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特許7021129材料付着を制限するための3Dプリンタ及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】材料付着を制限するための3Dプリンタ及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20220208BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220208BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220208BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220208BHJP
   B29C 64/20 20170101ALI20220208BHJP
   B29C 64/10 20170101ALI20220208BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/20
B29C64/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018569039
(86)(22)【出願日】2017-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 NL2017050405
(87)【国際公開番号】W WO2018004336
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-03-26
(31)【優先権主張番号】2017052
(32)【優先日】2016-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】518460451
【氏名又は名称】アトゥム・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トリストラム・ブデル
(72)【発明者】
【氏名】ラモン・ルドルフ・テッテロー
(72)【発明者】
【氏名】ハニル・ブデル
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-125079(JP,A)
【文献】特開平08-034064(JP,A)
【文献】特表2010-509090(JP,A)
【文献】特表2013-542750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/124,64/20,64/393
B33Y 10/00,30/00,50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロダクトのプリントを行うための3Dプリンタを制御する方法であって、
-前記プロダクトのモデルを提供するステップと;
-前記モデルに対して、ソース(a source)からの励起源の通過及び拡散による固有の付着であってプリント実行中にプリント材料をもたらす固有の付着の補償を行うステップと;
-補償された前記モデルに基づき、前記3Dプリンタのためのプリント材料におけるプリント用レイヤーを生成するステップと、
を含み、
前記モデルの補償を行う前記ステップは、前記モデルの補償のために、少なくとも一つのプリント材料と、関連する前記プリント材料における前記固有の付着の度合いを決定する少なくとも複数の環境条件と、に対する前記固有の付着の値の表を参照することにより、固有の付着の度合いに対応する寸法だけ前記ソースからの入射励起源の方向に対する前記固有の付着の方向に前記モデルを縮小する工程を含む、方法。
【請求項2】
プロダクトのプリントを行うための3Dプリンタを制御する方法であって、
-前記プロダクトのモデルを提供するステップと;
-前記モデルに基づき、前記3Dプリンタのためのプリント材料におけるプリント用レイヤーを生成するステップと;
-前記プリント用レイヤーに対して、ソース(a source)からの励起源の通過及び拡散による固有の付着であってプリント実行中にプリント材料をもたらす固有の付着の補償を行うステップと、
を含み、
前記プリント用レイヤーの補償を行う前記ステップは、前記固有の付着の補償のために、少なくとも一つのプリント材料と、関連する前記プリント材料における前記固有の付着の度合いを決定する少なくとも複数の環境条件と、に対する前記固有の付着の値の表を参照することにより、前記プリント用レイヤー中のプリント用ピクセルを、前記ソースからの入射励起源の方向に対する前記固有の付着の方向において固有の付着の度合いに対応するプリント用プロダクトの外面の深さまで除去する工程を含む、方法。
【請求項3】
前記固有の付着の度合いは、少なくともプリント材料の種類、顔料、着色料、抑制剤などの添加剤;光の帯域幅;光の強度;温度;周囲光などを含む群から選ばれる環境条件に依存する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つのプリント材料と、関連する前記プリント材料における前記固有の付着の度合いを決定する少なくとも複数の環境条件と、に対する前記固有の付着の値の表をまとめるステップをさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ソースからの前記励起源は、レーザーおよび熱のうち少なくとも一つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
プリント素子及び制御装置を備える3Dプリンタであって、提供されたモデルに基づき、前記制御装置は、
-前記モデルに対して、ソース(a source)からの励起源の通過及び拡散による固有の付着であってプリント実行中にプリント材料をもたらす固有の付着の補償を、固有の付着の度合いに対応する寸法だけ前記ソースからの入射励起源の方向に対する前記固有の付着の方向に前記モデルを縮小することによって行うとともに、補償された前記モデルに基づき、前記3Dプリンタのための前記プリント材料におけるプリント用レイヤーを生成すること、及び、
-前記モデルに基づき、前記3Dプリンタのための前記プリント材料におけるプリント用レイヤーを生成するとともに、ソース(a source)からの励起源の通過及び拡散による前記プリント用レイヤーの固有の付着であってプリント実行中にプリント材料をもたらす固有の付着の補償を、前記プリント用レイヤー中のプリント用ピクセルを、前記ソースからの入射励起源の方向に対する前記固有の付着の方向において固有の付着の度合いに対応するプリント用プロダクトの外面の深さまで除去することによって行い、さらに、前記固有の付着の補償のために、少なくとも一つのプリント材料と、関連する前記プリント材料における前記固有の付着の度合いを決定する少なくとも複数の環境条件と、に対する、まとめられた前記固有の付着の値の表を参照すること、
のうち少なくとも一方を行うように構成されている、3Dプリンタ。
【請求項7】
前記制御装置は、前記3Dプリンタに対して外付けされるコンピュータを備える、請求項6に記載の3Dプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3Dプリント実行中に起こり得る固有の材料付着(inherent material accretion)であってプリント用の所望の形からの変形をもたらすものを制限するための3Dプリンタ及び当該3Dプリンタにおいて実行される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブリーディング(bleeding)とは、プリントする目的物の形に対してプリント材料が望ましくない形で付着すること(accretion)である。レーザープリンタでのプリントの場合、ブリーディングとは、プリント用の材料がある程度の透過性を有することによる、拡散及び光照射又は通過に起因する固体材料の付着である。プリント材料の硬化以外の原理に基づく感熱式プリンタ及び3Dプリンタでも、ブリーディングの問題が起こり得る。拡散及び透過の程度は、光の経路、拡散、透過などに依存する。レーザーその他の光源や熱などの硬化用励起源は、硬化用のプリント材料を想定よりも深く突き抜け、望ましくない付着を生じさせる。3Dステレオリソグラフィーの場合、この材料は、z方向にもx方向及び方向にも付着し得る。レイヤーを相互に構築することを繰り返すことにより、少量の光が繰り返し材料を突き抜けることが可能となり、これにより、それぞれの場合において付着が少量になる。決められた数のレイヤーをプリントした後、全体として得られるプリントされたレイヤーには、望ましくない付着が生じており、当該レイヤーの厚みが増加するとともに、これにより光の透過率が低くなるので、十分な光が材料付着物を通過しなくなる。
【0003】
材料の透過係数及びブリーディングに対する感度は、材料に依存する。これらは、決められた3Dモデルに基づき測定され得るか、又は試験を通じて決定され得る値である。
【0004】
プロダクトのプリント後に収縮が起こり、本来プリント予定であった所望の形が得られるように、プリント用モデルを本来よりも大きな寸法とすることによりプリント後の収縮を補償することは、米国特許出願公開第2014/107823号明細書から既知であることが認識される。上記文献の段落[127]には、プリント後に起こる収縮を補償するために、モデルを本来よりも大きな寸法としなければならないと記載されている。
【0005】
本開示は、本開示の発明者の最良の知識をもってしても上記文献においては完全に認識できない、完全に別の課題に関する。実際、この課題は、プリントのプロセスそのものに起因して(例えば拡散に起因して、また、レーザーや熱などの励起源がプリント材料(例えば、プリント用にプロダクトを形成するためにプリントプロセス中にレイヤーごとに硬化されるプリント材料)をあまりに深く通過(透過)することに起因して)、プリントされたプロダクトが所望の形に対して許容範囲を超えて変形すること、より具体的には変形が増大することに繋がるものである。本開示が、プリントプロセス中に所望の形の外側に材料が望ましくない形で付着することに関するものであるのに対し、米国特許出願公開第2014/107823号明細書は、プリントプロセス後のプリントされた材料の収縮という課題に関する。
【0006】
この文脈において、米国特許出願公開第2014/107823号明細書において引用される収縮という課題は、完全に使用されるプリント材料に固有のものであることが強調される。逆に、上記の望ましくない付着という課題は、使用されるプリント材料に起因するだけでなく、プリントプロセスに適用されるプリンタの性質及び/又は設定(例えばレーザー強度や熱強度など)にも起因するものであり、望ましくない付着及び過大寸法に関する問題の解決策が、適用されるプリンタのこうした設定及び性質に見出される可能性は多様に存在する。使用されるプリント材料に関連するので、収縮はさらに無指向性となるのに対し、望ましくない付着は、レーザーや熱などの励起源の放射方向及び当該励起源の拡散の結果生じる。これらの理由により、当業者は、収縮の問題と、従前認識されていなかった望ましくない付着の問題とを、完全に無関係な態様とみなす。
【0007】
なお、拡散及び通過は、励起源の放射方向に関連する付着をもたらす。逆に、収縮は、少なくともほぼ無指向性であり、場合によってはプリントされたプロダクトの局所的な厚みによってのみ決定される。拡散及び通過の考慮は、無指向性とはかけ離れた話であり、完全に異なる手法が必要となる。
【0008】
本開示に内在する望ましくない付着という課題は、以下さらに明瞭に説明される。図7において、矢印Aは、3Dプリンタの構築方向を表し、図中の上部から下部へ向かう。目的物9、10の各レイヤーのうち図の上部にあるものがまず矢印Aの方向に従ってプリントされ、その後、矢印Aの先端へ向かってレイヤーがプリントされ、最後に、図の下部にあるレイヤーがプリントされる。特に、特定されるとおり正確に形成された形状(例えば厳密な円形)を得るために孔11の周りでプリント材料をプリントすることは、過去の3Dプリント技術では小さな課題ではなかった。現在、3Dプリンタはますます広く利用されるようになっているが、正確な寸法付けが決定的に重要な適用分野(例えば歯科)では、まさに得られる寸法及びその精度不足に関する多くの問題に依然として直面しており、これにより、他の適用分野での使用にも大きな問題が生じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の目的は、プリントすることを想定したモデルに対して、プリントされたプロダクトが過度に大きくなるのを防ぐことである。ブリーディングとは、寸法ムラをもたらす望ましくない材料付着であり、より具体的には、プリントされたモデルの寸法が当初のデジタルモデルに対して大きくなってしまうことである。これは、プリントプロセス後に起こる収縮の補償に関する上記従来技術とは全く異なるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、モデルのうちブリーディングにより厚みが増す部分をより薄くプリントする方策に関する。自然に起こる固有の付着を考慮することにより、プリントされた目的物が、基礎としたモデルに従った正しい大きさを有することになる。
【0011】
このため、プリント方向に見て下に位置するレイヤーにおける(又は当該レイヤーの)予め想定されていない付着によりプリントされ得るピクセルは、プリントする必要がない。これらのピクセルは、モデルから除去され、且つ/又はプリント用プロダクトの外面の前にプリントされる先行スライスにおいて省略され(「ブラックアウト」され)得る。これにより、そこでのプリント材料の局所的硬化(例えば重合)が外面まで排他的に行われる。
【0012】
このブリーディング現象の補正の目的は、寸法安定性を有し正確なプリントを得ることである。
【0013】
この方法により、モデルにおける孔の向きにかかわらず、丸い孔11をプリントすることができる。従来、これは常に3Dプリンタでの大きな課題であった。この方法をモデルにおける孔だけでなくモデル全体にわたって適用することにより、当該モデルが、全体として、デジタルモデルの形における「マスタ」に対してより少ないムラで実現される。
【0014】
このように、本開示の主な目的は、モデルの決められた一部分を正確にプリントしないことによりブリーディングの補償を行うことである。これは、これらの部分のプリントを行うとモデルに従った所望の形に対してプロダクトの外面の外側にブリーディングが生じるので、このような部分をブリーディングにより構築することでプリントを行う必要がなくなるためである。
【0015】
これらの目的は、様々な方法で実現可能である。これは、ブリーディングにより形成される部分をプリントしないようにするか又はもはやこれをプリントする必要がないようにする様々な方法があるためである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】モデルブリーディング補正アルゴリズムを説明するための図である。
図2】モデルブリーディング補正アルゴリズムを説明するための図である。
図3】モデルブリーディング補正アルゴリズムを説明するための図である。
図4】モデルブリーディング補正アルゴリズムを説明するための図である。
図5】ピクセル/スライス補正アルゴリズムを説明するための図である。
図6】ピクセル/スライス補正アルゴリズムを説明するための図である。
図7】目的物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
モデルブリーディング補正アルゴリズム:
1.最初に、望ましくない材料付着を考慮せずに(従って補正なしで)、プリントする目的物(図1図4ではリング1)のモデルが提供される。
【0018】
図1は、変形や付着、付着の補償がないリングのモデルを示す。各垂直断面に対して、以下が定められる:
最下点(2)=X:0,Y:0,Z:10
最上点(3)=X:0,Y:0,Z:11
【0019】
図2は、ブリーディングの影響を示す。プリンタが図1に係るモデルの境界までプリントを行うと、破線4で示される付着が生じるが、これは好ましくない。
【0020】
2.プリントされるとブリーディングをもたらすレイヤー/モデル点を決定する。
a.アルゴリズム:
補正すべき点(P)=Z法線方向に(上向き方向に)+1を有するとともにブリーディング補正(B)よりも厚い下側/開始レイヤー(L)を有するすべての点(P
=P&(L>B
トップ:
最下点(2)=X:0,Y:0,Z:10
最上点(3)(P)=X:0,Y:0,Z:11.5
(B=0.5と仮定)
【0021】
次いで、図3に破線5で示された境界がプリント用のリング1のモデル内に定められる。本来的に起こる付着を考慮して、図1に示すような当初想定されたリング1の形状を実現するために、3Dプリントがリング1の円周形状で行われるのは当該境界までとしなければならない。これにより、上記の望ましくない付着は、プリントプロセスの不可欠な部分となる。
【0022】
3.補正点を決定する。
a.アルゴリズム:
補正後の点(P)=補正すべき点(P)-ブリーディング補正(B
=P-B
トップ:
最下点(2)=X:0,Y:0,Z:10
図2の3’)=X:0,Y:0,Z:11.5
図3の3”)=X:0,Y:0,Z:10.5
(B=0.5と仮定)
【0023】
次いで、プリンタに送られるモデルが修正される。
【0024】
4.‘補正後の点(P)’と等しくなるように、モデルの‘補正すべき点(P)’を修正する。
a.アルゴリズム:
‘ブリーディング点’=‘ブリーディング補正点’
=P
トップ:
最下点=X:0,Y:0,Z:10
最上点=X:0,Y:0,Z:10.5
(B=0.5と仮定)
【0025】
5.次いで、制御するためのプリンタがスライスに基づくものである場合には、修正/変形済みモデルの断面又はスライスが生成され得るとともに、プリンタに送信され得る。
【0026】
このアルゴリズムで注目すべき点は、Bがこの目的のためには既知の値に仮定されることである。Bの値は、試験を通じて決めることができ、材料の種類、付着部分の下のセクションの厚み、レーザーその他の硬化用プリンタ素子の強度などの多様な要因及び状況に応じて異なる。とりわけこの点については、以下でさらに明瞭に説明される。
【0027】
別のアルゴリズムについても、以下でさらに明瞭に説明される。この代替的なアルゴリズムは、ここではピクセル/スライス補正アルゴリズムと称される。図5は、スライス/断面6を示し、図6は、図5のスライス6の直上のスライス/断面7を示す。各スライス/断面の間には(限定的な)距離がある。図5はプロダクトピクセル8を含み、図6は含まない。アルゴリズムは、以下のように実行される。
【0028】
1.プリントすることを想定した、補正なしのモデルを生成する。
【0029】
2.モデルの全スライスを計算する。
【0030】
3.補正すべきピクセルの決定及び規定を行う:
a.レイヤーごとに、プリントされる形を構成する各ピクセルが、プリントされるプロダクトの要素として後続の(上に配置される)レイヤーにも存在するかを確認する。
補正すべきピクセルの位置(P)=‘プロダクトピクセル’(P)たる現在のレイヤー!=‘非プロダクトピクセル’(P)たる上に位置するレイヤー
=P!=P
【0031】
4.レイヤーが補正すべきピクセルを含む場合、補正は以下のようにして計算される。
a.以下の式に基づき、(下に位置する)スライスを決定する:
開始補正レイヤー(L)=現在のレイヤー(mm)(L)-ブリーディング補正(mm)(B
ブリーディング補正は、複数のレイヤーに関し、その介在距離の合計がブリーディング補正に等しい。
=L-B
-‘開始補正レイヤー’から開始して現在のレイヤー(L)まで全レイヤーにおいて、‘補正すべき’プロダクトピクセル(P)を非プロダクトピクセルへ変換する。
=L
!=P
=black
+=1レイヤー
【0032】
5.修正/変形済みモデルのスライスを計算する。
【0033】
このようにして、通常望ましくない付着を考慮してモデルを変形するような方法が提供され、これにより、開始モデルから一部分が除去されて、当該部分が付着物により置き換えられることにより、当該付着物はもはや望ましくないものではなく、プリントプロセスの不可欠な部分を形成するものとなる。モデルを変形してそのスライス/断面を生成することにより、又は補正を決定して予め生成したスライス/断面へ当該補正を組み込むことにより、上記補正はモデル自体に基づくものであり得る。第3の選択肢として、モデルを複製し、複製したモデルを望ましくない付着の厚さに対応する距離だけ並進(変位)させ、これを当初のモデルと組み合わせる方法が参照される。これは、レイヤーをプリントする前、又はスライスがモデルから生成される前の、モデルの補償に基づく方法とみなすべきである。付着物の補償を行ったプリンタ指示が、得られた組合せモデルから生成される。
【0034】
ブリーディングの形成は、ステレオリソグラフィー以外のシステムで行われてもよい。例えば選択的レーザー焼成(SLS)においては、基本材料を通じた熱の熱伝導により、また透過及び/又は拡散などに基づき、付着が起こり得る。熱溶解積層法(Fused Deposition Modelling)においては、張り出した材料が垂れ下がることがあり、これにより正味ブリーディングと同じ影響が出る。粉体床インクジェットプリント法(Powder Bed Inkjet printing)においては、毛細管力によって望ましい深さよりも深く粉体粒子を粉体床へ突き抜けさせるために、UV硬化型及び/又は熱硬化型のインクが使用され得る。これに関する正味の効果は、ブリーディングと比較可能である。本開示に係る特徴は、このような技術にも同様に適用される。
【0035】
ブリーディング現象の材料依存性(具体的にはステレオリソグラフィーに関するもの)について、以下で例を用いてさらに説明する。例えば、すべてのプリント材料がレーザーその他の光に対して等しく透過性を有するわけではなく、そのような場合には拡散及び透過の発生が少なくなる。このために、様々なプリント材料のブリーディング特性のデータベースを形成することが提案される。ブリーディングに関する補正因子は、決められた3Dモデルを使用して測定することが可能であり、又は試験を通じて決定し記録することが可能である。このために、複数の水平シリンダを有する3Dモデルも使用可能である。
【0036】
モデルに基づくプリント用プロダクトの壁の厚みは、壁の厚みがもはやブリーディングの度合いに影響しない程度まで厚くしなければならないことを考慮すべきである。予想されるブリーディングの度合いを予め決定することによりこれを補償できるようにするために、試験を通じて形成されたデータセットにおいては、プロダクトのベースとなるモデルに対するプリントされたプロダクトのブリーディングを物理的に測定するとともに、そこからブリーディングについての具体値を推定し、予定された補償においてこの値を適用することが可能である。
【0037】
例えば、図7の丸い孔11の直径は、デジタルモデルからわかっている。次いで、孔の丸み及び直径がプリントのZ方向において測定され、以下のようになる。
=孔のデジタル値-測定値
【0038】
その後、全プリント領域の異なる位置にわたってこれがX回繰り返され、平均値が生成される。
【0039】
プリンタは、全光照射野にわたって分布する放射強度にムラを有し得る。測定及び本開示の発明者の経験から、このムラは通常10%未満であることがわかった。このため、これらの測定結果に基づき、光照射野の補償を行うことも可能である。プリント領域の一部への光照射を他の部分よりも少なくすることにより、プリント領域への全照射量を一様にすることができる。
【0040】
これらの多様な定数が決定された後、これらは材料データベースに保存され得る。各材料は、各々の定数を持つ。
【0041】
さらに、ブリーディング現象が発生する深さにも影響を与えることが可能である。例えば、顔料を添加することが可能である。光吸収性顔料又は着色料を添加することにより、光侵入深さを低減することが可能になる。ここでは、着色料及び/又は顔料が触媒のアクティブ帯域幅において吸収を有することが重要である。例えば、触媒の吸収範囲における吸収を有しない青色の着色料/顔料が使用された場合には、光は、あたかも着色料が存在しないかのように、重合予定の材料を突き抜けることになる。
【0042】
そうでない場合、顔料は、着色料とは僅かに異なる効果を有する。顔料は固体粒子であるので、拡散/散乱をもたらし得る。この散乱により、光源の放射角度から見た侵入深さはより小さくなるが、これらの粒子により生じる散乱のため、X方向及びY方向(すなわちプリント方向に対して横方向)において、より多くのブリーディングが起こる。
【0043】
加えて、いわゆる抑制剤を使用することが可能である。抑制剤は、触媒の働きを抑制する。触媒が抑制剤とともに存在することにより、触媒及び抑制剤は、共同で着色料として働く。このようにして、触媒は、光の侵入深さを抑制するが、重合をもたらさない。
【0044】
さらに、光源依存の光侵入深さに影響を与えることが可能である。通常、放射スペクトルと侵入深さとの間には関係がある。
【0045】
これらの影響すべてによって、材料ごとにより多くの表が必要になり、あるいは単に、同じ材料でも様々な添加剤、顔料、インク、着色料、レーザー強度などに対して別の表が必要になり得る。
【0046】
以下は、ブリーディングに関する補正表の一例である。
【表1】
【0047】
本開示の原理を実践に移すには前述の例で十分であるが、使用可能な材料は他にも多数存在する。これは、狭い帯域幅の光照射と広いスペクトルの光照射との間に実質的な相違があること、及びブリーディングが材料に依存することは、上記表から完全に明らかであるためである。
【0048】
光照射スペクトルλ(nm)の幅は、ブリーディングの侵入深さを決定するための関連する一特徴であり得る。測定により、樹脂が受ける光照射のスペクトルが狭いほど、またその波長が短いほど、全体的な侵入深さ及びブリーディングが減少することが示される。このため、ブリーディングは、光照射に使用されるスペクトルに依存する。
【0049】
レイヤーが構築される際のmJ/cm単位の放射線量(Ec)は、光強度と光照射時間との積に等しいものであり得る。
【0050】
測定により、各材料が各放射線量(Ec)において一定のブリーディングをそれぞれ呈することがさらに示された。光照射強度及び光照射時間が同じに保たれるかどうか、別の日にも測定され、得られたブリーディングは常に同じになる。
【0051】
特許請求の範囲は、上述の本開示の各実施形態の説明に沿うものであるが、保護範囲が各実施形態の説明に限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7