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特許7021153腫瘍成長および転移を阻害するための免疫調節療法との組み合わせでのセマフォリン-4D阻害分子の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-07
(45)【発行日】2022-02-16
(54)【発明の名称】腫瘍成長および転移を阻害するための免疫調節療法との組み合わせでのセマフォリン-4D阻害分子の使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20220208BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20220208BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20220208BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20220208BHJP
【FI】
C12Q1/06 ZNA
C07K16/28
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P43/00 107
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019129005
(22)【出願日】2019-07-11
(62)【分割の表示】P 2016523819の分割
【原出願日】2014-06-20
(65)【公開番号】P2019213530
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2019-08-09
(31)【優先権主張番号】61/839,170
(32)【優先日】2013-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/874,241
(32)【優先日】2013-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/884,771
(32)【優先日】2013-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/907,845
(32)【優先日】2013-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504455148
【氏名又は名称】バクシネックス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス エリザベス イー.
(72)【発明者】
【氏名】スミス アーネスト エス.
(72)【発明者】
【氏名】ザウダラー モーリス
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-525854(JP,A)
【文献】特表2012-526853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0285036(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0064035(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0181035(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0082663(US,A1)
【文献】国際公開第2008/100995(WO,A1)
【文献】"History of changes for study: NCT01313065.",[online], INTERNET,ClinicalTrials.gov archive,2013年06月19日,https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT01313065?V_9=View#StudyPageTop,[検索日:2020年07月27日]
【文献】WITHERDEN, D.A., et al.,"The CD100 receptor interacts with its plexin B2 ligand to regulate epidermal gamma delta T cell function.",IMMUNITY,2012年08月24日,Vol.37, No.2,pp.314-327(P.1-24)
【文献】Angiogenesis,2012年,Vol.15,p.391-407
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合し、かつSEMA4D媒介性プレキシン-B1シグナル伝達を阻害する単離された抗体またはその抗原結合断片と少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせを用いた処置のために、癌を有する対象を選択する方法:
(a) 癌を有する対象から得られた血液試料におけるB細胞および/またはT細胞の数を測定する段階、および
(b) 該血液試料における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の数が、固形腫瘍を有する他の癌患者における循環中のB細胞および/またはT細胞の平均数1.5倍またはそれより多い場合、または、健康な非癌患者における循環中のB細胞および/またはT細胞の数の範囲内に入るか、またはそれを上回る場合、処置のために該対象を選択する段階。
【請求項2】
以下を含む、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合し、かつSEMA4D媒介性プレキシン-B1シグナル伝達を阻害する単離された抗体またはその抗原結合断片と少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせを用いて、癌を有する対象を処置することの結果を予測する方法:
(a) 処置の前に、癌を有する対象から得られた血液試料におけるB細胞および/またはT細胞の数を測定する段階、および
(b) 該血液試料における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の数が、固形腫瘍を有する他の癌患者における循環中のB細胞および/またはT細胞の平均数1.5倍またはそれより多い場合、または、健康な非癌患者における循環中のB細胞および/またはT細胞の数の範囲内に入るか、またはそれを上回る場合、処置に対する応答を予測する段階。
【請求項3】
該血液試料における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の数が、固形腫瘍を有する他の癌患者における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の平均数1.5倍またはそれより多い場合に段階(b)が実施される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
該血液試料における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の数が、それぞれ147588またはそれより多い、およ11733910またはそれより多い範囲にわたる場合に段階(b)が実施される、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
該血液試料における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の数が、健康な非癌患者における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の数の範囲内に入るか、またはそれを上回る場合に段階(b)が実施される、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
該血液試料における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の数が、それぞれ225275またはそれより多い、およ13501650またはそれより多い範囲にわたる場合に段階(b)が実施される、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
以下を含む、癌を有する対象が、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合し、かつSEMA4D媒介性プレキシン-B1シグナル伝達を阻害する単離された抗体またはその抗原結合断片の有効量および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量による処置から恩恵を受けるかどうかを示す方法:
(a) 癌を有する対象から得られた血液試料におけるB細胞および/またはT細胞の数を測定する段階、および
(b) 該血液試料中の1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の該数と、固形腫瘍を有する他の癌患者における循環中のB細胞および/またはT細胞の平均数、または、健康な非癌患者における循環中のB細胞および/またはT細胞の数の範囲とを比較する段階であって、該血液試料中の1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の該数が、固形腫瘍を有する他の癌患者における循環中のB細胞および/またはT細胞の平均数1.5倍またはそれより多いこと、または、健康な非癌患者における循環中のB細胞および/またはT細胞の数の範囲内に入るか、またはそれを上回ることが、該対象がSEMA4Dに特異的に結合し、かつSEMA4D媒介性プレキシン-B1シグナル伝達を阻害する単離された抗体またはその抗原結合断片の有効量および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量による処置から恩恵を受けることを示す、段階。
【請求項8】
該血液試料中の1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の該数が、固形腫瘍を有する他の癌患者における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の平均数1.5倍またはそれより多いことが、該対象がSEMA4Dに特異的に結合し、かつSEMA4D媒介性プレキシン-B1シグナル伝達を阻害する単離された抗体またはその抗原結合断片の有効量および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量による処置から恩恵を受けることを示す、請求項7記載の方法。
【請求項9】
該血液試料中の1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の該数が、それぞれ147588またはそれより多い、およ11733910またはそれより多い範囲にわたることが、該対象がSEMA4Dに特異的に結合し、かつSEMA4D媒介性プレキシン-B1シグナル伝達を阻害する単離された抗体またはその抗原結合断片の有効量および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量による処置から恩恵を受けることを示す、請求項7記載の方法。
【請求項10】
該血液試料中の1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の該数が、健康な非癌患者における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の数の範囲内に入るか、またはそれを上回ることが、該対象がSEMA4Dに特異的に結合し、かつSEMA4D媒介性プレキシン-B1シグナル伝達を阻害する単離された抗体またはその抗原結合断片の有効量および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量による処置から恩恵を受けることを示す、請求項7記載の方法。
【請求項11】
該血液試料中の1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞の該数が、それぞれ225275またはそれより多い、およ13501650またはそれより多い範囲にわたることが、該対象がSEMA4Dに特異的に結合し、かつSEMA4D媒介性プレキシン-B1シグナル伝達を阻害する単離された抗体またはその抗原結合断片の有効量および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量による処置から恩恵を受けることを示す、請求項7記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの他の免疫調節療法が、養子T細胞療法、免疫チェックポイント遮断阻害剤、制御性T細胞(Treg)調節剤、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
養子T細胞療法が、切除された患者の腫瘍から回収された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、キメラ抗原受容体を形質導入されたT細胞、またはこれらの組み合わせを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
回収されたTILが、インビトロで拡大されたものである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
インビトロ拡大が、アロ反応性フィーダー細胞、インターロイキン-2(IL-2)、抗CD3抗体、またはこれらの組み合わせと共に、回収されたTILをインキュベーションすることを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
インビトロ拡大が細胞傷害性CD8+ T細胞を増加させる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
免疫チェックポイント遮断阻害剤が、抗プログラム細胞死1(PD-1)抗体、抗プログラム死リガンド1(PD-1)抗体、抗リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)抗体、抗B7-H3抗体、それらの抗原結合断片、またはこれらの組み合わせである、請求項12記載の方法。
【請求項18】
Treg調節剤が、シクロホスファミドを含む、請求項12記載の方法。
【請求項19】
T細胞が、CD8+ T細胞である、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
SEMA4Dに特異的に結合し、かつSEMA4D媒介性プレキシン-B1シグナル伝達を阻害する抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO: 6、7、および8をそれぞれ含むVHCDR1~3を含む可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 14、15、および16をそれぞれ含むVLCDR1~3を含む可変軽鎖(VL)とを含む、請求項1~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
VHおよびVLが、SEQ ID NO: 9およびSEQ ID NO: 17、またはSEQ ID NO: 10およびSEQ ID NO: 18をそれぞれ含む、請求項1~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
癌が、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、胃癌、膵臓癌、神経内分泌癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、脳癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、食道癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、頭頸部癌、およびこれらの組み合わせである、請求項1~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
対象がヒトである、請求項1~22のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出した配列表の参照
本出願とともに提出したテキストファイル(名称:58008_133124_SEQ_LST.txt;サイズ:37,171バイト;および作成日:2014年6月20日)における電子的に提示した配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
CD100としても公知であるセマフォリン4D(SEMA4D)は、セマフォリン遺伝子ファミリーに属する膜貫通タンパク質である(例えば、SEQ ID NO: 1(ヒト)、SEQ ID NO: 2(マウス))。SEMA4Dは、ホモ二量体として細胞表面上に発現しているが、細胞活性化時に、SEMA4Dは、タンパク質分解性切断を介して細胞表面から放出されて、タンパク質の可溶型であるsSEMA4Dを生成することができ、これもまた生物学的に活性を有する。例えば、Suzuki et al., Nature Rev. Immunol. 3:159-167 (2003)(非特許文献1);Kikutani et al., Nature Immunol. 9:17-23 (2008)(非特許文献2)を参照されたい。
【0003】
SEMA4Dは、脾臓、胸腺、およびリンパ節を含むリンパ系器官において、ならびに、脳、心臓、および腎臓などの非リンパ系器官において高レベルで発現している。リンパ系器官において、SEMA4Dは、休止T細胞上に豊富に発現しているが、休止B細胞、および樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)上には弱くしか発現していない。しかしながら、その発現は、種々の免疫学的刺激による活性化後にこれらの細胞において上方制御される。免疫細胞からの可溶性SEMA4Dの放出もまた、細胞活性化により増加する。SEMA4Dは、ある特定の癌の発生に関係し(Ch'ng et al., Cancer 110:164-72 (2007)(非特許文献3);Campos et al., Oncology Letters, 5:1527-35 (2013)(非特許文献4);Kato et al., Cancer Sci. 102:2029-37 (2011)(非特許文献5))、いくつかの報告により、この影響の1つの機構が、腫瘍血管形成の促進におけるSEMA4Dの役割であることが示唆されている(Conrotto et al., Blood 105:4321-4329 (2005)(非特許文献6);Basile et al., J Biol. Chem. 282: 34888-34895 (2007)(非特許文献7);Sierra et.al. J. Exp. Med. 205:1673 (2008)(非特許文献8);Zhou et al., Angiogenesis 15:391-407 (2012)(非特許文献9))。腫瘍成長および転移は、腫瘍細胞、間質、および免疫浸潤物、ならびに内皮細胞および脈管構造の間のクロストークの複雑な過程を伴う。SEMA4Dは、多様な腫瘍タイプにおいて過剰発現しており、腫瘍微環境に動員された炎症性細胞によっても産生され、腫瘍間質を構成する様々な細胞タイプの遊走、生存、分化、および組織化においてSEMA4Dがどのような役割を果たし得るのかの問題は、まだ対処されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Suzuki et al., Nature Rev. Immunol. 3:159-167 (2003)
【文献】Kikutani et al., Nature Immunol. 9:17-23 (2008)
【文献】Ch'ng et al., Cancer 110:164-72 (2007)
【文献】Campos et al., Oncology Letters, 5:1527-35 (2013)
【文献】Kato et al., Cancer Sci. 102:2029-37 (2011)
【文献】Conrotto et al., Blood 105:4321-4329 (2005)
【文献】Basile et al., J Biol. Chem. 282: 34888-34895 (2007)
【文献】Sierra et.al. J. Exp. Med. 205:1673 (2008)
【文献】Zhou et al., Angiogenesis 15:391-407 (2012)
【発明の概要】
【0005】
概要
本出願は、腫瘍細胞の進行を阻害、低減、抑制、阻止、減速、もしくは遅延させるか、腫瘍細胞を収縮させるか、または直接攻撃する単剤として働くか、あるいは、それらの治療的有益性を増強するために他の免疫調節療法と組み合わせて作用し得るかいずれかの、安全かつ有効な癌処置についての必要性に対処する。特に、腫瘍成長を促進するかまたは阻害するかいずれかの免疫細胞およびマクロファージの浸潤、成熟、および組織化においてSEMA4Dが役割を果たすことが示され、これは癌を有する対象において腫瘍成長および転移を低減させるための有効な方法の開発に貢献し得る。
【0006】
本出願のある特定の局面は、癌を有する対象において、腫瘍成長または転移または腫瘍成長および転移の両方を阻害、遅延、または低減させるための方法であって、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量を該対象に投与する段階を含む方法を対象とする。
【0007】
いくつかの態様において、結合分子は、SEMA4Dのその受容体(例えば、プレキシン-B1)との相互作用を阻害する。いくつかの態様において、結合分子は、SEMA4D媒介性プレキシン-B1シグナル伝達を阻害する。いくつかの態様において、転移の阻害、遅延、または低減は、原発腫瘍成長の阻害、遅延、または低減とは独立して生じる。いくつかの態様において、癌は、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、白血病、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、胃癌、膵臓癌、神経内分泌癌、神経膠芽腫、子宮頚癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、脳癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、食道癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、頭頸部癌、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの態様において、対象は、他の癌対象と比較した際にB細胞、T細胞、またはB細胞およびT細胞の両方のいずれかの高いレベルを有する。
【0008】
いくつかの態様において、単離された結合分子は、VX15/2503および67からなる群より選択される参照モノクローナル抗体と同一のSEMA4Dエピトープに特異的に結合する。いくつかの態様において、単離された結合分子は、抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体VX15/2503または67の6個の相補性決定領域(CDR)を含む。
【0009】
いくつかの態様において、免疫調節療法は、癌ワクチン、免疫刺激剤、養子T細胞または抗体療法、免疫チェックポイント遮断剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの態様において、免疫調節剤は、インターロイキン、サイトカイン、ケモカイン、免疫チェックポイント遮断剤のアンタゴニスト、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの態様において、癌治療は、外科手術または外科的手順、放射線療法、化学療法、またはこれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの態様において、単離された結合分子および免疫調節剤または免疫調節療法は、別々にまたは同時に投与される。
【0010】
いくつかの態様において、癌を有する対象において腫瘍成長を阻害、遅延、または低減させるための方法であって、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量を該対象に投与する段階を含む方法が、提供される。いくつかの態様において、結合分子は、SEMA4Dのその受容体との相互作用を阻害する。いくつかの態様において、受容体はプレキシン-B1である。いくつかの態様において、結合分子は、SEMA4D媒介性プレキシン-B1シグナル伝達を阻害する。いくつかの態様において、癌は、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、白血病、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、胃癌、膵臓癌、神経内分泌癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、脳癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、食道癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、頭頸部癌、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの態様において、単離された結合分子は、参照モノクローナル抗体VX15/2503または67と同一のSEMA4Dエピトープに特異的に結合する。いくつかの態様において、単離された結合分子は、参照モノクローナル抗体VX15/2503または67がSEMA4Dに特異的に結合することを競合的に阻害する。いくつかの態様において、単離された結合分子は、抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、SEQ ID NO: 6、7、および8をそれぞれ含むVHCDR1~3を含む可変重鎖(VH)、ならびに、SEQ ID NO: 14、15、および16をそれぞれ含むVLCDR1~3を含む可変軽鎖(VL)を含む。いくつかの態様において、VHおよびVLは、SEQ ID NO: 9およびSEQ ID NO: 17、またはSEQ ID NO: 10およびSEQ ID NO: 18をそれぞれ含む。いくつかの態様において、免疫調節療法は、癌ワクチンの投与、免疫刺激剤の投与、養子T細胞または抗体療法、免疫チェックポイント遮断阻害剤の投与、制御性T細胞(Treg)調節剤の投与、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの態様において、免疫調節療法は、免疫チェックポイント遮断阻害剤を含む。いくつかの態様において、免疫チェックポイント遮断阻害剤は、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、またはこれらの組み合わせである。いくつかの態様において、免疫調節療法は、癌ワクチンの投与を含む。いくつかの態様において、Treg調節剤はシクロホスファミドである。いくつかの態様において、単離された結合分子および免疫調節療法は、別々にまたは同時に投与される。いくつかの態様において、単離された結合分子および免疫調節療法の組み合わせの投与は、単離された結合分子または免疫調節療法単独の投与と比べて増強された治療効力を結果としてもたらす。いくつかの態様において、対象は、他の癌対象と比較した際にB細胞、T細胞、またはB細胞およびT細胞の両方の高いレベルを有する。いくつかの態様において、対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のレベルは、他の癌患者における循環中のB細胞および/またはT細胞の平均数の約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5倍である。いくつかの態様において、対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のレベルは、例えば、他の癌患者と比較した際に、それぞれ約147~約588および約1173~約3910の範囲にわたる。いくつかの態様において、対象は、健康な非癌患者のB細胞および/またはT細胞の範囲内に入るか、またはそれを上回るB細胞および/またはT細胞レベルを有する。いくつかの態様において、対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞レベルは、例えば、健康な非癌患者と比較した際に、それぞれ、約225~約275またはそれより多い、および約1350~約1650またはそれより多い範囲にわたる。
【0011】
いくつかの態様において、癌を有する対象を免疫療法で処置するための方法であって、(a)癌を有する対象におけるB細胞および/またはT細胞の数を測定する段階、ならびに(b)該対象におけるB細胞および/またはT細胞の数が、あらかじめ決定された閾値レベルを超過する場合に、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量を該対象に投与する段階を含む方法が、提供される。いくつかの態様において、対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のあらかじめ決定された閾値レベルは、他の癌患者における循環中のB細胞および/またはT細胞の平均数の約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5倍である。いくつかの態様において、対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のあらかじめ決定された閾値レベルは、例えば、他の癌患者と比較した際に、それぞれ約147~約588および約1173~約3910の範囲にわたる。いくつかの態様において、対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のあらかじめ決定された閾値レベルは、健康な非癌患者のB細胞および/またはT細胞の範囲内に入るか、またはそれを上回る。いくつかの態様において、対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のあらかじめ決定された閾値レベルは、例えば、健康な非癌患者と比較した際に、それぞれ、約225~約275またはそれより多い、ならびに約1350~約1650またはそれより多い範囲にわたる。
【0012】
いくつかの態様において、癌を有する患者を免疫療法で処置する方法であって、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量と、少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量との組み合わせを、癌を有する対象に投与する段階を含み、該組み合わせの投与が、該単離された結合分子または該他の免疫調節療法単独の投与と比べて増強された治療効力を結果としてもたらす方法が、提供される。いくつかの態様において、免疫調節療法は、癌ワクチンの投与、免疫刺激剤の投与、養子T細胞または抗体療法、免疫チェックポイント遮断阻害剤の投与、制御性T細胞(Treg)調節剤の投与、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの態様において、免疫調節療法は、免疫チェックポイント遮断阻害剤を含む。いくつかの態様において、免疫チェックポイント遮断阻害剤は、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、またはこれらの組み合わせである。いくつかの態様において、免疫調節療法は、癌ワクチンの投与を含む。いくつかの態様において、Treg調節剤は、シクロホスファミドである。いくつかの態様において、単離された結合分子および免疫調節療法は、別々にまたは同時に投与される。いくつかの態様において、対象は、他の癌対象と比較した際にB細胞、T細胞、またはB細胞およびT細胞の両方のいずれかの高いレベルを有する。いくつかの態様において、対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のレベルは、他の癌患者における循環中のB細胞および/またはT細胞の平均数の約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5倍である。いくつかの態様において、対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のレベルは、例えば、他の癌患者と比較した際に、それぞれ約147~約588および約1173~約3910の範囲にわたる。いくつかの態様において、対象は、健康な非癌患者のB細胞および/またはT細胞の範囲内に入るか、またはそれを上回るB細胞および/またはT細胞のレベルを有する。いくつかの態様において、対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のレベルは、例えば、健康な非癌患者と比較した際に、それぞれ、約225~約275またはそれより多い、および約1350~約1650またはそれより多い範囲にわたる。いくつかの態様において、癌は、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、白血病、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、胃癌、膵臓癌、神経内分泌癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、脳癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、食道癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、頭頸部癌、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。上述の方法のいずれかのいくつかの態様において、単離された結合分子は、VX15/2503または67からなる群より選択される参照モノクローナル抗体と同一のSEMA4Dエピトープに特異的に結合する。上述の方法のいずれかのいくつかの態様において、単離された結合分子は、VX15/2503または67からなる群より選択される参照モノクローナル抗体がSEMA4Dに特異的に結合することを競合的に阻害する。いくつかの態様において、単離された結合分子は、抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体VX15/2503または67の6個の相補性決定領域(CDR)を含む。いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体VX15/2503または67である。
【0013】
また、Her2およびプレキシンB1、プレキシンB2、またはこれらの組み合わせを発現する腫瘍細胞の成長を阻害、遅延、または低減させるための方法であって、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量と該腫瘍細胞を接触させる段階を含み、該腫瘍細胞の成長が阻害、遅延、または低減される方法も、提供される。いくつかの態様において、接触させる段階は、SEMA4D結合分子の癌を有する対象への投与を含み、該対象の癌細胞は、Her2およびプレキシンB1、プレキシンB2、またはこれらの組み合わせを発現している。いくつかの態様において、癌は、乳癌、卵巣癌、肺癌、または前立腺癌である。
【0014】
また、癌を有する対象を処置するための方法であって、(a)Her2およびプレキシンB1、プレキシンB2、またはこれらの組み合わせの発現について該対象の癌細胞をアッセイする段階、ならびに、(b)該対象の癌細胞が、Her2およびプレキシンB1、プレキシンB2、またはこれらの組み合わせを発現している場合に、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量を該対象に投与する段階を含む方法も、提供される。抗HER2/neu結合分子の有効量の投与をさらに含む、請求項48または請求項49記載の方法。単離された結合分子が、参照モノクローナル抗体VX15/2503または67と同一のSEMA4Dエピトープに特異的に結合する、請求項48または請求項49記載の方法。単離された結合分子が、参照モノクローナル抗体VX15/2503または67がSEMA4Dに特異的に結合することを競合的に阻害する、請求項48または請求項49記載の方法。単離された結合分子が、抗体またはその抗原結合断片を含む、請求項48または請求項49記載の方法。抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO: 6、7、および8をそれぞれ含むVHCDR1~3を含む可変重鎖(VH)、ならびに、SEQ ID NO: 14、15、および16をそれぞれ含むVLCDR1~3を含む可変軽鎖(VL)を含む、請求項53記載の方法。VHおよびVLが、SEQ ID NO: 9およびSEQ ID NO: 17、またはSEQ ID NO: 10およびSEQ ID NO: 18をそれぞれ含む、請求項54記載の方法。
[本発明1001]
癌を有する対象において腫瘍成長を阻害、遅延、または低減させるための方法であって、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量と、少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量とを、該対象に投与する段階を含む、方法。
[本発明1002]
結合分子が、SEMA4Dのその受容体との相互作用を阻害する、本発明1001の方法。
[本発明1003]
受容体がプレキシン-B1である、本発明1002の方法。
[本発明1004]
結合分子が、SEMA4D媒介性プレキシン-B1シグナル伝達を阻害する、本発明1001の方法。
[本発明1005]
癌が、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、白血病、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、胃癌、膵臓癌、神経内分泌癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、脳癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、食道癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、頭頸部癌、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1006]
単離された結合分子が、参照モノクローナル抗体VX15/2503または67と同一のSEMA4Dエピトープに特異的に結合する、本発明1001の方法。
[本発明1007]
単離された結合分子が、参照モノクローナル抗体VX15/2503または67がSEMA4Dに特異的に結合することを競合的に阻害する、本発明1001の方法。
[本発明1008]
単離された結合分子が、抗体またはその抗原結合断片を含む、本発明1001の方法。
[本発明1009]
抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO: 6、7、および8をそれぞれ含むVHCDR1~3を含む可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 14、15、および16をそれぞれ含むVLCDR1~3を含む可変軽鎖(VL)とを含む、本発明1008の方法。
[本発明1010]
VHおよびVLが、SEQ ID NO: 9およびSEQ ID NO: 17またはSEQ ID NO: 10およびSEQ ID NO: 18をそれぞれ含む、本発明1009の方法。
[本発明1011]
免疫調節療法が、癌ワクチンの投与、免疫刺激剤の投与、養子T細胞または抗体療法、免疫チェックポイント遮断阻害剤の投与、制御性T細胞(Treg)調節剤の投与、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1012]
免疫調節療法が免疫チェックポイント遮断阻害剤を含む、本発明1011の方法。
[本発明1013]
免疫チェックポイント遮断阻害剤が、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、またはこれらの組み合わせである、本発明1012の方法。
[本発明1014]
免疫調節療法が癌ワクチンの投与を含む、本発明1011の方法。
[本発明1015]
Treg調節剤がシクロホスファミドである、本発明1011の方法。
[本発明1016]
単離された結合分子および免疫調節療法が、別々にまたは同時に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1017]
単離された結合分子および免疫調節療法の組み合わせの投与が、単離された結合分子または免疫調節療法単独の投与と比べて増強された治療効力を結果としてもたらす、本発明1001の方法。
[本発明1018]
対象が、他の癌対象と比較した際にB細胞、T細胞、またはB細胞およびT細胞の両方の高いレベルを有する、本発明1001の方法。
[本発明1019]
対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のレベルが、他の癌患者における循環中のB細胞および/またはT細胞の平均数の約1.5~約5倍である、本発明1018の方法。
[本発明1020]
対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のレベルが、それぞれ、約147~約588および約1173~約3910の範囲にわたる、本発明1018の方法。
[本発明1021]
対象が、健康な非癌患者のB細胞および/またはT細胞の範囲内に入るか、またはそれを上回るB細胞および/またはT細胞レベルを有する、本発明1001の方法。
[本発明1022]
対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞レベルが、それぞれ、約225~約275またはそれより多い、および約1350~約1650またはそれより多い範囲にわたる、本発明1021の方法。
[本発明1023]
癌を有する対象を免疫療法で処置するための方法であって、
(a)癌を有する対象におけるB細胞および/またはT細胞の数を測定する段階;ならびに
(b)該対象におけるB細胞および/またはT細胞の数が、あらかじめ決定された閾値レベルを超過する場合に、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量を該対象に投与し、それにより癌を有する該対象を処置する段階
を含む、方法。
[本発明1024]
対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のあらかじめ決定された閾値レベルが、他の癌患者における循環中のB細胞および/またはT細胞の平均数の約1.5~約5倍である、本発明1023の方法。
[本発明1025]
対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のあらかじめ決定された閾値レベルが、それぞれ、約147~約588および約1173~約3910の範囲にわたる、本発明1024の方法。
[本発明1026]
対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のあらかじめ決定された閾値レベルが、健康な非癌患者のB細胞および/またはT細胞の範囲内に入るか、またはそれを上回る、本発明1023の方法。
[本発明1027]
対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のあらかじめ決定された閾値レベルが、それぞれ、約225~約275またはそれより多い、ならびに約1350~約1650およびそれより多い範囲にわたる、本発明1026の方法。
[本発明1028]
癌を有する対象を免疫療法で処置する方法であって、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量と、少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量との組み合わせを、癌を有する対象に投与する段階を含み、該組み合わせの投与が、該単離された結合分子または該他の免疫調節療法単独の投与と比べて増強された治療効力を結果としてもたらす、方法。
[本発明1029]
免疫調節療法が、癌ワクチンの投与、免疫刺激剤の投与、養子T細胞または抗体療法、免疫チェックポイント遮断阻害剤の投与、制御性T細胞(Treg)調節剤の投与、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、本発明1028の方法。
[本発明1030]
免疫調節療法が免疫チェックポイント遮断阻害剤を含む、本発明1029の方法。
[本発明1031]
免疫チェックポイント遮断阻害剤が、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、またはこれらの組み合わせである、本発明1030の方法。
[本発明1032]
免疫調節療法が癌ワクチンの投与を含む、本発明1029の方法。
[本発明1033]
Treg調節剤がシクロホスファミドである、本発明1032の方法。
[本発明1034]
単離された結合分子および免疫調節療法が、別々にまたは同時に投与される、本発明1028の方法。
[本発明1035]
対象が、他の癌対象と比較した際にB細胞、T細胞、またはB細胞およびT細胞の両方のいずれかの高いレベルを有する、本発明1028の方法。
[本発明1036]
対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のレベルが、他の癌患者における循環中のB細胞および/またはT細胞の平均数の約1.5~約5倍である、本発明1035の方法。
[本発明1037]
対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のレベルが、それぞれ、約147~約588および約1173~約3910の範囲にわたる、本発明1036の方法。
[本発明1038]
対象が、健康な非癌患者のB細胞および/またはT細胞の範囲内に入るか、またはそれを上回るB細胞および/またはT細胞のレベルを有する、本発明1028の方法。
[本発明1039]
対象における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞および/またはT細胞のレベルが、それぞれ、約225~約275またはそれより多い、および約1350~約1650またはそれより多い範囲にわたる、本発明1038の方法。
[本発明1040]
癌が、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、白血病、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、胃癌、膵臓癌、神経内分泌癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、脳癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、食道癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、頭頸部癌、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、本発明1028の方法。
[本発明1041]
単離された結合分子が、VX15/2503または67からなる群より選択される参照モノクローナル抗体と同一のSEMA4Dエピトープに特異的に結合する、本発明1028~1040のいずれかの方法。
[本発明1042]
単離された結合分子が、VX15/2503または67からなる群より選択される参照モノクローナル抗体がSEMA4Dに特異的に結合することを競合的に阻害する、本発明1028~1040のいずれかの方法。
[本発明1043]
単離された結合分子が、抗体またはその抗原結合断片を含む、本発明1042の方法。
[本発明1044]
抗体またはその抗原結合断片が、モノクローナル抗体VX15/2503または67の6個の相補性決定領域(CDR)を含む、本発明1043の方法。
[本発明1045]
抗体またはその抗原結合断片が、モノクローナル抗体VX15/2503または67である、本発明1044の方法。
[本発明1046]
Her2およびプレキシンB1、プレキシンB2、またはこれらの組み合わせを発現する腫瘍細胞の成長を阻害、遅延、または低減させるための方法であって、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量と該腫瘍細胞を接触させる段階を含み、該腫瘍細胞の成長が阻害、遅延、または低減される、方法。
[本発明1047]
接触させる段階が、SEMA4D結合分子の癌を有する対象への投与を含み、該対象の癌細胞が、Her2およびプレキシンB1、プレキシンB2、またはこれらの組み合わせを発現している、本発明1046の方法。
[本発明1048]
癌が、乳癌、卵巣癌、肺癌、または前立腺癌である、本発明1047の方法。
[本発明1049]
(a)Her2およびプレキシンB1、プレキシンB2、またはこれらの組み合わせの発現について対象の癌細胞をアッセイする段階;ならびに
(b)該対象の癌細胞が、Her2およびプレキシンB1、プレキシンB2、またはこれらの組み合わせを発現している場合に、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量を該対象に投与する段階
を含む、癌を有する対象を処置するための方法。
[本発明1050]
抗HER2/neu結合分子の有効量の投与をさらに含む、本発明1048または本発明1049の方法。
[本発明1051]
単離された結合分子が、参照モノクローナル抗体VX15/2503または67と同一のSEMA4Dエピトープに特異的に結合する、本発明1048または本発明1049の方法。
[本発明1052]
単離された結合分子が、参照モノクローナル抗体VX15/2503または67がSEMA4Dに特異的に結合することを競合的に阻害する、本発明1048または本発明1049の方法。
[本発明1053]
単離された結合分子が、抗体またはその抗原結合断片を含む、本発明1048または本発明1049の方法。
[本発明1054]
抗体またはその抗原結合断片が、SEQ ID NO: 6、7、および8をそれぞれ含むVHCDR1~3を含む可変重鎖(VH)と、SEQ ID NO: 14、15、および16をそれぞれ含むVLCDR1~3を含む可変軽鎖(VL)とを含む、本発明1053の方法。
[本発明1055]
VHおよびVLが、SEQ ID NO: 9およびSEQ ID NO: 17またはSEQ ID NO: 10およびSEQ ID NO: 18をそれぞれ含む、本発明1054の方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図1Aは、1 mg(50mg/kg)の抗SEMA4D抗体(Ab)67または2B8アイソタイプ対照免疫グロブリン(2B8対照Ig)のいずれかで毎週2回処置したBalb/cマウスおよびSCIDマウスにおけるColon26腫瘍体積の測定値を示す。
図1B】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図1Bは、抗SEMA4D Ab 67または2B8対照Igのいずれかで処置したBalb/cマウスおよびSCIDマウスの、下記の実施例1において定義されるような生存時間を示す。
図2】腫瘍細胞を移植して、最初に抗CD8枯渇化抗体(クローン2.43、BioXCell)または対照ラットIg(150 mg/kg)で処置し、次に図1Aにおけるように、2B8対照Igまたは抗SEMA4D Ab 67のいずれかで処置したBalb/cマウスにおける、Colon26腫瘍体積の測定値を示す。
図3A】移植したマウスのColon26腫瘍における免疫細胞密度の測定。図3Aは、対照Igまたは抗SEMA4D Ab 67での処置後の、抗CD8抗体で染色される腫瘍面積%によって決定されるようなCD8+ T細胞の密度を示す。
図3B】移植したマウスのColon26腫瘍における免疫細胞密度の測定。図3Bは、対照Igまたは抗SEMA4D Ab 67での処置後の、抗CD20抗体で染色される腫瘍面積%によって決定されるようなCD20+ B細胞の密度を示す。
図4A】Colon26移植マウスにおける腫瘍の前縁での、マクロファージおよびCD8+ T細胞分布の測定。図4Aは、27日前に移植し、図1に記載されているように対照Igまたは抗SEMA4D Ab 67のいずれかで処置したマウス由来の代表的なColon26腫瘍の画像を示す。
図4B】Colon26移植マウスにおける腫瘍の前縁での、マクロファージおよびCD8+ T細胞分布の測定。図4Bは、抗F4/80抗体で染色されるピクセル面積%によって決定されるような、腫瘍の縁から300ピクセル幅の領域(250ミクロン)として定義される、腫瘍の前縁でのM1型マクロファージ密度の測定値を示す。
図4C】Colon26移植マウスにおける腫瘍の前縁での、マクロファージおよびCD8+ T細胞分布の測定。図4Cは、抗CD206抗体で染色されるピクセル面積%によって決定されるような、腫瘍の前縁でのM2型マクロファージ密度の測定値を示す。
図4D】Colon26移植マウスにおける腫瘍の前縁での、マクロファージおよびCD8+ T細胞分布の測定。図4Dは、細胞傷害性T細胞抗CD8抗体で染色されるピクセル面積%によって決定されるような、腫瘍の前縁でのCD8+T細胞密度の測定値を示す。
図5A】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図5Aは、抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11(腫瘍接種後、8日目に100μg、11および14日目に50μg)を伴うかまたは伴わずに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2(50 mg/kg、IP、毎週)のいずれかで、および抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11との組み合わせで抗PD1/RMP1-14(3日目に100μg、毎週2回)で処置したBalb/cマウスにおけるColon26腫瘍体積の測定値を示す。
図5B】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図5Bは、抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11を伴うかまたは伴わずに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2のいずれかで、および抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11との組み合わせで抗PD1/RMP1-14(3日目に100μg、毎週2回)で処置したBalb/cマウスの生存時間を示す。
図5C】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図5Cは、抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11を伴うかまたは伴わずに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2のいずれかで、および抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11との組み合わせで抗PD1/RMP1-14(3日目に100μg、毎週2回)で処置したBalb/cマウスにおける腫瘍退縮の頻度を示す(p値、0.05および**0.01)。
図5D】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図5Dは、対照マウスIgG1/2B8または単独療法(抗SEMA4D/MAb 67-2または抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11のいずれか)のいずれかと比較した、抗SEMA4D/MAb 67-2および抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11の組み合わせで処置したマウスの腫瘍浸潤リンパ球における、炎症誘発性サイトカインIFNγの測定値を示す。
図5E】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図5Eは、対照マウスIgG1/2B8または単独療法(抗SEMA4D/MAb 67-2または抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11のいずれか)のいずれかと比較した、抗SEMA4D/MAb 67-2および抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11の組み合わせで処置したマウスの脾臓から回収した腫瘍浸潤リンパ球の中での、ペプチド特異的IFNγ分泌レスポンダーの頻度を示す。
図6A】腫瘍特異的細胞傷害性CD8+ T細胞の腫瘍浸潤に影響を及ぼす抗SEMA4D抗体の測定。図6Aは、ペプチドの存在下および非存在下の両方での、MAb 67で処置したマウスにおけるIFNγ分泌細胞の測定値を示す。
図6B】腫瘍特異的細胞傷害性CD8+ T細胞の腫瘍浸潤に影響を及ぼす抗SEMA4D抗体の測定。図6Bは、代表的なELISPOT画像を示す。
図6C】腫瘍特異的細胞傷害性CD8+ T細胞の腫瘍浸潤に影響を及ぼす抗SEMA4D抗体の測定。図6Cは、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)における、IFNγおよびTNFαなどの抗腫瘍サイトカインの測定値を示す。
図6D】腫瘍特異的細胞傷害性CD8+ T細胞の腫瘍浸潤に影響を及ぼす抗SEMA4D抗体の測定。図6Dは、抗SEMA4D/MAb 67抗体で処置したマウスのTILにおける、炎症誘発性サイトカインIFNγおよびTNFαの測定値を示す。
図6E】腫瘍特異的細胞傷害性CD8+ T細胞の腫瘍浸潤に影響を及ぼす抗SEMA4D抗体の測定。図6Eは、抗SEMA4D/MAb 67抗体で処置したマウスの腫瘍浸潤リンパ球における、ペプチド特異的IFNγ分泌レスポンダーの頻度を示す。
図7A】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図7Aは、対照ラットIgまたはラット抗PD1/MAbRMP1-14(100μg、週に2回、腫瘍接種の3日後に始めて2週間)のいずれかとともに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2(50 mg/kg、IP、毎週)のいずれかで処置したBalb/cマウスにおけるColon26腫瘍体積の測定値を示す。
図7B】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図7Bは、対照ラットIgまたはラット抗PD1/MAbRMP1-14のいずれかとともに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2のいずれかで処置したBalb/cマウスの生存時間を示す。
図7C】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図7Cおよび図7Dは、対照ラットIgまたはラット抗PD1/MAbRMP1-14のいずれかとともに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2のいずれかで処置したBalb/cマウスにおける腫瘍退縮の頻度を示す。
図7D】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図7Cおよび図7Dは、対照ラットIgまたはラット抗PD1/MAbRMP1-14のいずれかとともに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2のいずれかで処置したBalb/cマウスにおける腫瘍退縮の頻度を示す。
図8A】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図8Aは、シクロホスファミド(CY)(50 mg/kg、IP)を伴うかまたは伴わずに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2(50 mg/kg、IP、毎週)のいずれかで処置したBalb/cマウスにおけるColon26腫瘍体積の平均測定値を示す。
図8B】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図8Bは、シクロホスファミド(CY)(50 mg/kg、IP)を伴うかまたは伴わずに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2(50 mg/kg、IP、毎週)のいずれかで処置したBalb/cマウスにおけるColon26腫瘍体積の中央測定値を示す。
図8C】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図8Cは、シクロホスファミドを伴うかまたは伴わずに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2のいずれかで処置したBalb/cマウスの生存時間を示す。
図8D】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図8Dおよび図8Eは、シクロホスファミド(CY)を伴うかまたは伴わずに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2のいずれかで処置したBalb/cマウスにおける腫瘍退縮の頻度を示す。
図8E】同系のColon26腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図8Dおよび図8Eは、シクロホスファミド(CY)を伴うかまたは伴わずに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2のいずれかで処置したBalb/cマウスにおける腫瘍退縮の頻度を示す。
図9A】Tubo.A5腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図9Aは、抗Neu/MAb7.16.4(αNeu)(腫瘍体積(TV)がおよそ200 mm3である時、21および28日目に始めて、200μg IP、毎週×2)を伴うかまたは伴わずに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2(50 mg/kg、IP、毎週)のいずれかで処置したBalb/cマウスにおける腫瘍体積の測定値を示す。
図9B】Tubo.A5腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図9Bは、抗Neu/MAb7.16.4(αNeu)を伴うかまたは伴わずに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2のいずれかで処置したBalb/cマウスの生存時間を示す。
図9C】Tubo.A5腫瘍細胞を移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図9Cは、抗Neu/MAb7.16.4(αNeu)を伴うかまたは伴わずに、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2のいずれかで処置したBalb/cマウスにおける腫瘍退縮の頻度を示す。
図10A】Tubo.A5腫瘍細胞を移植したBalb/cマウスにおける腫瘍体積の測定。図10Aは、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2(50 mg/kg、IP、毎週)のいずれかで処置したBalb/cマウスにおける腫瘍体積の測定値を示す。
図10B】Tubo.A5腫瘍細胞を移植したBalb/cマウスにおける腫瘍体積の測定。図10Bは、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2のいずれかで処置したBalb/cマウスの生存時間を示す。
図10C】Tubo.A5腫瘍細胞を移植したBalb/cマウスにおける腫瘍体積の測定。図10C図10Eは、Tubo.A5腫瘍モデルにおける腫瘍退縮の頻度を示す。具体的には、図10Cは、Tubo.A5腫瘍を移植した対照マウスを示す。
図10D】Tubo.A5腫瘍細胞を移植したBalb/cマウスにおける腫瘍体積の測定。図10C図10Eは、Tubo.A5腫瘍モデルにおける腫瘍退縮の頻度を示す。具体的には、図10Dは、抗SEMA4D/MAb 67-2での処置後にTubo.A5腫瘍移植片を拒絶し、最初の移植の90日後にTubo.A5腫瘍で再チャレンジしたマウスを示す。
図10E】Tubo.A5腫瘍細胞を移植したBalb/cマウスにおける腫瘍体積の測定。図10C図10Eは、Tubo.A5腫瘍モデルにおける腫瘍退縮の頻度を示す。具体的には、図10Eは、インビボでの腫瘍生存率を実証するために、図10Dと同一の腫瘍移植片で再チャレンジした未処置マウスを示す。
図11A】Tubo.A5腫瘍モデルにおけるT細胞浸潤およびMDSCの測定。図11Aは、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2(50 mg/kg、IP、毎週)のいずれかで処置したBalb/cマウスの腫瘍におけるCD3+ T細胞の測定値を示す。
図11B】Tubo.A5腫瘍モデルにおけるT細胞浸潤およびMDSCの測定。図11Bは、対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2(50 mg/kg、IP、毎週)のいずれかで処置したBalb/cマウスの腫瘍におけるCD11b+Gr1+ MDSCの測定値を示す。
図12A】Colon 26腫瘍細胞またはTubo.A5腫瘍細胞のいずれかを移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図12Aは、対照マウスIgG1/2B8.1E7(50 mg/kg、IP、毎週×6)または変動するレベルの抗SEMA4D/MAb 67-2(1、10、もしくは50 mg/kg、IP、毎週×6)のいずれかで処置したBalb/cマウスにおけるTubo.A5腫瘍体積の測定値を示す。
図12B】Colon 26腫瘍細胞またはTubo.A5腫瘍細胞のいずれかを移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図12Bは、対照マウスIgG1/2B8.IE7(50 mg/kg、IP、毎週×6)または変動するレベルの抗SEMA4D/MAb 67-2(1、10、もしくは50 mg/kg、IP、毎週×6)のいずれかで処置したBalb/cマウスの生存時間を示す。
図12C】Colon 26腫瘍細胞またはTubo.A5腫瘍細胞のいずれかを移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図12Cは、対照マウスIgG1/2B8.IE7(50 mg/kg、IP、毎週×5)、抗SEMA4D/MAb 67-2(50 mg/kg、IP、毎週×5)、抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11(5mg/kg、IP、毎週×5)、または、抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11(5mg/kg、IP、毎週×5)および変動するレベルの抗SEMA4D/MAb 67-2(0.3、3、10、もしくは50 mg/kg、IP、毎週×5)の組み合わせで処置したBalb/cマウスにおけるColon 26腫瘍体積の測定値を示す。図12Dは、対照マウスIgG1/2B8.IE7(50 mg/kg、IP、毎週×5)、抗SEMA4D/MAb 67-2(50 mg/kg、IP、毎週×5)、抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11(5mg/kg、IP、毎週×5)、または、抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11(5mg/kg、IP、毎週×5)および変動するレベルの抗SEMA4D/MAb 67-2(0.3、3、10、もしくは50 mg/kg、IP、毎週×5)の組み合わせで処置したBalb/cマウスの生存時間を示す。
図12D】Colon 26腫瘍細胞またはTubo.A5腫瘍細胞のいずれかを移植したマウスにおける腫瘍体積の測定。図12Dは、対照マウスIgG1/2B8.IE7(50 mg/kg、IP、毎週×5)、抗SEMA4D/MAb 67-2(50 mg/kg、IP、毎週×5)、抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11(5mg/kg、IP、毎週×5)、または、抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11(5mg/kg、IP、毎週×5)および変動するレベルの抗SEMA4D/MAb 67-2(0.3、3、10、もしくは50 mg/kg、IP、毎週×5)の組み合わせで処置したBalb/cマウスの生存時間を示す。
図13】Colon26およびTubo.A5腫瘍モデルにおける腫瘍退縮および腫瘍再チャレンジ後の成長を示す、上記の図において実施された実験の概要。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
I.定義
「1つの」(「a」または「an」)実体という用語は、1つまたは複数のその実体を指し、例えば、「ポリヌクレオチド(a polynucleotide」は、1つまたは複数のポリヌクレオチドを表すように理解されることに、注意されたい。そのように、「1つの」、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0017】
さらに、本明細書において使用される「および/または」は、2つの特定化された特徴または成分の各々の、他方を伴うかまたは伴わない特定の開示として解釈されるべきである。従って、本明細書中の「Aおよび/またはB」などの句において使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、ならびに「B」(単独)を含むように意図される。同様に、「A、B、および/またはC」などの句において使用される「および/または」という用語は、以下の態様の各々を包含するように意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
【0018】
別の方法で定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関係する当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press;およびthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、本開示において使用される用語の多くの一般的な辞書を、当業者に提供する。
【0019】
単位、接頭辞、および記号は、それらのSysteme International de Unites(SI)に認められている形態において表示される。数値の範囲は、範囲を定義する数を含む。別の方法で示されない限り、アミノ酸配列は、左から右へアミノからカルボキシの向きで記載される。本明細書において提供される表題は、本開示の種々の局面または態様の限定ではなく、これらは、全体として本明細書への参照によって有することができる。従って、すぐ次で定義される用語は、全体の本明細書への参照によってより完全に定義される。
【0020】
態様が、「含む」という言語で記載されている場合には必ず、「からなる」および/または「から本質的になる」の用語で記載されている別の類似の態様もまた、提供される。
【0021】
アミノ酸は、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されている一般的に公知の三文字記号または一文字記号によって、本明細書において言及される。ヌクレオチドは、同様に、その一般的に認められている一文字コードによって言及される。
【0022】
本明細書において使用される際、「癌」および「癌性」という用語は、細胞の集団が上方制御された細胞増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか、または説明する。癌の例は、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病を含むが、これらに限定されない。そのような癌のより特定の例は、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、胃癌、膵臓癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、脳癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、食道癌、唾液腺癌、肉腫、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、および種々のタイプの頭頸部癌を含む。
【0023】
ある特定の態様において、本明細書において提供される方法を介する処置に適する転移性の癌は、転移性の肉腫、乳癌、卵巣癌、頭頸部癌、および膵臓癌を含むが、これらに限定されない。ある特定の態様において、本明細書において提供される方法を介する処置に適する転移性の癌または腫瘍細胞は、SEMA4Dに対するプレキシン-B1および/またはプレキシン-B2受容体を発現している。
【0024】
「血管形成」とは、血管リモデリングの主要な決定要因によって刺激された内皮細胞が、その細胞-細胞接触および細胞-マトリクス接触を劇的に修飾し、成熟血管樹に再編成するように指向的に移動する、複雑な多段階形態形成事象を指す(Bussolino et al., Trends Biochem Sci. 22:251-256 (1997);Risau, Nature 386:671-674 (1997);Jain, Nat. Med. 9:685-693 (2003))。新たな血管の形成は、胚発生中の鍵となる段階であるが、網膜症、関節リウマチ、虚血、ならびに特に腫瘍成長および転移などの生理学的状態および病理学的状態にある成人においても生じる(Carmeliet, Nat. Med. 9:653-660 (2003))。
【0025】
本明細書において使用される際、「臨床検査室」という用語は、生きている対象、例えばヒトに由来する材料の検査または加工処理のための施設を指す。加工処理の非限定的な例は、例えば、生きている対象、例えばヒトの、任意の疾患もしくは欠陥の診断、予防、もしくは処置、またはその健康の評価のための情報を提供する目的の、ヒト身体に由来する材料の生物学的、生化学的、血清学的、化学的、免疫血液学的、血液学的、生物物理学的、細胞学的、病理学的、遺伝学的、または他の検査を含む。これらの検査はまた、試料を収集するかまたは別の方法で取得する手順、生きている対象、例えばヒトの身体における、または生きている対象、例えばヒトの身体から得られた試料における種々の物質を調製する、決定する、測定する、または別の方法でその有無を述べる手順も含むことができる。
【0026】
「増殖性障害」および「増殖性疾患」という用語は、癌などの異常な細胞増殖と関連する障害を指す。
【0027】
本明細書において使用される「腫瘍」および「新生物」とは、良性(非癌性)または前癌性病変を含む悪性(癌性)のいずれかの、過剰な細胞成長または増殖に起因する組織の任意の塊を指す。ある特定の態様において、本明細書において記載される腫瘍は、プレキシン-B1および/またはプレキシン-B2を発現し、かつ、SEMA4Dおよび活性化Metを発現し得る。
【0028】
本明細書において使用される際、「医療給付提供者」という用語は、1つまたは複数の医療給付、給付制度、健康保険、および/または医療費勘定プログラムを提供する、提示する、提案する、全体的にもしくは部分的に支払う、または患者がそれらに接触できるようにすることに別の方法で関連する、個々の会、機構、またはグループを包含する。
【0029】
「免疫調節療法」または「免疫療法」という用語は、対象において免疫応答を誘導および/または増強することによって、その対象における疾患または障害に影響を及ぼす処置を指す。免疫調節療法は、癌ワクチン、免疫刺激剤、養子T細胞または抗体療法、および免疫チェックポイント遮断剤を含む(Lizee et al. 2013. Harnessing the Power of the Immune System to Target Cancer. Annu. Rev. Med. Vol. 64 No. 71-90)。
【0030】
「免疫調節剤」という用語は、免疫療法の活性剤を指す。免疫調節剤は、多種多様の組み換え、合成、および天然の調製物を含む。免疫調節剤の例は、IL-2、IL-7、IL-12などのインターロイキン;顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターフェロンなどのサイトカイン;CXCL13、CCL26、CXCL7などの種々のケモカイン;抗CTLA-4、抗PD1、または抗PD-L1(PD-1のリガンド)、抗LAG3、抗B7-H3などの免疫チェックポイント遮断剤のアンタゴニスト、合成シトシンリン酸-グアノシン(CpG)オリゴデオキシヌクレオチド、グルカン;および、シクロホスファミドなどの制御性T細胞(Treg)の調節剤を含むが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書において使用される「転移」、「(複数の)転移」、「転移性」という用語および他の文法的同義語は、元の部位(例えば、原発腫瘍)から身体の他の領域へ、新たな場所での同様の癌性病変の発生を伴って広がるかまたは移行する癌細胞を指す。「転移性」または「転移する」細胞は、隣接細胞との付着接触を失い、血流またはリンパ液を介して疾患の原発部位から遊走して隣接身体構造に侵入するものである。用語はまた、癌細胞の原発腫瘍からの剥離、腫瘍細胞の循環への血管内異物侵入、それらの生存および遠隔部位への遊走、循環から新たな部位への付着および血管外遊出、ならびに遠隔部位でのマイクロコロニー形成、ならびに遠隔部位での腫瘍成長および発生を含むがこれらに限定されない、転移の過程も指す。
【0032】
「治療的有効量」という用語は、対象または哺乳動物において疾患または障害を「処置する」ために有効な、抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、有機小分子、または他の薬物の量を指す。癌の場合、治療的有効量の薬物は、癌細胞の数を低減させることができ;癌細胞の分裂を妨害もしくは停止し、腫瘍サイズの増大を低減もしくは妨害することができ;例えば、癌の柔組織および骨への広がりを含む、癌細胞の末梢器官中への浸潤を阻害、例えば、抑制、妨害、予防、停止、遅延、もしくは逆転することができ;腫瘍転移を阻害、例えば、抑制、妨害、予防、収縮、停止、遅延、もしくは逆転することができ;腫瘍成長を阻害、例えば、抑制、妨害、予防、停止、遅延、もしくは逆転することができ;癌と関連する症候の1つまたは複数をある程度まで軽減し、罹患率および死亡率を低減させることができ;生活の質を改善することができ;またはそのような効果の組み合わせをもたらす。薬物が既存の癌細胞の成長を予防し、および/または殺傷する範囲で、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性と呼ぶことができる。
【0033】
「処置」(「treating」もしくは「treatment」もしくは「to treat」)または「緩和」(「alleviating」もしくは「to alleviate」)などの用語は、1)診断された病理学的状態または障害を治癒する、それを減速させる、その症候を減少させる、それを逆転する、および/またはその進行を停止させる治療的手段、ならびに2)標的とした病理学的状態または障害を予防する、および/またはその発症を緩徐化する防御的手段または予防的手段の両方を指す。従って、処置を必要とする人々は、既に障害を有する人々、障害を有する傾向がある人々、および障害が予防されるべき人々を含む。患者が、以下の1つまたは複数を示す場合に、対象は、本開示の方法に従って成功裡に「処置」されることになる:癌細胞の数の低減もしくは完全欠如;腫瘍サイズの低減;または腫瘍成長の妨害もしくは逆転、転移、例えば、癌の柔組織および骨への広がりを例えば含む、癌細胞の末梢器官中への浸潤の阻害、例えば、抑制、予防、妨害、収縮、遅延、もしくは逆転;腫瘍転移の阻害、例えば、その抑制、その妨害、その予防、その収縮、その逆転、その遅延、もしくはその欠如;腫瘍成長の阻害、例えば、その抑制、その妨害、その予防、その収縮、その逆転、その遅延、もしくはその欠如;特異的な癌と関連する1つまたは複数の症候の軽減;罹患率および死亡率の低減;生活の質の改善;または効果のいくつかの組み合わせ。有益なまたは望ましい臨床結果は、検出可能であろうとまたは検出不可能であろうと、症候の緩和、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち悪化させないこと)、疾患進行の遅延または緩徐化、疾患状態の改善または一時的緩和、および寛解(部分的であろうとまたは全体的であろうと)を含むが、これらに限定されない。「処置」とはまた、処置を受けていない場合に期待される生存と比較した際に延長した生存も意味することができる。処置を必要とする人々は、既に状態もしくは障害を有する人々、および、状態もしくは障害を有する傾向がある人々、または、状態もしくは障害が予防されるべき人々を含む。
【0034】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」により、それについて診断、予後診断、または治療が望ましい任意の対象、特に、哺乳動物対象が意味される。哺乳動物対象は、ヒト、家庭内の動物、農場の動物、および、動物園、スポーツ、またはペットの動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、雌ウシ、クマなどを含む。
【0035】
本明細書において使用される際、「単剤としてのまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせでの抗SEMA4D抗体の投与から恩恵を受けるであろう対象」および「処置を必要とする動物」などの句は、単剤としてのまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせでの抗SEMA4D抗体の投与から恩恵を受けるであろう、哺乳動物対象などの対象を含む。
【0036】
本開示の「結合分子」または「抗原結合分子」は、その最も広い意味において、抗原決定基に特異的に結合する分子を指す。1つの態様において、結合分子は、SEMA4D、例えば、約150 kDaの膜貫通SEMA4Dポリペプチドまたは約120 kDaの可溶性SEMA4Dポリペプチド(一般的にsSEMA4Dと呼ばれる)に特異的に結合する。別の態様において、本開示の結合分子は、抗体またはその抗原結合断片である。別の態様において、本開示の結合分子は、抗体分子の少なくとも1個の重鎖または軽鎖の相補性決定領域(CDR)を含む。別の態様において、本開示の結合分子は、1種または複数の抗体分子由来の少なくとも2個のCDRを含む。別の態様において、本開示の結合分子は、1種または複数の抗体分子由来の少なくとも3個のCDRを含む。別の態様において、本開示の結合分子は、1種または複数の抗体分子由来の少なくとも4個のCDRを含む。別の態様において、本開示の結合分子は、1種または複数の抗体分子由来の少なくとも5個のCDRを含む。別の態様において、本開示の結合分子は、1種または複数の抗体分子由来の少なくとも6個のCDRを含む。別の態様において、結合分子は、SEMA4Dに対するプレキシン-B1受容体のアンタゴニストであることができる。アンタゴニストにより、受容体のシグナル伝達機能を干渉する結合分子が意味される。アンタゴニストは、天然リガンドの結合を競合的に遮断することができるが、正常な生理学的応答を誘発することはできない。結合分子は、上記のような抗体もしくはその抗原結合断片であることができるか、または、競合的阻害剤として作用するかもしくは天然リガンドによるシグナル伝達を干渉する他の生物製剤または低分子薬物であることができる。本開示は、対象、例えば癌患者において腫瘍成長および転移を阻害する方法であって、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を、単剤としてまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせて該対象に投与する段階を含む方法に向けられる。天然に存在する抗体などの完全なサイズの抗体に具体的に言及しない限り、「抗SEMA4D抗体」という用語は、完全なサイズの抗体、およびそのような抗体の抗原結合断片、変異体、類似体、または誘導体、例えば、天然に存在する抗体、または免疫グロブリン分子、または工学により作製された抗体分子、または抗体分子と同様の様式で抗原に結合する断片を包含する。SEMA4Dまたはそのプレキシン-B1受容体に結合し、その活性を阻害する他の生物製剤または低分子もまた、SEMA4D結合分子に含まれる。
【0037】
本明細書において使用される際、「ヒト」抗体または「完全ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または、下記および例えばKucherlapatiらによる米国特許第5,939,598号に記載されるような、1種または複数のヒト免疫グロブリンの遺伝子導入動物から単離された抗体を含む。「ヒト」抗体または「完全ヒト」抗体は、少なくとも重鎖の可変ドメイン、または少なくとも重鎖および軽鎖の可変ドメインを含み、該可変ドメインがヒト免疫グロブリン可変ドメインのアミノ酸配列を有する抗体もまた含む。
【0038】
「ヒト」抗体または「完全ヒト」抗体は、本明細書において記載される抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)の変異体(誘導体を含む)を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなり、抗体またはその断片がSEMA4Dポリペプチドまたはその断片もしくは変異体に免疫特異的に結合する、上記のような「ヒト」抗体または「完全ヒト」抗体もまた含む。アミノ酸置換を結果として生じる部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発を含むがこれらに限定されない、当業者に公知である標準的な技術を、ヒト抗SEMA4D抗体をコードするヌクレオチド配列中に変異を導入するために使用することができる。ある特定の局面において、変異体(誘導体を含む)は、参照VH領域、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VL領域、VLCDR1、VLCDR2、またはVLCDR3に対して、50アミノ酸未満の置換、40アミノ酸未満の置換、30アミノ酸未満の置換、25アミノ酸未満の置換、20アミノ酸未満の置換、15アミノ酸未満の置換、10アミノ酸未満の置換、5アミノ酸未満の置換、4アミノ酸未満の置換、3アミノ酸未満の置換、または2アミノ酸未満の置換をコードする。
【0039】
ある特定の態様において、アミノ酸置換は、下記でさらに議論される保存的アミノ酸置換である。あるいは、変異を、飽和変異誘発などにより、コード配列のすべてまたは一部に沿って無作為に導入することができ、結果として生じた変異体を、活性(例えば、SEMA4Dポリペプチド、例えば、ヒト、マウス、またはヒトおよびマウス両方のSEMA4Dに結合する能力)を保持する変異体を同定するために生物学的活性についてスクリーニングすることができる。「ヒト」抗体または「完全ヒト」抗体のそのような変異体(またはその誘導体)は、「最適化された」または「抗原結合について最適化された」ヒト抗体または完全ヒト抗体と呼ぶこともでき、抗原に対して改善された親和性を有する抗体を含む。
【0040】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、本明細書において互換的に使用される。抗体または免疫グロブリンは、少なくとも重鎖の可変ドメインを含み、通常、少なくとも重鎖および軽鎖の可変ドメインを含む。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は、比較的よく理解されている。例えば、Harlow et al. (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (2nd ed.; Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照されたい。
【0041】
本明細書において使用される際、「免疫グロブリン」という用語は、生化学的に区別することができる種々の広範なクラスのポリペプチドを含む。当業者は、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として、それらの中にいくつかのサブクラス(例えばγ1~γ4)を伴って分類されることを認識するであろう。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA、IgG、またはIgEと決定することが、この鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などは、十分に特徴決定されており、機能的特殊化を与えることが公知である。これらのクラスおよびアイソタイプの各々の修飾バージョンは、本開示を考慮して当業者が容易に識別可能であり、従って、本開示の範囲内である。すべての免疫グロブリンクラスが、明らかに本開示の範囲内であり、以下の議論は概して、IgGクラスの免疫グロブリン分子に向けられる。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量およそ23,000ダルトンの2個の同一の軽鎖ポリペプチド、および分子量53,000~70,000の2個の同一の重鎖ポリペプチドを含む。4本の鎖は典型的に、ジスルフィド結合により「Y」形態に連結され、軽鎖が、「Y」の口部から始まり可変領域を通して連続して、重鎖をひとまとめにする。
【0042】
軽鎖は、カッパまたはラムダ(κ、λ)のいずれかとして分類される。各重鎖のクラスは、κ軽鎖またはλ軽鎖のいずれかと結合しうる。概して、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞、または遺伝子工学により作製された宿主細胞のいずれかにより生成される際、軽鎖および重鎖は互いに共有結合し、かつ2個の重鎖の「尾」部分は、共有ジスルフィド結合または非共有結合により互いに結合している。重鎖において、アミノ酸配列は、Y形態の叉状端のN末端から各鎖の底部のC末端までおよぶ。
【0043】
軽鎖および重鎖の両方は、構造的および機能的な相同性の領域に分割される。「定常」および「可変」という用語は、機能的に使用される。この点において、軽鎖の可変ドメイン(VLまたはVK)および重鎖の可変ドメイン(VH)両方の部分は、抗原認識および特異性を決定することが、認識されるであろう。逆に、軽鎖の定常ドメイン(CL)および重鎖の定常ドメイン(CH1、CH2、またはCH3)は、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、補体結合などのような重要な生物学的特性を与える。慣例により、定常領域ドメインのナンバリングは、抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠くなるにつれて増大する。N末端部分が可変領域であり、C末端部分が定常領域である;CH3ドメインおよびCLドメインは、それぞれ重鎖および軽鎖のカルボキシ末端を実際に含む。
【0044】
上記に示されるように、可変領域は、抗体が抗原上のエピトープを選択的に認識し、かつ特異的に結合することを可能にする。すなわち、抗体のVLドメインおよびVHドメイン、またはこれらの可変ドメイン内の相補性決定領域(CDR)のサブセットは、組み合わさって、三次元の抗原結合部位を規定する可変領域を形成する。この4要素からなる抗体構造は、Yの各腕の末端に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、VH鎖およびVL鎖の各々上の3個のCDRにより規定される。いくつかの場合には、例えば、ラクダ科の種に由来するかまたはラクダ科の免疫グロブリンに基づいて工学により作製されたある特定の免疫グロブリン分子は、完全な免疫グロブリン分子が、軽鎖を有さず、重鎖のみからなり得る。例えば、Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993)を参照されたい。
【0045】
天然に存在する抗体において、各抗原結合ドメイン中に存在する6個の「相補性決定領域」または「CDR」は、抗体が水性環境においてその三次元形態を呈する際に抗原結合ドメインを形成するように特異的に位置づけられる、アミノ酸の短い非隣接の配列である。「フレームワーク」領域と呼ばれる抗原結合ドメイン中のアミノ酸の残りの部分は、より低い分子間の可変性を示す。フレームワーク領域は、主としてβシート立体配座を採り、CDRは、βシート構造を連結し、いくつかの場合にはその一部を形成するループを形成する。従って、フレームワーク領域は、CDRを鎖間の非共有相互作用により正確な配向に位置づけることを提供する足場を形成するように作用する。位置づけられたCDRにより形成される抗原結合ドメインは、免疫反応性抗原上のエピトープに対して相補性の表面を規定する。この相補性の表面が、抗体のその同起源エピトープに対する非共有結合を促進する。それぞれCDRおよびフレームワーク領域を構成するアミノ酸は、正確に定義されているため(下記参照)、任意の所定の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインについて当業者が容易に同定することができる。
【0046】
当技術分野内で使用される、および/または受け入れられる用語の2つまたはそれより多い定義がある場合には、本明細書において使用される用語の定義は、それとは反対に明示的に述べられない限り、そのような意味のすべてを含むように意図される。具体例は、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチド両方の可変領域内に見出される非隣接の抗原結合部位を記載するための、「相補性決定領域」(「CDR」)という用語の使用である。この特定の領域は、参照により本明細書に組み入れられる、Kabat et al. (1983) U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequences of Proteins of Immunological Interest"およびChothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)によって記載されており、定義は、互いに対して比較した際のアミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。それにもかかわらず、抗体またはその変異体のCDRに言及するためのいずれかの定義の適用は、本明細書において定義されかつ使用される用語の範囲内であることが意図される。上記で引用される参照文献の各々により定義されるCDRを包含する適切なアミノ酸残基を、比較として下記の表1に示す。特定のCDRを包含する正確な残基の数字は、CDRの配列およびサイズに応じて変動するであろう。当業者は日常的に、抗体の可変領域アミノ酸配列を考慮して、どの残基が特定のCDRを構成するかを決定することができる。
【0047】
(表1)CDRの定義1
1表1におけるすべてのCDRの定義のナンバリングは、Kabatらにより示されるナンバリング慣例に従う(下記参照)。
【0048】
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能である可変ドメイン配列についてのナンバリングシステムも定義した。当業者は、配列自体を超えるいずれの実験データにも頼ることなく、「Kabatナンバリング」のこのシステムを任意の可変ドメイン配列に明白に割り当てることができる。本明細書において使用される際、「Kabatナンバリング」とは、Kabat et al. (1983) U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequence of Proteins of Immunological Interest."により示されるナンバリングシステムを指す。別の方法で特定化されない限り、本開示の抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体における特定のアミノ酸残基の位置のナンバリングについての言及は、Kabatナンバリングシステムに従う。
【0049】
本開示の抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、またはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab'およびF(ab')2、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VLドメインまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーにより産生された断片、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書において開示される抗SEMA4D抗体に対する抗Id抗体を含む)を含むが、これらに限定されない。ScFv分子は当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号に記載されている。本開示の免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2など)、またはサブクラスであり得る。
【0050】
本明細書において使用される際、「重鎖部分」という用語は、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、重鎖部分を構成するポリペプチドは、VHドメイン、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中間部、および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはその変異体もしくは断片の、少なくとも1つを含む。例えば、本開示における使用のための結合ポリペプチドは、CH1ドメインを構成するポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、およびCH2ドメインを構成するポリペプチド鎖;CH1ドメインおよびCH3ドメインを構成するポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、およびCH3ドメインを構成するポリペプチド鎖、または、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを構成するポリペプチド鎖を含みうる。別の態様において、本開示のポリペプチドは、CH3ドメインを構成するポリペプチド鎖を含む。さらに、本開示における使用のための結合ポリペプチドは、CH2ドメインの少なくとも一部(例えば、CH2ドメインのすべてまたは部分)を欠如しうる。上記に示されるように、これらのドメイン(例えば重鎖部分)は、アミノ酸配列において天然に存在する免疫グロブリン分子とは異なるように修飾されうることが、当業者に理解されるであろう。
【0051】
本明細書において開示されるある特定の抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体において、多量体の1本のポリペプチド鎖の重鎖部分は、多量体の2本目のポリペプチド鎖上のものと同一である。あるいは、本開示の重鎖部分を含有する単量体は、同一ではない。例えば、各単量体は、例えば二重特異性抗体を形成する、異なる標的結合部位を含みうる。二重特異性抗体とは、2種の異なるモノクローナル抗体の断片から構成され、その結果2種の異なるタイプの抗原に結合する人工タンパク質である。二重特異性抗体形式のバリエーションが、本開示の範囲内で企図される。二重特異性抗体は、例えば、当技術分野において周知である技術を用いて作製することができる。例えば、Ghayur et al., Expert Review of Clinical Pharmacology 3.4 (July 2010): p491;Lu et al., J. Biological Chemistry Vol. 280, No. 20, p. 19665-19672 (2005);Marvin et al., Acta Pharmacologic Sinica 26(6):649-658 (2005);およびMilstein C et al., Nature 1983; 305: 537-40;30 Brennan M et al., Science 1985; 229: 81-3;Thakur et al., Curr Opin Mol Ther. 2010 Jun;12(3):340-9;および米国特許出願公開第2007/0004909号を参照されたい。
【0052】
本明細書中で開示される方法における使用のための結合分子の重鎖部分は、異なる免疫グロブリン分子に由来しうる。例えば、ポリペプチドの重鎖部分は、IgG1分子に由来するCH1ドメインおよびIgG3分子に由来するヒンジ領域を含むことができる。別の例において、重鎖部分は、部分的にIgG1分子に、および部分的にIgG3分子に由来するヒンジ領域を含むことができる。別の例において、重鎖部分は、部分的にIgG1分子に、および部分的にIgG4分子に由来するキメラヒンジを含むことができる。
【0053】
本明細書において使用される際、「軽鎖部分」という用語は、免疫グロブリン軽鎖、例えば、κ軽鎖またはλ軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。ある特定の局面において、軽鎖部分は、VLドメインまたはCLドメインの少なくとも1つを含む。
【0054】
本明細書において開示される抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、これらが認識するかまたは特異的に結合する抗原、例えば、本明細書において開示される標的ポリペプチド(例えばSEMA4D)のエピトープまたは部分の観点から記載されるか、または特定化されうる。抗体の抗原結合ドメインと特異的に相互作用する標的ポリペプチドの部分が、「エピトープ」または「抗原決定基」である。標的ポリペプチドは、単一のエピトープを含むことができるが、典型的には、少なくとも2個のエピトープを含み、かつ、抗原のサイズ、立体配座、およびタイプに応じて、任意の数のエピトープを含むことができる。さらに、標的ポリペプチド上の「エピトープ」は、非ポリペプチド要素でありうるか、またはそれを含み得、例えば、エピトープは炭水化物側鎖を含みうることに注意されたい。
【0055】
抗体のためのペプチドまたはポリペプチドエピトープの最小サイズは、約4個~5個のアミノ酸であると考えられている。ペプチドまたはポリペプチドエピトープは、少なくとも7個、少なくとも9個、および、いくつかの場合では少なくとも約15個~約30個の間のアミノ酸を含有しうる。CDRは、その三次形態において抗原性ペプチドまたはポリペプチドを認識することができるため、エピトープを構成するアミノ酸は、隣接している必要がなく、いくつかの場合には、同一のペプチド鎖上でなくてさえよい。本開示の抗SEMA4D抗体により認識されるペプチドまたはポリペプチドエピトープは、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、または約15個~約30個の間の、SEMA4Dの隣接または非隣接のアミノ酸の配列を含有しうる。
【0056】
「特異的に結合する」により、抗体がその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、および結合が抗原結合ドメインとエピトープとの間のいくらかの相補性を必然的に伴うことが、概して意味される。この定義に従って、抗体が、無作為の関連のないエピトープに結合するよりも容易に、その抗原結合ドメインを介してそのエピトープに結合する際、抗体はエピトープに「特異的に結合する」と言われる。「特異性」という用語は、それによりある特定の抗体がある特定のエピトープに結合する相対的親和性を認定するために、本明細書において使用される。例えば、抗体「A」は、所定のエピトープに対して抗体「B」よりも高い特異性または親和性を有すると考えられ得、または抗体「A」は、関連するエピトープ「D」に対して有するよりも高い特異性でエピトープ「C」に結合すると言われうる。
【0057】
「優先的に結合する」により、抗体が、関連する、同様の、相同の、または類似のエピトープに結合するよりも容易に、エピトープに特異的に結合することが意味される。従って、所定のエピトープに「優先的に結合する」抗体は、そのような抗体が関連するエピトープと交差反応し得るにもかかわらず、関連するエピトープよりもそのエピトープに結合する可能性が高いであろう。
【0058】
非限定的な例として、抗体は、第2のエピトープについての抗体の解離定数(KD)より低いKDで第1のエピトープに結合する場合に、該第1のエピトープに優先的に結合すると考えられ得る。別の非限定的な例において、抗体は、第2のエピトープについての抗体のKDより少なくとも1桁低い親和性で第1のエピトープに結合する場合に、第1の抗原に優先的に結合すると考えられ得る。別の非限定的な例において、抗体は、第2のエピトープについての抗体のKDより少なくとも2桁低い親和性で第1のエピトープに結合する場合に、第1のエピトープに優先的に結合すると考えられ得る。
【0059】
別の非限定的な例において、抗体は、第2のエピトープについての抗体のオフ速度(off rate)(k(オフ))より低いk(オフ)で第1のエピトープに結合する場合に、第1のエピトープに優先的に結合すると考えられ得る。別の非限定的な例において、抗体は、第2のエピトープについての抗体のk(オフ)より少なくとも1桁低い親和性で第1のエピトープに結合する場合に、第1のエピトープに優先的に結合すると考えられ得る。別の非限定的な例において、抗体は、第2のエピトープについての抗体のk(オフ)より少なくとも2桁低い親和性で第1のエピトープに結合する場合に、第1のエピトープに優先的に結合すると考えられ得る。
【0060】
抗体は、参照抗体のエピトープへの結合をある程度遮断する範囲でそのエピトープに優先的に結合する場合、参照抗体の所定のエピトープへの結合を競合的に阻害すると言われる。競合的阻害は、当技術分野において公知である任意の方法、例えば、競合ELISAアッセイにより測定されうる。抗体は、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%、参照抗体の所定のエピトープへの結合を競合的に阻害すると言われうる。
【0061】
本明細書において使用される際、「親和性」という用語は、個々のエピトープの免疫グロブリン分子のCDRとの結合の強度の尺度を指す。例えば、Harlow et al. (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed.) の27~28ページを参照されたい。本明細書において使用される際、「結合力」という用語は、免疫グロブリンの集団と抗原との間の複合体の全体の安定性、すなわち、免疫グロブリン混合物の抗原との機能的結合強度を指す。例えば、Harlowの29~34ページを参照されたい。結合力は、集団中の個々の免疫グロブリン分子の特異的なエピトープとの親和性、ならびにまた免疫グロブリンおよび抗原の結合価の両方に関連する。例えば、2価のモノクローナル抗体と、ポリマーなどの高度に反復するエピトープ構造を有する抗原との間の相互作用は、高い結合力の1つであろう。
【0062】
本開示の抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体はまた、その交差反応性の観点から記載されるか、または特定化されうる。本明細書において記載される際、「交差反応性」という用語は、1種の抗原に特異的な抗体の第2の抗原と反応する能力;2種の異なる抗原性物質の間の関連性の尺度を指す。従って、抗体が、その形成を誘導したエピトープ以外のエピトープに結合する場合、交差反応性である。交差反応性エピトープは、概して、誘導エピトープと同一の相補的構造特性の多くを含有し、いくつかの場合には、実際に元よりも良好に適合し得る。
【0063】
例えば、ある特定の抗体は、関連するが同一ではないエピトープ、例えば、参照エピトープと少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、および少なくとも50%の同一性(当技術分野において公知でありかつ本明細書において記載される方法を用いて算出した際)を有するエピトープに結合する、ある程度の交差反応性を有する。抗体は、参照エピトープと95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、および50%未満の同一性(当技術分野において公知でありかつ本明細書において記載される方法を用いて算出した際)を有するエピトープに結合しない場合、ほとんどまたはまったく交差反応性を有さないと言われうる。抗体は、そのエピトープの任意の他の類似体、オーソログ、または相同体に結合しない場合、ある特定のエピトープについて「高度に特異的」であると考えられうる。
【0064】
本開示の抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体はまた、本開示のポリペプチド、例えば、SEMA4D、例えば、ヒト、マウス、またはヒトおよびマウス両方のSEMA4Dに対するその結合親和性の観点から記載されるか、または特定化されうる。ある特定の局面において、結合親和性は、5×10-2 M、10-2 M、5×10-3 M、10-3 M、5×10-4 M、10-4 M、5×10-5 M、10-5 M、5×10-6 M、10-6 M、5×10-7 M、10-7 M、5×10-8 M、10-8 M、5×10-9 M、10-9 M、5×10-10 M、10-10 M、5×10-11 M、10-11 M、5×10-12 M、10-12 M、5×10-13 M、10-13 M、5×10-14 M、10-14 M、5×10-15 M、または10-15 Mより低い解離定数またはKdを有するものを含む。ある特定の態様において、本開示の抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、約5×10-9~約6×10-9のKdでヒトSEMA4Dに結合する。別の態様において、本開示の抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片は、約1×10-9~約2×10-9のKdでマウスSEMA4Dに結合する。
【0065】
本明細書において使用される際、「キメラ抗体」という用語は、免疫反応性領域または部位が第1の種から取得されているかまたは由来し、かつ、定常領域(無傷であるか、部分的であるか、または修飾されていてもよい)が第2の種から取得されている任意の抗体を意味すると考えられるであろう。一部の態様において、標的結合領域または部位は、非ヒト供給源(例えば、マウスまたは霊長類)由来であると考えられ、かつ、定常領域はヒトである。
【0066】
本明細書において使用される際、「工学により作製された抗体」という用語は、重鎖または軽鎖のいずれかまたは両方における可変ドメインが、公知の特異性の抗体由来の1個または複数のCDRの少なくとも部分的な置換により、ならびに、必要な場合、部分的なフレーム領域の置換および配列交換により変更されている抗体を指す。CDRは、フレームワーク領域が由来する抗体と同一のクラスまたはさらにサブクラスの抗体に由来しうるが、CDRが異なるクラスの抗体、または異なる種由来の抗体に由来することが、想定される。公知の特異性の非ヒト抗体由来の1個または複数の「ドナー」CDRがヒト重鎖または軽鎖のフレームワーク領域中に移植されている、工学により作製された抗体は、本明細書において「ヒト化抗体」と呼ばれる。ある特定の態様においては、1個の可変ドメインの抗原結合能力を別の可変ドメインに移すために、CDRのすべてをドナー可変ドメイン由来の完全なCDRで置換することは、必要ではない。むしろ、標的抗原に対する結合部位の活性を維持するために必要な残基のみを、移すことができる。
【0067】
ヒト化抗体の重鎖または軽鎖または両方における可変ドメイン内のフレームワーク領域は、ヒト起源の残基のみを含みうることがさらに認識され、この場合、ヒト化抗体のこれらのフレームワーク領域は、「完全ヒトフレームワーク領域」と呼ばれる(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2010/0285036 A1号においてMAb 2503として開示されているMAb VX15/2503)。あるいは、ドナー可変ドメインのフレームワーク領域の1個または複数の残基は、SEMA4D抗原に対する妥当な結合を維持するためまたは結合を増強するために、必要な場合、ヒト化抗体の重鎖または軽鎖または両方における可変ドメインのヒトフレームワーク領域の対応する位置の中で、工学により変更することができる。この様式において工学により変更されているヒトフレームワーク領域は、従って、ヒトおよびドナーのフレームワーク残基の混合物を含み、本明細書において「部分的ヒトフレームワーク領域」と呼ばれる。
【0068】
例えば、抗SEMA4D抗体のヒト化は、Winterおよび共同研究者の方法に従って(Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988))、げっ歯類または変異げっ歯類のCDRまたはCDR配列を、ヒト抗SEMA4D抗体の対応する配列と置換することにより、本質的に行うことができる。参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,225,539号;米国特許第5,585,089号;米国特許第5,693,761号;米国特許第5,693,762号;米国特許第5,859,205号もまた参照されたい。結果として生じたヒト化抗SEMA4D抗体は、ヒト化抗体の重鎖および/または軽鎖の可変ドメインの完全ヒトフレームワーク領域内に少なくとも1個のげっ歯類または変異げっ歯類のCDRを含むであろう。いくつかの例において、ヒト化抗SEMA4D抗体の1個または複数の可変ドメインのフレームワーク領域内の残基は、対応する非ヒト(例えばげっ歯類)残基により置換されており(例えば、米国特許第5,585,089号;米国特許第5,693,761号;米国特許第5,693,762号;および米国特許第6,180,370号を参照されたい)、その場合、結果として生じたヒト化抗SEMA4D抗体は、重鎖および/または軽鎖の可変ドメイン内に部分的ヒトフレームワーク領域を含むであろう。類似の方法を抗VEGF抗体のヒト化に用いることができる。
【0069】
さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中またはドナー抗体中に見出されない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体の性能をさらに磨くために(例えば望ましい親和性を得るために)なされる。概して、ヒト化抗体は、少なくとも1個の、および典型的には2個の可変ドメインの実質的にすべてを含むと考えられ、その中で、CDRのすべてまたは実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含むであろう。さらに詳細には、参照により本明細書に組み入れられるJones et al., Nature 331:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照されたい。従って、そのような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応する配列により置換されているとは実質的に言えない抗体を含んでもよい。実際には、ヒト化抗体は、典型的に、いくつかのCDR残基および場合によりいくつかのフレームワーク残基が、げっ歯類抗体中の類似した部位由来の残基により置換されているヒト抗体である。例えば、米国特許第5,225,539号;米国特許第5,585,089号;米国特許第5,693,761号;米国特許第5,693,762号;米国特許第5,859,205号を参照されたい。また、あらかじめ決定された抗原について改善された親和性を有するヒト化抗体を産生するためのヒト化抗体および技術が開示されている、米国特許第6,180,370号、および国際公開公報第01/27160号も参照されたい。
【0070】
II.標的ポリペプチドの説明 - SEMA4D
本明細書において使用される際、「セマフォリン-4D」、「SEMA4D」、および「SEMA4Dポリペプチド」という用語は、「SEMA4D」および「Sema4D」のように、互換的に使用される。ある特定の態様において、SEMA4Dは、細胞の表面上に発現しているか、または細胞により分泌される。別の態様において、SEMA4Dは膜結合性である。別の態様において、SEMA4Dは可溶性、例えばsSEMA4Dである。他の態様において、SEMA4Dは、完全なサイズのSEMA4D、またはその断片、またはSEMA4D変異体ポリペプチドを含んでもよく、該SEMA4Dの断片またはSEMA4D変異体ポリペプチドは、完全なサイズのSEMA4Dのいくつかまたはすべての機能特性を保持している。
【0071】
完全なサイズのヒトSEMA4Dタンパク質は、150 kDaの2本のポリペプチド鎖からなるホモ二量体膜貫通タンパク質である。SEMA4Dは、細胞表面受容体のセマフォリンファミリーに属し、CD100とも呼ばれる。ヒトおよびマウス両方のSEMA4D/Sema4Dは、それらの膜貫通型からタンパク質分解的に切断されて120-kDaの可溶型を生じ、2種のSema4Dアイソフォームを生じる(Kumanogoh et al., J. Cell Science 116(7):3464 (2003))。セマフォリンは、ニューロンとその適切な標的との間の正確な連結を確立する際に重要な役割を果たす軸索ガインダンス因子として当初定義された、可溶性タンパク質および膜結合性タンパク質からなる。構造的にクラスIVセマフォリンと考えられるSEMA4Dは、アミノ末端のシグナル配列の後に、17個の保存されたシステイン残基を含有する特徴的な「セマ」ドメイン、Ig様ドメイン、リジンに富んだストレッチ、疎水性膜貫通領域、および細胞質尾部からなる。
【0072】
SEMA4Dポリペプチドは、約13アミノ酸のシグナル配列の後に、約512アミノ酸のセマフォリンドメイン、約65アミノ酸の免疫グロブリン様(Ig様)ドメイン、104アミノ酸のリジンに富んだストレッチ、約19アミノ酸の疎水性膜貫通領域、および110アミノ酸の細胞質尾部を含む。細胞質尾部中のチロシンリン酸化のためのコンセンサス部位は、SEMA4Dのチロシンキナーゼとの予測される会合を支持する(Schlossman, et al., Eds. (1995) Leucocyte Typing V (Oxford University Press, Oxford))。
【0073】
SEMA4Dは、プレキシン-B1、プレキシン-B2、およびCD72の少なくとも3種の機能的受容体を有することが公知である。プレキシン-B1は、非リンパ系組織において発現し、SEMA4Dに対する高親和性(1 nM)受容体であることが示されている(Tamagnone et al., Cell 99:71-80 (1999))。プレキシン-B1シグナル伝達のSEMA4D刺激は、ニューロンの成長円錐虚脱を誘導すること、ならびにオリゴデンドロサイトの突起伸長虚脱およびアポトーシスを誘導することが示されている(Giraudon et al., J. Immunol. 172:1246-1255 (2004);Giraudon et al., NeuroMolecular Med. 7:207-216 (2005))。プレキシン-B1シグナル伝達は、SEMA4Dへの結合後に、R-Rasの不活性化を媒介して、細胞外マトリクスへのインテグリン媒介性付着の減少およびRhoAの活性化をもたらし、細胞骨格の再構成による細胞崩壊をもたらす。Kruger et al., Nature Rev. Mol. Cell Biol. 6:789-800 (2005);Pasterkamp, TRENDS in Cell Biology 15:61-64 (2005)を参照されたい。プレキシン-B2は、SEMA4Dに対して中程度の親和性を有し、最近の報告は、PLXNB2がケラチノサイト上に発現されており、SEMA4D陽性γδT細胞を活性化して上皮修復に貢献することを示している(Witherden et al., Immunity. 2012 Aug 24;37(2):314-25)。
【0074】
リンパ系組織においては、CD72が、低親和性(300nM)SEMA4D受容体として利用されている(Kumanogoh et al., Immunity 13:621-631 (2000))。B細胞および抗原提示細胞(APC)がCD72を発現し、抗CD72抗体は、CD40により誘導されるB細胞応答およびCD23のB細胞切断の増強などの、sSEMA4Dと同一の作用の多くを有する。CD72は、多くの抑制性受容体と会合することができるチロシンホスファターゼSHP-1を動員することにより、B細胞応答の負の制御因子として働くと考えられている。SEMA4DのCD72との相互作用は、SHP-1の解離、およびこの負の活性化シグナルの損失を結果としてもたらす。SEMA4Dは、インビトロでT細胞刺激ならびにB細胞の凝集および生存を促進することが示されている。SEMA4D発現細胞またはsSEMA4Dの添加によって、インビトロでCD40により誘導されるB細胞増殖および免疫グロブリン産生が増強され、ならびにインビボの抗体応答が加速化される(Ishida et al., Inter. Immunol. 15:1027-1034 (2003);Kumanogoh and H. Kukutani, Trends in Immunol. 22:670-676 (2001))。sSEMA4Dは、共刺激分子の上方制御およびIL-12の分泌の増加を含む、CD40により誘導されるDCの成熟を増強する。さらに、sSEMA4Dは、免疫細胞の遊走を阻害することができ、それは、遮断する抗SEMA4Dマウス抗体の添加により逆転させることができる(Elhabazi et al., J. Immunol. 166:4341-4347 (2001);Delaire et al., J. Immunol. 166:4348-4354 (2001))。
【0075】
Sema4Dは、脾臓、胸腺、およびリンパ節を含むリンパ系器官において、ならびに、脳、心臓、および腎臓などの非リンパ系器官において高レベルで発現している。リンパ系器官において、Sema4Dは、休止T細胞上に豊富に発現しているが、休止B細胞、および樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)上には弱くしか発現していない。
【0076】
細胞の活性化により、SEMA4Dの表面発現および可溶性SEMA4D(sSEMA4D)の生成が増加する。SEMA4Dの発現パターンにより、SEMA4Dが免疫系において重要な生理学的役割および病理学的役割を果たすことが示唆される。SEMA4Dは、B細胞の活性化、凝集、および生存を促進し;CD40により誘導される増殖および抗体産生を増強し;T細胞依存性抗原に対する抗体応答を増強し;T細胞増殖を増加させ;樹状細胞の成熟およびT細胞を刺激する能力を増強し;かつ脱髄および軸索変性に直接関係していることが、示されている(Shi et al., Immunity 13:633-642 (2000);Kumanogoh et al., J Immunol 169:1175-1181 (2002);およびWatanabe et al., J Immunol 167:4321-4328 (2001))。
【0077】
SEMA4Dノックアウト(SEMA4D-/-)マウスは、SEMA4Dが体液性免疫応答および細胞性免疫応答の両方において重要な役割を果たすことの追加的な証拠を提供している。SEMA4D-/-マウスにおいて、非リンパ系組織の異常性は知られていない。SEMA4D-/-マウス由来の樹状細胞(DC)は、不十分な同種刺激能力を有し、sSEMA4Dの添加により救出することができる共刺激分子の発現の欠陥を示す。ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質特異的なT細胞が、SEMA4Dの非存在下では十分に生成されないため、SEMA4Dが欠損している(SEMA4D-/-)マウスは、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質ペプチドにより誘導される実験的自己免疫性脳脊髄炎を発症することができない(Kumanogoh et al., J Immunol 169:1175-1181 (2002))。有意な量の可溶性SEMA4Dがまた、自己免疫の傾向があるMRL/lprマウス(SLEなどの全身性自己免疫疾患のモデル)の血清中に検出されるが、正常マウスにおいては検出されない。さらに、sSEMA4Dのレベルは、自己抗体のレベルと相関し、年齢とともに増加する(Wang et al., Blood 97:3498-3504 (2001))。可溶性SEMA4Dはまた、脱髄性疾患を有する患者の脳脊髄液および血清中に蓄積することも示されており、sSEMA4Dは、インビトロでヒト多能性神経前駆体(Dev細胞)のアポトーシスを誘導し、かつ、ラットオリゴデンドロサイトの突起伸長を阻害するとともにそのアポトーシスを誘導する(Giraudon et al., J Immunol 172(2):1246-1255 (2004))。このアポトーシスは、抗SEMA4Dモノクローナル抗体(MAb)により遮断された。
【0078】
III.抗SEMA4D抗体
SEMA4Dに結合する抗体は、当技術分野において記載されている。例えば、米国特許出願公開第2008/0219971 A1号、米国特許出願公開第2010/0285036 A1号、および米国特許出願公開第2006/0233793 A1号、国際特許出願である国際公開公報第93/14125号、国際公開公報第2008/100995号、および国際公開公報第2010/129917号、ならびにHerold et al., Int. Immunol. 7(1): 1-8 (1995)を参照されたく、これらの各々は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0079】
本開示は、概して、対象、例えばヒト癌患者において、腫瘍成長または転移を阻害、遅延、または低減させるための方法であって、SEMA4Dに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の投与を含む方法に関連する。ある特定の態様において、抗体は、SEMA4Dの1種または複数のその受容体、例えばプレキシン-B1および/またはプレキシン-B2との相互作用を遮断する。ある特定の態様において、癌細胞はプレキシン-B1および/またはプレキシン-B2を発現する。これらの特性を有する抗SEMA4D抗体を、本明細書中で提供される方法において使用することができる。使用することができる抗体は、米国特許出願公開第2010/0285036 A1号および同第2008/0219971 A1号に十分に記載されているMAb VX15/2503、67、76、2282、およびそれらの抗原結合断片、変異体、または誘導体を含むが、これらに限定されない。本明細書中で提供される方法において使用することができる追加的な抗体は、米国特許出願公開第2006/0233793 A1号に記載されているBD16抗体、ならびにその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体;または、米国特許出願公開第2008/0219971 A1号に記載されているMAb 301、MAb 1893、MAb 657、MAb 1807、MAb 1656、MAb 1808、Mab 59、MAb 2191、MAb 2274、MAb 2275、MAb 2276、MAb 2277、MAb 2278、MAb 2279、MAb 2280、MAb 2281、MAb 2282、MAb 2283、MAb 2284、およびMAb 2285の任意、ならびにその任意の断片、変異体、もしくは誘導体を含む。ある特定の態様において、本明細書中で提供される方法における使用のための抗SEMA4D抗体は、ヒト、マウス、またはヒトおよびマウス両方のSEMA4Dに結合する。また、前述の抗体の任意と同一のエピトープに結合する抗体、および/または前述の抗体のいずれかの結合または活性を競合的に阻害する抗体も有用である。
【0080】
ある特定の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、参照抗SEMA4D抗体分子、例えば上記のもののアミノ酸配列と少なくとも約80%、約85%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、または約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。さらなる態様において、結合分子は、参照抗体と少なくとも約96%、約97%、約98%、約99%、または100%の配列同一性を共有する。
【0081】
別の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VHドメイン)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該VHドメインのCDRの少なくとも1個は、SEQ ID NO: 9、10、25、または48のCDR1、CDR2、またはCDR3と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または同一であるアミノ酸配列を有する。
【0082】
別の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VHドメイン)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該VHドメインのCDRの少なくとも1個は、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、またはSEQ ID NO: 28と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または同一であるアミノ酸配列を有する。
【0083】
別の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VHドメイン)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該VHドメインのCDRの少なくとも1個は、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、またはSEQ ID NO: 28と、1、2、3、4、または5個の保存的アミノ酸置換以外は同一であるアミノ酸配列を有する。
【0084】
別の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 25、またはSEQ ID NO: 48と少なくとも約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有するVHドメインを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該コードされたVHドメインを含む抗SEMA4D抗体は、SEMA4Dに特異的または優先的に結合する。
【0085】
別の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VLドメイン)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該VLドメインのCDRの少なくとも1個は、SEQ ID NO: 17、18、29、または47のCDR1、CDR2、またはCDR3と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または同一であるアミノ酸配列を有する。
【0086】
別の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VLドメイン)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該VLドメインのCDRの少なくとも1個は、SEQ ID NO: 14、SEQ ID NO: 15、SEQ ID NO: 16、SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 31、SEQ ID NO: 32と少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または同一であるアミノ酸配列を有する。
【0087】
別の態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VLドメイン)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該VLドメインのCDRの少なくとも1個は、SEQ ID NO: 14、SEQ ID NO: 15、SEQ ID NO: 16、SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 31、SEQ ID NO: 32と、1、2、3、4、または5個の保存的アミノ酸置換以外は同一であるアミノ酸配列を有する。
【0088】
さらなる態様において、本明細書中で提供される方法において有用である抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 29、またはSEQ ID NO: 47と少なくとも約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有するVLドメインを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、該コードされたVLドメインを含む抗SEMA4D抗体は、SEMA4Dに特異的または優先的に結合する。
【0089】
また、本明細書中で提供される方法における使用のために、本明細書において記載されるような抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体をコードするポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドを含むベクター、およびそのようなベクターまたはポリヌクレオチドを含む宿主細胞も含まれ、すべては、本明細書中で記載される方法における使用のために、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を産生するためのものである。
【0090】
本開示の抗SEMA4D抗体の適した生物学的に活性を有する変異体を、本開示の方法において使用することができる。そのような変異体は、親抗SEMA4D抗体の望ましい結合特性を保持しているであろう。抗体変異体を作製する方法は、当技術分野において一般的に利用可能である。
【0091】
変異誘発およびヌクレオチド配列変更のための方法は、当技術分野において周知である。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Walker and Gaastra, eds. (1983) Techniques in Molecular Biology (MacMillan Publishing Company, New York);Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-492 (1985);Kunkel et al., Methods Enzymol. 154:367-382 (1987);Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor, N.Y.);米国特許第4,873,192号;およびこれらにおいて引用される参照文献を参照されたい。関心対象のポリペプチドの生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換についての手引きは、全体として参照により本明細書に組み入れられるAtlas of Protein Sequence and Structure (Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.)の345-352ページにおけるDayhoffらのモデル(1978)において見出され得る。Dayhoffらのモデルは、適した保存的アミノ酸置換を決定するために、Point Accepted Mutation(PAM)アミノ酸類似度マトリクス(PAM 250マトリクス)を使用する。ある特定の局面において、1個のアミノ酸を類似した特性を有する別のアミノ酸と交換するような、保存的置換が用いられる。DayhoffらのモデルのPAM250マトリクスにより教示される保存的アミノ酸置換の例は、Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔Gln、およびPhe⇔Trp⇔Tyrを含むが、これらに限定されない。
【0092】
関心対象のポリペプチドである、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体またはその抗原結合断片の変異体を構築する際には、変異体が、例えば、本明細書において記載されるような、例えば、細胞の表面上に発現しているかまたは細胞により分泌されるSEMA4D、例えば、ヒト、マウス、またはヒトおよびマウス両方のSEMA4Dに特異的に結合することができる、およびSEMA4D遮断活性を有する、望ましい特性を保有し続けるように修飾がなされる。ある特定の局面において、変異体ポリペプチドをコードするDNA中に作製される変異は、リーディングフレームを維持し、mRNAの二次構造を生じ得る相補性領域を創出しない。欧州特許出願公開第75,444号を参照されたい。
【0093】
抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の結合特異性を測定する方法は、標準的な競合結合アッセイ、T細胞またはB細胞による免疫グロブリン分泌をモニタリングするためのアッセイ、T細胞増殖アッセイ、アポトーシスアッセイ、ELISAアッセイなどを含むが、これらに限定されない。例えば、すべてが参照により本明細書に組み入れられる、国際公開公報第93/14125号;Shi et al., Immunity 13:633-642 (2000);Kumanogoh et al., J Immunol 169:1175-1181 (2002);Watanabe et al., J Immunol 167:4321-4328 (2001);Wang et al., Blood 97:3498-3504 (2001);およびGiraudon et al., J Immunol 172(2):1246-1255 (2004)において開示される、そのようなアッセイを参照されたい。
【0094】
抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の抗血管形成能を測定するための方法は、当技術分野でよく知られている。
【0095】
本明細書において開示される定常領域、CDR、VHドメイン、またはVLドメインを含む任意の特定のポリペプチドが、別のポリペプチドと少なくとも約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、またはさらに約100%同一であるか否かを、本明細書において議論する際、%同一性は、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711)などの、しかしこれに限定されない、当技術分野において公知である方法およびコンピュータプログラム/ソフトウェアを用いて決定することができる。BESTFITは、2種の配列間の相同性の最も高いセグメントを見出すために、Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482-489の局所相同性アルゴリズムを使用する。特定の配列が、例えば、本開示による参照配列と95%同一であるか否かを判定するためにBESTFITまたは任意の他の配列アラインメントプログラムを用いる際は、パラメータを、当然、同一性のパーセンテージが参照ポリペプチド配列の完全長にわたって計算されるように、かつ参照配列中のアミノ酸の総数の5%までの相同性におけるギャップが許容されるように、設定する。
【0096】
本開示の目的のために、パーセント配列同一性を、Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムを使用して、12のギャップ開始ペナルティおよび2のギャップ伸長ペナルティ、62のBLOSUMマトリクスを有するアフィンギャップ検索を用いて決定してもよい。Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムは、Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482-489において教示される。変異体は、例えば、参照抗SEMA4D抗体(例えば、MAb VX15/2503、67、76、または2282)と、わずか1~15個のアミノ酸残基、わずか1~10個のアミノ酸残基、例えば6~10個、わずか5個、わずか4個、3個、2個、またはさらに1個のアミノ酸残基が異なっていてもよい。
【0097】
抗SEMA4抗体の定常領域は、多数の方式でエフェクター機能を変化させるように変異させることができる。例えば、Fc受容体に対する抗体結合を最適化するFc変異を開示している、米国特許第6,737,056B1号および米国特許出願公開第2004/0132101A1号を参照されたい。
【0098】
本明細書中で提供される方法において有用である、ある特定の抗SEMA4D抗体、またはその断片、変異体、もしくは誘導体において、Fc部分を、当技術分野において公知である技術を用いてエフェクター機能を低下させるように変異させることができる。例えば、定常領域ドメインの(点変異または他の手段を通した)欠失または不活性化は、循環する修飾抗体のFc受容体結合を低減させ、それにより腫瘍局在化を増加させることができる。他の場合には、本開示と一致する定常領域修飾は、補体結合を緩和し、従って血清半減期を低減させる。定常領域のさらに他の修飾を、ジスルフィド結合またはオリゴ糖部分を修飾して、抗原特異性または抗体柔軟性の増加による局在化の増強を可能にするために、使用することができる。結果として生じた修飾体の生理学的プロフィール、生物学的利用能、および他の生化学的作用、例えば、腫瘍局在化、生体内分布、および血清半減期は、過度の実験を伴わない周知の免疫学的技術を用いて、容易に測定および定量化することができる。
【0099】
本明細書中で提供される方法における使用のための抗SEMA4D抗体は、例えば、共有結合が抗体のその同起源のエピトープに対する特異的結合を妨げないような、任意のタイプの分子の抗体への共有結合により修飾されている誘導体を含む。例えば、しかし限定としてではなく、抗体誘導体は、例えば、グルコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質への結合などにより修飾されている抗体を含む。多数の化学修飾の任意は、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化などを含むがこれらに限定されない公知の技術により行うことができる。さらに、誘導体は、1個または複数の非古典的アミノ酸を含有することができる。
【0100】
「保存的アミノ酸置換」とは、その中でアミノ酸残基が類似した電荷をもつ側鎖を有するアミノ酸残基と置き換えられているものである。類似した電荷をもつ側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。あるいは、変異を、例えば飽和変異誘発により、コード配列のすべてまたは一部に沿って無作為に導入することができ、結果として生じた変異体を、活性(例えば、抗SEMA4Dポリペプチドに結合する能力、SEMA4Dのその受容体との相互作用を遮断する能力、または、対象、例えば癌患者において転移を阻害、遅延、もしくは低減させる能力)を保持する変異体を同定するために生物学的活性についてスクリーニングすることができる。
【0101】
例えば、抗体分子のフレームワーク領域のみまたはCDR領域のみに変異を導入することが可能である。導入された変異は、サイレント変異または中立ミスセンス変異である、すなわち、抗原に結合する抗体の能力に対して何も効果を有さないか、またはほとんど効果を有さないことができる。これらのタイプの変異は、コドン使用頻度を最適化するため、またはハイブリドーマの抗体産生を改善するために有用であり得る。あるいは、非中立ミスセンス変異は、抗原に結合する抗体の能力を変更してもよい。当業者は、抗原結合活性の無変更または結合活性の変更(例えば、抗原結合活性の改善または抗体特異性の変化)などの望ましい特性を有する変異体分子を、設計しかつ試験することができるであろう。変異誘発後に、コードされたタンパク質を、日常的に発現させてもよく、コードされたタンパク質の機能的活性および/または生物学的活性(例えば、SEMA4Dポリペプチドの少なくとも1個のエピトープに免疫特異的に結合する能力)を、本明細書において記載される技術を用いて、または当技術分野において公知である日常的な修飾技術により、測定することができる。
【0102】
ある特定の態様において、本明細書中で提供される方法における使用のための抗SEMA4D抗体は、少なくとも1個の最適化された相補性決定領域(CDR)を含む。「最適化されたCDR」により、CDRが、最適化されたCDRを含む抗SEMA4D抗体に付与される結合親和性および/または抗SEMA4D活性を改善するように、修飾されかつ最適化されていることが意図される。「抗SEMA4D活性」または「SEMA4D遮断活性」は、SEMA4Dと関連する以下の活性の1つまたは複数を調節する活性を含むことができる:B細胞の活性化、凝集、および生存;CD40により誘導される増殖および抗体産生;T細胞依存性抗原に対する抗体応答;T細胞もしくは他の免疫細胞の増殖;樹状細胞の成熟;脱髄および軸索変性;多能性神経前駆細胞および/もしくはオリゴデンドロサイトのアポトーシス;内皮細胞遊走の誘導;自発性単球遊走の阻害;腫瘍細胞成長もしくは転移の阻害、遅延、もしくは低減、細胞表面プレキシンB1もしくは他の受容体に対する結合、または、可溶性SEMA4DもしくはSEMA4D+細胞の表面上に発現しているSEMA4Dと関連する任意の他の活性。特定の態様において、抗SEMA4D活性は、原発腫瘍細胞成長および腫瘍転移の阻害、遅延、もしくは低減と組み合わせて、または原発腫瘍細胞成長および腫瘍転移とは独立してのいずれかで、腫瘍転移を阻害、遅延、または低減させる能力を含む。抗SEMA4D活性はまた、リンパ腫を含むある特定のタイプの癌、自己免疫疾患、中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)の炎症性疾患を含む炎症性疾患、移植拒絶反応、ならびに侵入性血管形成を含むが、これらに限定されない、SEMA4D発現と関連する疾患の発生率または重症度の低下に帰することができる。マウス抗SEMA4D MAb BD16に基づく最適化された抗体の例は、米国特許出願公開第2008/0219971 A1号、国際特許出願である国際公開公報第93/14125号、およびHerold et al., Int. Immunol. 7(1): 1-8 (1995)に記載され、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。修飾は、抗SEMA4D抗体が、SEMA4D抗原についての特異性を保持し、かつ改善された結合親和性および/または改善された抗SEMA4D活性を有するように、CDR内のアミノ酸残基の置換を含むことができる。
【0103】
IV.抗SEMA4D抗体の結合特性
ある特定の態様において、結合分子は、SEMA4Dに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体である。ある特定の態様において、結合分子は、SEMA4Dのエピトープに結合する。SEMA4Dの1つの変異体についてのヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、SEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:14にそれぞれ示し、SEMA4Dの別の変異体については、SEQ ID NO: 15およびSEQ ID NO: 16に示す。いくつかの態様において、VX15/2503と称される抗SEMA4D抗体が提供される。抗体VX15/2503の結合特性を有する抗体がまた、本明細書において開示される。そのような抗体は、競合的結合アッセイにおいてVX15/2503と競合する抗体、および、VX15/2503に結合することができる(下記で定義されるような)エピトープに結合する抗体を含むが、これらに限定されない。抗体が同一または同様の結合特性を有するかどうかを評価するための方法は、例えば、抗原性エピトープ(例えば、SEMA4Dペプチド)について抗体親和性または結合力を測定および比較するなどの、伝統的な定量法を含む。抗体の結合特性を比較するための他の例示的な方法は、競合的ウェスタンブロッティング、酵素免疫アッセイ、ELISA、およびフローサイトメトリーを含む。抗体-抗原結合特性を評価および比較するための方法は、当技術分野において周知である。SEMA4Dに特異的に結合する能力を保持するVX15/2503の変異体および断片もまた、提供される。抗体VX15/2503および67は、同一の6個のCDRを共有し、同一のSEMA4Dエピトープに結合する。
【0104】
いくつかの態様において、本明細書において開示される抗SEMA4D抗体、またその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、それらが認識するかまたは特異的に結合する抗原、例えば、本明細書において開示される標的ポリペプチド(例えば、SEMA4D)のエピトープまたは部分の観点から、説明または特定化することができる。抗体の抗原結合ドメインと特異的に相互作用する標的ポリペプチドの部分が、「エピトープ」または「抗原決定基」である。
【0105】
いくつかの態様において、「エピトープ」は、抗体を産生するために使用される、および/または抗体が特異的に結合することになる抗原性分子の一部であるように意図される。「SEMA4Dエピトープ」は、抗SEMA4D抗体が結合するSEMA4Dタンパク質の一部を含む。エピトープは、直鎖状アミノ酸残基(すなわち、連続的に次々と直鎖式に配列されているエピトープ内の残基)、非直鎖状アミノ酸残基(本明細書において「非直鎖状エピトープ」または「立体配座エピトープ」と呼ばれる;これらのエピトープは、連続的には配列されていない)、または直鎖状および非直鎖状アミノ酸残基の両方を含むことができる。非直鎖状エピトープまたは立体配座エピトープはまた、抗体の認識構造の全体的な立体配座に寄与するが、必ずしも抗体に結合しないアミノ酸残基も含むことができる。典型的には、エピトープは、短いアミノ酸配列、例えば、長さが約5個のアミノ酸である。エピトープを特定するための系統立った技術は、当技術分野において公知であり、例えば、下記に示す実施例において記載される。
【0106】
標的ポリペプチドは、単一のエピトープを含むことができるが、典型的には、少なくとも2個のエピトープを含み、抗原のサイズ、立体配座、およびタイプに応じて、任意の数のエピトープを含むことができる。さらに、標的ポリペプチド上の「エピトープ」は、非ポリペプチド要素であることができるか、またはそれを含むことができ、例えば、エピトープは、炭化水素側鎖を含み得ることに注意されたい。
【0107】
抗体のためのペプチドまたはポリペプチドエピトープの最小サイズは、約4個~5個のアミノ酸であると考えられている。ペプチドまたはポリペプチドエピトープは、少なくとも7個、少なくとも9個、または少なくとも約15個~約30個のアミノ酸を含有することができる。CDRは、その三次形態において抗原性ペプチドまたはポリペプチドを認識することができるため、エピトープを構成するアミノ酸は、隣接している必要がなく、いくつかの場合には、同一のペプチド鎖上でなくてさえよい。本開示の抗SEMA4D抗体によって認識されるペプチドまたはポリペプチドエピトープは、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、または約15個~約30個の、SEMA4Dの隣接または非隣接のアミノ酸の配列を含有することができる。
【0108】
いくつかの態様において、エピトープは、標的ポリペプチドアミノ酸配列(例えば、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:44、またはSEQ ID NO:46に示される配列)と少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%の同一性を有する。
【0109】
いくつかの態様において、エピトープは、4、3、2、1、または0個のアミノ酸置換を除いて、標的ポリペプチドアミノ酸配列(例えば、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:44、またはSEQ ID NO:46に示される配列)と同一である。別の態様において、エピトープは、保存的アミノ酸置換(例えば、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、または0個の保存的アミノ酸置換)を除いて、標的ポリペプチドアミノ酸配列(例えば、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:44、またはSEQ ID NO:46に示される配列)と同一である。
【0110】
いくつかの態様において、エピトープは、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:44、またはSEQ ID NO:46に示される配列を含む。別の態様において、エピトープは、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:44、またはSEQ ID NO:46に示される配列である。いくつかの態様において、エピトープは直鎖状エピトープである。いくつかの態様において、エピトープは立体配座エピトープである。
【0111】
いくつかの態様において、エピトープは、
(SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO:1に示される完全長SEMA4Dアミノ酸配列の304~320残基に対応する)、
(SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO:1に示される完全長SEMA4Dアミノ酸配列の270~284残基に対応し、281位がシステインもしくはアラニンであることができる)、または
(SEQ ID NO: 46;SEQ ID NO:1に示される完全長SEMA4Dアミノ酸配列の243~256残基に対応する)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。いくつかの態様において、エピトープは、SEQ ID NO: 42、44、および46に示されるアミノ酸配列の1つまたは複数を含む。いくつかの態様において、エピトープは、SEQ ID NO:1の243~320アミノ酸残基にわたるドメインに含まれる不連続エピトープである。
【0112】
V.単剤としてまたは少なくとも1つの免疫調節療法と組み合わせて治療用抗SEMA4D抗体を用いる処置法
本開示の方法は、腫瘍成長または転移を阻害、遅延、または低減させるための、そのような阻害、遅延、または低減を必要とする対象、例えば癌患者における、単剤としてまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせてのいずれかでの、抗SEMA4Dまたは抗プレキシン-B1結合分子、例えば、その抗原結合断片、変異体、および誘導体を含む抗体の使用に向けられる。ある特定の態様において、癌細胞はSEMA4D受容体を発現し、ある特定の態様において、受容体はプレキシン-B1である。以下の議論は、抗SEMA4D抗体の投与に言及するが、本明細書において記載される方法は、本開示の抗体の望ましい特性を保持する、例えば、SEMA4D、例えば、ヒト、マウス、またはヒトおよびマウスのSEMA4Dに特異的に結合する、SEMA4D中和活性を有する、ならびに/またはSEMA4Dのその受容体との相互作用を遮断することができる、これらの抗体の抗原結合断片、変異体、および誘導体に同等に適用可能である。本明細書において記載される方法はまた、本開示の抗体の望ましい特性を保持する、例えば、SEMA4D、例えば、ヒト、マウス、またはヒトおよびマウスのSEMA4Dに特異的に結合する、SEMA4D中和活性を有する、ならびに/またはSEMA4Dのその受容体との相互作用を遮断することができる、他の生物学的製品または低分子薬物にも適用可能である。
【0113】
1つの態様において、抗SEMA4D分子、例えば、その抗原結合断片、変異体、および誘導体を含む抗体を、腫瘍成長を阻害、遅延、または低減させるために、そのような阻害、遅延、または低減を必要とする対象、例えば癌患者において、単剤として使用することができる。ある特定の態様において、癌細胞は、例えば、プレキシン-B1またはプレキシン-B2などのSEMA4D受容体を発現している。他の態様において、癌細胞は、SEMA4D受容体とともに働き得る他の受容体を発現している。そのような受容体の例は、HER2(ErbB2)である。Her2との組み合わせでのプレキシン-B1またはプレキシン-B2の発現が観察されている癌の例は、肺癌、乳癌、前立腺癌、および卵巣癌を含む。そのように、ある特定の態様において、抗SEMA4D分子、例えば、その抗原結合断片、変異体、および誘導体を含む抗体を、肺癌、乳癌、前立腺癌、または卵巣癌を有する対象において腫瘍成長を阻害、遅延、または低減させるために単剤として使用することができる。
【0114】
1つの態様において、免疫調節療法は、癌ワクチン、免疫刺激剤、養子T細胞または抗体療法、および免疫チェックポイント遮断剤の阻害剤を含むことができる(Lizee et al. 2013. Harnessing the Power of the Immune System to Target Cancer. Annu. Rev. Med. Vol. 64 No. 71-90)。
【0115】
癌ワクチン
癌ワクチンは、癌などの異常細胞に対する身体の免疫系および自然抵抗性を活性化し、疾患の根絶または制御を結果としてもたらす。癌ワクチンは、一般的に、腫瘍抗原特異的ヘルパー細胞および/またはCTLおよびB細胞を活性化する免疫原性製剤における腫瘍抗原からなる。ワクチンは、樹状細胞、特に、腫瘍細胞もしくは腫瘍抗原でパルスされた自己樹状細胞、GM-CSFなどの免疫刺激剤をトランスフェクションした異種腫瘍細胞、組み換えウイルス、または、CpGなどの強力な免疫アジュバントとともに通常投与されるタンパク質もしくはペプチドを含むがこれらに限定されない、様々な製剤であることができる。
【0116】
免疫刺激剤
免疫刺激剤は、多くの癌患者において種々の機構を通して抑制されている腫瘍に対する免疫応答を、増強または増大させるように作用する。免疫調節療法は、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、または、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)もしくはナチュラルキラーT(NKT)細胞などのこれらの細胞のサブセットを標的とすることができる。相互作用する免疫カスケードのために、免疫細胞の1つのセットに対する効果は、しばしば、他の細胞への広がりによって増幅されることになり、例えば、増強された抗原提示細胞活性が、Tリンパ球およびBリンパ球の応答を促進する。免疫刺激剤の例は、HER2、G-CSF、GM-CSF、およびIL-2などのサイトカイン、細菌由来の細胞膜画分、CD1dと会合してナチュラルキラーT(NKT)細胞を活性化する糖脂質、CpGオリゴヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。
【0117】
免疫系の骨髄食細胞であるマクロファージは、先天的防御機構の基本的な部分であり、T細胞の動員および活性化を誘導することによって特異免疫を促進することができる。これにもかかわらず、腫瘍微環境内のそれらの存在は、腫瘍進行の増強と関連しており、癌細胞の成長および広がり、血管形成、ならびに免疫抑制を促進することが示されている。それらの表現型の設定における立役者は、マクロファージが曝露される微環境シグナルであり、これが、M1(腫瘍阻害マクロファージ)およびM2(腫瘍促進マクロファージ)の両極端を包含する機能的スペクトル内で、それらの機能を選択的に調整する。Sica et al., Seminars in Cancer Biol. 18:349-355 (2008)。癌の間にわたるマクロファージ数の増加は、一般的に、不良な予後と相関する(Qualls and Murray, Curr. Topics in Develop. Biol. 94:309-328 (2011))。固形腫瘍に共通している複数の独特の間質細胞タイプのうち、腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、腫瘍進行を助長することについて有意である。TAMの分極化を調節する分子経路を標的とすることは、抗癌療法にとって大いに有望である。Ruffell et al., Trends in Immunol. 33:119-126 (2012)。
【0118】
養子細胞移入
養子細胞移入は、癌細胞を攻撃するためにT細胞ベースの細胞傷害応答を使用することができる。患者の癌に対して天然のまたは遺伝子工学により作製された反応性を有する自己T細胞を作製し、インビトロで拡大して、次に、癌患者に移入して戻す。1つの研究により、インビトロで拡大された自己腫瘍浸潤リンパ球の養子移入が、転移性メラノーマを有する患者にとって有効な処置であったことが実証された。(Rosenberg SA, Restifo NP, Yang JC, Morgan RA, Dudley ME (April 2008). "Adoptive cell transfer: a clinical path to effective cancer immunotherapy". Nat. Rev. Cancer 8 (4): 299-308)。これは、切除された患者の腫瘍内に見出されるT細胞を採ることによって、達成することができる。これらのT細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)と呼ばれ、腫瘍抗原に対するその特異性のために、腫瘍に輸送されていると推定される。そのようなT細胞を、高濃度のIL-2、抗CD3、およびアロ反応性フィーダー細胞を用いてインビトロで倍増するように誘導することができる。これらのT細胞を次に、それらの抗癌活性をさらに高めるために外因性のIL-2の投与とともに、患者中に移入して戻す。他の研究においては、自己T細胞に、標的とする腫瘍抗原に対してそれらを反応性にするキメラ抗原受容体を形質導入している(Liddy et al., Nature Med. 18:980-7, (2012);Grupp et al., New England J. Med. 368:1509-18, (2013))。
【0119】
他の養子細胞移入療法は、エクスビボで天然のまたは修飾された腫瘍抗原に曝露され、患者中に再注入される自己樹状細胞を使用する。Provengeは、前立腺腫瘍を有する患者を処置するための、自己細胞を前立腺酸性ホスファターゼとGM-CSFとの融合タンパク質とインキュベーションする、そのようなFDAに認可された療法である。GM-CSFは、抗原提示樹状細胞の分化および活性を促進すると考えられている(Small et al., J. Clin. Oncol. 18: 3894-903(2000);米国特許第7,414,108号)。
【0120】
免疫チェックポイント遮断
免疫チェックポイント遮断療法は、進行中の免疫応答を限定する負のフィードバック制御を除去することによって、T細胞免疫を増強する。これらのタイプの療法は、側副組織損傷を最小化するために、末梢組織において(抗CTLA4)またはPD-L1を発現する腫瘍組織において(抗PD1または抗PD-L1)生理学的免疫応答の持続期間および振幅を調節するのに重要である、免疫系における阻害経路を標的とする。腫瘍は、腫瘍抗原に特異的であるT細胞に対する免疫抵抗性の主要な機構として、ある特定の免疫チェックポイント経路を開発するように進化し得る。多くの免疫チェックポイントが、リガンド-受容体相互作用によって開始されるため、これらのチェックポイントは、受容体もしくはリガンドのいずれかに対する抗体によって遮断することができるか、または、リガンドもしくは受容体の可溶性組み換え型によって調節することができる。免疫チェックポイントの中和により、さもなければ免疫抑制性の腫瘍微環境において、腫瘍特異的T細胞が機能し続けることが可能になる。免疫チェックポイント遮断療法の例は、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)、PD-1、そのリガンドPD-L1、LAG3、およびB7-H3を標的とするものである。
【0121】
シクロホスファミド
一般的に使用される化学療法剤であるシクロホスファミドは、免疫応答を増強することができる。シクロホスファミドは、エフェクターT細胞と比べて制御性T細胞(Treg)の機能を差次的に抑制する。Tregは、抗癌免疫応答を調節する上で重要である。腫瘍浸潤Tregは、以前より、不良な予後と関連している。Tregを特異的に標的とする作用物質は、現在利用できないが、シクロホスファミドは、他のT細胞と比べてTregを優先的に抑制することができ、そのため、抗腫瘍免疫応答のより有効な誘導を可能にする、臨床的に実現可能な作用物質として出現している。
【0122】
他の免疫調節療法
別の態様において、SEMA4Dまたはプレキシン-B1結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体での療法を、低用量化学療法または放射線療法のいずれかと組み合わせることができる。標準的な化学療法はしばしば、免疫抑制性であるが、シクロホスファミド、ドキソルビシン、およびパクリタキセルなどの低用量の化学療法剤は、癌に対するワクチン療法への応答を増強することが示されている(Machiels et al., Cancer Res. 61:3689-3697 (2001))。いくつかの場合、化学療法は、腫瘍環境において免疫応答を負に調節するT制御性細胞(Treg)および骨髄由来抑制細胞(MDSC)を差次的に不活性化することができる。電離放射線の直接殺腫瘍効果を活用する放射線療法が、一般的に使用されている。実際に、高線量の放射線は、化学療法のように、免疫抑制性であり得る。しかしながら、数多くの観察により、線量分割およびシーケンシングの適切な条件の下で、放射線療法は、腫瘍特異的免疫応答および免疫調節剤の効果を増強できることが示唆されている。この効果に寄与するいくつかの機構のうちの1つは、放射線で誘導される腫瘍細胞の死によって放出される腫瘍抗原の、樹状細胞および他の抗原提示細胞による交差提示である(Higgins et al., Cancer Biol. Ther. 8:1440-1449 (2009))。実質的に、放射線療法は、腫瘍に対するインサイチュワクチン化を誘導することができ(Ma et al., Seminar Immunol. 22:113-124 (2010))、これを、SEMA4Dまたはプレキシン-B1結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体での療法との組み合わせによって増幅することができる。
【0123】
1つの態様において、免疫調節療法は、IL-2、IL-7、IL-12などのインターロイキン;顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロンなどのサイトカイン;CXCL13、CCL26、CXCL7などの種々のケモカイン;抗CTLA-4、抗PD-1、抗PD-L1、抗LAG3、および抗B7-H3などの免疫チェックポイント遮断剤のアンタゴニスト;合成シトシンリン酸-グアノシン(CpG)、オリゴデオキシヌクレオチド、グルカン、シクロホスファミドなどの制御性T細胞(Treg)の調節剤、または他の免疫調節剤を含むがこれらに限定されない、免疫調節剤であることができる。1つの態様において、免疫調節剤は、4-1BB(CD137)に対するアゴニスト抗体である。最近報告されたように、そのような4-1BBに対するアゴニスト抗体は、腫瘍に対して非常に細胞傷害性である新規クラスのKLRG1+ T細胞を生じさせることができる(Curran et al., J. Exp. Med. 210:743-755 (2013))。すべての場合に、追加的な免疫調節療法は、抗SEMA4Dまたは抗プレキシン-B1結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体による治療の前、その間、またはその後に施される。併用療法が、別の免疫調節剤の投与と組み合わせて、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の投与を含む場合、本開示の方法は、別々の製剤または単一の薬学的製剤を用いる、同時投与またはいずれかの順番での連続的投与での、共投与を包含する。
【0124】
1つの態様において、免疫調節療法は、外科手術または外科的手順(例えば、脾切除、肝切除、リンパ節切除、白血球除去法、骨髄移植など);放射線療法;任意で自己骨髄移植と組み合わせた化学療法、または他の癌治療を含むがこれらに限定されない、癌治療剤であることができ;追加的な癌治療は、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体による治療の前、その間、またはその後に施される。併用療法が、別の治療剤の投与と組み合わせて、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の投与を含む場合、本開示の方法は、別々の製剤または単一の薬学的製剤を用いる、同時投与またはいずれかの順番での連続的投与での、共投与を包含する。
【0125】
別の態様において、本開示は、脳、卵巣、乳、大腸、および他の組織において見出されるものなどであるが血液癌を除外する固形腫瘍を有する他の患者と比較した際に、循環中のB細胞、T細胞、またはB細胞およびT細胞の両方のいずれかの高いレベルを有する癌患者を処置するための、単剤としてまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせてのいずれかでの、抗SEMA4Dまたは抗プレキシン-B1結合分子、例えば、その抗原結合断片、変異体、および誘導体を含む抗体の使用に向けられる。本明細書において使用される際、「高い」という用語は、他の癌患者よりも少なくとも1.5倍、例えば、約1.5~約5倍、例えば、約1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5倍またはそれより多い、循環中のB細胞および/またはT細胞の平均数を有する癌患者を指す。1つの非限定的な例において、固形腫瘍を有する34人の患者の群中で、B細胞の平均数は、1マイクロリットルの血液あたり98であり、T細胞の平均数は、1マイクロリットルの血液あたり782であった。従って、高いB細胞およびT細胞レベルを有する癌患者のこのサブセットにおいて観察される、1マイクロリットルの血液あたりのB細胞およびT細胞の平均数は、他の癌患者と比較した際に、それぞれ約147~約588および約1173~約3910の範囲にわたることができる。
【0126】
別の態様において、本開示は、正常な個体の範囲内に入るか、またはそれを上回る、循環中のB細胞、T細胞、またはB細胞およびT細胞の両方のいずれかのレベルを有する癌患者を処置するための、単剤としてまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせてのいずれかでの、抗SEMA4Dまたは抗プレキシン-B1結合分子、例えば、その抗原結合断片、変異体、および誘導体を含む抗体の使用に向けられる。本明細書において使用される際、「正常な」という用語は、健康な非癌患者において見出されるBおよび/またはT細胞レベルを指す。本明細書において使用される際、「内の」という用語は、Bおよび/またはT細胞レベルにおける十(10)パーセントの差を指す。1つの非限定的な例において、正常レベルの範囲は、例えば、1マイクロリットルあたり約250細胞もしくはそれより多いB細胞数、および/または1マイクロリットルあたり約1500細胞もしくはそれより多いT細胞数を含む。従って、健康な非癌患者と比較した際に、高いB細胞およびT細胞レベルを有する癌患者における1マイクロリットルの血液あたりのB細胞およびT細胞の平均数は、それぞれ、約225~約275またはそれより多い、ならびに約1350~約1650およびそれより多い範囲にわたることができる。当然、当業者は、BおよびT細胞のレベルが、様々な要因、例えば、癌のタイプ、癌の病期などに応じて変動し得、従って、上記で提供されたものより下であるレベルがまた、ある特定の癌のタイプまたは病期にとって高いレベルを成し得ることも認識するべきである。
【0127】
いくつかの態様において、TおよびB細胞の絶対数は、BD TrucountチューブおよびBD FACScantoフローサイトメーターも利用する6色直接免疫蛍光アッセイである、実証されたフローサイトメトリーベースの免疫表現型アッセイ(BD Mutitest 6-color TBNK Reagent)を用いて測定する。このアッセイは、末梢血におけるT、B、およびNK細胞、ならびにT細胞のCD4およびCD8亜集団のパーセンテージおよび絶対数を決定するために日常的に使用される。末梢血細胞には、最初にCD45+リンパ球にゲートをかける。T細胞は、このゲート内のCD3+細胞として定義され、B細胞はこのゲート内のCD19+ CD3-細胞として定義される。パーセンテージは、単純に、適切なゲートを設定した後にフローサイトメーターから直接取り、絶対数は、以下の式(BD手順マニュアルから直接取ったもの)を用いて算出する:[(細胞集団におけるイベント数/絶対数ビーズ領域におけるイベント数)][(ビーズ数/試験a)/試験体積]=細胞集団絶対数、式中、「a」は、BD Trucountチューブのホイル袋ラベル上に見出される価である。
【0128】
本明細書において記載される方法はまた、抗SEMA4D結合分子の代わりの抗プレキシン-B1結合分子の置換にも適用可能であることも認識されるべきである。いくつかの態様において、抗プレキシン-B1結合分子は、SEMA4Dのプレキシン-B1に対する結合を遮断することによって、および/またはSEMA4Dによるプレキシン-B1の活性化を予防することによって、SEMA4Dのプレキシン-B1との相互作用を阻害するために使用することができる。本明細書において記載される方法はまた、SEMA4Dまたはプレキシン-B1の活性を阻害するための低分子薬物または他の生物学的製品の使用にも適用可能であることも認識されるべきである。いくつかの態様において、抗SEMA4D結合分子以外の低分子薬物または生物学的製品を、SEMA4Dのプレキシン-B1に対する結合を遮断することによって、および/またはSEMA4Dによるプレキシン-B1の活性化を予防することによって、SEMA4Dのプレキシン-B1との相互作用を阻害するために使用することができる。
【0129】
1つの態様において、処置は、単剤としてのもしくは少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせでの、本明細書において記載されるような抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体もしくはその抗原結合断片の患者への適用もしくは投与、または、単剤としてのもしくは少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせでの、抗SEMA4D結合分子の、患者から単離された組織もしくは細胞株への適用もしくは投与を含み、該患者は、癌細胞の転移を有するか、またはそれを発症するリスクを有する。別の態様において、処置はまた、少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせでの、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体もしくはその抗原結合断片を含む薬学的組成物の患者への適用もしくは投与、または、抗SEMA4D結合分子および少なくとも1つの他の免疫調節療法を含む薬学的組成物の、患者から単離された組織もしくは細胞株への適用もしくは投与を含むようにも意図され、該患者は、癌細胞の転移を有するか、またはそれを発症するリスクを有する。
【0130】
単剤としてのまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせでの、本明細書において記載されるような抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体またはその結合断片は、種々の悪性および非悪性腫瘍の処置のために有用である。「抗腫瘍活性」により、腫瘍と直接、もしくは腫瘍環境の間質細胞と間接的に関連するSEMA4Dの産生もしくは蓄積の速度の低減、およびそれ故の既存の腫瘍もしくは治療中に生じる腫瘍の成長速度の低下、ならびに/または既存の新生物(腫瘍)細胞もしくは新たに形成された新生物細胞の破壊、およびそれ故の治療中の腫瘍の全体のサイズおよび/もしくは転移部位の数の減少が意図される。例えば、単剤としてのまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせでの、少なくとも1つの抗SEMA4D抗体での治療は、生理学的応答、例えば、転移の低減を引き起こし、ヒトにおいてSEMA4D発現細胞と関連する疾患状態の処置に関して有益である。
【0131】
1つの態様において、本開示は、癌の処置もしくは防御における、または、腫瘍細胞の成長もしくは転移を阻害、低減、予防、遅延、もしくは最小化する前癌状態もしくは病変における使用のための、単剤としてのまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせでの、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の薬剤としての使用に関連する。
【0132】
本開示の方法に従って、少なくとも1つの抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を、単剤としてまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせて、悪性ヒト細胞に関して正の治療応答を促進するために使用することができる。癌処置に関する「正の治療応答」により、これらの結合分子、例えば、抗体またはその断片の抗腫瘍活性などと関連する疾患の改善、および/または、疾患と関連する症候の改善が意図される。特に、本明細書において提供される方法は、患者において腫瘍の成長および/または原発腫瘍の転移の発症を阻害すること、予防すること、低減させること、緩和すること、遅延させること、または少なくすることに向けられる。すなわち、遠位の腫瘍増生の予防を観察することができる。従って、例えば、疾患の改善は、完全寛解として特徴づけることができる。「完全寛解」により、例えば、原発腫瘍、または骨髄における腫瘍転移の存在の部位での、いずれかの以前に異常のX線撮影研究の正常化を伴う、臨床的に検出可能な転移の欠如が意図される。あるいは、疾患の改善は、部分寛解であるとして分類することができる。「部分寛解」により、すべての測定可能な転移(すなわち、原発腫瘍から遠隔の部位に対象において存在する腫瘍細胞の数)の少なくとも約50%の減少が意図される。あるいは、疾患の改善は、無再発生存または「無進行生存」として分類することができる。「無再発生存」により、任意の部位での腫瘍の再出現までの時間が意図される。「無進行生存」とは、モニタリングされる部位での腫瘍のさらなる成長が検出され得る前の時間である。
【0133】
転移の阻害、遅延、または低減は、画像法、例えば、蛍光抗体画像法、骨スキャン画像法、および、骨髄吸引(BMA)を含む腫瘍生検採取、または免疫組織化学などのスクリーニング技術を用いて評価することができる。これらの正の治療応答に加えて、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体での治療を受けている対象は、疾患と関連する症候の改善の有益な効果を経験することができる。
【0134】
臨床応答は、磁気共鳴画像法(MRI)スキャン、x線撮影画像法、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、フローサイトメトリーまたは蛍光活性化細胞選別装置(FACS)解析、組織学、肉眼病理学、ならびに、ELISA、RIA、クロマトグラフィーなどによって検出可能な変化を含むがこれらに限定されない血液化学などのスクリーニング技術を用いて評価することができる。
【0135】
ある特定の態様における本開示の方法およびシステムを適用するために、患者由来の試料を、(1)セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量;または(2)セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、のいずれかを含む治療の、Her2+およびプレキシンB1+またはプレキシンB2+のいずれかである腫瘍を有する対象への施与の前または後に取得することができる。いくつかの場合には、経時的な試料を、治療が始まった後または治療が終わった後に、患者から取得することができる。試料は、例えば、医療提供者(例えば、医師)、または医療給付提供者が依頼することができ、同一のまたは異なる医療提供者(例えば、看護師、病院)または臨床検査室が取得および/または加工処理することができ、加工処理後、結果をさらに別の医療提供者、医療給付提供者、または患者に送付することができる。同様に、1つまたは複数のスコアの測定/決定、スコア間の比較、スコアおよび処置決定の評定を、1つまたは複数の医療提供者、医療給付提供者、および/または臨床検査室が行うことができる。
【0136】
本明細書において使用される際、「医療提供者」という用語は、生きている対象、例えばヒト患者と直接交流し、管理する個人または機関を指す。医療提供者の非限定的な例は、医師、看護師、技師、療法士、薬剤師、カウンセラー、代替の開業医、医療施設、医院、病院、救急室、診療所、緊急ケアセンター、代替の医療診療所/施設、ならびに、一般的な医学的、専門の医学的、外科的、および/または任意の他のタイプの処置、評価、維持、治療、投薬、および/または助言を含むがこれらに限定されない、患者の健康の状態の全部またはいずれかの部分に関する一般的および/または専門の処置、評価、維持、治療、投薬、および/または助言を提供する任意の他の実体を含む。
【0137】
いくつかの局面において、医療提供者は、(1)セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量;または(2)セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、のいずれかを含む治療であって、対象が、Her2+およびプレキシンB1+またはプレキシンB2+のいずれかである腫瘍細胞を有するか、または有する疑いがある、治療を施与するか、または施与するように別の医療提供者に指示することができる。医療提供者は、以下の行為を実施するか、または行うように別の医療提供者もしくは患者に指示することができる:試料を取得する、試料を加工処理する、試料を提出する、試料を受領する、試料を移送する、試料を解析または測定する、試料を定量化する、試料を解析/測定/定量化した後に得られた結果を提供する、試料を解析/測定/定量化した後に得られた結果を受領する、1つまたは複数の試料を解析/測定/定量化した後に得られた結果を比較/スコア化する、1つまたは複数の試料由来の比較/スコアを提供する、1つまたは複数の試料由来の比較/スコアを取得する、治療(例えば、対象に対する(1)セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量;または(2)セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量で、該対象が、Her2+およびプレキシンB1+またはプレキシンB2+のいずれかである腫瘍細胞を有するか、または有する疑いがある)を施与する、治療の施与を始める、治療の施与を終わる、治療の施与を継続する、治療の施与を一時的に中断する、投与される治療剤の量を増加させる、投与される治療剤の量を減少させる、治療剤の量の投与を継続する、治療剤の投与の頻度を増加させる、治療剤の投与の頻度を減少させる、治療剤について同一の投薬頻度を維持する、治療または治療剤を少なくとも別の治療または治療剤によって置換する、治療または治療剤を少なくとも別の治療または追加的な治療剤と組み合わせる。いくつかの局面において、医療給付提供者は、例えば、試料の収集、試料の加工処理、試料の提出、試料の受領、試料の移送、試料の解析もしくは測定、試料の定量化、試料を解析/測定/定量化した後に得られた結果の提供、試料を解析/測定/定量化した後に得られた結果の移送、1つもしくは複数の試料を解析/測定/定量化した後に得られた結果の比較/スコア化、1つもしくは複数の試料由来の比較/スコアの移送、治療もしくは治療剤の投与、治療もしくは治療剤の投与の開始、治療もしくは治療剤の投与の中止、治療もしくは治療剤の投与の継続、治療もしくは治療剤の投与の一時的な中断、投与される治療剤の量の増加、投与される治療剤の量の減少、治療剤の量の投与の継続、治療剤の投与の頻度の増加、治療剤の投与の頻度の減少、治療剤について同一の投薬頻度を維持すること、治療もしくは治療剤を少なくとも別の治療もしくは治療剤によって置換すること、または、治療もしくは治療剤を少なくとも別の治療もしくは追加的な治療剤と組み合わせることを、是認または否認することができる。
【0138】
さらに、医療給付提供者は、例えば、治療の処方を是認または否認する、治療の適用範囲を是認または否認する、治療の費用についての償還を是認または否認する、治療の適格性を判定または否認する、などをすることができる。
【0139】
いくつかの局面において、臨床検査室は、例えば、試料を収集もしくは取得する、試料を加工処理する、試料を提出する、試料を受領する、試料を移送する、試料を解析もしくは測定する、試料を定量化する、試料を解析/測定/定量化した後に得られた結果を提供する、試料を解析/測定/定量化した後に得られた結果を受領する、1つもしくは複数の試料を解析/測定/定量化した後に得られた結果を比較/スコア化する、1つもしくは複数の試料由来の比較/スコアを提供する、1つもしくは複数の試料由来の比較/スコアを取得する、または、他の関連した活動をする、ことができる。
【0140】
VI.診断および処置の方法
ある特定の態様において、本開示は、B細胞、T細胞、またはB細胞およびT細胞の両方のいずれかの高いレベルを有する対象、例えば癌患者を処置する方法であって、該対象のB細胞、T細胞、もしくはB細胞およびT細胞の両方のレベルが、B細胞、T細胞、もしくはB細胞およびT細胞の両方のあらかじめ決定された閾値レベルを上回るか、または、他の癌患者由来もしくは健康な非癌患者由来の試料を含み得るがこれらに限定されない1つもしくは複数の対照試料における、B細胞、T細胞、もしくはB細胞およびT細胞の両方のレベルと比べて高い場合に、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量と、少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量との組み合わせを投与する段階を含む方法を提供する。B細胞、T細胞、またはB細胞およびT細胞のレベルは、医療提供者、または臨床検査室が測定することができ、試料、例えば血液試料は、医療提供者または臨床検査室のいずれかが、患者から取得する。1つの局面において、B細胞、T細胞、またはB細胞およびT細胞の両方の患者のレベルは、サイトメトリーベースの免疫表現型アッセイにおいて測定することができる。
【0141】
ある特定の態様において、本開示はまた、対象、例えば癌患者を処置する方法であって、該対象の腫瘍細胞から取った試料におけるHer2およびプレキシンB1もしくはプレキシンB2のいずれかの発現が、あらかじめ決定された閾値レベルを上回るか、または、1つもしくは複数の対照試料におけるHer2およびプレキシンB1もしくはプレキシンB2のいずれかの発現と比べて高い場合に、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量を該対象に投与する段階を含む方法も提供する。対象の腫瘍細胞におけるHer2、プレキシンB1、および/またはプレキシンB2の発現は、医療提供者または臨床検査室が、タンパク質レベルでおよび/またはmRNAレベルで測定することができる。ある特定の局面において、Her2、プレキシンB1、および/またはプレキシンB2の発現を、インサイチュで、例えば、画像化技術を介して測定することができる。ある特定の局面において、Her2、プレキシンB1、および/またはプレキシンB2の発現を、生検を介して対象から取得された腫瘍細胞試料において測定することができる。1つの局面において、腫瘍細胞におけるHer2、プレキシンB1、および/またはプレキシンB2の発現を、Her2、プレキシンB1、および/またはプレキシンB2タンパク質を認識する抗体またはその抗原結合断片、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を使用する免疫アッセイにおいて測定することができる。別の局面において、Her2、プレキシンB1、および/またはプレキシンB2の発現は、定量的遺伝子発現アッセイ、例えばRT-PCRアッセイを介して測定することができる。
【0142】
本開示はまた、Her2+およびプレキシンB1+またはプレキシンB2+いずれかである腫瘍細胞を有するか、または有する疑いがある対象、例えば癌患者が、(1)セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量;または(2)セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、のいずれかでの処置から恩恵を受けるかどうかの、医療提供者、医療給付提供者、または臨床検査室による判定を促進するための方法、アッセイ、およびキットも提供する。本明細書において提供される方法、アッセイ、およびキットはまた、対象、例えば癌患者が、(1)セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量;または(2)セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量(例えば、該対象の腫瘍細胞は、Her2およびプレキシンB1またはプレキシンB2のいずれかを発現するか、または発現すると判定され得る)での処置から恩恵を受けるかどうかの、医療提供者、医療給付提供者、または臨床検査室による判定も促進するであろう。
【0143】
本開示は、対象、例えば癌患者を処置する方法であって、該患者から取った試料におけるB細胞、T細胞、もしくはT細胞およびB細胞のレベルが、あらかじめ決定された閾値レベルを上回るか、または、1つもしくは複数の対照試料におけるB細胞、T細胞、もしくはT細胞およびB細胞のレベルを上回る場合に、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量を投与する段階を含む方法を提供する。いくつかの局面において、試料を、患者から取得し、試料におけるB細胞、T細胞、またはT細胞およびB細胞のレベルの測定のために、例えば臨床検査室に提出する。
【0144】
対象、例えば癌患者を処置する方法であって、(a)該対象から取った試料を、該試料におけるB細胞、T細胞、またはT細胞およびB細胞のレベルの測定のために提出する段階;ならびに、(b)該対象のB細胞、T細胞、もしくはT細胞およびB細胞のレベルが、あらかじめ決定された閾値レベルを上回るか、または1つもしくは複数の対照試料におけるB細胞、T細胞、もしくはT細胞およびB細胞のレベルを上回る場合に、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量を該対象に投与する段階を含む方法もまた、提供される。
【0145】
本開示はまた、対象、例えば癌患者を処置する方法であって、(a)対象、例えば癌患者から取得した試料におけるB細胞、T細胞、またはT細胞およびB細胞のレベルを測定する段階で、該試料における該対象のB細胞、T細胞、またはT細胞およびB細胞のレベルを、例えば、サイトメトリーベースの免疫表現型アッセイにおいて測定する段階;(b)該試料におけるB細胞、T細胞、もしくはT細胞およびB細胞のレベルが、あらかじめ決定された閾値レベルを上回るか、または1つもしくは複数の対照試料におけるB細胞、T細胞、もしくはT細胞およびB細胞のレベルを上回るかどうかを判定する段階;ならびに、(c)該対象のB細胞、T細胞、もしくはT細胞およびB細胞のレベルが、あらかじめ決定された閾値レベルを上回るか、または1つもしくは複数の対照試料におけるB細胞、T細胞、もしくはT細胞およびB細胞のレベルを上回る場合に、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量を該対象に投与するように、医療提供者に助言、指示、または是認する段階を含む方法も提供する。
【0146】
いくつかの局面において、対象のB細胞、T細胞、またはT細胞およびB細胞のレベルは、サイトメトリーベースの免疫表現型アッセイにおいて測定することができる。ある特定の局面において、アッセイは、対象から取得した試料に対して、患者を処置する医療従事者が、例えば、「ポイント・オブ・ケア」診断キットとして製剤化されている、本明細書において記載されるようなアッセイを用いて行うことができる。いくつかの局面において、試料を、対象から取得することができ、本明細書において記載されるようなサイトメトリーベースの免疫表現型アッセイを用いることを含むがこれに限定されない医療従事者の指示に従う、試料におけるB細胞、T細胞、またはT細胞およびB細胞のレベルの測定のために、例えば臨床検査室に提出することができる。ある特定の局面において、アッセイを行う臨床検査室は、対象のB細胞、T細胞、もしくはT細胞およびB細胞のレベルが、あらかじめ決定された閾値レベルを上回るか、または1つもしくは複数の対照試料におけるB細胞、T細胞、もしくはT細胞およびB細胞のレベルを上回る場合に、対象が、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子の有効量、および少なくとも1つの他の免疫調節療法の有効量での処置から恩恵を受け得るかどうかを、医療提供者または医療給付提供者に助言することができる。
【0147】
ある特定の局面において、本明細書において提供されるような免疫アッセイの結果を、患者の保険が、セマフォリン-4D(SEMA4D)に特異的に結合する単離された結合分子、および少なくとも1つの他の免疫調節療法での処置をカバーするかどうかの判定のために、医療給付提供者に提出することができる。
【0148】
VII.薬学的組成物および投与法
抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を、単剤としてまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせて、調製する方法、およびこれらを必要とする対象に投与する方法は、当業者に周知であるか、または当業者によって容易に決定される。単剤としてのまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせでの、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の投与の経路は、各治療剤について同一の時間または異なる時間に、例えば、経口であるか、非経口であるか、吸入によるか、または局所であることができる。本明細書において使用される非経口という用語は、例えば、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、または膣投与を含む。投与のこれらの形態のすべてが、本開示の範囲内であると明らかに企図されるが、投与のための形態の例は、注射用、特に、静脈内または動脈内の注射または点滴用の溶液であろう。注射に適した薬学的組成物は、緩衝剤(例えば、酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、またはクエン酸緩衝剤)、界面活性剤(例えばポリソルベート)、任意で安定剤(例えばヒトアルブミン)などを含むことができる。しかしながら、本明細書における教示と適合する他の方法において、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を、単剤としてまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせて、有害な細胞集団の部位に直接送達し、それにより患部組織の治療剤への曝露を増加させることができる。
【0149】
本明細書において議論される際、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、単剤としてまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせて、固形腫瘍を含む新生物障害などの疾患のインビボ処置のための薬学的有効量で投与することができる。この点において、開示される結合分子を、活性剤の投与を容易にし、かつその安定性を促進するように製剤化できることが、認識されるであろう。ある特定の態様において、本開示に従う薬学的組成物は、生理食塩水、非毒性緩衝剤、保存薬などのような、薬学的に許容される非毒性の滅菌担体を含む。本出願の目的で、単剤としてのまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせでの抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の薬学的有効量は、標的に対する有効な結合を達成するため、および有益性を達成するため、すなわち、癌患者において転移を阻害、遅延、または低減させるために十分な量を意味するように保たれるべきである。
【0150】
本開示において使用される薬学的組成物は、例えば、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリラート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂を含む、薬学的に許容される担体を含む。
【0151】
非経口投与のための調製物は、滅菌の水性または非水性の溶液、懸濁液、および乳濁液を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体は、例えば、水、食塩水および緩衝媒体を含むアルコール性/水性溶液、乳濁液、または懸濁液を含む。薬学的に許容される担体は、0.01~0.1 Mもしくは0.05 Mのリン酸緩衝液または0.8%の食塩水を含みうるが、これらに限定されない。他の一般的な非経口賦形剤は、リン酸ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガー溶液、または固定油を含む。静脈内賦形剤は、リンガーデキストロースに基づくものなどのような、流体および栄養補液、電解質補液を含む。例えば、抗微生物薬、抗酸化薬、キレート剤、および不活性ガスなどのような保存薬および他の添加物もまた、存在しうる。
【0152】
より詳細に、注射可能な使用に適した薬学的組成物は、滅菌の注射可能な溶液または分散液の即時調製のための滅菌水性溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌粉末を含む。そのような場合に、組成物は滅菌であり得、かつ、易注射性(easy syringability)が存在する程度に流動性であるべきである。組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されうる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適当な混合物を含有する、溶媒または分散媒であることができる。妥当な流動性を、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には特定の粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。本明細書において開示される治療法における使用に適した製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co.) 16th ed. (1980)に記載されている。
【0153】
微生物の作用の予防は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成することができる。ある特定の態様において、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを組成物中に含めることができる。注射可能な組成物の長期の吸収を、組成物中に吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによりもたらすことができる。
【0154】
いずれの場合にも、滅菌の注射可能な溶液を、活性化合物を(例えば、抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体をそれ自体で、または少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせて)、本明細書において列挙される成分の1つまたは組み合わせを有する適切な溶媒中に特定の量で組み入れ、その後濾過滅菌することにより、調製することができる。概して、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒および上記で列挙されるもの由来の他の成分を含有する滅菌賦形剤中に組み入れることにより、調製する。滅菌の注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製法は、真空乾燥または凍結乾燥を含み得、活性成分に加えて任意の追加的な望ましい成分の粉末を、事前に濾過滅菌したその溶液から生じうる。注射用の調製物を、当技術分野において公知である方法に従って無菌的条件下で、加工処理し、アンプル、袋、瓶、シリンジ、またはバイアルなどの容器中に満たし、密封する。さらに、調製物を、キットの形態でパッケージングして、販売してもよい。そのような製造品は、付随する組成物が、疾患または障害を患うかまたはその素因を有する対象を処置するために有用であることを示す、標識またはパッケージ挿入物を有することができる。
【0155】
非経口製剤は、単回ボーラス用量、注入、またはその後維持用量が続く負荷ボーラス用量であることができる。これらの組成物は、特異的な固定された間隔もしくは可変の間隔で、例えば1日に1回、または「必要に応じて」随時、投与することができる。
【0156】
ある特定の薬学的組成物は、例えば、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液、または溶液を含む許容される剤形において経口投与することができる。ある特定の薬学的組成物はまた、鼻エアロゾルまたは吸入によっても投与することができる。そのような組成物は、ベンジルアルコールまたは他の適当な保存薬、生物学的利用能を増強するための吸収促進剤、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、食塩水中の溶液として調製することができる。
【0157】
単一剤形を産生するために担体材料と組み合わされるべき、単剤としてのまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせての抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその断片、変異体、もしくは誘導体の量は、処置される宿主、および投与の特定の様式に応じて変動すると考えられる。組成物は、単一用量として、複数用量として、または確立された期間にわたって注入において投与することができる。投薬レジメンはまた、最適な望ましい応答(例えば、治療応答または防御応答)を提供するように調整することもできる。
【0158】
本開示の範囲に沿って、単剤としてのまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせての抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を、前述の処置の方法に従って治療効果を生じるのに十分な量で、ヒトまたは他の動物に投与することができる。単剤としてのまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせての抗SEMA4D抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体は、公知の技術に従って、本明細書中に提供される抗体を従来の薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることにより調製された従来の剤形において、そのようなヒトまたは他の動物に投与することができる。薬学的に許容される担体または希釈剤の形態および特徴は、それと組み合わされるべき活性成分の量、投与の経路、および他の周知の変数により規定されることが、当業者により認識されるであろう。当業者はさらに、本明細書中に提供される抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の1つまたは複数の種を含むカクテルを使用できることを、認識するであろう。
【0159】
「治療的有効用量もしくは量」または「有効量」により、投与された際に、処置されるべき疾患を有する患者の処置に関して正の治療応答、例えば、患者における転移の阻害、遅延、または低減をもたらす、単剤としてのまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせでの、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の量が意図される。
【0160】
転移の阻害、遅延、または低減のための、本開示の組成物の治療的有効用量は、投与の手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるかまたは動物であるか、投与される他の薬剤、および処置が防御的であるかまたは治療的であるかを含む、多くの異なる要因に応じて変動する。ある特定の態様において、患者はヒトであるが、遺伝子導入哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物もまた、処置することができる。処置投薬量を、安全性および効力を最適化するために、当業者に公知である日常的な方法を用いて滴定することができる。
【0161】
単剤としてまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせて投与される、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその結合断片、変異体、もしくは誘導体の量は、本開示の開示を考慮して過度の実験を伴わずに、当業者が容易に決定する。投与の様式、および、単剤としてまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせて投与されるべき抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、その抗原結合断片、変異体、または誘導体のそれぞれの量に影響を及ぼす要因は、疾患の重症度、疾患の履歴、転移の可能性、ならびに治療を受ける個体の年齢、身長、体重、健康、および身体状態を含むが、これらに限定されない。同様に、投与されるべき、単剤としてのまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせでの、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその断片、変異体、もしくは誘導体の量は、投与の様式、および、対象がこの剤の単一用量を受けるかまたは複数用量を受けるかに依存するであろう。
【0162】
本開示はまた、癌を有する対象を処置するための薬剤であって、少なくとも1つの他の療法で前処置されている対象において使用される薬剤の製造における、単剤としてのまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法との組み合わせでの、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体の使用も提供する。「前処置される」または「前処置」により、対象が、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を、単剤としてまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせて含む薬剤を受ける前に、1つまたは複数の他の治療を受けている(例えば、少なくとも1つの他の癌治療で処置されている)ことが意図される。「前処置される」または「前処置」とは、抗SEMA4D結合分子、例えば、本明細書において開示されるモノクローナル抗体VX15/2503、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を、単剤としてまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせて含む薬剤での処置の開始の前の2年以内、18か月以内、1年以内、6か月以内、2か月以内、6週間以内、1か月以内、4週間以内、3週間以内、2週間以内、1週間以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、またはさらに1日以内に、少なくとも1つの他の治療で処置されている対象を含む。対象が、1つまたは複数の先の治療での前処置に対してレスポンダーであったことは必要ではない。従って、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を、単剤としてまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせて含む薬剤を受ける対象は、先の治療での前処置に対して、または前処置が複数の治療を含んだ先の治療の1つもしくは複数に対して、応答していてもよく、または応答できていなくてもよい(癌が治療抵抗性であったなど)。対象が、抗SEMA4D結合分子、例えば、抗体、またはその抗原結合断片、変異体、もしくは誘導体を、単剤としてまたは少なくとも1つの他の免疫調節療法と組み合わせて含む薬剤を受ける前に、前処置を受けていることができる他の癌治療の例は、外科手術;放射線療法;任意で自己骨髄移植と組み合わせ、適した化学療法剤が、本明細書において上記で列挙されているものを含むがこれらに限定されない、化学療法;他の抗癌モノクローナル抗体療法;本明細書において上記で列挙されている低分子を含むがこれらに限定されない、低分子ベースの癌治療;ワクチン/免疫療法ベースの癌治療;ステロイド療法;他の癌治療;または任意のこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0163】
本開示の実施は、別の方法で指示されない限り、当技術分野の技能内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子導入生物学、微生物学、組み換えDNA、および免疫学の従来の技術を使用するであろう。そのような技術は、文献において完全に説明されている。例えば、Sambrook et al., ed. (1989) Molecular Cloning A Laboratory Manual (2nd ed.; Cold Spring Harbor Laboratory Press);Sambrook et al., ed. (1992) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (Cold Springs Harbor Laboratory, NY);D. N. Glover ed., (1985) DNA Cloning, Volumes I and II;Gait, ed. (1984) Oligonucleotide Synthesis;Mullis et al. 米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins, eds. (1984) Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins, eds. (1984) Transcription And Translation;Freshney (1987) Culture Of Animal Cells (Alan R. Liss, Inc.);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press) (1986);Perbal (1984) A Practical Guide To Molecular Cloning;論文であるMethods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);Miller and Calos eds. (1987) Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells, (Cold Spring Harbor Laboratory);Wu et al., eds., Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155;Mayer and Walker, eds. (1987) Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Academic Press, London);Weir and Blackwell, eds., (1986) Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV;Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1986);およびAusubel et al. (1989) Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons, Baltimore, Md.)を参照されたい。
【0164】
抗体工学の一般原理は、Borrebaeck, ed. (1995) Antibody Engineering (2nd ed.; Oxford Univ. Press)に示されている。タンパク質工学の一般原理は、Rickwood et al., eds. (1995) Protein Engineering, A Practical Approach (IRL Press at Oxford Univ. Press, Oxford, Eng.)に示されている。抗体および抗体-ハプテン結合の一般原理は、Nisonoff (1984) Molecular Immunology (2nd ed.; Sinauer Associates, Sunderland, Mass.);およびSteward (1984) Antibodies, Their Structure and Function (Chapman and Hall, New York, N.Y.)に示されている。さらに、当技術分野において公知であり、かつ具体的に記載されていない免疫学における標準的な方法は、概して、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York;Stites et al., eds. (1994) Basic and Clinical Immunology (8th ed; Appleton & Lange, Norwalk, Conn.)、およびMishell and Shiigi (eds) (1980) Selected Methods in Cellular Immunology (W.H. Freeman and Co., NY)におけるように従う。
【0165】
免疫学の一般原理を示す標準的な参照著作物は、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York;Klein (1982) J., Immunology: The Science of Self-Nonself Discrimination (John Wiley & Sons, NY);Kennett et al., eds. (1980) Monoclonal Antibodies, Hybridoma: A New Dimension in Biological Analyses (Plenum Press, NY);Campbell (1984) "Monoclonal Antibody Technology" in Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, ed. Burden et al., (Elsevere, Amsterdam);Goldsby et al., eds. (2000) Kuby Immunnology (4th ed.; H. Freemand & Co.);Roitt et al. (2001) Immunology (6th ed.; London: Mosby);Abbas et al. (2005) Cellular and Molecular Immunology (5th ed.; Elsevier Health Sciences Division);Kontermann and Dubel (2001) Antibody Engineering (Springer Verlan);Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press);Lewin (2003) Genes VIII (Prentice Hall2003);Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press);Dieffenbach and Dveksler (2003) PCR Primer (Cold Spring Harbor Press)を含む。
【0166】
上記で引用された参照文献のすべて、および本明細書において引用されるすべての参照文献は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0167】
以下の実施例は、例証として提供され、限定としては提供されない。
【実施例
【0168】
実施例1:免疫能を有するマウスにおいて腫瘍成長を遅延させる、抗SEMA4D抗体の能力の試験
実験設計
基本的な実験設計は、以下のようである。Colon26腫瘍細胞を、0.2ml食塩水において、同系の免疫能を有するBalb/cマウス(5×105細胞)または免疫不全のSCIDマウス(1×105細胞)の側腹部の皮下に移植した。対照Ig 2B8または抗SEMA4D Ab 67での処置を、腫瘍移植後の2日目に開始した。マウス(n=20)を、腹腔内(IP)注射により、毎週2回、各々1.0 mg(およそ50 mg/kg)のモノクローナル抗体で処置した。腫瘍を、移植の3日後から開始して週に3回、カリパスで測定した。マウスを、3日目に始めて週に2回、秤量した。動物を、腫瘍体積が1000 mm3に達した時に屠殺した。
【0169】
抗SEMA4D処置は、能力のある免疫系を有するマウスにおいて腫瘍成長を遅延させた。腫瘍成長を、カリパスによって測定し、測定値を、式(w2×l)/2(式中、w=腫瘍の幅、より小さな測定値、およびl=mmでの長さ)を用いて腫瘍体積を算出するために使用した。平均腫瘍体積(図1A)、および腫瘍体積=1000 mm3の終点までの時間として定義されるカプラン・マイヤー生存曲線(図1B)を、図1Aおよび図1Bに示す。統計学的解析を、それぞれ、二元配置分散分析(ANOVA)およびログランク解析を用いて実施し、Balb/cマウスにおける抗SEMA4D抗体での統計学的に有意な処置効果を示した。
【0170】
二十九パーセント(29%)の腫瘍成長遅延が、Balb/cマウスにおいて達成されたが、処置に関連した腫瘍増殖遅延は、SCIDマウスにおいて観察されなかった。腫瘍成長遅延(TGD)は、対照群と比較した、処置群における中央の終点までの時間(TTE)の増大として定義される:%TGD‐[(T-C)/C]×100(式中、T=処置群についての中央TTE、C=対照群についての中央TTE)。抗SEMA4D抗体67で処置したBalb/c動物は、屠殺時の原発腫瘍体積において、対照動物を超える統計学的に有意な低減を示した(P<0.0001)。この知見により、抗SEMA4D抗体は、能力のある免疫系を有するマウスにおいて腫瘍成長を遅延させるのに有効であったが、免疫不全マウスにおいては有効でなかったことが示される。
【0171】
実施例2:CD8+エフェクターT細胞の存在下で腫瘍成長を遅延させる、抗SEMA4D抗体の能力の試験
実験設計
Colon26腫瘍細胞を、Balb/cマウスの側腹部の皮下に移植した(0.2ml食塩水において、5×105細胞)。抗CD8枯渇化抗体(クローン2.43、BioXCell)または対照ラットIg(クローンLTF-2、BioXCell)(150 mg/kg)を、腹腔内(IP)注射により、-1、0、1、11日目およびその後毎週、投与した。対照Ig 2B8または抗SEMA4D Ab 67での処置を、2日目に開始した。マウス(n=20)を、腹腔内注射により、毎週2回、1.0 mg(およそ50 mg/kg)のモノクローナル抗体で処置した。腫瘍を、移植の3日後に始めて週に3回、カリパスで測定した。動物を、対照群の平均腫瘍体積が1000 mm3に達した時、ラットIg処置群については30日目に、抗CD8処置群については26日目に屠殺した。
【0172】
抗SEMA4D処置は、CD8+ Tリンパ球の存在下で腫瘍成長を遅延させた。腫瘍体積を、式(w2×l)/2(式中、w=腫瘍の幅、より小さな測定値、およびl=mmでの長さ)を用いて、カリパスにより測定した。腫瘍体積における統計学的差を、抗体処置群を対照Ig 2B8群と比較する両側の一元配置分散分析(ANOVA)を用いて決定した。平均腫瘍体積を、図2に示す。
【0173】
腫瘍成長の阻害も決定した。腫瘍成長阻害(TGI)は、以下の式:%TGI=1-[(Tf-Ti)/平均(Cf-Ci)]を用いて測定し;報告される%TGIは、各処置腫瘍についての%TGIの平均である。腫瘍体積における統計学的差を、処置群を対照2B8群と比較する両側の一元配置分散分析(ANOVA)およびその後のダネットの多重比較検定を用いて決定した。三十パーセント(30%)の腫瘍成長阻害が、抗SEMA4D抗体での処置後に達成されたが、CD8+ T細胞を枯渇化させた際には、処置に関連した効果は観察されなかった。これらの結果により、抗SEMA4Dでの腫瘍成長阻害は、CD8+エフェクターT細胞の存在に依存したことが示される。
【0174】
実施例3:腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の密度を増大させる、抗SEMA4D抗体の能力の試験
実験設計
Colon26腫瘍細胞を、Balb/cマウスの側腹部の皮下に移植した(0.2ml食塩水において、5×105細胞)。対照Ig 2B8または抗SEMA4D Ab 67での処置を、2日目に開始した(50 mg/kg IP、毎週2回、n=10)。腫瘍を、移植の3日後に始めて週に3回、カリパスで測定した。動物を、27日目に、対照群の平均腫瘍体積が1000 mm3に達した時、屠殺した。周囲の間質および皮膚を含む腫瘍を収集して、24時間ホルマリン中で固定し、その後、70%エタノールに移した。試料をその後、パラフィン包埋のために加工処理し、結果として生じたブロックから、5ミクロンの切片を切り出した。
【0175】
隣接する切片を、以下の方法を用いて、Sema4D、CD8、およびCD20について染色した:
a.Sema4D検出のために、スライドを60℃で1時間焼き、その後、キシレンおよび段階的なエタノール浴を通して脱パラフィンおよび再水和させた。エピトープ回復を、Target Retrieval Solution(Dako, Carpinteria, CA)との20分の煮沸およびその後の30分の冷却によって実施した。スライドを、0.05% Tween-20を含有するPBS(TPBS)で2回洗浄し、その後、内在性のペルオキシダーゼを、Dual Enzyme Block(Dako, Carpinteria, CA)での10分のブロッキングで不活性化した。スライドを、TPBSで2回洗浄し、その後、非特異的な結合を、TPBS中の2.5%正常ヤギ血清との20分のインキュベーションによってブロッキングした。1回のTPBS洗浄の後、スライドを、60分間、TPBS中の2μg/mlのウサギ抗Sema4Dとインキュベーションし、その後、2回TPBSで洗浄した。スライドをその後、Envision HRP標識ヤギ抗ウサギポリマー(Dako, Carpinteria, CA)と20分間インキュベーションし、その後、TPBSでの2回の洗浄、および5分のDAB+インキュベーション(Dako, Carpinteria, CA)を行った。切片を、ハリスヘマトキシリンで対比染色し、脱染し、水道水で青色にし、脱水し、Permountで非水性封入した。
b.CD8を、上記の方法を用いるが、市販のウサギポリクローナル抗体(Abbiotec)を2μg/mlで用いて、検出した。
c.CD20を、上記の方法を用いるが、ブロッキングのために正常ロバ血清を用い、ヤギ抗CD20一次抗体(Santa Cruz)を1μg/mlで用いて、その後、HRP標識抗ヤギ抗体(Golden Bridge)との20分のインキュベーションを行って、検出した。
d.スライドを、Olympus I×50顕微鏡に連結したRetiga QICAM-12ビットカメラを用いて、20×の倍率で画像化した。
【0176】
抗SEMA4D処置は、腫瘍浸潤免疫細胞(TIL)の頻度を増大させた。免疫細胞密度を、腫瘍全体の切片をスキャンし、CD8+またはCD20+腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の面積を定量化し、その後、全腫瘍面積に対して正規化することによって、測定した。群あたり9匹(対照Ig)または10匹(抗SEMA4D Ab 67)のマウス由来の切片を、解析に使用した。統計学的有意性を、対応のない両側T検定を用いて95%CIで、CD8およびCD20について算出した。
【0177】
抗SEMA4D抗体67でのColon26腫瘍の処置は、対照群と比較した際に、CD8+ T細胞密度およびCD20+ T細胞密度の両方の増大を結果としてもたらした。CD20+ T細胞の密度の増大は、0.0388のP値で、95%で統計学的に有意であった。CD8+ T細胞の密度の増大は、傾向を示したが、統計学的に有意ではなかった。これらの知見により、Colon26腫瘍の抗SEMA4D処置は、腫瘍浸潤免疫細胞の頻度の増大を結果としてもたらしたことが示される。結果を、図3Aおよび図3Bにグラフで示す。
【0178】
実施例4:腫瘍の前縁でM1およびM2マクロファージサブセットならびにCD8+ T細胞の遊走および分布に影響を及ぼす、抗SEMA4D抗体の能力の試験
抗SEMA4D処置は、腫瘍の前縁でマクロファージおよびCD8+ T細胞の分布を変化させた。腫瘍内のM1およびM2の密度を決定するために、マクロファージ分布を、腫瘍全体の切片をスキャンし、M1(2μg/mlのAlexa647結合ラット抗F4/80(Biolegend, クローンBM8)で染色する)およびM2(2μg/mlのビオチン結合ラット抗CD206(Biolegend, クローンC068C2)で染色する)の面積を定量化し、その後、全腫瘍面積に対して正規化することによって、測定した。群あたり9匹(対照Ig)または10匹(抗SEMA4D Ab 67)の処置したマウス由来の切片を、解析に使用した。腫瘍が成長する前部における細胞密度を決定するために、300ピクセル幅の領域(250ミクロン)を、腫瘍の縁から定義した。M1およびM2についての統計学的有意性を、一元配置ANOVAを用いてクラスカル・ワリス検定およびダンのポストホック検定で、95%CIで算出した。腫瘍の前縁に対して正規化したM1マクロファージの密度の変化は、有意であった。
【0179】
CD8+ T細胞数を、抗CD8抗体(Abbiotec, カタログ番号250596, 1:250)およびDAB検出システムで染色した全腫瘍切片において測定した。腫瘍全体の切片におけるCD8+イベントの数を、Imagepro Softwareを用いて陽性シグナルについて閾値化した後に列挙した。各動物についてのCD8+密度を、CD8+イベントの数を全腫瘍ピクセル面積で割ることによって算出した。2B8およびmAb67で処置した動物(n=10)におけるCD8+ T細胞分布に到達するように、個々のCD8密度を平均化した。統計学的有意性を、一元配置ANOVAを用いてクラスカル・ワリス検定およびダンのポストホック検定で、95%CIで算出した。
【0180】
SEMA4D分布を、Ab 67によって認識されるものとは別個のエピトープに対する抗体でSEMA4Dについて染色した腫瘍全体の切片をスキャンし、Sema4D分布について解析することによって、測定した。群あたり9匹(対照Ig)または10匹(抗SEMA4D Ab 67)の処置したマウス由来の切片を、解析に使用した。
【0181】
Colon26腫瘍細胞は、インビトロで培養した際には低レベルのSEMA4Dを発現していたが、インビボで腫瘍の前縁でSEMA4Dを上方制御した。これにより、腫瘍の周辺部で高濃度を有するSEMA4D発現の勾配の確立がもたらされる。抗SEMA4D抗体での処置は、SEMA4Dを中和し、発現の勾配を破壊した。これは、図4Aに示されるように、マクロファージの遊走および分布における著しい変化を結果としてもたらした。特に、抗SEMA4D Ab 67で処置した腫瘍は、図4Bに示されるように、腫瘍の前縁でM1+炎症誘発性マクロファージのより高いレベルを有していた。M1+マクロファージの増加は、統計学的に有意であった。抗SEMA4D Ab 67で処置した腫瘍はまた、図4Cに示されるように、腫瘍の前縁で腫瘍誘発性M2マクロファージの頻度の減少も示した。これらの知見により、抗SEMA4D Ab 67での処置が、腫瘍の前縁で腫瘍阻害性マクロファージ、すなわちM1の密度を増大させ、他方で、その同一領域において腫瘍促進マクロファージ、すなわちM2の存在を減少させるように、マクロファージ分布を変化させたことが示された。さらに、これらの知見により、図4Dに示されるように、MAb 67で処置したマウスから単離された腫瘍内のCD8+ T細胞密度の全体の増大が示された。これらの知見により、MAb 67-2でのSEMA4Dの中和は、高度に増殖している腫瘍細胞の帯域への抗腫瘍M1マクロファージの侵入、および、帯域全体にわたり、かつ前縁へと延びるCD8+ T細胞の侵入を促進する(差し込み図)ことが示唆される。
【0182】
実施例5:抗CTLA4抗体と組み合わせて使用した際の、マウスにおいて腫瘍成長を遅延させる抗SEMA4D抗体の能力の試験
実験設計
5×105個のColon26腫瘍細胞を、雌のBalb/cマウスの側腹部の皮下に移植した。対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2での処置を、抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11(腫瘍接種後、8日目に100μg、11および14日目に50μg)を伴うかまたは伴わずに、接種の1日後に開始した(50 mg/kg、IP、毎週×5)。抗PD1/RMP1-14での処置を、抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11と組み合わせて、接種の1日後に開始した(3日目に100μg、毎週2回)。群あたり20匹のマウスがいた。腫瘍を、移植の5日後に始めて、週に2回、カリパスで測定した。動物を、腫瘍体積が1000 mm3に達した時に屠殺した。
【0183】
抗SEMA4D抗体および抗CTLA4抗体の組み合わせは、マウスにおいて腫瘍成長を遅延させた。腫瘍成長を、カリパスによって測定し、測定値を、式(w2×l)/2(式中、w=腫瘍の幅、より小さな測定値、およびl=mmでの長さ)を用いて腫瘍体積を算出するために使用した。平均腫瘍体積、および腫瘍体積=1000 mm3の終点までの時間として定義されるカプラン・マイヤー生存曲線を、それぞれ、図5Aおよび図5Bに示す。統計学的解析を、それぞれ、二元配置分散分析(ANOVA)およびログランク解析を用いて実施し、抗SEMA4D抗体(9%腫瘍成長遅延、TGD**)および抗CTLA4抗体(2% TGD、ns)での統計学的に有意な処置効果、ならびに、抗SEMA4D抗体および抗CTLA4抗体の組み合わせでの腫瘍成長遅延の非常に有意な増大(最大TGD、114%****)を示した。応答は、少なくとも60日間耐久性があった。
【0184】
Colon26腫瘍モデルにおける腫瘍退縮の頻度も、決定した。退縮とは、触診可能な腫瘍の欠如であり、少なくとも2回の連続した測定について50 mm3よりも小さい測定値である腫瘍によって定義される。図5Cに示されるように、抗SEMA4D抗体および抗CTLA4抗体の組み合わせは、Colon26腫瘍モデルにおいて退縮の数を増大させる。併用療法(抗SEMA4D抗体+抗CTLA4抗体)についての退縮は、フィッシャーの直接確率検定によって判定した際に、対照Igと比較して統計学的に有意であり(p<0.0001)、かつ抗CTLA4単独療法または抗SEMA4D単独療法と比較して統計学的に有意である(p=0.0022)。重要なことに、これらの知見により、抗SEMA4D抗体および抗CTLA4抗体の組み合わせは相乗的であり:すなわち、組み合わせは、抗SEMA4D抗体単独または抗CTLA4抗体単独での処置よりも有意により有効であり、耐久性がある腫瘍退縮の頻度の増大を結果としてもたらしたことが示される。さらに、これらの結果により、抗SEMA4D抗体および抗CTLA4抗体の組み合わせは、抗PD1および抗CTLA4の組み合わせと少なくとも同様に有効、またはそれより良好であることが実証される。
【0185】
抗SEMA4D抗体での処置が、腫瘍反応性CTL活性を増大させ、また抗CTLA4媒介性CTL活性も増強することが、さらに決定された。腫瘍特異的な腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の頻度および炎症誘発性サイトカインの分泌に対する、抗CTLA4および抗SEMA4Dの併用療法と比較した抗CTLA単独療法の効果を検討するために、追跡研究を実施した。この追跡研究においては、免疫細胞を、インビボで対照IgG1/MAb2B8、抗CTLA4/MAbUC10-4F10、または抗CTLA4/MAbUC10-4F10および抗SEMA4D/MAb67の組み合わせで処置したColon26腫瘍を担うマウスの腫瘍および脾臓から単離した。最後の抗CTLA4抗体用量の1日後で腫瘍退縮の直前である15日目に、組織を採集した。全CD45+ TILを、分泌したサイトカインレベルについて評価し、MHC-I拘束性のColon26腫瘍特異的免疫優性gp70ペプチドの存在下でのIFNgを分泌するCD8+ T細胞の頻度を、ELISPOTによって決定した。MHC I特異的レスポンダーの頻度を、ペプチド含有ウェルから培地対照を引くことによって算出した。
【0186】
図5Dに示されるように、炎症誘発性サイトカインIFNgのレベルの増大が、抗CTLA4抗体単独療法で処置したマウスの腫瘍において観察され(p=0.0135)、これは、抗CTLA4および抗SEMA4Dの併用療法での処置後に、さらにかつ有意に増強された(対照または単独療法と比較してp=0.0002)。図5Eにおいて、ペプチド特異的IFNg分泌レスポンダーの頻度の増大が、抗CTLA4抗体で処置したマウスの脾臓において観察された。抗CTLA4は末梢においてT細胞活性化を誘導することが報告されているため、この知見は予測された。抗CTLA4および抗SEMA4Dの併用療法は、脾臓における活性をさらに増強することは見出されなかった。対照的に、ペプチド特異的IFNg分泌レスポンダーの頻度の実質的な増大が、抗CTLA4単独療法での処置後に、TILにおいて観察され、これは、抗CTLA4および抗SEMA4Dの併用療法での処置後に、さらにかつ有意に増強された。この知見により、抗SEMA4D処置の追加が、限局性の腫瘍特異的様式において腫瘍特異的CD8+ T細胞活性を有意に改善できることが示唆される。
【0187】
実施例6:腫瘍特異的細胞傷害性CD8+ T細胞の腫瘍浸潤に影響を及ぼす、抗SEMA4D抗体の能力の試験
MAb 67-2処置は、腫瘍特異的TILの頻度および炎症誘発性サイトカインの分泌を増大させる。インビボの抗SEMA4D処置の4週間後に、腫瘍を分離させ、磁気分離によってCD45+細胞を濃縮した。5匹のマウスからプールしたCD45+ TILを、種々の細胞密度で、免疫優性腫瘍ペプチドAH-1の存在下および非存在下でインキュベーションした。IFNγ分泌細胞を、ELISPOTによって測定し;ペプチド特異的応答を、ペプチドを含まないウェルの平均値を引くことによって決定した。各試料を、6個の複製物において試験し、上にグラフ化する。統計学的有意性を、マン・ホイットニーノンパラメトリックt検定で判定した。
【0188】
IFNγ分泌細胞の増加が、図6Aに示されるように、ペプチドの存在下および非存在下の両方で、MAb 67で処置したマウスにおいて観察された。CD45+ TIL、特にMHC-I拘束性のペプチド特異的CD8+細胞傷害性T細胞は、MAb 67-2での処置後に活性化されたエフェクター細胞となる。図6Bは、代表的なELISPOT画像を示す。CD45+ TILをその後、エクスビボで48時間培養し、CBA解析を用いてサイトカイン分泌についてアッセイした。図6Cに示されるように、Mab 67-2は、TILにおいて、IFNγおよびTNFαなどの抗腫瘍サイトカインの分泌を促進する。統計学的有意性を、マン・ホイットニーノンパラメトリックt検定で判定した。
【0189】
腫瘍特異的な腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の頻度および炎症誘発性サイトカインの分泌に対する、MAb 67-2処置の効果を検討するために、追跡研究を実施した。この追跡研究においては、免疫細胞を、インビボで対照IgG1/MAb2B8または抗SEMA4D/MAb67で処置したColon26腫瘍を担うマウスの腫瘍から単離した。全CD45+ TILを、分泌したサイトカインレベルについて評価し、MHC-I拘束性のColon26腫瘍特異的免疫優性gp70ペプチドの存在下でのIFNgを分泌するCD8+ T細胞の頻度を、ELISPOTによって決定した。MHC I特異的レスポンダーの頻度を、ペプチド含有ウェルから培地対照を引くことによって算出した。
【0190】
図6Dに示されるように、炎症誘発性サイトカインIFNgおよびTNFaのレベルの増大が、抗SEMA4D抗体で処置したマウスのTILにおいて観察された。さらに、図6Eに示されるように、ペプチド特異的IFNg分泌レスポンダーの頻度の増大が、抗SEMA4D抗体で処置したマウスのTILにおいて観察された。この知見により、抗SEMA4D処置の追加が、限局性の腫瘍特異的様式において腫瘍特異的CD8+ T細胞活性を有意に改善できることが示唆される。
【0191】
実施例7:抗PD1抗体と組み合わせて使用した際の、マウスにおいて腫瘍成長を遅延させる抗SEMA4D抗体の能力の試験
実験設計
5×105個のColon26腫瘍細胞を、雌のBalb/cマウスの側腹部の皮下に移植した。対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2での処置を、接種の1日後に開始した(50 mg/kg、IP、毎週)。各群のマウスをまた、対照ラットIgまたはラット抗PD1/MAbRMP1-14のいずれかで処置した(100μg、週あたり2回、腫瘍接種の3日後に始めて、×2週間)。群あたり20匹のマウスがいた。腫瘍を、移植の5日後に始めて、週に3回、カリパスで測定した。動物を、腫瘍体積が1000 mm3に達した時に屠殺した。
【0192】
抗SEMA4D抗体および抗PD1抗体の組み合わせは、マウスにおいて腫瘍成長を遅延させた。腫瘍成長を、カリパスによって測定し、測定値を、式(w2×l)/2(式中、w=腫瘍の幅、より小さな測定値、およびl=mmでの長さ)を用いて腫瘍体積を算出するために使用した。平均腫瘍体積、および腫瘍体積=1000 mm3の終点までの時間として定義されるカプラン・マイヤー生存曲線を、それぞれ、図7Aおよび図7Bに示す。統計学的解析を、それぞれ、二元配置分散分析(ANOVA)およびログランク解析を用いて実施し、Balb/cマウスにおける、抗PD1抗体と組み合わせた抗SEMA4D抗体での統計学的に有意な処置効果を示した。これらの知見により、抗SEMA4D抗体および抗PD1抗体の組み合わせは、抗SEMA4D抗体単独または抗PD1抗体単独での処置よりも有効であったことが示される。
【0193】
Colon26腫瘍モデルにおける退縮の頻度もまた測定し、図7Cおよび図7Dに示す。退縮とは、触診可能な腫瘍の欠如であり、少なくとも2回の連続した測定について50 mm3よりも小さい測定値である腫瘍によって定義される。抗SEMA4D抗体および抗PD1抗体の組み合わせは、Colon26腫瘍モデルにおいて退縮の数を増大させる。併用療法(αSEMA4D抗体+αPD1抗体)についての退縮は、フィッシャーの直接確率検定によって判定した際に、対照Igと比較して統計学的に有意であり(p=0.0083)、または単剤抗PD-1と比較して統計学的に有意である(p=0.02)。
【0194】
実施例8:シクロホスファミドと組み合わせて使用した際の、マウスにおいて腫瘍成長を遅延させる抗SEMA4D抗体の能力の試験
実験設計
5×105個のColon26腫瘍細胞を、雌のBalb/cマウスの側腹部の皮下に移植した。対照マウスIgG1/2B8または抗SEMA4D/MAb 67-2での処置を、接種の1日後に開始した(50 mg/kg、IP、毎週)。シクロホスファミド(50 mg/kg、IP)での処置を、12および20日目に施与した。群あたり20匹のマウスがいた。腫瘍を、移植の5日後に始めて、週に3回、カリパスで測定した。動物を、腫瘍体積が1000 mm3に達した時に屠殺した。
【0195】
抗SEMA4D抗体およびシクロホスファミドの組み合わせは、マウスにおいて腫瘍成長を遅延させた。腫瘍成長を、カリパスによって測定し、測定値を、式(w2×l)/2(式中、w=腫瘍の幅、より小さな測定値、およびl=mmでの長さ)を用いて腫瘍体積を算出するために使用した。平均腫瘍体積、中央腫瘍体積、および腫瘍体積=1000 mm3の終点までの時間として定義されるカプラン・マイヤー生存曲線を、それぞれ、図8A図8B、および図8Cに示す。統計学的解析を、それぞれ、二元配置分散分析(ANOVA)およびログランク解析を用いて実施し、Balb/cマウスにおける、シクロホスファミドと組み合わせた抗SEMA4D抗体での統計学的に有意な処置効果を示した。
【0196】
具体的には、知見により、抗SEMA4D抗体をシクロホスファミドと組み合わせて使用した際に232%の腫瘍成長遅延(TGD)が示される。この知見は、マンテル・コックスログランク解析によって判定した際に、対照Igと比較して統計学的に有意であった(p<0.0001)。マンテル・コックスログランク解析によって判定した際に、抗SEMA4D抗体処置を単独で使用した場合にも3%のTGD(対照Igと比較して統計学的に有意(p=0.0282))があり、シクロホスファミド処置を単独で使用した場合にも96%のTGD(対照Igと比較して統計学的に有意(p<0.0001))があった。応答は、少なくとも81日間耐久性があった。これらの知見により、抗SEMA4D抗体およびシクロホスファミドの組み合わせは、抗SEMA4D抗体単独またはシクロホスファミド単独での処置よりも、腫瘍成長を遅延させるのにより有効であったことが示される。
【0197】
Colon26腫瘍モデルにおける退縮の頻度もまた測定し、図8Dおよび図8Eに示す。退縮とは、触診可能な腫瘍の欠如であり、少なくとも2回の連続した測定について50 mm3よりも小さい測定値である腫瘍によって定義される。抗SEMA4D抗体およびシクロホスファミドの組み合わせは、Colon26腫瘍モデルにおいて退縮の数を増大させる。併用療法(αSEMA4D抗体+シクロホスファミド)についての退縮は、フィッシャーの直接確率検定によって判定した際に、対照Igと比較して統計学的に有意である(p<0.003)。これらのデータにより、抗SEMA4D抗体と組み合わせた際のシクロホスファミドでの処置について、効力および応答の増大が実証される。
【0198】
実施例9:抗HER2/neu抗体と組み合わせて使用した際の、マウスにおいて腫瘍成長を遅延させる抗SEMA4D抗体の能力の試験
実験設計
3×104個のTubo.A5腫瘍細胞を、雌のBalb/cマウスの乳房脂肪体の皮下に移植した。対照マウスIgG1/2B8.1E7または抗SEMA4D/MAb 67-2での処置を、接種の7日後に開始した(50 mg/kg、IP、毎週×6)。抗Neu/MAb7.16.4での処置(200μg、IP、毎週×2、腫瘍体積がおよそ200 mm3であった時に開始し、21および28日目)。群あたり15匹のマウスがいた。腫瘍を、移植の11日後に始めて、週に2回、カリパスで測定した。動物を、腫瘍体積が800 mm3に達した時に屠殺した。
【0199】
抗SEMA4D抗体および抗HER2/Neu抗体の組み合わせは、マウスにおいて腫瘍成長を遅延させた。腫瘍成長を、カリパスによって測定し、測定値を、式(w2×l)/2(式中、w=腫瘍の幅、より小さな測定値、およびl=mmでの長さ)を用いて腫瘍体積を算出するために使用した。平均腫瘍体積、および腫瘍体積=800 mm3の終点までの時間として定義されるカプラン・マイヤー生存曲線を、それぞれ、図9Aおよび図9Bに示す。統計学的解析を、それぞれ、二元配置分散分析(ANOVA)およびログランク解析を用いて実施し、Balb/cマウスにおける、抗Her2/Neu抗体と組み合わせた抗SEMA4D抗体での統計学的に有意な処置効果を示した。知見により、抗SEMA4D抗体を抗Neu抗体と組み合わせて使用した際に48%の腫瘍成長遅延が示され、これは、マンテル・コックスログランク解析によって判定した際に、無関連の対照抗体を用いるのと比較して統計学的に有意であり(p=0.017)、または抗Neu単独療法を用いるのと比較して統計学的に有意である(p=0.006)ことが示される。
【0200】
Tubo腫瘍モデルにおける腫瘍退縮の頻度もまた測定し、図9Cに示す。退縮とは、触診可能な腫瘍の欠如であり、少なくとも2回の連続した測定について50 mm3よりも小さい測定値である腫瘍として定義される。抗SEMA4D抗体および抗Neu抗体の組み合わせは、Tuboを担うマウスにおいて退縮の数を増大させる。併用療法(αSEMA4D抗体+αNeu抗体)についての退縮は、フィッシャーの直接確率検定によって判定した際に、対照Igと比較して統計学的に有意である(p=0.016)。
【0201】
実施例10:インビボ乳癌モデルの成長を遅延させる、抗SEMA4D抗体の能力の試験
実験設計
3×104個のTubo.A5腫瘍細胞を、雌のBalb/cマウスの乳房脂肪体の皮下に移植した。対照マウスIgG1/2B8.1E7または抗SEMA4D/MAb 67-2での処置を、接種の6日後に開始した(50 mg/kg、IP、毎週×6)。群あたり20匹のマウスがいたが、潰瘍形成または全身の健康障害に起因する、終点に達する前の時期尚早な死のために、何匹かのマウスは解析から除外した。腫瘍を、移植の13日後に始めて、週に2回、カリパスで測定した。動物を、腫瘍体積が800 mm3に達した時に屠殺した。
【0202】
抗SEMA4D抗体処置は、マウスにおいて腫瘍成長を遅延させた。腫瘍成長を、カリパスによって測定し、測定値を、式(w2×l)/2(式中、w=腫瘍の幅、より小さな測定値、およびl=mmでの長さ)を用いて腫瘍体積を算出するために使用した。平均腫瘍体積、および腫瘍体積=800 mm3の終点までの時間として定義されるカプラン・マイヤー生存曲線を、それぞれ、図10Aおよび図10Bに示す。統計学的解析を、それぞれ、二元配置分散分析(ANOVA)およびログランク解析を用いて実施し、抗SEMA4D抗体での統計学的に有意な処置効果を示した。知見により、抗SEMA4D抗体処置で最大の腫瘍成長遅延(133%)が示され;これは、マンテル・コックスログランク解析によって判定した際に、無関連の対照抗体を用いるのと比較して統計学的に有意である(p<0.0001)。
【0203】
Tubo.A5腫瘍モデルにおける腫瘍退縮の頻度もまた測定し、図10C図10Eに示す。退縮とは、触診可能な腫瘍の欠如であり、少なくとも2回の連続した測定について50 mm3よりも小さい測定値である腫瘍として定義される。移植の90日後に、対照Igで処置したマウスにおける0/14の退縮と比較して、85%(12/14)のMAb67で処置したマウスが、腫瘍を有さない退縮体(regressor)であり、14匹のうちの1匹は、測定可能な腫瘍を全く発症しなかった。90日目に、その原発腫瘍を完全に拒絶したマウス(13/14のMAb67で処置したマウス)を、反対側の生存可能なTubo.A5(30,000個)でチャレンジし;未処置マウスを、移植についての対照として含めた。図10Dに示されるように、抗SEMA4D抗体で処置した13匹のマウスのすべては、その後の腫瘍チャレンジを拒絶し、図10Eに示されるように腫瘍チャレンジを拒絶しなかった未処置マウスとは対照的に、免疫記憶応答を示唆する。退縮頻度は、フィッシャーの直接確率検定によって判定した際に、対照Igと比較して統計学的に有意である(p<0.0001)。
【0204】
実施例11:Tubo.A5腫瘍モデルにおけるT細胞浸潤およびMDSCに対する抗SEMA4D抗体の効果
実験設計
Tubo.A5腫瘍を、同系のBALB/cマウスに移植した。マウス対照Igまたは抗SEMA4D MAb 67での処置を、6日目に開始した(50 mg/kg、IP、毎週)。腫瘍を、腫瘍退縮の直前の39日目に採集した。14~21匹のマウス/群の腫瘍からプールしたリンパ球細胞画分に対して、FACSを行った。アッセイ複製物の平均を示す;有意性を、両側t検定を用いて判定した。
【0205】
図11Aおよび図11Bに示されるように、抗SEMA4D抗体療法は、抗SEMA4Dで処置したマウスの腫瘍において、CD3+ T細胞浸潤を増大させ、CD11b+Gr1+ MDSCを減少させる。これらのデータにより、抗腫瘍形成T細胞応答の増大、およびMDSCなどの免疫抑制細胞の減少が示唆される。これらのデータは、Colon26モデルにおいて観察された免疫バランスの調節と一致する。
【0206】
実施例12:Tubo.A5腫瘍モデルおよびColon26腫瘍モデルにおけるMAb67の用量滴定
Tubo.A5腫瘍モデルについての実験設計
3×104個のTubo.A5腫瘍細胞を、雌のBalb/cマウスの乳房脂肪体の皮下に移植した。対照マウスIgG1/2B8.1E7(50 mg/kg、IP、毎週×6)または抗SEMA4D/MAb 67-2(1、10、もしくは50 mg/kg、IP、毎週×6)での処置を、接種の6日後に開始した。群あたり20匹のマウスがいたが、潰瘍形成または全身の健康障害に起因する、終点に達する前の時期尚早な死のために、何匹かのマウスは解析から除外した。腫瘍を、移植の13日後に始めて、週に2回、カリパスで測定した。動物を、腫瘍体積が800 mm3に達した時に屠殺した。
【0207】
Colon26腫瘍モデルについての実験設計
5×105個のColon26腫瘍細胞を、雌のBalb/cマウスの側腹部の皮下に移植した。対照マウスIgG1/2B8.IE7(50 mg/kg、IP、毎週×5)または抗SEMA4D/MAb 67-2(0.3、3、10、もしくは50 mg/kg、IP、毎週×5)での処置を、抗CTLA4/MAb UC10-4F10-11(腫瘍接種後8日目に100μg~5 mg/kg、11および14日目に50μg~2.5 mg/kg)を伴うかまたは伴わずに、接種の1日後に開始した。群あたり15匹のマウスがいた。腫瘍を、移植の5日後に始めて、週に2回、カリパスで測定した。動物を、腫瘍体積が1000 mm3以上に達した時に屠殺した。
【0208】
最小有効用量は、およそ3mg/kgである。50または10 mg/kgのMAb67でのTubo.A5腫瘍の処置は、腫瘍成長遅延を結果としてもたらし、これは、対照IgGと比較して統計学的に有意であった(それぞれp<0.0001およびp=0.0015)が、互いに有意には異ならなかった。50または10 mg/kgのMAb67で処置したTubo.A5腫瘍における38%(9/24)および54%(6/13)の退縮頻度もまた、統計学的に有意であった(p=0.0069およびp=0.0014)。対照的に、1 mg/kgのMab67は無効であり、腫瘍成長を有意には遅延させなかった(p=0.01441)。このモデルにおいて、最小有効用量は、1~10 mg/kgの間であることが決定された。腫瘍成長を、カリパスによって測定し、測定値を、式(w2×l)/2(式中、w=腫瘍の幅、より小さな測定値、およびl=mmでの長さ)を用いて腫瘍体積を算出するために使用した。平均腫瘍体積、および腫瘍体積=800 mm3の終点までの時間として定義されるカプラン・マイヤー生存曲線を、それぞれ、図12Aおよび図12Bに示す。統計学的解析を、それぞれ、二元配置分散分析(ANOVA)およびログランク解析を用いて実施した。
【0209】
有効なMAb67用量のさらなる微細な点を、Colon26モデルにおいて調査し、3 mg/kg以上であることが決定された。抗CTLA4+抗SEMA4DでのColon26腫瘍の処置は、抗SEMA4D/MAb 67の用量が3 mg/kg以上だった場合に、抗CTLA4単独療法と比較して最大の腫瘍成長遅延(119%)を結果としてもたらし;抗CTLA4単独療法と比較し、かつマンテル・コックスログランク解析を用いて判定した際に、10 mg/kg MAb67でp=0.0101、および3 mg/kgでp=0.0571であった。3~50 mg/kgの間のすべての用量は、互いに有意には異ならなかった。対照的に、抗CTLA4を0.3 mg/kg MAb67と組み合わせて投与した際に、差は、10 mg/kg MAb 67での処置と有意に異なっていた(p=0.0325)が、抗CTLA4単独療法での処置と比較して統計学的に有意ではなかった(p=0.4945)。腫瘍成長を、カリパスによって測定し、測定値を、式(w2×l)/2(式中、w=腫瘍の幅、より小さな測定値、およびl=mmでの長さ)を用いて腫瘍体積を算出するために使用した。平均腫瘍体積、および腫瘍体積=1000 mm3の終点までの時間として定義されるカプラン・マイヤー生存曲線を、それぞれ、図12Cおよび図12Dに示す。統計学的解析を、それぞれ、二元配置分散分析(ANOVA)およびログランク解析を用いて実施した。
【0210】
実施例13:Colon26腫瘍モデルおよびTubo.A5腫瘍モデルにおいて腫瘍成長を遅延させる抗SEMA4D抗体の効果
実験設計
図13は、上記の実施例において実施された実験の概要であり、Colon26腫瘍モデルおよびTubo.A5腫瘍モデルにおける腫瘍退縮および腫瘍再チャレンジ後の成長を示す。それぞれの実験の実験設計は、上記の実施例において要約されている。
【0211】
抗SEMA4D抗体療法は、完全なかつ耐久性がある腫瘍退縮を結果としてもたらす。図13に示されるように、抗SEMA4D抗体療法での処置は、Colon26モデルおよびTubo.A5モデルの両方において、対照マウスIgG1での処置と比較した際に、それぞれ7%(P≦0.001***)および85%(P≦0.0001****)の、腫瘍退縮の統計学的に有意な増大を結果としてもたらす。さらに、抗SEMA4D抗体療法での処置は、抗PD1単独での処置とは有意に異ならない(抗SEMA4D単独で7%対抗PD1単独で8%、n.s.)が、抗PD1療法と組み合わせて使用した際には有意に増強される(併用療法について28%対抗SEMA4D単独療法について7%または抗PD1単独療法について8%、P≦0.0001****)。さらに、抗CTLA4療法との組み合わせでの抗SEMA4D抗体療法での処置は、抗CTLA4単独での処置と比較した際に、腫瘍退縮の統計学的に有意な増大を結果としてもたらす(併用療法について74%対抗CTLA4単独療法について20%、P≦0.0001****)。追加的に、抗CTLA4療法との組み合わせでの抗SEMA4D抗体療法での処置は、抗PD1との組み合わせでの抗SEMA4Dでの処置と比較した際に、腫瘍退縮の統計学的に有意な増大を結果としてもたらす(抗SEMA4D/抗CTLA4併用療法について74%対抗SEMA4D/抗PD1併用療法について60%、P≦0.001****)。抗PD1との組み合わせでの抗SEMA4Dと比較した際の、抗CTLA4との組み合わせでの抗SEMA4Dでのより大きな明らかな相乗効果により、すべての免疫チェックポイント遮断阻害剤がこの点で同等ではないこと、および機構の差が、差次的な治療的有益性と関連し得ることが示される。最後に、シクロホスファミドとの組み合わせでの抗SEMA4Dでの処置は、シクロホスファミド単独での処置と比較した際に、腫瘍退縮の統計学的に有意な増大を結果としてもたらす(併用療法について40%対シクロホスファミド単独療法について10%、P≦0.01**)。
【0212】
本明細書において示される態様の多くの修飾物および他の態様が、前述の説明および関連する図面において提示される教示の恩恵を受ける、本開示が属する技術分野における当業者には、思い浮かぶであろう。従って、本開示は、開示される特定の態様に限定されるべきではないこと、ならびに、修飾物および他の態様は、添付の特許請求の範囲および本明細書において開示される態様の列挙の範囲内に含まれるように意図されることが、理解されるべきである。特定の用語が本明細書において使用されるが、それらは、総称的意味および説明的意味のみにおいて使用され、限定の目的では使用されない。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
【配列表】
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