巨大分子又は超分子の分子を含む)を指す。いくつかの実施態様では、コンジュゲートは、一又は複数の他の分子部分に共有結合した一又は複数の生体分子(例えばペプチド、タンパク質、酵素、糖、多糖、脂質、糖タンパク質、及びリポタンパク質)を含む。
【0059】
本明細書において使用される用語「結合する(couple)」又は「結合(coupling)」という用語は、一つの分子又は原子が別の分子又は原子へ接合、結合(bonding)(例えば共有結合)又は連結することを指す。
【0060】
本明細書において使用される用語「検出可能部分」は、試料中の標識の存在(即ち定性分析)及び/又は濃度(すなわち定量分析)を示す(例えば視覚的に、電子的に又は他の方法で)検出可能なシグナルを生成することのできる分子又は材料を指す。検出可能なシグナルは、光子(無線周波数、マイクロ波周波数、赤外周波数、可視周波数、及び紫外周波数の光子を含む)の吸収、放射、及び/又は散乱を含む、いずれかの既知の機構又は未だ発見されていない機構により生成することができる。検出可能部分の例は、発色性、蛍光性、リン光性及び発光性の分子及び材料を含む。
【0061】
本明細書で使用される「ハプテン」は、抗体と特異的に組み合わせることができる小分子であるが、通常、担体分子との組み合わせの場合を除いて、実質的に免疫原性であり得ない。いくつかの実施態様では、ハプテンは、限定されないが、ピラゾール(例えばニトロピラゾール;ニトロフェニル化合物;ベンゾフラザン;トリテルペン;尿素(例えばフェニル尿素);チオ尿素(例えばフェニルチオ尿素);ロテノン及びロテノン誘導体;オキサゾール(例えばオキサゾールスルホンアミド);チアゾール(例えばチアゾールスルホンアミド);クマリン及びクマリン誘導体;及びシクロリグナンを含む。ハプテンのさらなる非限定的な例には、チアゾール;ニトロアリール;ベンゾフラン;トリテペン(triperpene);及びシクロリグナンが含まれる。ハプテンの特定の例には、ジ-ニトロフェニル、ビオチン、ジゴキシゲニン、及びフルオレセイン、並びにそれらの任意の誘導体又は類似体が含まれる。他のハプテンは、米国特許第8846320号;第8618265号;第7695929号;第8481270号;及び第9017954号に記載されており、これらの開示は全体が参照により本明細書に援用される。ハプテン自体は、直接的な検出に適している場合があり、すなわち検出に適したシグナルを発する場合がある。
【0062】
本明細書で使用される場合、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)は、標識された分子にコンジュゲートされうる酵素である。この酵素は、適切な基質と共にインキュベートされると、標識された分子の有色の、蛍光定量的な、又は発光性の誘導体を生成し、その検出及び定量化を可能にする。HRPは、電子供与体の存在下において、まず酵素基質複合体を形成するように作用し、次いでその後電子供与体を酸化するように作用する。例えば、HRPは、3,3’-ジアミノベンジジントラハイドロクロライド(DAB)に作用して検出可能な色を生成する。HRPはまた、標識されたチラミドコンジュゲート、又はチラミド様反応性コンジュゲート(すなわち、フェルレート、クマル酸、コーヒー酸、桂皮酸、ドーパミンなど)に作用し、チラミドシグナル増幅(TSA)のための有色の又は蛍光性の又は無色のレポーター部分を沈着させる。
【0063】
本明細書において使用される用語「多重」、「多重の」、又は「多重化」は、試料中の複数の標的を同時に、実質的に同時に、又は連続的に検出することを指す。多重化は、多数の個別の核酸(例えばDNA、RNA、mRNA、miRNA)及びポリペプチド(例えばタンパク質)を個々に且つ任意の及びすべての組合せで同定及び/又は定量化することを含みうる。
【0064】
本明細書で使用される用語「一次抗体」は、組織試料中の標的タンパク質抗原に特異的に結合する抗体を指す。一般に、一次抗体は、免疫組織化学的手法において使用される第一の抗体である。
【0065】
本明細書において使用される「キノンメチド」は、対応するキノン上のカルボニル酸素の一つがメチレン基(CH)で置き換えられてアルケンを形成しているキノンアナログである。
【0066】
本明細書において使用される用語「二次抗体」は、一次抗体に特異的に結合し、それにより一次抗体と、存在する場合はその後の試薬(例えば標識、酵素など)との間に架橋を形成する抗体を指す。一般に、二次抗体は、免疫組織化学的手法において使用される第二の抗体である。
【0067】
本明細書において使用される用語「特異的結合実体」は、特異的結合対の一方のメンバーを指す。特異的結合対は、実質的に他の分子に結合することなく互いに結合することを特徴とする分子の対である(例えば、特異的結合対は、結合対の二つのメンバーのいずれかの生物学的試料内の他の分子との結合定数より少なくとも10-3大きい、10-4大きい、又は10-5大きい結合定数を有しうる)。特異的結合部分の特定の例には、特異的結合タンパク質(例えば抗体、レクチン、ストレプトアビジンなどのアビジン、及びプロテインA)が含まれる。特異的結合部分はまた、そのような特異的結合タンパク質によって特異的に結合される分子(又はその一部)を含むことができる。
【0068】
本明細書において使用される用語「標的」は、存在、位置、及び/又は濃度が決定される、又は決定可能な任意の分子を指す。標的分子の例には、タンパク質、核酸配列、及びハプテン、例えばタンパク質に共有結合したハプテンが含まれる。標的分子は、典型的には、特異的結合分子と検出可能な標識の一又は複数のコンジュゲートを用いて検出される。
【0069】
コンジュゲート
本発明は、複数の検出可能部分(例えば色素原)を含む新規のコンジュゲートを提供する。マルチ色素コンジュゲートの複数の検出可能部分は、同じでも異なっていてもよい。いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートの検出可能部分のうちの少なくとも二つは互いに異なる。例えば、マルチ色素コンジュゲートは、TAMRA色素原とCy5色素原を含む。他の実施態様では、マルチ色素コンジュゲートの検出可能部分のうちの少なくとも二つは、個々の検出可能部分が個々に異なるシグナルを呈示するように選択される。例えば、マルチ色素コンジュゲートは、TAMRA色素原とDabsyl色素原を含み、TAMRA及びDabsylの各々は異なる色を呈示する。他の実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは複数の検出可能部分を含み、検出可能部分のうちの少なくとも二つは同じであり、少なくとも第3の検出可能部分は異なっている。
【0070】
いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、チラミド及びキノンメチドシグナル増幅技術両方による発色性IHC及びISH染色に新規の色を生成するための手段を提供するように設計される。ここでも、本明細書で注記したように、特定の色空間を生成するために適した色素原にチラミド又はキノンメチド前駆体が結合できないため、そのような色空間は利用できない(例えばレゾルフィン、ナイルブルー、及びマラカイトグリーン)。複数の異なる有色色素原の結合により、マルチ色素コンジュゲートは、TSA又はQMSA単一色素原コンジュゲートの異なる組み合わせの混合に頼らずに、例えば、赤、紫、及び緑の色を直接提供することができる。(本明細書に記載されるように)単純に色素を混合することと比較して優れた結果は、このように達成されうる。
【0071】
新規の異なる色をつくる能力は、減法混色の原理(Berns, R. S., Billmeyer, F. W., Saltzman, M., and Billmeyer, F. W. (2000) Billmeyer and Saltzman’s Principles of Color Technology, Wiley, New York.)に基づく。簡単に説明すると、この概念は、光のいくつかの波長を部分的に又は完全に吸収する結果として新規の色を創造する。いずれかの特定の理論に拘束されることを望むものではないが、マルチ色素コンジュゲートの色は、各色素の減算後に依然として通過することのできる光の波長に依存すると考えられる。ここで利用される色素は、「狭く吸収する」と考えられ、これは、可視スペクトルのうちの比較的狭い部分のみを吸収し、光の大部分を通過させることを意味する。「狭く吸収する」色素の使用は、いくらかの光が依然として通過できるため、色素が混合し合って新規の異なる色を形成することを可能にすると考えられる。広く吸収する色素が使用された場合、それらは結局スペクトルを減算し過ぎてしまい、容易に互いから区別できない暗い赤色、褐色、及び黒を残すであろう。図13A-13Dは、特定の二重色素コンジュゲート、具体的には特定の二重色素色のスペクトルを、個々の単一色素色と比較して示している。
【0072】
いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、「線形」の構成に配置される。「線形」の構成に配置されるとは、マルチ色素コンジュゲートの検出可能部分が、それが(i)直接的又は間接的に別の検出可能部分に結合すること(それ自体が別の検出可能部分への結合を可能にする)、及び(ii)直接的又は間接的に組織反応部分に結合すること(この用語が本明細書において規定されるように)を可能にする複数のコンジュゲーション部位を含むことを意味する。このような線形構成を含むマルチ色素コンジュゲートは、図10に示されている。例えば、黄色の色素原をシアンの色素原に結合させると、組織反応部分は、緑色を提供するマルチ色素コンジュゲートを提供する。同様に、黄色の色素原をパープルの色素原に結合させると、組織反応部分は赤色を提供するマルチ色素コンジュゲートを提供する。同様に、シアンの色素原を紫の色素原に結合させると、組織反応部分は藍色を提供する。これら実施例の各々は一連の複数の色素原における組織反応部分への結合を示しているが、当業者であれば、いずれのマルチ色素コンジュゲートも、さらなる色、色相、又は強度を提供する三つ以上の色素原を含みうることが分かるであろう。図10は二つの検出可能部分を含む実施例を示しているが、当業者であれば、任意の数の検出可能部分が直接的又は間接的に互いに結合しうることが分かるであろう。
【0073】
いくつかの実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、「分枝状」の構成に配置される。「分枝状」の構成に配置されるとは、以下の図式に示し、さらには図11に示すように、複数のコンジュゲーション部位を含むリンカー又は多機能性リンカーが、直接的又は間接的に(i)複数の検出可能部分を(ii)組織反応部分に結合させるために使用されることを意味する。いくつかの実施態様では、多機能性リンカーは、コンジュゲーションのための少なくとも三つの部位を含む。他の実施態様では、多機能性リンカーは、コンジュゲーションのための四つ以上の部位を含む。以下の図式は多機能性リンカーが二つの色素原にコンジュゲートされていることを示しているが、多機能性リンカーコンジュゲーションのための十分な部位を含むのであれば、任意の数の検出可能部分が組織反応部分にコンジュゲートできる。
【0074】
いくつかの実施態様では、多機能性リンカーは、直接的又は間接的に(i)少なくとも二つの色素原及び(ii)組織反応部分に結合することのできる少なくとも三つの官能基を提供する。いくつかの実施態様では、多機能性リンカーは、コンジュゲーションをもたらす複数のアミン、カルボキシル、マレイミド、又はチオール基を含む。いくつかの実施態様では、多機能性リンカーは、直交性に保護及び脱保護することのできるものから選択されて、当業者が一度に一つの色素原を多機能性リンカーにコンジュゲートさせ、それにより望ましくない副反応又は副産物を防止することを可能にする。
【0075】
いくつかの実施態様では、多機能性リンカーは、約1g/molから約300g/molの範囲の分子量を有する。他の実施態様では、多機能性リンカーは、約20g/molから約250g/molの範囲の分子量を有する。いくつかの実施態様では、多機能性リンカーは、マルチ色素コンジュゲートの水溶性を上昇させるために、ポリエチレングリコール(PEG)基といった可溶化基を含む。いくつかの実施態様では、多機能性リンカーは、約2から約8PEGの基を含む。他の実施態様では、多機能性リンカーは、約2から約6PEGの基を含む。
【0076】
いくつかの実施態様では、多機能性リンカーはポリアミンである。いくつかの実施態様では、ポリアミンは、2から20のアミン基を含む。他の実施態様では、ポリアミンは、2から10のアミン基を含む。さらに他の実施態様では、ポリアミンは、2から6のアミン基を含む。ポリアミンの例には、ノルスペルミジン、スペルミン、及びその誘導体又はアナログが含まれる。
【0077】
いくつかの実施態様では、多機能性リンカーは、ヘテロ二機能性リンカー、即ち少なくとも二つの異なる反応性官能基を含むものである。例えば、ヘテロ二機能性リンカーは、カルボン酸基及び二つのアミン基を含む。いくつかの実施態様では、多機能性リンカーは、リジン又はリジンの誘導体である。
【0078】
他の実施態様では、多機能性リンカーは、色素原に結合するための少なくとも一つのコンジュゲーション部位を含む繰り返し基を有するポリマーである。他の実施態様では、多機能性リンカーはデンドリマーであり、デンドリマーは、各々が少なくとも一つのコンジュゲーション部位を含む複数の分枝状基を含む。いくつかの実施態様では、適切なデンドリマーは、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、Janusデンドリマー(即ち、二つのデンドリマーウェッジからなり、二つの異なる機能性により命名されたデンドリマー)、及びビス-MPAデンドリマーとその誘導体を含む。
【0079】
例として、及び図11に示すように、黄色の色素原とシアンの色素原を多機能性リンカーを介して組織反応部分に結合させると、緑色を提供するマルチ色素コンジュゲートが提供される。同様に、黄色の色素原とパープルの色素原を多機能性リンカーを介して組織反応部分に結合させると、赤色を提供するマルチ色素コンジュゲートが提供される。同様に、シアンの色素原と紫の色素原を多機能性リンカーを介して組織反応部分に結合させると、藍色が提供される。上記の図式及び図11には、組織反応部分に結合する二つの色素原が示されているが、当業者であれば、多機能性リンカーがコンジュゲーションのために十分な部位を含むのであれば、三つ以上の色素原が任意の組織反応部分に結合されうることが分かるであろう。
【0080】
さらに他の構成が考慮される。いくつかの構成では、マルチ色素コンジュゲートは、以下の図式に示されるように、「線形」構成と「分枝状」構成のハイブリッドである。以下の図式は多機能性リンカーが色素原にコンジュゲートされている様子を示すが、いずれの検出可能部分も利用することができる。さらに、当業者であれば、多機能性リンカー又は色素原が互いに直接的又は間接的に結合しうることが分かるであろう。
【0081】
さらに他の構成には、以下に示す図式のように複数の多機能性リンカーが結合して分枝状のコンジュゲートを形成する、「高度に分枝状の」構成が含まれる。このような「高度に分枝状の」構成では、多機能性リンカーはデンドリマー又はポリマーである。以下の図式は多機能性リンカーが色素原にコンジュゲートされている様子を示すが、どのような検出可能部分も利用することができる。さらに、当業者であれば、多機能性リンカー又は色素原が互いに直接的又は間接的に結合しうることが分かるであろう。
【0082】
いくつかの実施態様では、本発明のマルチ色素コンジュゲートは、式(I):
[式中、「TRM」は組織反応部分であり;
Qは、2から40の炭素原子を有し、且つO、N、又はSより選択される一又は複数のヘテロ原子を任意選択的に有する、分枝状又は非分枝状、線形又は環状、置換又は無置換の基であり;
Zは、結合、又は2から20の炭素原子を有し、且つO、N、又はSより選択される一又は複数のヘテロ原子を任意選択的に有する、分枝状又は非分枝状、線形又は環状、置換又は無置換、飽和又は不飽和の基であり;
Xは、H、-[(Q)-[A];-N-([Z]-[X]);又は-C(H)([Z]-[X])であり;
Aは、検出可能部分であり;
dは、0又は1であり;
eは、1から4の整数であり;
sは、0又は1から4の範囲の整数であり;
tは、0又は1から10の範囲の整数であり;
但し、式(I)のマルチ色素コンジュゲートが少なくとも二つのA基を含む]
の構造を有する。
【0083】
本明細書において使用される用語「組織反応」は、酵素と反応できる部分を指す。したがって、組織反応部分を含むコンジュゲートが適切な酵素と反応するとき,マルチ色素コンジュゲートの組織反応部分は、構造的、立体構造的、及び/又は電子的変化を受け、それにより、生物学的試料に対し、直接的又は間接的に(又は可能な範囲でその内部に)結合するために適した組織反応種(中間体)を提供する。例えば、組織反応部分がチラミド又はその誘導体である場合に、チラミドが適切な酵素(例えばHRP)と反応すると、チラミドラジカル種が形成される。この高度に反応性のチラミドラジカル種は、生物学的試料中のチロシン残基に結合することができる。同様に、組織反応部分がキノンメチド前駆体又はその誘導体である場合に、適切な酵素(例えばAP)との反応時、キノンメチド前駆体は、生物学的試料中で求核剤と高度に反応性であると考えられているキノンメチド(又はその対応する誘導体)に変換される。任意のコンジュゲートの組織反応部分の役割、適切な酵素とのその相互作用、及び検出に適した固定化組織-コンジュゲート複合体の形成について、以下にさらに記載する。
【0084】
いくつかの実施態様では、組織反応部分はキノンメチド前駆体又はその誘導体である。いくつかの実施態様では、キノンメチド前駆体部分は、式(II):
[式中、Rは、ホスフェート、アミド、ニトロ、尿素、サルフェート、メチル、エステル、ベータ-ラクタム、又は糖より選択される基であり;
は、ハロゲン化合物であり;
、R、R、及びRは、独立して、水素又は1から4の炭素原子を有する脂肪族基より選択され;
は、-(CHNH-、-O(CHNH-、-N(H)C(O)(CHNH-、-C(O)N(H)(CHNH-、-(CHO-、-O(CHO-、-O(CHCHO)-、-N(H)C(O)(CHO-、-C(O)N(H)(CHO-、-C(o)N(H)(CHCHO)-、-(CHS-、-O(CHS-、-N(H)C(O)(CHS-、-C(O)N(H)(CHS-、-(CHNH-、-C(O)N(H)(CHCHO)CHCHNH、-C(O)(CHCHO)CHCHNH-、-C(O)N(H)(CH)NHC(O)CH(CH)(CHNH-、又は-N(H)(CHNH-(wは1から12の範囲の整数である)である]
によって提供される構造を有する。
【0085】
他の実施態様では、キノンメチド前駆体部分は、式(IIa):
によって提供される構造を有する。
【0086】
他の実施態様では、キノンメチド前駆体部分は、式(IIb):
[式中、Rは、-(CHNH-、-O(CHNH-、-N(H)C(O)(CHNH-、C(O)N(H)(CHNH-、-(CHO-、-O(CHO-、-O(CHCHO)-、-N(H)C(O)(CHO-、-C(O)N(H)(CHO-、-C(o)N(H)(CHCHO)-、-(CHS-、-O(CHS-、-N(H)C(O)(CHS-、-C(O)N(H)(CHS-、-(CHNH-、-C(O)N(H)(CHCHO)CHCHNH、-C(O)(CHCHO)CHCHNH-、-C(O)N(H)(CH)NHC(O)CH(CH)(CHNH-、又は-N(H)(CHNH-(wは、独立して、1から12の範囲の整数である)である]
によって提供される構造を有する。いくつかの実施態様では、Rは、C(O)N(H)(CHNHであり、wは上記に規定される通りである。他の実施態様では、Rは、C(O)N(H)(CHNHであり、wは2から6の範囲である。
【0087】
他の実施態様では、キノンメチド前駆体部分は、式(IIc):
[式中、wは、1から12の範囲である]
によって提供される構造を有する。いくつかの実施態様では、wは1から8の範囲である。他の実施態様では、wは2から8の範囲である。さらに他の実施態様では、wは2から6の範囲である。さらなる実施態様では、wは6である。
【0088】
いくつかの実施態様では、任意のマルチ色素コンジュゲートのキノンメチド前駆体部分は、続く誘導体のうちの一つに由来する。当業者であれば、続く誘導体が、多機能性リンカー、検出可能部分、又はマルチ色素コンジュゲートの他の成分に結合するために適切な出発物質であることが分かるであろう。
【0089】
いくつかの実施態様では、組織反応部分はチラミド又はその誘導体である。いくつかの実施態様では、チラミドは、式(III):
[式中、各R基は、独立して、水素又は1から4の炭素原子を有する低級アルキル基より選択される]
によって提供される構造を有する。
【0090】
他の実施態様では、チラミド部分は、式(IIIa):
によって提供される構造を有する。
【0091】
当業者であれば、式(III)及び(IIIa)のチラミド又はその誘導体が、多機能性リンカー、検出可能部分、又はマルチ色素コンジュゲートの他の成分に結合するために適切な出発物質であることが分かるであろう。
【0092】
いくつかの実施態様では、Aは色素原である。色素原の非限定的な例には、TAMRA、Dabsyl、Dabcyl、Cy3、CyB、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、ローダミン800及びフルオレセインが含まれる。いくつかの実施態様では、色素原は、直接的又は間接的に(例えば基Qを介して)組織反応部分、基Z、又は別の色素原に結合することのできる少なくとも一つのコンジュゲーション部位を有する発色性化合物より選択される。複数のコンジュゲーション部位を有する色素原の非限定的な例には、TAMRA、5,6-カルボキシフルオレセイン、FITC、5,6-カルボキシローダミン110、5,6-カルボキシローダミン6G、5,6-カルボキシ-X-ローダミン、及びローダミンBイソチオシアネートが含まれる。5,6-位において置換される他のローダミン及びフルオレセイン誘導体も利用できる。
【0093】
本明細書に記載されるように、Qは、2から40の炭素原子を有し、且つO、N、又はSより選択される一又は複数のヘテロ原子を任意選択的に有する、分枝状又は非分枝状、線形又は環状、置換又は無置換の基であってよい。いくつかの実施態様では、Qは、カルボニル、アミン、エステル、エーテル、アミド、イミン、チオン又はチオール基を含みうる。いくつかの実施態様では、Qは、2から20の炭素原子を有し、O、N、又はSより選択される一又は複数のヘテロ原子を任意選択的に有する、分枝状又は非分枝状の線形基、及びアミン、カルボニル、エステル、エーテル、アミド、イミン、チオン、又はチオールより選択される一又は複数の末端基である。他の実施態様では、Qは、2から20の炭素原子を有し、且つ一又は複数の酸素ヘテロ原子を任意選択的に有する、分枝状又は非分枝状の線形基である。さらに他の実施態様では、基Qは、分子の水溶性を上昇させることを目的とした成分を含む。
【0094】
いくつかの実施態様では、基Qは、近くのマルチ色素コンジュゲート成分を分離する(例えば隣接する色素原間の立体相互作用を軽減するために)「スペーサー」として作用するように設計される。他の実施態様では、基Qは、マルチ色素コンジュゲートの水溶性を上昇させるように又は二つのマルチ色素コンジュゲート成分を互いに結合させるように設計される。
【0095】
いくつかの実施態様では、Qは式(IVa):
[式中、fは、0、1、又は2であり;
は、結合、O、S、又はN(R)(R)であり;
及びRは、独立して、H、C-Cアルキル基、F、Cl、又は-N(R)(R)であり;
及びRは、独立して、CH又はHより選択され;
及びR10は、独立して、結合、又はカルボニル、アミド、イミド、エステル、エーテル、アミン、チオン、チオールより選択される基であり;
jは1から8の範囲の整数である]
に示される構造を有する。
【0096】
いくつかの実施態様では、R又はRの少なくとも一つはHである。いくつかの実施態様では、R又はRの少なくとも一つはHであり、fは1である。いくつかの実施態様では、R又はRの少なくとも一つはHであり、fは1であり、sは少なくとも2である。
【0097】
いくつかの実施態様では、Qは、式(IVb):
[式中、fは、0、1、又は2であり;
は、結合、O、S、又はN(R)(R)であり;
及びRは、独立して、CH又はHであり;
及びR10は、独立して、結合、又はカルボニル、アミド、イミド、エステル、エーテル、アミン、若しくはチオールから選択される基であり;
jは1から8の範囲の整数である]
に示される構造を有する。
【0098】
いくつかの実施態様では、fは1であり、sは少なくとも2である。いくつかの実施態様では、Rは結合であり;fは1であり;sは2から10であり;R及びR10は上記に規定される通りである。他の実施態様では、Rは結合であり;fは1であり;sは2から6であり;R及びR10は上記に規定される通りである。他の実施態様では、Rは結合であり;fは1であり;sは2から4であり;R及びR10は両方ともアミンである。
【0099】
いくつかの実施態様では、Qは、式(IVc):
[式中、fは0、1、又は2であり;jは1から8の範囲の整数である]
に示される構造を有する。
【0100】
いくつかの実施態様では、fは1であり;R及びR10は、独立して、結合、又はカルボニル、アミド、イミド、エステル、エーテル、アミン、若しくはチオールより選択される基であり;sは少なくとも2である。いくつかの実施態様では、fは1であり、sは2である。いくつかの実施態様では、fは1であり、sは3である。いくつかの実施態様では、fは1であり、sは4である。
【0101】
式(IVa)、(IVb)、及び(IVc)のアルキレンオキシドベースのQ基は、本明細書では、エチレングリコールといったグリコールを参照することにより表される。いくつかの実施態様では、このようなアルキレンオキシドリンカーを組み込むことで、マルチ色素コンジュゲートの親水性が上昇すると考えられる。当業者であれば、リンカー中のアルキレンオキシド反復単位の数が増加するにつれて、コンジュゲートの親水性も上昇することが分かるであろう。本発明の特定の開示された実施態様を実施するために有用な、さらなるヘテロ二官能性ポリアルキレングリコールスペーサーは、2006年4月28日出願の米国特許出願第11/413778号の「Nanoparticle Conjugates」;2006年4月27日出願の米国出願第11/413415号の「Antibody Conjugates」;及び2005年11月23日出願の米国仮特許出願第60/739794号の「Molecular Conjugate」を含む、本出願人の同時係属出願に記載されており、これらの出願のすべては参照により本明細書に援用される。
【0102】
式(IVa)のいくつかの実施態様では、基C(R)(R)とRは環状の脂肪族基を形成する。いくつかの実施態様では、Qは、式(IVd):
[式中、R11は、N又はSであり;
12は、O、N、又はSであり;
13は、C又はNであり;
但し、R12がN又はSであるとき、R13はCであり;R13がNであるとき、R12はCである]
に示される構造を有する。いくつかの実施態様では、Qは、4-ピペリジンカルボン酸に由来する。
【0103】
本明細書に記載されるように、Zは、結合、又は2から20の炭素原子を有し、且つO、N、又はSより選択される一又は複数のヘテロ原子を任意選択的に有する、分枝状又は非分枝状、線形又は環状、置換又は無置換の基である。いくつかの実施態様では、Zは、カルボニル、アミン、エステル、エーテル、アミド、イミン、チオン、又はチオール基を含みうる。いくつかの実施態様では、基Zは、本明細書に記載される多機能性リンカー又はヘテロ二機能性リンカーを表し、そのように表される化合物は、分枝状又は高度に分枝状のマルチ色素コンジュゲートを可能にするように設計される。当業者であれば、即ち、基Q及びZが、異なるスペーサー、PEG基、リンカーなどを可能にすることが分かるであろう。
【0104】
いくつかの実施態様では、Zは、式(Va):
[式中、R17及びR18は、独立して、結合、又はカルボニル、アミド、イミド、エステル、エーテル、-NH、-N-、チオン、若しくはチオールより選択される基であり;
14は、結合、カルボニル、イミン、又はチオンであり;
Vは、結合、-C(R15)(R16)-、-O-、-S-、-N(R16)-、-N(X)-;-C(R15)(X);-C(X)-、又は-C(R15)(N(R16)(X))であり;
Xは、本明細書に記載される通りであり;
及びRは、独立して、H、C-Cアルキル基、F、Cl、又はN(R15)(R16)であり;
15及びR16は、独立して、結合、又は-CH若しくはHであり;
gは、0又は1から4の範囲の整数であり;
hは、0又は1から8の範囲の整数であり;
iは、1又は2である]
の構造を有する。
【0105】
式(Va)のいくつかの実施態様では、gは0であり、R14はカルボニルであり、Vは-C(R15)(N(R16)(X))であり、R15はHであり、R16はHであり、hは2から6の範囲である。式(Va)の他の実施態様では、gは0であり、R14はカルボニルであり、Vは-C(R15)(N(R16)(X))であり、R15はHであり、R16はHであり、hは2から4の範囲である。式(Va)のさらに他の実施態様では、gは0であり、R14はカルボニルであり、Vは-C(R15)(N(R16)(X))であり、R15はHであり、R16はHであり、hは4である。式(Va)のさらなる実施態様では、gは0であり、R14はカルボニルであり、Vは-C(R15)(N(R16)(X))であり、R15はHであり、R16はHであり、R及びRはHであり、hは2から4の範囲である。式(Va)のさらなる実施態様では、gは0であり、R14はカルボニルであり、Vは-C(R15)(N(R16)(X))であり、R15はHであり、R16はHであり、R及びRはHであり、Rは結合であり、R10はアミンであり;hは2から4の範囲である。式(Va)のさらなる実施態様では、gは0であり、R14はカルボニルであり、Vは-C(R15)(N(R16)(X))であり、R15はHであり、R16はHであり、R及びRはHであり、Rは結合であり、R10はアミンであり;Xは-[(Q)-[A]であり、d、n、及びeは、それぞれ1であり、hは2から4の範囲である。
【0106】
いくつかの実施態様では、Zは、式(Vb):
[式中、R17及びR18は、独立して、結合、又はカルボニル、アミド、イミド、エステル、エーテル、-NH、-N-、チオン、若しくはチオールより選択される基であり;
Xは、本明細書に記載される通りであり;
及びRは、独立して、H、C-Cアルキル基、F、Cl、又はN(R15)(R16)であり;
15及びR16は、独立して、結合、又は-CH若しくはHであり;
gは、0又は1から4の範囲の整数であり;
hは、0又は1から8の範囲の整数であり;
iは、1又は2である]
の構造を有する。
【0107】
式(Vb)のいくつかの実施態様では、gは0であり、R15はHであり、R16はHであり、hは2から6の範囲である。式(Va)の他の実施態様では、gは0であり、R15はHであり、R16はHであり、hは2から4の範囲である。式(Va)のさらに他の実施態様では、gは0であり、R15はHであり、R16はHであり、hは4である。式(Va)のさらなる実施態様では、gは0であり、R15はHであり、R16はHであり、R及びRはHであり、hは2から4の範囲である。式(Va)のさらなる実施態様では、gは0であり、R15はHであり、R16はHであり、R及びRはHであり、Rは結合であり、R10はアミンであり;hは2から4の範囲である。式(Va)のさらなる実施態様では、gは0であり、R15はHであり、R16はHであり、R及びRはHであり、Rは結合であり、R10はアミンであり;Xは-[(Q)-[A]であり、d、n、及びeはそれぞれ1であり、hは2から4の範囲である。
【0108】
いくつかの実施態様では、Zは、式(Vc):
[式中、R17及びR18は、独立して、結合又はカルボニル、アミド、イミド、エステル、エーテル、-NH、-N-、チオン、又はチオールより選択される基であり;
Xは、本明細書に記載される通りであり;
及びRは、独立して、H、C-Cアルキル基、F、Cl、又はN(R15)(R16)であり;
gは、0又は1から4の範囲の整数であり;
hは、0又は1から8の範囲の整数であり;
iは、1又は2である]
の構造を有する。
【0109】
式(Vc)のいくつかの実施態様では、gは2から4であり、hは2から4である。式(Vc)の他の実施態様では、gは2であり、hは2であり、R18は結合である。式(Vc)のさらに他の実施態様では、gは2であり、hは2であり、R18は結合であり、Xは-[(Q)-[A]である。
【0110】
いくつかの実施態様では、Zは、式(Vd):
[式中、R17及びR18は、独立して、結合、又はカルボニル、アミド、イミド、エステル、エーテル、-NH、-N-、若しくはチオールより選択される基であり;
gは、0又は1から4の範囲の整数であり;
hは、0又は1から8の範囲の整数であり;
iは、1又は2である]
の構造を有する。
【0111】
式(Vd)のいくつかの実施態様では、gは2から4であり、hは2から4である。
【0112】
式(Vd)の他の実施態様では、gは2であり、hは2であり、R18は結合である。
【0113】
式(I)によるマルチ色素コンジュゲートの実施例には、以下に挙げるものが含まれ、ここでAは検出可能部分である:
【0114】
式(I)によるマルチ色素コンジュゲートの具体的な実施例を、以下に規定する:
【0115】
マルチ色素コンジュゲーションの合成
本発明のマルチ色素コンジュゲートは、当業者に既知の任意の方法に従って合成することができる。概して、本発明のマルチ色素コンジュゲートは、多機能性リンカー又はスペーサーを検出可能部分及び/又は組織反応部分のいずれかに結合させることにより合成することができる。当業者であれば、互いに反応することのできる官能基を含む適切な出発物質を選択することができるであろう。例えば、多機能性リンカーが非保護アミンを含む場合、当業者であれば、アミン(例えばNHS-エステル)と反応することのできる官能基を有する発色団を選択することができるであろう。同様に、多機能性リンカーがカルボン酸基を含む場合、当業者であれば、カルボン酸(例えばアミン)と反応することのできる官能基を有する部分を選択することができるであろう。
【0116】
いくつかの実施態様では、保護された多機能性リンカー部分を既に含む色素原は、まず、キノンメチド前駆体部分-第1の色素原コンジュゲート形成のためのキノンメチド前駆体と結合する。キノンメチド前駆体部分-第1の色素原コンジュゲートは、次いで第2の色素原と反応し、以下の図式に示す対応するマルチ色素コンジュゲートを形成する。この特定の実施例では、多機能性リンカーはリジンである。
【0117】
代替的に、保護された一の反応基を有する多機能性リンカーを、まず適切な機能的色素原と反応させて、第1の色素原-リンカーコンジュゲートを形成する。次いで、第1の色素原-リンカーコンジュゲートを適切に機能させた組織反応部分と反応させて、組織反応部分-第1の色素原リンカーコンジュゲートを形成する。次いで、組織反応部分-第1の色素原-リンカーコンジュゲートを脱保護し、続いて適切に機能させた第2の色素原と反応させて、以下の図式に示すようにマルチ色素コンジュゲートを提供する。この特定の実施例では、多機能性リンカーは保護されたリジンであり、組織反応部分はチラミンである。当業者であれば、同じ反応条件を使用して別の多機能性リンカーを色素原に結合させることができることが分かるであろう。当業者は、キノンメチド前駆体誘導体でチラミンを置換できることも分かるであろう。
【0118】
別の代替的合成方法では、第1の発色性化合物を、NHCHCHNHBocといった保護されたスペーサー化合物に結合させて、色素原とスペーサーのコンジュゲートを形成する。次いで、色素原と保護されたスペーサーとのコンジュゲートを脱保護し、第2の色素原と結合させて、第1の2-色素原コンジュゲーを形成する。次いで2-色素原コンジュゲートを4-ピペリジンカルボン酸と反応させて、第2の2-色素原コンジュゲートを形成する。次いで、以下の図式に示すように、第2の2-色素原コンジュゲートを適切に機能させた組織反応部分と反応させて、対応するマルチ色素コンジュゲートを形成する。
【0119】
以下の合成方法は、三つ以上の色素原を組織反応部分に結合させる一実施例を提供するものであり、二段階で起こる合流型合成として示されている。第1の段階では、保護された多機能性リンカーを、適切に機能させた色素原と反応させて、第1の色素原-リンカーコンジュゲートを形成する(上記実施例に示すように)。次いで、第1の色素原-リンカーコンジュゲートを、適切に機能させた組織反応部分と反応させて、組織反応部分-第1の色素原リンカーコンジュゲートを形成する。第2の段階では、同じ色素原の二つの等価物(又は二つの異なる色素原の各々の等価物)を多機能性リンカー(例えばリジン)に結合させて、2-色素原コンジュゲートを形成する。次いで2-色素原コンジュゲートを、第1の段階からの第1の色素原-リンカーコンジュゲートと反応させて、三つの色素原を含むマルチ色素コンジュゲートを提供する。
【0120】
方法
本発明は、本明細書に開示されるマルチ色素コンジュゲートを用いて生物学的試料内部の一又は複数の標的を検出する方法も提供する。本明細書において、開示される特定の実施態様、実施例、又は図面は、IHCアッセイと組み合わせたマルチ色素コンジュゲートの使用に言及しうるが、当業者であれば、マルチ色素コンジュゲートが、in situハイブリダイゼーション(ISH)アッセイ、又はIHCとISHアッセイのあらゆる組み合わせにも使用できることが分かるであろう。当業者は、マルチ色素コンジュゲートが(IHC及びISH両方で)単一アッセイ及び多重アッセイの両方に使用できることも理解するであろう。
【0121】
本明細書に記載された実施態様では、検出試薬又は検出キットは、生物学的試料中の一又は複数の標的に標識する(例えば酵素で)ために利用される。例えば、検出キットは、標的が標識されるように、特異的結合部分(例えば抗体コンジュゲート)を含む第1の組成物と、その第1の組成物に特異的な検出試薬を含む第2の組成物とを含む。いくつかの実施態様では、検出キットは、異なる標的を検出するための複数のコンジュゲートを含み、各キットはキット内に含まれるコンジュゲートのそれぞれに特異的な検出試薬も含む。
【0122】
いくつかの実施態様では、検出試薬は、特定の標的(例えば本明細書においてさらに列挙される標的)に特異的な特異的結合部分である。いくつかの実施態様では、特異的結合部分は、一次抗体又は一次抗体コンジュゲートである。いくつかの実施態様では、一次抗体は、検出可能な標識、例えばハプテンにコンジュゲートされる。他の実施態様では、特異的結合部分は核酸プローブであり、この核酸プローブは、検出可能な標識、例えばハプテンにコンジュゲートされる。検出試薬は、特異的結合部分に特異的であり、それ自体が酵素にコンジュゲートされる二次抗体も含みうる。適切な酵素には、限定されないが、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、酸性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ又はβ-ラクタマーゼが含まれる。他の実施態様では、酵素は、オキシドレダクターゼ又はペルオキシダーゼ(例えばHRP)を含む。二次抗体は、抗抗体抗体(例えば特定の一次抗体に特異的な)又は抗標識抗体(例えば一次抗体又は核酸プローブにコンジュゲートされる特定の標識に特異的な)でありうる。いくつかの実施態様では、二次抗体は、抗ハプテン抗体である。一次抗体、一次抗体コンジュゲート、二次抗体及び/又は核酸プローブを、当業者に既知の手順に従って試料に導入し、酵素を用いて、本明細書に例示されるように、生物学的試料中の一又は複数の標的の標識化を実施することができる。
【0123】
図1に示すように、一又は複数の標的を含む組織試料を、第1の標的に特異的な第1の特異的結合部分と接触させて、第1の特異的結合部分-標的複合体を提供する(工程100)。いくつかの実施態様では、第1の特異的結合部分は、一次抗体又は抗体コンジュゲート(例えば非修飾の抗体又はハプテンなどの検出可能な標識にコンジュゲートされた抗体)である。他の実施態様では、第1の特異的結合部分は、検出可能な標識、例えばハプテンにコンジュゲートされた核酸プローブ(即ちオリゴヌクレオチドプローブ)である。次に、第1の特異的結合部分-標的複合体を、第1の特異的結合部分を介して第1の酵素で標識する(工程110)。いくつかの実施態様では、標的複合体の標識化は、二次抗体を用いて達成することができ、この二次抗体は、抗抗体抗体(例えば一次抗体に特異的なもの、即ち抗抗体抗体)又は抗標識抗体(例えば抗標識抗体又は抗ハプテン抗体)であり、酵素(例えばHRP、APなど)にコンジュゲートされている。次いで組織試料を、組織反応部分及び少なくとも二つの検出可能部分(例えば少なくとも二つの色素原)を含む第1のマルチ色素コンジュゲートと接触させる(工程120)。第1の酵素と第1のマルチ色素コンジュゲートの組織反応部分とが相互作用すると、第1の検出可能なマルチ色素複合体が第1の標的の近傍又は第1の標的上に沈着する。最後に、第1の検出可能なマルチ色素複合体からのシグナルが検出される(例えば明視野顕微鏡検査)(工程130)。
【0124】
前述の方法は、試料内部の任意の数の標的について繰り返すことができる。いくつかの実施態様では、酵素不活性化組成物が、いずれかの上流の工程からのあらゆる酵素を実質的に又は完全に不活性化するために導入される。次いで、組織試料を、第2の標的に特異的な第2の特異的結合部分と接触させて、第2の特異的結合部分標的複合体を提供する(工程100)。次に、第2の特異的結合部分-標的複合体を、第2の特異的結合部分を介して第2の酵素で標識する(工程110)。次いで組織試料を、組織反応部分及び少なくとも二つの検出可能部分(例えば少なくとも二つの色素原)を含む第2のマルチ色素コンジュゲートと接触させる(工程120)。いくつかの実施態様では、第2のマルチ色素コンジュゲートの少なくとも二つの検出可能部分からの波長の合計が、第1のマルチ色素コンジュゲートの少なくとも二つの検出可能部分からの波長の合計とは異なる。他の実施態様では、第2のマルチ色素コンジュゲートの色が、第1のマルチ色素コンジュゲートの色とは異なる。第2の酵素と第2のマルチ色素コンジュゲートの組織反応部分とが相互作用すると、第2の検出可能なマルチ色素複合体が第2の標的の近傍又は第2の標的上に沈着する。最後に、第2の検出可能なマルチ色素複合体からのシグナルが検出される(例えば明視野顕微鏡検査)(工程130)。
【0125】
上記工程は、生物学的試料内部の第3、第4、又は第nの標的を検出するために繰り返すことができ、第3、第4、又は第nのマルチ色素コンジュゲートの各々は異なる色を有する。当業者であれば、上記工程はマルチ色素コンジュゲートを利用するが、単一の検出可能部分のみに結合したTSA又はQMSAコンジュゲートを交換可能に利用できることが分かるであろう。例えば、第1の標的は、単一色素原を有する第1のTSA-コンジュゲート又は単一の色素原を有する第1のQMSA-コンジュゲートで染色することができ;第2の標的は、式(I)のマルチ色素コンジュゲートで染色することができ;第3の標的は、単一色素原を有する第2のTSA-コンジュゲート又は単一の色素原を有する第2のQMSA-コンジュゲートで染色することができる。
【0126】
有利には、前述の方法に関し、第1の酵素と第2の酵素とは異なる酵素である。例えば、第1の酵素は、ホスファターゼ又はホスホジエステラーゼとすることができ、第2の酵素はペルオキシダーゼとすることができる。特定の実施態様では、第1の酵素はアルカリホスファターゼであり、第2の酵素はホースラディッシュペルオキシダーゼである。また、有利には、第1の酵素は第2のマルチ色素コンジュゲートと相互作用して第1の標的の近位に第2の検出可能なマルチ色素複合体を形成することはなく、同様に、第2の酵素は第1のマルチ色素コンジュゲートと相互作用して第2の標的の近位に第1の検出可能なマルチ色素複合体を形成することはない。
【0127】
当業者であれば、図1に示す工程が、順次(又は連続的に)又は実質的に同時に実施されうることが分かるであろう。例えば、組織試料は、工程100において、二つの特異的結合部分(各特異的結合部分は特定の標的に特異的である)と同時に接触させることができ;次いで工程110において、各特異的結合部分-標的複合体を、異なる標識で同時に標識することができる。このような実施態様では、工程100又は110において使用される試薬を、試薬の「プール」又は「カクテル」として供給することができる。代替的に、第1の特異的結合部分を沈着させ(工程100)、続いてその第1の特異的結合部分-標的複合体を標識してもよい(工程110)。工程100及び110は、いずれかのマルチ色素コンジュゲートの導入に先立って、任意の回数連続して繰り返すことができる。その後、複数の酵素で標識された標的複合体を有する組織を今度は複数のマルチ色素コンジュゲートと接触させることができる。
【0128】
図2に示すように、まず検出プローブ 15を、標的5を有する組織試料に導入し、標的-検出プローブ複合体を形成する。いくつかの実施態様では、検出プローブ15は一次抗体である。その後、それにコンジュゲートされた少なくとも一つの酵素を含む標識コンジュゲート25を、組織試料に導入する。図示の実施態様では、標識コンジュゲートは二次抗体であり、この二次抗体は酵素にコンジュゲートされた抗種抗体である。次に、マルチ色素コンジュゲート10を導入する。酵素とマルチ色素コンジュゲート10とが相互作用すると、マルチ色素コンジュゲートは、構造的、立体構造的、又は電子的変化20を受けて、組織反応中間体30を形成する。この特定の実施態様では、マルチ色素コンジュゲートは、アルカリホスファターゼ酵素と相互作用すると、フッ素脱離基の放出を引き起こし、その結果対応するキノンメチド中間体30をもたらすキノンメチド前駆体部分を含む。キノンメチド中間体30は次いで、近位の組織との又は直接組織への共有結合を形成し、検出可能なマルチ色素複合体40を形成する。次いで、マルチ色素複合体40のコンジュゲートされた発色団からのシグナルを、当業者に既知の方法に従って検出することができる。
【0129】
図3に示すように、まず検出プローブ55を、標的50を有する組織試料に導入し、標的-検出プローブ複合体を形成する。いくつかの実施態様では、検出プローブ55は一次抗体である。その後、それにコンジュゲートされた少なくとも一つの酵素を含む標識コンジュゲート60を、組織試料に導入する。図示の実施態様では、標識コンジュゲートは二次抗体であり、この二次抗体は酵素にコンジュゲートされた抗種抗体である。次に、マルチ色素コンジュゲート70を導入する。酵素とマルチ色素コンジュゲート70とが相互作用すると、組織反応中間体80が形成される。この特定の実施態様では、マルチ色素コンジュゲート70は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ酵素と相互作用すると、ラジカル種80の形成を引き起こすチラミド部分を含む。ラジカル中間体80は次いで、近位の組織との又は直接組織への共有結合を形成し、検出可能なマルチ色素複合体90を形成する。次いで、マルチ色素複合体90のコンジュゲートされた発色団からのシグナルを、当業者に既知の方法に従って検出することができる。
【0130】
いくつかの実施態様では、生物学的試料は、内因性ペルオキシダーゼ活性を実質的に又は完全に不活性化するために酵素不活性化組成物で前処理される。例えば、いくつかの細胞又は組織は、内因性のペルオキシダーゼを含有する。抗体にコンジュゲートされているHRPの使用は、高い、非特異的な背景染色をもたらしうる。この非特異的背景は、試料を本明細書に開示されるような酵素不活性化組成物で前処理することにより、減少させることができる。いくつかの実施態様では、過酸化水素(適切な前処理溶液の重量の約1%から約3%)のみで試料を前処理し、内因性ペルオキシダーゼ活性を低下させる。内因性のペルオキシダーゼ活性が減少又は不活性化された後、検出キットを加えてもよく、続いて上述のように検出キットに存在する酵素が不活性化される。開示される酵素不活性化組成物及び方法は、内因性酵素のペルオキシダーゼ活性を不活性化する方法としても使用可能である。
【0131】
いくつかの実施態様では、標本がパラフィン包埋された試料である場合、適切な脱パラフィン液を用いて試料を脱パラフィン化することができる。廃棄物除去剤が脱パラフィン液を除去した後、任意の数の物質を標本に連続的に適用することができる。前記物質は、前処理(例えばタンパク質架橋、核酸の曝露など)、変性、ハイブリダイゼーション、洗浄(例えばストリンジェンシー洗浄)、検出(例えば視覚的又はマーカー分子をプローブに連結する)、増幅(例えばタンパク質、遺伝子などの増幅)、対比染色、カバースリッピングなどのためのものでありうる。
【0132】
自動化
本開示のアッセイ及び方法は自動化されてもよく、標本処理装置と組み合わされてもよい。標本処理装置は、Ventana Medical Systems,Incによって販売されるBENCHMARK XT機器及びDISCOVERY XT機器といった自動装置とすることができる。Ventana Medical Systems,Inc.は、自動分析を実施するためのシステムと方法を開示する複数の米国特許の出願人であり、そのような特許文献には、米国特許第5650327号、同第5654200号、同第6296809号、同第6352861号、同第6827901号及び同第6943029号、並びに米国特許出願公開第20030211630号及び同第20040052685号が含まれ、それら各々の内容全体が本明細書に参照により援用される。代替的に、標本を手動で処理することができる。
【0133】
標本処理装置は、標本に固定剤を適用することができる。固定剤は、架橋結合剤(例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、及びグルタルアルデヒドのようなアルデヒド、並びに非アルデヒド架橋結合剤)、酸化剤(例えば、四酸化オスミウム及びクロム酸のような金属イオン及び錯体)、タンパク質変性剤(例えば、酢酸、メタノール、及びエタノール)、未知の機構の固定剤(塩化第二水銀、アセトン、及びピクリン酸)、組合せ試薬(例えば、カルノア固定液、メタカン、ブアン固定液、B5固定液、ロスマン液、及びジャンドル液)、マイクロ波、並びに雑多な固定剤(例えば排除体積固定及び蒸気固定)を含みうる。
【0134】
標本がパラフィン包埋された試料である場合、適切な脱パラフィン液を用いて、標本処理装置で試料を脱パラフィン化することができる。廃棄物除去剤が脱パラフィン液を除去した後、任意の数の物質を標本に連続的に適用することができる。前記物質は、前処理(例えばタンパク質架橋、核酸の曝露など)、変性、ハイブリダイゼーション、洗浄(例えばストリンジェンシー洗浄)、検出(例えば視覚的又はマーカー分子をプローブに連結する)、増幅(タンパク質、遺伝子などの増幅)、対比染色、カバースリッピングなどのためでありうる。
【0135】
標本処理装置は、広範な物質を標本に適用することができる。物質は、限定しないが、色素、プローブ、試薬、リンス、及び/又はコンディショナーを含む。物質は流体(例えば、気体、液体、又は気体/液体混合物)などでよい。流体は、溶媒(例えば、極性溶媒、非極性溶媒など)、溶液(例えば、水溶液又は他の種類の溶液)などでよい。試薬は、限定しないが、色素、湿潤剤、抗体(例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体など)、抗原回収流体(例えば、水性又は非水性系抗原回収溶液、抗原回収バッファーなど)などを含みうる。プローブは、検出可能な標識に付着した単離核酸又は単離合成オリゴヌクレオチドであってもよい。標識は、放射性同位体、酵素基質、補助因子、リガンド、化学発光又は蛍光性薬剤、ハプテン及び酵素を含みうる。
【0136】
標本を処理した後、ユーザは、標本搭載スライドを画像化装置に移してもよい。ここで使用される画像化装置は、明視野撮像スライドスキャナである。明視野撮像装置の一つは、Ventana Medical Systems,Inc.により販売されるiScan CoreoTM明視野スキャナーである。自動化の実施態様では、画像化装置は、IMAGING SYSTEM AND TECHNIQUESと題された国際特許出願番号:PCT/US2010/002772(特許公開番号:国際公開第2011/049608号)、又はIMAGING SYSTEMS、CASSETTES、AND METHODS OF USING THE SAMEと題された、2014年2月3日出願の米国特許出願公開第2014/0178169号に開示されているようなデジタル病理装置である。国際特許出願番号:PCT/US2010/02772及び米国特許公開第2014/0178169号は、その全体が参照により援用される。他の実施態様では、画像化装置は、顕微鏡に連結されたデジタルカメラを含む。
【0137】
対比染色
対比染色は、標的の構造が顕微鏡下でより容易に視覚化されうるように、一又は複数の標的を検出するための薬剤で既に染色した後の試料を後処理する方法である。例えば、対比色素をカバースリッピングの前に任意選択的に使用し、免疫組織化学染色をより明瞭にする。対比色素は、一次色素と色が異なる。多くの対比色素、例えばヘマトキシリン、エオシン、メチルグリーン、メチレンブルー、ギムザ、アルシアンブルー、及びニュークリアファストレッド(Nuclear Fast Red)がよく知られている。DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)は、使用されうる蛍光性色素である。
【0138】
いくつかの実施例では、対比染色を生じさせるために一より多い色素を混合することができる。これにより、色素選択能及び融通性がもたらされる。例えば、特定の属性を有するが別の所望の属性を有さない混合物に対して、第一の色素を選択することができる。不足している所望の属性を示す混合物に第二の色素を加えることができる。例えば、トルイジンブルー、DAPI、及びポンタミン(pontamine)スカイブルーを混合して対比色素を形成することができる。
【0139】
検出及び/又は画像化
開示される実施態様のすべて又は特定の態様は、コンピュータ解析及び/又は画像解析システムによって自動化され、容易にされうる。いくつかの用途では、正確な色又は蛍光性の比率が測定される。いくつかの実施態様では、画像解析のために光学顕微鏡法が利用される。開示される特定の実施態様は、デジタル画像を取得することを伴う。これは、デジタルカメラを顕微鏡に連結することにより行うことができる。染色した試料から得られたデジタル画像は、画像解析ソフトウェアを用いて解析される。色又は蛍光性は、いくつかの異なる方法で測定することができる。たとえば、色は、赤、青、緑の値;色相、彩度、強度の値として、及び/又はスペクトルイメージングカメラを使用して特定の波長又は波長の範囲を測定することによって測定することができる。また、試料を定性的及び半定量的に評価することができる。定性的評価は、染色強度を評価すること、陽性染色細胞及び染色に関与する細胞内区画を同定すること、試料全体又はスライドの品質を評価することを含む。試験試料に対して別々の評価が行われるため、この解析は、試料が異常な状態を表すかどうかを決定するための既知の平均値との比較を含み得る。
【0140】
キット
いくつかの実施態様では、(1)キノンメチド前駆体又はチラミドからなる群より選択される組織反応部分と、互いに異なる少なくとも二つの発色団とを含むマルチ色素コンジュゲート、及び(2)特定の標的に特異的な特異的結合部分を含むキット又は組成物が提供される。いくつかの実施態様では、特異的結合部分は標的に特異的な一次抗体である。他の実施態様では、特異的結合部分は標的に特異的な核酸プローブである。いくつかの実施態様では、キットは、抗抗体抗体(抗種抗体)又は抗標識抗体をさらに含み、この抗抗体抗体又は抗標識抗体は、酵素にコンジュゲートされ、且つキット/組成物の一次抗体又は一次抗体にコンジュゲートされた標識又はキット/組成物の核酸プローブに特異的である。
【0141】
言うまでもなく、あらゆるキットは、手動又は自動の標的検出の必要に応じて、バッファー;対比染色剤;酵素不活性化組成物;脱パラフィン溶液などを含む他の薬剤を含んでもよい。キットは、キットの構成要素を組織試料に適用し、そこで一又は複数の標的の検出を実行する方法を含む、キットのいずれかの構成要素を使用するための指示も含みうる。
【0142】
試料及び標的
試料は、生物学的成分を含み、一般に一又は複数の目的の標的分子を含むことが疑われる。標的分子は、細胞の表面上に存在しえ、細胞は、懸濁液中又は組織切片中に存在しうる。標的分子はまた、細胞内に存在し得、プローブによる細胞溶解又は細胞侵入の際に検出され得る。当業者であれば、試料中の標的分子を検出する方法が使用される試料及びプローブの種類に応じて変わることが分かるであろう。試料を収集し調製する方法は、当技術分野で既知である。
【0143】
本方法の実施態様において使用するため、及び本明細書に開示される組成物と共に使用するための試料、例えば組織又は他の生物学的試料は、当業者に既知の任意の方法を用いて調製することができる。試料は、常套的なスクリーニングのために被験体から、又は遺伝的異常、感染若しくは新生物などの障害を有すると疑われる被験体から得ることができる。開示される方法の記載されている実施態様は、「正常」試料と呼ばれる、遺伝的異常、疾患、障害などを有しない試料にも適用することができる。そのような正常試料は、特に他の試料と比較するためのコントロールとして有用である。試料は、さまざまな目的で分析できる。例えば、試料は、科学的研究において、又は疑いのある疾患の診断のために、又は治療の成功、生存等の予後指標として使用することができる。
【0144】
試料は、プローブ又はレポーター分子によって特異的に結合されうる複数の標的を含むことができる。標的は、核酸配列又はタンパク質であってもよい。本開示を介して、標的タンパク質について言及する場合、そのタンパク質に関連する核酸配列も標的として使用できることを意味する。いくつかの例では、標的は、ウイルスゲノムからのような、ウイルス、細菌又は細胞内寄生体といった病原体に由来するタンパク質又は核酸分子である。例えば、標的タンパク質は、疾患に関連する(例えば相関関係、因果関係など)標的核酸配列から生成されうる。
【0145】
標的核酸配列は、実質的にサイズが変化しうる。核酸配列は、制限なく、可変数の核酸残基を有しうる。例えば、標的核酸配列は、少なくとも約10核酸残基、又は少なくとも約20、30、50、100、150、500、1000残基を有し得うる。同様に、標的ポリペプチドは、実質的にサイズが変化し得る。制限なく、標的ポリペプチドは、ペプチド特異的抗体又はその断片に結合する少なくとも一つのエピトープを含む。いくつかの実施態様では、標的ポリペプチドは、ペプチド特異的抗体又はその断片に結合する少なくとも二つのエピトープを含むことができる。
【0146】
特定の非限定的な例では、標的タンパク質は、新生物(例えばがん)に関連する標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)によって生成される。新生細胞、特にB細胞及びT細胞白血病、リンパ腫、乳がん、結腸がん、神経学的がんなどのがん細胞において、多数の染色体異常(転座及び他の再構成、増幅又は欠失を含む)が同定されている。したがって、いくつかの例において、標的分子の少なくとも一部は、試料中の細胞の少なくともサブセットにおいて増幅又は欠失された核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)によって生成される。
【0147】
発がん遺伝子は、いくつかのヒト悪性腫瘍の原因であることが知られている。例えば、染色体18q11.2のブレークポイント領域に位置するSYT遺伝子が関与する染色体再編成は、滑膜肉腫軟組織腫瘍に共通する。t(18q11.2)転座は、例えば異なる標識を有するプローブを用いて同定することができ:第一のプローブは、SYT遺伝子から遠位に延びる標的核酸配列から生成されるFPC核酸分子を含み、第二のプローブは、SYT遺伝子の3′又は近位に延びる標的核酸配列から生成されるFPC核酸を含む。これらの標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)に対応するプローブがin situハイブリダイゼーション手順において使用されるとき、SYT遺伝子領域においてt(18q11.2)を欠く正常細胞は、SYTの2つのインタクトなコピーを反映する、二つの融合(近接した二つの標識により生成された)シグナルを示す。t(18q11.2)を有する異常細胞は、単一の融合シグナルを示す。
【0148】
他の例では、悪性細胞において欠損(喪失)している腫瘍抑制遺伝子である核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)から生成された標的タンパク質が選択される。例えば、染色体9p21上に位置するp16領域(D9S1749、D9S1747、p16(INK4A)、p14(ARF)、D9S1748、p15(INK4B)、及びD9S1752を含む)は、特定の膀胱がんにおいて欠失している。染色体1(例えばSHGC57243、TP73、EGFL3、ABL2、ANGPTL1、及びSHGC-1322を包含する)の短腕の遠位領域及び染色体19(例えばMAN2B1、ZNF443、ZNF44、CRX、GLTSCR2、及びGLTSCR1を包含する)のペリセントロメア領域(例えば19p13~19q13)を含む染色体欠失は、中枢神経系の特定の種類の固形腫瘍の特徴的な分子的特性である。
【0149】
上記の例は、説明のためにのみ提供されており、限定することを意図するものではない。腫瘍性形質転換及び/又は増殖と相関する多数の他の細胞遺伝学的異常が当業者に知られている。腫瘍性形質転換と相関しており、開示される方法において有用である核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)によって生成される標的タンパク質は、さらに、EGFR遺伝子(7p12;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000007、ヌクレオチド55054219-55242525)、C-MYC遺伝子(8q24.21;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000008、ヌクレオチド128817498-128822856)、D5S271(5p15.2)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)遺伝子(8p22;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000008、ヌクレオチド19841058-19869049)、RB1(13q14;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000013、ヌクレオチド47775912-47954023)、p53(17p13.1;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000017、補体、ヌクレオチド7512464-7531642))、N-MYC(2p24;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000002、補体、ヌクレオチド151835231-151854620)、CHOP(12q13;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000012、補体、ヌクレオチド56196638-56200567)、FUS(16p11.2;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000016、ヌクレオチド31098954-31110601)、FKHR(13p14;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000013、補体、ヌクレオチド40027817-40138734)と、例えば:ALK(2p23;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000002、補体、ヌクレオチド29269144-29997936)、Ig重鎖、CCND1(11q13;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000011、ヌクレオチド69165054.69178423)、BCL2(18q21.3;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000018、補体、ヌクレオチド58941559-59137593)、BCL6(3q27;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000003、補体、ヌクレオチド188921859-188946169)、MALF1、AP1(1p32-p31;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000001、補体、ヌクレオチド59019051-59022373)、TOP2A(17q21-q22;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000017、補体、ヌクレオチド35798321-35827695)、TMPRSS(21q22.3;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000021、補体、ヌクレオチド41758351-41801948)、ERG(21q22.3;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000021、補体、ヌクレオチド38675671-38955488);ETV1(7p21.3;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000007、補体、ヌクレオチド13897379-13995289)、EWS(22q12.2;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000022、ヌクレオチド27994271-28026505);FLI1(11q24.1-q24.3;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000011、ヌクレオチド128069199-128187521)、PAX3(2q35-q37;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000002、補体、ヌクレオチド222772851-222871944)、PAX7(1p36.2-p36.12;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000001、ヌクレオチド18830087-18935219)、PTEN(10q23.3;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000010、ヌクレオチド89613175-89716382)、AKT2(19q13.1-q13.2;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000019、補体、ヌクレオチド45431556-45483036)、MYCL1(1p34.2;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000001、補体、ヌクレオチド40133685-40140274)、REL(2p13-p12;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000002、ヌクレオチド60962256-61003682)及びCSF1R(5q33-q35;例えば、GENBANKTMアクセッション番号NC-000005、補体、ヌクレオチド149413051-149473128)とを含む。
【0150】
他の例において、標的タンパク質は、疾患又は状態に関連するウイルス又は他の微生物より選択される。細胞又は組織試料中のウイルス又は微生物由来標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)の検出は、生物の存在を示す。例えば、標的ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、発がん性又は病原性ウイルス、細菌又は細胞内寄生体(例えば熱帯熱マラリア原虫及び他のマラリア原虫種、リーシュマニア属(種)、クリプトスポリジウム属パルバム、赤痢アメーバ、及びランブル鞭毛虫、並びにトキソプラズマ属、エイメリア属、タイレリア属、及びバベシア属種)のゲノムより選択されうる。
【0151】
いくつかの例において、標的タンパク質は、ウイルスゲノム由来の核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)から生成される。例示的ウイルス及び対応するゲノム配列(GENBANKTM括弧内は参照配列(RefSeq)アクセッション番号)は、ヒトアデノウイルスA(NC-001460)、ヒトアデノウイルスB(NC-004001)、ヒトアデノウイルスC(NC-001405)、ヒトアデノウイルスD(NC-002067)、ヒトアデノウイルスE(N-003266)、ヒトアデノウイルスF(NC-001454)、ヒトアストロウイルス(NC-001943)、ヒトBKポリオーマウイルス(V01109;GI:60851)ヒトボカウイルス(NC-007455)、ヒトコロナウイルス229E(NC-002645)、ヒトコロナウイルスHKU1(NC-006577)、ヒトコロナウイルスNL63(NC-005831)、ヒトコロナウイルスOC43(NC-005147)、ヒトエンテロウイルスA(NC-001612)、ヒトエンテロウイルスB(NC-001472)、ヒトエンテロウイルスC(NC-001428)、ヒトエンテロウイルスD(NC-001430)、ヒトエリスロウイルスV9(NC-004295)、ヒトフォーミーウイルス(NC-001736)、ヒトヘルペスウイルス1(単純ヘルペスウイルス1型)(NC-001806)、ヒトヘルペスウイルス2(単純ヘルペスウイルス2型)(NC-001798)、ヒトヘルペスウイルス3(水痘帯状疱疹ウイルス)(Nc-001348)、ヒトヘルペスウイルス4 1型(エプスタイン・バーウイルス1型)(NC-007605)、ヒトヘルペスウイルス4 2型(エプスタイン・バーウイルス2型)(NC-009334)、ヒトヘルペスウイルス5 AD169株(NC-001347)、ヒトヘルペスウイルス5 Merlin株(NC-006273)、ヒトヘルペスウイルスA(NC-001664)、ヒトヘルペスウイルス6B(NC-000898)、ヒトヘルペスウイルス7(NC-001716)、ヒトヘルペスウイルス8M型(NC-003409)、ヒトヘルペスウイルス8P型(NC-009333)、ヒト免疫不全ウイルス1(NC-001802)、ヒト免疫不全ウイルス2(NC-001722)、ヒトメタニューモウイルス(NC-004148)、ヒトパピローマウイルス-1(NC-001356)、ヒトパピローマウイルス-18(NC-001357)、ヒトパピローマウイルス-2(NC-001352)、ヒトパピローマウイルス-54(NC-001676)、ヒトパピローマウイルス-61(NC-001694)、ヒトパピローマウイルスcand90(NC-004104)、ヒトパピローマウイルスRTRX7(NC-004761)、ヒトパピローマウイルス10型(NC-001576)、ヒトパピローマウイルス101型(NC-008189)、ヒトパピローマウイルス103型(NC-008188)、ヒトパピローマウイルス107型(NC-009239)、ヒトパピローマウイルス16型(NC-001526)、ヒトパピローマウイルス24型(NC-001683)、ヒトパピローマウイルス26型(NC-001583)、ヒトパピローマウイルス32型(NC-001586)、ヒトパピローマウイルス34型(NC-001587)、ヒトパピローマウイルス4型(NC-001457)、ヒトパピローマウイルス41型(NC-001354)、ヒトパピローマウイルス48型(NC-001690)、ヒトパピローマウイルス49型(NC-001591)、ヒトパピローマウイルス5型(NC-001531)、ヒトパピローマウイルス50型(NC-001691)、ヒトパピローマウイルス53型(NC-001593)、ヒトパピローマウイルス60型(NC-001693)、ヒトパピローマウイルス63型(NC-001458)、ヒトパピローマウイルス6b型(NC-001355)、ヒトパピローマウイルス7型(NC-001595)、ヒトパピローマウイルス71型(NC-002644)、ヒトパピローマウイルス9型(NC-001596)、ヒトパピローマウイルス92型(NC-004500)、ヒトパピローマウイルス96型(NC-005134)、ヒトパラインフルエンザウイルス1(NC-003461)、ヒトパラインフルエンザウイルス2(NC-003443)、ヒトパラインフルエンザウイルス3(NC-001796)、ヒトパレコウイルス(NC-001897)、ヒトパルボウイルス4(NC-007018)、ヒトパルボウイルスB19(NC-000883)、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(NC-001781)、ヒトライノウイルスA(NC-001617)、ヒトライノウイルスB(NC-001490)、ヒトスプーマレトロウイルス(spumaretrovirus)(NC-001795)、ヒトT-リンホトロピックウイルス1(NC-001436)、ヒトT-リンホトロピックウイルス2(NC-001488)を含む。
【0152】
特定の例では、標的タンパク質は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)又はヒトパピローマウイルス(HPV、例えばHPV16、HPV18)などの発がん性ウイルス由来の核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)から生成される。他の例では、核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)から生成される標的タンパク質は、呼吸器合胞体ウイルス、肝炎ウイルス(例えばC型肝炎ウイルス)、コロナウイルス(例えばSARSウイルス)、アデノウイルス、ポリオーマウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)又は単純ヘルペスウイルス(HSV)などの病原性ウイルス由来である。
【実施例
【0153】
二重の色素コンジュゲートを用いることにより利用可能な色素原のパレットは、高コントラストの多重アッセイを容易にすると考えらえる。いくつかの実施態様では、生成される色は、互いから及び対比染色から容易に区別することができる。このような二重染色色素原は:PD-L1/CD8、PD1/CD8、CD3/CD8、CD4/CD8、PD-L1/CD8/FoxP3(複数の組織型にまたがる免疫プロファイリング);TTF1&P40(肺の扁平上皮及び腺癌の層別化);E-カドヘリン&P-120(乳房における小葉対管の病変の同定);及びP540/高分子量サイトケラチン(前立腺における腺癌及び正常な腺の同定)といった多重IHCアッセイに適用することができる。二重染色色元素は、遺伝子の融合、欠失及び/又は転位の同定のための多重ISHアッセイ(分解又はスプリットシグナルISHアッセイを介した)に適用することができる。例には、肺におけるALK、ROS1、RET再構成;肺におけるTMPRSS2-ERG融合、及びリンパ腫におけるBCL2転位が含まれる。
【0154】
実施例1-キノンメチド-TAMRA-Dabsylマルチ色素コンジュゲート
キノンメチド-TAMRA-Dabsylマルチ色素コンジュゲートは、二つの発色団、即ちTAMRA発色団とDabsyl発色団とを含む。TAMRAのみではマゼンダ色が、Dabsylのみでは黄色が、それぞれ生成されるが、マルチ色素コンジュゲートは赤色を生成する。
【0155】
キノンメチド-TAMRA-Dabsylマルチ色素コンジュゲートを、扁桃腺組織中のCD8マーカーを染色するためのアッセイに使用した。まず、組織を脱パラフィンし、約64分間抗原を回収した(細胞調整1、CC1、VMSI #950-124)。次いで、ウサギ抗Ki-67抗体を適用し、インキュベートした(37℃、約16分)。その後洗浄し、続いて二次ヤギポリクローナル抗ウサギ、アルカリホスファターゼコンジュゲートと共にインキュベートした(37℃;約12分)。APコンジュゲートと共にインキュベートした後、スライドを食塩水クエン酸ナトリウムバッファー(SSC、VMSI #950-110)で洗浄した。10mMのグリシンバッファー(pH2.0)中に溶解した200μLの0.5Mトリス溶液(pH10.0)及び100μLの100から500μMのキノンメチド-TAMRA-Dabsylマルチ色素コンジュゲートのコインキュベーションを、約32分進行させた。染色組織切片を、修飾されたマイヤーヘマトキシリンで対比染色し(37℃;約4分)、次いでBluing Reagentと共にインキュベートした(37℃;約4分)。次いでスライドを、段階的なエタノールシリーズで脱水し、キシレンで洗浄し、手動でカバーガラスをした。図4に示すように、キノンメチド-TAMRA-Dabsylマルチ色素コンジュゲートはCD8標的を赤く染色した。
【0156】
この実施例のキノンメチド-TAMRA-Dabsylマルチ色素コンジュゲートは、二つの色素原に結合したキノンメチド前駆体部分を含んでいた。ここでは、二つの色素原は線形の構成で提供され、即ちTAMRAは、Dabsylをコンジュゲートに結合させるための足場として機能した。以下の方法により、キノンメチド-TAMRA-Dabsylマルチ色素コンジュゲートを形成した(中間体の番号付けをスキーム1に示す):
スキーム1-キノンメチド-TAMRA-Dabsylマルチ色素コンジュゲートの合成
【0157】
ドライなCHCl(5mL)中、N-Boc-エチレンジアミン(49mg、0.46mmol)及びトリエチルアミン(47mg、0.46mmol)の撹拌された溶液に対し、塩化ダブシル(dabsyl)1(100mg、0.31mmol)を加えた。反応混合物を、室温で2時間撹拌し、この時点で反応はHPLCにより完了したように見えた。溶媒を減圧下で除去し、その結果得られた粘性油状物を、トルエン(3×5mL)と共沸混合した。TFA:CHCl(5mL)の1:1混合部を加え、反応混合物を室温で1時間撹拌し、その後減圧下で溶媒を除去した。その結果得られた粘性油状物を、トルエン(3×5mL)で共沸混合した。次いで、中間体2を含む、結果として得られた粘性油状物を、DMSO(3mL)に溶解し、トリエチルアミン(49mg、0.46mmol)を加えた。次いでTAMRA-NHSエステル(179mg、0.34mmol)を加え、得られた混合物を室温で約2時間撹拌した。反応混合物をMeOH(2mL)で希釈し、混合物を、分取HPLC(C18、40mL/分、HO:ACN 95:5から5:95中0.05% TFA、約40分間)により直接精製してダブシル(dabsyl)-TAMRAコンジュゲート3を赤い固体として得た(145mg、62%の収率)。C4142についてMS(ESI)m/z(M+H)の計算値は760.3、実験値は760.1であった。
【0158】
コンジュゲート3(145mg、0.19mmol)をDMSO(3mL)に溶解し、続いてDMAP(23mg、0.19mmol)及びDSC(49mg、0.19mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、続いてDMAP(23mg、0.19mmol)及びDSC(49mg、0.19mmol)の2回目の付加を行った。反応混合物を室温で1時間撹拌し、続いてDMAP(23mg、0.19mmol)及びDSC(49mg、0.19mmol)の3回目の付加を行った。反応混合物を室温で1時間撹拌し、続いて4-ピペリジンカルボン酸(123mg、0.96mmol)及びトリエチルアミン(97mg、0.96mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、続いてMeOH(2mL)で希釈し、分取HPLC(C18、40mL/分、HO:ACN 95:5から5:95中0.05% TFA、40分間)により直接精製して、ダブシル(dabsyl)-TAMRAコンジュゲート4を赤い固体として得た(90mg、54%の収率)。C4751について、MS(ESI)m/z(M+H)の計算値は871.4、実験値は871.2であった。
【0159】
化合物4(90mg、0.10mmol)をDMSO(3mL)に溶解し、続いてDMAP(13mg、0.10mmol)及びDSC(29mg、0.11mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、続いて化合物5(39mg、0.11mmol)及びトリエチルアミン(31mg、0.31mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、続いてMeOH(2mL)で希釈し、分取HPLC(C18、40mL/分、HO:ACN 95:5から5:95中0.05% TFA、40分間)により直接精製して、ダブシル(dabsyl)-TAMRAコンジュゲート6を赤い固体として得た(85mg、69%の収率)。C6171FN1011PS2+について、MS(ESI)m/z(M+2H)2+の計算値は601.3、実験値は601.0であった。
【0160】
実施例2-チラミド-TAMRA-Cy5マルチ色素コンジュゲート
チラミド-TAMRA-Cy5マルチ色素コンジュゲートは、二つの発色団、即ちTAMRA発色団及びCy5発色団を含む。TAMRAのみではマゼンダ色が、Cy5のみではシアン色が、それぞれ生成されるが、マルチ色素コンジュゲートは紫色を生成する。
【0161】
チラミド-TAMRA-Cy5マルチ色素コンジュゲートを、扁桃腺組織中のKi67マーカーを染色するためのアッセイに使用した。まず、組織を脱パラフィン処理し、CC1で64分間抗原を回収した。内因性のペルオキシダーゼを、1%のH溶液と共に4分間インキュベートすることにより不活性化した。ウサギ抗Ki-67抗体を適用し、インキュベートした(37℃、16分)。その後洗浄し、続いて二次ヤギポリクローナル抗ウサギ、ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートと共にインキュベートした(37℃;8分)。HRPコンジュゲートと共にインキュベートした後、200μLの約0.1から約1mMのチラミド-TAMRA-Cy5マルチ色素コンジュゲート溶液と、100μLの0.1% H溶液とを、約32分間コインキュベートした。染色組織切片を、修飾されたマイヤーヘマトキシリンで対比染色し(37℃;約4分)、次いでBluing Reagentと共にインキュベートした(37℃;約4分)。次いでスライドを、段階的なエタノールシリーズで脱水し、キシレンで洗浄し、手動でカバーガラスをした。図5に示すように、チラミド-TAMRA-Cy5マルチ色素コンジュゲートはCD8標的を紫に染色した。
【0162】
この実施例のチラミド-TAMRA-Cy5マルチ色素コンジュゲートは、二つの色素原に結合したチラミド部分を含んでいた。ここで、二つの色素原は、リンカーを用いて「分枝状」の構成に提供され、ここでは二つの色素原をチラミド部分に結合させるためにリジンが使用された。以下の方法により、チラミド-TAMRA-Cy5マルチ色素コンジュゲートを形成した(中間体の番号付けをスキーム2に示す):
スキーム2-チラミド-TAMRA-Cy5マルチ色素コンジュゲートの合成
【0163】
DMSO(3mL)中、N-Boc-L-リジン(20mg、0.081mmol)の溶液に対し、トリメチルアミン(25mg、0.24mmol)及びCy5-NHSエステル(50mg、0.081mmol)を加えた。反応混合物(中間体12を含む)を室温で1時間撹拌し、続いてDMAP(10mg、0.081mmol)及びDSC(23mg、0.089mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、続いてチラミン(17mg、0.12mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、続いてMeOH(2mL)で希釈し、分取HPLC(C18、40mL/分、H2O:ACN 95:5から5:95中0.05% TFA、40分間)により直接精製して、化合物13を濃青色の固体として得た(37mg、65%の収率)。C4359 についてMS(ESI)m/z(M)の計算値は711.5、実験値は711.3であった。
【0164】
化合物13(37mg、0.052mmol)を、TFA:CHClの4:1溶液(2mL)中に溶解し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、その結果得られた濃青色の粘性油状物をトルエン(3×5mL)と共沸混合した。別のフラスコにおいて、DMSO(3mL)にアミノ-peg-カルボン酸(25mg、0.057mmol)を溶解し、続いてトリエチルアミン(17mg、0.17mmol)を加えた。次いで、TAMRA-NHS エステル(30mg、0.057mmol)を加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。次いでDMAP(7.0mg、0.057mmol)及びDSC(16mg、0.063mmol)を加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を、N-Boc-切断化合物13を含む以前のフラスコに加え、続いてトリエチルアミン(17mg、0.17mmol)を加えた。その結果得られた反応混合物を室温で2時間撹拌し、続いてMeOH(2mL)で希釈し、分取HPLC(C18、40mL/分、H2O:ACN 95:5から5:95中0.05% TFA、40分間)により直接精製して、TAMRA-Cy5コンジュゲート14をパープルの固体として得た(TFA塩、35mg、40%の収率)。C9011816 2+についてMS(ESI)m/z(M+H)2+の計算値は783.5、実験値は783.3であった。
【0165】
実施例3-チラミド-TAMRA-FITCマルチ色素コンジュゲート
チラミド-TAMRA-FITCマルチ色素コンジュゲートは、二つの発色団、即ちTAMRA発色団及びFITC発色団を含む。TAMRAのみではマゼンダ色が、FITCのみでは黄色が、それぞれ生成されるが、マルチ色素コンジュゲートは赤色を生成する。
【0166】
実施例2に記載したように、チラミド-TAMRA-FITCマルチ色素コンジュゲートを、扁桃腺組織中のKi67マーカーを染色するためのアッセイに使用した。まず、Ki67に特異的な一次抗体を扁桃腺組織試料に導入し、抗体-標的複合体を形成した。次いで二次抗体、即ちホースラディッシュペルオキシダーゼ酵素にコンジュゲートされた抗Ki67抗体を導入した。チラミド-TAMRA-FITCマルチ色素コンジュゲートを導入すると、ホースラディッシュペルオキシダーゼはチラミド-TAMRA-FITCマルチ色素コンジュゲートを反応中間体に変換し、ここでこれは、標識されたKi67標的の近位で組織に又は標識されたKi67標的に直接結合することができた。図6に示すように、チラミド-TAMRA-FITCマルチ色素コンジュゲートはCD8標的を赤に染色した。
【0167】
この実施例のチラミド-TAMRA-FITCマルチ色素コンジュゲートは、二つの色素原に結合したチラミド部分を含んでいた。ここで、二つの色素原は、リンカーを用いて「分枝状」の構成に提供され、ここでは二つの色素原をチラミド部分に結合させるためにリジンが使用された。Cy5をFITCで置換し、チラミドTAMRA-Cy5二重色素コンジュゲートと類似の手順を用いて、チラミド-TAMRA-FITCマルチ色素コンジュゲートを調製した。C799320+についてMS(ESI)m/z(M+H)2+の計算値は745.3、実験値は744.9であった。
【0168】
実施例4-キノンメチド-Dabcyl-Cy3マルチ色素コンジュゲート
キノンメチド-Dabcyl-Cy3マルチ色素コンジュゲートは、二つの発色団、即ちDabcyl発色団及びCy3発色団を含む。Dabcylのみでは黄色が、Cy3のみではマゼンダ色が、それぞれ生成されるが、マルチ色素コンジュゲートは赤色を生成する。
【0169】
実施例1に記載したように、キノンメチド-Dabcyl-Cy3マルチ色素コンジュゲートを、扁桃腺組織中のKi67マーカーを染色するためのアッセイに使用した。まず、Ki67に特異的な一次抗体を扁桃腺組織試料に導入し、抗体-標的複合体を形成した。次いで二次抗体、即ちアルカリホスファターゼ酵素にコンジュゲートされた抗Ki67抗体を導入した。キノンメチド-Dabcyl-Cy3マルチ色素コンジュゲートを導入すると、アルカリホスファターゼはキノンメチド-Dabcyl-Cy3マルチ色素コンジュゲートを反応中間体に変換し、これはここで、標識されたKi-67標的の近位の組織に、又は同Ki-67標的に直接結合することができた。図7に示すように、キノンメチド-Dabcyl-Cy3マルチ色素コンジュゲートはKi-67標的を赤く染色した。
【0170】
この実施例のキノンメチド-Dabcyl-Cy3マルチ色素コンジュゲートは、二つの色素原に結合したキノンメチド前駆体部分を含んでいた。ここで、二つの色素原は、リンカーを用いて「分枝状」の構成に提供され、ここでは二つの色素原をチラミド部分に結合させるためにリジンが使用された。以下に示す実施例5に記載されるものと同様の方法により、キノンメチド-Dabcyl-Cy3マルチ色素コンジュゲートを形成した。
【0171】
実施例5-キノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲート(IHC)
キノンメチド-Dabcyl-Cy3マルチ色素コンジュゲートは、二つの発色団、即ちTAMRA発色団及びDabcyl発色団を含む。TAMRAのみではマゼンダ色が、Dabcylのみでは黄色が、それぞれ生成されるが、マルチ色素コンジュゲートは赤色を生成する。
【0172】
実施例1に記載したように、キノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートを、扁桃腺組織中のKi67マーカーを染色するためのアッセイに使用した。まず、Ki67に特異的な一次抗体を扁桃腺組織試料に導入し、抗体-標的複合体を形成した。次いで二次抗体、即ちアルカリホスファターゼ酵素にコンジュゲートされた抗Ki67抗体を導入した。キノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートを導入すると、アルカリホスファターゼはキノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートを反応中間体に変換し、これはここで、標識されたKi-67標的の近位の組織に、又は同Ki-67標的に直接結合することができた。図8に示すように、キノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートはKi-67標的を赤く染色した。
【0173】
この実施例のキノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートは、二つの色素原に結合したキノンメチド前駆体部分を含んでいた。ここで、二つの色素原は、リンカーを用いて「分枝状」の構成に提供され、ここでは二つの色素原をチラミド部分に結合させるためにリジンが使用された。以下の方法により、キノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートを形成した(中間体の番号付けをスキームに示す):
スキーム3-キノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートの合成
【0174】
DSMO(5mL)中、N-Fmoc-N-ダブシル(dabcyl)-L-リジン7(100mg、0.16mmol)の溶液に対し、DMAP(20mg、0.16mmol)及びDSC(0.18mmol、45mg)を加えた。次いで化合物8(62mg、0.18mmol)及びトリエチルアミン(49mg、0.48mmol)を加え、反応混合物を室温で1時間撹拌し、その時点で、HPLCによりカップリング反応は完了しているように見えた。次いで追加量のトリエチルアミン(3mL)を加え、反応混合物を室温で6時間勢いよく撹拌し、その時点でFmoc基は、HPLCによって示されるように切断された。次いで、反応混合物を、勢いよく撹拌するEtOAc(100mL)中に沈殿させた。その結果得られたオレンジ色の固体を、減圧濾過により収集し、EtOAcで複数回洗浄し、化合物9をオレンジ色の固体として得た(ビス-トリエチルアミン塩、140mg、93%の収率)。C3548FNについてMS(ESI)m/z(M+H)の計算値は728.3、実験値は728.0であった。
【0175】
別のフラスコにおいて、DMSO(3mL)にアミノ-PEG-カルボン酸(40mg、0.15mmol)を溶解し、続いてトリメチルアミン(46mg、0.45mmol)を加えた。次いで、TAMRA-NHS エステル(79mg、0.15mmol)を加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。次いでDMAP(18mg、0.15mmol)及びDSC(42mg、0.17mmol)を加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。次いで化合物9(140mg、0.15mmol)及びトリエチルアミンを加え、反応混合物を室温で2時間撹拌し、続いてMeOH(2mL)で希釈し、分取HPLC(C18、40mL/分、HO:ACN 95:5から5:95中0.05% TFA、40分間)により直接精製して、ダブシル(dabcyl)-TAMRAコンジュゲート10を赤い固体として得た(mg、54%の収率)。C7189FN10162+ についてMS(ESI)m/z(M+2H)2+の計算は694.3、実験値は694.0であった。
【0176】
実施例6-キノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲート(ISH)
キノンメチド-Dabcyl-Cy3マルチ色素コンジュゲートは、二つの発色団、即ちTAMRA発色団及びDabcyl発色団を含む。TAMRAのみではマゼンダ色が、Dabcylのみでは黄色が、それぞれ生成されるが、マルチ色素コンジュゲートは赤色を生成する。
【0177】
キノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートを、乳房組織中のHER2遺伝子の銀染色と併せて染色体17マーカーを染色するための多重ISHアッセイに使用した。組織を脱パラフィン処理し、続いて細胞調整2(CC2、VMSI #950-123、90℃;28分)で前処理し、プロテアーゼ3で処理した(VMSI #780-4149、37℃;20分)。DNP標識されたHer2及びDIG標識された染色体17プローブのカクテル(VMSI #780-4422)を組織に加え、変性させ(80℃;20分)、44℃で6時間ハイブリダイズさせた。SSCによる76℃での三度のストリンジェントな洗浄の後、試料をウサギ-抗DNP抗体と共に(37℃;20分)、続いてHRPコンジュゲートヤギポリクローナル抗ウサギ抗体と共に(37℃;16分)インキュベートした。HRPを、酢酸銀、ハイドロキノン、及び過酸化水素とのインキュベーションにより銀の沈着として検出した。染色体17を、マウス-抗DIG抗体(37℃;20分)との、続いてAPコンジュゲートヤギポリクローナル抗マウス抗体(37℃;24分)とのインキュベーションにより連続的に可視化した。SSCで洗浄した後、次いで10mMのグリシンバッファー(pH2.0)に、最終濃度50-500μMとなるように溶解した200μLのpH調節溶液(0.5M Tris、pH10.0)と100μLのキノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートとをコインキュベートした(37℃;32分)。染色した組織切片を、ヘマトキシリンIIで対比染色し(37℃;4分)、次いでBluing Reagentと共にインキュベートした(37℃;4分)。次いでそれらを清浄水混合物ですすぎ、段階的エタノールシリーズで脱水し、キシレンで洗浄し、手動でカバーガラスをした。キノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートを導入すると、アルカリホスファターゼはキノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートを反応中間体に変換し、これはここで、標識された染色体17標的の近位で組織に又は同標的に直接結合することができた。図9に示すように、キノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートは染色体17標的を赤く染色した。
【0178】
この実施例のキノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートは、二つの色素原に結合したキノンメチド前駆体部分を含んでいた。ここで、二つの色素原は、リンカーを用いて「分枝状」の構成に提供され、ここでは二つの色素原をチラミド部分に結合させるためにリジンが使用された。実施例5に記載される方法に従って、キノンメチド-TAMRA-Dabcylマルチ色素コンジュゲートを形成した。
【0179】
実施例7-キノンメチドCy5-ローダミン800二重色素コンジュゲートの合成
MeCN(5mL)中、Cy5酸15(50mg、0.096mmol)の撹拌溶液に対し、DMAP(13mg、0.11mmol)を加えた。DMAPが溶解した後、DSC(27mg、0.11mmol)を加え、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。次いでNε-Boc-L-リジン(47mg、0.19mmol)及びトリエチルアミン(49mg、0.48mmol)を加え、得られた混合物を、室温で30分間撹拌した。次いで溶媒を減圧下で除去し、残留物をCHCl(50mL)に溶解し、1MのHCl(3×50mL)及びブライン(50mL)で抽出した。有機層を収集し、MgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。その結果得られた残留物16(Cy5-N-Boc-L-リジンコンジュゲート)をMeCN(5mL)に溶解し、続いてDMAP(13mg、0.11mmol)を加えた。DMAPが溶解した後、DSC(27mg、0.11mmol)を加え、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。次いでキノンメチド前駆体17(52mg、0.14mmol)及びトリエチルアミン(49mg、0.48mmol)を加え、得られた混合物 室温で30分間撹拌した。次いで溶媒を減圧下で除去し、残留物をCH2Cl2(50mL)に溶解し、1MのHCL(3×50mL)及びブライン(50mL)で抽出した。有機層を収集し、MgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。その結果得られた残留物(キノンメチド-Nε-Boc-L-リジン-Cy5コンジュゲート)をCHCl(5mL)に溶解し、続いてTFA(1mL)を加えた。得られた混合物を室温で30分間撹拌し、この時点で溶媒を減圧下で除去した。その結果得られた残留物をMeCN(3mL)に溶解し、続いてトリエチルアミン(97mg、0.96mmol)及びローダミン800(48mg、0.096mmol)を加えた。得られた混合物を室温で16時間撹拌し、その時点で溶媒を減圧下で除去した。その結果得られた残留物をMeOH(5mL)に溶解し、混合物を逆相フラッシュクロマトグラフィー(SNAP C18 Ultra 60g、50mL/分、HO:MeOH 4:1から0:1中0.05% TFA、10 CV)により直接精製してQM-Cy5-ローダミン800コンジュゲート18を緑の固体として得た(70mg、Cy5酸から55%の収率)。C78982+についてMS(ESI)m/z(M)2+の計算値は662.4、実験値は662.1であった。
スキーム4-キノンメチドCy5-ローダミン800二重色素コンジュゲートの合成
【0180】
実施例8-キノンメチド-Rhod800-Cy5マルチ色素コンジュゲート(IHC)
キノンメチド-Cy5-Rhod800マルチ色素コンジュゲートは、二つの発色団、即ちローダミン800発色団及びCy5発色団を含む。ローダミン800のみでは黄色が、Cy5のみでは青色が、それぞれ生成されるが、マルチ色素コンジュゲートは緑色を生成する。
【0181】
実施例1に記載したように、キノンメチド-Rhod800-Cy5マルチ色素コンジュゲートを、扁桃腺組織中のKi67マーカーを染色するためのアッセイに使用した。まず、Ki67に特異的な一次抗体を扁桃腺組織試料に導入し、抗体-標的複合体を形成した。次いで二次抗体、即ちアルカリホスファターゼ酵素にコンジュゲートされた抗Ki67抗体を導入した。キノンメチド-Cy5-Rhod800マルチ色素コンジュゲートを導入すると、アルカリホスファターゼはキノンメチド-Cy5-Rhod800マルチ色素コンジュゲートを反応中間体に変換し、これはここで、標識されたKi-67標的の近位の組織に又は同Ki-67標的に直接結合することができた。図14に示すように、キノンメチド-Cy5-Rhod800マルチ色素コンジュゲートはKi-67標的を緑に染色した。
【0182】
本明細書において言及された及び/又は出願データシートに列挙されたすべての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許文献は、その全体が参照により本明細書に包含される。実施形態の態様は、さらなる実施態様を提供するために様々な特許、出願及び公開文献の概念を利用することが必要であれば修正することができる。
【0183】
特定の実施態様を参照して本発明について記載したが、これら実施態様は単に本発明の原理及び応用を説明するものである。したがって、これら説明的実施態様に多数の修正を行うことができ、且つ特許請求の範囲に規定される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の構成が考案されうることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A-B】
図13C-D】
図14