(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/26 20060101AFI20220208BHJP
【FI】
G02B5/26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019015314
(22)【出願日】2019-01-31
(62)【分割の表示】P 2017124450の分割
【原出願日】2017-06-26
【審査請求日】2019-02-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-25
(32)【優先日】2016-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502151820
【氏名又は名称】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Viavi Solutions Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217135
【氏名又は名称】山崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ザイデル
(72)【発明者】
【氏名】マーク テヴィス
(72)【発明者】
【氏名】カンニン リャン
(72)【発明者】
【氏名】ヤロスロウ ジエバ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフェリー ジェームズ クナ
(72)【発明者】
【氏名】ポール トーマス コールマン
【合議体】
【審判長】榎本 吉孝
【審判官】関根 洋之
【審判官】河原 正
(56)【参考文献】
【文献】実公平1-36891(JP,Y2)
【文献】国際公開第2016/060173(WO,A1)
【文献】特開2013-50524(JP,A)
【文献】特表2012-519579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板
の表面上に、溶媒
と、レベリング剤としてポリアクリレート
と、カラーシフト粒子、量子ドットまたはそれらの混合物を含む選択的光変調体粒子とを含む第1の選択的光変調体層を堆積させるステップと、
前記第1の選択的光変調体層上に少なくとも1つの反射体を堆積させるステップと、
前記少なくとも1つの反射体上に第2の選択的光変調体層を堆積させるステップとを含み、
前記第1の選択的光変調体層および前記第2の選択的光変調体層のうちの少なくとも1つは、液体コーティングプロセスを使用して堆積され、
前記液体コーティングプロセスは、スロットダイコーティング、スロットビードコーティング、スライドビードコーティング、スロットカーテンコーティング、スライドカーテンコーティング、単層・多層コーティング、および引張りウェブスロットコーティングから選択されるプロセスである、シートの製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの反射体の少なくとも1つの側面には選択的光変調体層がない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの反射体は金属製である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記液体コーティングプロセスは、コーティング速度を約5~約100m/分に調整するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記液体コーティングプロセスは、約50μm~約100μmのコーティングギャップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体コーティングプロセスは、前記選択的光変調体層の約2μm~10μmのウェットフィルムを堆積させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記液体コーティングプロセスは、所定の厚さ約500nm~約1500nmの選択的光変調体層を堆積させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記液体コーティングプロセスは、約0.1~約1000m/分の速度で前記第1の光変調体層および前記第2の光変調体層のそれぞれを堆積させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の選択的光変調体層および前記第2の選択的光変調体層のうちの少なくとも1つは、ホスト材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ホスト材料は、有機ポリマー、無機ポリマー、および、複合材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2016年6月27日に出願された米国仮出願第62/355,131号に対する優先権の利益を主張するものであり、その全開示を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、概して、ホイル、シートおよび/またはフレークの形態の光学デバイスなどの物品に関する。前記光学デバイスは、金属反射体層などの少なくとも1つの反射体(リフレクタ)と、前記少なくとも1つの反射体上に堆積された、着色層または誘電体層などの選択的光変調体層(selective light modulator layer;SLML)とを備え得る。前記光学デバイスを製造する方法もまた開示される。
【背景技術】
【0003】
フレークなどの様々な光学デバイスが光学特性を強化したコンシューマ用途のフィーチャとして使用されている。一部のコンシューマ用途では、カラーシフトが少ないかまたは全くない金属効果や光学変化効果が望まれている。残念なことに、現行の製造方法では、十分に有色ではなかったり、かつ/または十分に強力な金属フロップ性が得られない光学デバイスが製造されている。他の方法は多層塗布システムを必要とし、これは製造コストを増加させ、かつ、業界標準の製造設備内では機能できない。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、第1の表面、前記第1の表面に対向する第2の表面、および、第3の表面を有する反射体と;前記反射体の前記第1の面の外側にある第1の選択的光変調体層と;前記反射体の前記第2の面の外側にある第2の選択的光変調体層とを備え、前記反射体の前記第3の面は開放されている、シートが開示される。
【0005】
別の一態様では、基板上に第1の選択的光変調体層を堆積させるステップと;前記第1の選択的光変調体層上に少なくとも1つの反射体を堆積させるステップと;前記少なくとも1つの反射体上に第2の光変調体層を堆積させるステップとを含み、前記第1の選択的光変調体層および前記第2の選択的光変調体層のうちの少なくとも1つは液体コーティングプロセスを使用して堆積される、シートの製造方法が開示される。
【0006】
様々な実施形態の追加の特徴および利点は、部分的には下記発説明に記載されるか、部分的には下記説明の記載から明らかであるか、または、様々な実施形態の実施によって理解することができる。かかる様々な実施形態の目的および他の利点は、本明細書の説明で特に指摘する要素および組み合わせによって実現かつ達成されるであろう。
【0007】
本開示は、そのいくつかの態様および実施形態において、発明の詳細な説明および添付の図面からより完全に理解することができる。
【0008】
本明細書および図面を通して、同様の参照番号は同様の要素を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一例に係るフレーク形態の物品の断面図である。
【
図2】本開示の一例に係る、剥離層を有する基板から剥離される前の物品の断面図である。
【
図3】本開示の一例に係る、誘電体層を堆積する段階を示す液体コーティングプロセスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は両方とも例示的で説明的なものに過ぎず、本開示の教示の様々な実施形態の説明を提供することを意図していることを理解されたい。本明細書に開示された広範かつ様々な実施形態では、例えば、ホイル、シートおよびフレークの形態の光学デバイスなどの物品、および、前記物品の製造方法が開示される。一例では、前記物品は、反射体と少なくとも1つの選択的光変調体層(SLML)とを備えるシートであり得る。
【0011】
いくつかの例では、物品10は光干渉を示すことができる。あるいは、いくつかの例では、物品10は光干渉を示すことができない。一態様では、物品10は干渉を利用して色を生成することができる。別の一態様では、物品10は干渉を利用して色を生成することができない。例えば、以下で更に詳細に説明するように、色の外観は、添加剤、選択的光変調体粒子(selective light modulator particle;SLMP)または選択的光変調体分子(selective light modulator molecule;SLMM)などの選択的光変調体システム(selective light modulator system;SLMS)をSLML中に含有させることで発現させることができる。
【0012】
一態様では、
図1に示すように、物品10は、物体または基板20上で使用可能なシートの形態とすることができる。別の一態様では、物品10は、ホイルまたはフレークの形態とすることができる。一態様では、光学デバイスはシートの部分を含むことができる。別の一態様では、物品10は、光学デバイスおよび液体媒体を含むことができる。別の一態様では、物品10は、例えば、厚さ100nm~100μm、大きさ100nm~1mmのフレークの形態の光学デバイスである。物品10は、カラーシフト着色剤とすることができたり、通貨のセキュリティ・フィーチャとして使用することができる。物品10の使用に共通する属性としては、高色度(すなわち強い色)、観察角度に対する色変化(ゴニオクロマティシティまたは虹彩としても知られている)、および、フロップ性(観察角度が変化するにつれて明度、色相または色度が変化する鏡面的・金属的な外観)などが挙げられる。さらに、物品10は金属的な色とすることができ、干渉を利用して色を生成することができない。
【0013】
図1および
図2は、第1の表面、第1の表面に対向する第2の表面、および、第3の面を有する反射体16と;反射体の第1の表面の外側にある第1の選択的光変調体層14と;反射体の第2の表面の外側にある第2の選択的光変調体層14’とを備え、反射体の第3の面(反射体16の左側面および/または右側面)は開放されているシートを図示する。
図1および
図2は、光学デバイスなどの物品10をシートの形態で示しているが、本開示の様々な例によれば、光学デバイスなどの物品10はフレークおよび/またはホイルの形態とすることもできる。
図1および
図2は、特定の順序で特定の層を示しているが、当業者は、物品10が任意の数の層を任意の順序で含むことができることを理解するであろう。さらに、任意の特定の層の組成は、他の任意の層の組成と同じでも異なっていてもよい。
【0014】
シート、フレークまたはホイルの形態の光学デバイスなどの物品10は、第1のSLML14、第2のSLML14’、第3のSLML14’’、第4のSLML14’’’などの少なくとも1つの誘電体層を備えることができる。2つ以上のSLML14,14’が光学デバイスに存在する場合、各SLMLは組成および物性に関して独立していてもよい。例えば、第1のSLML14は、第1の屈折率を有する組成を有することができるが、同じ光学デバイス内の第2のSLML14’は、異なる屈折率を有する異なる組成を有することができる。別の例として、第1のSLML14は、第1の厚さで組成を有することができるが、第2のSLML14’は、第1の厚さとは異なる第2の厚さで同じ組成を有することができる。追加的または代替的に、フレーク、シートまたはホイルの形態の物品10は、SLML14および/またはSLML14’の表面上にハードコート、すなわち保護層を備えることもできる。いくつかの例では、これらの層(ハードコート、すなわち保護層)は光学的品質を必要としない。
【0015】
図1および
図2に示すように、反射体16の少なくとも2つの表面/側面、例えば、図示するような右側および左側の面/側面をSLML14,14’フリーとすることができる。一態様では、物品10がフレークまたはホイルの形態である場合、反射体16は、
図1および
図2に例示された4つを超える表面を含むことができる。これらの場合では、例えば、反射体16の1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの表面をSLML14フリーとすることができる。いくつかの例では、反射体16の1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの表面、よって、物品10を空気に開放することができる。一例では、開放側面、すなわち外側のSLMLを含まない反射体表面はフロップ性に対する利点となり得る。
【0016】
反射体16は、広帯域反射体、例えば、スペクトルおよびランバート反射体(例えば、白色TiO2)とすることができる。反射体16は、金属、非金属、または金属合金とすることができる。一例では、少なくとも1つの反射体16の材料は、所望のスペクトル範囲内で反射特性を有する任意の材料を含むことができる。例えば、所望のスペクトル範囲において5%~100%の範囲の反射率を有する任意の材料を含むことができる。反射性材料の例は、良好な反射特性を有し、安価であり、薄い層として形成または堆積することが容易なアルミニウムであり得る。アルミニウムの代わりに他の反射材料を使用することもできる。例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、ニオブ、クロム、スズ、および、これらの金属もしくは他の金属の組合せまたは合金を反射材料として使用することができる。一態様では、少なくとも1つの反射体16の材料は、白色または淡色の金属とすることができる。他の例では、反射体16は、遷移金属、ランタニド金属およびそれらの組み合わせ、ならびに、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、それらの組み合わせ、または、金属とこれらの材料の1つ以上との混合物を含むことができるが、これらに限定されない。
【0017】
少なくとも1つの反射体16の厚さは、約5nm~約5000nmとすることができるが、この範囲は限定的に解釈すべきではない。例えば、反射体16が最大透過率0.8を提供するように、より低い厚さ限定を選択することができる。追加的にまたは代替的に、アルミニウムを含む反射体16の場合、光学密度(OD)は波長約550nmにおいて約0.1~約4とすることができる。
【0018】
十分な光学密度を得るためにかつ/または所望の効果を達成するために、反射体16の組成に応じて、より高いかまたはより低い最小厚さが必要とされ得る。いくつかの例において、上限は、約5000nm、約4000nm、約3000nm、約1500nm、約200nm、および/または、約100nmとすることができる。一態様では、少なくとも1つの反射体16の厚さは、約10nm~約5000nmの範囲、例えば約15nm~約4000nm、約20nm~約3000nm、約25nm~約2000nm、約30nm~約1000nm、約40nm~約750nm、または、約50nm~約500nm、例えば、約60nm~約250nmもしくは約70nm~約200nmの範囲とすることができる。
【0019】
図1および
図2のシートなどの形態である物品10は、第1の選択的光変調体層(SLML)14および第2の選択的光変調体層14’を備えることができる。SLMLは、約0.2μm~約20μmの範囲の波長を有する電磁放射のスペクトルの様々な選択領域において光強度を変調(吸収および/または放出)することを目的とする複数の光学機能を備える物理層である。
【0020】
SLML14,14’(および/またはSLML14,14’内の材料)は、光を選択的に変調することができる。例えば、SLMLは特定の波長における透過量を制御することができる。いくつかの例では、SLMLは、特定の波長(例えば、可視領域および/または非可視領域)のエネルギーを選択的に吸収することができる。例えば、SLML14,14’は、「着色層」および/または「波長選択性吸収層」とすることができる。いくつかの例では、吸収された特定の波長は、フレーク形態などの物品10に特定の色を発現させることができる。例えば、SLML14,14’は人間の目には赤色に見え得る(例えば、SLMLは約620nm以下の光の波長を吸収し、したがって赤色に見えるエネルギーの波長を反射または透過することができる)。これは、着色剤(例えば、有機および/または無機顔料および/または染料)であるSLMPを、ホスト材料、例えば誘電材料など(ポリマーを含むがこれに限定されない)に添加することによって達成することができる。例えば、いくつかの例では、SLMLは着色プラスチックとすることができる。
【0021】
いくつかの例では、吸収される特定の波長の一部または全部を可視範囲内にすることができる(例えば、SLMLは可視領域全体にわたって吸収するが、赤外領域は通過し得る)。フレーク形態などの得られた物品10は黒く見えるが、赤外領域の光を反射する。上述のいくつかの例では、物品10および/またはSLML14,14’の吸収波長(および/または特定の可視色)は、少なくとも部分的にSLML14,14’の厚さに依存し得る。追加的または代替的に、SLML14,14’によって吸収されるエネルギーの波長(および/またはこれらの層および/またはフレークに現れる色)は、SLMLに添加するものに部分的に依存し得る。特定の波長のエネルギーを吸収することに加えて、SLML14,14’は、劣化に対して反射体16を補強すること;基板からの剥離を可能にすること;サイジングを可能にすること;反射体16に使用されるアルミニウムまたは他の金属および材料の酸化などの、環境劣化に対する若干の耐性を提供すること;および、SLML14,14’の組成および厚さに基づく、高い光の透過性能、反射性能および吸収性能、のうちの少なくとも1つを達成することができる。
【0022】
いくつかの例では、特定波長のエネルギーおよび/または可視光の波長を選択的に吸収するSLML14,14’に加えて、またはこれに代えて、シート形態などの物品10のSLML14,14’は、屈折率を制御することができるか、かつ/または、屈折率を制御することができるSLMPを含むことができる。SLML14,14’の屈折率を制御することができるSLMPは、吸収制御SLMP(例えば、着色剤)に加えて、またはこれに代えて、ホスト材料に含有させることができる。いくつかの例では、SLML14,14’中、ホスト材料に吸収制御SLMPおよび屈折率制御SLMPの両方を組み合わせることができる。いくつかの例では、同じSLMPが吸収および屈折率の両方を制御することができる。
【0023】
SLML14,14’の性能は、SLML14,14’に存在する材料の選択に基づいて決定することができる。一態様では、SLML14,14’は、物品10内の任意の他の層(例えば、反射体16)のフレークハンドリング性、腐食、位置合わせ、および、環境性能のうちの少なくとも1つの性質を改善することができる。
【0024】
第1および第2のSLML14,14’は、それぞれ独立して、ホスト材料のみを、または選択的光変調体システム(SLMS)と組み合わされたホスト材料を含むことができる。一態様では、第1のSLML14および第2のSLML14’のうちの少なくとも1つがホスト材料を含む。別の一態様では、第1のSLML14および第2のSLML14’のうちの少なくとも1つがホスト材料およびSLMSを含む。SLMSは、選択的光変調体分子(SLMM)、選択的光変調体粒子(SLMP)、添加剤、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0025】
SLML14,14’の組成物は、約0.01%~約100%、例えば約0.05%~約80%、また更なる例として約1%~約30%の範囲の固形分を有することができる。いくつかの態様では、固形分は3%よりも大きくすることができる。いくつかの態様では、SLML14,14’の組成物は、約3%~約100%、例えば約4%~50%の範囲の固形分を有することができる。
【0026】
第1および/または第2のSLML14,14’の各々のホスト材料は、独立して、コーティング液として塗布され、かつ、光学的・構造的な機能を果たすフィルム形成材料とすることができる。ホスト材料は、追加の光変調特性を物品10に付与するために選択的光変調体システム(SLMS)などのゲストシステムを必要に応じて導入するためのホスト(マトリックス)として使用することができる。
【0027】
ホスト材料は誘電材料とすることができる。追加的または代替的に、ホスト材料は、有機ポリマー、無機ポリマー、および、複合材料のうちの少なくとも1つとすることができる。有機ポリマーの非限定的な例には、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アクリル、アクリレート、ポリビニルエステル、ポリエーテル、ポリチオール、シリコーン、フルオロカーボン、および、それらの種々のコポリマーなどの熱可塑性プラスチック;エポキシ、ポリウレタン、アクリレート、メラミンホルムアルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒドなどの熱硬化性樹脂;および、アクリレート、エポキシ、ビニル、ビニルエステル、スチレン、シランなどのエネルギー硬化性材料が含まれる。無機ポリマーの非限定的な例には、シラン、シロキサン、チタン酸塩、ジルコン酸塩、アルミン酸塩、ケイ酸塩、ホスファザン、ポリボラジレン、ポリチアジルが含まれる。
【0028】
第1および第2のSLML14,14’は、それぞれ、約0.001重量%~約100重量%のホスト材料を含むことができる。一態様では、ホスト材料は、SLMLの約0.01重量%~約95重量%、例えば約0.1重量%~約90重量%、また更なる例として、約1重量%~約87重量%の範囲の量でSLML中に存在することができる。
【0029】
SLMSは、ホスト材料と共にSLML14,14’で使用するために、選択的光変調体粒子(SLMP)、選択的光変調体分子(SLMM)、添加剤、または、それらの組み合わせをそれぞれ独立して含むことができる。SLMSは他の材料を含むこともできる。SLMSは、選択領域または対象の全スペクトル範囲(0.2μm~20μm)において電磁放射の振幅を(吸収、反射、蛍光などにより)変調することができる。
【0030】
第1および第2のSLML14,14’は、それぞれ独立してSLMS中にSLMPを含むことができる。SLMPは、ホスト材料と組み合わされて光変調を選択的に制御する任意の粒子とすることができ、限定されないが、カラーシフト粒子、染料、着色剤が含まれ、着色剤は染料、顔料、反射顔料、カラーシフト顔料、量子ドット、および、選択的反射体の1つ以上を含む。SLMPの非限定的な例としては、有機顔料、無機顔料、量子ドット、ナノ粒子(選択的に反射および/または吸収するもの)、ミセルなどが挙げられる。ナノ粒子は、高屈折率(波長約550nmにおいてn>1.6)の有機材料および金属有機材料;TiO2、ZrO2、In2O3、In2O3-SnO、SnO2、FexOy(xおよびyはそれぞれ独立して0より大きい整数)、WO3などの金属酸化物;ZnS、CuxSy(xおよびyはそれぞれ独立して0より大きい整数である)などの金属硫化物;カルコゲニド、量子ドット、金属ナノ粒子;カーボネート;フッ化物;および、それらの混合物を含むことができるが、これらに限定されない。
【0031】
SLMMの例には、有機染料、無機染料、ミセル、および、発色団を含む他の分子系が含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
いくつかの態様では、第1および第2のSLML14,14’それぞれのSLMSは、硬化剤、および、コーティング助剤などの少なくとも1つの添加剤を含むことができる。
【0033】
硬化剤は、ホスト材料の硬化、ガラス化、架橋または重合を開始することができる化合物または材料とすることができる。硬化剤の非限定的な例としては、溶媒、ラジカル発生剤(エネルギーまたは化学物質による)、酸発生剤(エネルギーまたは化学物質による)、縮合開始剤、および、酸/塩基触媒が挙げられる。
【0034】
コーティング助剤の非限定的な例としては、レベリング剤、湿潤剤、消泡剤、接着促進剤、酸化防止剤、UV安定剤、硬化阻害緩和剤、防汚剤、腐食防止剤、光増感剤、二次架橋剤、および、赤外線乾燥の強化のための赤外線吸収剤が挙げられる。一態様では、酸化防止剤は、SLML14,14’の組成物中に約25ppm~約5重量%の範囲の量で存在することができる。
【0035】
第1および第2のSLML14,14’は、それぞれ独立して、溶媒を含むことができる。溶媒の非限定的な例には、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル;アセトン;水;ジメチルケトン(DMK)、メチルエチルケトン(MEK)、sec-ブチルメチルケトン(SBMK)、tert-ブチルメチルケトン(TBMK)、シクロペンタノン、アニソールなどのケトン;プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのグリコールおよびグリコール誘導体;イソプロピルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール;マロン酸エステルなどのエステル;n-メチルピロリドンなどの複素環式溶媒;トルエン、キシレンなどの炭化水素;グリコールエーテルなどの凝集溶媒;および、それらの混合物が挙げられる。一態様では、溶媒は、第1および第2のSLML14,14’のそれぞれにおいて、SLML14,14’の総重量に対して、約0重量%~約99.9重量%、例えば約0.005重量%~約99重量%、また更なる例として約0.05重量%~約90重量%の範囲の量で存在することができる。
【0036】
いくつかの例では、第1および第2のSLML14,14’は、それぞれ、(i)光開始剤、(ii)酸素阻害緩和組成物、(iii)レベリング剤、および(iv)消泡剤のうちの少なくとも1つを有する組成物を含むことができる。
【0037】
酸素阻害緩和組成物は、フリーラジカル物質の酸素阻害を緩和するために使用することができる。分子状酸素は、光開始剤/増感剤の三重項状態を消滅させたり、フリーラジカルを捕捉することができるため、コーティング特性の低減および/または未硬化液体表面が生じる。酸素阻害緩和組成物は、酸素阻害を低減させ、SLML14,14’のいずれの硬化を改善することができる。
【0038】
酸素阻害組成物は、2つ以上の化合物を含むことができる。酸素阻害緩和組成物は、少なくとも1つのアクリレート、例えば少なくとも1つのアクリレートモノマーおよび少なくとも1つのアクリレートオリゴマーを含むことができる。一態様では、酸素阻害緩和組成物は、少なくとも1つのアクリレートモノマーおよび2つのアクリレートオリゴマーを含むことができる。酸素阻害緩和組成物に使用するためのアクリレートの非限定的な例としては、アクリレート;メタクリレート;変性エポキシアクリレートなどのエポキシアクリレート;酸官能性ポリエステルアクリレート、4官能性ポリエステルアクリレート、変性ポリエステルアクリレート、および、生物由来ポリエステルアクリレートなどのポリエステルアクリレート;アミン官能性アクリレート共開始剤および第3級アミン共開始剤を含む、アミン変性ポリエーテルアクリレートなどのポリエーテルアクリレート;芳香族ウレタンアクリレート、変性脂肪族ウレタンアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、脂肪族アロファネート系ウレタンアクリレートなどのウレタンアクリレート;および、それらのモノマーおよびオリゴマーが挙げられる。一態様では、酸素阻害緩和組成物は、少なくとも1つのアクリレートオリゴマー、例えば2つのオリゴマーを含むことができる。少なくとも1つのアクリレートオリゴマーは、メルカプト変性ポリエステルアクリレートおよびアミン変性ポリエーテルテトラアクリレートなどの、ポリエステルアクリレートおよびポリエーテルアクリレートから選択することができる。酸素阻害緩和組成物はまた、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどの少なくとも1つのモノマーを含むことができる。酸素阻害緩和組成物は、第1および/または第2のSLML14,14’中、SLML14,14’の総重量に対して、約5重量%~約95重量%、例えば約10重量%~約90重量%、また更なる例として約15重量%~約85重量%の量で存在することができる。
【0039】
いくつかの例では、SLML14,14’のホスト材料は、カチオン系などの非ラジカル硬化系を使用することができる。カチオン系は、フリーラジカルプロセスの酸素阻害の緩和の影響を受けにくいため、酸素阻害緩和組成物を必要としなくてよい。一例では、モノマーである3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタンの使用は酸素緩和組成物を必要としない。
【0040】
一態様では、第1および第2のSLML14,14’は、それぞれ独立して、少なくとも1つの光開始剤を含むことができ、例えば、2つまたは3つの光開始剤を含むことができる。光開始剤は、短波長用に使用することができる。光開始剤は、化学線波長に対して活性であり得る。光開始剤は、タイプI光開始剤またはタイプII光開始剤とすることができる。SLML14,14’は、タイプI光開始剤のみを、タイプII光開始剤のみを、または、タイプI光開始剤およびタイプII光開始剤の両方の組み合わせを含むことができる。光開始剤は、SLML14,14’の組成物の総重量に対して、約0.25重量%~約15重量%、例えば約0.5重量%~約10重量%、また更なる例として約1重量%~約5重量%の範囲の量で、SLML14,14’の組成物中に存在することができる。
【0041】
光開始剤はホスフィンオキシドとすることができる。ホスフィンオキシドは、モノアシルホスフィンオキシドおよびビスアシルホスフィンオキシドを含むことができるが、これらに限定されない。モノアシルホスフィンオキシドは、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドとすることができる。ビスアシルホスフィンオキシドは、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドとすることができる。一態様では、少なくとも1つのホスフィンオキシドがSLML14,14’の組成物中に存在することができる。例えば、2つのホスフィンオキシドがSLML14,14’の組成物中に存在することができる。
【0042】
増感剤がSLML14,14’の組成物中に存在することができ、タイプI光開始剤および/またはタイプII光開始剤の増感剤として作用することができる。増感剤はタイプII光開始剤としても作用することができる。一態様では、増感剤は、SLML14,14’の組成物の総重量に対して、約0.05重量%~約10重量%、例えば約0.1重量%~約7重量%、また更なる例として約1重量%~約5重量%の量で、SLML14,14’の組成物中に存在できる。増感剤は、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどのチオキサントンとすることができる。
【0043】
一態様では、SLML14,14’はレベリング剤を含むことができる。レベリング剤はポリアクリレートとすることができる。レベリング剤は、SLML14,14’組成物のクレーター化を排除することができる。レベリング剤は、SLML14,14’の組成物の総重量に対して、約0.05重量%~約10重量%の範囲、例えば約1重量%~約7重量%、また更なる例では約2重量%~約5重量%の範囲の量で、SLML14,14’の組成物中に存在することができる。
【0044】
SLML14,14’は消泡剤を含むこともできる。消泡剤は表面張力を低下させることができる。消泡剤はシリコーンを含まない液状有機ポリマーとすることができる。消泡剤は、SLML14,14’の組成物の総重量に対して、約0.05重量%~約5重量%、例えば約0.2重量%~約4重量%、また更なる例として約0.4重量%~約3重量%の範囲の量で、SLML14,14’の組成物中に存在することができるである。
【0045】
第1および第2のSLML14,14’は、それぞれ独立して、約1.5より大きいかまたは小さい屈折率を有することができる。例えば、各SLML14,14’は、約1.5の屈折率を有することができる。各SLML14,14’の屈折率は、必要とされるカラートラベル度が得られるように選択することができる。カラートラベルは、L*a*b*色空間において測定される色相角の観察角度による変化として定義することができる。いくつかの例では、各SLML14,14’は、約1.1~約3.0、約1.0~約1.3、または、約1.1~約1.2の範囲の屈折率を有することができる。いくつかの例では、各SLML14,14’の屈折率は、約1.5未満、約1.3未満、または、約1.2未満とすることができる。いくつかの例では、SLML14および14’は、実質的に等しい屈折率、または、互いに異なる屈折率を有することができる。
【0046】
第1及び第2のSLML14,14’は、それぞれ独立して、約1nm~約10000nm、約10nm~約1000nm、約20nm~約500nm、約1nm~約100nm、約10nm~約1000nm、約1nm~約5000nmの厚さを有することができる。一態様では、光学デバイスなどの物品10は、1:1~1:50のアスペクト比(厚さ:幅)を有することができる。
【0047】
しかしながら、本明細書に記載の物品10の利点の1つは、いくつかの例では、光学的効果が、厚さの変動に対して比較的非感受的であると思われることである。したがって、いくつかの態様では、各SLML14,14’は、独立して、約5%未満の光学厚さ変動を有し得る。一態様では、各SLML14,14’は、独立して、層全体で約3%未満の光学厚さ変動を有し得る。一態様では、各SLML14,14’は、独立して、厚さ約50nmの層全体で約1%未満の光学厚さ変動を有し得る。
【0048】
一態様では、フレーク、ホイルまたはシートの形態の光学デバイスなどの物品10は、
図2に示すように、基板20および剥離層22を備えることもできる。一態様では、剥離層22は、基板20と第1のSLML14との間に配置することができる。
【0049】
本明細書で説明される光学デバイスなどの物品10は、任意の手法で製造することができる。例えば、シート(例えば、
図1および
図2の物品10)を製造し、次いで、分離、破壊、粉砕等して、光学デバイスを形成するより小さな断片にすることができる。いくつかの例では、シート(例えば、
図1および
図2の物品10)は、下記および/または
図3を参照して説明するプロセスなどの液体コーティングプロセスによって製造することができるが、これらのプロセスに限定されない。
【0050】
本明細書に記載するように、シート、フレークまたはホイル形態などの物品10の製造方法が開示される。本方法は、基板上に第1のSLMLを堆積させるステップと;第1のSLML上に少なくとも1つの反射体を堆積させるステップと;少なくとも1つの反射体上に第2のSLMLを堆積させるステップとを含むことができ、第1のSLMLおよび第2のSLMLの少なくとも1つは、液体コーティングプロセスを使用して堆積される。
【0051】
図1及び
図2に示す態様に関して、第1のSLML14を基板20上に堆積させることによって、フレーク、シートまたはホイルの形態の光学デバイスなどの物品10を製造することができる。基板20は、剥離層22を備えることができる。一態様では、
図2に示すように、本方法は、剥離層22を有する基板20上に第1のSLML14を堆積させるステップと、第1のSLML14上に少なくとも1つの反射体16を堆積させるステップとを含むことができる。本方法は更に、少なくとも1つの反射体16上に第2のSLML14’を堆積させるステップを含む。いくつかの例では、少なくとも1つの反射体16は、物理蒸着法、化学蒸着法、薄膜堆積法、原子層堆積法などの任意の既知の従来の堆積プロセスによって各層に付与することができ、これは、プラズマ増強したものや流動床などの改良技術を含む。
【0052】
基板20は可撓性材料で作製することができる。基板20は、堆積された層を受容できる任意の適切な材料とすることができる。適切な基板材料の非限定的な例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマーウェブ、ガラスホイル、ガラスシート、ポリマーホイル、ポリマーシート、金属ホイル、金属シート、セラミックホイル、セラミックシート、イオン性液体、紙、シリコンウェーハなどが挙げられる。基板20の厚さは変動し得るが、例えば、約2μm~約100μm、また更なる例として約10μm~約
50μmの範囲とすることができる。
【0053】
第1のSLML14は、スロットダイプロセスなどの液体コーティングプロセスによって基板20上に堆積させることができる。第1のSLML14を堆積および硬化させたら、上述の任意の従来の堆積プロセスを使用して、第1のSLML14上に少なくとも1つの反射体16を堆積させることができる。少なくとも1つの反射体16を第1のSLML14上に堆積させた後、スロットダイ装置などの液体コーティング装置を介して、少なくとも1つの反射体16上に第2のSLML14’を堆積させることができる。液体コーティングプロセスには、スロットビードコーティング、スライドビードコーティング、スロットカーテンコーティング、スライドカーテンコーティング、単層・多層コーティング、引張りウェブスロットコーティング、グラビアコーティング、ロールコーティングなどの液体コーティングプロセスおよび印刷プロセスが含まれるが、これらに限定されない。これらのプロセスでは、液体を基板上に塗布して液体層またはフィルムを形成し、その後、乾燥および/または硬化して最終的なSLML層とする。
【0054】
次いで、例えば
図1に示されるように、物品10を製造するために、基板20を堆積層から剥離することができる。一態様では、基板20を冷却して剥離層22を脆化することができる。他の一態様では、例えば、加熱および/または光子もしくは電子ビームエネルギーによる硬化によって架橋度を高くして剥離層22を脆化することができ、これにより剥離が可能となる。次に、表面を鋭利に曲げたりブラッシングするなどして、堆積された層を機械的に剥がすことができる。剥離された層を既知の技術を用いて切断し、フレーク、ホイル、またはシートの形態の光学デバイスなどの物品10とすることができる。
【0055】
別の一態様では、堆積層を基板20から別の表面に移送することができる。堆積層は、打ち抜きまたは切断して、十分に規定された大きさおよび形状を有する大きなフレークを製造することができる。
【0056】
上述したとおり、第1および第2のSLML14,14’は、それぞれ、スロットダイプロセスなどの液体コーティングプロセスによって堆積させることができる。しかしながら、スロットダイプロセスなどの液体コーティングプロセスは、例えば約50nm~約700nmの光学厚さでは安定稼働できないと以前は考えられていた。特に、薄いウェットフィルムは、溶媒が蒸発するにつれて固体が毛細管力によって周囲の薄い領域から吸い取られてなる厚い領域の島部を一般的に形成する。この網状外観は光学コーティングに適合しない。厚さが変動すると広範囲の光路長(広範囲の色など)となる可能性があり、斑点/凹凸外観となることや、光学コーティングの色均一性が低下したり色度が低下するからである。
【0057】
本開示の一態様では、SLML14,14’は、スロットダイプロセスなどの液体コーティングプロセスを使用して形成することができる。一態様では、液体コーティングプロセスには、スロットビードコーティング、スライドビードコーティング、スロットカーテンコーティング、スライドカーテンコーティング、単層・多層コーティング、引張りウェブスロットコーティング、グラビアコーティング、ロールコーティングなどの液体コーティングプロセスおよび印刷プロセスが含まれるが、これらに限定されない。これらのプロセスでは、液体を基板上に塗布して液体層またはフィルムを形成し、その後、乾燥および/または硬化して最終的なSLML層とする。液体コーティングプロセスは、蒸着法などの他の堆積技術と比較して、より速い速度でSLML14,14’組成物の移送を可能とすることができる。
【0058】
さらに、液体コーティングプロセスによれば、シンプルな装置セットアップでより多様な材料をSLML14,14’に使用することができる。開示された液体コーティングプロセスを使用して形成されたSLML14,14’は、改善された光学性能を示すことができると考えられる。
【0059】
図3は、液体コーティングプロセスを使用したSLML14,14’の形成を示す。SLMLの組成物(液体コーティング組成物)はスロットダイ320に挿入され、次いで基板340上に堆積されて、ウェットフィルムが得られる。上述のプロセスを参照すると、基板340は、剥離層22を有するか有さない基板20を備えることができるか;基板340は、剥離層22を有するまたは有さない基板20、第1のSLML14、および、少なくとも1つの反射体16を備えることができるか;または、基板340は、基板20、剥離層22、および、堆積層の任意の組合せを備えることができる。スロットダイ320の底部から基板340までの距離は、スロットギャップGである。
図3からわかるように、液体コーティング組成物は、ドライフィルム厚Hよりも大きいウェットフィルム厚Dで堆積させることができる。SLML14,14’のウェットフィルムを基板340上に堆積させた後、SLML14,14’のウェットフィルム中に存在する全ての溶媒を蒸発させることができる。液体コーティングプロセスは、SLML14,14’のウェットフィルムの硬化が続き、正しい光学厚さH(約30nm~約700nmの範囲)を有する硬化された自己平坦化SLML14,14’が得られる。SLML14,14’の自己平坦化能により、層全体で光学厚さの変動が低減した層が得られると考えられる。最終的に、自己平坦化されたSLML14,14’を備える、光学装置などの物品10は、向上した光学精度を示すことができる。理解を容易にするために、「ウェットフィルム」および「ドライフィルム」という用語は、SLML14,14’を生じる液体コーティングプロセスの様々な段階での組成物を指すために使用される。
【0060】
液体コーティングプロセスは、所定の厚さDを有するウェットフィルムを達成するために、コーティング速度およびスロットギャップGの少なくとも1つを調整するステップを含むことができる。SLML14,14’は、約0.1μm~約500μm、例えば約0
.1μm~約5μmの範囲のウェットフィルム厚Dで堆積できる。開示された範囲内のウェットフィルム厚Dで形成されたSLML14,14’は、誘電層など、安定した(すなわち、畝織り模様やスジなどの破損や欠陥がない)SLML層をもたらすことができる。一態様では、ウェットフィルムは、最大約100m/分のコーティング速度のスロットダイビードモードを使用して安定したウェットフィルムを得る場合、約10μmの厚さを有することができる。別の一態様では、ウェットフィルムは、最大約1200m/分のコーティング速度のスロットダイカーテンモードを使用して安定したウェットフィルムを得る場合、約6μm~7μmの厚さを有することができる。
【0061】
液体コーティングプロセスでは、約0.1~約1000m/分の速度において、ウェットフィルム厚Dに対するスロットギャップGの比を約1~約100とすることができる。一態様では、当該比は約100m/分のコーティング速度において約9である。一態様では、当該比は約50m/分のコーティング速度において約20とすることができる。液体コーティングプロセスでは、スロットギャップGを約0μm~約1000μmの範囲とすることができる。スロットギャップGを小さくすると、ウェットフィルムの厚さを低減することができる。スロットビードモードでは、10μmよりも大きいウェットフィルム厚さでより速いコーティング速度を達成することができる。
【0062】
液体コーティングプロセスでは、コーティング速度を約0.1~約1000m/分、例えば約25m/分~約950m/分、例えば約100m/分~約900m/分、また更なる例として約200m/分~約850m/分とすることができる。一態様では、コーティング速度は約150m/分よりも速く、更なる例では約500m/分よりも速い。
【0063】
一態様では、ビードモード液体コーティングプロセスのコーティング速度は、約0.1m/分~約600m/分、例えば約50~約150m/分の範囲とすることができる。別の一態様では、カーテンモード液体コーティングプロセスのコーティング速度は、約200m/分~約1500m/分の範囲、例えば、約300m/分~約1200m/分とすることができる。
【0064】
図3に示すように、例えばウェットフィルムの硬化前に、ウェットフィルムから溶媒を蒸発させることができる。一態様では、SLML14,14’の硬化前に、溶媒の約100%、例えば約99.9%を、また更なる例としては約99.8%を、SLML14,14’の組成物から蒸発させることができる。更なる一態様では、微量の溶媒が硬化/乾燥SLML14,14’中に存在することができる。一態様では、溶媒がより多く残存したウェットフィルムは、フィルム厚Hが低減したドライフィルムをもたらすことができる。特に、高い重量パーセントの溶媒を有し、かつ、大きいウェットフィルム厚Dで堆積されたウェットフィルムからは、ドライフィルム厚Hが小さいSLML14,14’が得られる。なお、溶媒蒸発後は、ウェットフィルムは液体のままであり、そのため、皮張り(スキニング)や、液体コーティングプロセスにおけるその後の硬化ステップ中の島形成などの問題が回避される。
【0065】
ウェットフィルムの動的粘度は、約0.5~約50cP、例えば約1~約45cPの範囲、また更なる例として約2~約40cPの範囲とすることができる。粘度測定温度は25℃であり、レオロジーは、0.025mmのギャップ設定で角度0.3°の直径40mmのコーン/プレートを使用した、溶媒トラップを備えたAnton Paar MCR101レオメーターで測定した。
【0066】
一態様では、SLML14,14’の組成および溶媒は、液体コーティングプロセスを使用してSLMLを精密コーティングするために、ウェットフィルムがニュートン挙動を示すように選択することができる。ウェットフィルムは、最大10,000s-1以上のニュートン挙動せん断速度を示すことができる。一態様では、液体コーティングプロセスのせん断速度は、最大25m/分のコーティング速度では1000s-1、例えば、最大100m/分のコーティング速度では3900s-1、また更なる例として最大200m/分のコーティング速度では7900s-1とすることができる。厚さ1μmなど、非常に薄いウェットフィルム上で最大せん断速度が生じ得ることが理解されるであろう。
【0067】
ウェットフィルムの厚さが増加するにつれて、せん断速度は減少すると予想され、例えば10μmのウェットフィルムでは15%減少、また更なる例として20μmのウェットフィルムでは30%減少すると予想される。
【0068】
ウェットフィルムからの溶媒の蒸発は、擬塑性挙動への粘度挙動の変化を引き起こすことができ、これは、精密SLMLを得るのに有益であり得る。溶媒蒸発後の堆積された第1および第2のSLML14,14’の動的粘度は、約10cP~約3000cP、例えば約20cP~約2500cP、また更なる例として約30cP~約2000cPの範囲とすることができる。溶媒が存在する場合、ウェットフィルムから蒸発させると、擬塑性挙動まで粘度が増加し得る。擬塑性挙動はウェットフィルムの自己平坦化を可能にすることができる。
【0069】
一態様では、上記方法は、既知の技術を用いてウェットフィルム中に存在する溶媒を蒸発させるステップを含むことができる。溶媒の蒸発に要する時間は、ウェブ/基板の速度および乾燥機の能力に依存し得る。一態様では、乾燥機(図示せず)の温度は、約120℃未満、例えば約100℃未満、また更なる例として約80℃未満とすることができる。
【0070】
液体コーティングプロセスを用いて堆積されたウェットフィルムは、既知の技術を用いて硬化させることができる。一態様では、ウェットフィルムは、紫外線、可視光線、赤外線、および、電子ビームのうちの少なくとも1つを利用する硬化剤を使用して硬化させることができる。硬化は、不活性または周囲雰囲気中で進行することができる。一態様では、硬化ステップは、波長約395nmの紫外線光源を利用する。紫外線光源は、約200mJ/cm2~約1000mJ/cm2、例えば約250mJ/cm2~約900mJ/cm2、また更なる例としてmJ/cm2~約850mJ/cm2の範囲の線量でウェットフィルムに適用することができる。
【0071】
ウェットフィルムは公知の技術によって架橋することができる。非限定的な例としては、フリーラジカル重合、分光増感光誘起フリーラジカル重合、光誘起カチオン重合、分光増感光誘起カチオン重合、光誘起付加環化などの光誘起重合;電子ビーム誘起フリーラジカル重合、電子ビーム誘起カチオン重合、電子ビーム誘起付加環化などの電子ビーム誘起重合;および、熱誘起カチオン重合などの熱誘起重合が挙げられる。
【0072】
液体コーティングプロセスを使用して形成されたSLML14,14’は改善された光学性能を示すことができる。すなわち、SLML14,14’は精密SLMLであり得る。いくつかの例では、精密SLML14,14’は、層全体で約3%未満、約5%未満、または、約7%未満の光学厚さ変動を有するSLMLを意味すると理解することができる。
【0073】
一態様では、液体コーティングプロセスは、約5~約100m/分の速度および約50μm~約100μmのコーティングギャップの少なくとも1つを調整して、所定の厚さ約500nm~約1500nmである選択的光変調体層の約2μm~10μmのウェットフィルムを堆積させるステップを含むことができる。さらなる一態様において、当該プロセスでは、30m/分の速度、75μmのギャップ、10μmのウェットフィルム、ドライフィルム厚さ1.25μmとすることができる。
【0074】
一例では、SLMLは、SLMMとして溶剤染料を使用する脂環式エポキシ樹脂ホストを含み、反射体はアルミニウムを含む。
【0075】
一例では、SLMLは、SLMPとしてジケトピロロピロール不溶性赤色染料を使用する脂環式エポキシ樹脂ホストを含み、反射体はアルミニウムを含む。
【0076】
一例では、SLMLは、SLMPとして白色顔料(チタニア)を使用するアクリレートオリゴマー樹脂ホストを含む。
【0077】
一例では、SLMLは、SLMLとして黒色の赤外線(IR)透過顔料を使用するアクリレートオリゴマー樹脂ホストを含み、反射体はアルミニウムを含む。
【0078】
第1の表面、前記第1の表面に対向する第2の表面、および、第3の表面を有する反射体と;前記反射体の前記第1の面の外側にある第1の選択的光変調体層と;前記反射体の前記第2の面の外側にある第2の選択的光変調体層とを備え、前記反射体の前記第3の面は開放されている、シート。
【0079】
前記第1の選択的光変調体層および前記第2の選択的光変調体層のうちの少なくとも1つは、選択的に特定波長のエネルギーを吸収する、請求項1に記載のシート。前記第1の選択的光変調体層および前記第2の選択的光変調体層のうちの少なくとも1つは、シートの屈折率を制御する、請求項1に記載のシート。前記第1の選択的光変調体層および前記第2の選択的光変調体層のうちの少なくとも1つは、ホスト材料を含む、請求項1に記載のシート。前記第1の選択的光変調体層および前記第2の選択的光変調体層のうちの少なくとも1つは、ホスト材料および選択的光変調体システムを含む、請求項1に記載のシート。前記ホスト材料は、有機ポリマー、無機ポリマー、および、複合材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載のシート。前記有機材料は、熱可塑性プラスチック、熱硬化性樹脂、および、エネルギー硬化性材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載のシート。前記選択的光変調体システムは、選択的光変調体粒子、選択的光変調体分子、および、添加剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載のシート。前記選択的光変調体粒子は、有機顔料、無機顔料、量子ドット、ナノ粒子、および、ミセルのうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載のシート。前記選択的光変調体分子は、有機染料、無機染料、および、ミセルのうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載のシート。
【0080】
請求項1に記載のシートの部分を含む光学デバイス。請求項18に記載の光学デバイスと液体媒体とを含む物品。前記光学デバイスがフレークである、請求項18に記載の光学デバイス。前記フレークが100nm~100μmの厚さで100nm~1mmの大きさである、請求項20に記載の光学デバイス。アスペクト比が1:1~1:50(厚さ:幅)である、請求項18に記載の光学デバイス。
【0081】
前述の説明から、当業者は、本教示が様々な形態で実施できることを理解することができる。したがって、これらの教示は、特定の実施形態およびその実施例に関連して説明したが、本教示の真の範囲はそれに限定されるべきではない。本明細書の教示の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができる。
【0082】
この範囲の開示は、広く解釈されるべきである。本開示は、本明細書で開示されるデバイス、活動および機械的動作を達成するための均等物、手段、システムおよび方法を開示することを意図する。開示された各デバイス、物品、方法、手段、機械的要素または機構について、本開示はまた、その開示および教示において、本明細書に開示される多くの態様、機構およびデバイスを実施する均等物、手段、システムおよび方法を教示することが意図される。さらに、本開示は、コーティングおよびその多くの態様、特徴および要素に関する。このようなデバイスは、その使用および動作において動的であり得るが、本開示は、当該デバイスおよび/または光学デバイスならびにその多くの態様の均等物、手段、システムおよびその使用方法、ならびに、本明細書に開示した説明および作用・機能の精神と一致する多くのその態様を包含する。本出願の特許請求の範囲も同様に広義に解釈されるべきである。本発明の多くの実施形態の説明は、事実上単なる例示であり、したがって、本発明の要旨を逸脱しない変形形態は、本発明の範囲内にあることが意図される。そのような変形は、本発明の精神および範囲からの逸脱と見なすべきではない。